JP2020107382A - 磁気記録媒体用基板、磁気記録媒体、ハードディスクドライブ - Google Patents
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Abstract
Description
しかしながら、基板を薄くした場合、アルミニウム合金基板は、ガラス基板に比べ、フラッタリングを生じやすい問題がある。
フラッタリングとは、磁気記録媒体を高速回転させた場合に生じる磁気記録媒体のばたつきであり、フラッタリングが大きくなると、ハードディスクドライブの磁気情報を安定して読み取ることが困難になる。
まず、アルミニウム合金鋳塊を圧延して、厚さ2mm以下程度のアルミニウム合金板材を得、このアルミニウム合金板材を円盤状に打ち抜いて所望の寸法とする。
次に、打ち抜かれたアルミニウム合金板材の円盤に対し、内外径の面取り加工およびデータ面の旋削加工を施す。その後、アルミニウム合金板材の表面粗さやうねりを下げるために、砥石による研削加工を施し、アルミニウム合金基板とする。次いで、表面硬さの付与と表面欠陥の抑制を目的として、アルミニウム合金基板の表面にNiPなどのニッケル合金めっきを施す。次に、ニッケル合金めっき被膜が形成されたアルミニウム合金基板の両面(データ面)に対し、研磨加工を施す。
特許文献3には、0.5質量%以上24.0質量%以下のSiと、0.01質量%以上3.00質量%以下のFeとを含有し、残部Alと不可避的不純物からなる磁気ディスク用アルミニウム合金基板が開示されている。
すなわち、本発明は、前記の課題を解決するため、以下の手段を提供する。
図1は、本実施形態に係る磁気記録媒体用基板の一例を示す断面模式図である。
図1に示すように、磁気記録媒体用基板10は、アルミニウム合金基板11と、アルミニウム合金基板11の少なくとも一方の表面に形成されているニッケル合金めっき被膜12とを有する。磁気記録媒体用基板10は、直径が95mm以上98mm以下の範囲内にあって、中央に内径が19mm以上26mm以下の範囲内にある孔を有し、厚さが0.48mm以上0.64mm以下の範囲内にある円盤状とされている。磁気記録媒体用基板10の直径は、3.5インチ型ハードディスク用として用いられる通常の磁気記録媒体用基板と同じである。磁気記録媒体用基板10の孔は、3.5インチ型ハードディスクドライブの駆動シャフトが挿入される部分である。磁気記録媒体用基板10の孔の内径は、3.5インチ型ハードディスク用として用いられる通常の磁気記録媒体用基板と同じである。
アルミニウム合金基板11は、ヤング率Eが74GPa以上で、密度ρが2.75g/cm3以下であって、単位がGPaで表されるヤング率Eと、単位がg/cm3で表される密度ρとの比E/ρが27以上とされている。
以下、アルミニウム合金基板11の各物性を上記のように規定した理由について説明する。
ヤング率は、変形のしやすさを表す指標となる。アルミニウム合金基板11のヤング率Eが大きくなると、NRROが小さくなる傾向ある。このため、本実施形態では、アルミニウム合金基板11のヤング率Eを74GPa以上と設定している。アルミニウム合金基板11のヤング率は、74GPa以上100GPa以下の範囲内にあることが好ましい。
なお、ヤング率は、日本工業規格JIS Z 2280−1993(金属材料の高温ヤング率試験方法)に規定された方法に基づいて、常温で測定した値である。
アルミニウム合金基板11の密度ρが小さくなると、NRROが小さくなる傾向がある。このため、本実施形態では、アルミニウム合金基板11の密度ρを2.75g/cm3以下と設定している。アルミニウム合金基板11の密度ρは、アルミニウム合金基板の組成によって変動するが、2.60g/cm3以上2.75g/cm3以下の範囲内にあることが好ましい。
なお、アルミニウム合金基板11の密度は、アルキメデス法により測定した値である。
ヤング率E(単位:GPa)と、密度ρ(単位:g/cm3)との比E/ρが高くなると、フラッタリングが起こりにくく、またNRROが小さくなる傾向がある。このため、本実施形態では、比E/ρを27以上と設定している。アルミニウム合金基板11の比E/ρは、28以上38以下の範囲内にあることが好ましい。
アルミニウム合金を鋳造する方法としては、例えば、ダイレクトチル鋳造法(DC鋳造法)あるいは連続鋳造法(CC)などのアルミニウム合金の鋳塊方法として用いられている公知の方法を用いることができる。ダイレクトチル鋳造法とは、アルミニウム合金の溶湯を、鋳型に注湯し、その後鋳型を直接冷却水に接触させて、アルミニウム合金鋳塊を鋳造する方法である。連続鋳造法とは、アルミニウム合金の溶湯を連続的に鋳型に注湯して、鋳型内で急速冷却する方法である。
ニッケル合金めっき被膜12は、磁気記録媒体用基板10の表面の硬さを高めて、磁気記録媒体用基板10の強度を向上させる作用と、磁気記録媒体用基板10の表面を平坦化して、表面欠陥を抑制する作用を有する。ニッケル合金めっき被膜12の厚さが薄くなりすぎると、上記の作用が得られにくくなるおそれがある。一方、ニッケル合金めっき被膜12の厚さが厚くなりすぎると、磁気記録媒体用基板10の質量が大きくなって、フラッタリングが起こりやすくなり、またNRROが大きくなるおそれある。
このため、本実施形態では、ニッケル合金めっき被膜12の厚さを4μm以上7μm以下の範囲内と設定している。
先ず、図2(a)に示すように、先端が正四角錐状(対面角136度)のダイヤモンド圧子13を、ニッケル合金めっき被膜12の表面に対して垂直方向に0.49N(50gf)の試験力で10秒間押し込んで圧痕14を形成する。
次に、図2(b)に示すように、圧痕14の周囲に生成する隆起部15の高さHを計測する。隆起部15の高さHは、隆起部15の最頂部の高さである。隆起部15の高さHは、例えば、3D光学プロファイラ(ZYGO Corporation社製)を用いて測定することができる。
隆起部の高さの測定は、1つの試料に対して5回行い、得られた隆起部の高さの平均を隆起部の平均高さとする。
本実施形態の磁気記録媒体用基板10は、例えば、アルミニウム合金基板11にめっき法によってニッケル合金めっき被膜12を形成するめっき工程と、ニッケル合金めっき被膜付アルミニウム合金基板の表面に対して研磨加工を施す研磨加工工程とを含む方法によって製造することができる。
めっき工程において、アルミニウム合金基板11にニッケル合金めっき被膜12を形成する方法としては、無電解めっき法を用いることが好ましい。ニッケル合金からなるめっき被膜は、従来から使用されている方法を用いて形成することができる。NiP合金めっき被膜形成用のめっき液としては、例えば、ニッケル源として硫酸ニッケルを含み、リン源として次亜リン酸塩を含むめっき液を用いることができる。NiWP合金めっき被膜形成用のめっき液としては、上記のNiP合金めっき被膜形成用のめっき液に、タングステン塩を添加しためっき液を用いることができる。タングステン塩としては、例えば、タングステン酸ナトリウム、タングステン酸カリウム、タングステン酸アンモニウム等を用いることができる。
研磨加工工程では、めっき工程で得られたニッケル合金めっき被膜付アルミニウム合金基板の表面を研磨する。研磨加工工程は、平滑で、傷が少ないといった表面品質の向上と生産性の向上との両立の観点から、複数の独立した研磨盤を用いた2段階以上の研磨工程を有する多段階研磨方式を採用するのが好ましい。例えば、第1の研磨盤を用いて、アルミナ砥粒を含む研磨液を供給しながら研磨する粗研磨工程と、研磨されたアルミニウム合金基板を洗浄した後に、第2の研磨盤を用いて、コロイダルシリカ砥粒を含む研磨液を供給しながら研磨する仕上げ研磨工程を行う。
図3に示すように、第1及び第2の研磨盤20は、上下一対の定盤21、22を備え、互いに逆向きに回転する定盤21、22の間で複数枚の基板Wを挟み込みながら、これら基板Wの両面を定盤21、22に設けられた研磨パッド23により研磨する。
図4は、本実施形態に係る磁気記録媒体の一例を示す断面模式図である。
図4に示すように、磁気記録媒体30は、上述の磁気記録媒体用基板10と、磁気記録媒体用基板10のニッケル合金めっき被膜12の表面に備えられている磁性層31とを含む。磁性層31の表面には、さらに、保護層32と潤滑剤層33とがこの順序で積層されている。
磁性層31の厚みは、5〜25nmとすることが好ましい。
保護層32の膜厚は1nm以上10nm以下の範囲内であることが好ましい。
潤滑剤層33の膜厚は0.5nm以上2nm以下の範囲内であることが好ましい。
図5は、本実施形態に係るハードディスクドライブの一例を示す斜視図である。
図5に示すように、ハードディスクドライブ40は、上述の磁気記録媒体30と、磁気記録媒体30を記録方向に駆動する媒体駆動部41と、記録部と再生部からなる磁気ヘッド42と、磁気ヘッド42を磁気記録媒体30に対して相対移動させるヘッド移動部43と、磁気ヘッド42からの記録再生信号の処理を行う記録再生信号処理部44とを具備する。ハードディスクドライブ40は、3.5インチ型のハードディスクドライブである。
Al原料として純Al塊、Si、Fe、Mn、Cu、Mg、Zn、Sr、Zr、Ti、Ni、Crを用意した。なお、純Al塊、Si、Fe、Mn、Cu、Mg、Zn 、Sr、Zr、Ti、Ni、Crの各原料については、純度が99.9質量%以上のものを用意した。
得られたアルミニウム合金基板について、以下の項目を評価した。その結果を表1に示す。
ヤング率Eは、日本工業規格JIS Z 2280−1993(金属材料の高温ヤング率試験方法)に規定された方法に基づいて、常温で測定した。なお、ヤング率は、アルミニウム合金基板を、長さ50mm、幅10mm、厚さ0.49mmの短冊状に切り出し、これを試験片として測定した。
密度ρは、アルキメデス法により測定した。
上記のようにして測定したヤング率E(単位:GPa)と密度ρ(g/cm3)との比を算出した。
[磁気記録媒体用基板の製造]
アルミニウム合金基板(基板1〜3)をNiP合金めっき液に浸漬し、無電解めっき法を用いてアルミニウム合金基板の表面に、NiP合金めっき被膜としてNi88P12(Pの含有量12質量%、残部Ni)膜を形成した。各実施例及び比較例で使用したアルミニウム合金基板の種類を、下記の表2に示す。
次いで、NiP合金めっき被膜を形成したアルミニウム合金基板を250℃で15分間加熱して、NiP合金めっき被膜付アルミニウム合金基板を得た。
得られた磁気記録媒体用基板について、以下の項目を評価した。その結果を、下記の表2に示す。
NiP合金めっき被膜の厚さは、XRF(X−ray Fluorescence Analysis)を用いて測定した。
磁気記録媒体用基板の質量は、電子天秤を用いて測定した。
先端が正四角錐状のダイヤモンド圧子を、NiP合金めっき被膜の表面に対して垂直方向に0.49N(50gf)の試験力で10秒間押し込んで圧痕を形成した。次いで、形成した圧痕周囲の隆起部の高さを、3D光学プロファイラ(ZYGO Corporation社製)を用いて測定した。測定した5個の隆起部の高さの平均を隆起部の平均高さとした。
得られた磁気記録媒体用基板を、3.5インチ型ハードディスクドライブケースに組み込んで、模擬ハードディスクドライブを作製した。模擬ハードディスクドライブの上部にアルミニウム製の土台(20kg)をボルトで締結した。そして、アルミニウム製の土台を締結した模擬ハードディスクドライブを50mmの高さから落下させ、衝撃を与えた。
その後、模擬ハードディスクドライブを分解し、磁気記録媒体用基板を取り出して、磁気記録媒体用基板の表面を、オプティカルサーフェスアナライザを用いて観察した。そして、表面に傷がなかった場合を「〇」とし、表面に傷があった場合を「×」とした。
フラッタリング特性はNRROを測定して評価した。NRROは磁気記録媒体用基板を10000rpmで1分間回転させ、磁気記録媒体用基板の最外周面で生ずるフラッタリングによる変位の幅を、He−Neレーザー変位計を用いて測定し、得られた変位の幅の最大値をNRROとした。
NRROが3.4以下であったものを「○」とし、3.4を超えるものを「×」として評価した。
Claims (3)
- アルミニウム合金基板と、前記アルミニウム合金基板の少なくとも一方の表面に備えられたニッケル合金めっき被膜とを有する磁気記録媒体用基板であって、
直径が95mm以上98mm以下の範囲内にあって、中央に内径が19mm以上26mm以下の範囲内にある孔を有する円盤状であり、厚さが0.48mm以上0.64mm以下の範囲内にあって、質量が9.0g以上15.0g以下の範囲内にあり、
前記アルミニウム合金基板は、ヤング率Eが74GPa以上で、密度ρが2.75g/cm3以下であって、単位がGPaで表されるヤング率Eと、単位がg/cm3で表される密度ρとの比E/ρが27以上であり、
前記ニッケル合金めっき被膜は、厚さが4μm以上7μm以下の範囲内にあって、先端が正四角錐状のダイヤモンド圧子を、前記ニッケル合金めっき被膜の表面に対して垂直方向に0.49Nの試験力で10秒間押し込んで圧痕を形成したときに、前記圧痕の周囲に生成する隆起部の平均高さが10nm以上50nm以下の範囲内にあることを特徴とする磁気記録媒体用基板。 - 磁気記録媒体用基板と、前記磁気記録媒体用基板の表面に備えられている磁性層とを有する磁気記録媒体であって、
前記磁気記録媒体用基板が、請求項1に記載の磁気記録媒体用基板であって、前記磁性層が、前記磁気記録媒体用基板の前記ニッケル合金めっき被膜が形成されている側の表面に備えられていることを特徴とする磁気記録媒体。 - 磁気記録媒体を具備したハードディスクドライブであって、
前記磁気記録媒体が請求項2に記載の磁気記録媒体であることを特徴とするハードディスクドライブ。
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