以下、本実施形態を、図面を用いて説明する。説明には、適宜、相互に直交するX軸、Y軸、Z軸からなるXYZ座標系を用いる。
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態に係るエレベータ装置10の斜視図である。エレベータ装置10は、マンションやビルなどの建築物に設けられた昇降路100の内部に配置されている。図1に示されるように、エレベータ装置10は、かご31、カウンタウエイト32、昇降モータ40、ガイドレール21〜24、制御盤70を有している。
ガイドレール21〜24それぞれは、長手方向をZ軸方向とする部材である。ガイドレール21,22は、かご31を昇降自在にガイドするための一対の部材である。また、ガイドレール23,24は、カウンタウエイト32を昇降自在にガイドするための一対の部材である。ガイドレール21とガイドレール22は、Y軸方向に離間して配置されている。また、ガイドレール23,24も、同様にY軸方向に相互に離間して配置されている。図1では、カウンタウエイト32用のガイドレール23,24が、かご31用のガイドレール21,22に対してX軸方向に離間して配置されている。ただし、ガイドレール21〜24の配置は、図1に示される配置に限定はされない。
かご31は、乗客を収容してガイドレール21,22に沿って昇降路100を昇降するユニットである。かご31は、ガイドレール21,22の間に配置され、ガイドレール21,22に対して、上下方向に移動可能に取り付けられている。かご31の側面には、内部空間に出入りするための扉(不図示)が設けられている。図2は、ガイドレール21〜24、かご31、及びカウンタウエイト32を模式的に示す図である。図2に示されるように、かご31は、ガイドシュー31aを介して、ガイドレール21,22に摺動可能に設けられる。
図1に戻り、カウンタウエイト32は、ガイドレール23,24に対して、上下方向に移動可能に取り付けられている。カウンタウエイト32の重量は、かご31の重量に対して所定の割合になるように調整されている。図2に示されるように、カウンタウエイト32も、ガイドシュー32aを介して、ガイドレール23,24に摺動可能に設けられる。以上から、かご31およびカウンタウエイト32は、移動体としてガイドレールに沿って、昇降路100を昇降する。
昇降モータ40は、かご31を昇降させるためのモータである。昇降モータ40は、昇降路100の上部に、回転軸がY軸に平行になるように配置されている。昇降モータ40の回転軸にはプーリー42が固定されている。
図1に示されるように、昇降モータ40のプーリー42には、ワイヤ60が巻き回されている。ワイヤ60は、一端が、かご31に固定され、他端が、カウンタウエイト32に固定されている。
制御盤70には、昇降モータ40や、かご31に設けられた機器を制御するための制御装置が収容されている。
図3は、エレベータ装置10の制御系を示すブロック図である。制御系は、制御ユニット80と駆動ユニット90、操作パネル311、及び加速度センサ51,52、親機600から構成される。制御ユニット80と駆動ユニット90とは制御盤70に収容される。
駆動ユニット90は、昇降モータ40に電力を供給するための電源や、インバータなどを備えている。駆動ユニット90は、制御ユニット80からの指示に基づいて、昇降モータ40を駆動する。また、駆動ユニット90は、制御ユニット80からの指示に基づいて、かご31に設けられた扉や、各階の乗り場に設けられた扉を開閉する。
操作パネル311は、かご31の内壁に設けられている。操作パネル311は、かご31の乗客から、行き先階などを受け付けるためのインタフェースである。乗客は、操作パネル311を操作することで、制御ユニット80に、行き先階などを通知することができる。操作パネル311は、図1に示されるように、ケーブル71を介して、制御盤70に収容される制御ユニット80に接続されている。
図2に示されるように、加速度センサ51は、かご31の上面に取り付けられている。加速度センサ51は、少なくとも鉛直軸に直交するX軸方向及びY軸方向、即ち、水平方向の加速度を検出する。加速度センサ51は、例えばかご31に配線されている商用電源によって動作する。加速度センサ51は、図1に示すケーブル71を用いて、検出した加速度に応じた値を示す電圧信号Svを制御ユニット80に送信する。
図2に示されるように、加速度センサ52は、カウンタウエイト32の上面に取り付けられている。加速度センサ52も、加速度センサ51と同様に、少なくとも鉛直軸に直交するX軸方向及びY軸方向、即ち、水平方向の加速度を検出する。加速度センサ52は、例えばカウンタウエイト32と一体的に設けられるバッテリから供給される電力によって動作する。加速度センサ52は、無線通信機能を有し、検出した加速度に応じた値を示す電圧信号Sdを親機600へ送信する。
図2に示されるように、親機600は、制御盤70の下面に取り付けられている。親機600は、加速度センサ52から受信した無線信号をデジタル信号に変換して制御盤70に供給する。
図4は、制御ユニット80のブロック図である。制御ユニット80は、CPU(Central Processing Unit)81、主記憶部82、補助記憶部83、及びインタフェース部84を有するコンピュータである。また、制御ユニット80は、LED88を有している。
CPU81は、補助記憶部83に記憶されているプログラムに従って、後述する処理を実行する。
主記憶部82は、RAM(Random Access Memory)等を有している。主記憶部82は、CPU81の作業領域として用いられる。
補助記憶部83は、ROM(Read Only Memory)、半導体メモリ等の不揮発性メモリを有している。補助記憶部83は、CPU81が実行するプログラム、及び各種パラメータなどを記憶している。
インタフェース部84は、シリアルインタフェース、パラレルインタフェース、無線LANインタフェースなどを有している。操作パネル311,親機600及び駆動ユニット90は、インタフェース部84を介して、CPU81に接続される。また、インタフェース部84は、例えばインターネットなどのネットワーク120を介して管理センター等に設置されている中央演算装置800に接続されている。
LED88は、作業者による点検作業が開始されることを示す信号が操作パネル311から入力された後、作業者による点検作業が終了したことを示す信号が操作パネル311から入力されるまでの期間に、加速度センサ52からデータを受信していることを表示する表示装置である。加速度センサ52はバッテリで動作するので、バッテリの残量がなくなって加速度センサ52が動作しないことがある。点検作業中に加速度センサ52から信号を受信した場合にLED88を点灯させることにより、加速度センサ52の動作を確認することができるので、点検作業の効率を上げることができる。LED88は、図示しないスイッチとバス85を介してCPU81に接続されている。作業者は、点検作業をスタートする際に、操作パネル311から点検作業をスタートすることを示す信号を入力する。また、作業者は、点検作業を終了する際に、操作パネル311から点検作業が終了したことを示す信号を入力する。CPU81は、点検作業をスタートすることを示す信号が入力されてから点検作業が終了したことを示す信号が入力されるまでの期間、作業中であることを示すフラグを立てる。CPU81は、このフラグと、加速度センサ52から信号を受信したことを示す信号との論理和(AND)をとることにより、スイッチをオン・オフ制御してLED88を点灯もしくは点滅させる。CPU81は、通常時においては、消費電力を削減するためにLED88を消灯する。
上述のように構成されるエレベータ装置10では、CPU81が、操作パネル311及び親機600からの入力に基づいて、駆動ユニット90を制御する。例えば、CPU81が、駆動ユニット90を介して、昇降モータ40を正転させると、かご31が上昇するとともに、カウンタウエイト32が下降する。また、CPU81が、駆動ユニット90を介して、昇降モータ40を逆転させると、かご31が下降するとともに、カウンタウエイト32が上昇する。
CPU81は、地震の発生に備えて、加速度センサ51,52から送信される加速度データに基づいて、エレベータ装置10の状態を監視する監視処理を実行する。以下、監視処理について、図5及び図6を参照しつつ説明する。図5及び図6には、CPU81が実行する一連の処理を表すフローチャートが示されている。CPU81は、制御ユニット80が起動されたタイミングで、図5及び図6のフローチャートに示される処理を順次実行する。
以下の説明では、かご31の加速度センサ51から供給される加速度データに基づく処理について説明する。カウンタウエイト32の加速度センサ52から供給される加速度データの処理についての説明は、かご31の加速度センサ51から供給される加速度データに基づく処理と同様の説明となるので省略する。また、以下の説明では、ガイドレール21に対するかご31の揺れの影響を中心に説明する。ガイドレール22に対するかご31の揺れの影響、及びガイドレール23,24に対するカウンタウエイト32の揺れの影響についての説明は、ガイドレール21に対するかご31の揺れの影響と同様の説明になるので省略する。
かご31の加速度センサ51は、加速度を示す電圧信号Svを常時制御ユニット80に送信している。CPU81は、受信した電圧信号Svをサンプリングする。CPU81は、電圧信号Svを取得するサンプリング周期をF1に設定する(ステップS101)。サンプリング周期F1は、例えば、15Hz程度である。
次に、CPU81は、電圧信号Svと閾値TH1とを比較する(ステップS102)。閾値TH1は、例えば、震度1の揺れが生じたときに加速度センサ51から出力される出力電圧と等しい。図7は、電圧信号Svの一例を示す図である。図7に示されるように、地震が発生したときには、加速度センサ51が取り付けられたかご31の揺れに応じた値の電圧信号Svが、加速度センサ51から出力される。
CPU81は、電圧信号Svの値が閾値TH1よりも大きくなった場合には(ステップS102:Yes)、電圧信号Svを取得するサンプリング周期をF2に設定する(ステップS103)。サンプリング周期F2は、例えば、100Hz程度である。サンプリング周期を変更する理由は、平常時のCPU81の処理を軽くするとともに、地震発生時の詳細な加速度データを取得するためである。また、CPU81は、図7に示されるように、電圧信号Svが閾値TH1以上となった時刻t1を地震開始時刻として主記憶部82に記憶する。
エレベータ装置10では、加速度センサ51から供給される出力信号は電圧信号Svである。このため、CPU81は、電圧信号Svの値vを、関数f(v)へ代入することにより加速度aを計算する(ステップS104)。CPU81は、F2のサンプリング周期で取得した加速度aの時系列データを主記憶部82に記憶する。
CPU81は、昇降モータ40を制御してかご31を昇降させている。したがって、CPU81は、加速度センサ51が加速度aのデータを制御ユニット80に送信したときの、かご31のビル内における高さ位置を把握している。CPU81は、加速度aの時系列データと加速度データを取得したときのビル内における高さ位置の情報とをひも付けて主記憶部82に記憶する。ビル内における高さ位置の情報とは、例えば、3階、8階、12階等の情報である。
次に、CPU81は、電圧信号Svと閾値TH1とを比較する(ステップS105)。CPU81は、電圧信号Svが閾値TH1以上である場合(ステップS105:Yes)、ステップS102からステップS105までの処理を繰り返す。
CPU81は、電圧信号Svが閾値TH1未満である場合(ステップS105:No)、一連の地震が収まったか否かを判断する。具体的には、CPU81は、電圧信号Svが閾値TH1未満である時間が所定時間Δt以上継続したか否かを判断する(ステップS106)。Δtは、例えば、10秒程度である。CPU81は、電圧信号Svが閾値TH1未満である状態の継続時間がΔt未満である場合(ステップS106:No)、処理をステップS105に遷移させる。一方、CPU81は、継続時間がΔt以上である場合(ステップS106:Yes)、図7に示される一連の地震が終了した終了時刻として時刻t2を主記憶部82に記憶し、処理をステップS107に遷移させる。
次に、CPU81は、図8に示される地震開始時刻t1から地震終了時刻t2までの期間における加速度の最大値Amaxを主記憶部82から取得する(ステップS107)。
次に、CPU81は、地震開始時刻t1から地震終了時刻t2までの期間のカイン値を計算する(ステップS108)。カイン値は、瞬間的な加速度aに時間を掛けたもので、地震の強さを示す値である。カイン値をG、加速度の時系列データをa(t)、地震開始時刻をt1、地震終了時刻をt2とすると、カイン値Gは式1を用いて計算することができる。
図9は、カイン値を表すグラフである。図9に示されるように、カイン値Gは、加速度aを地震開始時刻t1から地震終了時刻t2まで時間積分することにより求めた値であるので、地震継続時間が長いほど大きな値になる。
CPU81は、求めた加速度の最大値Amax及びカイン値Gを主記憶部82に記憶する(ステップS109)。
次に、CPU81は、加速度の最大値Amax及びカイン値Gに基づいて、エレベータ装置10の自動診断運転を実施するか、運転を停止したままで作業員による点検作業を要請するかを判断する解析処理を行う(ステップS110)。解析処理については、図6に示すフローチャートを参照しながら説明する。
まず、CPU81は、基準値P1(第1基準値)を設定する(ステップS201)。基準値P1は、ガイドレール21の耐力限界によって決まる値である。かご31の地震に起因する加速度が大きいほど、かご31がガイドレール21に与えるダメージは大きくなる。基準値P1は、かご31の瞬間的な加速度に起因するガイドレール21のダメージによってエレベータ装置10の安全運転に支障が出るか否かを判断するための基準値である。
地震によるビルの揺れは、ビルの高さ位置によって異なる。例えば、最も揺れが大きいビルの高さ位置が、最上階であるビルもあれば、中間の階であるビルもある。最も揺れが大きいビルの高さ位置は、ビルの共振周波数等に関連している。
ビルの耐力限界(耐震強度)によって決まる基準値がビルの高さ位置のパラメータを持たない定数Kで付与されている場合、地震による揺れが大きくなる高さ位置ほど基準値の値を下げて、ガイドレール21に対する加速度aの影響を判断する必要がある。
制御ユニット80は、図10に示されるように、ビルの高さ位置によって基準値P1を補正する係数αを主記憶部82に有している。係数αは、ビルの共振周波数を考慮したシミュレーションで求めた値である。ここでは、ビルが20階建てであり、係数αが階ごとに異なる値に設定されている場合について説明する。ビルの階によって揺れ方が異なるので、ビルの1階用の係数α1とビルの2階用の係数α2とは異なる値となる。同様にビルの20階用の係数α20も他の階の係数αと異なる値となる。
CPU81は、加速度aとひも付けて主記憶部82に記憶されているビルの高さ情報に基づいて、係数αを取得する。例えば、加速度aとひも付けられているビルの高さ情報が20階を示していた場合、CPU81は、図10において、主記憶部82からビルの20階用の係数α20を取得する。また、加速度aとひも付けられているビルの高さ情報が2階を示していた場合、CPU81は、図10において、主記憶部82からビルの2階用の係数α2を取得する。加速度aとひも付けられているビルの高さ情報が20階を示していた場合、CPU81は、基準値P1を式2に基づいて設定する。K1は、ビルの耐力限界によって決まる定数である。
P1=K1×α20 (式2)
次に、CPU81は、基準値P2(第2基準値)を設定する(ステップS202)。基準値P2は、ガイドレール21の耐力限界によって決まる値である。ガイドレール21に与えるダメージは、加速度の瞬時的な大きさだけでなく、地震の継続時間も影響する。かご31の地震に起因する揺れの継続時間が長いほど地震による揺れのエネルギーは大きくなり、ガイドレール21に与えるダメージは大きくなる。基準値P2は、かご31の揺れエネルギーに起因するガイドレール21のダメージによってエレベータ装置10の安全運転に支障が出るか否かを判断するための基準値である。かご31の揺れエネルギーは、かご31の加速度を地震継続時間で時間積分したカイン値で表すことができる。
制御ユニット80は、図10に示されるように、ビルの高さ位置によって基準値P2を補正する係数βを主記憶部82に有している。係数βは、ビルの共振周波数を考慮したシミュレーションで求めた値である。係数βは、階ごとに異なる値に設定されている。ビルの階によって揺れ方が異なるので、ビルの1階用の係数β1とビルの2階用の係数β2とは異なる値となる。同様にビルの20階用の係数β20も他の階の係数αと異なる値となる。
q CPU81は、加速度aとひも付けて主記憶部82に記憶されているビルの高さ情報に基づいて、係数βを取得する。例えば、加速度aとひも付けられているビルの高さ情報が20階を示していた場合、CPU81は、図10において、主記憶部82からビルの20階用の係数β20を取得する。また、加速度aとひも付けられているビルの高さ情報が2階を示していた場合、CPU81は、図10において、主記憶部82からビルの2階用の係数β2を取得する。加速度aとひも付けられているビルの高さ情報が20階を示していた場合、CPU81は、基準値P2を式3に基づいて設定する。K2は、ビルの耐力限界によって決まる定数である。
P2=K2×β20 (式3)
CPU81は、加速度の最大値Amaxと基準値P1、カイン値Gと基準値P2、及び図11に示されるオペレーション内容に基づいて、解析処理を行う。以下詳細に説明する。
CPU81は、ステップS107で求めた加速度の最大値AmaxとステップS201で設定した基準値P1とを比較する(ステップS203)。CPU81は、加速度の最大値Amaxが基準値P1未満である場合(ステップS203:Yes)、ステップS108で求めたカイン値GとステップS202で設定した基準値P2とを比較する(ステップS204)。
CPU81は、カイン値Gが基準値P2未満である場合(ステップS204:Yes)、自動診断運転が即時実施可能であると判断し、処理をステップS208に移行する。この条件は、図11のケース1に該当する。
また、CPU81は、カイン値Gが基準値P2以上である場合(ステップS204:No)、待機時間T1経過後に自動診断運転の実施が可能であると判断し、処理をステップS208に移行する(ステップS205)。この条件は、図11のケース2に該当する。待機時間T1は、かご31及びカウンタウエイト32をけん引するワイヤ60の揺れ幅が、所定の幅に収まるまでの時間である。待機時間T1は、シミュレーションや実験データに基づいて決定され、予め設定されている。待機時間T1は、例えば1分程度である。
一方、CPU81は、加速度の最大値Amaxが基準値P1以上である場合(ステップS203:No)、カイン値と基準値P2とを比較する(ステップS206)。
CPU81は、カイン値Gが基準値P2未満である場合(ステップS206:Yes)、待機時間T2経過後に自動診断運転の実施が可能であると判断し、処理をステップS208に移行する(ステップS207)。この条件は、図11のケース3に該当する。待機時間T2は、かご31及びカウンタウエイト32をけん引するワイヤ60の揺れ幅が、所定の幅に収まるまでの時間である。待機時間T2は、加速度の最大値Amaxを基準値P1よりも大きくしたシミュレーションや実験データに基づいて決定され、予め設定されている。図11のケース3におけるカイン値Gは、ケース2におけるカイン値Gよりも大きくなるので、かご31及びカウンタウエイト32に加わるエネルギーが大きくなり、ワイヤ60の揺れが収まるまでの時間も長くなる。したがって、待機時間T2を待機時間T1よりも長くする。待機時間T2は、例えば3分程度である。
CPU81は、カイン値Gが基準値P2以上である場合(ステップS206:No)、自動診断運転を実施することが不可能であると判断し、エレベータ装置10の運転の停止を継続する(ステップS211)。そして、作業員による点検作業が必要であることを、ネットワーク120を介して、例えば外部の管理センター等へ通知する。この条件は、図11のケース4に該当する。
CPU81は、自動診断運転を実施することが可能であると判断すると、自動診断運転を実施する(ステップS208)。自動診断運転とは、かご31などの機器を実際に運転して、ガイドレール21〜24の曲がりや歪みなどの異常や、昇降モータ40の動作不良などの異常の発生を検出するための診断運転である。
CPU81は、自動診断運転を実施して、エレベータ装置10に異常が発生していると判断した場合には(ステップS209:No)、エレベータ装置10の運転を停止して、当該運転の停止を継続する(ステップS211)。そして、作業員による点検作業が必要であることを、ネットワーク120を介して、例えば外部の管理センター等へ通知する。
一方、CPU81は、自動診断運転を実施して、エレベータ装置10に異常が発生していないと判断した場合には(ステップS209:Yes)、エレベータ装置10の通常運転を開始する(ステップS210)。これにより、乗客はエレベータ装置10を利用することが可能になる。
次に、CPU81は、地震継続期間の加速度a、カイン値G、基準値P1,P2(もしくは、係数α、係数β)、解析結果を、ネットワーク120を介して、例えば外部の管理センター等に設置されている中央演算装置800へ通知する(ステップS212)。解析結果とは、ステップS110におけるケース1から4の何れに該当したかの解析処理の結果である。ステップS212の処理を終えると、CPU81は、処理をステップS101に遷移させる。
なお、上記の説明では、かご31の加速度センサ51から供給される加速度データに基づく処理、及び、ガイドレール21に対するかご31の揺れの影響について説明したが、ガイドレール22に対するかご31の揺れの影響、カウンタウエイト32の加速度センサ52から供給される加速度データの処理、及びガイドレール23,24に対するカウンタウエイト32の揺れの影響についても上記と同様の解析を行う。この4通りの解析の中で、図11に示すケース4に該当する解析結果が1つでもあれば、エレベータ装置10は、ケース4に該当するオペレーションを行う。また、ケース4に該当する解析結果はないが、ケース3に該当する解析結果が1つでもあれば、エレベータ装置10は、ケース3に該当するオペレーションを行う。また、ケース4及びケース3に該当する解析結果はないが、ケース2に該当する解析結果が1つでもあれば、エレベータ装置10は、ケース2に該当するオペレーションを行う。
(変形例1)
第1の実施形態では、基準値P1を式2、基準値P2を式3で求める説明をした。エレベータ装置の耐力限界は、駆動年数に応じて弱くなる傾向にある。したがって、式2及び式3における定数K1,K2、係数α、βは、エレベータ装置の稼働年数に応じて、予め設定された割合で小さくなるように変更してもよい。例えば、1年経過するごとに、基準値P1およびP2が1%小さくなるように補正する。
(変形例2)
上記の説明では、加速度の最大値Amaxと基準値P1とを比較して解析処理を行う場合について説明した。しかし、解析処理の仕方はこれに限定されない。例えば、加速度に変えて、かご31やカウンタウエイト32がガイドレール21〜24に与える作用力Fの最大値Fmaxを基準値P3と比較してもよい。基準値P3は、移動体の等価質量mを考慮した値である。
作用力Fは、加速度センサ51,52からの出力によって算出される加速度をaとすると、式4を用いて求めることができる。
F=m×a (式4)
なお、移動体がかご31の場合には、mは、かご31の質量であり、移動体がカウンタウエイト32である場合には、mは、カウンタウエイト32の質量である。
CPU81は、ガイドレールに作用する作用力Fを算出する。図1を参照するとわかるように、例えば、かご31からガイドレール21へ向かう+Y方向の力を作用力F21とする。かご31からガイドレール22へ向かう−Y方向の力を作用力F22とする。また、カウンタウエイト32からガイドレール23へ向かう+Y方向の力を作用力F23とする。カウンタウエイト32からガイドレール24へ向かう−Y方向の力を作用力F24とする。
次に、CPU81は、地震継続期間における作用力F21〜24の最大値を求める。
基準値P3は、式5で求めることができる。
P3=P1×m (式5)
CPU81は、作用力F21〜24の最大値と基準値P3とを比較する。
同様に、カイン値Gと基準値P2との比較に替え、作用力F21〜24それぞれを地震開始時刻t1から地震終了時刻t2の期間で時間積分した力積の最大値と、式6で求める基準値P4とを比較してもよい。
P4=P2×m (式6)
以上説明したように、本実施形態に係るエレベータ装置10では、移動体としてのかご31やカウンタウエイト32に加速度センサ51,52を設けて加速度の最大値Amaxを検知することにより、かご31やカウンタウエイト32がガイドレールに与える瞬間的な作用力の最大値を検知できる。また、地震継続時間内における加速度を時間積分したカイン値を求めることにより、地震の強さを求めることができる。これにより、地震の強さを正確に判断でき、自動診断運転の実施が可能である場合に、時間を要する作業員による点検作業の実施が必要であると誤って判断して、エレベータ装置を長期間待機させることがなくなる。したがって、地震の発生によって停止したエレベータ装置を、早期に復旧することが可能となる。
また、加速度の最大値Amax及びカイン値Gとガイドレールの耐力限界に基づく基準値P1および基準値P2と比較することで、より正確に自動診断運転を実施することが可能か否かを判断することができる。つまり、作業員による点検作業の実施が必要か否かを正確に判断することができる。したがって、エレベータ装置の信頼性を向上させることができる。
また、地震の強さを示すカイン値Gを基準値P2と比較することにより、かご31をけん引するワイヤ60の揺れが収まるまでの時間を推定できる。これにより、より安全に自動診断運転を実施することができる。
また、基準値P1およびP2は、ビルの共振周波数に起因する揺れを考慮して決める。これにより、時間を要する作業員による点検作業の実施が必要であるか否かをより正確に判断できる。そして、必要が無かったにもかかわらず作業員の点検作業を実施することにより、エレベータ装置を長期間待機させることがなくなる。したがって、地震の発生によって停止したエレベータ装置を、早期に復旧することが可能となる。
なお、上記の説明では、最大加速度Amaxを判断する基準値が1個、カイン値Gを判断する基準値が1個の場合について説明したが、それぞれの基準値を複数設けてもよい。これにより、ステップS208の自動診断運転を開始するまでの待機時間を細かく設定でき、通常運転再開までの時間を短縮することができる。
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、駆動年数に応じた変更を除けば、基準値P1及び基準値P2がビルによって固定である場合について説明した。一般に、図12に示すように、基準値P1は、ガイドレールの耐力限界P1Zにマージンを持たせた値に設定されている。図13に示すように、基準値P2も、ガイドレールの耐力限界P2Zにマージンを持たせた値に設定されている。したがって、図11のケース4に該当すると判断されて作業員による点検作業が行われた結果、異常が発見されない場合が多い。作業員による点検には時間がかかるので、通常運転が開始されるまでに要する時間が長くなる。広域地震でケース4に該当するエレベータ装置の台数が多くなると、復旧時間が非常に長くなる。第2の実施形態では、基準値P1,P2の冗長性を削減する方法について図14に示すフローチャートを参照して説明する。
第2の実施形態に係るエレベータ装置10の構成は、第1の実施形態に係るエレベータ装置10の構成とほぼ同じであるが、基準値P1,P2を補正する機能を有している。図5及び図6に示したフローチャートも同じであるが、ステップS212の後に、図14に示す基準値P1,P2の補正処理が追加される。
第1の実施形態の図11のケース4に該当し(ステップS301:Yes)、点検作業の結果、エレベータ装置10に異常がなかった場合(ステップS302:No)、作業員は、操作パネル311から異常がなかったことを入力する(ステップS303)。
作業員によりエレベータ装置10に異常がなかったという情報が入力されると、CPU81は、基準値P1,P2を予め設定された割合で大きくなるように補正処理を行う(ステップS304)。具体的には、CPU81は、基準値P1,P2に所定の値をかける補正処理を行う。所定の値は、例えば1.03等の1.00より大きな値である。補正後の基準値P1,P2は補正前の基準値P1,P2よりも大きくなるので、基準値P1,P2の冗長性を削減することになる。
次に、CPU81は、補正後の基準値P1,P2が図12及び図13に示すガイドレールの耐力限界P1Z,P2Z以下であるか否かを判断する(ステップS305)。CPU81は、補正後の基準値P1,P2のいずれもがガイドレールの耐力限界P1Z,P2Z以下である場合(ステップS305:Yes)、補正後の値を基準値P1,P2として更新する(ステップS306)。
一方、CPU81は、ケース4に該当しない場合(ステップS301:No)、点検で異常が発見された場合(ステップS302)、補正後の基準値P1,P2が耐力限界P1Z,P2Zより大きくなった場合(ステップS303:No)、基準値P1及び基準値P2の補正処理をしないで、係数補正処理を終了する。
第2の実施形態に係るエレベータ装置は、作業者による点検作業の結果エレベータ装置に異常がなかった場合、予め設定された割合で基準値が大きくなるように補正する。これにより、基準値P1,P2に含まれている冗長なマージンが徐々に削減され、基準値P1およびP2が適正な値に近づいていく。これにより、必要が無かったにもかかわらず作業員の点検作業を実施することにより、エレベータ装置を長期間待機させることが少なくなる。したがって、地震の発生によって停止したエレベータ装置を、早期に復旧することが可能となる。
(第3の実施形態)
第2の実施形態では、自装置の基準値P1,P2のみを補正する場合について説明した。第3の実施形態では、任意のエレベータ装置の基準値P1,P2が補正された場合、ビルの高さや構造が同じビルに設置されている他のエレベータ装置にも変更された基準値P1,P2を適用する技術について説明する。
図15は、第3の実施形態に係るエレベータシステムの構成図である。エレベータシステムでは、ネットワーク120に複数のエレベータ装置10と中央演算装置800が接続されている。ネットワーク120に接続されているエレベータ装置10は、同一地域に配置されているエレベータ装置に限定されない。例えば、北海道、関東、関西、九州等に配置されているエレベータ装置も含まれる。
中央演算装置800は、例えば、管理センターに配置されている。中央演算装置800は、物理的には、CPU、主記憶部、補助記憶部、及びインタフェース部を有するコンピュータである。CPUは、補助記憶部に記憶されているプログラムに従って、後述する処理を実行する。主記憶部は、RAM等を有し、CPUの作業領域として用いられる。補助記憶部は、ROM、半導体メモリ等の不揮発性メモリを有している。補助記憶部は、CPUが実行するプログラム、及び各種パラメータなどを記憶している。
図16は、中央演算装置800のブロック図である。中央演算装置800は、インタフェース部810、分類部820、記憶部830、基準値設定部840を有している。
インタフェース部810は、ネットワーク120に接続されている複数のエレベータ装置10から送信されてくるデータを取得する。具体的には、インタフェース部810は、第1の実施形態および第2の実施形態で説明した加速度の最大値Amax、カイン値G、加速度センサ51及び52が加速度を検知したビルの高さ情報、基準値P1、基準値P2、ビルの耐力限界によって決まる定数K1及びK2、係数α、係数β及び解析結果等を取得する。インタフェース部810は、ネットワーク120に接続されている何れかのエレベータ装置10の基準値P1,P2が更新された場合、更新されたことを基準値設定部840に通知する。
分類部820は、ビルの耐力限界によって決まる定数K1及びK2もしくは基準値P1及び基準値P2に基づいて、複数のエレベータ装置10を分類する。エレベータ装置10が設置されているビルの高さや構造が同じであり、エレベータ装置の稼働年数が同じであれば、ガイドレールの強度も同程度であると考えられる。したがって、基準値P1、基準値P2、ビルの耐力限界によって決まる定数K1及びK2、係数α、係数βは、近い値であると考えられる。分類部820は、ビルの耐力限界によって決まる定数K1及びK2もしくは基準値P1及び基準値P2の値が所定の範囲に含まれるエレベータ装置10を同じグループのエレベータ装置として管理する。
分類部820は、分類されたエレベータ装置のグループごとに、取得したデータを記憶部830に記憶する。データは、(センサ種別、加速度の最大値、カイン値、加速度を検知したビルの階、・・・)のようにひも付けて記憶される。センサ種別は、例えば、かご31、カウンタウエイト32等のセンサの設置場所である。
基準値設定部840は、ネットワーク120に接続されている何れかのエレベータ装置10から基準値P1,P2が更新されたことをインタフェース部810から通知を受けると、該当するエレベータ装置10から取得した変更後の基準値P1,P2を、同じグループに属する他のエレベータ装置10それぞれに配信するように、インタフェース部810に指令する。
エレベータ装置10それぞれは、自装置の基準値P1,P2を、中央演算装置800から配信された変更後の基準値P1,P2に変更する。
第3の実施形態に係るエレベータシステムでは、ネットワーク120に複数のエレベータ装置10と中央演算装置800が接続されている。エレベータ装置10それぞれは、基準値P1,P2を変更したことを中央演算装置800に通知する。中央演算装置800は、基準値P1およびP2に基づいてネットワーク120に接続された複数のエレベータ装置10を分類する。そして、中央演算装置800は、いずれかのエレベータ装置から基準値P1,P2の変更の通知を受けると、変更を通知したエレベータ装置10と同じグループに分類された他のエレベータ装置10それぞれに、変更後の基準値P1およびP2を通知する。これにより、ネットワーク120に接続された複数のエレベータ装置10の基準値P1およびP2が適正化される。
ネットワーク120に接続されているエレベータ装置10は、同一地域に配置されているエレベータ装置に限定されない。したがって、例えば、北海道で発生した地震に起因して北海道に配置されているエレベータ装置の基準値P1およびP2が変更された場合に、関東、関西、九州等に配置されているエレベータ装置の基準値P1およびP2も適正化することができる。
(変形例3)
第2に実施形態および第3の実施形態では、基準値P1,P2を補正する説明をした。他の手法としては、式2及び式3における定数K1,K2,係数α、係数βを補正することもできる。
具体的には、ネットワーク120に接続されているエレベータ装置10それぞれは、定数K1,K2、もしくは、係数α、係数βを変更したことを中央演算装置800に通知する。中央演算装置800は、定数K1,K2、もしくは、係数α、係数βに基づいてネットワーク120に接続された複数のエレベータ装置10を分類する。そして、中央演算装置800は、いずれかのエレベータ装置から定数K1,K2、もしくは、係数α、係数βの変更の通知を受けると、変更を通知したエレベータ装置10と同じグループに分類された他のエレベータ装置10それぞれに、変更後の定数K1,K2、もしくは、係数α、係数βを通知する。これにより、ネットワーク120に接続された複数のエレベータ装置10の定数K1,K2、もしくは、係数α、係数βが適正化される。
なお、第3の実施形態では、基準値P1およびP2が近似するビルに変更後の基準値を配信する説明をした。しかしこれに限らず、同じビルに配置されている他のエレベータ装置に限定して配信するようにしてもよい。
(第4の実施形態)
第2の実施形態および第3の実施形態では、作業員による点検作業の結果、エレベータ装置10に異常がなかった場合に、基準値P1,P2に所定の値をかける補正処理について説明した。第4の実施形態では、基準値P1,P2の他の補正処理について説明する。
第4の実施形態に係るエレベータシステムは、第3の実施形態に係るエレベータシステムと同じである。中央演算装置800のブロック構成も同じであるが、基準値設定部840における処理内容が異なる。
第4の実施形態に係る基準値設定部840は、グループに分類されたエレベータ装置10それぞれから取得した基準値P1及び基準値P2を統計処理する。ここでは、基準値P1の統計処理について説明する。
分類部820は、基準値P1がある程度近いエレベータ装置10を同じグループとして分類している。したがって、基準値P1の値は、例えば図17に示されるようにバラツキをもって分布する。図17は基準値P1を統計処理したものであり、横軸は基準値P1の値であり、縦軸は基準値P1が同じ値であるエレベータ装置10の台数(頻度)である。
基準値設定部840は、図17に示す基準値P1の分布から基準値P1の平均値P1hを求める。また、基準値設定部840は、図17に示す基準値P1の分布から分散σを求め、平均値P1hから分散σだけ小さい値である基準値P1sを求める。
第1の実施形態の図11のケース4に該当し、点検作業の結果、エレベータ装置10に異常がなかった場合、作業員は、操作パネル311から異常がなかったことを入力する。
該当するエレベータ装置10のCPU81は、ケース4に該当したがエレベータ装置に異常がなかったので基準値P1の変更が必要であると判断し、基準値P1の変更要求及び変更前の基準値P1を、インタフェース部84を介して中央演算装置800に通知する。
通知を受けた中央演算装置800の基準値設定部840は、取得した変更前の基準値P1が図17に示す基準値P1sよりも小さいか否かを判断する。基準値設定部840は、取得した変更前の基準値P1が基準値P1sよりも小さい場合、基準値P1sを変更後の基準値として、基準値の更新要求を通知してきたエレベータ装置10に送信する。
該当するエレベータ装置10は、取得した基準値P1sを新たな基準値P1として設定する。基準値P2の設定方法も同様である。
(変形例4)
第4の実施形態では、平均値P1hから分散σだけ小さい値である基準値P1sを新たな基準値とする場合について説明した。しかし、統計処理によって定める新たな基準値をこれに限定する必要はない。例えば、平均値P1hから分散σに0.3とか0.5をかけた値だけ小さい値を新たな基準値としてもよい。また、平均値P1hを新たな基準値としてもよい。
なお、第4の実施形態では、複数のエレベータ装置10から取得した基準値P1,P2を統計処理する場合について説明したが、係数α、βもしくはビルの耐力限界で決まる定数K1,K2を統計処理してもよい。
(第5の実施形態)
上記の説明では、1台のエレベータ装置に設置されている加速度センサに基づいて、解析処理を行う場合について説明した。第5の実施形態では、複数のエレベータ装置による解析結果に基づいて、作業者による点検作業を要請するか否かを判断する技術について説明する。
1つのビル内に複数のエレベータ装置が配置されていることが多い。複数のエレベータ装置のうちの1台のみがケース4に該当する場合でも、作業者は同じビル内に設置されている全エレベータの点検作業を行うことが予想される。したがって、1つのビル内に複数のエレベータ装置10が設置されている場合、複数のエレベータ装置10の判断結果に基づいて、ケース1からケース4の何れに該当するかを判断することが望ましい。
第5の実施形態に係るエレベータシステムでは、1つのビル内に設置されている複数のエレベータ装置10の制御盤70を統括する統括制御盤を有している。
統括制御盤は、物理的には制御盤70と同じ構成のコンピュータである。統括制御盤のインタフェース部は、エレベータ装置10それぞれのインタフェース部84と接続されている。統括制御盤は、複数のエレベータ装置10の解析結果に基づいて、図11のケース1からケース4の何れに該当するかを解析する。
例えば、エレベータ装置10が10台並んでいたとする。エレベータ装置10それぞれは、1または複数の加速度センサのデータに基づく1つの解析結果を統括制御盤に送信する。統括制御盤は、図11に示すケース4に該当する解析結果が1つでもあれば、ケース4に該当するオペレーションを行う。また、ケース4に該当する解析結果はないが、ケース3に該当する解析結果が1つでもあれば、統括制御盤は、各エレベータ装置10にケース3に該当するオペレーションを行うように、統括する複数の制御盤70に指示する。また、ケース4及びケース3に該当する解析結果はないが、ケース2に該当する解析結果が1つでもあれば、統括制御盤は、エレベータ装置10にケース2に該当するオペレーションを行うように、統括する複数の制御盤70に指示する。
なお、統括制御盤は、1つの地震で同程度の揺れを生じる地域内にあり、ビルの構造や高さが同程度であるグループに属するビルに配置されているエレベータ装置を統括してもよい。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態によって限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、かご31及びカウンタウエイト32それぞれに1個の加速度センサを設ける場合について説明したが、かご31及びカウンタウエイト32それぞれに、複数の加速度センサを設けることとしてもよい。この場合、センサごとにケース1からケース4の何れに該当するかを解析する。そして、1つでもケース4に該当する場合には、作業者による点検作業が必要であると判断する。
また、図10を用いた説明では、かご用の係数とカウンタウエイト用の係数が同じとして説明したが、かご用の係数とカウンタウエイト用の係数を別々に設定するようにしてもよい。
上記実施形態では、LED88を制御ユニット80に設ける場合について説明した。これに限らず、LEDを親機600に設けてもよい。また、加速度センサ52に設けてもよい。バッテリで動作する加速度センサ52にLEDを設ける場合、LEDの点灯を点検作業中のみに限定することにより、バッテリの寿命を長くすることができる。
上記実施形態では、カウンタウエイト32に設けられる加速度センサ52が、バッテリによって動作することとした。これに限らず、制御盤70からの配線によって加速度センサ52に電力を供給することとしてもよい。また、カウンタウエイト32が昇降することによって発電するダイナモ等によって、加速度センサ52に電力を供給することとしてもよい。
上記実施形態では、加速度センサ51は、ケーブル71を用いて検出した加速度に応じた値を示す電圧信号Svを送信する説明をした。しかし、加速度センサ51が無線通信機能を有し、検出した加速度に応じた値を示す電圧信号Svを無線で送信し、親機600を介して制御ユニット80に送信してもよい。
また、親機600と加速度センサ52間の距離が長いために無線通信が困難な場合、かご31の下面や昇降路100の壁面の所定位置に無線の中継装置を設けてもよい。
上記実施形態では、例えば、加速度センサ51,52からの出力に基づいて、地震の発生や収束を判断することとした。これに限らず、加速度センサ51の推移を示す曲線の波形などから、地震の発生や収束を判断することとしてもよい。
なお、上記実施形態では、例えば、制御ユニット80のCPU81が、地震継続期間における加速度の最大値と、地震継続期間における加速度を時間積分したカイン値と、を演算する演算手段として機能する。
また、上記実施形態では、制御ユニット80のCPU81が、加速度の最大値及びカイン値とレールの強度に対応する基準値とを比較し、異常診断を行うために移動体を昇降させる診断運転を行うか、作業者による点検作業を行うか、を判断する判断手段として機能する。
また、上記実施形態では、制御ユニット80のインタフェース部84が、基準値P1及び基準値P2をネットワークへ出力する通信手段として機能する。
また、上記実施形態では、待機時間T1が第1の時間に、待機時間T2が第2の時間に、係数αが第1係数に、係数βが第2係数に対応する。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施しうるものであり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
上記課題を解決するため、本実施形態に係るエレベータ装置は、昇降路を、レールに沿って昇降する移動体と、移動体に設けられ、移動体の水平方向の加速度を検出するセンサと、センサの検出結果に基づいて、加速度の大きさが予め設定された閾値以上となった時から所定の期間における加速度の最大値と、加速度を地震継続時間について時間積分して得られた地震の強さを示すカイン値と、を演算する演算手段と、加速度の最大値及び前記カイン値をレールの耐力限界に対応する基準値と比較し、移動体の昇降を伴う診断運転を行うか、作業者による点検作業を行うか、を判断する判断手段と、を備える。