(竿状構造体1の構造)
これから図面を参照し、本願発明の実施形態の説明をする。図1には竿状構造体1の全体の構成が示されている。竿状構造体1は、第1竿体101から第12竿体112の段階的に内径及び外径が大きくなっている12個の竿体が、一段階大径の竿体が一段階小径の竿体を振出形式で内部に収容する構造を有している。竿体の数は、3以上の任意の複数であるm個とすることができる。ここで、竿体を集合的に示す場合は符号を100とし、個別の竿体を特定せずに示す場合は符号を用いないこととする。個別の竿体を示す場合は、最も小径の竿体からの順番を表わす数であるn(n<100)を使用して第n竿体と呼び、その符号は、nを100に加えた「100+n」とする。竿状構造体1は、最も大径の第12竿体112を作業者の手元付近に固定し、最も小径の第1竿体101の方向にそれぞれの竿体を伸長させることによって、全体を伸長させる。それぞれの竿体において、最も小径の第1竿体101の方向の端部を竿体の「先端」、最も大径の第12竿体112の方向の端部を竿体の「基端」と呼ぶ。また、竿状構造体1において、第1竿体101の先端を竿状構造体1の「先端部」と呼び、第12竿体112の基端を竿状構造体1の「末端部」と呼ぶ。竿状構造体1に係る本実施例ではm=12であり、竿状構造体1は、第1竿体101、第2竿体102、・・・、第12竿体112の12個の竿体を含むことになる。そして、nを2からmまでの任意の自然数としたときに、第n−1竿体は、第n竿体の内部に振出形式で収容されることになる。それぞれの竿体は、単一の薄いパイプ状のロッドである。それぞれの竿体は、好適には同じ長さである。ただし、第1竿体101は竿状構造体1の先端部に位置し、内部に他の竿体を収容しないため、必ずしも中空のパイプ状ではなく、中実の構造であってもよい。竿体100は、好適には、繊維強化プラスチック(FRP)などの軽量で高剛性の材料で構成される。
竿体は、その竿体を伸長したときに、その竿体を収容する竿体とのオーバーラップ部分が所定の長さになったときに、その竿体の基端付近の外径がその竿体を収容する竿体の先端付近の内径より大きくなり、収容される竿体の基端の外周面全体が収容する竿体の先端の内周面全体と圧接されて竿体同士が継合されるような構造を有している。これにより、それ以上の伸長が規制されることとなる。一番大径の第12竿体112の基端からはエアチューブ30が出ている。図1には示されていないがエアチューブ30の内部には、通線ロッド32が収容されている。エアチューブ30と通線ロッド32の先端は、第1竿体101に対して固定されている。好適には、エアチューブ30(及び通線ロッド32)の竿状構造体1から延出する部分は、リール31に巻回して収納可能となっており、端部がコンプレッサなどの圧縮空気源に接続される。リール31は、好適には、第12竿体112や、それの近傍の構造体に取り付けることができる。第1竿体101の先端には、好適には、ツール50が取り付けられる。ツール50は、エアチューブ30を通じて送られる圧縮空気を動力として動作可能である。圧縮空気をツールの動力とすることにより、通線ロッド32と一体化させたエアチューブ30を用いることで、1本の操作ロッドを用いるだけで、竿状構造体1の伸長とツール50への動力の提供を行うことができ、またその際に、軽量だが発生する力の大きい圧縮空気駆動の動力源をツールに用いることができる。ここで、例えば、ツールを電力駆動とすると、竿状構造体1の伸長のための通線ロッド32とは別に電力用電線を使用する必要があり、取り扱いが煩雑になる。また、動力源も重量の大きい電動モータを使用する必要があり、竿状構造体1の取り回しが悪くなり、伸長させる際の摩擦力も大きくなる。本発明では、圧縮空気によって駆動されるツール50を使用可能とすることによって、そのような問題が発生しないようにしている。
次に竿体の内部の構造を説明する。第2竿体102から第12竿体112は同様の構造を有しているため、竿状構造体1の先端部から4つの竿体を用いて構造の説明をする。図2には、竿状構造体1の第1竿体101から第4竿体104及び第5竿体105の一部までを含む竿状構造体1の断面図が示されている。それぞれの竿体の基端には、典型的には、竿体の中心線に直角な向きで円盤状のストッパーが取り付けられている。ストッパーは、竿体を収容させることによって収縮させたときに、それを収容する他の竿体のロック付きストッパーとお互いに接触することによって、竿体が、それを収容する他の竿体の基端から飛び出さないようにするものである。ストッパーは、取り付けられる竿体の基端の外径を超えない外径(好適には同じ外径)を有し、それぞれの竿体の内周面より内部に延びる部分を有する。そして、そのストッパーの竿体の内周面から内部に延びる部分が、一段階小さい収容する他の竿体の基端(あるいは、基端に取り付けられたストッパー)と接触することにより、他の竿体の基端から収容される竿体が飛び出さないように移動範囲を規制する。なお、符号が「100+n」の竿体の基端に取り付けられるロック付きストッパーを個別に示す場合は符号を「200+n」とし、個別のロック付きストッパーを特定せずに示す場合は符号を用いないこととする。ストッパーには、それが取り付けられる竿体の位置に応じ、以下の3種類がある。(1)竿状構造体1の先端部に位置する竿体(第1竿体101)に取り付けられる、後述のロック棒が取り付けられるストッパー(後述する先端ストッパー201)。(2)竿状構造体1の先端部及び末端部に位置する竿体を除く竿体(後述する第2竿体102から第11竿体111(第m−1竿体))に取り付けられる、ロック棒10を解除可能にロックする機構を有するストッパー(後述するロック付きストッパー202から211)。(3)竿状構造体1の末端部に位置する竿体(第12竿体112(第m竿体))に取り付けられるストッパー(後述する末端ストッパー212)。
第1竿体101の基端には、第1竿体101がパイプ状の場合、その内周面の内部に延びる部分を有する先端ストッパー201が設けられる。先端ストッパー201は、好適には第1竿体101の基端の円周上に取り付けられる同じ外径の円盤状の形状である。第1竿体101の先端ストッパー201は、後述の円筒状中空部や中空部が設けられるのではなく、ロック棒10が取り付けられる点で、後述する他の竿体のストッパーとは機能が異なっている。先端ストッパー201の中心部には、第1竿体101に平行な棒状あるいは円筒状のロック棒10が、第1竿体101の基端から外部(竿状構造体1の末端部の方向)に向かって第1竿体101と平行に突出するように取り付けられる。なお、第1竿体101を収縮させた場合には、第2竿体102のロック付きストッパー202には、第1竿体101の基端が接触するため、ロック棒10が第1竿体101の基端に設けられていれば、先端ストッパー201は必ずしも必要ではない。
ロック棒10に関しては、図3に詳細な図を示している。ロック棒10には、円周状溝部11から13が表面に設けられている。円周状溝部は1つでもいいが、好適には複数個設けられる。円周状溝部の断面は、好適には半円や扇形であり、それと後述する係合ピン41が係合し、その係合は進退方向の力を加えることにより解除されるようになっている。ロック棒10の円周状溝部13から先の部分は、好適には、テーパー状に外径が小さくなっている。ロック棒10は、内部に円筒状の空間がある。そして、好適には、その円筒状の空間にエアチューブ30が通貫しており、ロック棒10の先端から延出している。エアチューブ30は、その一端が、第1竿体101の先端まで通貫している。そして、エアチューブ30は、その他端が、竿体100の中心部を通貫し、第1竿体101から第11竿体111を押し出して完全に伸長させることにより竿状構造体1を完全に伸長させた状態で、第2竿体102から第12竿体112の内部を通過して、第12竿体112の基端に設けられた末端ストッパー212に設けられた中空部を通じて外部に延出する。第1竿体101は、典型的にはパイプ状であるが、エアチューブ30を通過させることができる径の中空部を有する中実の棒体であってもいい。図3には示していないが、エアチューブ30の内部には、通線ロッド32が収容される。図5には、エアチューブ30と通線ロッド32の構成が示されている。通線ロッド32は、通線作業のためのロッドであり、手などで進退させることで力を伝達することができる。通線ロッド32は、好適には、繊維強化プラスチック(FRP)やポリエチレン(PE)などの材料で構成される。通線ロッド32がエアチューブ30内に収容されている場合は、通線ロッド32はエアチューブ30と共に進退させることになる。通線ロッド32は、通線作業のためのものでなくても、ある程度の剛性及び可撓性を有するロッドやワイヤなどによって代用することが可能である。
第1竿体101の先端は、必ずしも必須ではないが、図1に示すように円盤状の台座の形状となっている。そして、好適には、第1竿体101の先端には、ツール50が取り付けられる。第1竿体101が台座を有する場合、ツール50は、台座に取り付けられると好適である。ツール50は、第1竿体101を通貫するエアチューブ30からの圧縮空気で駆動することができる。第1竿体101の先端付近には、エアチューブ30からの圧縮空気をツール50に導きつつ、通線ロッド32を第1竿体101に対して固定するような圧縮空気の分岐機構が取り付けられると好適である。分岐機構は、例えば、エアチューブ30とツール50とを接続する継手であって、エアチューブ30を接続した継手の部分において、エアチューブ30内から通線ロッド32を引き出し、その通線ロッド32を継手の内部に固定するような構造とすることができる。このような継手のような分岐機構を第1竿体101の先端に固定することによって、通線ロッド32を第1竿体101に対して固定することができる。
エアチューブ30の内部には、通線ロッド32が収容される。通線ロッド32は、第1竿体101又はロック棒10に対して固定されており、通線ロッド32を進退させることによって第1竿体101を動かすことができる。通線ロッド32は、第1竿体101の先端まで延びるエアチューブ30の内部に収容されているため、典型的には、第1竿体101の先端付近で、前述の分岐機構を通じて第1竿体101に固定される。
なお、ツール50を第1竿体101の先端に取り付けていない場合や、ツール50を圧縮空気で駆動しない場合は、エアチューブ30は必ずしも必要ない。この場合、ロック棒10の先端からは通線ロッド32が延出することになり、また、通線ロッド32が竿体100の内部を通過して、第1竿体101又はロック棒10に対して固定されることになる。
図2を再び参照する。第2竿体102に取り付けられたロック付きストッパー202は、ロック棒10の外径より僅かに大きい内径の円筒状中空部を中心部に有し、第1竿体101を収縮させたときに、ロック棒10がその円筒状中空部を通るように構成されている。ロック付きストッパー202は、好適には、第2竿体102の基端の円周上に取り付けられる同じ外径の円盤状の形状である。また、第3竿体103から第11竿体111にも、第2竿体102のロック付きストッパー202と同様の構造のロック付きストッパー203から211がそれぞれ取り付けられる。
ここで、ロック棒10は、第1竿体101から第10竿体110(第m−2竿体)をそれぞれ一段階大径の竿体に完全に収容させることにより収縮させるまでに、ロック付きストッパー202から211のすべての円筒状中空部を通貫し、ロック棒10のいずれかの円周状溝部が末端部に最も近いロック付きストッパー211の係合ピン41に係合することができるような構造及び全長を有している。すなわち、ロック棒10は、ロック棒10の根元からそれの先端部に最も近い円周状溝部13までの距離が、竿状構造体1を収縮させた状態でロック付きストッパー211の係合ピン41と係合することができる距離以上とすることにより、ロック棒10をロック付きストッパー211に対してロックすることができ、通線ロッド32(又はエアチューブ30)を押し込むことにより第11竿体111(及びそれに収容される他の竿体)を伸長させることができるように構成されている。ロック付きストッパー202は、それに設けられた円筒状中空部に向かって弾性的に突出した係合ピン41を有している。図4には、竿状構造体1のロック付きストッパー202を、円周状溝部11に沿って切断した場合の断面図が示されている。ロック付きストッパー202は、外径が第2竿体102の外径を超えず、第2竿体102の内周面より内部に延びる部分を有し、ロック棒10の外径より僅かに大きい内径の円筒状中空部を中心部に有し、円筒状中空部に向かって弾性的に突出する係合ピン41を有する円盤状の構造を有している。図4に係合ピン41に関連する詳細な構造を示す。係合ピン41は、先端が半球状になったピン部と、ピン部より直径が大きい台座部とを有している。ロック付きストッパー202には、係合ピン41を突出させる方向に付勢するスプリング40を保持するスプリング保持孔がロック付きストッパー202の内部に放射方向に形成されており、スプリング保持孔の最も円筒状中空部に近い端部から、係合ピン41のピン部のみを通過させる径の貫通孔が円筒状中空部に向かって形成されている。ロック付きストッパー202は、スプリング保持孔が形成される円盤状の本体の外側に、スプリング保持孔を閉じるリング状の構造が取り付けられた構造を有しているが、リング状の構造を円盤状の本体の内側に取り付けることもできる。係合ピン41は、台座部でスプリング40に接しており、円筒状中空部に向かって付勢され、その先端が貫通孔を通じて円筒状中空部に向かって弾性的に突出する。
1個のロック付きストッパーに対して係合ピン41は1個以上設けられる。1個のロック付きストッパーに対して複数個の係合ピン41を設ける場合は、それらは、ロック付きストッパーの円筒状中空部との接面に円周状に等間隔に配置されると好適である。図4の例では、ロック付きストッパー202に対して3個の係合ピン41が設けられている。
図4には、ロック付きストッパー202の円筒状中空部にロック棒10が挿入され、円周状溝部11に係合ピン41が係合している状態が示されている。ただし、左下の位置の係合ピン41については、分解組立図としている。図4において、係合ピン41は、円周状溝部11の最奥部まで伸びてロック棒10に係合している。係合ピン41のピン部の先端の半球状の部分あるいはその一部のみが円周状溝部11と係合するようになっており、ロック棒10を進退させる力によって係合を解除することができる。このため、ロック棒10を通線ロッド32で進退させることにより、その係合が解除されない範囲の力で、ロック付きストッパー202を介して第2竿体102に同じ進退させる力を加えることができる。エアチューブ30(又は通線ロッド32)を押し出すことによって、竿体を伸長させるためには、係合を解除するための力は、その時点での竿体を押し出す際の摩擦力より大きい必要がある。
図4においては、エアチューブ30がロック棒10の内部の円筒状の空間にはめ込まれており、さらに、通線ロッド32がエアチューブ30の内側に収容されていることが示されている。
なお、竿状構造体1の末端部に位置する第12竿体112には、その基端において、第12竿体112の内周面の内部に延びる部分を有し、少なくとも通線ロッド32(又はエアチューブ30)を通過させることができる中空部を有する末端ストッパー212が設けられている。なお、その中空部は、ロック棒10を通過させることができるものであってもよい。第12竿体112は、他の竿体に収容されない竿状構造体1の末端部に位置し、前方に押し出されるものではないため、末端ストッパー212には係合ピン41及びスプリング40は必ずしも必要ない。末端ストッパー212は、ロック付きストッパー202から211と同じく、基端の円周上に取り付けられる同じ外径の円盤状の形状であって、同様の円筒状中空部を有するが、係合ピン41及びスプリング40を有しないものとすることができる。なお、末端ストッパー212を、ロック付きストッパー202から211と同じく、係合ピン41及びスプリング40を有し、ロック棒10のいずれかの円周状溝部を有する部分が末端ストッパー212に係合するか、そこから突出するように構成することによって、運搬時などに不用意な竿体の伸長を防止するための収納時ロックとして機能させることもできる。
竿状構造体1は、典型的には、その末端部に位置する第12竿体112を高所作業車のゴンドラ(バケット)に取り付けられたホルダで固定することによって、ほぼ水平に固定して使用される。そして、その状態で、作業者が通線ロッド32(又はエアチューブ30)を前方に繰り出し、末端ストッパー212の中空部から押し込むことによって、竿状構造体1を最も手元の竿体から順に伸長させることになる。
(竿状構造体1aを伸長させる動作)
竿状構造体1において、第2竿体102から第11竿体111の10個の中間部の竿体は、それに取り付けられるロック付きストッパー202から211の10個のロック付きストッパーを含め、同様の構造を有している。そのため、それらの中間部の竿体の数を2個にした、第1竿体101から第4竿体104の4個の竿体で構成される竿状構造体1aを例として(m=4に相当する)、本発明の竿状構造体を伸長させる動作について説明する。図6には、第1竿体101から第3竿体103がそれぞれ一段階大径の竿体に完全に収容された状態の竿状構造体1aが示されている。竿状構造体1aは、第1竿体101から第4竿体104の4つの竿体で構成されている点、第4竿体104に末端ストッパー204aが取り付けられている点、及びロック棒10aの円周状溝部がロック付きストッパー203の係合ピン41と係合可能な構造及び全長を有する点を除き、竿状構造体1と同様の構造である。第1竿体101の基端には先端ストッパー201が取り付けられており、中間部の第2竿体102及び第3竿体103の基端にはそれぞれロック付きストッパー202及び203が取り付けられており、第4竿体104の基端には末端ストッパー204aが取り付けられている。先端ストッパー201にはロック棒10aが取り付けられている。ロック付きストッパー202及び203は、それに中心部にある円筒状中空部に向かって弾性的に突出する係合ピン41を有している。末端ストッパー204aは、外径が第4竿体104の外径を超えず、第4竿体104の内周面より内部に延びる部分を有し、ロック棒10aを通過させる中空部を有している。先端ストッパー201に取り付けられたロック棒10aは、第1竿体101から第3竿体103を完全に収容させることによって竿状構造体1aを収縮させるまでに、ロック付きストッパー202から203のすべての円筒状中空部を通貫し、少なくとも円周状溝部13を有する部分がロック付きストッパー203の係合ピン41と係合する位置にあるような構造及び全長を有している。ロック棒10aは、ロック棒10aの根元から円周状溝部13までの距離が、竿状構造体1aを収縮させた状態でロック付きストッパー203の係合ピン41と係合することができる距離以上とすることにより、ロック棒10aをロック付きストッパー203に対してロックすることができ、通線ロッド32(又はエアチューブ30)を押し込むことにより第3竿体103を伸長させることができるように構成されている。また、後で詳述するが、円周状溝部の最前部(円周状溝部11)と最後部(円周状溝部13)の間の間隔は、いずれか2つ以上のロック付きストッパー(ロック付きストッパー202及び203)のそれぞれの係合ピン41に、複数の円周状溝部のいずれかが同時に係合することができる大きさを有するものであると好適である。ロック棒10aの先端からは、通線ロッド32(図示せず)を内側に収容するエアチューブ30が延出している。図示していないが、竿状構造体1aの先端部に圧縮空気で駆動されるツール50を取り付け可能である。ツール50を取り付けない場合、エアチューブ30は必ずしも必要ではなく、その場合は、通線ロッド32(図示せず)がロック棒10aの先端から延出することになる。
なお、末端ストッパー204aに代えて、係合ピン41を有するロック付きストッパー204を使用することもできる。この場合、ロック棒10aは、ロック棒10aの根元から円周状溝部13までの距離が、竿状構造体1aを完全に収縮させた状態でロック付きストッパー204の係合ピン41と係合することができる距離以上とすることにより、ロック棒10aをロック付きストッパー204に対してロックすることができるように構成されている。図6においては、ロック付きストッパー204を点線で囲んで示している。ロック付きストッパー204を使用した場合、第4竿体104は竿状構造体1の末端部に位置するため伸長することはない。しかし、第1竿体101から第3竿体103を完全に収縮させた状態で、少なくとも円周状溝部13をロック付きストッパー204の係合ピン41に係合させることにより、竿体を完全に収縮させた場合に竿体が不用意に飛び出さないような収納時ロックとして機能させることができる。
これから、第1竿体101から第3竿体103のすべてを完全に伸長させる動作の説明をするが、その途中の任意の位置で止めて固定することが可能である。初期状態は、第1竿体101から第3竿体103のそれぞれが、一段階大径の竿体に完全に収容されて竿状構造体1aが完全に収縮させられている状態である。竿状構造体1aは、高所作業車のゴンドラ(バケット)に取り付けられたホルダで第4竿体104を固定することによって、ほぼ水平に固定される。ゴンドラは、そのホルダの位置が、保留引込線の切断部位と同じか、やや高い位置となり、また、竿状構造体1aが保留引込線の切断部位の方向を向くような位置に配置される。そして、その状態で、エアチューブ30を前方(作業者から離れる方向)に伸長させることによって竿状構造体1aを伸長させることになる。この状態から開始して、エアチューブ30に収容された通線ロッド32を手で前方に押し出して竿体を押し出すことによって竿状構造体1aを伸長させる。この際に、操作者の手元に最も近い竿状構造体1aの末端部に近い位置の竿体から順に力を伝え、その末端部に近い位置の竿体から順に伸長させることが、本発明の特徴である。
作業者は、手でエアチューブ30を把持して、エアチューブ30を内部の通線ロッド32ごと前方に繰り出し、末端ストッパー204aの中空部から押し込んで前進させる。これにより、エアチューブ30に対して固定された第1竿体101が、一番前方の円周状溝部11がロック付きストッパー203の係合ピン41に係合するまで伸長される。それらが係合すると、第3竿体103に前方へ押し出す力が加えられることになり、第3竿体103と第4竿体104との間の摩擦力がエアチューブ30を前進させる際の抵抗となる。
図7には、円周状溝部11がロック付きストッパー203の係合ピン41に係合した状態が示されている。第1竿体101は、ロック棒10aの円周状溝部11がロック付きストッパー203の係合ピン41に係合する状態になるまで少し伸長されている。なお、すべての竿体が完全に収容された状態で、円周状溝部11がロック付きストッパー203の係合ピン41に係合する状態となるような位置に円周状溝部11が存在しており、これを初期状態としてもよい。ここで、エアチューブ30を前方に押し出す力を強めていくと、円周状溝部11から係合ピン41を介してロック付きストッパー203及び第3竿体103に加えられる前方に押し出す力が第3竿体103と第4竿体104との間の摩擦力を超え、第3竿体103が、その内側に収容する第1竿体101及び第2竿体102と共に前方に動き出す。ここで、係合ピン41は、ロック棒10aの円周状溝部11に弾性的に係合してロックし、その係合はエアチューブ30(又は通線ロッド32)を押す力を加えることで解除されるものであるが、円周状溝部11から伝達された力を通じて第3竿体103が前方に動き出すためには、その係合を解除するための力は、その時点で竿体(ここでは第3竿体103)を押し出す際の摩擦力より大きいことが必要である。第3竿体103を押し出す際の摩擦力は、スプリングの復元力により円周状溝部11に係合した第3竿体103の係合ピン41が円周状溝部11の凹部を超える際に生じる摩擦力である。この状態であれば、エアチューブ30を前方に押し出した時、円周状溝部11がロック付きストッパー203にロックされるまで(すなわち第3竿体103に対してロックされるまで)第1竿体101は少し前方に移動するが、その後は、作業者の手元に最も近い伸長可能な第3竿体103が伸長されることになる。なお、係合が解除される力は、ロック付きストッパー203の係合ピン41を突出させる力(スプリング40の復元力)、係合ピン41の先端の形状、円周状溝部の断面の形状、などによって所望の値に設定することができる。
なお、円周状溝部11とロック付きストッパー203の係合ピン41との係合を解除するための力が竿体(ここでは第3竿体103)を押し出す際の摩擦力より小さい場合であっても、複数の円周状溝部を同時に竿体とロックさせることにより、複数の円周状溝部による係合を解除するための力がその時点での竿体を押し出す際の摩擦力より大きくなるようにして、竿体を押し出すことができるように構成できる。図8には、円周状溝部11がロック付きストッパー202の係合ピン41に係合し、円周状溝部12がロック付きストッパー203の係合ピン41に係合した状態が示されている。これは、竿体をエアチューブ30で押し出す際に円周状溝部11とロック付きストッパー203の係合ピン41との係合が摩擦力の抵抗を受けて解除され、第1竿体101が前方に移動したが、次に、円周状溝部11とロック付きストッパー202の係合ピン41とが係合し、円周状溝部12とロック付きストッパー203の係合ピン41とが係合した状態を示している。この状態では、エアチューブ30を前方に押し出す力は、円周状溝部12からロック付きストッパー203の係合ピン41を介して第3竿体103に伝達されるのみならず、円周状溝部11からロック付きストッパー202の係合ピン41を介して第2竿体102に伝達され、さらに第2竿体102と第3竿体103との間の摩擦力を介して第3竿体103に伝達される。第2竿体102と第3竿体103との間の摩擦力は、第3竿体103と第4竿体104との間の摩擦力と大きな違いは無いと考えられる。そのため、この場合、円周状溝部11のみがロックされている場合と比較すると、約2倍の力が加えられるまで、円周状溝部11及び12のロックは解除されないこととなる。結果として、最も手元の第3竿体103には約2倍の力を前方に加えることができることとなり、確実に第3竿体103を前方に押し出すことができる。この状態であれば、エアチューブ30を前方に押し出した時、円周状溝部11及び12がロックされるまで第1竿体101は少し前方に移動するが、その後は、作業者の手元に最も近い伸長可能な第3竿体103が伸長されることになる。なお、このような状態に導くためには、複数の円周状溝部が、いずれか2つ以上のロック付きストッパーのそれぞれの係合ピンに同時に係合する位置に設けられている必要がある。このためには、ロック付きストッパーの厚みと同じ間隔で複数の円周状溝部が設けられていると好適である。しかし、図8に示されているように、複数の円周状溝部が、ロック付きストッパーの厚みよりわずかに大きい間隔(好適には、係合ピンの半径以内程度)を有していても、同時に係合させることが可能である。また、いずれか2つ以上の円周状溝部がいずれか2つ以上のロック付きストッパーの係合ピンと同時に係合するような位置に設けられるのであれば、円周状溝部の間隔を、ロック付きストッパーの厚みより狭くすることや広くすることが可能である。
図7又は図8に示した状態で、円周状溝部がロック付きストッパーの係合ピンに摩擦力以上の強さで係合している場合、エアチューブ30(又は通線ロッド32)を前方に押し出すことにより、第3竿体103(及びそれに収容される第2竿体102と第1竿体101)が前方に押し出される。図9には、図8に示した2つの円周状溝部が第2竿体及び第3竿体にロックされた状態で、第3竿体103がそれを収容する第1竿体101及び第2竿体102と共に前方に押し出されている状態が示されている。第3竿体103は、第3竿体103と第4竿体104が継合する位置まで、この状態で前方に移動させられる。
図10には、第3竿体103が第4竿体104と継合する位置まで前進させられた状態が示されている。すなわち、第3竿体103の基端の外周面全体が第4竿体104の先端の内周面全体と圧接され、第3竿体103の前進が規制されている。これ以降は、エアチューブ30を前方に押し出すと、円周状溝部11から13は、ロック付きストッパー203の係合ピン41と係合しても、その係合が解除されて、エアチューブ30が前方に押し出されることになる。そして、エアチューブ30を前方に押し出す力によってロック棒10a及び第1竿体101に対して前方へ押し出す力が加えられるが、円周状溝部11がロック付きストッパー202の係合ピン41と係合しているため、その係合を解除する力より小さい力を第2竿体102に加えることができる。ここで、その係合を解除する力は第2竿体102を第3竿体103から伸長させる際の摩擦力より大きくなるように、ロック付きストッパー202の係合ピン41を突出させる力などが調節されている。これにより、第2竿体102は第1竿体101に対してロックされた状態で、前方に移動させられることになる。なお、係合ピン41を突出させる力は、それが設けられるロック付きストッパーの位置に応じて適切な力に設定してもよい。竿状構造体1aの先端部に近い竿体ほど、その径が小さいため質量が小さく、かつ、前方に押し出される際に収容している竿体の数も少ないため、収容する竿体を含んだ全体の質量が小さくなり、それを前方に押し出す際の摩擦力も小さくなる。従って、竿状構造体の先端部に近い竿体ほど、係合ピン41を突出させる力が小さくなるように構成することもできる。
図11には、ロック棒10aが前方に押し出されることによって円周状溝部11から13がロック付きストッパー203の係合ピン41との係合を解除して乗り越え、円周状溝部11がロック付きストッパー202の係合ピン41に係合した状態で前方に押し出され、第2竿体102がそれを収容する第1竿体101と共に前方に押し出されている状態が示されている。第2竿体102は、第2竿体102と第3竿体103が継合する位置まで、この状態で前方に移動させられる。
図12には、第2竿体102が第3竿体103と継合する位置まで前進させられた状態が示されている。すなわち、第2竿体102の基端の外周面全体が第3竿体103の先端の内周面全体と圧接され、第2竿体102の前進が規制されている。これ以降は、エアチューブ30を前方に押し出すと、円周状溝部11から13はロック付きストッパー203の係合ピン41と係合しても、その係合が解除されて、エアチューブ30が前方に押し出されることになる。そして、エアチューブ30を前方に押し出す力によってロック棒10a及び第1竿体101に対して前方へ押し出す力が加えられることになる。
図13には、ロック棒10aが前方に押し出されることによって円周状溝部11から13がロック付きストッパー202の係合ピン41との係合を解除して乗り越え、第1竿体101が前方に押し出されている状態が示されている。第1竿体101は、第1竿体101と第2竿体102が継合する位置まで、この状態で前方に移動させられる。
図14には、第1竿体101が第2竿体102と継合する位置まで前進させられた状態が示されている。すなわち、第1竿体101の基端の外周面全体が第2竿体102の先端の内周面全体と圧接され、第1竿体101の前進が規制されている。これで、竿状構造体1aは完全に伸長させられたことになる。なお、上述の伸長の工程を途中で止め、エアチューブ30の動きを手元で規制することにより、竿体同士の摩擦力により、竿状構造体1aを任意の長さで伸長させた状態で保持することが可能である。
上述のように、エアチューブ30を前進させることによって竿状構造体1aを伸長させる場合、いずれかの円周状溝部が伸長させられることになる竿体のロック付きストッパーとロックされるまでは第1竿体101は少し前進するが、ロックした後は作業者の手元に近い竿体から順に伸長させられることになる。そのため、伸長中の竿体の部分を可能な限り短い状態に保つことができ、それによって、伸長中の竿体同士のオーバーラップ部分を回転軸としたモーメントや伸長時の摩擦力も最小に抑えられるため、小さい力で確実に竿体を伸長させることができる。
竿状構造体1aの先端部に位置する第1竿体101の先端には、竿状構造体1と同じく、好適にはエアチューブ30からの圧縮空気で駆動されるツール50を取り付けることができる。ツール50は、典型的には、保留引込線を切断するカッターである。図15には、カッターの一例の概略構成が示されている。カッターは、典型的には、エアチューブ30から送られてくる圧縮空気を動力に変換するエアシリンダ51と、その動力によって駆動される、駆動時に工作対象の保留引込線のような電線を溝部に把持する把持部52と、駆動時に電線を把持部52の近傍の溝部で切断するカッター刃53と、保留引込線を溝部から抜け出ることを防ぐ抜け防止具54とを備えている。竿状構造体1aが収縮している状態で抜け防止具54に保留引込線を引っ掛け、作業者が通線ロッド32(又はエアチューブ30)を末端ストッパー204の中空部から押し込むことによって、竿状構造体1aを保留引込線の切断部位まで伸長させる。そこで、作業者がエアチューブ30の手元にある他端から圧縮空気を注入する。これによってエアシリンダ51が駆動されて動力を発生し、まず、把持部52が閉じて保留引込線を把持する。そして、カッター刃53が閉じて保留引込線を切断する。作業者がエアチューブ30から圧縮空気の圧力を抜くと、好適には、カッター刃53は開くが把持部52は閉じたままとなるように構成される。しかる後に、作業者がエアチューブ30を手元にたぐり寄せることによって、竿状構造体1aを収縮させ、切断した保留引込線を家屋の敷地内に落下させることなく回収することができる。竿状構造体1aを収縮させる際は、竿状構造体1aの先端部に位置する第1竿体101に後退させる力が加えられることによって、竿状構造体1aが収縮させられる。
以上で、4つの竿体を含む竿状構造体1aを例にして伸長させる動作の説明をしてきたが、12個の竿体を含む竿状構造体1や、他の個数の竿体を含む同様の構造を有する竿状構造体においても、同様の操作で伸長や収縮をさせることができる。なお、竿状構造体1及び1aと同様の本発明の構成を有し、完全に伸長させた場合に10m弱の全長を有する竿状構造体を製作したところ、平均的な女性の張引力で伸縮させることが可能であった。従って、本発明の構成を利用することにより、家屋の敷地内に立ち入ることなく、10m程度前方の工作対象をカッターで切断することが可能な実用的な工具を提供することが可能である。
本発明の実施の形態において、末端ストッパー212が設けられる場合を説明したが、末端ストッパー212は設けられなくても良い。末端ストッパー212は、最も手元の竿体、具体的には第12竿体112の基端側から、第1竿体101が飛び出ることを回避する役割を担うが、他の方法により、第1竿体101が飛び出ることを回避しても良い。
本発明の実施の形態において円周状溝部が、ロック棒10の周方向に連続的に形成されることにより、竿が周方向に回転し、係合ピン41がランダムな位置に当接する場合でも対応することができる。竿が周方向に回転しないように形成される場合など、係合ピン41が係合する位置が固定的な場合、係合ピン41が係合する位置に溝部が形成されればよく、円周状に連続的に形成されなくても良い。
(変形例)
図16ないし図21を参照して、変形例に係るロック棒300を説明する。変形例に係るロック棒300は、本発明の実施の形態にかかるロック棒10とは異なる形態のロック棒300を説明する。なお、図16ないし図21において、下側が先端側であって、上側が基端側である。
変形例に係る竿体構造体1bは、本発明の実施の形態で説明したように、第1竿体101、第2竿体102、第3竿体103および第4竿体104を有する。第1竿体101は、最も先端に配置され、径が最も小さい。第2竿体102、第3竿体103の順に径が大きくなり、最も手元に配置される第4竿体104の径がもっとも大きい。なお変形例においても竿体構造体1bが有する竿体の数は3以上であればよく、その数は問わない。
本発明の実施の形態と同様に、変形例においても、第1竿体101が第2竿体102に収容され、第2竿体102が第3竿体103に収容され、第3竿体103が第4竿体104に収容される。また竿状構造体1bを伸長する際、第3竿体103、第2竿体102、第1竿体101の順に、手元の竿体から順に伸長される。
図16に示すように、変形例に係るロック棒300のロック棒本体部301は、第1竿体101の基端の中心部から外部に向かって第1竿体101に平行に設けられた円筒状を有する。
ロック棒本体部301は、長手方向にエアチューブ30を通過させる中空部を有するパイプである。ロック棒本体部301の基端側および先端側に、それぞれ基端側弾性体接続部302と先端側弾性体接続部303を備える。通線ロッド32は、エアチューブ30の内部に収容されており、第1竿体101の先端に、エアチューブ30からの圧縮空気で駆動されるツールが取り付けられている。通線ロッド32は、第1竿体101又はロック棒300に対して一端が固定され、他端が、第1竿体101から第m−1竿体を完全に押し出した状態で第2竿体102から第m竿体の内部を通過して第m竿体の基端から外部に延出する全長を有する。
基端側弾性体接続部302は、ロック棒本体部301の外径よりも大きい外径を有するパイプである。基端側弾性体接続部302の先端側に、基端側弾性体361が接続される。同様に、先端側弾性体接続部303は、ロック棒本体部301の外径よりも大きい外径を有するパイプである。先端側弾性体接続部303の基端側に、先端側弾性体362が接続される。
基端側弾性体361は、基端側がロック棒300の基端側弾性体接続部302に固定され、先端側が後述のスリーブ350の基端側に固定される。同様に、先端側弾性体362は、先端側がロック棒300の先端側弾性体接続部303に固定され、基端側が後述のスリーブ350の先端側に固定される。基端側弾性体361および先端側弾性体362はそれぞれ、圧縮コイルバネであって、ロック棒本体部301を巻く形状を有する。
変形例において、基端側弾性体接続部302および先端側弾性体接続部303に、それぞれ基端側弾性体361および先端側弾性体362が接続する場合を説明するが、これに限られない。ロック棒300の基端側に基端側弾性体361が接続し、ロック棒300の先端側に先端側弾性体362が接続すればよく、どのような接続態様でも良い。
ロック棒本体部301の表面に、基端側円周状溝部311と先端側円周状溝部312が設けられる。基端側円周状溝部311および先端側円周状溝部312のそれぞれの断面は、好適には半円や扇形であり、後述する係止部352が係止し、ロック棒300の長手方向に力を加えることによって係止が解除されるように形成される。変形例において、基端側円周状溝部311および先端側円周状溝部312は、それぞれ、ロック棒本体部301の円周方向に連続的に形成された円周状の溝であるが、円周方向に溝が連続的に形成されなくても良い。ロック棒本体部301の表面のうち、係止部352を係止させる位置に溝が設けられればよく、係止部352が係止可能な1つの溝であっても良いし、複数の溝が離散的に形成されても良い。
ここで、ロック棒300に、複数個の溝部が設けられ、スリーブ350に複数個の係止部352が設けられ、複数個の溝部は、複数個の係止部352が同時に係止する位置に設けられるように形成されても良い。スリーブ350に複数の係止部352が形成される場合、ロック棒本体部301に、複数の溝部が離散的に形成され、あるいは、溝部が周方向に連続的に設けられ、複数の係止部352が同時に溝部に係止することが好ましい。これにより、係止部352とストッパー400との係止、および係止部352と溝部との係止の力が強くなり、安定的に竿体を押し出すことが可能になる。
ロック棒本体部301には、スリーブ350が設けられる。スリーブ350は、ロック棒本体部301を周方向に覆い、ロック棒300の長手方向に摺動する。スリーブ350の内径は、ロック棒本体部301の外径と同じか、わずかに大きく、スリーブ350は、ロック棒本体部301に沿って、摺動することができる。スリーブ350の基端側には基端側弾性体361が接続され、先端側には先端側弾性体362が接続されるので、スリーブ350は、基端側に移動する際は基端側弾性体361の弾性力の抵抗を受けながら摺動し、先端側に移動する際は先端側弾性体の弾性力の抵抗を受けながら摺動する。
またスリーブ350は、外周面に貫通孔351を有する。貫通孔351には、係止部352が設けられる。係止部352は、スリーブ350と当接するロック棒300のロック棒本体部301の面に当接した状態でスリーブ350の外周面に対して凸部を形成する。また係止部352は、基端側円周状溝部311または先端側円周状溝部312に係止すると、凸部がスリーブ350に収容される。
係止部352は、ロック棒300の外周面に当接するように、貫通孔351のロック棒300側から係止部352が露出するように形成される。係止部352は、ロック棒本体部301の溝部以外の部分に当接する間、スリーブ350の外周面に対して係止部352が出っ張り、凸部を形成する。また係止部352は、基端側円周状溝部311または先端側円周状溝部312に係止する際、係止部352のロック棒300側が、溝部に当接して、係止部352がロック棒300側に寄り、スリーブ350の外周面に対して形成されていた凸部がスリーブ350の内部に収まり、スリーブ350の外周面状に係止部352が露出しないように形成される。
係止部352は、例えば、球体形状を有する。また係止部352は、後述するように竿体を押し出すことから、金属などの剛性の高い部材で形成されることが好ましい。貫通孔351は、スリーブ350の外周面および内周面において係止部352の直径よりも小さい開口部を有し、スリーブ350の内部において、係止部352の中心近傍を収容可能な空洞を有する。これにより、ロック棒300の表面の形状に応じて、スリーブ350の外周面から飛び出る係止部352の部分量を調節することができる。
また変形例において第2竿体102の基端にストッパー402が設けられ、第3竿体103の基端にストッパー403が設けられる。ストッパー402および403は、外径がそれぞれの竿体の外径を超えないように形成される。変形例においてストッパー402および403の外径は、それぞれ、各ストッパー402および403が設けられる各竿体の外径と同じように形成される。ストッパーは、第1竿体101と、最も基端側に位置する竿(変形例においては第4竿体104)以外の竿、具体的には、第2竿体102および第3竿体103に設けられる。
またストッパー402および403は、それぞれ、スリーブ350を通過させる中空部を有する。より詳しくはストッパー402および403にそれぞれ形成される中空部は、スリーブ350の外周面を通過させる一方、スリーブ350の外周面から出っ張った係止部352の凸部は通過させない。これにより、係止部352の凸部がストッパー402または403に当接して、ストッパー402または403、強いてはストッパー402または403が接続する竿体102または103を押し出すことが可能になる。
変形例に係るストッパー402および403は、それぞれ、図17に示すように、進行方向の中程で溝が形成され、先端側の内径と基端側の内径が異なり、基端側の内径が、先端側の内径よりも大きくなるように形成される。溝は、ストッパー402および403のそれぞれの先端および基端の両方から離れた位置に形成される。先端側の内径は、スリーブ350に形成される凸部がストッパー402または403に当接し、基端側の内径は、凸部がストッパー402または403に当接しないように形成される。ストッパー403の先端側の内径とストッパー402の基端側の内径が同じに形成される場合、凸部はストッパー403の基端側を押し出して、次にストッパー402を押し出す際、ストッパー402とストッパー403の距離がないまたは短い場合、凸部がストッパー402に係止できない場合がある。これに対しストッパー402の基端側の内径を、ストッパー403の先端側の内径よりも大きく形成し、ストッパー403の内部に溝を形成することで、凸部がストッパー403の溝に容易に係止することができる。
なお、最も先端に配置される第1竿体101と最も手元に配置される第4竿体104以外の竿体に、ストッパーが設けられる。最も先端に配置される第1竿体101にはロック棒300が固定されればよく、ストッパーの有無は問わない。最も手元に配置される第4竿体104の端部は、開口されても良いし、エアチューブ30を通す穴が開いた末端ストッパーが形成されても良い。
変形例において基端側から通線ロッド32を押すと、第m−1竿体のストッパーに係止部352の凸部が係止し、基端側弾性体が縮むことで生じた復元力により、第m−1の竿体を押し出す。また第m−1竿体を完全に押し出した状態で基端側弾性体がさらに縮むことで、スリーブ350が基端側に移動して係止部352が基端側円周状溝部311に係止し、ストッパーとの係止が解除される。
図17ないし図21を参照して、竿体を順次押し出す様子を説明する。図17ないし図21は、第3竿体103に設けられたストッパー403を係止部352が係止して押し出したのち、第2竿体102に設けられたストッパー402を係止部352が係止する様子を示す。
図17は、ロック棒300の係止部352が第3竿体103のストッパー403に係止し、第3竿体103を押し出す状態における、変形例に係る竿状構造体1bの断面図を示す。図17においてロック棒300の係止部352は、スリーブ350の外周面に対して外側に凸形状を形成する。係止部352は、第3竿体103のストッパー403の先端側の内径と基端側の内径との差異で形成された段差に係止する。第3竿体103には第2竿体102が収容され、第2竿体102には第1竿体101が収容される。
この状態で通線ロッド32を押し出すと、基端側弾性体361が縮むことにより生じた復元力によりストッパー403が固定された第3竿体103を押し出す。このとき、係止部352は、基端側円周状溝部311と先端側円周状溝部312の間のロック棒300の表面に当接する。
第3竿体103の押し出しが限界に到達し、これ以上押し出されない状態になり、さらに通線ロッド32で押し出すと、基端側弾性体361がさらに縮み、基端側弾性体361に接続するスリーブ350が基端側に摺動する。これにより、図18に示すように、係止部352がロック棒300の基端側円周状溝部311に係止する直前の位置まで移動する。
図18の状態からさに通線ロッド32で押し出すと、図19に示すように、係止部352が基端側円周状溝部311に係止して、係止部352がロック棒300側に落ち込み、係止部352とストッパー403の段差との係止が解除される。これによりスリーブ350はストッパー403の前方に抜け、ストッパー403は、相対的に、係止部352に対して基端側に移動する。
このとき図20に示すように、通線ロッド32で押し出すことにより基端側弾性体361が縮むことで生じる復元力で、係止部352と基端側円周状溝部311との係止が解除され、係止部352は、先端側に移動する。
さらに通線ロッド32で押し出すことにより、図21に示すように、係止部352が第2竿体102のストッパー402の内部に形成された段差に係止して、第2竿体102を押し出すことが可能になる。
第2竿体102の押し出しが限界に到達し、これ以上押し出されない状態になると、第1竿体101に接続するロック棒300または通線ロッド32で第1竿体101を押し出す。これにより、第3竿体103、第2竿体102および第1竿体101の順で、基端側に設けられた竿体から順に押し出すことができる。
このように竿体を押し出す際は、係止部352が、基端側円周状溝部311よりも先端側に当接して、通線ロッド32に押されて縮んだ基端側弾性体361の復元力を利用して、係止部352が係止したストッパーの竿体を押し出す。竿体の押し出しが完了し、基端側弾性体361がさらに縮むことで、基端側弾性体361に接続するスリーブ350が基端側に移動し、係止部352が基端側円周状溝部311に係止する。これにより、ストッパーと係止部352の係止が解除されスリーブ350は、そのストッパーよりも先端に移動することができる。このときストッパーが係止部352上を通過することで、係止部352を基端側円周状溝部311に押し当てる力が軽減され、また通線ロッド32による押し出しで基端側弾性体361の復元力によって、係止部352と基端側円周状溝部311の係止が解除され、係止部352は、基端側円周状溝部311よりも先端側に当接して、さらに先端にあるストッパーとの係止を待機する。
これにより変形例に係る竿状構造体1bは、手元にある竿体から順次押し伸ばして、竿状構造体1bの長さを徐々に長くすることができる。
また通線ロッド32を基端側に引き寄せることで、押し出した竿体を基端側に収容することができる。このとき、通線ロッド32で第1竿体101を引き寄せ、次に、第2竿体102のストッパー402の先端側の内径に係止部352が係止する。この状態で通線ロッド32を引き寄せると、先端側弾性体362が縮みながら、第2竿体102を基端側に引き寄せる。第2竿体102の引き寄せが限界に達した状態でさらに通線ロッド32を引き寄せると、スリーブ350が先端側に移動して係止部352が先端側円周状溝部312に係止し、係止部352とストッパー402の係止が解除される。さらに通線ロッド32を引き戻すことにより、係止部352と先端側円周状溝部312との係止が解除して、係止部352は第3竿体103のストッパー403に近づく。その後第3竿体103のストッパー403の先端側の内径に係止部352が係止し、同様の処理を繰り返す。
ここでは、押し出した竿体の逆の順所で、竿体を引き戻す場合を説明したがこれに限らない。引き戻す際は、通線ロッド32を押したり引いたりして係止したストッパーの竿体から引き戻せばよく、任意の順で竿体を引き戻せばよい。
これにより変形例に係る竿状構造体1bは、任意の竿体から順次引き戻して、竿状構造体1bの長さを徐々に短くすることができる。
ここで基端側弾性体361は、先端側弾性体362よりも弾性が強くなるように形成される。これにより、基端側弾性体361がより大きな復元力を発揮することができるので、複数の竿体が収容された竿体を押し出すことが可能になる。また先端側弾性体362が基端側弾性体361よりも弾性が弱くなるように形成されることにより、小さな力で竿体を引き戻すことができる。
このような変形例に係る竿体構造体1bは、手元の竿体から順に伸長される。先端の竿体から順に伸長される場合、先端が下方にたわみ、手元の竿体を伸長するために大きい力必要になる。これに対し、変形例に係る竿体構造体1bは、竿体構造体1bの平行性を保ったまま、手元の竿体から順に伸長することができるので、先端の竿体から順に伸長する場合に比べて、小さい力で安定的に竿体を伸長することができる。