JP2020116526A - 薄膜の製造方法及び電子デバイスの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】所望形状を有する薄膜を製造可能な方法を提供する。【解決手段】一実施形態に係る薄膜の製造方法は、薄膜を製造する方法であり、第1方向に搬送されている基板上に、塗布液Lを塗布して形成された塗布膜40を加熱乾燥することによって、形成すべき薄膜の試作品を形成する試作品形成工程と、試作品の形状と薄膜の所望形状との差異を取得する差異取得工程と、上記差異が許容レベル内であるか否かを判定する判定工程と、上記差異が許容レベルを超えている場合、試作品形成工程における塗布液の塗布条件を補正する工程と、上記差異が許容レベル内である場合、試作品形成工程における塗布条件で薄膜を得る工程と、を備え、差異取得工程では、薄膜の形状を規定する少なくとも一つの形状パラメータを試作品で測定して得られた実測値と、上記少なくとも一つの形状パラメータの設計値との差を算出することによって、上記差異を取得する。【選択図】図3
Description
本発明は、薄膜の製造方法及び電子デバイスの製造方法に関する。
電子デバイスは、基板と、基板上に設けられた第1電極層と、第1電極層上に設けられており少なくとも一つの機能層を含むデバイス機能部と、デバイス機能部上に設けられた第2電極層と含む。電子デバイスは、例えば特許文献1に記載されているように、基板を搬送しながら製造され得る。
基板を搬送しながら電子デバイスを製造する際、電子デバイスが有する少なくとも一つの層は、塗布法を用いて薄膜として形成され得る。具体的には、特許文献1に開示されているように、塗布装置を用いて形成すべき薄膜(層)の材料と溶媒とを含む塗布液を、搬送されている基板上に塗布して塗布膜を形成する。その後、基板の搬送方向において塗布装置の下流に配置された加熱乾燥装置で塗布膜を加熱乾燥することによって薄膜が形成される。通常、上記塗布膜は、形成すべき薄膜の形状と実質的に同じ形状で形成される。
しかしながら、塗布膜が形成された基板を搬送しながら加熱乾燥装置で加熱乾燥すると、形成すべき薄膜の所望形状(設計段階の形状)と異なる場合があった。例えば、形成された薄膜は、基板の搬送方向において、所望形状より後側に広がった形状を有する場合があり得る。電子デバイスが有する少なくとも一つの層が上記のように所望形状と異なった薄膜として形成されると、電子デバイスの性能低下が生じる。そのため、電子デバイスの製造において、上記のように薄膜を形成した後、その薄膜のうち所望の形成領域からはみ出した部分などを除去する作業が必要となり、電子デバイスの生産性が低下する。
そこで、本発明の一側面は、所望形状を有する薄膜を製造可能な方法を提供することを目的とする。本発明の他の側面は、生産性の向上が可能な電子デバイスの製造方法を提供することを目的とする。
本発明の一側面は、薄膜を製造する方法であって、第1方向に搬送されている基板上に、薄膜材料及び溶媒を含む塗布液を塗布して形成された塗布膜を加熱乾燥することによって、上記薄膜の試作品を形成する試作品形成工程と、上記試作品形成工程で形成された上記試作品の形状と上記薄膜の所望形状との差異を取得する差異取得工程と、上記差異取得工程で取得された上記差異が許容レベル内であるか否かを判定する判定工程と、上記判定工程において上記差異が許容レベルを超えていると判定された場合、上記試作品形成工程における塗布条件を補正する塗布条件補正工程と、上記判定工程において上記差異が許容レベル内であると判定された場合、上記第1方向に搬送されている基板上に、上記試作品形成工程における塗布条件で上記塗布液を塗布して形成された塗布膜を加熱乾燥することによって上記薄膜を得る薄膜形成工程を備え、上記塗布条件補正工程を実施した場合、補正後の上記塗布条件で上記試作品形成工程を実施し、上記差異取得工程では、上記薄膜の形状を規定するための少なくとも一つの形状パラメータを上記試作品で測定して得られた実測値と、上記少なくとも一つの形状パラメータの設計値との差を算出することによって、上記差異を取得する。
本明細書において、「所望形状」は、薄膜の厚さ方向からみた2次元形状(平面視形状)とともに、膜厚を考慮した3次元形状も含む意味である。
上記製造方法では、試作品を形成し、その試作品の形状と、製造すべき薄膜の所望形状との差異に基づいて、塗布液を基板上に塗布する際の塗布条件を補正する。そのため、所望形状を有する薄膜を製造可能である。
上記塗布条件補正工程では、上記差異取得工程で取得された上記差異に基づいて、上記塗布膜を加熱乾燥する際の上記塗布膜の変形を補償するように、上記塗布条件を補正してもよい。この場合、塗布膜を加熱乾燥する際の塗布膜の例えば液流動に起因する変形を考慮した塗布条件が設定され得るので、所望形状の薄膜を製造し易い。
上記差異取得工程では、上記少なくとも一つの形状パラメータを、上記第1方向における上記試作品の中心からみて前側領域及び後側領域それぞれにおいて、上記中心から離れた位置で測定してもよい。試作品の形状と、薄膜の所望形状との差異は、例えば、塗布膜を加熱乾燥する際に塗布膜内で、基板が搬送される第1方向において後側に流動することに起因すると考えられる。上記のように、試作品の前側領域及び後側領域それぞれにおいて、形状パラメータを測定し、それに基づいて塗布条件を補正すれば、上記液流動に起因した塗布膜の変形を補償し易いので、所望形状を有する薄膜を一層製造し易くなる。
上記少なくとも一つの形状パラメータの例は、上記少なくとも一つの形状パラメータは、上記第1方向に直交する第2方向の上記薄膜の寸法、上記第1方向の上記薄膜の寸法及び上記薄膜の膜厚の少なくとも一つを含み得る。このような形状パラメータを用いることによって、試作品と、製造すべき薄膜の所望形状との差異を取得可能である。
上記少なくとも一つの形状パラメータは上記第2方向の上記薄膜の寸法を含み、上記塗布条件補正工程では、上記塗布条件が有する塗布パターンを補正してもよい。上記第2方向の寸法に関して、試作品と、製造すべき薄膜の所望形状との差異が生じている場合、塗布パターンを補正することによって、その差異が解消される。よって、上記のように塗布パターンを補正することで、所望形状を有する薄膜を効率的に製造し易くなる。
上記差異取得工程では、上記第1方向における上記試作品の中心からみて上記第1方向において上記試作品の前側領域内の第1位置及び上記試作品の後側領域内の第2位置それぞれにおける上記試作品の上記第2方向の寸法を測定し、上記塗布条件補正工程では、上記塗布膜における上記第1位置の対応位置での上記第2方向の寸法が、上記薄膜における対応する寸法設計値より長く、上記塗布膜における上記第2位置の対応位置での上記第2方向の寸法が上記薄膜における対応する寸法設計値より短くなるように、上記塗布パターンを補正してもよい。
塗布膜が加熱乾燥される際、上記第1方向に搬送されている塗布膜において後側が広がり易い。そのため、上記のように塗布パターンを補正することで、所望形状の薄膜が製造され易い。
上記所望形状を有する上記薄膜の平面視形状は矩形であり、上記差異取得工程では、上記第1方向において上記試作品の第1前辺及び第1後辺の寸法をそれぞれ測定し、上記塗布条件補正工程では、上記第1前辺に対応する上記塗布膜の第2前辺の寸法が上記第1後辺に対応する上記塗布膜の第2後辺より長い台形状になるように上記塗布パターンを補正してもよい。所望形状を有する薄膜の平面視形状が矩形である場合、上記第1前辺及び第2後辺の寸法を測定し、上記のように塗布パターンを補正することで、所望形状の薄膜を製造可能である。
上記少なくとも一つの形状パラメータは上記薄膜の膜厚を含み、上記塗布条件補正工程では、上記塗布条件が有する塗布量を補正してもよい。上記膜厚に関して、試作品と、製造すべき薄膜の所望形状との差異が生じている場合、塗布量を補正することによって、その差異が解消され易い。よって、上記のように塗布量を補正することで、所望形状を有する薄膜を効率的に製造し易い。
上記差異取得工程では、上記第1方向における上記試作品の中心からみて上記第1方向において上記試作品の前側領域内の第1位置及び上記試作品の後側領域内の第2位置それぞれにおいて上記試作品の上記第2方向における少なくとも一箇所で上記試作品の膜厚を測定し、上記塗布条件補正工程では、上記塗布膜における上記第1位置の対応位置において上記第2方向に沿った第1仮想線上の膜厚が上記薄膜の対応する線上の膜厚設計値より厚く、上記塗布膜における上記第2位置の対応位置において上記第2方向に沿った第2仮想線上の膜厚が、上記薄膜の対応する線上の膜厚設計値より薄くなるように、上記塗布量を補正してもよい。上記「第1(又は第2)仮想線上の膜厚が上記薄膜の対応する線上の膜厚設計値より厚い」とは、第1(又は第2)仮想線に沿った膜厚分布曲線が、薄膜の対応する線に沿った設計段階での膜厚分布曲線より上側に位置することを意味する。
塗布膜が加熱乾燥される際、上記第1方向に搬送されている塗布膜において後側に液が流れる液流動がおき易い。そのため、上記のように塗布量を補正することで、所望形状の薄膜を製造し易い。
上記所望形状を有する上記薄膜の平面視形状は矩形であり、上記所望形状を有する上記薄膜の膜厚は面内において実質的に均一であり、上記差異取得工程では、上記第1方向において上記試作品の第1前辺上及び第1後辺上における膜厚を測定し、上記塗布条件補正工程では、上記第1前辺に対応する上記塗布膜の第2前辺上の膜厚が上記第1後辺に対応する上記塗布膜の第2後辺上の膜厚より厚くなるように上記塗布量を補正してもよい。所望形状を有する薄膜の平面視形状が矩形であり且つ膜厚が面内において実質的に均一である場合、上記第1前辺上及び第2後辺上の膜厚を測定し、上記のように塗布量を補正することで、所望形状の薄膜を製造可能である。
上記試作品形成工程、上記差異取得工程、上記判定工程及び上記塗布条件補正工程を、異なる薄膜材料を含む塗布液毎に行ってもよい。これにより、上記異なる塗布液でそれぞれ形成される複数の薄膜をそれぞれの所望形状に応じて製造可能である。
本発明の他の側面に係る電子デバイスの製造方法は、上記薄膜の製造方法を含む。電子デバイスに含まれる層が、例えば所望形状より広がった状態で形成されると、その層のうち、層の所望の形成領域からはみ出した部分を除去する作業(除去作業)が生じる。しかしながら、上記電子デバイスの製造方法は、所望形状の薄膜を製造可能な上記薄膜の製造方法を含むため、電子デバイスが有する層を、所望形状で形成できる。その結果、例えば、上記除去作業が不要である。よって、電子デバイスの生産性が向上する。
本発明の一側面によれば、所望形状を有する薄膜を製造可能な方法を提供できる。本発明の他の側面によれば、生産性の向上が可能な電子デバイスの製造方法を提供できる。
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。図面の寸法比率は、説明のものと必ずしも一致していない。
図1は、一実施形態に係る電子デバイスの製造方法で製造された有機エレクトロルミネッセンスデバイス(有機ELデバイス)の平面図である。説明の便宜のため、図1に示したX方向及びY方向を使用する場合もある。Y方向はX方向に直交する方向である。図2は、図1のII―II線に沿った断面図である。本実施形態では、断らない限り、上記電子デバイスは、ボトムエミッション型の有機ELデバイスである。図1及び図2に示したように、有機ELデバイス1は、基板2と、陽極層(第1電極層)3と、デバイス機能部4と、陰極層5と、を備える。
[基板]
基板2は、製造すべき有機ELデバイス(電子デバイス)1が出射する光(波長400nm〜800nmの可視光を含む)に対して透光性を有する。基板2の厚さの例は、30μm〜700μmである。
基板2は、製造すべき有機ELデバイス(電子デバイス)1が出射する光(波長400nm〜800nmの可視光を含む)に対して透光性を有する。基板2の厚さの例は、30μm〜700μmである。
基板2は、可撓性を有してもよい。可撓性とは、基板に所定の力を加えても基板が剪断したり破断したりすることがなく、基板を撓めることが可能な性質である。基板2の例はプラスチックフィルム又は高分子フィルムである。基板2は、水分バリア機能を有するバリア層を更に有してもよい。バリア層は、水分をバリアする機能に加えて、ガス(例えば酸素)をバリアする機能を有してもよい。
[陽極層]
陽極層3は、基板2上に設けられている。陽極層3は、有機ELデバイス1が出射する光に対して透光性を有する。陽極層3は、導電体(例えば金属)で形成されるネットワーク構造を有してもよい。陽極層3の厚さは、光の透過性、電気伝導度等を考慮して決定され得る。陽極層3の厚さは、通常、10nm〜10μmであり、好ましくは20nm〜1μmであり、さらに好ましくは50nm〜500nmである。
陽極層3は、基板2上に設けられている。陽極層3は、有機ELデバイス1が出射する光に対して透光性を有する。陽極層3は、導電体(例えば金属)で形成されるネットワーク構造を有してもよい。陽極層3の厚さは、光の透過性、電気伝導度等を考慮して決定され得る。陽極層3の厚さは、通常、10nm〜10μmであり、好ましくは20nm〜1μmであり、さらに好ましくは50nm〜500nmである。
陽極層3の材料としては、例えば酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、インジウム錫酸化物(Indium Tin Oxide:略称ITO)、インジウム亜鉛酸化物(Indium Zinc Oxide:略称IZO)、金、白金、銀、銅等が挙げられ、これらの中でもITO、IZO、又は酸化スズが好ましい。陽極層3は、例示した材料を含む薄膜として形成され得る。陽極層3の材料には、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体等の有機物を用いてもよい。この場合、陽極層3は、透明導電膜として形成され得る。
陽極層3は、ドライ成膜法、メッキ法、塗布法などにより形成され得る。ドライ成膜法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法、CVD法などが挙げられる。塗布法としては、例えば、インクジェット印刷法、スリットコート法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイヤーバーコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法及びノズル印刷法等が挙げられ、これらの中でもインクジェット印刷法が好ましい。
[デバイス機能部]
デバイス機能部4は、陽極層3及び陰極層5に印加された電圧に応じて、電荷の移動及び電荷の再結合などの有機ELデバイス1の発光に寄与する機能部である。デバイス機能部4は、陽極層3の一部を覆うように陽極層3上に設けられている。この場合、平面視形状(基板21の厚さ方向からみた形状。以下同様)において、陽極層3のうちデバイス機能部4で覆われていない部分を利用して有機ELデバイス1を外部接続し得る。デバイス機能部4は、図1及び図2に示したように、陽極層3の縁部の一部を覆ってもよい。陽極層3の縁部の一部がデバイス機能部4で被覆される形態では、デバイス機能部4は基板21に接し得る。デバイス機能部4は、図1に示したように、陽極層3のうちX方向においてデバイス機能部4の両側がデバイス機能部4から露出するとともに、Y方向における一縁部がデバイス機能部4で覆われるように設けられ得る。本実施形態において、デバイス機能部4の平面視形状は矩形である。
デバイス機能部4は、陽極層3及び陰極層5に印加された電圧に応じて、電荷の移動及び電荷の再結合などの有機ELデバイス1の発光に寄与する機能部である。デバイス機能部4は、陽極層3の一部を覆うように陽極層3上に設けられている。この場合、平面視形状(基板21の厚さ方向からみた形状。以下同様)において、陽極層3のうちデバイス機能部4で覆われていない部分を利用して有機ELデバイス1を外部接続し得る。デバイス機能部4は、図1及び図2に示したように、陽極層3の縁部の一部を覆ってもよい。陽極層3の縁部の一部がデバイス機能部4で被覆される形態では、デバイス機能部4は基板21に接し得る。デバイス機能部4は、図1に示したように、陽極層3のうちX方向においてデバイス機能部4の両側がデバイス機能部4から露出するとともに、Y方向における一縁部がデバイス機能部4で覆われるように設けられ得る。本実施形態において、デバイス機能部4の平面視形状は矩形である。
デバイス機能部4は発光層を有する。発光層は、光(可視光を含む)を発する機能を有する機能層である。発光層は有機物を含む有機層である。発光層は、通常、主として蛍光及びりん光の少なくとも一方を発光する有機物、又はこの有機物とこれを補助するドーパント材料とから構成される。ドーパント材料は、例えば発光効率の向上や、発光波長を変化させるために加えられる。上記有機物は、低分子化合物でも高分子化合物でもよい。発光層の厚さは、例えば2nm〜200nmである。
主として蛍光及びりん光の少なくとも一方を発光する発光性材料である有機物としては、例えば以下の色素系材料、金属錯体系材料及び高分子系材料が挙げられる。
(色素系材料)
色素系材料としては、例えば、シクロペンダミン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体化合物、トリフェニルアミン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ピラゾロキノリン誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、ジスチリルアリーレン誘導体、ピロール誘導体、チオフェン環化合物、ピリジン環化合物、ペリノン誘導体、ペリレン誘導体、オリゴチオフェン誘導体、オキサジアゾールダイマー、ピラゾリンダイマー、キナクリドン誘導体、クマリン誘導体などが挙げられる。
色素系材料としては、例えば、シクロペンダミン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体化合物、トリフェニルアミン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ピラゾロキノリン誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、ジスチリルアリーレン誘導体、ピロール誘導体、チオフェン環化合物、ピリジン環化合物、ペリノン誘導体、ペリレン誘導体、オリゴチオフェン誘導体、オキサジアゾールダイマー、ピラゾリンダイマー、キナクリドン誘導体、クマリン誘導体などが挙げられる。
(金属錯体系材料)
金属錯体系材料としては、例えばTb、Eu、Dyなどの希土類金属、又はAl、Zn、Be、Ir、Ptなどを中心金属に有し、オキサジアゾール、チアジアゾール、フェニルピリジン、フェニルベンゾイミダゾール、キノリン構造などを配位子に有する金属錯体が挙げられ、例えばイリジウム錯体、白金錯体などの三重項励起状態からの発光を有する金属錯体、アルミニウムキノリノール錯体、ベンゾキノリノールベリリウム錯体、ベンゾオキサゾリル亜鉛錯体、ベンゾチアゾール亜鉛錯体、アゾメチル亜鉛錯体、ポルフィリン亜鉛錯体、フェナントロリンユーロピウム錯体などが挙げられる。
金属錯体系材料としては、例えばTb、Eu、Dyなどの希土類金属、又はAl、Zn、Be、Ir、Ptなどを中心金属に有し、オキサジアゾール、チアジアゾール、フェニルピリジン、フェニルベンゾイミダゾール、キノリン構造などを配位子に有する金属錯体が挙げられ、例えばイリジウム錯体、白金錯体などの三重項励起状態からの発光を有する金属錯体、アルミニウムキノリノール錯体、ベンゾキノリノールベリリウム錯体、ベンゾオキサゾリル亜鉛錯体、ベンゾチアゾール亜鉛錯体、アゾメチル亜鉛錯体、ポルフィリン亜鉛錯体、フェナントロリンユーロピウム錯体などが挙げられる。
(高分子系材料)
高分子系材料としては、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリシラン誘導体、ポリアセチレン誘導体、ポリフルオレン誘導体、ポリビニルカルバゾール誘導体、上記色素系材料や金属錯体系発光材料を高分子化したものなどが挙げられる。
高分子系材料としては、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリシラン誘導体、ポリアセチレン誘導体、ポリフルオレン誘導体、ポリビニルカルバゾール誘導体、上記色素系材料や金属錯体系発光材料を高分子化したものなどが挙げられる。
(ドーパント材料)
ドーパント材料としては、例えばペリレン誘導体、クマリン誘導体、ルブレン誘導体、キナクリドン誘導体、スクアリウム誘導体、ポルフィリン誘導体、スチリル系色素、テトラセン誘導体、ピラゾロン誘導体、デカシクレン、フェノキサゾンなどが挙げられる。
ドーパント材料としては、例えばペリレン誘導体、クマリン誘導体、ルブレン誘導体、キナクリドン誘導体、スクアリウム誘導体、ポルフィリン誘導体、スチリル系色素、テトラセン誘導体、ピラゾロン誘導体、デカシクレン、フェノキサゾンなどが挙げられる。
デバイス機能部4は、発光層の他、少なくとの一つの機能層を有してもよい。陽極層3と発光層との間に配置される機能層としては、例えば正孔注入層、正孔輸送層などが挙げられる。発光層と陰極層5との間に配置される機能層としては、例えば電子輸送層、電子注入層などが挙げられる。
発光層は、ドライ成膜法、メッキ法、塗布法などにより形成され得る。ドライ成膜法及び塗布法の例は、陽極層3の説明で挙げた例と同じである。
(正孔注入層)
正孔注入層は、陽極層3から発光層への正孔注入効率を向上させる機能を有する機能層である。正孔注入層は、無機層でもよいし、有機層でもよい。正孔注入層を構成する正孔注入材料は、低分子化合物でもよいし、高分子化合物でもよい。
正孔注入層は、陽極層3から発光層への正孔注入効率を向上させる機能を有する機能層である。正孔注入層は、無機層でもよいし、有機層でもよい。正孔注入層を構成する正孔注入材料は、低分子化合物でもよいし、高分子化合物でもよい。
低分子化合物としては、例えば、酸化バナジウム、酸化モリブデン、酸化ルテニウム、及び酸化アルミニウムなどの金属酸化物、銅フタロシアニン等の金属フタロシアニン化合物、カーボンなどが挙げられる。
高分子化合物としては、例えば、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)のようなポリチオフェン誘導体、ポリピロール、ポリフェニレンビニレン、ポリチエニレンビニレン、ポリキノリン及びポリキノキサリン、並びに、これらの誘導体;芳香族アミン構造を主鎖又は側鎖に含む重合体等の導電性高分子などが挙げられる。
正孔注入層の厚さは、用いる材料によって最適値が異なり、求められる特性及び成膜の簡易さなどを勘案して適宜決定される。正孔注入層の厚さは、例えば1nm〜1μmであり、好ましくは2nm〜500nmであり、さらに好ましくは5nm〜200nmである。
(正孔輸送層)
正孔輸送層は、正孔注入層(又は正孔注入層がない場合には陽極層3)から正孔を受け取り、発光層まで正孔を輸送する機能を有する機能層である。
正孔輸送層は、正孔注入層(又は正孔注入層がない場合には陽極層3)から正孔を受け取り、発光層まで正孔を輸送する機能を有する機能層である。
正孔輸送層は正孔輸送材料を含む有機層である。正孔輸送材料は正孔輸送機能を有する有機化合物であれば限定されない。正孔輸送機能を有する有機化合物としては、例えば、ポリビニルカルバゾール若しくはその誘導体、ポリシラン若しくはその誘導体、側鎖若しくは主鎖に芳香族アミン残基を有するポリシロキサン誘導体、ピラゾリン誘導体、アリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、トリフェニルジアミン誘導体、ポリアニリン若しくはその誘導体、ポリチオフェン若しくはその誘導体、ポリピロール若しくはその誘導体、ポリアリールアミン若しくはその誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)若しくはその誘導体、ポリフルオレン誘導体、芳香族アミン残基を有する高分子化合物、及びポリ(2,5−チエニレンビニレン)若しくはその誘導体が挙げられる。
正孔輸送材料の例として、特開昭63−70257号公報、特開昭63−175860号公報、特開平2−135359号公報、特開平2−135361号公報、特開平2−209988号公報、特開平3−37992号公報、特開平3−152184号公報に記載されている正孔輸送材料等も挙げられる。
正孔輸送層の厚さは、用いる材料によって最適値が異なり、求められる特性及び成膜の簡易さなどを勘案して適宜決定される。正孔輸送層は、少なくともピンホールが発生しない程度の厚さが必要であり、厚すぎると、有機ELデバイス1の駆動電圧が高くなるおそれがある。正孔輸送層の厚さは、例えば、1nm〜1μmであり、好ましくは2nm〜500nmであり、さらに好ましくは5nm〜200nmである。
(電子輸送層)
電子輸送層は、電子注入層(又は電子注入層がない場合には陰極層5)から電子を受け取り、発光層まで電子を輸送する機能を有する機能層である。
電子輸送層は、電子注入層(又は電子注入層がない場合には陰極層5)から電子を受け取り、発光層まで電子を輸送する機能を有する機能層である。
電子輸送層は電子輸送材料を含む有機層である。電子輸送材料には、公知の材料が用いられ得る。電子輸送層を構成する電子輸送材料としては、オキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタン若しくはその誘導体、ベンゾキノン若しくはその誘導体、ナフトキノン若しくはその誘導体、アントラキノン若しくはその誘導体、テトラシアノアントラキノジメタン若しくはその誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレン若しくはその誘導体、ジフェノキノン誘導体、または8−ヒドロキシキノリン若しくはその誘導体の金属錯体、ポリキノリン若しくはその誘導体、ポリキノキサリン若しくはその誘導体、ポリフルオレン若しくはその誘導体などが挙げられる。
電子輸送層の厚さは、求められる特性及び成膜の簡易さなどを勘案して適宜決定される。電子輸送層の厚さは、例えば1nm〜1μmであり、好ましくは2nm〜500nmであり、さらに好ましくは5nm〜200nmである。
(電子注入層)
電子注入層は、陰極層5から発光層への電子注入効率を向上させる機能を有する機能層である。電子注入層は無機層でもよいし、有機層でもよい。電子注入層を構成する材料は、発光層の種類に応じて最適な材料が適宜選択される。電子注入層を構成する材料の例としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アルカリ金属及びアルカリ土類金属のうちの1種類以上を含む合金、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩、又はこれらの物質の混合物などを挙げることができる。アルカリ金属の例、並びに、アルカリ金属の酸化物、ハロゲン化物及び炭酸塩の例としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、酸化リチウム、フッ化リチウム、酸化ナトリウム、フッ化ナトリウム、酸化カリウム、フッ化カリウム、酸化ルビジウム、フッ化ルビジウム、酸化セシウム、フッ化セシウム、炭酸リチウムなどを挙げることができる。また、アルカリ土類金属の例、並びに、アルカリ土類金属の酸化物、ハロゲン化物及び炭酸塩の例としては、マグネシウム、カルシウム、バリウム、ストロンチウム、酸化マグネシウム、フッ化マグネシウム、酸化カルシウム、フッ化カルシウム、酸化バリウム、フッ化バリウム、酸化ストロンチウム、フッ化ストロンチウム、炭酸マグネシウムなどが挙げられる。
電子注入層は、陰極層5から発光層への電子注入効率を向上させる機能を有する機能層である。電子注入層は無機層でもよいし、有機層でもよい。電子注入層を構成する材料は、発光層の種類に応じて最適な材料が適宜選択される。電子注入層を構成する材料の例としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アルカリ金属及びアルカリ土類金属のうちの1種類以上を含む合金、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩、又はこれらの物質の混合物などを挙げることができる。アルカリ金属の例、並びに、アルカリ金属の酸化物、ハロゲン化物及び炭酸塩の例としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、酸化リチウム、フッ化リチウム、酸化ナトリウム、フッ化ナトリウム、酸化カリウム、フッ化カリウム、酸化ルビジウム、フッ化ルビジウム、酸化セシウム、フッ化セシウム、炭酸リチウムなどを挙げることができる。また、アルカリ土類金属の例、並びに、アルカリ土類金属の酸化物、ハロゲン化物及び炭酸塩の例としては、マグネシウム、カルシウム、バリウム、ストロンチウム、酸化マグネシウム、フッ化マグネシウム、酸化カルシウム、フッ化カルシウム、酸化バリウム、フッ化バリウム、酸化ストロンチウム、フッ化ストロンチウム、炭酸マグネシウムなどが挙げられる。
この他に従来知られた電子輸送性の有機材料と、アルカリ金属の有機金属錯体を混合した層を電子注入層として利用できる。
上記正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層及び電子注入層は、ドライ成膜法、メッキ法、塗布法などにより形成され得る。ドライ成膜法及び塗布法の例は、陽極層3の説明で挙げた例と同じである。
デバイス機能部4の層構成の例を以下に示す。下記層構成の例では、陽極層3及び陰極層5と各種機能層の配置関係を示すために、陽極層3及び陰極層5も括弧書きで記載している。
(a)(陽極層)/正孔注入層/発光層/(陰極層)
(b)(陽極層)/正孔注入層/発光層/電子注入層/(陰極層)
(c)(陽極層)/正孔注入層/発光層/電子輸送層/電子注入層/(陰極層)
(d)(陽極層)/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/(陰極層)
(e)(陽極層)/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子注入層/(陰極層)
(f)(陽極層)/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/(陰極層)
(g)(陽極層)/発光層/電子注入層/(陰極層)
(h)(陽極層)/発光層/電子輸送層/電子注入層/(陰極層)
記号「/」は、記号「/」の両側の層同士が接合していることを意味している。
(a)(陽極層)/正孔注入層/発光層/(陰極層)
(b)(陽極層)/正孔注入層/発光層/電子注入層/(陰極層)
(c)(陽極層)/正孔注入層/発光層/電子輸送層/電子注入層/(陰極層)
(d)(陽極層)/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/(陰極層)
(e)(陽極層)/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子注入層/(陰極層)
(f)(陽極層)/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/(陰極層)
(g)(陽極層)/発光層/電子注入層/(陰極層)
(h)(陽極層)/発光層/電子輸送層/電子注入層/(陰極層)
記号「/」は、記号「/」の両側の層同士が接合していることを意味している。
デバイス機能部4が有する発光層の数は、1つでもよいし、2つ以上でもよい。上記構成例(a)〜(h)の層構成のうちのいずれか1つにおいて、陽極層3と陰極層5との間に配置された積層体を[構造単位I]とすると、2層の発光層を有するデバイス機能部4の構成として、下記(j)に示す層構成が挙げられる。2つの[構造単位I]の層構成は互いに同じであっても、異なっていてもよい。
(j)(陽極層)/[構造単位I]/電荷発生層/[構造単位I]/(陰極層)
(j)(陽極層)/[構造単位I]/電荷発生層/[構造単位I]/(陰極層)
電荷発生層は、電界を印加することにより、正孔と電子とを発生する層である。電荷発生層としては、例えば酸化バナジウム、ITO、酸化モリブデンなどを含む薄膜が挙げられる。
「[構造単位I]/電荷発生層」を[構造単位II]とすると、3層以上の発光層を有する有機ELデバイスの構成として、以下の構成例(k)に示す層構成が挙げられる。
(k)(陽極層)/[構造単位II]x/[構造単位I]/(陰極層)
記号「x」は、2以上の整数を表し、「[構造単位II]x」は、[構造単位II]がx段積層された積層体を表す。複数の[構造単位II]の層構成は同じでも、異なっていてもよい。
(k)(陽極層)/[構造単位II]x/[構造単位I]/(陰極層)
記号「x」は、2以上の整数を表し、「[構造単位II]x」は、[構造単位II]がx段積層された積層体を表す。複数の[構造単位II]の層構成は同じでも、異なっていてもよい。
電荷発生層を設けずに、複数の発光層を直接的に積層させてデバイス機能部4を構成してもよい。
陰極層5は、デバイス機能部4上に設けられている。陰極層5は、デバイス機能部4から外側に突出するように配置されてもよく、この場合、陰極層5の一部は基板2に接する。陰極層5の材料としては、例えばアルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属及び周期表第13族金属等が挙げられる。陰極層5の材料としては、具体的には、例えばリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、アルミニウム、スカンジウム、バナジウム、亜鉛、イットリウム、インジウム、セリウム、サマリウム、ユーロピウム、テルビウム、イッテルビウム等の金属、前記金属のうちの2種以上の合金、前記金属のうちの1種以上と、金、銀、白金、銅、マンガン、チタン、コバルト、ニッケル、タングステン、錫のうちの1種以上との合金、又はグラファイト若しくはグラファイト層間化合物等が挙げられる。合金の例としては、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金、インジウム−銀合金、リチウム−アルミニウム合金、リチウム−マグネシウム合金、リチウム−インジウム合金、カルシウム−アルミニウム合金等が挙げられる。
陰極層5として、例えば、導電性金属酸化物や、導電性有機物等を含む透明導電性電極が用いられ得る。導電性金属酸化物としては、具体的には、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ITO、IZO等が挙げられ、導電性有機物としてポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体等が挙げられる。陰極層5は、2層以上を積層した積層体で構成されていてもよい。上記電子注入層は陰極層5の一部であってもよい。
陰極層5の厚さは、電気伝導度、耐久性を考慮して設定される。陰極層5の厚さは、通常、10nm〜10μmであり、好ましくは20nm〜1μmであり、さらに好ましくは50nm〜500nmである。
陰極層5の形成方法として、例えば、インクジェット法、スリットコーター法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、スプレーコーター法等の塗布法、真空蒸着法、スパッタリング法、金属薄膜を熱圧着するラミネート法等が挙げられる。
有機ELデバイス1は、少なくともデバイス機能部4を封止する封止部材を更に備えてもよい。封止部材は、平面視において、陽極層3及び陰極層5の一部が封止部材から露出するように陰極層5上に設けられる。
次に、上記有機ELデバイス1の製造方法の一例を説明する。本実施形態では、有機ELデバイス1を製造するために長尺の基板2を準備する。準備した長尺の基板2に仮想的に設定した複数のデバイス形成領域のそれぞれに対して、陽極層3を形成する陽極層形成工程、陽極層3上にデバイス機能部4を形成するデバイス機能部形成工程及びデバイス機能部4上に陰極層5を形成する陰極層形成工程を実施する。デバイス機能部4が複数の機能層を有する形態では、デバイス機能部形成工程において、陽極層3側から順に複数の機能層を形成すればよい。上記のように、陽極層形成工程、デバイス機能部形成工程及び陰極層形成工程を実施することで、各デバイス形成領域に有機ELデバイス1が形成されるので、長尺の基板2から各デバイス形成領域を分離する(又は個片化する)ことで、複数の有機ELデバイス1が製造される。
有機ELデバイス1が封止部材を有する形態では、陰極層形成工程後に、封止部材を陰極層5上に設けて少なくともデバイス機能部4を封止部材で封止する封止工程を実施した後、上記分離(又は個片化)工程を実施すればよい。
本実施形態の有機ELデバイス1の製造方法が備える陽極層形成工程、デバイス機能部形成工程及び陰極層形成工程で形成される複数の層のうちの少なくとも一つの層は、一実施形態に係る薄膜の製造方法で製造される。陽極層3、デバイス機能部4が有する一つ又は複数の機能層及び陰極層5のうち上記薄膜の製造方法で製造される層以外の層は、陽極層3、デバイス機能部4及び陰極層5の説明において例示した形成方法で形成され得る。
図3〜図7を参照して、上記薄膜の製造方法の一例を説明する。薄膜41が形成される部材を下地基板10と称す。下地基板10は、基板2と、薄膜41が形成される前までに基板2上に形成された層を含む。
デバイス機能部4が上記構成例(f)の構成を有する形態に基づいて下地基板10の具体例を説明する。例えば、正孔注入層を薄膜の製造方法で製造する場合、下地基板10は基板2と陽極層3とを含む。正孔輸送層を薄膜の製造方法で製造する場合、下地基板10は基板2と陽極層3と正孔注入層3aを含む。発光層を薄膜の製造方法で製造する場合、下地基板10は、基板2と陽極層3と正孔注入層と正孔輸送層とを含む。電子輸送層、電子注入層及び陰極層5を薄膜の製造方法で製造する場合についても同様である。陽極層3が薄膜の製造方法で形成されてもよい。この場合、下地基板10は基板2である。
図3を利用して薄膜の製造方法の概略を説明する。図3は薄膜を製造する装置の一例の概略構成図である。図3に示した形態では、薄膜は、下地基板10を搬送しながら製造される。図3では、下地基板10を模式的に実線で示しており、薄膜をロールツーロール方式で製造する場合を示している。
ロールツーロール方式で薄膜を製造する場合、巻出し部20Aに、長尺の下地基板10がロール状に巻かれて構成された第1ロール11をセットし、第1ロール11から下地基板10を繰り出し、少なくとも一つの搬送ロールRで下地基板10をその長手方向(第1方向)に搬送した後、巻取り部20Bによって下地基板10をロール状に巻き取り、第2ロ-ル12を形成する。下地基板10が搬送されている間に、塗布装置31から塗布液Lが下地基板10(換言すれば基板2上)に塗布され、塗布膜40が形成される。塗布膜40は、塗布装置31の下流側(巻取り部20B側)に配置された加熱乾燥装置32内に搬入され、加熱乾燥装置32内で塗布膜40が加熱乾燥されることによって薄膜Fが得られる。
塗布装置31の例は、薄膜の製造に使用される塗布法に応じた装置であればよい。以下の説明では、断らない限り、塗布法はインクジェット印刷法であり、塗布装置31はインクジェット印刷装置である。
インクジェット印刷装置は、下地基板10上に配置されており少なくとも一つのインクジェットヘッドを含む塗布器を有する。インクジェットヘッドは、塗布液Lを吐出する複数のインクジェットノズルを有する。複数のインクジェットノズルは、下地基板10の長手方向(搬送方向、第1方向)に直交する方向(幅方向,第2方向)に離散的に配置されている。インクジェット印刷装置では、上記複数のインクジェットノズルの吐出位置及び吐出タイミングを制御することで、塗布液Lを所定の塗布パターンで下地基板10に塗布可能である。更に、各インクジェットノズルからの塗布液Lの塗布量を制御することで、塗布膜40の膜厚を制御可能である。
少なくとも塗布装置31から塗布液Lが下地基板10に塗布され加熱乾燥装置32に塗布膜40が搬入されるまでは、下地基板10は水平搬送されることが好ましい。この水平搬送のため、例えば下地基板10をエア浮上させて水平を維持するエア浮上装置33が用いられてもよい。
次に、製造すべき薄膜の平面視形状が矩形であり且つ製造すべき薄膜の面内の膜厚が実質的に均一である場合を例にして、薄膜の製造方法を詳述する。本実施形態に係る薄膜の製造方法は、図4に示したように、試作品形成工程S01と、差異取得工程S02と、判定工程S03と、塗布条件補正工程S04と、薄膜形成工程S05と、を備える。説明の便宜のため、製造すべき薄膜Fを薄膜41と称し、試作品形成工程S01で試作した薄膜Fを試作品(試作薄膜)42と称す。
[試作品形成工程]
試作品形成工程S01では、塗布装置31から塗布液Lを下地基板10上に塗布して塗布膜40を形成し、加熱乾燥装置32内で加熱乾燥させることによって、図5に示したように、製造すべき薄膜41の試作品42を形成する。塗布液Lを下地基板10に塗布する際の塗布条件は、塗布パターン及び塗布量を含む。塗布液Lは、製造すべき薄膜の材料(薄膜材料)と溶媒とを含む。溶媒は、薄膜材料を溶解可能であれば、一種類の溶媒でもよいし、複数の種類の溶媒を含む混合溶媒でもよい。混合溶媒に含まれる種類の異なる溶媒の沸点は異なってもよい。
試作品形成工程S01では、塗布装置31から塗布液Lを下地基板10上に塗布して塗布膜40を形成し、加熱乾燥装置32内で加熱乾燥させることによって、図5に示したように、製造すべき薄膜41の試作品42を形成する。塗布液Lを下地基板10に塗布する際の塗布条件は、塗布パターン及び塗布量を含む。塗布液Lは、製造すべき薄膜の材料(薄膜材料)と溶媒とを含む。溶媒は、薄膜材料を溶解可能であれば、一種類の溶媒でもよいし、複数の種類の溶媒を含む混合溶媒でもよい。混合溶媒に含まれる種類の異なる溶媒の沸点は異なってもよい。
図5では、デバイス形成領域に設けられた陽極層3上に薄膜41を形成する場合を図示しており、薄膜41を二点鎖線で示している。二点鎖線で示された領域は、薄膜41が形成されるべき領域(薄膜形成領域)に対応する。図5の白抜き矢印は、下地基板10の搬送方向を示しており、図1のX方向に対応する。図6及び図7においても同様である。
薄膜41を製造する場合の第1回目の試作品形成工程S01では、薄膜41の所望形状(換言すれば、設計段階での形状)に対応した塗布条件(例えば薄膜41の平面視形状と同じ塗布パターン及び塗布膜40の面内の膜厚が均一になるような塗布量)で、下地基板10に塗布液Lが塗布される。しかしながら、下地基板10を長手方向に搬送しながら加熱乾燥装置32で塗布膜40を加熱乾燥する際、下地基板10の搬送方向において塗布膜40の前側が先に加熱乾燥されることにより塗布膜40内で液流動が生じる。この液流動は、例えば塗布膜40の加熱乾燥状態の違いによる表面張力の差に起因すると考えられ、本願発明者らの知見によれば、下地基板10の搬送方向において後側に塗布液Lが流れる。
その結果、下地基板10の搬送方向において薄膜41の所望形状に対して後側に広がった試作品42(図5参照)が形成される現象、下地基板10の搬送方向において薄膜41の所望形状に対して後側に延びた試作品42(図5参照)が形成される現象、及び、下地基板10の搬送方向において薄膜41の膜厚に対して前側の膜厚が薄くなり、後側の膜厚が厚くなった試作品42が形成される現象の少なくとも一つが生じる場合がある。
[差異取得工程]
差異取得工程S02では、試作品42の形状と、薄膜41の所望形状との差異を取得する。上記差異は、薄膜41の形状を規定する少なくとも一つの形状パラメータを試作品42に対して測定し、その実測値と、上記少なくとも一つの形状パラメータの設計値との差を算出することによって取得される。
差異取得工程S02では、試作品42の形状と、薄膜41の所望形状との差異を取得する。上記差異は、薄膜41の形状を規定する少なくとも一つの形状パラメータを試作品42に対して測定し、その実測値と、上記少なくとも一つの形状パラメータの設計値との差を算出することによって取得される。
例えば、下地基板10の搬送方向において、試作品42の中心からみて前側領域42A及び後側領域42Bのうち少なくとも一箇所で、上記少なくとも一つの形状パラメータを測定する。測定して得られた少なくとも一つの形状パラメータの実測値と、試作品42における上記少なくとも一つの形状パラメータの測定位置に対応する薄膜41内の位置(以下、「対応位置」と称す)での上記少なくとも一つの形状パラメータの設計値との差を算出することによって、試作品42の形状と、薄膜41の所望形状との差異を特定する。
薄膜41の上記対応位置は、試作品42の形状と薄膜41の所望形状とを比較する際に比較対象として適切な位置であればよい。例えば、下地基板10の搬送方向において、薄膜形成領域の中心と試作品42の中心とがズレている場合、下地基板10の搬送方向における試作品42の寸法に対する試作品42の中心から測定位置までの寸法の比と、下地基板10の搬送方向における薄膜41の所望形状の寸法に対する上記所望形状の中心から対応位置までの寸法の比が同じになるように対応位置を設定すればよい。
説明の便宜上、以下の説明では、搬送方向において、試作品42の前辺(第1前辺)42aの位置(第1位置)及び後辺(第1後辺)42bの位置(第2位置)を形状パラメータの測定位置とする。この場合、薄膜41の対応位置は薄膜41の前辺と後辺である。前辺42a及び後辺42bは、試作品42の中心から等距離に位置する。
上記少なくとも一つの形状パラメータは、本実施形態における第1方向である下地基板10の搬送方向に直交する方向(第2方向)の薄膜41の寸法(以下、「幅寸法」と称す)、上記搬送方向の薄膜41の寸法、薄膜41の膜厚等を含む。
形状パラメータとして薄膜41の幅を採用する形態では、試作品42の前辺42a及び後辺42bの寸法を測定すればよい。寸法測定は、メジャーで測定してもよいし、測長器で測定してもよい。
形状パラメータとして薄膜41の膜厚を採用する形態では、前辺42aの少なくとも一箇所での膜厚及び上記後辺42bにおける少なくとも一箇所での膜厚をそれぞれ測定すればよい。膜厚は、膜厚測定器で測定すればよい。前辺42a及び後辺42bそれぞれの複数箇所で膜厚を測定する場合は、測定結果に基づいて、前辺42a及び後辺42bに沿った膜厚分布を算出してもよい。
形状パラメータとして上記搬送方向の薄膜41の寸法を採用する形態では、試作品42の中心をとおり搬送方向に平行な仮想線上の試作品42の寸法を測定すればよい。
差異取得工程S02では、一つの形状パラメータ(例えば、幅寸法、搬送方向の寸法又は膜厚)のみを測定してもよいし、2つ以上の形状パラメータを測定してもよい。
[判定工程]
判定工程S03では、差異取得工程S02で取得された差異が許容レベルか否かを判定する。許容レベルは、製造すべき有機ELデバイス1の性能及び製造誤差などを勘案して予め設定しておけばよい。差異取得工程S02で、2つ以上の形状パラメータ(例えば、幅寸法と膜厚)を測定している場合は形状パラメータ毎に判定する。少なくとも一つの形状パラメータに対応する差異が許容レベルを超えていれば、塗布条件補正要と判定し、少なくとも一つの形状パラメータに対応する全ての判定箇所での差異が許容レベル内である場合、塗布条件補正不要と判定する。
判定工程S03では、差異取得工程S02で取得された差異が許容レベルか否かを判定する。許容レベルは、製造すべき有機ELデバイス1の性能及び製造誤差などを勘案して予め設定しておけばよい。差異取得工程S02で、2つ以上の形状パラメータ(例えば、幅寸法と膜厚)を測定している場合は形状パラメータ毎に判定する。少なくとも一つの形状パラメータに対応する差異が許容レベルを超えていれば、塗布条件補正要と判定し、少なくとも一つの形状パラメータに対応する全ての判定箇所での差異が許容レベル内である場合、塗布条件補正不要と判定する。
判定工程S03において、塗布条件補正要と判定した場合(図4の判定工程S03で「NO」)には、塗布条件補正工程S04を実施する。判定工程S03において塗布条件補正不要と判定した場合(図4の判定工程S03で「YES」)には、薄膜形成工程S05を実施する。
[塗布条件補正工程]
塗布条件補正工程S04では、差異取得工程S02で取得した差異を解消するように、塗布装置31から塗布液Lを塗布するための塗布条件を補正する。
塗布条件補正工程S04では、差異取得工程S02で取得した差異を解消するように、塗布装置31から塗布液Lを塗布するための塗布条件を補正する。
例えば、図5に示したように、試作品42が搬送方向において後側に広がった台形状を有する場合、図6に示したように、塗布膜40における前辺40aの寸法が、薄膜41における対応する寸法設計値より長く、塗布膜40における後辺40bの寸法が、薄膜41における対応する寸法設計値より短くなるように、塗布パターンを補正する。
薄膜41が矩形である場合には、例えば図6に示したように、下地基板10の搬送方向において、前辺(第2前辺)40aより後辺(第2後辺)40bが短い台形状に塗布膜40が形成されるように、塗布パターンを補正し得る。
台形状の塗布膜40では、例えば、幅方向において、前辺40a及び後辺40bの対応する端間との距離d(図6参照)が0.5mm以上とし得る。換言すれば、後辺40bから前辺40aをみた場合において、後辺40bの両側に前辺40aが延びており、幅方向において後辺40bの一端及び他端と前辺40aの対応する一端及び他端との距離がそれぞれ0.5mm以上になり得る。
図5に示した試作品42と薄膜41の所望形状との関係では、上記前辺40aと後辺40bの寸法の関係に加えて、例えば、図6に示したように、下地基板10の搬送方向における寸法が薄膜41の所望形状より短い塗布膜40が形成されるように、塗布パターンを補正してもよい。
図5に示したように、試作品42が搬送方向において後側に延びており試作品42の中心と薄膜41の中心(薄膜形成領域の中心)とがズレている場合には、試作品42の中心と薄膜41の中心が重なるように塗布開始位置(塗布開始タイミング)及び塗布位置の少なくとも一つを調整してもよい。上記塗布開始位置及び塗布位置も塗布条件に含まれてもよい。
差異取得工程S02において、試作品42の膜厚と薄膜41の膜厚設計値とに差異が生じている場合、下地基板10の搬送方向における前辺40aの任意の点での厚さが、その点での膜厚設計値より厚く、後辺40bの任意の点での膜厚が、その点での膜厚設計値より薄くなるように、塗布量を補正してもよい。或いは、前辺40aの膜厚分布曲線が、設計段階での膜厚分布曲線の上側に位置し、後辺40bの膜厚分布曲線が、設計段階での膜厚分布曲線より下側に位置するように、塗布量を補正してもよい。薄膜41の面内において厚さが均一である場合、前辺40aの位置での塗布膜40の膜厚は、例えば後辺40bの位置での塗布膜40の膜厚より10%以上厚くし得るように、塗布量を補正し得る。
塗布条件補正工程S03で塗布条件を補正した後は、補正後の塗布条件を用いて試作品形成工程S01を再度実施した後、差異取得工程S02及び判定工程S03を実施する。判定工程S03で差異が許容レベル内になるまで、試作品形成工程S01、差異取得工程S02、判定工程S03及び塗布条件補正工程を繰り返す。判定工程S03で差異が許容レベル内になれば、上述したように薄膜形成工程S05を実施すする。
[薄膜形成工程]
薄膜形成工程S05では、判定工程S03で差異が許容レベル内と判定された試作品42を形成した場合の試作品形成工程S01での塗布条件と同じ塗布条件を用いて塗布装置31から塗布液Lを改めて下地基板10上に塗布し、塗布膜40を形成する。その後、試作品形成工程S01の場合と同様に、塗布膜40を加熱乾燥装置32で加熱乾燥させることによって、図7に示したように、薄膜41を得る。
薄膜形成工程S05では、判定工程S03で差異が許容レベル内と判定された試作品42を形成した場合の試作品形成工程S01での塗布条件と同じ塗布条件を用いて塗布装置31から塗布液Lを改めて下地基板10上に塗布し、塗布膜40を形成する。その後、試作品形成工程S01の場合と同様に、塗布膜40を加熱乾燥装置32で加熱乾燥させることによって、図7に示したように、薄膜41を得る。
有機ELデバイス1の製造に上記薄膜の製造方法を適用する場合には、例えば長尺の基板2の搬送方向において先頭側(前側)の領域を試作品形成工程S01に使用すればよい。或いは、薄膜形成工程S05で使用する塗布条件を最適化するために試作品形成工程S01、差異特定工程S02、判定工程S03及び塗布条件補正工程S04を、有機ELデバイス1を製造する前に、有機ELデバイス1の製造に使用する基板2とは別の基板を用いて予め実施してもよい。
有機ELデバイス1が有する複数の層のうち材料の異なる2つ以上の層を、上記薄膜の製造方法を用いて形成する場合には、形成すべき上記2つ以上の層それぞれの材料(薄膜材料)を含む塗布液毎に、試作品形成工程S01、差異特定工程S02、判定工程S03及び塗布条件補正工程S04を実施していればよい。
上記薄膜の製造方法では、試作品形成工程S01において試作品42を形成し、差異特定工程S02において薄膜41の所望形状と試作品42の形状との差異を特定している。その後、判定工程S03で差異が許容レベルを超えていると判定されると、塗布条件補正工程S04を実施して、差異を解消するように塗布液Lの塗布条件を変更している。換言すれば、下地基板10を搬送しながら塗布膜40を加熱乾燥処理する際の塗布膜40の変形を補償するように、塗布条件を補正する。そのため、下地基板10を搬送しながら(すなわち、基板2を搬送しながら)、所望形状を有する薄膜41をより確実に形成可能である。
下地基板10を搬送しながら塗布膜40を加熱乾燥処理する際の塗布膜40の変形は、塗布膜40の加熱乾燥状態の違いによって生じる液流動に起因すると考えられる。よって、上記薄膜の製造方法は、塗布液Lに含まれる溶媒が沸点の異なる複数種類の溶媒を含む混合溶媒の場合に有効である。
塗布液Lの粘度が低いと塗布膜40内で液流動が生じやすい。そのため、上記薄膜の製造方法は塗布液の粘度が15cp以下の場合などにより有効であり、粘度が5cp以下の場合に一層有効である。インクジェット印刷法では、塗布液の粘度が低いため、インクジェット印刷法を用いて薄膜を製造する際に、上記薄膜の製造方法を適用することは有効である。インクジェット印刷法は、塗布パターン及び塗布量の調整がし易いので、この点でもインクジェット印刷法を用いて薄膜を製造する際に、上記薄膜の製造方法を適用することは有効である。正孔輸送層を形成する場合の塗布液Lは、液流動が生じ易いので、正孔輸送層の形成に上記薄膜の製造方法を適用することは有効である。
下地基板10を搬送しながら塗布膜40を加熱乾燥処理する際、塗布膜40内で下地基板10の搬送方向において後側に向けて液流動が生じることで、試作品42の形状が薄膜41の所望形状と異なり易い。具体的には、試作品形成工程S01では、例えば、後側が広がった試作品42、後側が厚くなった試作品42等が形成され易い。そのため、例示したように、搬送方向において、塗布膜40の前側において幅寸法が寸法設計値より長くなるように塗布パターンを補正したり、又は、塗布膜40の前側において塗布膜40の膜厚が厚くなるように塗布量を補正したりすることによって、所望形状の薄膜41をより製造し易い。
有機ELデバイス1の製造方法において、有機ELデバイス1が有する複数の層のうちの一つの層(以下、説明の便宜のため、「対象層」と称す)を塗布法(例えばインクジェット印刷法)で形成する際に、上述した加熱乾燥処理中の塗布膜40の変形を補正しないと、対象層が所望の形成領域からはみ出して形成されたり、設計上の厚さと異なる厚さを有するように対象層が形成されたりする。対象層が所望の形成領域からはみ出して形成されると、はみ出し部分が有機ELデバイスの性能低下の原因(例えば、対象層が導電性を有する場合には、陽極層3及び陰極層5間のショートの原因)になる場合があり得るため、上記はみ出し部分を除去する除去作業が必要になる。また、設計上の厚さと異なる厚さを有するように対象層が形成されると、発光領域において発光ムラが生じるおそれがある。
これに対して、上記対象層を図3のフローチャートで例示した薄膜の製造方法で製造すれば、所望形状の対象層(薄膜)を形成できる。そのため、効率的に所望性能を有する有機ELデバイス1を製造可能である。換言すれば、有機ELデバイス1の生産性が向上するとともに、製造歩留まりも向上する。
以上、本発明の種々の実施形態を説明した。しかしながら、本発明は、例示した種々の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示される範囲とともに、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
製造すべき薄膜41の平面視形状は矩形に限定されず、正方形を含む他の四角形でもよいし、四角形以外の多角形でもよいし、円形でもよい。
形状パラメータが、薄膜の第1方向(搬送方向)に直交する第2方向の薄膜の寸法及び薄膜の膜厚である形態では、試作品における形状パラメータの測定位置は、基板の搬送方向である第1方向において、試作品の中心より前側領域及び後側領域それぞれで上記中心から離れた位置で測定すれば、試作品と、製造すべき薄膜の所望形状との差異を特定し易い。前側領域及び後側領域それぞれでの形状パラメータの測定位置と、上記中心との距離は、同じであっても、異なっていてもよい。
前側領域及び後側領域内の第1位置及び第2位置で試作品の第2方向の寸法(幅寸法)を測定した結果、試作品の幅が所望形状の薄膜の幅に対して前側で狭くなっている場合、塗布膜における上記第1位置の対応位置での幅寸法が、上記薄膜における対応する寸法設計値より長く、上記塗布膜における上記第2位置の対応位置での幅寸法が上記薄膜における対応する寸法設計値より短くなるように、上記塗布パターンを補正すればよい。
前側領域及び後側領域内の第1位置及び第2位置それぞれで試作品の第2方向における少なくとも一箇所で試作品の膜厚を測定した結果、試作品の膜厚が所望形状の薄膜の膜厚に対して前側で薄くなっている場合、塗布膜における上記第1位置の対応位置において上記第2方向に沿った第1仮想線上の膜厚が、製造すべき薄膜の対応する線上の膜厚設計値より厚く、塗布膜における上記第2位置の対応位置において上記第2方向に沿った第2仮想線上の膜厚が、製造すべき薄膜の対応する線上の膜厚設計値より薄くなるように、上記塗布量を補正すればよい。
形状パラメータが、薄膜の第1方向(薄膜を製造する際の基板の搬送方向)の寸法である場合、薄膜の所望形状に応じて測定位置を調整すればよい。例えば薄膜が矩形又は正方形である場合、試作品の中心をとおり第1方向に平行な仮想線上の試作品の寸法を測定すれば、試作品と、製造すべき薄膜の所望形状との差異を特定し得る。例えば薄膜が矩形又は正方形以外の形状(例えば、円形)である場合、第2方向において、試作品の中心をとおり第1方向に平行な仮想線の両側の領域それぞれの少なくとも一箇所で試作品の第1方向の寸法を測定すれば、試作品と、製造すべき薄膜の所望形状との差異を特定し易い。
差異特定工程において、試作品における形状パラメータの測定位置は、試作品と、製造すべき薄膜の所望形状との差異を特定できれば、限定されない。例えば、第1方向及び第2方向の少なくとも一方に沿って試作品を複数箇所で仮想的にスライスした場合の試作品の各断面において、上記少なくとも一つの形状パラメータを測定すればよい。
形状パラメータの種類及び測定箇所が多いほど、より正確に差異を特定できるので、所望の薄膜をより製造可能である。
有機ELデバイスの製造方法及び薄膜の製造方法で使用される基板は、長尺の基板ではなく枚葉の基板であってもよい。この場合でも、薄膜を製造する際には、基板を一方向に搬送しながら基板上に薄膜を製造すればよい。
薄膜の製造方法の試作品形成工程において試作品が形成される基板は、製造すべき薄膜が形成される基板と異なっていてもよい。
これまで説明した有機ELデバイスの製造方法は、基板側から光を発する形態に限定されず、基板と反対側から光を発生する有機ELデバイス(トップエミッション型の有機ELデバイス)にも適用可能である。第1電極層及び第2電極層がそれぞれ陽極層及び陰極層である形態を説明したが、第1電極層が陰極層で、第2電極層が陽極層であってもよい。上記有機ELデバイスの製造方法は、有機ELデバイス以外の有機電子デバイス、例えば、有機太陽電池、有機フォトディテクタ、有機トランジスタなどの製造にも適用可能であるし、機能層が有機材料を有しない電子デバイスの製造にも用可能である。本発明の一側面に係る薄膜の製造方法は、電子デバイスが有する層を形成する場合に限らない。
1…有機ELデバイス(電子デバイス)、2…基板、3…陽極層(第1電極層)、4…デバイス機能部、5…陰極層(第2電極層)、31…塗布装置、40…塗布膜、40a…前辺(第2前辺)、40b…後辺(第2後辺)、41…薄膜、42…試作品、42a…前辺(第1前辺)、42b…後辺(第2後辺)、L…塗布液。
Claims (12)
- 薄膜を製造する方法であって、
第1方向に搬送されている基板上に、薄膜材料及び溶媒を含む塗布液を塗布して形成された塗布膜を加熱乾燥することによって、前記薄膜の試作品を形成する試作品形成工程と、
前記試作品形成工程で形成された前記試作品の形状と前記薄膜の所望形状との差異を取得する差異取得工程と、
前記差異取得工程で取得された前記差異が許容レベル内であるか否かを判定する判定工程と、
前記判定工程において前記差異が許容レベルを超えていると判定された場合、前記試作品形成工程における塗布条件を補正する塗布条件補正工程と、
前記判定工程において前記差異が許容レベル内であると判定された場合、前記第1方向に搬送されている基板上に、前記試作品形成工程における塗布条件で前記塗布液を塗布して形成された塗布膜を加熱乾燥することによって前記薄膜を得る薄膜形成工程と、
を備え、
前記塗布条件補正工程を実施した場合、補正後の前記塗布条件で前記試作品形成工程を実施し、
前記差異取得工程では、前記薄膜の形状を規定するための少なくとも一つの形状パラメータを前記試作品で測定して得られた実測値と、前記少なくとも一つの形状パラメータの設計値との差を算出することによって、前記差異を取得する、
薄膜の製造方法。 - 前記塗布条件補正工程では、前記差異取得工程で取得された前記差異に基づいて、前記塗布膜を加熱乾燥する際の前記塗布膜の変形を補償するように、前記塗布条件を補正する、
請求項1に記載の薄膜の製造方法。 - 前記差異取得工程では、前記少なくとも一つの形状パラメータを、前記第1方向における前記試作品の中心からみて前側領域及び後側領域それぞれにおいて、前記中心から離れた位置で測定する、
請求項1又は2に記載の薄膜の製造方法。 - 前記少なくとも一つの形状パラメータは、前記第1方向に直交する第2方向の前記薄膜の寸法、前記第1方向の前記薄膜の寸法及び前記薄膜の膜厚の少なくとも一つを含む、
請求項1〜3の何れか一項に記載の薄膜の製造方法。 - 前記少なくとも一つの形状パラメータは前記第2方向の前記薄膜の寸法を含み、
前記塗布条件補正工程では、前記塗布条件が有する塗布パターンを補正する、
請求項4に記載の薄膜の製造方法。 - 前記差異取得工程では、前記第1方向における前記試作品の中心からみて前記第1方向において前記試作品の前側領域内の第1位置及び前記試作品の後側領域内の第2位置それぞれにおける前記試作品の前記第2方向の寸法を測定し、
前記塗布条件補正工程では、前記塗布膜における前記第1位置の対応位置での前記第2方向の寸法が、前記薄膜における対応する寸法設計値より長く、前記塗布膜における前記第2位置の対応位置での前記第2方向の寸法が前記薄膜における対応する寸法設計値より短くなるように、前記塗布パターンを補正する、
請求項5に記載の薄膜の製造方法。 - 前記所望形状を有する前記薄膜の平面視形状は矩形であり、
前記差異取得工程では、前記第1方向において前記試作品の第1前辺及び第1後辺の寸法をそれぞれ測定し、
前記塗布条件補正工程では、前記第1前辺に対応する前記塗布膜の第2前辺の寸法が前記第1後辺に対応する前記塗布膜の第2後辺より長い台形状になるように前記塗布パターンを補正する、
請求項5又は6に記載の薄膜の製造方法。 - 前記少なくとも一つの形状パラメータは前記薄膜の膜厚を含み、
前記塗布条件補正工程では、前記塗布条件が有する塗布量を補正する、
請求項4〜7の何れか一項に記載の薄膜の製造方法。 - 前記差異取得工程では、前記第1方向における前記試作品の中心からみて前記第1方向において前記試作品の前側領域内の第1位置及び前記試作品の後側領域内の第2位置それぞれにおいて前記試作品の前記第2方向における少なくとも一箇所で前記試作品の膜厚を測定し、
前記塗布条件補正工程では、前記塗布膜における前記第1位置の対応位置において前記第2方向に沿った第1仮想線上の膜厚が前記薄膜の対応する線上の膜厚設計値より厚く、前記塗布膜における前記第2位置の対応位置において前記第2方向に沿った第2仮想線上の膜厚が、前記薄膜の対応する線上の膜厚設計値より薄くなるように、前記塗布量を補正する、
請求項8に記載の薄膜の製造方法。 - 前記所望形状を有する前記薄膜の平面視形状は矩形であり、
前記所望形状を有する前記薄膜の膜厚は面内において実質的に均一であり、
前記差異取得工程では、前記第1方向において前記試作品の第1前辺上及び第1後辺上における膜厚を測定し、
前記塗布条件補正工程では、前記第1前辺に対応する前記塗布膜の第2前辺上の膜厚が前記第1後辺に対応する前記塗布膜の第2後辺上の膜厚より厚くなるように前記塗布量を補正する、
請求項8又は9に記載の薄膜の製造方法。 - 前記試作品形成工程、前記差異取得工程、前記判定工程及び前記塗布条件補正工程を、異なる薄膜材料を含む塗布液毎に行う、
請求項1〜10の何れか一項に記載の薄膜の製造方法。 - 請求項1〜11の何れか一項に記載の薄膜の製造方法を含む、
電子デバイスの製造方法。
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