以下に説明する実施例の主要な特徴を列記しておく。なお、以下に記載する技術要素は、それぞれ独立した技術要素であって、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。
(特徴1)本明細書が開示する熱処理炉では、支持部材が配置される数は、複数の搬送ローラの数より少なくされていてもよい。複数の搬送ローラのうちの一部の搬送ローラは、貫通孔を介して断熱材を貫通する一方、複数の搬送ローラのうちの残りの搬送ローラは、貫通孔を介することなく断熱材を貫通していてもよい。このような構成によると、支持部材の数が搬送ローラの数より少ないため、搬送ローラに対して支持部材は間引いて配置される。このため、2つの隣接する支持部材の間にも搬送ローラが配置され、搬送ローラのピッチを狭くすることができる。これによって、搬送ローラのピッチを狭くすることと、支持部材によって断熱材を支持することの両方を実現することができる。
(特徴2)本明細書が開示する熱処理炉では、搬送経路の少なくとも一部の区間において、隣接する2つの一部の搬送ローラの間には、2以上の残りの搬送ローラが配置されていてもよい。この場合において、残りの搬送ローラと、当該残りの搬送ローラに隣接する一部の搬送ローラとは、第1のピッチの間隔で配置されていてもよい。残りの搬送ローラと、当該残りの搬送ローラに隣接する残りの搬送ローラとは、第2のピッチの間隔で配置されていてもよい。第2のピッチは、第1のピッチより小さくてもよい。このような構成によると、支持部材を介することなく断熱材を貫通する搬送ローラ(すなわち、残りの搬送ローラ)が連続して配置されるときの当該搬送ローラ間のピッチ(すなわち、第2のピッチ)を小さくすることができる。これによって、搬送経路の少なくとも一部の区間において複数の搬送ローラが不等ピッチで配置され、部分的に搬送ローラのピッチを狭くすることができる。このため、搬送ローラのピッチを狭くすることと、支持部材によって断熱材を支持することの両方を実現することができる。
(特徴3)本明細書が開示する熱処理炉は、断熱材内に配置され、断熱材より機械的強度の高い補強材をさらに備えていてもよい。補強材は、搬送ローラの位置より上方に位置していてもよい。このような構成によると、補強材は、搬送ローラが貫通する位置より上方、すなわち、支持部材より上方に配置される。このため、支持部材の上方に位置する断熱材をより好適に支持することができる。
(特徴4)本明細書が開示する熱処理炉では、補強材は、炉体の外表面から断熱材の内部まで位置する第1の補強部材と、断熱材の熱処理空間側の表面から断熱材の内部まで位置する第2の補強部材と、を備えていてもよい。第1の補強部材と第2の補強部材は、離間していると共に、炉体を平面視したときに重なる部分を有するようにそれぞれ配置されていてもよい。このような構成によると、第1の補強部材と第2の補強部材が離間していることによって、第1の補強部材と第2の補強部材により熱処理空間から炉体の外部まで貫通する伝熱経路が形成されることが回避される。このため、熱処理空間内の熱が外部に逃げることを抑制することができる。また、第1の補強部材と第2の補強部材は、平面視したときに重なる部分を有するように配置される。このため、2つの補強部材を離間するように配置しても、断熱材を十分に支持することができる。
(特徴5)本明細書が開示する熱処理炉では、断熱材は、炉体の内表面と直交する方向に積層される複数の断熱部材によって構成されていてもよい。第1の補強部材及び第2の補強部材は、複数の断熱部材のうちのいくつかの内部に配置されていてもよい。このような構成によると、第1の補強部材及び第2の補強部材が複数の断熱部材に亘って配置されることによって、断熱材を適切に補強することができる。
(特徴6)本明細書が開示する熱処理炉では、断熱材は、搬送ローラの上方に配置される上部部材と、搬送ローラの下方に配置される下部部材と、を備えていてもよい。支持部材は、上部部材と下部部材との間に配置されていてもよい。このような構成によると、下部部材を設置した後に支持部材を設置し、さらにその後に上部部材を設置できる。このため、支持部材を設置しやくすることができる。
(特徴7)本明細書が開示する熱処理炉では、断熱材は、第1煉瓦によって形成されていてもよい。支持部材は、第1煉瓦より機械的強度の高い第2煉瓦又はセラミック製のブロックによって形成されていてもよい。このような構成によると、第1煉瓦より機械的強度の高い第2煉瓦又はセラミック製のブロックによって、上部部材を好適に支持することができる。
(特徴8)本明細書が開示する熱処理炉では、支持部材は、上面と下面とを備えていてもよい。支持部材の上面は、上部部材の下面と平行に配置されていてもよい。支持部材の下面は、下部部材の上面と平行に配置されていてもよい。支持部材の上面と下面は、水平であってもよい。このような構成によると、支持部材を、断熱材の上部部材及び下部部材の間に安定して配置することができる。なお、「水平」とは、厳密な水平だけでなく、略水平な面等も含む。
(特徴9)本明細書が開示する熱処理炉では、支持部材は、搬送方向に伸びると共に、支持部材の上面及び下面と垂直な支持部をさらに備えていてもよい。支持部を介して隣接する搬送ローラ間のピッチは、支持部を介さずに隣接する搬送ローラ間のピッチより大きくてもよい。このような構成によると、複数の搬送ローラが不等ピッチで配置され、部分的に搬送ローラのピッチを狭くすることができる。このため、搬送ローラのピッチを狭くすることと、支持部材によって断熱材を支持することの両方を実現することができる。
(特徴10)本明細書が開示する熱処理炉は、搬送方向に伸びると共に、2以上の上部部材を支持する支持板をさらに備えていてもよい。支持板は、支持部材の上面に接触して配置されていてもよい。このような構成によると、搬送方向に隣接する2以上の上部部材を支持板によって支持することができる。例えば、上部部材の搬送方向の寸法が隣接する支持部材間のピッチより小さくなると、支持部材の上面に上部部材を設置し難くなる。支持板を備えることによって、搬送方向に隣接する2以上の上部部材を設置し易くすることができる。
(実施例1)
以下、実施例に係る熱処理炉10について説明する。図1に示すように、熱処理炉10は、炉体20と、被処理物12を搬送する搬送装置(52、54)を備えている。熱処理炉10は、搬送装置によって被処理物12が炉体20内を搬送される間に、被処理物12を熱処理する。なお、図1では、図の見易さのため、炉体20内に配置される断熱材60(後述)を省略している。
被処理物12としては、例えば、セラミックス製の誘電体(基材)と電極とを積層した積層体や、リチウムイオン電池の正極材や負極材等が挙げられる。熱処理炉10を用いてセラミック製の積層体を熱処理する場合には、これらを平板状のセッターに載置して炉内を搬送することができる。また、熱処理炉10を用いてリチウムイオン電池の正極材や負極材を熱処理する場合には、これらを箱状の匣鉢に収容して炉内を搬送することができる。本実施例の熱処理炉10では、搬送ローラ52(後述)上に複数のセッターや匣鉢を搬送方向に並んだ状態で載置して搬送することができる。以下、本実施例においては、熱処理する物質と、その熱処理する物質を載置したセッターや収容した匣鉢を合わせた全体を「被処理物12」という。
図1及び図2に示すように、炉体20は、天井壁22aと、底壁22bと、側壁22c〜22fによって囲まれており、その内部に空間24が設けられている。炉体20は、略直方形であり、天井壁22aは、底壁22bに対して平行に(すなわち、XY平面と平行に)配置されている。図1に示すように、側壁22cは、搬送経路の入口端に配置されており、搬送方向に対して垂直に(すなわち、YZ平面と平行に)配置されている。側壁22dは、搬送経路の出口端に配置されており、側壁22cに対して平行に(すなわち、YZ平面と平行に)配置されている。図2に示すように、側壁22e、22fは、搬送方向に対して平行、かつ、天井壁22a及び底壁22bに対して垂直に(すなわち、XZ平面と平行に)配置されている。図1に示すように、側壁22cには、開口26が形成されており、側壁22dには、開口28が形成されている。被処理物12は、搬送装置によって開口26から熱処理炉10内に搬送され、開口28から熱処理炉10外へ搬送される。すなわち、開口26は搬入口として用いられ、開口28は搬出口として用いられる。
空間24には、複数の搬送ローラ52と、複数のヒータ30、32が配置されている。ヒータ30は、搬送ローラ52の上方の位置に搬送方向に等間隔で配置され、ヒータ32は搬送ローラ52の下方の位置に搬送方向に等間隔で配置されている。ヒータ30,32が発熱することで、空間24内が加熱される。なお、本実施例では、ヒータ30、32はそれぞれ搬送方向に等間隔で配置されているが、このような構成に限定されない。ヒータは、例えば、被処理物12の種類や熱処理炉10の熱処理の条件等に合わせて、所望の位置に適宜変更して配置してもよい。また、本実施例では、空間24内にヒータ30、32を配置しているが、このような構成に限定されない。空間24内を加熱できればよく、例えば、空間24内にガスバーナー等を設置してもよい。
図2に示すように、熱処理炉10には、炉体20の内表面を覆うように、断熱材60が配置されている。断熱材60は、複数の平板状の断熱ボード62(図3参照)によって構成されている。断熱ボード62は、炉体20の内表面と平行に配置され、複数の断熱ボード62が炉体20の内表面と直交する方向に積層されている。具体的には、側壁22e、22f(すなわち、炉体20のXZ平面に平行な外壁)の内表面には、複数(本実施例では、7枚)の断熱ボード62が側壁22e、22fと平行に積層して配置される。側壁22eの内表面の最も内側に配置される断熱ボード62と側壁22fの内表面の最も内側に配置される断熱ボード62は離間しており、両者の間に空間24が設けられる。図示はされていないが、側壁22c、22dの内表面にも、側壁22e、22fと同様に、複数(本実施例では、7枚)の断熱ボード62が積層して配置され、側壁22c、22dの最も内側に配置される断熱ボード62の間には空間24が設けられている。同様に、天井壁22aと底壁22b(すなわち、炉体20のXY平面に平行な外壁)の内表面には、複数(本実施例では、7枚)の断熱ボード62が天井壁22a及び底壁22bと平行に積層して配置される。天井壁22aの内表面の最も内側に配置される断熱ボード62と底壁22bの内表面の最も内側に配置される断熱ボード62は離間しており、両者の間に空間24が設けられる。したがって、直方体状の空間24は、その6面を断熱材60で囲まれている。以下の説明では、複数の断熱ボード62が積層される方向において、炉体20(すなわち、天井壁22a、底壁22b、側壁22e、22f)側を「外側」と称し、空間24側を「内側」と称することがある。また、以下の明細書において、7枚の断熱ボード62を区別する必要があるときは断熱ボード62a〜62gのように沿字のアルファベットを用いて記載し(図3参照)、区別する必要のないときは単に断熱ボード62と記載する場合がある。
なお、本実施例では、炉体20の6つの壁の各内表面に同じ種類の断熱ボード62を7枚ずつ積層させているが、積層させる断熱ボード62の種類は特に限定されるものではなく、異なる種類の断熱ボードを積層させてもよい。また、天井壁22a、底壁22b、側壁22c、22d、22e、22fの内表面にそれぞれ7枚ずつの断熱ボード62が配置されているが、積層させる断熱ボード62の数は限定されない。積層させる断熱ボードの種類及び数は、熱処理条件等に応じて適宜変更することができる。断熱材60の内部には、支持部材70と、補強材80と、支持ピン90が配置されている。支持部材70と補強材80と支持ピン90については、後に詳述する。
搬送装置は、複数の搬送ローラ52と、駆動装置54と、制御装置56を備えている。搬送装置は、炉体20の開口26から空間24内に被処理物12を搬送し、空間24内において開口26から開口28まで被処理物12を搬送する。そして、搬送装置は、開口28から被処理物12を炉体20外に搬送する。被処理物12は、搬送ローラ52によって搬送される。
搬送ローラ52は円筒状であり、その軸線は搬送方向と直交する方向に(すなわち、Y方向に)伸びている。複数の搬送ローラ52は、全てが概ね同じ直径を有しており、搬送方向に一定のピッチで等間隔に配置されている。搬送ローラ52は、その軸線回りに回転可能に支持されており、駆動装置54の駆動力が伝達されることによって回転する。搬送ローラ52の軸線方向の寸法は、炉体20の水平かつ搬送方向と直交する方向(すなわち、Y方向)の寸法より大きく、搬送ローラ52の軸線方向の両端は、断熱材60及び側壁22e、22fを貫通して炉体20の外部に突出している。搬送ローラ52の一端(図2では+Y方向側の端部)は、炉体20の外部で駆動装置54に接続されており、他端(図2では−Y方向側の端部)は自由端となっている。炉体20内に配置される複数の搬送ローラ52のうちの一部は、断熱材60内に配置される支持部材70(後述)を貫通している。
駆動装置54は、搬送ローラ52を駆動する駆動装置(例えば、モータ)である。駆動装置54は、動力伝達機構を介して、搬送ローラ52に接続されている。駆動装置54の駆動力が動力伝達機構を介して搬送ローラ52に伝達されると、搬送ローラ52は回転するようになっている。動力伝達機構としては、公知のものを用いることができ、例えば、スプロケットとチェーンによる機構が用いられている。駆動装置54は、搬送ローラ52が略同一の速度で回転するように、搬送ローラ52のそれぞれを駆動する。駆動装置54は、制御装置56によって制御されている。
次に、被処理物12を熱処理する際の熱処理炉10の動作について説明する。被処理物12を熱処理するためには、まず、ヒータ30、32を作動させて、空間24の雰囲気温度を設定した温度とする。次いで、搬送ローラ52上に被処理物12を載せる。次いで、駆動装置54を作動させて、熱処理炉10の開口26から、空間24を通って、熱処理炉10の開口28まで被処理物12を搬送する。これによって、被処理物12が熱処理される。なお、図2に示すように、実施例では、被処理物12を搬送ローラ52の軸線方向(すなわち、Y方向)に1つ載置して熱処理炉10内を搬送しているが、このような構成に限定されない。例えば、熱処理炉は、被処理物12を搬送ローラ52の軸線方向に複数並べた状態で被処理物12を搬送するように構成されていてもよい。
ここで、支持部材70、補強材80及び支持ピン90について説明する。上述したように、炉体20内の空間24は、断熱材60によって囲まれており、搬送ローラ52の端部は、断熱材60と側壁22e、22fを貫通して炉体20外に突出している。このため、断熱材60には、搬送ローラ52の端部を貫通させるための貫通孔が設けられる。断熱材60の搬送ローラ52が貫通する部分では、隣接する貫通孔間の断熱材60の厚みが小さくなることがある。特に、搬送ローラ52を設置するピッチを狭くすると、断熱材60に設けられる貫通孔間の断熱材60の厚みは小さくなる。このように断熱材60の厚みが小さくなっている部分では、機械的強度が低下するため、その上部に位置する断熱材60を支持し難くなる。このため、搬送ローラ52が貫通する部分より上部の断熱材60を適切に支持するために、支持部材70と補強材80と支持ピン90が配置されている。
まず、支持部材70について説明する。図2に示すように、支持部材70は、側壁22e、22fと平行に配置される断熱材60内に、2枚の煉瓦68a、68bを介して配置される。図2及び図3に示すように、支持部材70は、側壁22e、22fの近傍に配置される外側支持部材72と、空間24の近傍に配置される内側支持部材76を備えている。外側支持部材72は、チューブ状であり、内部に貫通孔74を有している。内側支持部材76は、チューブ状であり、内部に貫通孔78を有している。外側支持部材72及び内側支持部材76は、断熱材60より機械的強度が高く耐火性を有する部材で形成されており、本実施例では、セラミックが用いられている。なお、外側支持部材72及び内側支持部材76は、断熱材60より機械的強度が高く耐火性を有する部材で形成されていればよく、セラミックに限定されない。外側支持部材72の上側には煉瓦68aが配置されており、外側支持部材72の下側には煉瓦68bが配置されている。外側支持部材72の上下に配置される煉瓦68a、68bのY方向(すなわち、外側支持部材72の軸線方向)の寸法は、外側支持部材72のY方向の寸法と略一致している。また、内側支持部材76の上側には煉瓦68aが配置されており、内側支持部材76の下側には煉瓦68bが配置されている。内側支持部材76の上下に配置される煉瓦68a、68bのY方向(すなわち、内側支持部材76の軸線方向)の寸法は、内側支持部材76のY線方向の寸法と略一致している。
外側支持部材72の軸線方向(図3ではY方向)の寸法と、内側支持部材76の軸線方向(図3ではY方向)の寸法はそれぞれ、断熱材60の断熱ボード62の積層方向(すなわち、Y方向)の寸法より小さくされている。また、外側支持部材72の軸線方向の寸法と内側支持部材76の軸線方向の寸法の合計は、断熱材60の断熱ボード62の積層方向の寸法より小さくされている。本実施例では、外側支持部材72の軸線方向の寸法は、外側から2番目と3番目に配置される2枚の断熱ボード62b、62cの厚さの合計と略一致している。また、内側支持部材76の軸線方向の寸法は、内側から2番目と3番目に配置される2枚の断熱ボード62e、62fの厚さの合計と略一致している。貫通孔74、78の直径は略一致しており、搬送ローラ52の直径より大きくされている(図4参照)。
図2及び図3に示すように、外側支持部材72及び内側支持部材76は、側壁22e、22fの内表面に配置される断熱材60の内部に直列に配置される。詳細には、外側支持部材72及び内側支持部材76は、側壁22e、22fの内表面に配置される断熱ボード62内に積層方向に並べて配置される。外側支持部材72と内側支持部材76は、外側支持部材72の軸線と内側支持部材76の軸線とが一致するように配置される。したがって、外側支持部材72及び内側支持部材76をその軸線方向からみたとき、貫通孔74、78は略一致する。また、外側支持部材72と内側支持部材76は、軸線方向に離間して配置されている。本実施例では、外側支持部材72と内側支持部材76の間は、外側から4番目の断熱ボード62dの厚さだけ離間している。したがって、本実施例では、7枚の断熱ボード62a〜62gのうち、外側から2番目と3番目の断熱ボード62b、62cに外側支持部材72及び煉瓦68a、68bが配置され、内側から2番目と3番目の断熱ボード62e、62fに内側支持部材76及び煉瓦68a、68bが配置される一方、断熱ボード62a、62d、62gには支持部材70及び煉瓦68a、68bが配置されない。したがって、外側支持部材72及び煉瓦68a、68bが配置された断熱ボード62b、62cは、支持部材70及び煉瓦68a、68bが配置されていない断熱ボード62a、62dで挟まれ、内側支持部材76及び煉瓦68a、68bが配置された断熱ボード62e、62fは、支持部材70及び煉瓦68a、68bが配置されていない断熱ボード62d、62gで挟まれている。これによって、支持部材70及び煉瓦68a、68bを配置することにより断熱性能が低下することの抑制が図られている。外側支持部材72及び内側支持部材76は、外側支持部材72の軸線の中心と内側支持部材76の軸線の中心が、搬送ローラ52の軸線の中心と略一致する高さに配置される。貫通孔74、78には、搬送ローラ52が配置される。
図4に示すように、支持部材70(すなわち、外側支持部材72と内側支持部材76)は、搬送方向(すなわち、X方向)に離間して配置される。具体的には、隣接して配置される2つの支持部材70の間には、1本の搬送ローラ52が配置される。隣接する支持部材70間に配置される搬送ローラ52は、支持部材70を貫通することなく、断熱材60(詳細には、断熱材60及び断熱材60の内部に配置された煉瓦68a、68bの間)を貫通する。したがって、複数の搬送ローラ52のうち、一部の搬送ローラ52は支持部材70内に設けられる貫通孔74、78を貫通して断熱材60内に配置され、残りの搬送ローラ52は支持部材70を介することなく断熱材60内に配置される。本実施例では、支持部材70を介して断熱材60を貫通する搬送ローラ52と、支持部材70を介することなく断熱材60を貫通する搬送ローラ52が交互に配置される。また、支持部材70が配置される断熱ボード62b、62c、62e、62fは、支持部材70が配置される高さで上下に分断され、その間に煉瓦68a、68bが配置されている。煉瓦68a、68bの間には、空間が設けられており、その空間には、支持部材70(及びその貫通孔(74、78)に配置された搬送ローラ52)が配置されると共に、隣接する支持部材70の間に配置された搬送ローラ52が直接配置される。煉瓦68a、68bには、支持部材70が配置される位置に凹部64が設けられている。凹部64は、支持部材70の軸線方向に沿って伸びており、支持部材70の外表面に倣う形状で形成されている。凹部64によって、支持部材70は位置決めされる。なお、本実施例では、支持部材70が配置される断熱ボード62b、62c、62e、62fは、支持部材70が配置される高さで上下に分断され、その間に煉瓦68a、68bが配置されているが、このような構成に限定されない。例えば、断熱ボード62b、62c、62e、62fには、支持部材70を貫通させる貫通孔と、支持部材70を介さない搬送ローラ52を貫通させる貫通孔が形成されていてもよい。
例えば、支持部材70が配置されていない場合、全ての搬送ローラ52が、支持部材70を介さずに断熱材60に設けられた貫通孔に配置される。搬送ローラ52は全て同じ高さに配置されるため、搬送ローラ52が配置される高さでは、断熱材60は、隣接する搬送ローラ52間にのみ存在することになる。このため、搬送ローラ52が配置される高さにおける断熱材60の搬送方向(X方向)の寸法が小さくなり、搬送ローラ52が配置される位置より上部の断熱材60を支持できないことがある。特に、搬送ローラ52のピッチを狭くすると、この問題が顕著となる。本実施例では、断熱材60内に支持部材70を配置し、支持部材70の貫通孔74、78内に搬送ローラ52を配置している。このように支持部材70を配置することによって、搬送ローラ52の端部が断熱材60を貫通して炉体20外まで突出しても、支持部材70によって、支持部材70が配置される部分より上方に位置する断熱材60を支持することができる。
また、本実施例では、外側支持部材72と内側支持部材76は、軸線方向に離間して配置されている。例えば、支持部材が、積層して配置される断熱ボード62a〜62g全体を貫通するように配置される場合、空間24内の熱は、支持部材を介して内側から外側に伝達され、炉体20外に逃げ易くなる。本実施例では、外側支持部材72と内側支持部材76が軸線方向に離間して配置されていることによって、内側支持部材76に伝達された熱は、外側支持部材72と内側支持部材76の間に配置される断熱ボード62dで断熱され、外側支持部材72に伝達され難い。このため、空間24内の熱が炉体20外に逃げることを抑制することができる。
また、本実施例では、全ての搬送ローラ52を支持部材70に貫通させずに、一部の搬送ローラ52(本実施例では、約半数の搬送ローラ52)のみを支持部材70に貫通させている。これによって、搬送ローラ52のピッチが広くなることを回避することができる。すなわち、支持部材70で断熱材60を支持すると共に、搬送ローラ52間のピッチが広くなることを回避できる。
なお、本実施例では、支持部材70を介して断熱材60を貫通する搬送ローラ52(以下、搬送ローラ52aともいう)と、支持部材70を介することなく断熱材60を貫通する搬送ローラ52(以下、搬送ローラ52bともいう)が交互に配置されていたが、このような構成に限定されない。例えば、図5に示すように、隣接する支持部材70の間に搬送ローラ52bを2つ以上配置してもよい。また、このような場合には、搬送ローラ52a、52bは、搬送方向に不等間隔で配置してもよい。具体的には、搬送ローラ52aと搬送ローラ52bとの間のピッチP1は、搬送ローラ52aの周囲に配置される支持部材70によって広くなる。一方、2つの搬送ローラ52bの間のピッチP2は、両者の間に支持部材70が位置しないため狭くすることができる。このようにピッチP1とピッチP2を異なる長さにすることによって、搬送ローラ52が搬送経路全体において不等ピッチで配置され、搬送ローラ52のピッチを部分的に狭くすることができる。例えば、被処理物12の質量が大きい場合、搬送ローラ52の径を大きくして機械的強度を上げる必要がある一方で、搬送ローラ52間の間隔を狭くして被処理物12を複数本の搬送ローラ52で支持する必要がある。搬送ローラ52b間のピッチを狭くすることによって、支持部材70を配置する場合であっても部分的に搬送ローラ52間のピッチを狭くすることができ、質量が大きい被処理物12も搬送することができる。
また、本実施例では、外側支持部材72及び内側支持部材76はチューブ状であったが、このような構成に限定されない。外側支持部材72及び内側支持部材76は、搬送ローラ52の端部を貫通させる貫通孔74,78を備えると共に、断熱材60を支持できる構成であればよく、外側支持部材72及び内側支持部材76の外形は特に限定されない。
次いで、補強材80について説明する。図6に示すように、補強材80は、側壁22e、22fと平行に隣接して配置される断熱材60内に配置される。補強材80は、断熱材60内の搬送ローラ52が貫通する位置より上方の高さに配置される。補強材80は、側壁22e、22fの近傍に配置される外側補強部材82と、空間24の近傍に配置される内側補強部材84を備えている。外側補強部材82と内側補強部材84は、高さ方向に離間して配置されている。
外側補強部材82は、ピン状であり、炉体20の外部側から斜め上方に向かって打ち込まれる。外側補強部材82は、搬送方向に直交する断面に平行であり、かつ、その外側の端部より内側の端部が上方に位置するように配置される。外側補強部材82の軸線と、搬送ローラ52の軸線がなす角度は、0度以上、かつ、40度以下である。また、外側補強部材82は、複数の断熱ボード62のうちのいくつかを貫通する一方で、空間24まで達しない。したがって、外側補強部材82は、複数の断熱ボード62のうち外側に配置されるいくつかの断熱ボード62に跨って配置され、内側に配置されるいくつかの断熱ボード62は貫通しない。本実施例では、外側補強部材82は、外側に配置される5枚の断熱ボード62a〜62e内に配置され、内側に配置される2枚の断熱ボード62f、62g内には配置されない。外側補強部材82によって、断熱ボード62a〜62eが一体化される。また、外側補強部材82と断熱ボード62a〜62eの間に働く摩擦力によって、外側補強部材82が断熱ボード62a〜62eから引き抜かれてしまうことが防止され、これらが一体化される。本実施例では、外側補強部材82を斜めに打ち込むことで、外側補強部材82と断熱ボード62a〜62eの接触面積が増大し、その締結力の向上が図られている。なお、本実施例では、外側補強部材82は、側壁22e、22fに隣接する断熱材60にのみ配置されているが、外側補強部材82は、断熱材60と、側壁22e又は側壁22fに配置されていてもよい。この場合も、外側補強部材82によって、断熱材60と、側壁22e又は側壁22fとを一体化することができ、外側補強部材82を断熱材60にのみ配置する場合と同様の効果を奏することができる。
内側補強部材84は、ピン状であり、空間24側から斜め下方に向かって断熱材60に打ち込まれる。内側補強部材84は、外側補強部材82と平行に配置される。具体的には、内側補強部材84は、外側補強部材82の下方に、外側補強部材82から離間して配置される。また、内側補強部材84は、複数の断熱ボード62のうちのいくつかを貫通する一方で、側壁22e又は側壁22fまで達しない。したがって、内側補強部材84は、複数の断熱ボード62のうち内側に配置されるいくつかの断熱ボード62に跨って配置され、外側に配置されるいくつかの断熱ボード62は貫通しない。本実施例では、内側補強部材84は、内側に配置される5枚の断熱ボード62c〜62g内に配置され、外側に配置される2枚の断熱ボード62a、62b内には配置されない。内側補強部材84は、その摩擦力によって断熱ボード62c〜62g内に固定され、これらの断熱ボード62c〜62gを一体化する。外側補強部材82と内側補強部材84は、搬送方向と搬送ローラ52の軸線方向とのいずれとも直交する方向(すなわち、Z方向)から見たときに、一部が重なるように配置される。本実施例では、外側補強部材82と内側補強部材84は、Z方向に沿って見たとき、断熱ボード62c〜62eにおいて重なるように配置されている。外側補強部材82と内側補強部材84によって、7枚の断熱ボード62a〜62gが一体化される。
また、最も外側の断熱ボード62aと側壁22e又は側壁22fには、金属製の支持部材86が配置されている。支持部材86はL字状であり、搬送ローラ52の軸方向(すなわち、Y方向)に伸びる第1部分86aと、側壁22e、22fと平行(すなわち、Z方向)に伸びる第2部分86bを備えている。第1部分86aは、断熱ボード62a及び側壁22e、22fに設けられる搬送ローラ52を貫通させるための貫通孔の上面に固定されている。第1部分86aのY方向の寸法は、断熱ボード62aのY方向の寸法と、側壁22e又は側壁22fのY方向の寸法の合計と略一致している。第2部分86bは、第1部分86aと直交しており、側壁22e、22fの外側の面に固定されている。第2部分86bの下端は、第1部分86aの外側の端部と接続している。支持部材86を配置することによって、最も外側の断熱ボード62aが側壁22e又は側壁22fに支持される。上述したように、複数の断熱ボード62a〜62gは補強材80によって一体化されているため、最も外側の断熱ボード62aが側壁22e又は側壁22fに支持されることによって、複数の断熱ボード62a〜62gの全てを側壁22e又は側壁22fで支持することができる。
本実施例では、補強材80は、側壁22e、22f内の搬送ローラ52が貫通する位置より上方の高さ位置に配置される。また、外側補強部材82と内側補強部材84がそれぞれ、側壁22e、22fの内表面に配置される複数の断熱ボード62のうちのいくつかに跨って配置されている。これによって、積層して配置される断熱ボード62を一体的に支持することができ、積層方向に離間することを抑制することができる。さらに、支持部材86によって、最も外側の断熱ボード62aが側壁22e、22fに固定されている。これによって、補強材80によって一体化された複数の断熱ボード62を支持することができる。したがって、搬送ローラ52より上方に位置する断熱材60を適切に支持することができる。
また、本実施例では、補強材80として、2つの別個の部材である外側補強部材82と内側補強部材84を用いており、外側補強部材82と内側補強部材84とが離間して配置されている。例えば、1つの補強部材によって断熱ボード62を一体化させる場合、その補強部材を炉体20の外部から空間24まで貫通させる必要があり、空間24内の熱は、補強部材を介して内側から外側に伝達され、炉体20外に逃げ易くなる。本実施例の補強材80は、外側補強部材82と内側補強部材84によって構成されており、外側補強部材82と内側補強部材84はそれぞれ、炉体20の外部から空間24まで貫通しない。このため、空間24内の熱が炉体20外に逃げることを抑制することができる。また、外側補強部材82と内側補強部材84は、Z方向に沿って見たとき、いくつかの断熱ボード62(本実施例では、3枚の断熱ボード62c〜62e)において重なるように配置されている。これによって、外側補強部材82と内側補強部材84が重なる部分を介して、内側に配置された断熱ボード62と外側に配置された断熱ボード62が一体化され、断熱材60を適切に支持することができる。このため、補強材80を2つの部材で形成し、その2つの部材を離間して配置しても、断熱材60を十分に支持することができる。
また、本実施例では、外側補強部材82と内側補強部材84は、その軸線と搬送ローラ52の軸線とがなす角度が、0度以上、かつ、40度以下となるように配置されている。外側補強部材82及び内側補強部材84の軸線と搬送ローラ52の軸線がなす角度を0度以上にすることによって、側壁22e、22fと平行に配置される断熱ボード62が空間24側に傾くことを抑制することができる。また、外側補強部材82及び内側補強部材84の軸線と搬送ローラ52の軸線がなす角度を40度以下にすることによって、外側補強部材82及び内側補強部材84が、内側に配置される断熱ボード62内の上方に位置してしまうことを回避し、外側補強部材82及び内側補強部材84を断熱ボード62内の適切な位置に配置することができる。
次いで、支持ピン90について説明する。図2及び図6に示すように、支持ピン90は、天井壁22aと平行に隣接して配置される断熱材60内に配置される。支持ピン90は、天井壁22aと隣接して配置される複数の断熱ボード62内に積層方向に沿って配置される。支持ピン90は、天井壁22aと、積層して配置される全ての断熱ボード62を貫通し、これら断熱ボード62に固定される。したがって、支持ピン90は、天井壁22aから、複数の断熱ボード62を貫通して、空間24まで位置している。支持ピン90の天井壁22a側の端部は、炉体20の外部で天井壁22aに固定されている。例えば、支持ピン90の端部にはネジ溝が形成されており、そのネジ溝にボルトが締結されることで、支持ピン90の上端が天井壁22aに固定されている。支持ピン90の空間24側の端部は、空間24内で、最も内側に配置される断熱ボード62に固定されている。支持ピン90の下端の固定構造には、支持ピン90の上端と同様の構造を採用することができる。支持ピン90は、搬送ローラ52の軸線方向に複数(本実施例では3本)配置されると共に、搬送方向に沿って熱処理炉10全体に亘り複数配置される。支持ピン90によって、天井壁22aと平行に隣接して配置される、すなわち、空間24の上方に配置される断熱材60を支持することができる。
なお、本実施例の支持ピン90は、天井壁22aから、複数の断熱ボード62を貫通して、空間24まで位置していたが、このような構成に限定されない。天井壁22aに隣接して配置される断熱材60を支持できればよく、例えば、図7に示すように、支持ピン92と支持部材94を備えていてもよい。図7では、天井壁22aに隣接して配置される断熱材60は、6枚の断熱ボード62a〜62fで構成されており、最も内側に配置される断熱ボード62fの厚みは、他の断熱ボード62a〜62eの厚みより大きくされている。支持ピン92は、天井壁22aに隣接して配置される複数の断熱ボード62a〜62f内に、積層方向(すなわち、上下方向)に沿って配置される。詳細には、支持ピン92は、天井壁22aから、複数の断熱ボード62a〜62eを貫通し、最も空間24側の断熱ボード62fの内部まで位置している。すなわち、支持ピン92は、空間24まで達していない。支持ピン92の天井壁22a側の端部は、炉体20の外部で天井壁22aに固定されている。支持ピン90の空間24側の端部は、最も内側に配置される断熱ボード62fの内部で、支持部材94に固定されている。支持ピン92は、搬送ローラ52の軸線方向に複数配置されると共に、搬送方向(すなわち、X方向)に沿って熱処理炉10全体に亘り複数配置される。支持部材94は、天井壁22aに隣接して配置される断熱材60のうち、最も内側に配置される断熱ボード62fの内部に配置され、断熱ボード62fと一体化している。支持部材94は、支持ピン92の下方で、搬送方向(すなわち、X方向)に沿って伸びている。支持部材94には、複数の支持ピン92の下端部が固定されている。支持ピン92及び支持部材94によって、天井壁22aと平行に隣接して配置される、すなわち、空間24の上方に配置される断熱材60を支持することができる。
(実施例2)
上記の実施例1では、断熱材60は断熱ボード62によって構成されているが、このような構成に限定されない。例えば、図8に示すように、断熱材160は、断熱ボード162と煉瓦168によって構成されていてもよい。なお、本実施例では、断熱材160及び支持部材170の構成が、実施例1の断熱材60及び支持部材70と相違しており、その他の構成は略一致している。そこで、実施例1の熱処理炉10と同一の構成については、その説明を省略する。
図8に示すように、本実施例の熱処理炉110には、炉体120の内表面を覆うように、断熱材160が配置されている。断熱材160は、複数の平板状の断熱ボード162と、煉瓦168によって構成されている。複数の断熱ボード162は積層しており、最も外側に配置される断熱ボード162は、炉体120(すなわち、天井壁22a、底壁22b、側壁22c〜22f)に接触して配置されている。煉瓦168は、複数の断熱ボード162の内側に配置されている。具体的には、煉瓦168は、最も内側の断熱ボード162の内側を覆うように積み上げられている。以下では、複数の断熱ボード162の内側に配置された複数の煉瓦(ただし、後述の支持部材170を除く)をまとめて「煉瓦168」と称する。
側壁22eと平行に配置される断熱ボード162を覆う煉瓦168と、側壁22fと平行に配置される断熱ボード162を覆う煉瓦168は離間しており、両者の間に空間124が設けられる。図示はされていないが、側壁22c、22dの内表面にも、側壁22e、22fと同様に、複数の断熱ボード162と煉瓦168が配置され、側壁22c、22dと平行に配置される断熱ボード162を覆う煉瓦168の間には空間124が設けられている。同様に、天井壁22aと底壁22b(すなわち、炉体20のXY平面に平行な外壁)の内表面には、複数の断熱ボード162と煉瓦168が配置される。詳細には、天井壁22aの内表面に配置される煉瓦168は、その中央部分が上方(すなわち、+Z方向)に向かって突出するように湾曲して配置されている。これにより、上方に配置される煉瓦168は、隣接する煉瓦168同士によって支持される。天井壁22aと煉瓦168との間に配置される断熱ボード162は、隣接する煉瓦168の上面の形状に倣い、中央部分(すなわち、Y方向の中央部分)が上方に突出している。天井壁22aの近傍に配置される断熱ボード162を覆う煉瓦168と、底壁22bと平行に配置される断熱ボード162を覆う煉瓦168は離間しており、両者の間に空間124が設けられる。したがって、略直方体状の空間124は、その6面を煉瓦168で囲まれている。なお、天井壁22aの近傍に配置される複数の断熱ボード162は、実施例1と同様、支持ピンによって支持されていてもよい。
搬送ローラ52の端部は、断熱材160(すなわち、断熱ボード162と煉瓦168)と側壁22e、22fを貫通して炉体120外に突出している。このため、断熱材160(すなわち、断熱ボード162と煉瓦168)には、搬送ローラ52を貫通させるための貫通孔が設けられている。貫通孔の上部に位置する煉瓦168を適切に支持するために、煉瓦168内には支持部材170が設けられている。なお、図8では図示を省略しているが、貫通孔の上部に位置する断熱ボード162を支持するために、断熱ボード162には、補強材80が配置されている。また、断熱ボード162内には、実施例1のチューブ状の支持部材70が配置されていてもよい。
支持部材170について説明する。支持部材170は、側壁22e、22fと平行に配置される断熱ボード162を覆う煉瓦168内に配置される。以下では、支持部材170より上方に位置する煉瓦168を上側煉瓦168aと称し、支持部材170より下方に位置する煉瓦168を下側煉瓦168bと称することがある(図9及び図10参照)。したがって、支持部材170は、上側煉瓦168aと下側煉瓦168bとの間に配置されている。支持部材170は、煉瓦168より機械的強度の高い材料で形成されている。具体的には、機械的強度とは、圧縮に対する強度(圧縮強さ)を示す。支持部材170の種類は、特に限定されない。例えば、支持部材170は、煉瓦168より機械的強度の高い材料で形成される煉瓦や、セラミック製のブロックであってもよい。また、支持部材170は、煉瓦168と同一の材料で形成され、煉瓦168より気孔率が低い(すなわち、気密性が高い)煉瓦(例えば、気孔率57%のHiアルミナバブル煉瓦等の耐火断熱煉瓦)であってもよい。また、支持部材170は、煉瓦168より機械的強度の高い材料で形成されると共に、煉瓦168より気孔率が低い煉瓦であってもよい。また、支持部材170の種類は、熱処理炉110で熱処理する被処理物12の種類、被処理物12の質量、搬送ローラ52の径、搬送ローラ52間のピッチ等に応じて適宜選択することができる。
図9及び図10に示すように、支持部材170は、その外形が略直方体であり、貫通孔174を有している。支持部材170の軸線方向(すなわち、Y方向)の寸法は、煉瓦168のY方向の寸法と略一致しており、支持部材170は、煉瓦168に対してY方向の位置が一致するように配置されている。支持部材170は、軸線方向(すなわち、Y方向)に沿って見たときに、その外形が略正方形であり、貫通孔174も、軸線方向(すなわち、Y方向)に沿って見たときに、略正方形である。別言すると、支持部材170は、上面170aと下面170bと2つの側面170cによって構成されており、貫通孔174は、上面170aと下面170bと2つの側面170cで囲まれる空間である。上面170aと下面170bは、略水平であり、上側煉瓦168aの下面及び下側煉瓦168bの上面と略平行に配置されている。2つの側面170cは、上面170aと下面170b(及び、上側煉瓦168aの下面及び下側煉瓦168bの上面)に直交している。上面170aと下面170bと2つの側面170cは、略同一の厚みを有している。また、支持部材170では、外面角部及び内面角部が、面取り形状あるいはR形状であってもよい。貫通孔174は、搬送ローラ52の径より大きくされている。支持部材170に貫通孔174内には、搬送ローラ52が配置される。
また、支持部材170は、搬送方向(すなわち、X方向)に離間して配置される。隣接して配置される2つの支持部材170の間にも、搬送ローラ52が配置される。隣接する支持部材170間に配置される搬送ローラ52は、支持部材170の貫通孔174内に配置されることなく、上側煉瓦168aと下側煉瓦168bの間に配置される。したがって、複数の搬送ローラ52のうち、一部の搬送ローラ52は支持部材170内に設けられる貫通孔174を貫通して配置され、残りの搬送ローラ52は支持部材170を介することなく配置される。
本実施例では、隣接して配置される2つの支持部材170の間には、2本の搬送ローラ52が配置されている。支持部材170内に配置される搬送ローラ52(搬送ローラ52a)と、支持部材170を介することなく配置される搬送ローラ52(搬送ローラ52b)との間のピッチP3は、隣接する支持部材170間に配置される2本の搬送ローラ52b間のピッチP4より広い。すなわち、複数の搬送ローラ52は、搬送方向に不等間隔で配置されている。搬送ローラ52b間のピッチP4を狭くすることによって、被処理物12を支持する搬送ローラ52の本数が増加し、質量が大きい被処理物12を搬送することができる。
また、ピッチP3、P4の大きさについては、1つの被処理物12を4本以上の搬送ローラ52で常に支持できるように設定する。4本以上の搬送ローラ52で被処理物12を支持することによって、仮に搬送ローラ52が1本折れてしまった場合にも、3本以上の搬送ローラ52で被処理物12の底面の半分以上の領域を支持することができ、被処理物12が搬送面から落下することを回避することができる。例えば、本実施例では、被処理物12の搬送方向の寸法は315mmであり、ピッチP3は82mmであり、ピッチP4は65mmである。支持部材170の側面170cを介して配置される搬送ローラ52a、52b間のピッチP3を広くし、支持部材170を介することなく配置される搬送ローラ52b間のピッチP4を狭くすることで、支持部材170の側面170cと搬送ローラ52a、52bとの隙間を確保したうえで、被処理物12を4本の搬送ローラ52で支持することが可能になる。具体的には、搬送ローラ52a、52bの外径Rが55mmであり、支持部材170の壁厚み(すなわち、支持部材170と貫通孔174との間の厚み)Lが15mmである場合、搬送ローラ52a、52bと支持部材170の側面170cとの隙間Cは6mm確保できる。すなわち、図10に示すように、P3=1/2R+C+L+C+1/2Rであるため、C={P3−(R+L)}/2={82−(55+15)}÷2=6mmと算出される。一方、搬送ローラ52aと搬送ローラbを交互に配置し、複数の搬送ローラ52a、52bをピッチP3の等間隔で配置した場合、本実施例と同様にピッチP3を82mmにすると、315mmの被処理物12を常に4本以上の搬送ローラ52a、52bで支持できなくなるため、ピッチP3の間隔を82mmより狭くする必要がある。具体的には、搬送ローラ52a、52bのピッチP3は、最大でも78.5mmとなり、確保できる搬送ローラ52a、52bと支持部材170の側面170cとの隙間Cは、4.25mmである。すなわち、C={P3−(R+L)}/2={78.5−(55+15)}÷2=4.25mmと算出される。熱処理炉110では、炉内の断熱材160は、炉体120内の昇温及び降温を繰り返すことにより配置位置がずれることがある。また、搬送ローラ52は反りを有することがある。本実施例では、搬送ローラ52と支持部材170との隙間を確保できるため、被処理物12の搬送時に搬送ローラ52が支持部材170に干渉することを抑制でき、搬送ローラ52を安定的に回転させることができる。また、搬送ローラ52と支持部材170との隙間を確保することにより、搬送ローラ52の径を大きくして、より質量の大きい被処理物12を搬送することができたり、支持部材170の壁厚みを大きくして、上側煉瓦168aを支持するための強度を向上させたりすることができる。
また、支持部材170上には、支持板176が配置されている。すなわち、支持板176は、支持部材170の上面170aに接触して配置されている。支持板176は、搬送方向(すなわち、X方向)に伸びており、搬送方向に離間して隣接する2つ以上の支持部材170の上面170aに接触するように配置される。支持板176は、耐ベンド性に優れた材料で形成されており、本実施例では、セラミック板である。支持板176上には、上側煉瓦168aが配置される。したがって、上側煉瓦168aは、支持板176を介して支持部材170上に配置される。支持部材170は搬送方向に離間しているため、支持部材170の上面170a上に直接上側煉瓦168aを配置し難い。すなわち、支持部材170の上面170a上に直接上側煉瓦168aを配置しようとすると、支持部材170を配置する間隔に合わせて上側煉瓦168aの寸法を設定しなければならない。支持板176を配置することによって、上側煉瓦168aの寸法の自由度が向上し、支持部材170上に上側煉瓦168aを配置し易くすることができる。
本実施例では、支持部材170が煉瓦168より機械的強度の高い部材で形成されている。これにより、本実施例においても、搬送ローラ52の端部が断熱材160(すなわち、断熱ボード162及び煉瓦168)を貫通して炉体120外まで突出しても、支持部材170によって、支持部材170より上方に位置する上側煉瓦168aを支持することができる。
なお、本実施例では、隣接して配置される2つの支持部材170の間に2本の搬送ローラ52を配置しているが、このような構成に限定されない。支持部材170によって上側煉瓦168aを支持できれば、隣接して配置される2つの支持部材170の間に3本以上の搬送ローラ52を配置してもよい。
(実施例3)
上記の実施例2では、支持部材170が搬送方向に離間して配置されていたが、このような構成に限定されない。例えば、図11に示すように、支持部材270は、搬送方向に連続して配置されていてもよい。なお、本実施例では、支持部材270の構成が、実施例2の支持部材170と相違しており、その他の構成は略一致している。そこで、実施例2の熱処理炉110と同一の構成については、その説明を省略する。
図11に示すように、支持部材270は、上側煉瓦168aと下側煉瓦168bの間に配置されている。支持部材270は、煉瓦168より機械的強度の高い煉瓦で形成されている。なお、本実施例の支持部材270に用いる煉瓦としては、上記の実施例2の支持部材170と同様の煉瓦を用いることができるため、詳細な説明は省略する。支持部材270は、搬送方向(すなわち、X方向)に連続して設置されている。支持部材270は、搬送方向に配置される複数の耐火煉瓦によって構成されている。以下では、搬送方向に配置された複数の耐火煉瓦をまとめて「支持部材270」と称する。
支持部材270は、大きさの異なる第1貫通孔274と第2貫通孔276を有している。第1貫通孔274は、搬送ローラ52の軸線に沿って見たときに、略正方形であり、搬送ローラ52の径より大きくされている。第1貫通孔274内には、搬送ローラ52が1本配置される。第2貫通孔276は、搬送ローラ52の軸線に沿って見たときに、略長方形であり、搬送方向の寸法(すなわち、X方向の寸法)が高さ方向の寸法(すなわち、Z方向の寸法)より大きくされている。具体的には、第2貫通孔276の搬送方向の寸法は、搬送ローラ52の径の2倍より大きくされており、高さ方向の寸法は、搬送ローラ52の径より大きくされている。第2貫通孔276内には搬送ローラ52が搬送方向に2本配置される。支持部材270は、上面270aと、下面270bと、第1貫通孔274と第2貫通孔276との間に配置される支持部270cによって構成されている。上面270aと下面270bと支持部270cは、略同一の厚みを有している。支持部材270では、第1貫通孔274及び第2貫通孔276の角部がr形状となるように加工されている。
第1貫通孔274内に配置される搬送ローラ52(以下、搬送ローラ52cともいう)と、第2貫通孔276内に配置される搬送ローラ52(以下、搬送ローラ52dともいう)との間のピッチP5は、同一の第2貫通孔276内に配置される搬送ローラ52d間のピッチP6より広い。すなわち、複数の搬送ローラ52は、搬送方向に不等間隔で配置されている。搬送ローラ52d間のピッチを狭くすることによって、1つの被処理物12を支持する搬送ローラ52の数を減少させることなく、搬送ローラ52と支持部材270の支持部270cとの隙間を確保して、搬送ローラ52の支持部材170への干渉を抑制したり、搬送ローラ52の径を大きくして、より質量の大きい被処理物12を搬送したりすることができる。
本実施例においても、支持部材270が煉瓦168より機械的強度の高い部材で形成されている。これにより、搬送ローラ52の端部が断熱材60(すなわち、断熱ボード162及び煉瓦168)を貫通して炉体外まで突出しても、支持部材270によって、支持部材270より上方に位置する上側煉瓦168aを支持することができる。
なお、本実施例では、第2貫通孔276は、その内部に2本の搬送ローラ52を配置するように構成されていたが、このような構成に限定されない。支持部材270によって上側煉瓦168aを支持できれば、第2貫通孔は、その内部に3本以上の搬送ローラ52を配置するように構成されていてもよい。
実施例で説明した熱処理炉110に関する留意点を述べる。実施例の上側煉瓦168aは、「上部部材」の一例であり、下側煉瓦168bは、「下部部材」の一例であり、側面170cは、「支持部」の一例である。
以上、本明細書に開示の技術の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。