JP2020115024A - モータのブリーザ装置 - Google Patents

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浩太 井上
Kota Inoue
浩太 井上
山下 徹
Toru Yamashita
徹 山下
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Abstract

【課題】コストアップを伴うことなく既存のモータに簡単に組み込むことができ、遠心力による気液分離効果によってオイルの吹き出しを確実に防ぐことができるモータのブリーザ装置を提供すること。【解決手段】モータ軸2がモータケース3内で垂直に起立するよう水平置きされるモータ1に設けられるブリーザ装置10は、中空のモータ軸2の内部に組み込まれ、モータケース3内のエアを含んだオイルを遠心力によってエアとオイルとに分離し、分離したオイルをモータ軸2の内部へと排出し、分離したエアをモータケース3の外部へと排出するよう構成されている。ここで、ブリーザ装置10は、ケーシング11と、該ケーシング11の内部に回転可能に支持された回転軸12と、該回転軸12に固定された主羽根車13と分離羽根14とを備えている。【選択図】図1

Description

本発明は、モータに設けられるブリーザ装置に関する。
例えば、モータにおいては、モータケース内の密閉された空間内でモータ軸とこれに取り付けられたロータが回転するが、これらの回転による発熱や外気温の変化等によってモータケースの内力が外気圧に対して変化し、その圧力変動が所定値以上になるとオイルのモータケース外への吹き出し等の種々の不具合が発生する。このため、モータケースの内圧の変動を一定以下に抑えるためのブリーザ装置が設けられている。このブリーザ装置は、モータケースの内圧の変動によって呼吸作用(息継ぎ作用)を成すものであって、内圧が一定値を超えて上昇すると内気をモータケース外へと排出し、逆に内圧が一定値を超えて低下すると外気をモータケース内に導入する機能を果たすものである。
かかるブリーザ装置に関して、例えば特許文献1,2には、車両の自動変速機等に設けられるものが提案されている。具体的には、動力伝達経路に配置されるカウンタシャフト等の動力伝達軸の中空部をブリーザ室とし、該動力伝達軸の回転の遠心力による気液分離効果によって、呼吸(息継ぎ)によるオイルの吹き出しを防ぐようにしている。
また、特許文献3には、ハウジングの天板の周縁に空気抜き孔が形成された減速機のエアブリーザ装置において、ハウジングの側板から一対の壁部を内方に向けて突設し、これらの壁部の先端に隙間を設ける構成が提案されている。これによれば、ハウジング内で水平方向に回転するギヤの左右何れの回転に対しても、ハウジング外へのオイルの吹き出しを抑制することができる。
特開2003−161362号公報 国際公開第2012/132738号 特開2010−096328号公報
しかしながら、特許文献1,2において提案されたブリーザ装置においては、エンジン等の駆動源の回転が減速されて伝達されるカウンタシャフト等の動力伝達軸の中空部をブリーザ室としているため、駆動源よりも回転速度が遅いブリーザ室での気液分離効果が弱く、ブリーザ装置が所望のブリーザ機能を十分果たすことができない可能性がある。
また、特許文献3において提案されたブリーザ装置においては、オイルの吹き出しを防ぐ目的のためにハウジングの形状が複雑化し、その製造コストが高くなるという問題がある。
本発明は、上記問題に鑑みてなされたもので、その目的は、コストアップを伴うことなく既存のモータに簡単に組み込むことができ、遠心力による気液分離効果によってオイルの吹き出しを確実に防ぐことができるモータのブリーザ装置を提供することにある。
上記目的を達成するため、本発明は、モータ軸(2)がモータケース(3)内で垂直方向に延びるように水平置きされるモータ(1)に設けられるブリーザ装置(10)であって、中空のモータ軸(2)の内部に組み込まれ、モータケース(3)内のエアを含んだオイルを遠心力によってエアとオイルとに分離し、分離したオイルをモータ軸(2)の内部へと排出し、分離したエアをモータケース(3)の外部へと排出するように構成されることを特徴とする。
本発明にかかるモータのブリーザ装置によれば、ブリーザ装置を回転数の高いモータ軸の内部に組み込んだため、該ブリーザ装置の遠心力による気液分離効果が高められ、モータケース内のエアを含んだオイルからエアが効果的に分離される。そして、分離されたエアは、モータケース外へと排出されるため、モータケースの内圧の上昇が抑えられて該モータケースからのオイルの吹き出しが防がれる。また、エアが分離除去されたオイルは、中空のモータ軸の内部へと排出されるため、モータ軸がオイルによって冷却されてその温度上昇が抑えられる。
また、ブリーザ装置は、モータ軸の内部に簡単に組み込むことができるため、既存のモータに手を加える必要がなく、モータの設計変更等に伴うコストアップを招くことがない。
また、本発明では、ケーシング(11)と、ケーシング(11)の内部に回転可能に支持された回転軸(12)と、回転軸(12)に固定された主羽根車(13)及び分離羽根(14)と、を備え、主羽根車(13)は、ケーシング(11)内にエアを吸い込むと共に該吸い込んだエアに含まれるオイルを分離する機能を有し、分離羽根(14)は、主羽根車(13)で分離したオイルに残存するエアを分離する機能を有するようにしてもよい。
この構成によれば、ケーシング内で回転軸と共に回転する主羽根車によってモータケース内のエアを含んだオイルがケーシング内に吸い込まれてエアとオイルとに分離される。また、分離したエアに含まれる(微量の)オイルは、ケーシング内で回転する分離羽根によって確実に分離されて除去される。
また、本発明では、ケーシング(11)に、エアを含んだオイルを当該ケーシング(11)内へと流入させる流入通路(20)を接線方向に開口させてもよい。
この構成によれば、モータケース内のエアを含んだオイルが流入通路から当該ブリーザ装置のケーシング内へと接線方向に流入するため、このエアを含んだオイルがケーシング内で旋回する。このため、エアを含んだオイルは、旋回に伴う遠心力による気液分離効果によってエアとオイルとに分離される。
また、本発明では、流入通路(20)にオリフィス(21)を設けてもよい。
この構成によれば、エアを含んだオイルは、流入通路を流れる過程でオリフィスによって絞られてその流速が増すため、ケーシング内に強い旋回流が発生し、当該ブリーザ装置の遠心力による気液分離効果が一層高められる。
また、本発明では、モータ軸(2)の内周にリングギヤ(18)を取り付け、該リングギヤ(18)に、回転軸(12)の軸方向一端に結着されたピニオンギヤ(17)を噛合させ、モータ軸(2)の回転をリングギヤ(18)とピニオンギヤ(17)を介して回転軸(12)に伝達して該回転軸(12)を回転駆動するようにしてもよい。
この構成によれば、モータ軸の回転が互いに噛合するリングギヤとピニオンギヤを経てブリーザ装置の回転軸へと伝達されるため、該回転軸とこれに取り付けられた主羽根車及び分離羽根が回転して当該ブリーザ装置が所望の気液分離機能を果たすようになる。
本発明にかかるモータのブリーザ装置によれば、コストアップを伴うことなく既存のモータに簡単に組み込むことができ、遠心力による気液分離効果によってオイルの吹き出しを確実に防ぐことができる。
本発明に係るブリーザ装置を備えるモータの縦断面図である。 本発明に係るブリーザ装置の縦断面図である。 図2のA−A線断面図である。 本発明に係るブリーザ装置の作動原理を説明するための斜視図である。
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明に係るブリーザ装置を備えるモータの縦断面図、図2は本発明に係るブリーザ装置の縦断面図、図3は図2のA−A線断面図である。
図1に示すモータ1は、モータ軸2がモータケース3内で垂直方向(図の上下方向)に延びるように水平置きされた3相のブラシレスモータであって、モータ軸2の外周に取り付けられたロータ4と、該ロータ4の周囲に固設されたリング状のステータ5を備えている。ここで、モータケース3は、ケース本体3Aの上下の開口部を上カバー3Bと下カバー3Cによってそれぞれ覆って構成されている。また、ステータ5は、複数本(図1には1本のみ図示)のボルト6によってモータケース3のケース本体3A内の底部に取り付けられている。なお、図示しないが、ロータ4には、複数の永久磁石が内蔵されており、ステータ5には、3相分のコイルが巻装されている。また、モータケース3内の底部には、潤滑用のオイルが貯留されており、ロータ4の一部は、オイル内に浸漬されている。
ところで、モータ軸2は、中空軸として構成されており、その上端部と下端部の外周は、上下のボールベアリング7a,7bによってモータケース3の上カバー3Bと下カバー3Cにそれぞれ回転可能に支持されている。このモータ軸2の下端には、ギヤG1が一体に形成されており、このギヤG1は、その横に配されたギヤG2に噛合し、ギヤG2は、これの横に配されたギヤG3に噛合している。ここで、これらのギヤG1,G2,G3は、その径がこの順に大きくなっており、これらは減速ギヤ列を構成している。なお、ギヤG3は、上下のボールベアリング8a,8bによってモータケース3のケース本体3Aと下カバー3Cによってそれぞれ回転可能に支持されている。
以上のように構成されたモータ1のステータ5に巻装された不図示のコイルに通電されると、該コイルを電流が流れることによる電磁誘導作用によってロータ4とモータ軸2が上下方向の軸を中心として水平回転する。モータ軸2の回転は、該モータ軸2の下端に一体に形成されたギヤG1と、これに噛合するギヤG2、該ギヤG2に噛合するギヤG3を順次経て減速されながら不図示の動力伝達軸等へと伝達される。なお、モータケース3内においては、底部に貯留されているオイルがロータ4によって周囲に飛散して各部の潤滑と冷却に供せられる。
ところで、本実施の形態においては、モータ1のモータ軸2の中空部に、本発明に係るブリーザ装置10が組み込まれている。このブリーザ装置10は、図2に詳細に示すように、円筒状のケーシング11と、該ケーシング11の内部に回転可能に支持された回転軸12と、該回転軸12に固定された主羽根車13と分離羽根14とを備えている。
上記ケーシング11は、図1に示すように、モータ軸2の上部内周に挿通固着されており、その下端には、中空の軸受ブロック15が挿通固着されている。ここで、回転軸12の下端部は、軸受ブロック15の中心を上下方向に貫通しており、この貫通部は、軸受ブロック15の上下に固定されたボールベアリング16a,16bによって軸受ブロック15に回転可能に支持されている。そして、回転軸12の下端には、ピニオンギヤ17が結着されており、このピニオンギヤ17は、図1に示すように、モータ軸2の内周に結着されたリングギヤ18に噛合している。
また、ケーシング11内の中心を上下方向に延びる回転軸12の高さ方向中間部には、主羽根車13が取り付けられており、同回転軸12の上端部には、分離羽根14が取り付けられている。そして、ケーシング11の下部外周には、後述のように当該ブリーザ装置10によって分離されたオイルをモータ軸2の中空部へと排出するための複数(図示例では、2つ)の排出口19(図2参照)が開口している。そして、ケーシング11の分離羽根14が配置された上端部外周には、図2に示すように、エアを含んだオイルをケーシング内へと導入するための2本の流入通路20が互いに対向するように接線方向に取り付けられており、各流入通路20には、オリフィス21がそれぞれ設けられている。なお、ケーシング11内の上部には、各流入通路20から流入するエアを含んだオイルを下方へと案内するための漏斗状のガイド22が設けられている。また、ケーシング11の上端部には、後述のように当該ブリーザ装置10によって分離されたエアをケーシング11の外部へと排出するための排気口23が開口している。
次に、以上のように構成されたブリーザ装置10の作用について説明する。
前述のように、モータ1が起動されてモータケース3内でロータ4とモータ軸2が一体に回転すると、モータ軸2の回転がリングギヤ18とこれに噛合するピニオンギヤ17を経てブリーザ装置10の回転軸12へと伝達され、該回転軸12とこれに取り付けられた主羽根車13と分離羽根14がケーシング11内で高速で回転する。すると、モータケース3の内部に飛散するエアを含んだオイルは、図3に矢印にて示すように、主羽根車13の回転によって2つの流入通路20からケーシング11内へと接線方向に流入する。ここで、各流入通路20にはオリフィス21が設けられているため、各流入通路20を流れるエアを含んだオイルがオリフィス21によって絞られてその流速が高められ、エアを含んだオイルは、ケーシング11内の上部へと接線方向から勢い良く流入する。
上述のように、エアを含んだオイルがブリーザ装置10のケーシング11内の上部に接線方向から勢い良く流入すると、このエアを含んだオイルは、ガイド22によってケーシング11内を下方へと案内され、ケーシング11内を旋回しながら旋回流となって下方へと進む。そして、その過程で、後述の原理によってエアがオイルから分離され、分離されたエアは、ケーシング11内を上方へと流れ、その課程で分離羽根14によってオイルが完全に分離除去された後、ケーシング11の上端に開口する排気口23からケーシング11及びモータケース3の外部へと排出される。
他方、エアが分離除去されたオイルは、ケーシング11内を主羽根車13によって径方向外方へと飛ばされた後にケーシング11内の下部へと流れ、そこに開口する排出口19からモータ軸2の内部へと排出される。そして、モータ軸2の内部へと排出されたオイルは、モータ軸2の内部を落下する課程で該モータ軸2を冷却するため、モータ軸2の温度上昇が抑えられる。
以上の作用が繰り返されることによって、エアを含んだオイルから分離されたエアは、モータケース3外へと排出されるため、モータケース3の内圧の上昇が抑えられ、モータケース3外へのオイルの吹き出しが確実に防がれる。また、オイルからエアが分離除去されることによって、オイルの劣化と潤滑機能の低下が防がれる。
そして、エアが分離除去されたオイルは、ケーシング11からモータ軸2の内部へと排出されて該モータ軸2の内部を下方へと流れる過程で当該モータ軸2を冷却するため、前述のようにモータ軸2の温度上昇が抑えられる。
ここで、ブリーザ装置10の動作原理を図4に基づいて以下に説明する。
即ち、図4はブリーザ装置10の動作原理を説明するための斜視図であり、図示のようにケーシング11の上部外周に接線方向に取り付けられた2つの流入通路20からエアを含んだオイルがケーシング11の内部に接線方向から流入すると、このエアを含んだオイルは、ケーシング11内を旋回しながら下方に向かって進むが、その過程で、エアよりも比重が大きなオイルは、これに作用する大きな遠心力によってケーシング11の外周部に集積され、比重の小さなエアは、ケーシング11内の中心部に集積される。
ここで、オイルの比重をγ、エアの比重をγ、旋回半径をr、旋回角速度をωとすると、オイルに作用する遠心力Fとエアに作用する遠心力Fは、それぞれ次式によって表される。
=γ・r・ω …(1)
=γ・r・ω …(2)
ここで、オイルの比重γはエアの比重γよりも大きく、両者間には次式の大小関係が成立する。
γ>γ …(3)
従って、式(1)〜(3)式より、
>F …(4)
となり、オイルに作用する遠心力Fの方がエアに作用する遠心力Fよりも大きいため、前述のようにオイルが遠心力Fによってケーシング11内の外周部に集積され、エアはケーシング11内の中心部に集積され、この結果、エアがオイルから分離される。
以上のように、本実施の形態によれば、ブリーザ装置10を回転数の高いモータ軸2の内部に組み込んだため、該ブリーザ装置10の遠心力による気液分離効果が高められ、モータケース3内のエアを含んだオイルからエアが効果的に分離される。そして、分離されたエアは、モータケース3の外へと排出されるため、モータケース3の内圧の上昇が抑えられて、該モータケース3からのオイルの吹き出しが防がれる。また、エアが分離除去されたオイルは、中空のモータ軸2の内部へと排出されるため、モータ軸2がオイルによって冷却されてその温度上昇が抑えられる。
また、ブリーザ装置10は、モータ軸2の内部に簡単に組み込むことができるため、既存のモータ1に手を加える必要がなく、モータ1の設計変更等に伴うコストアップを招くことがない。
本発明は、以上説明した実施の形態に適用が限定されるものではなく、特許請求の範囲及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内で種々の変形が可能である。
1 モータ
2 モータ軸
3 モータケース
10 ブリーザ装置
11 ケーシング
12 回転軸
13 主羽根車
14 分離羽根
17 ピニオンギヤ
18 リングギヤ
19 排出口
20 流入通路
21 オリフィス
22 ガイド
23 排気口

Claims (5)

  1. モータ軸がモータケース内で垂直方向に延びるように水平置きされるモータに設けられるブリーザ装置であって、
    中空の前記モータ軸の内部に組み込まれ、前記モータケース内のエアを含んだオイルを遠心力によってエアとオイルとに分離し、分離したオイルを前記モータ軸の内部へと排出し、分離したエアを前記モータケースの外部へと排出するよう構成されることを特徴とするモータのブリーザ装置。
  2. ケーシングと、
    前記ケーシングの内部に回転可能に支持された回転軸と、
    前記回転軸に固定された主羽根車及び分離羽根と、を備え、
    前記主羽根車は、前記ケーシング内に吸い込んだエアを含んだオイルをエアとオイルとに分離する機能を有し、
    前記分離羽根は、前記主羽根車で分離したオイルに残存するエアを分離する機能を有する
    ことを特徴とする請求項1に記載のモータのブリーザ装置。
  3. 前記ケーシングに、エアを含んだオイルを当該ケーシング内へと流入させる流入通路を接線方向に開口させたことを特徴とする請求項1又は2に記載のモータのブリーザ装置。
  4. 前記流入通路にオリフィスを設けたことを特徴とする請求項3に記載のモータのブリーザ装置。
  5. 前記モータ軸の内周にリングギヤを取り付け、該リングギヤに、前記回転軸の軸方向一端に結着されたピニオンギヤを噛合させ、前記モータ軸の回転を前記リングギヤと前記ピニオンギヤを介して前記回転軸に伝達して該回転軸を回転駆動することを特徴とする請求項2〜4の何れかに記載のモータのブリーザ装置。
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