JP2020114809A - 黄斑浮腫抑制剤 - Google Patents

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英彰 原
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雅光 嶋澤
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Shinsuke Nakamura
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Abstract

【課題】新たな黄斑浮腫抑制剤を提供すること。【解決手段】本発明では、アディポネクチンの作用を阻害する物質を有効成分とする、黄斑浮腫抑制剤を提供する。前記アディポネクチンの作用を阻害する物質は、抗アディポネクチン抗体、又はアディポネクチン受容体のアンタゴニストであってもよい。また、本発明では、アディポネクチンの作用を阻害する物質を有効成分とする、網膜内炎症抑制剤も提供する。更に、本発明では、アディポネクチンの作用を阻害する物質を有効成分とする、VEGF発現抑制剤も提供する。加えて、本発明では、アディポネクチンの作用を阻害する物質を有効成分とする、網膜菲薄化改善剤も提供する。また、本発明では、アディポネクチンの作用を阻害する物質を有効成分とする、網膜血管安定化剤も提供する。【選択図】なし

Description

本発明は、黄斑浮腫抑制剤に関する。
中心窩を含む黄斑は、ヒトがものを見るための最重要器官である。黄斑浮腫とは、糖尿病網膜症や静脈閉塞症、加齢黄斑変性で認められる病態であり、網膜の中心である黄斑に血液成分が漏れ出して溜まり、むくんでいる状態(浮腫)のことである。この黄斑浮腫は、視力低下や視野欠損の主原因の一つとして知られている。
黄斑浮腫に対しては、血管透過性因子のうち血管内皮細胞増殖因子(vascular endothelial growth factor:VEGF)が重要であり、VEGFを標的とした抗VEGF薬による治療が汎用されている(例えば、特許文献1等)。
米国特許第7,303,746号明細書
しかしながら、前述した抗VEGF薬を用いる治療法においては、十分な効果を示さないケースや再発するケースなど、病態の進行を抑制できない症状が存在することが問題となっていた。また、この治療法は根本治療ではないため、病態が改善されない場合等には半永久的に投薬が必要となるケースも少なくない。したがって、黄斑浮腫に効果のある新たな薬剤の開発が望まれているという実情がある。
そこで、本発明では、新たな黄斑浮腫抑制剤を提供することを主目的とする。
すなわち、本発明では、まず、アディポネクチンの作用を阻害する物質を有効成分とする、黄斑浮腫抑制剤を提供する。
本発明では、前記アディポネクチンの作用を阻害する物質は、抗アディポネクチン抗体、又はアディポネクチン受容体のアンタゴニストであってもよい。
また、本発明では、前記黄斑浮腫抑制は、網膜血流改善、網膜内炎症抑制、網膜の血管安定化、VEGF発現抑制、及び網膜菲薄化改善からなる群のいずれか1種以上に基づくものであってもよい。
更に、本発明では、前記網膜内炎症抑制は、炎症関連因子の増加抑制に基づくものであってもよい。
加えて、本発明では、前記網膜血管安定化は、網膜血管の透過性亢進抑制、及び/又は血管周皮細胞脱落抑制に基づくものであってもよい。
また、本発明では、アディポネクチンの作用を阻害する物質を有効成分とする、網膜内炎症抑制剤も提供する。
更に、本発明では、アディポネクチンの作用を阻害する物質を有効成分とする、VEGF発現抑制剤も提供する。
加えて、本発明では、アディポネクチンの作用を阻害する物質を有効成分とする、網膜菲薄化改善剤も提供する。
また、本発明では、アディポネクチンの作用を阻害する物質を有効成分とする、網膜血管安定化剤も提供する。
本発明によれば、新たな黄斑浮腫抑制剤を提供することができる。
なお、ここに記載された効果は、必ずしも限定されるものではなく、本開示中に記載されたいずれかの効果であってもよい。
実施例1の結果を示す図である。 実施例2の結果を示す図である。 実施例3の結果を示す図である。 実施例4の結果を示す図である。 実施例5の結果を示す図である。 実施例6の結果を示す図である。 実施例7の結果を示す図である。 実施例8の結果を示す図である。 実施例9の結果を示す図である。 実施例10の結果を示す図である。 実施例11の結果を示す図である。
以下、本発明を実施するための好適な形態について説明する。
以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本技術の範囲が狭く解釈されることはない。
1.黄斑浮腫抑制剤
本発明に係る黄斑浮腫抑制剤は、アディポネクチンの作用を阻害する物質を有効成分とすることを特徴とする。
本願発明者らは、これまでの研究から網膜静脈閉塞症モデルにおいてVEGFの発現増加が一過性であるため、硬性白斑や血管新生緑内障などの病態進行の原因因子として、VEGF以外の関与について検討することが必要であると考えた。そこで、網膜内浮腫の形成や虚血病態の進行に対する新規標的因子として、アディポネクチンの関与について検討することとした。
アディポネクチンは、脂肪細胞から特異的に産生及び分泌される分子量約30KDaのアディポカインである。このアディポネクチンは、補体のC1qと構造上の相同性があり、N末端よりシグナルペプチド、コラーゲン様ドメイン、球状ドメインよりなる。血中では12−18量体の高分子量アディポネクチン、6量体の中分子量アディポネクチン、3量体の低分子量アディポネクチンの3種類の多量体を形成している。従来、アディポネクチンを補充することで、循環器系疾患、糖尿病、肥満などの生活習慣病の改善に繋がることが知られている。
本願発明者らが鋭意実験検討を行った結果、後述する実施例に示す通り、黄斑浮腫患者の硝子体液サンプルにおいて、意外にも、アディポネクチンが特異的に増加していることを発見した。加えて、網膜内浮腫動物モデルにアディポネクチンの作用を阻害する物質を投与すると、網膜内層の浮腫を抑制するだけでなく、網膜の血流を改善することが明らかになった。したがって、アディポネクチンは、病態の本質的な機序に寄与していることが判明した。
また、本願発明者らは、網膜内浮腫動物モデルにアディポネクチンの作用を阻害する物質を投与した網膜で、炎症関連因子であるTNF-α、STAT-3リン酸化タンパク質の発現上昇を抑制したことを確認し、前記物質が網膜内の炎症を抑制したことも明らかにした。更に、本願発明者らは、アディポネクチンが網膜血管内皮細胞において、炎症誘導因子ICAM-1の発現を増加させることも見出した。
加えて、本願発明者らは、血管の安定化に密接に関連するAngiopoietin/Tie-2シグナルへの影響を見るためにTie-2自体の発現を調べたところ、アディポネクチンの作用を阻害する物質の投与は、網膜内浮腫動物モデルでTie-2が有意に発現低下するのを抑制していることを発見した。また、驚くべきことに、前記物質の投与は、浮腫の主要ファクターであるVEGFの発現も抑制していることも分かった。更には、前記物質の投与は、網膜虚血による菲薄化した網膜を改善させる作用があることも見出した。
また、本願発明者らは、アディポネクチンの作用を阻害する物質がペリサイト(血管周皮細胞)のマーカーであるNG-2の発現を減少させることを確認した。Angiopoietin-2は、一般的にAng-1-Tie-2の血管安定化シグナルを遮断することで血管を不安定化させることが知られているが、本願発明者らは、前記物質はAngiopoietin-2の発現増加を抑制することも確認した。したがって、アディポネクチンの作用を阻害する物質が、網膜血管透過性亢進を抑制し、網膜血管安定化作用を有することを見出した。更には、本願発明者らは、網膜内浮腫動物モデルにおいて、アディポネクチンが顕著に増加し、ペリサイトが脱落することを確認した。更に、アディポネクチンの作用を阻害する物質を前記モデルに投与することで、ペリサイトのマーカーであるNG-2の発現低下を抑制することから、前記物質がペリサイトの脱落を抑止できることも見出した。ペリサイトは、基底膜側から毛細血管や細静脈の内皮細胞の周囲に接着している細胞である。このペリサイトは、血管内皮細胞とともに基底膜で包まれて、内皮細胞と直接接触して存在しており、血管の安定化に寄与する機能を有することが知られている。したがって、このことからもアディポネクチンの阻害は網膜内の炎症抑制効果のみならず、ペリサイトを保護することにより、網膜血管安定化作用を発揮することが分かった。
これらの結果はすべて、病態改善を示唆するデータであり、網膜内のアディポネクチンの阻害が浮腫病態を改善させることを示唆している。一方で、汎用されている抗VEGF抗体を投与しても眼内アディポネクチンを抑制されないことも確認した。
以上のことから、本発明は、黄斑浮腫の根本治療に有用であることが示唆され、黄斑浮腫患者の視力低下の抑制や失明率の軽減に寄与し、該患者の社会復帰や医療費の削減にも繋がると考えられる。また、本発明は、現在の黄斑浮腫患者に対する抗VEGF薬の連投による身体的及び経済的負担の軽減に有用である。更には、黄斑浮腫の病態機序改善に寄与することも期待でき、社会生産性の向上に繋がる。
本発明において、アディポネクチンの作用を阻害する物質としては特に限定されず、例えば、抗アディポネクチン抗体、アディポネクチン受容体のアンタゴニスト、アディポネクチン受容体の下流シグナルの阻害剤、アディポネクチン発現阻害剤、アディポネクチン受容体発現阻害剤等が挙げられる。本発明では、これらを一種又は二種以上組み合わせて用いてもよい。
抗アディポネクチン抗体は、モノクローナル抗体及びポリクローナル抗体のいずれも利用でき、公知の手法によって適当な動物に免疫して得ることができるが、市販品として入手することも可能である。抗マウスアディポネクチン抗体としては、例えば、「Anti-mouse Adiponectin monoclonal antibody」や「Anti-mouse Adiponectin polyclonal antibody,Goat」(R&D Systems社製)、「Anti-mouse Adiponectin, mAd(MADI04)」(Adipo Gen社製)、「Anti-mouse Adiponectin monoclonal antibody」(CHEMICON社製)等が挙げられ、抗ラットアディポネクチン抗体は、「Anti-rat Adiponectin polyclonal antibody,Goat」(R&D Systems社製)、「Anti-rat Adiponectin monoclonal antibody」や「Anti-rat Adiponectin polyclonal antibody, Rabbit」(CHEMICON社製)等が挙げられる。抗ヒトアディポネクチン抗体としては、「Goat α human Acrp30 antibody」(コスモバイオ社製)、「rabbit α hu adiponectin-PoAb」(コスモバイオ社製)、「hu Acrp30-MoAb」(藤沢薬品工業社製)、「Mouse α huAdiponectin MoAb」(コスモバイオ社製)、「抗ヒトACRP30モノクローナル抗体」(和光純薬工業社製)等が挙げられる。本発明では、これらを一種又は二種以上組み合わせて用いることができる。
本発明では、これらの中でも、アディポネクチンの作用を阻害する物質として、抗アディポネクチン抗体、又はアディポネクチン受容体のアンタゴニストを用いることが好ましく、抗アディポネクチン抗体を用いることがより好ましい。
本発明に係る黄斑浮腫抑制剤による黄斑浮腫の抑制は、後述する実施例に示される通り、網膜血流改善、網膜内炎症抑制、網膜血管安定化、VEGF発現抑制、及び網膜菲薄化改善からなる群のいずれか1種以上に基づくものとあることが示唆されている。また、前記網膜内炎症抑制は、特に、炎症関連因子の増加抑制に基づくものであることが示唆されている。更に、前記網膜血管安定化は、特に、網膜血管の透過性亢進抑制、及び/又は血管周皮細胞脱落抑制に基づくものであることが示唆されている。
本発明に係る黄斑浮腫抑制剤は、ヒトを含む動物に有効であるが、特に、ヒトを含む哺乳類に有効である。
本発明に係る黄斑浮腫抑制剤は、必要に応じて、医薬として許容される添加剤を加え、単独製剤又は配合製剤として汎用されている技術を用いて製剤化することができる。
本発明に係る黄斑浮腫抑制剤は、非経口又は経口のいずれでも投与することができる。非経口投与の剤型としては、点眼剤、注射剤、点鼻剤等が挙げられ、経口投与の剤型としては、錠剤、カプセル剤、細粒剤、顆粒剤、散剤等が挙げられ、汎用される技術を用いて製剤化することができる。なお、注射剤とした場合、眼球、眼内、硝子体内又は結膜下の注射によって投与することができる。
例えば、点眼剤であれば、添加物として、等張化剤、緩衝剤、pH調節剤、可溶化剤、増粘剤、安定化剤、保存剤等を適宜配合することができる。また、pH調節剤、増粘剤、分散剤等を添加することにより、薬物を懸濁化させて、安定な点眼剤を得ることもできる。等張化剤としては、例えば、グリセリン、プロピレングリコール、塩化ナトリウム、塩化カリウム、ソルビトール、マンニトール等を挙げることができる。緩衝剤としては、例えば、リン酸、リン酸塩、クエン酸、酢酸、ε−アミノカプロン酸等を挙げることができる。pH調節剤としては、例えば、塩酸、クエン酸、リン酸、酢酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ホウ酸、ホウ砂、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等を挙げることができる。可溶化剤としては、例えば、ポリソルベート80、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、マクロゴール4000等を挙げることができる。増粘剤、分散剤としては、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース系高分子、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等を、また、安定化剤としては、例えば、エデト酸、エデト酸ナトリウム等を挙げることができる。保存剤(防腐剤)としては、例えば、汎用のソルビン酸、ソルビン酸カリウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸プロピル、クロロブタノール等が挙げられ、本発明では、これらの保存剤を組み合わせて使用することもできる。
点眼剤のpHは、眼科製剤に許容される範囲内にあればよいが、4.0〜8.5の範囲が好ましく、また、浸透圧比を1.0付近に設定することが望ましい。また、注射剤には、溶液、懸濁液、乳濁液及び用時液中に溶解又は懸濁して用いる固形の注射剤が包含され、例えば、薬物を液中に溶解、懸濁又は乳化させて用いられる。更に、注射剤は、滅菌精製水及び等張化のための塩化ナトリウム等を用いて調製することができる。
錠剤は、乳糖、ブドウ糖、D−マンニトール、無水リン酸水素カルシウム、デンプン、ショ糖等の賦形剤;カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、クロスポピドン、デンプン、部分アルファー化デンプン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース等の崩壊剤;ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、アラビアゴム、デンプン、部分アルファー化デンプン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール等の結合剤;ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク、含水二酸化ケイ素、硬化油等の滑沢剤;精製白糖、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルピロリドン等のコーティング剤;クエン酸、アスパルテーム、アスコルビン酸、メントール等の矯味剤などを適宜選択して用い製剤化することができる。
投与量は、症状、年令、剤型等によって適宜選択できるが、点眼剤であれば0.001〜10%(w/v)のものを1日1回〜数回点眼すればよく、注射剤であれば通常1日0.1mg〜250mgを1回又は数回に分けて投与すればよい。また、経口剤であれば通常1日当り250mg〜2.5gを1回又は数回に分けて投与することができる。必要により上記範囲外の量を用いることができる。
更に、本発明に係る黄斑浮腫抑制剤は、経口あるいは腸管経由の栄養補助剤(食品)としても有用である。食品の形態や種類は、従来公知の各種形態・種類を採用することができる。また、本発明に係る黄斑浮腫抑制剤を、食品添加物として用いることもできる。栄養補助剤として摂取する場合、好ましい摂取量としては、1日当たり250mg〜2.5g程度であり、必要により上記範囲外の量を用いることができる。
2.網膜内炎症抑制剤
本発明では、アディポネクチンの作用を阻害する物質を有効成分とする、網膜内炎症抑制剤も提供する。
本願発明者らは、前述の通り、アディポネクチンの作用を阻害する物質が網膜内の炎症を抑制したことも明らかにした。したがって、前記物質は、網膜内炎症抑制剤の有効成分としても有用である。
本発明に係る網膜内炎症抑制剤の詳細については、本発明に係る黄斑浮腫抑制剤と同様であるため、ここでは説明を割愛する。
3.VEGF発現抑制剤
本発明では、アディポネクチンの作用を阻害する物質を有効成分とする、VEGF発現抑制剤も提供する。
本願発明者らは、前述の通り、アディポネクチンの作用を阻害する物質の投与は、浮腫の主要ファクターであるVEGFの発現も抑制していることも明らかにした。したがって、前記物質は、VEGF発現抑制剤としても有用である。
本発明に係るVEGF発現抑制剤の詳細については、本発明に係る黄斑浮腫抑制剤と同様であるため、ここでは説明を割愛する。
4.網膜菲薄化改善剤
本発明では、アディポネクチンの作用を阻害する物質を有効成分とする、網膜菲薄化改善剤も提供する。
本願発明者らは、前述の通り、アディポネクチンの作用を阻害する物質の投与は、網膜虚血による菲薄化した網膜を改善させる作用があることを見出した。つまり、アディポネクチン作用を阻害する物質は、網膜神経細胞の萎縮を改善させる作用を有することを発見した。したがって、前記物質は、網膜菲薄化改善剤としても有用である。
本発明に係る網膜菲薄化抑制剤の詳細については、本発明に係る黄斑浮腫抑制剤と同様であるため、ここでは説明を割愛する。
5.網膜血管安定化剤
本発明では、アディポネクチンの作用を阻害する物質を有効成分とする、網膜血管安定化剤も提供する。
本願発明者らは、前述の通り、アディポネクチンの作用を阻害する物質の投与は、網膜血管の透過性亢進抑制作用や、血管周皮細胞(ペリサイト)の脱落抑制作用を有することから、網膜血管の安定化が可能であることを見出した。
本発明に係る網膜血管安定化剤の詳細については、本発明に係る黄斑浮腫抑制剤と同様であるため、ここでは説明を割愛する。
以下、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。
なお、以下に説明する実施例は、本発明の代表的な実施例の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
<実施例1>
硝子体手術時に、被験者[黄斑円孔(macular hole: MH)46名、糖尿病黄斑浮腫(diabetic macular edema: DME)22名、増殖糖尿病網膜症(proliferative diabetic retinopathy: PDR)33名]から硝子体液を採取した。採取した硝子体サンプルは、15,000g、4℃で10分間遠心後、上清を採取した。VEGF濃度は、Human VEGF QuantikineELISA Kit(DVE00; R&D Systems, Inc.)、アディポネクチン濃度は、Human Total Adiponectin/Acrp30 Quantikine ELISA Kit(DRP300; R&D Systems, Inc.)のELISAキットを用いて、患者の硝子体液中におけるアディポネクチン及びVEGF濃度を測定した。
図1に実施例1の結果を示す。図1では、MHは黄斑円孔患者、DMEは糖尿病黄斑浮腫患者、PDRは増殖糖尿病網膜症患者をそれぞれ示している。
図1のAは、アディポネクチン濃度との関係について示しており、この結果から、糖尿病黄斑浮腫患者の硝子体液のアディポネクチン濃度は、増殖糖尿病網膜症患者より高値を示していることが判明した。図1のBは、VEGF濃度との関係について示しており、この結果から、増殖糖尿病網膜症患者の硝子体液のVEGF濃度は、糖尿病黄斑浮腫患者より高値を示していることが判明した。図1のCは、アディポネクチンとVEGF濃度との相関を示しており、この結果から、アディポネクチンとVEGF濃度の相関は認められないことが判明した。
<実施例2>
マウスにケタミン(120mg/kg)及びキシラジン(6mg/kg)の混合麻酔液を筋肉内投与し麻酔を施した。その後、光増感剤であるローズベンガル(20mg/kg)0.15mLを尾静脈内に投与し、マウス右眼の視神経乳頭から3乳頭系離れた静脈にレーザー(波長532nm)を照射することで網膜静脈を閉塞させた。レーザー照射には、眼底撮影装置であるMicron4のアタッチメントを用いて、波長532nm、スポットサイズ50μm、照射時間5秒、レーザー出力50mWのレーザー照射条件下で、1本の静脈に対して10回から15回のレーザー照射を行い閉塞させた。
血管閉塞0.5、1、3、7日後にサンプリングを行い、real time(RT)-PCR法及びウエスタンブロット法により、アディポネクチンのmRNA及びタンパクの発現変化を検討した。
[RT-PCR]
マウス網膜静脈閉塞症モデルの眼球を摘出し、網膜を単離した。単離した組織はマイクロチューブに入れ、液体窒素で急速凍結した。サンプルはRNA抽出まで-80℃に保存した。RNA抽出には、High Pure RNA Tissue Kitを用いて行った。サンプルにLysis/Binding bufferを加え、ホモジナイザーを用いてマイクロチューブを氷中でホモジナイズした。その後遠心し、遠心した上清を回収し、そこに70%エタノールを加え、よく混合した。High Pureフィルターチューブと回収用チューブとを組み立て、試料全量を加えて遠心した。回収用チューブに排出された液を捨て、同じ回収用チューブをフィルターチューブと組み立てた。そこに、DNase Incubation BufferとDNase I希釈溶液を加え、室温で15分間インキュベーションさせた。調整済みWash buffer Iをフィルターチューブ上部に入れて遠心した。回収用チューブに排出された液を捨て、同じ回収用チューブをフィルターチューブと組み立てた。調整済みWash buffer IIをフィルターチューブ上部に入れて遠心した。回収用チューブに排出された液を捨て、同じ回収用チューブをフィルターチューブと組み立てた。調整済みWash buffer IIをフィルターチューブ上部に入れて遠心した。回収用チューブに排出された液を捨て、フィルターチューブをヌクレアーゼフリーのチューブに挿入した。その後、Elution Bufferを加えて間遠心し、RNAを抽出した。
RNA逆転写にはPrime Script RT Master Mix(Perfect Real Time)(Takara社製)を用いた。total RNAに5×Prime Script RT Master Mix(Perfect Real Time)を加え、混合した。その後、PCR Thermal Cycler Dice(Takara社製)を用いて37℃で15分間逆転写反応を行い、85℃で5秒間置き、逆転写酵素を失活させた。
RT-PCRには、SYBR Premix Ex Taq II(Perfect Real Time)(Takara社製)を用いた。SYBR Premix Ex TaqII(Perfect Real Time)にprimer及び滅菌水、cDNAを加え、全量20μLとし、primer濃度が0.2μMとなるように調整した。その後、Thermal Cycler Dice Real Time Systemを用いて95℃、30秒を1サイクル、95℃で5秒間、60℃で30秒間を50サイクル行い、PCR反応を行った。
[ウエスタンブロッティング法]
マウス眼球を摘出し、網膜を単離した。単離した網膜はマイクロチューブの中に入れ、液体窒素中で急速凍結した。サンプルはタンパク質抽出まで-80℃に保存した。タンパク質抽出は、RIPA bufferに対し、protease inhibitor cocktail、phosphatase inhibitor cocktail II及びIIIをそれぞれ100:lで混合して用いた。上記試薬を網膜が入ったマイクロチューブ内に添加し、ホモジナイザーを用いてホモジネート処理した。その後、20分間氷中に静置させ、遠心した。上清を回収し、タンパク質抽出液とした。
タンパク質の定量はBCA Protein Assay kitを用いて行った。スタンダードとして、albumin standardを0〜2,000μg/mLの濃度範囲で用いた。希釈液には各cocktailが混合されていないRIPA bufferを用いた。それぞれのサンプルは希釈液で10倍希釈した。Working reagentを添加後、37℃の水浴中で30分間反応させ、その後532nmの吸光度を測定した。タンパク質濃度は、RIPA bufferを加えて20μg/mLに調整し、1/4量のsample bufferを加えて5μg/mLとした。調製後のサンプルは、電気泳動まで-80℃に保存した。
サンプルを-80℃から取り出し、室温に戻した。その後、熱湯で5分間煮沸し、室温にて遠心した。SDS polyacrylamide gelを泳動装置にセットし、容器に泳動用緩衝液を入れ、ゲルを取り付けた泳動装置を浸した。泳動装置の中にも泳動用緩衝液を入れた。サンプルを添加後、ゲル1枚当たり20mAで90分間泳動した。泳動後、ゲルを転写膜に転写した。
転写後、転写膜をBlocking One-Pに浸し、30分間ブロッキングし、洗浄後、一次抗体を希釈し、4℃で一晩反応させた。洗浄後、二次抗体を希釈して室温で1時間反応させた。洗浄後、イムノスター(登録商標)LDに5分間浸した。その後、Luminescent image analyzer LAS-4000 UV mini(Fujifilm社製)を用いて検出した。
一次抗体には、rabbit anti-adiponectin antibody(1:1,000)、mouse anti-β-actin antibody(1:2,000)を用いた。二次抗体には、HRP-conjugated goat anti-rabbit antibody(1:2,000)、HRP-conjugated goat anti-mouse IgG(1:2,000)を用いた。
タンパク質の発現は、Multi Gauge Ver 3.0(Fujifilm社製)を用いて解析した。Multi Gaugeを用いてバンドの強度を数値化し、個々の値を算出した。
図2に実施例2の結果を示す。
図2のAは、RT-PCR法によるアディポネクチンの発現変化を示しており、図2のBは、ウエスタンブロット法によるアディポネクチンの発現変化を示している。これらの結果から、血管閉塞0.5、1、3、7日後において、網膜組織中のアディポネクチンのmRNA及びタンパク質の発現が有意に増加することが判明した。
<実施例3>
マウス網膜静脈閉塞症モデルを作製し、血管閉塞直後又は7日後に抗アディポネクチン抗体(200μg/mL)を硝子体内に投与した。投与1日後に頸椎脱臼によりマウスを安楽死させた後、眼球を摘出した。その後、4%パラホルムアルデヒト゛含有0.1M phosphate buffer(PB)(pH 7.4)を2μL硝子体内投与し、同液にて48時間4℃で固定した。次いで70%エタノール2時間、90%エタノール1時間、無水エタノール1時間×5回、キシレン1時間×3回、融解パラフィン4.5時間の順に浸透させた。その後、パラフィンにて眼球を包埋し、ミクロトーム(Leica社製)を用いて、厚さ5μmの切片を作製し、カバーグラスにのせ37℃にて一日乾燥し、室温にて保存した。
パラフィン切片は、キシレンに浸してパラフィンを洗浄した。つづいて段階的にアルコール濃度を下げた溶液に浸し、蒸留水に浸透した後、ヘマトキシリン液、エオジン液に浸して、段階的にアルコールで脱水し、キシレンで透徹しオイキットを用いて封入した。切片は、HSオールインワン蛍光顕微鏡(BZ-710:Keyence社製)を使用して撮影した。網膜障害の評価は、ヘマトキシリン・エオジン染色した標本を用いた。各サンプルにつき3切片を任意に抽出し、視神経乳頭中心からear側とnose側の両側において、240μm間隔で網膜内顆粒層(Inner nuclear layer: INL)の厚さをImage J(http://rsbweb.nih.gov/ij/)を使用して測定した。なお、すべての解析は盲検下において行った。
図3に実施例3の結果を示す。
図3のA〜Cは、網膜浮腫に対する抗アディポネクチン抗体投与後の組織学的評価を示しており、これらの結果から、抗アディポネクチン抗体の投与により、網膜層の肥厚化(網膜内浮腫)が抑制されることが判明した。また、図3のD〜Fは、網膜の菲薄化に対する抗アディポネクチン抗体投与後の組織学的評価を示しており、これらの結果から、抗アディポネクチン抗体の投与により、網膜層の菲薄化が改善されることが判明した。
<実施例4>
マウス網膜静脈閉塞症モデルを作製し、照射直後又は7日後に抗アディポネクチン抗体(200μg/mL)を硝子体内に投与した。投与1日後に、PBSで溶解した分子量2×106のfluorescein isothiocyanate(FITC)-dextan溶液を20mg/animalで尾静脈内投与した。投与5分後、頸椎脱臼によりマウスを安楽死させ、マウスの眼球を摘出し、4%パラホルムアルデヒド含有0.1M phosphate buffer(PB)(pH 7.4)液中で7時間固定した。固定した眼球は、0.01M phosphate buffered saline(1×PBS)に浸しながら顕微鏡下で角膜及び水晶体を切除し、色素上皮から網膜を分離し、網膜を強膜から完全に剥離した。その後、網膜を四分円に切り、平面状態にしてFluoromountで封入し、網膜フラットマウント標本を作製した。その後、Metamorph(Universal Imaging Corp.)を用いて行った。網膜全体像は13枚の画像から作製した。各画像は網膜血管の表層から下層までを14.2μm間隔で連続撮影、解析ソフトウェアを用いて、無灌流領域の面積を測定した。なお、すべての解析は盲検下において行った。
図4に実施例4の結果を示す。
図4のA及びBは、抗アディポネクチン抗体、血管閉塞直後投与後の無灌流領域の変化を示しており、図4のC及びDは、抗アディポネクチン抗体、血管閉塞7日後投与後の無灌流領域の変化を示している。これらの結果から、閉塞直後及び閉塞7日後に抗アディポネクチン抗体を硝子体内に投与した場合、無灌流領域の増大が抑制されることが判明した。したがって、病態早期、後期に関わらず、抗アディポネクチン抗体は血流改善作用を有することが示唆された。
<実施例5>
マウス網膜静脈閉塞症モデルを作製し、照射直後又は7日後に抗VEGF抗体(200μg/mL)を硝子体内に投与した。投与1日後に、サンプリングを行い、ウエスタンブロット法により、アディポネクチン、ペリサイト関連因子、炎症関連因子のタンパクの発現変化を検討した。
図5に実施例5の結果を示す。
図5のA〜Dは、抗VEGF抗体の血管閉塞直後投与後のアディポネクチン、ペリサイト関連因子、炎症関連因子のタンパクの発現変化を示しており、図5のE〜Hは、抗VEGF抗体の血管閉塞7日投与後のアディポネクチン、ペリサイト関連因子、炎症関連因子のタンパクの発現変化を示している。 これらの結果から、抗VEGF抗体を血管閉塞直後又は血管閉塞7日後に硝子体内に投与しても、網膜中のアディポネクチンの発現には影響を及ぼさなかったことが判明した。したがって、アディポネクチンの発現機序の上流に、VEGFは関与していないことが示唆された。
また、抗VEGF抗体を血管閉塞直後に投与した場合、ペリサイト関連因子の発現低下の抑制が認められた。一方で、血管閉塞7日後に抗VEGF抗体を硝子体内に投与した場合、ペリサイト関連因子の発現低下が更に進行したことが分かった。したがって、血管閉塞7日後におけるペリサイトの脱落を保護するためには、VEGF以外の他の標的因子が関与していることが示唆された。
更に、抗VEGF抗体を血管閉塞直後に投与した場合、炎症関連因子の発現増加の抑制が認められた。一方で、血管閉塞7日後に抗VEGF抗体を硝子体内に投与した場合、炎症関連因子の発現上昇には影響を及ぼさなかったことが分かった。したがって、抗VEGF抗体を血管閉塞7日後に投与した場合、病態が悪化する作用機序として、炎症関連因子の発現増加には、VEGF以外の他の標的因子が関与していることが示唆された。
<実施例6>
マウス網膜静脈閉塞症モデルを作製し、血管閉塞直後に抗アディポネクチン抗体(200μg/mL)を硝子体内に投与した。投与1日後に、サンプリングを行い、ウエスタンブロット法により、VEGF及び炎症関連因子などのタンパクの発現変化を検討した。一次抗体には、rabbit anti-adiponectin antibody(1:1,000)、mouse anti-Tie-2 antibody(1:200)、rabbit anti-VEGF antibody(1:100)、mouse anti-TNF-α antibody(1:100)、rabbit anti-STAT3 antibody(1:1,000)、rabbit anti-AQP4 antibody(1:200)、mouse anti-β-actin antibody(1:2,000)を用いた。
図6に実施例6の結果を示す。
これらの結果から、網膜静脈閉塞1日後の網膜において、血管形成や血球形成を調節するTie-2、ペリサイト関連因子の発現低下及びTie-2受容体に拮抗的阻害を示すAng-2、VEGF、炎症関連因子の発現が上昇し、また、これらの変化は、閉塞直後の抗アディポネクチン抗体の投与によって改善されたことが認められた。Ang-2は、一般的に内皮細胞と周皮細胞の相互作用を破綻させ、血管透過性を亢進することが知られている。したがって、アディポネクチンの阻害がAng-2の発現を減少させ、血管透過性の亢進を抑制できることが判明した。
<実施例7>
マウス網膜静脈閉塞症モデルを作製し、血管閉塞7日後に抗アディポネクチン抗体(200μg/mL)を硝子体内に投与した。投与1日後に、サンプリングを行い、ウエスタンブロット法により、VEGF及び炎症関連因子などのタンパクの発現変化を検討した。
図7に実施例7の結果を示す。
この結果から、網膜静脈閉塞8日後の網膜において、ペリサイト関連因子であるNG2及びTie-2の発現低下、並びに炎症関連因子の発現上昇が確認された。また、閉塞7日後の抗アディポネクチン抗体の投与によって、これらの変化は改善された。一方で、VEGFの産生量は変化しなかったことが判明した。
<実施例8>
マウス網膜静脈閉塞症モデルを作製し、血管閉塞1日後にサンプリングを行い、免疫染色法により、アディポネクチンの発現増加と血管内皮細胞及びペリサイト関連因子の関与について検討した。
[免疫染色法]
マウス眼球を摘出し、4%パラホルムアルデヒド含有0.1M phosphate buffer(PB)(pH 7.4)にて48時間4℃で固定した。次いで5、10、15、20%スクロース含有0.1M PB (pH7.4)液にそれぞれ2時間放置し、25%スクロース含有0.1M PB(pH7.4)液に24時間放置した。その後、液体窒素を用いてO.C.T. compound内に包埋し、薄切するまで-80℃にて保存した。クリオスタット(Leica, Wetzlar, Hesse, Germany)を用いて、-20℃中で厚さ10μmの網膜切片を作製し、MASコーティングされたカバーグラス(Matsunami, Osaka, Japan)に載せ、-80℃で保存した。
凍結切片は染色時、-80℃より取り出し、-20℃で1時間放置した後、4℃で1時間放置し、更に室温で2時間乾燥させた。その後、Super PAP pen(Daido sangyo, Saitama, Japan)にて反応液の流出を防ぐために切片の周囲を囲んだ。その後、0.3% Triton X-100含有10% goat serumにより1時間ブロッキングを行った。マウス由来の抗体を用いる際には、M.O.M Blocking Reagentにより1時間ブロッキングした。ブロッキング後、一次抗体(溶媒:0.3% Triton X-100含有10% goat serumで希釈、マウス由来の抗体を用いる際にはM.O.M protein concentrateをPBSで希釈)を用いて4℃で一晩反応させた。その後、二次抗体(溶媒: 0.3% Triton X-100含有10% goat serumで希釈、マウス由来の抗体を用いる際にはM.O.M protein concentrateをPBSで希釈)によって1時間反応させた。続いて、Hoechst 33342により核染色を行った。染色後、Fluoromount(水溶性封入基材)で封入した。一次抗体には、rabbit anti-adiponectin antibody(1:50)、isolectin GS-IB4 from Griffonia simpliclicifolia conjugated to Alexa Fluor 594(20 μg/mL)、rabbit anti-NG2 antibody(1:50)を用いた。二次抗体にはそれぞれAlexa Fluor 546 goat anti-mouse IgG(1:1,000)、Alexa Fluor 488 goat anti-rabbit IgG(1:1,000)を用いた。また、ネガティブコントロールとして、一次抗体を除いたコントロールを用意した。染色した切片は共焦点レーザー走査型顕微鏡(FLUOVIEW FV10i; Olympus, Tokyo, Japan)を用いて撮影した。視神経から500μmの位置、211.968μm×211.968μmの範囲を撮影した。
図8に実施例8の結果を示す。
この結果から、血管閉塞1日後の網膜において、アディポネクチンが血管内皮マーカーであるIB4及びペリサイトマーカーであるNG2と共局在していたことが確認された。そたがって、アディポネクチンの産生細胞として、血管内皮細胞及びペリサイトの可能性が示唆された。
<実施例9>
マウス網膜静脈閉塞症モデルを作製し、血管閉塞1日後にサンプリングを行い、免疫染色法により、アディポネクチンの発現増加と血管内皮細胞及びペリサイト関連因子の発現について、網膜伸展標本による免疫染色法により検討を行った。
[網膜伸展標本の免疫染色法]
ケタミン(120 mg/kg)及びキシラジン(6mg/kg)の混合麻酔液を筋肉内投与し麻酔を施した。その後PBSで溶解した分子量2×106のFITC-dextran溶液を20mg/animalで尾静脈内投与した。投与5分後、マウスの眼球を摘出し、4%パラホルムアルデヒド含有0.1M PB(pH7.4)液中で1時間固定した。固定した眼球は、0.01M PBS(1×PBS)に浸しながら顕微鏡下で角膜及び水晶体を切除し、4%パラホルムアルデヒド含有0.1M PB(pH7.4)液中で1時間固定した。その後、色素上皮から網膜を分離し、網膜を強膜から完全に剥離し、網膜を四分円に切った。その後、0.3% Triton X-100含有10% goat serumにより1時間ブロッキングを行った。ブロッキング後、一次抗体 rabbit anti-adiponectin antibody(1:50)(溶媒: 0.3% Triton X-100含有10% goat serumで希釈)を用いて4℃で一晩反応させた。その後、isolectin GS-IB4 from Griffonia simpliclicifolia conjugated to Alexa Fluor 594(20μg/mL)、又はrabbit anti-NG2(1:50)を用いて4℃で20時間反応させた。更に、二次抗体Alexa Fluor 633 goat anti-rabbit IgG(1:200)及びAlexa Fluor 546 goat anti-rabbit IgG(1:200)(溶媒: 0.3% Triton X-100含有10% goat serumで希釈)によって1時間反応させ、Fluoromountで封入した。また、ネガティブコントロールとして、一次抗体を除いたコントロールを用意した。染色した網膜伸展標本は共焦点レーザー走査型顕微鏡を用いて撮影した。
図9に実施例9の結果を示す。
この結果から、網膜血管閉塞1日後においてアディポネクチンは内皮細胞の周囲で発現が増加していたことが確認された。一方で、網膜血管閉塞1日後の網膜では、アディポネクチンの発現増加と共にペリサイトが脱落していることが確認された。
<実施例10>
[TEER測定及びFITC-dextranを用いた血管透過性評価]
ヒト網膜毛細血管内皮細胞(Human retinal microvascular endothelial cell: HRMEC)は、Cell Boostを含んだ培地10%FBS含有CS-C培地で、37℃、5%CO2の条件下で培養した。HRMECをTranswell インサート(Corning, Inc., Canton, NY, USA)上に1.0×105cells/mLの密度で播種した。培地は1日おきに交換し、経内皮電気抵抗(Transendothelial electrical resistance: TEER)が安定するまで、細胞を培養した。TEERは測定装置(Millicell ERS-2, Millipore, Merck Millipore Co., Darmstadt, Germany)及びカップ形状の電極(Endohm-6, World Precision Instruments, Inc., Sarasota, FL, USA)を用いて測定した。Recombinant Human VEGF165(R&D Systems, Inc., Boston, MA, USA)を終濃度が10ng/mLとなるように調整し、Recombinant Human Adiponectin/Acrp30を終濃度が0.3又は1μg/mLとなるように調整し、添加後、24時間インキュベートした。添加24時間後に再度TEERを測定し評価した。その後、FITC-dextran(1mg/mL)100μLを添加し、添加1時間後に485nm(励起)の吸光度を測定し、血管透過性の評価を行った。
[ウエスタンブロット法による炎症関連因子の評価]
HRMECをTranswell インサート(Corning, Inc., Canton, NY, USA)上に1.5×105cells/mLの密度で播種し、24時間後、1%FBS CS-C 培地(Cell Boostを含まない培地)へ置換し、6時間インキュベートした。その後、Recombinant Human VEGF165(R&D Systems, Inc., Boston, MA, USA)を終濃度が10ng/mLとなるように調整し、Recombinant Human Adiponectin/Acrp30を終濃度が0.3又は1μg/mLとなるように調整し、添加後、6、12、24時間後にサンプリングを行い、ウエスタンブロット法により、1次抗体 rabbit anti-intercellular adhesion molecule-1(ICAM-1)(1:1000)を用いて炎症関連因子の評価を行った。
図10に実施例10の結果を示す。
この結果から、網膜血管内皮細胞に対するアディポネクチンの添加により、TEER値の減少、FITC-dextranによる漏出が認められた。したがって、アディポネクチンの阻害により、網膜血管内皮細胞に対する直接的な血管透過性亢進を抑制できることが示唆された。また、アディポネクチンは網膜血管内皮細胞において炎症関連因子であるICAM-1の発現を増加させることが明らかになった。ICAM-1は、一般的に白血球の接着増加を誘発し、炎症を惹起することが知られている。したがって、アディポネクチンの阻害により、内皮細胞の炎症を抑制できる可能性が示唆された。
<実施例11>
[ウエスタンブロット法によるペリサイト関連因子の発現変化]
ペリサイト細胞を1.5×104cells/mLの密度で播種し、10%ペリサイト培地(ScienCell, Corte Carlsbad, CA, USA)で培養し、24時間後1%ペリサイト培地に置換し、30分インキュベートした。その後、Recombinant Human VEGF165(R&D Systems, Inc., Boston, MA, USA)を終濃度が10ng/mLとなるように調整し、Recombinant Human Adiponectin/Acrp30を終濃度が0.3又は1μg/mLとなるように調整し、添加後、24時間後にサンプリングを行い、ウエスタンブロット法、1次抗体 mouse anti-Tie-2(1:100)を用いて評価を行った。
[CCK8を用いた生存活性評価]
ペリサイト細胞を3.0×104cells/mLの密度で播種し、10%ペリサイト培地(ScienCell, Corte Carlsbad, CA, USA)で培養し、24時間後1%ペリサイト培地に置換し、30分インキュベートした。その後、Recombinant Human VEGF165(R&D Systems, Inc., Boston, MA, USA)を終濃度が10ng/mLとなるように調整し、Recombinant Human Adiponectin/Acrp30を終濃度が0.3又は1μg/mLとなるように調整し、添加後、24時間後にCCK8を添加し、2時間インキュベートし、492nmを直接測定することにより、生細胞を計測した。
図11に実施例11の結果を示す。
この結果から、アディポネクチンはペリサイトに発現するTie-2を低下させることが分かった。したがって、アディポネクチンの阻害により、ペリサイトの脱落を保護できる可能性が示唆された。また、ペリサイトの細胞生存活性の試験において、アディポネクチンは低濃度では細胞増殖促進に働くが、高濃度では細胞増殖抑制に作用することが示唆された。
本発明によれば、新たな黄斑浮腫抑制剤を提供することができる。
本発明は、黄斑浮腫の根本治療に有用であることが示唆され、黄斑浮腫患者の視力低下の抑制や失明率の軽減に寄与し、該患者の社会復帰や医療費の削減にも繋がると考えられる。また、本発明は、現在の黄斑浮腫患者に対する抗VEGF薬の連投による身体的及び経済的負担の軽減に有用である。更には、黄斑浮腫の病態機序改善に寄与することも期待でき、社会生産性の向上に繋がる。

Claims (9)

  1. アディポネクチンの作用を阻害する物質を有効成分とする、黄斑浮腫抑制剤。
  2. 前記アディポネクチンの作用を阻害する物質は、抗アディポネクチン抗体、又はアディポネクチン受容体のアンタゴニストである、請求項1に記載の黄斑浮腫抑制剤。
  3. 前記黄斑浮腫抑制は、網膜血流改善、網膜内炎症抑制、網膜血管安定化、VEGF発現抑制、及び網膜菲薄化改善からなる群のいずれか1種以上に基づくものである、請求項1又は2に記載の黄斑浮腫抑制剤。
  4. 前記網膜内炎症抑制は、炎症関連因子の増加抑制に基づくものである、請求項3に記載の黄斑浮腫抑制剤。
  5. 前記網膜血管安定化は、網膜血管の透過性亢進抑制、及び/又は血管周皮細胞脱落抑制に基づくものである、請求項3に記載の黄斑浮腫抑制剤。
  6. アディポネクチンの作用を阻害する物質を有効成分とする、網膜内炎症抑制剤。
  7. アディポネクチンの作用を阻害する物質を有効成分とする、VEGF発現抑制剤。
  8. アディポネクチンの作用を阻害する物質を有効成分とする、網膜菲薄化改善剤。
  9. アディポネクチンの作用を阻害する物質を有効成分とする、網膜血管安定化剤。
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