本発明は上記した点に鑑みてなされたものであり、鉄道その他の大量輸送機関、イベント会場等に適用可能であり、安全性を確保しつつスループットを向上させた荷物用の検査システムを提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明に係る検査システムは、連続して稼働するコンベヤにより搬送される荷物を、検査部により検査する検査システムであって、検査部を通る第2コンベヤ部と、検査部に連動し、第2コンベヤ部とは独立に稼働して検査前の荷物を搬送する第1コンベヤ部とを有する。
上記検査システムでは、検査部に連動し、第2コンベヤ部とは独立に稼働して検査前の荷物を搬送する第1コンベヤ部を有するので、第2コンベヤ部による検査部での荷物の移動を確保しつつ、第1コンベヤ部が第2コンベヤ部とは独立に稼働して検査前の荷物を受け取って搬送する並列的な処理が可能になり、荷物検査のスループットを向上させることができる。
本発明の具体的な側面では、先の荷物が検査部まで搬送されて以後に、第1コンベヤ部を一旦停止させる。この場合、検査前の荷物を第1コンベヤ部に置くことが容易になる。
本発明の別の側面では、第2コンベヤ部による搬送速度と第1コンベヤ部による搬送速度とは異なる。第2コンベヤ部は、荷物を検査に適合させた速度で移動させる必要があり、第1コンベヤ部は、荷物を第2コンベヤ部に適切なタイミングで渡す役割があり、両コンベヤ部は、異なる搬送速度に設定される。なお、第2コンベヤ部では、荷物がなければ荷物の搬送を停止させてもよく、検査に必要なタイミングで荷物の搬送を停止させてもよい。
本発明のさらに別の側面では、第1コンベヤ部による搬送速度は、第2コンベヤ部による搬送速度よりも遅い。この場合、第2コンベヤ部の前で荷物が滞留することを防止でき、或いは、第1コンベヤ部から第2コンベヤ部への荷物の移送によって検査部での処理が妨げられるような状態を回避することができる。
本発明のさらに別の側面では、第2コンベヤ部の下流側に配置されて荷物受取り場まで延びる第3コンベヤ部を有する。この場合、荷物受取り場に荷物が溜まることによる第2コンベヤ部の動作抑制や検査部での検査遅延を防止することができる。
本発明のさらに別の側面では、第3コンベヤ部による搬送速度は、第2コンベヤ部による搬送速度よりも遅い。この場合、第3コンベヤ部で荷物を受け取れずに第3コンベヤ部に荷物が滞留することを防止できる。
本発明のさらに別の側面では、対象者の近接を検知するアクセス検知部と、コンベヤ及び検査部の動作を制御する制御装置とをさらに備える。この場合、アクセス検知部の検出結果に基づいて荷物の所持者を確認することができ、所持者と荷物との紐付け又は対応付けを行う処理も可能となる。
本発明のさらに別の側面では、アクセス検知部は、認証媒体について認証情報を検出する認証情報取得部を有し、制御装置は、認証情報取得部を用いて認証媒体と荷物との紐付けを行い、認証が完了した場合に、第1コンベヤ部から第2コンベヤ部への荷物の移送を開始する。この場合、認証情報を有する荷物に対して検査を行うことができ、荷物の管理をより厳密に行うことができる。
本発明のさらに別の側面では、コンベヤに載置された荷物を検知する荷物検知部と、コンベヤ及び検査部の動作を制御する制御装置とをさらに備え、制御装置は、荷物検知部の出力に基づいて、コンベヤの動作開始又は動作停止を制御する。この場合、荷物に連動させてコンベヤを動作させることができ、タイミングロスを低減することができる。
〔第1実施形態〕
以下、図面を参照して、本発明の第1実施形態である検査システムの詳細について説明する。
図1(A)及び1(B)に示す検査システム100は、例えば駅の改札口、イベント会場の入場口等に設置されるものであり、検査部10と、コンベヤ20と、ゲート部30と、制御装置40とを備える。検査システム100において、コンベヤ20が、通行者である対象者PAが所持する手荷物である荷物BAを受け取って直進するように搬送し、検査部10が、コンベヤ20により搬送される荷物BAを経路上で検査する。対象者PAは、ゲート部30を通過する際に、コンベヤ20上に被検査物である荷物BAを載置する。検査システム100は、ゲート部30によって通路PWを通過する対象者PAの通過資格を判定し又は対象者PAのID等を特定し、これと並行して、検査部10によって対象者PAの荷物BAについて内部を透視して危険物の有無等に関する情報の収集検査を行う。
検査部10は、具体的にはX線検査装置であり、検査対象である荷物BAに対して放射線であるX線RLを照射するX線源11と、X線源11からのX線RLのうち荷物BAを通過した成分を受けるX線センサ部12と、X線源11とX線センサ部12とを内部に収納する直方体状の遮蔽ボックス15とを有する。検査部10において、コンベヤ20は、遮蔽ボックス15に設けた入口ENから出口EXに向かってX方向に延び、X線源11とX線センサ部12との間を通る。これにより、コンベヤ20によって遮蔽ボックス15内でX線源11とX線センサ部12との間において荷物BAを通過させつつ検査を行うことができる。
X線源11は、X線RLを射出する放射線源である。X線源11は、遮蔽ボックス15の中央付近の下部側に配置されており、放射線であるX線RLをX線センサ部12に向けて照射する。X線センサ部12は、X線RLを受ける放射線センサ部である。X線センサ部12は、コンベヤ20の搬送路を挟んでX線源11に対向するように遮蔽ボックス15の中央付近の上部側に配置されている。X線センサ部12は、例えば受光素子を搬送方向D1に対して垂直なY方向に延びるようにライン状に並べて配置することで、コンベヤ20による搬送と同期してライン型のスキャンを可能にしている。すなわち、荷物BAが遮蔽ボックス15の内部空間の中央付近を通過する際に、荷物BAへのX線RLの照射がなされ、X線センサ部12が受けた結果に基づき荷物BA内部についてXY面に沿った2次元的な検査がなされる。遮蔽ボックス15は、入口ENや出口EXを構成する矩形状の開口部を有する直方体状の筐体であり、入口ENや出口EXを構成する矩形状の開口部を有する。なお、遮蔽ボックス15を構成する各壁部は、外部へのX線漏洩を抑制するために、鉛等のX線吸収部材で形成されている。遮蔽ボックス15の入口EN及び出口EXには、入口EN及び出口EX及びその周辺を覆って遮蔽ボックス15外へのX線の漏れを阻止する遮蔽カーテン(不図示)が設けられている。
コンベヤ20は、検査部10を通る中央の第2コンベヤ部22と、第2コンベヤ部22の上流側に配置され検査前の荷物BAを搬送する第1コンベヤ部21と、第2コンベヤ部22の下流側に配置され検査後の荷物BAを搬送する第3コンベヤ部23とを有する。第1〜第3コンベヤ部21〜23は、連続して稼働するものであって、一連のものとして大きく分離しない状態で繋がっている。第1〜第3コンベヤ部21〜23は、独立に稼働するが、連携して動作することによって荷物BAをコンベヤ20の右端(−Y端)からコンベヤ20の左端(+Y端)まで移動させることができる。第1コンベヤ部21は、荷物置き場BPから検査部10の前まで延びる部分であり、第2コンベヤ部22は、ゲート部30に隣接する検査部10を通過する部分であり、第3コンベヤ部23は、検査部10の後から荷物受取り場BRまで延びる部分である。コンベヤ部21,22,23やそれらの構成要素は、共通のフレーム28によって支持されている。
上流の第1コンベヤ部21は、上面に荷物BA(B1)が載置されるベルト部5aと、ベルト部5aの両端の位置に回転可能に固定されベルト部5aが掛け渡される一対のローラー部5bと、ベルト部5a及びベルト部5a上に載置された荷物B1を支えるベルト支持体5cと、ローラー部5bを回転駆動することによりベルト部5a及びベルト部5a上の荷物BAをY方向に所望の速度で移動させる駆動機構51dとを有する。第1コンベヤ部21を構成するベルト部5aは、検査部10の上流に配置され、X線検査に用いられないので、X線に対する透過性を有するものである必要はない。第1コンベヤ部21には、荷物BAまでの距離や移動を検出する荷物検知部21sが設けられており、荷物検知部21sは、第1コンベヤ部21のベルト部5a上に荷物BAが存在するか否かを検出し、さらには、ベルト部5a上の荷物BAの位置や移動状態を検出することもできる。制御装置40は、例えば荷物検知部21sの出力や搬送状況等に基づいて、第1コンベヤ部21の動作開始又は動作停止を制御する。荷物検知部22sの出力を利用することで、第1コンベヤ部21の搬送動作におけるタイミングロスを低減できる。
中央の第2コンベヤ部22は、第1コンベヤ部21と同様の構造を有し、上面に荷物BA(B2)が載置されるベルト部5aと、ベルト部5aが掛け渡される一対のローラー部5bと、ベルト部5a等を支えるベルト支持体5cと、ローラー部5bを回転駆動することによりベルト部5a上の荷物BAをY方向に所望の速度で移動させる駆動機構52dとを有する。第2コンベヤ部22を構成するベルト部5aは、検査部10を通過し、X線に対する透過性を有する。第2コンベヤ部22には、遮蔽ボックス15の入口ENに対応する位置と、出口EXに対応する位置とにおいて、荷物BAまでの距離や移動を検出する荷物検知部22s,22pが設けられており、荷物検知部22s,22pは、第2コンベヤ部22に設けられたベルト部5aの入口及び出口において荷物BAが存在するか否かを検出する。制御装置40は、例えば荷物検知部22s,22pの出力や搬送状況等に基づいて、第2コンベヤ部22の動作開始又は動作停止を制御する。荷物検知部22s,22pの出力を利用することで、第2コンベヤ部22の搬送動作におけるタイミングロスを低減できる。
下流の第3コンベヤ部23は、第1コンベヤ部21又は第2コンベヤ部22と同様の構造を有し、ベルト部5aと、一対のローラー部5bと、ベルト支持体5cと、駆動機構53dとを有する。第3コンベヤ部23を構成するベルト部5aは、X線検査に用いられないので、X線に対する透過性を有するものである必要はない。第3コンベヤ部23には、第2コンベヤ部22に近い上流において、荷物BAまでの距離や移動を検出する荷物検知部23sが設けられており、この荷物検知部23sは、第3コンベヤ部23に設けられたベルト部5aの入口において荷物BAが存在するか否かを検出する。制御装置40は、例えば荷物検知部23sの出力や搬送状況等に基づいて、第3コンベヤ部23の動作開始又は動作停止を制御する。
なお、図1等に示す第1〜第3コンベヤ部21〜23の構造は単なる例示であり、荷物BAを搬送できる様々な機構を組み込んだものとすることができる。
第1〜第3コンベヤ部21〜23は、後述するように、ゲート部30の利用者センサ33が対象者PAの近接を検出した場合に、制御装置40からの指令を受けて搬送動作を開始する。この場合、第1〜第3コンベヤ部21〜23は、具体的な動作例では同時に搬送動作を開始するが、2段目である第2コンベヤ部22の動作開始を1段目である第1コンベヤ部21の動作開始よりも遅らせることができ、3段目である第3コンベヤ部23の動作開始を2段目である第2コンベヤ部22の動作開始よりも遅らせることができる。第1コンベヤ部21又は駆動機構51dは、制御装置40によって動作のオン・オフが制御されており、例えば第2コンベヤ部22に設けた荷物検知部22s等の出力に基づいて第1コンベヤ部21から第2コンベヤ部22への荷物BAの移送が完了したと判断された場合、搬送動作を一旦停止する。つまり、先の荷物BAが検査部10まで搬送されて以後に、第1コンベヤ部21を一旦停止させる。これにより、対象者PAが検査前の荷物B1を第1コンベヤ部21に置くことが容易になる。第2コンベヤ部22又は駆動機構52dは、制御装置40によって動作のオン・オフが制御されており、例えば第3コンベヤ部23に設けた荷物検知部23s等の出力に基づいて第2コンベヤ部22から第3コンベヤ部23への荷物BAの移送が完了したと判断された場合、搬送動作を停止する。これにより、第2コンベヤ部22上の後の荷物B2が第3コンベヤ部23にある先の荷物B3と干渉することを防止できる。第1コンベヤ部21による荷物B1の搬送速度と第2コンベヤ部22による荷物B2の搬送速度とは異なる。より具体的には、標準の動作において、第1コンベヤ部21による荷物B1の搬送速度は、第2コンベヤ部22による荷物B2の搬送速度よりも遅い。この場合、第2コンベヤ部22の前で荷物BAが滞留することを防止でき、或いは、第1コンベヤ部21から第2コンベヤ部22への荷物BAの移送によって検査部10での検査ルーチンが妨げられるような状態を回避することができる。第2コンベヤ部22において、検査に必要なタイミングで荷物B2の搬送を一時的に停止させてもよい。第3コンベヤ部23による荷物B3の搬送速度は、第2コンベヤ部22による荷物B2の搬送速度よりも遅い。この場合、第3コンベヤ部23で荷物を受け取れずに第3コンベヤ部23に荷物が滞留することを防止できる。
ゲート部30は、荷物BAの所持者であり通路PWを通過する対象者PAの身体を着衣のまま非接触で監視する複数の身体監視装置31と、身体監視装置31に対して通路PWに沿った前段に配置される認証情報取得部32と、認証情報取得部32に付随して通路PWを通過する対象者PAを検出する利用者センサ33とを含む。これらのうち、認証情報取得部32及び利用者センサ33は、対象者PAの近接を検知するアクセス検知部39として機能する。ゲート部30のうち身体監視装置31は、例えば電磁誘導を利用した金属探知器であり、荷物BAの所持者が所持する刃物その他の金属を検知する。身体監視装置31は、ミリ波やテラヘルツ波を対象に照射し対象内部(衣服の内側)の反射像を計測する内部観察装置であってもよい。この場合、制御装置40は、身体監視装置31の出力に基づいて、荷物BAの所持者が所持する刃物その他の危険物を可視化でき、危険物の有無に関する判定を行うこともできる。認証情報取得部32は、通路PWを通過する対象者PAが提示する認証媒体PMについて認証情報を検出する。認証媒体PMは、例えばICカード、QRコード(登録商標)その他の2次元コード、磁気カード等の情報記録媒体であり、認証情報を電磁的、光学的に保持する。認証情報取得部32は、認証媒体PMに記録された認証情報を非接触で或いは接触によって検出して、検出結果を制御装置40に出力することができる。認証媒体PMに記録された認証情報は、ID情報のほかに用途に応じた各種の付帯情報を含む。認証媒体PMは、ID認証を前提とするものに限らず、ID認証を伴わないものであってもよい。例えば、認証媒体PMは、ゲート部30の通過の許可に関する情報を記録したもの、具体的には、イベント会場等への入場の許可に関する情報のみを記録した入場券、乗車可能な区間数その他の情報を記録した乗車券のようなものであってもよい。利用者センサ33は、例えば赤外線を利用したモーションセンサであり、通路PWを移動して身体監視装置31に近づく所定サイズ以上の物体、具体的には対象者PAが所定以上近接したことを検出する。利用者センサ33の検出信号は、制御装置40に出力され、コンベヤ20や身体監視装置31の動作開始のトリガーとして利用される。
図2に示すように、制御装置40は、演算処理部41と、記憶部42と、入出力部43と、インターフェース部44とを備え、検査部10及びコンベヤ20の動作を制御する。制御装置40は、具体的には、入場管理用のプログラムを搭載したコンピューターを含み、入場管理用のプログラムには、検査部10、コンベヤ20、及びゲート部30を連携して動作させる機能が組み込まれている。
演算処理部41は、インターフェース部44を介して、検査システム100を構成する検査部10、コンベヤ20等の各部とデータ通信を行うことができる。演算処理部41は、記憶部42に保管されたプログラムやデータ、インターフェース部44を介して受け取ったデータ等に基づいて動作し、入出力部43やインターフェース部44から得た情報に基づいて処理を行い、処理の経過や結果を記憶部42に保管するとともに入出力部43に提示する。具体的には、演算処理部41は、ゲート部30にアクセス検知部39として設けた利用者センサ33によってゲート部30に所定距離以下まで近接する対象者PAを検出した場合、前の通行者の受け付け処理が完了していることを確保するインターバルタイムが経過していること、かつ、荷物検知部21sを利用して1段目の第1コンベヤ部21に荷物BAが載置されていることを確認することを条件として、第1〜第3コンベヤ部21〜23に搬送動作を開始させ、第1コンベヤ部21上の荷物BAの搬送を開始する。この際、演算処理部41は、利用者センサ33、荷物検知部21s等を用いて対象者PAと荷物BAとの紐付けを行うこともでき、荷物BAの受け入れタイミングと後述する対象者PAの受け付けタイミングとが乖離しないように管理することができる。荷物BAの搬送受付又は搬送開始と並行して、演算処理部41は、対象者PAをゲート部30に受け入れて認証情報取得部32によって対象者PAが所持する認証媒体PMの認証処理を開始する。演算処理部41は、認証媒体PMの認証処理に際して、認証情報取得部32を用いて認証媒体PMと荷物BAとの紐付けを行う。認証媒体PMの認証処理ができた場合、演算処理部41は、第1コンベヤ部21から第2コンベヤ部22への荷物BAの移送開始を許可することで、第1コンベヤ部21から第2コンベヤ部22への荷物BAの移送を開始させる。演算処理部41は、第1コンベヤ部21によって検査部10を通過する荷物BAに対してその内部を透視する検査を行う。検査結果は、入出力部43の係員用ディスプレイ(不図示)に表示される。これと並行して、対象者PAは、認証情報取得部32によって認証処理が完了している場合、入出力部43を構成するスピーカや利用者用ディスプレイ(不図示)からのアナウンスに従って身体監視装置31まで前進し、演算処理部41は、身体監視装置31を介して対象者PAの身体を非接触で検査する。検査結果は、入出力部43の一部を構成する係員用ディスプレイに表示される。検査部10で荷物BA中に危険物が検出された場合、演算処理部41は、入出力部43の係員用ディスプレイに警報を表示し、インターフェース部44を介して遠隔のコンピュータシステムに異常発生を通報する。また、身体監視装置31で危険物所持等の異常が検出された場合、演算処理部41は、入出力部43の係員用ディスプレイに警報を表示し、インターフェース部44を介して遠隔のコンピュータシステムに異常発生を通報する。身体監視装置31の後段に開閉可能な通過制止用の開閉フラップ(不図示)を設けることもできる。この種の開閉フラップを設けることにより、演算処理部41は、検査部10による検査に基づく警報や身体監視装置31による検査に基づく警報があった場合、上記開閉フラップを閉じて、危険物を所持し或いは荷物BAに危険物を潜ませた対象者PAの通過を阻止することができる。検査部10や身体監視装置31での異常がなかった場合、演算処理部41の管理下で第2コンベヤ部22から第3コンベヤ部23への荷物BAの移送が行われ、荷物受取り場BRに移動した対象者PAは、第3コンベヤ部23上から自己の荷物BAを受け取ることができる。
以上の説明では、検査部10で荷物BA中に危険物が検出された場合に演算処理部41が入出力部43の係員用ディスプレイに警報を表示しているが、荷物BA中における危険物の判断は、検査部10又は演算処理部41に限らず、係員が荷物BAの透視映像等に基づいて現場で判断することができる。同様に、身体監視装置31で対象者PAについて危険物所持等の異常が検出された場合に演算処理部41が入出力部43の係員用ディスプレイに警報を表示しているが、対象者PAが危険物を所持するか否かの判断は、身体監視装置31又は演算処理部41に限らず、係員が対象者PAの透視型の観察像等に基づいて現場で判断することができる。
図3は、検査システム100を利用した入場チェックの流れの具体例を説明する図である。横軸は時間となっている。符号DP1で示す横に細長い帯状の領域は、先に検査システム100の通路PWに到着した対象者PA及びその荷物BAの行動及び取扱い、並びに、検査システム100の動作を説明し、符号DP2で示す横に細長い帯状の領域は、次に検査システム100の通路PWに到着した対象者PA及びその荷物BAの行動及び取扱い、並びに、検査システム100の動作を説明するものである。領域DP1,DP2の下には、上流の第1コンベヤ部21の動作パターンTS1と、中流の第2コンベヤ部22の動作パターンTS2と、下流の第3コンベヤ部23の動作パターンTS3とが示されている。
先の対象者PA等に関する領域DP1において、第1段階SA1では、先の対象者PAが荷物置き場BP(図1(B)参照)に移動し、第2段階SA2では、同対象者PAが荷物BAを第1コンベヤ部21上に置き、第3段階SA3では、同対象者PAが認証情報取得部32に近づく。第4段階SA4では、コンベヤ20が第1コンベヤ部21から第2コンベヤ部22への荷物BAを移送するとともに(第4段階の前段SA4a)、第2コンベヤ部22において検査部10が演算処理部41の制御下で荷物BAの内部を透視検査する(第4段階の後段SA4b)。第4段階SA4と並行して行われる第5段階SA5では、認証情報取得部32が演算処理部41の制御下で先の対象者PAが所持する認証媒体PMについて認証処理を行うとともに、身体監視装置31が演算処理部41の制御下で同対象者PAの身体を非接触で検査する。最後の第6段階SA6では、先の対象者PAが荷物置き場BP(図1(B)参照)に移動し、第3コンベヤ部23上から自己の荷物BAを受け取る。次の対象者PA等に関する領域DP2に含まれる事象、つまり第1〜第6段階SA1〜SA6は、先の対象者PA等に関する領域DP1に含まれる事象と同様である。ただし、次の対象者PA等に関する領域DP2は、先の対象者PA等に関する領域DP1の第3段階SA3が完了した後となる。つまり、第1〜第3段階SA1〜SA3に要する時間がインターバルタイムITとなる。このように第1コンベヤ部21を停止させて荷物を受け取り、第1コンベヤ部21を運転させて荷物を第2コンベヤ部22に送り込む場合、第1コンベヤ部21が荷物BAを受け取るために設定される停止時間と、第1コンベヤ部21が次段に荷物BAを送り出すために設定される運転時間とを一組とする繰り返し周期が、全体の処理速度を決定する制限要因(つまりボトルネック)となってスループットを決めていると考えることができる。なお、動作パターンTS2の時間t3〜t4において第2コンベヤ部22の運転を一時的に停止しているが、第2コンベヤ部22の運転を継続することもできる。同様に、動作パターンTS2の時間t6〜t7において第2コンベヤ部22の運転を停止しているが、第2コンベヤ部22の運転を継続することもできる。
図4は、検査システム100の動作の概要を説明するフローチャートである。演算処理部41は、利用者センサ33の出力を利用することによって、通路PWに沿って移動する対象者PAが認証情報取得部32に所定距離以下に近づいているか否かを判断する(ステップS11)。演算処理部41は、対象者PAが認証情報取得部32に近づいていると判断した場合(ステップS11でYes)、対象者PAに対して認証処理を受け付ける(ステップS12)。この際、演算処理部41は、コンベヤ20を動作させて、第1コンベヤ部21から第2コンベヤ部22への荷物BAの移送を開始する。認証処理では、認証情報取得部32が、対象者PAが所持する認証媒体PMに対して認証情報の読み取りを行う。演算処理部41は、認証情報取得部32によって認証処理が完了したと判断した場合(ステップS13でYes)、検査処理を行う(ステップS14)。検査処理では、第2コンベヤ部22に移載されて検査部10中を移動する荷物BAに対して、検査部10が内部に危険物を収納するか否かの検査を行う。また、検査処理では、認証情報取得部32から身体監視装置31に移動した対象者PAに対して、身体監視装置31が対象者PAに対して、身体に危険物を所持するか否かを非接触で検査する。検査部10で危険物が検出されなかった場合(ステップS15でNo)、かつ、身体監視装置31で危険物が検出されなかった場合(ステップS16でNo)、演算処理部41は、認証が確保され危険性がないと判断して、対象者PAの通過を許容するとともに、検査システム100の動作の継続が不要ならば(ステップS17でNo)、処理を終了する。検査システム100の動作の継続が必要な場合(ステップS17でYes)、演算処理部41は、ステップS11に戻って対象者PAが認証情報取得部32に所定距離以下に近づいているか否かを判断する。ここで、検査システム100の動作の継続が必要な場合とは、検査システム100によってチェックを行うタイミングであることを意味し、例えば改札口が既定の業務時間内で動作する場合がこれに該当する。検査システム100の動作の継続が不要な場合には、例えば改札口の業務が終了した場合や、改札口を緊急的に閉鎖した場合が該当する。なお、ステップS11でNoであり、対象者PAが認証情報取得部32に近づいていると判断されなかった場合、演算処理部41は、ステップS17で検査システム100の動作について継続の要否を確認する。ステップS13でNoであり、認証情報取得部32によって認証処理ができなかった場合、演算処理部41は、通過不許可処理を行う(ステップS18)。この通過不許可処理において、演算処理部41は、入出力部43を構成するスピーカや利用者用ディスプレイを介してのアナウンスにより対象者PAに対して認証情報取得部32を通過できる資格を確認できないことを通知する。ステップS15及びS16でYesであり、検査部10で荷物BA中に危険物が検出されたり、身体監視装置31で対象者PAに危険物所持等の異常が検出されたりした場合、演算処理部41は、警報処理として、入出力部43の係員用ディスプレイに警報を表示し、インターフェース部44を介して遠隔のコンピュータシステムに異常発生を通報する(ステップS19)。
以上で説明した実施形態の検査システム100では、検査部10に連動し、第2コンベヤ部22とは独立に稼働して検査前の荷物BAを搬送する第1コンベヤ部21を有するので、第2コンベヤ部22による検査部10での荷物BAの移動を確保しつつ、第1コンベヤ部21が第2コンベヤ部22とは独立に稼働して検査前の荷物BAを受け取って搬送する並列的な処理が可能になり、荷物BA検査のスループットを向上させることができる。
〔第2実施形態〕
以下、図5を参照して、第1実施形態を変形した第2実施形態について説明する。なお、本実施形態に係る検査システム100において、第1実施形態の検査システム100と共通する部分及び動作については、説明を省略する。
第2実施形態の検査システム100の場合、第3コンベヤ部23を設けないで、第2コンベヤ部22を第3コンベヤ部23があった位置まで延ばしている。つまり、第2コンベヤ部22の後段は、荷物受取り場BRまで延びている。第3コンベヤ部23を設けないことにより、コンベヤ20の制御を簡素化することができる。
〔第3実施形態〕
以下、図6を参照して、第1実施形態を変形した第3実施形態について説明する。なお、本実施形態に係る検査システム100において、第1実施形態の検査システム100と共通する部分及び動作については説明を省略する。
第3実施形態の検査システム100の場合、第1コンベヤ部21において、複数の対象者PA1,PA2がそれぞれの荷物B11,B12を第1コンベヤ部21上に置けるようにして並列的な受け付けを可能にしている。この場合、第1コンベヤ部21上に複数の載置領域MA1,MA2を設けて荷物B11,B12の仕分けを可能にする。また、利用者センサ33は、パルス照明下で対象像を撮影するイメージセンサーを備えるTOFカメラ、MEMSスキャナを用いた3次元距離画像センサ等であり、3次元距離画像を計測することができる。利用者センサ33を用いることで、先の対象者PA1とその荷物B11とを対応付けて計測し追跡することができ、次の対象者PA2とその荷物B12とを対応付けて計測し追跡することができる。この場合、第1コンベヤ部21は、荷物B11,B12の載置に合わせて間欠的に動作するのではなく、比較的低速で連続的に搬送動作を行う。
〔その他〕
この発明は、上記の各実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。
上記実施形態では、検査システム100にゲート部30を設けているが、ゲート部30は必須でなく、身体監視装置31等を省略することができる。
上記実施形態では、検査部10がX線検査装置であるとしたが、検査部10は、X線検査装置に限らず、X線RL以外の他の放射線を用いた検査装置のような様々な検査装置とすることができる。
第1実施形態において、第1コンベヤ部21は、間欠的に動作しており、第2コンベヤ部22との間で荷物BAの干渉が生じなければ、第1コンベヤ部21の搬送速度を第2コンベヤ部22の搬送速度よりも大きくすることができる。
第1〜第3コンベヤ部21〜23のベルト部5aは、荷物BAの受け渡しをスムースにするため、表面の摩擦係数を相互に調整することができる。
演算処理部41は、インターフェース部44を介して、検査システム100を構成する検査部10、コンベヤ20等の各部とデータ通信を行うことができる。演算処理部41は、記憶部42に保管されたプログラムやデータ、インターフェース部44を介して受け取ったデータ等に基づいて動作し、入出力部43やインターフェース部44から得た情報に基づいて処理を行い、処理の経過や結果を記憶部42に保管するとともに入出力部43に提示する。具体的には、演算処理部41は、ゲート部30にアクセス検知部39として設けた利用者センサ33によってゲート部30に所定距離以下まで近接する対象者PAを検出した場合、前の通行者の受け付け処理が完了していることを確保するインターバルタイムが経過していること、かつ、荷物検知部21sを利用して1段目の第1コンベヤ部21に荷物BAが載置されていることを確認することを条件として、第1〜第3コンベヤ部21〜23に搬送動作を開始させ、第1コンベヤ部21上の荷物BAの搬送を開始する。この際、演算処理部41は、利用者センサ33、荷物検知部21s等を用いて対象者PAと荷物BAとの紐付けを行うこともでき、荷物BAの受け入れタイミングと後述する対象者PAの受け付けタイミングとが乖離しないように管理することができる。荷物BAの搬送受付又は搬送開始と並行して、演算処理部41は、対象者PAをゲート部30に受け入れて認証情報取得部32によって対象者PAが所持する認証媒体PMの認証処理を開始する。演算処理部41は、認証媒体PMの認証処理に際して、認証情報取得部32を用いて認証媒体PMと荷物BAとの紐付けを行う。認証媒体PMの認証処理ができた場合、演算処理部41は、第1コンベヤ部21から第2コンベヤ部22への荷物BAの移送開始を許可することで、第1コンベヤ部21から第2コンベヤ部22への荷物BAの移送を開始させる。演算処理部41は、第2コンベヤ部22によって検査部10を通過する荷物BAに対してその内部を透視する検査を行う。検査結果は、入出力部43の係員用ディスプレイ(不図示)に表示される。これと並行して、対象者PAは、認証情報取得部32によって認証処理が完了している場合、入出力部43を構成するスピーカや利用者用ディスプレイ(不図示)からのアナウンスに従って身体監視装置31まで前進し、演算処理部41は、身体監視装置31を介して対象者PAの身体を非接触で検査する。検査結果は、入出力部43の一部を構成する係員用ディスプレイに表示される。検査部10で荷物BA中に危険物が検出された場合、演算処理部41は、入出力部43の係員用ディスプレイに警報を表示し、インターフェース部44を介して遠隔のコンピュータシステムに異常発生を通報する。また、身体監視装置31で危険物所持等の異常が検出された場合、演算処理部41は、入出力部43の係員用ディスプレイに警報を表示し、インターフェース部44を介して遠隔のコンピュータシステムに異常発生を通報する。身体監視装置31の後段に開閉可能な通過制止用の開閉フラップ(不図示)を設けることもできる。この種の開閉フラップを設けることにより、演算処理部41は、検査部10による検査に基づく警報や身体監視装置31による検査に基づく警報があった場合、上記開閉フラップを閉じて、危険物を所持し或いは荷物BAに危険物を潜ませた対象者PAの通過を阻止することができる。検査部10や身体監視装置31での異常がなかった場合、演算処理部41の管理下で第2コンベヤ部22から第3コンベヤ部23への荷物BAの移送が行われ、荷物受取り場BRに移動した対象者PAは、第3コンベヤ部23上から自己の荷物BAを受け取ることができる。