JP2020106133A - 高温用摺動部材 - Google Patents
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Abstract
【課題】300℃以上の高温条件下でも潤滑機能を長時間維持できる高温用摺動部材を提供する。【解決手段】潤滑組成物7は、高温下で二物体が転がり運動または滑り運動する摺動面と、該摺動面を潤滑する潤滑組成物とを備える高温用摺動部材であって、高温が300℃以上であり、潤滑組成物が分子中にフェニル基を有する基油を90質量%以上含み、基油がアルキル置換ジフェニルエーテル油であり、該基油の40℃における動粘度が50〜90mm2/sである。【選択図】図2
Description
本発明は、300℃以上の高温大気下で用いられる高温用摺動部材に関し、特にフィルム延伸装置に用いられるテンタークリップで用いられる転がり軸受に関する。
各種産業機械や車両などに組み込まれる転がり軸受には、潤滑性を付与するために潤滑組成物(グリースや潤滑油など)が封入されている。潤滑組成物は、転がり軸受の使用条件によって要求特性が異なり、高温条件下で使用される潤滑組成物には耐熱性などが要求される。
例えば、テンタークリップ用転がり軸受には、耐熱性を考慮してフッ素グリースが広く使用されている。また、潤滑性の向上などを目的として固体潤滑剤を配合することも行われる。例えば、特許文献1に記載のフッ素グリースは、フッ素油と、増ちょう剤であるポリテトラフルオロエチレン樹脂粉末と、二硫化モリブデンなどの所定の添加剤とを含有する。フッ素グリースに所定の添加剤を加えることで、金属に対する親和性が強いエステル油が軸受内部に侵入するような環境下でも、フッ素グリースの漏出の抑制を図っている。
近年、各種産業機械の高速化、高性能化などにより転がり軸受等の摺動部材が使用される条件がますます過酷なものとなっている。そのため、例えば300℃以上といった極めて高温の条件下でも使用可能な摺動部材が求められている。
上記特許文献1に記載のテンタークリップ用転がり軸受は、フッ素グリースが300℃付近になると分解するため、それ以上の高温域では使用が困難である。また、グリースの劣化後においては、添加された耐熱性の固体潤滑剤が潤滑性付与に機能する可能性があるが、該固体潤滑剤の配合割合が少なく十分な機能を発揮できない。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、300℃以上の高温条件下でも潤滑機能を長時間維持できる高温用摺動部材を提供することを目的とする。
本発明の高温用摺動部材は、高温下で二物体が転がり運動または滑り運動する摺動面と、該摺動面を潤滑する潤滑組成物とを備える高温用摺動部材であって、上記高温が300℃以上であり、上記潤滑組成物が分子中にフェニル基を有する基油を90質量%以上含むことを特徴とする。
上記摺動面をラマン分光法により測定したラマンスペクトルにおいて、1550cm−1〜1650cm−1にピークを有する被膜が形成されていることを特徴とする。
上記潤滑組成物が上記基油のみからなることを特徴とする。また、上記基油が、アルキル置換ジフェニルエーテル油であることを特徴とする。
上記基油の40℃における動粘度が50〜90mm2/sであることを特徴とする。
上記高温用摺動部材が転がり軸受であり、該転がり軸受が、フィルム延伸装置用のテンタークリップに用いられる軸受であることを特徴とする。
本発明の高温用摺動部材は、300℃以上の高温条件下で使用され、分子中にフェニル基を有する基油を90質量%以上含むので、フェニル基含有の基油が転がり摩擦または滑り摩擦によって摺動面に移着し、グラファイト化するため、高温条件下でも潤滑剤として機能する。特に、上記潤滑組成物が基油のみ(100質量%)からなる場合、増ちょう剤や固体潤滑剤、酸化防止剤などを含まないので、摺動面にグラファイト様の炭素被膜が形成されやすくなる。これにより、300℃以上の高温大気下でも潤滑機能を長時間維持することができる。
本発明の高温用摺動部材は転がり軸受であり、該転がり軸受がフィルム延伸装置用のテンタークリップに使用される軸受である。フィルム延伸装置用のテンタークリップに使用される軸受は、高温(例えば、250℃付近)での使用が想定されるが、本発明の高温用摺動部材である転がり軸受は、優れた耐熱性を有するので、この用途に好適である。
本発明者らは、例えば300℃以上の高温大気環境下でも優れた軸受寿命を得るべく、転がり軸受などの摺動部材に用いられる潤滑組成物について検討した。一般的な潤滑組成物は、300℃以上の高温大気下では蒸発し、油膜切れが発生するため、蒸発後は潤滑性を示さない。これに対して、本発明者らは、潤滑組成物として分子中にフェニル基を有する基油を主成分として用いることで、該基油の摺動面への移着物が、摩擦によってグラファイト化することを見出した。これにより、摺動部材は高温大気中でも潤滑性を維持することができる。本発明はこのような知見に基づくものである。
本発明に用いる潤滑組成物は、分子中にフェニル基を有する基油を90質量%以上含む。好ましくは上記基油を95質量%以上含み、より好ましくは上記基油を98質量%以上含み、さらに好ましくは上記基油のみからなるものである。
本発明に用いる基油としては、通常、転がり軸受などの摺動部材に用いられ、分子中にフェニル基を有する基油であれば特に制限なく用いることができる。例えば、アルキルベンゼン油、芳香族ジエステル油、ポリフェニルエーテル油、アルキル置換ジフェニルエーテル油などが挙げられる。これらの基油は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。これらの基油の中でも、耐熱性に優れるアルキル置換ジフェニルエーテル油が好ましい。
アルキルベンゼンとしては、分岐アルキル基や直鎖アルキル基で置換されたアルキルベンゼンが使用できる。分岐アルキル基としては、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレンを重合したオレフィン基などが挙げられる。アルキルベンゼンのアルキル基としては、例えば、炭素数が4〜18のものが使用できる。
芳香族エステル油としては、トリメリット酸やピロメリット酸のアルキルエステルが使用できる。エステルのアルキル基としては、炭素数4〜18のアルキル基が挙げられ、具体的には、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基などが挙げられる。これらのアルキル基は、直鎖であっても分岐鎖であってもよい。芳香族エステル油として、例えば、トリオクチルトリメリテート、トリデシルトリメリテート、テトラオクチルピロメリテートなどが使用できる。
ポリフェニルエーテル油としては、ペンタフェニルエーテル、テトラフェニルエーテル、モノアルキルテトラフェニルエーテル、ジアルキルテトラフェニルエーテル、モノアルキルトリフェニルエーテルなどが挙げられる。
アルキル置換ジフェニルエーテル油としては、モノアルキル置換ジフェニルエーテル、ジアルキル置換ジフェニルエーテル、ポリアルキル置換ジフェニルエーテルなどが挙げられる。アルキル置換ジフェニルエーテル油を構成するアルキル基は、分岐でも直鎖でもよいが、直鎖が好ましい。アルキル基の炭素数は4〜18が好ましい。具体的な置換基としては、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基などが挙げられる。
基油の動粘度(混合油の場合は、混合油の動粘度)としては、40℃において10〜200mm2/sが好ましい。より好ましくは20〜120mm2/sであり、さらに好ましくは、50〜90mm2/sである。動粘度が20mm2/s以上50mm2/s未満、または90mm2/sを超え120mm2/s以下の範囲であると、50〜90mm2/sの範囲のものに比べて、高温下において摺動面の摩擦係数が少し上昇するおそれがある。
本発明に用いる潤滑組成物は、分子中にフェニル基を含む基油を主成分とするが、この基油以外に、本発明の目的を損なわない範囲でさらに他の基油や添加剤を配合してもよい。他の基油として、例えば、パラフィン系鉱油、ナフテン系鉱油などの鉱油、ポリブテン油、ポリ−α−オレフィン(PAO)油などの炭化水素系合成油、または、天然油脂やポリオールエステル油、りん酸エステル油、ジエステル油、ポリグリコール油、シリコーン油、フッ素化油などの非炭化水素系合成油などが挙げられる。
上記添加剤として、例えば、有機亜鉛化合物、有機モリブデン化合物などの極圧剤、アミン系、フェノール系、イオウ系化合物などの酸化防止剤、イオウ系、リン系化合物などの摩耗防止剤、多価アルコールエステルなどの防錆剤、グラファイトなどの固体潤滑剤、エステル、アルコールなどの油性剤などが挙げられる。本発明に用いる潤滑組成物は、摺動面にグラファイト様の被膜を形成するため、固体潤滑剤や酸化防止剤は含まないことが好ましい。
本発明の摺動部材は、高温大気下でも優れた潤滑機能を有することから、300℃以上の高温、例えば350℃で使用される。本発明の摺動部材としての転がり軸受が使用されるフィルム延伸装置の一例を図3および図4に示す。図3はフィルム延伸装置の斜視図であり、図4は図3の横延伸装置のガイドレールを示す図である。図3および図4に示すようにフィルム延伸装置は、樹脂を溶融混練する押出機9と、溶融混練した樹脂を原反シートに賦形して押し出すダイヘッド(Tダイ)10と、原反シートを縦方向に延伸する縦延伸機11と、縦方向に延伸されたシートをシート幅方向に延伸する横延伸装置13と、縦、横方向に二軸延伸されたフィルムを引き巻き取る引巻取機14とから構成される。横延伸装置13は、一対の周回するガイドレール12と、該ガイドレール12上を一定の間隔をあけて周回する複数のテンタークリップ15と、シートを加熱する手段とを有する。
図4に示すように、縦延伸されたシートは横延伸装置13において、複数のテンタークリップ15に両端を連続的に挟まれた状態で、熱処理されながら、ガイドレール12の拡幅部12a、12bに沿ってシートの幅方向に延伸され、縦、横両方向に延伸された二軸延伸フィルムとなる。延伸された二軸延伸フィルムは、引巻取機14にて巻き取られる。
テンタークリップ15に用いられる本発明の転がり軸受は、加熱処理を行なう横延伸装置13内において、高温条件に曝される。ここで、テンタークリップの一例の断面図を図1に示す。図1に示すようにテンタークリップ15には、シートの片端16を把持する把持部17と、テンタークリップ本体15aがガイドレール12にガイドされつつ走行可能とするための複数のテンタークリップ用転がり軸受18とが設けられている。テンタークリップ用転がり軸受18が本発明の摺動部材としての転がり軸受に相当する。
図1および図4に示すように、テンタークリップ15はガイドレール12に沿って横延伸装置13内を周回する。縦延伸されたシートはガイドレール入口12cでシートの片端16を把持部17で把持され、加熱処理されながらテンタークリップ15の走行によってガイドレール拡幅部12a、12bで横延伸される。この縦延伸かつ横延伸されたシートが二軸延伸フィルムとなる。ガイドレール出口12dにおいて、把持部17は把持状態を解除し、テンタークリップ15はガイドレール12に沿って横延伸装置13に入口に戻る。
テンタークリップ用転がり軸受18は、横延伸装置13内の加熱処理やテンタークリップ15の走行補助のエステル油の噴霧にさらされる。延伸装置内での高温条件下等においてエステル油の酸化劣化を防止するため、エステル油にはアミン系添加剤が添加されており、軸受18の外輪とガイドレール12とは、このエステル油によって潤滑される。
本発明の摺動部材としての転がり軸受の一例を図2に示す。図2は深溝玉軸受の断面図である。テンタークリップ用転がり軸受として利用される深溝玉軸受1は、外周面に内輪軌道面2aを有する内輪2と内周面に外輪軌道面3aを有する外輪3とが同心に配置され、内輪軌道面2aと外輪軌道面3aとの間に複数個の転動体4が配置される。転動体4は保持器5により保持され、少なくとも転動体4の周囲に潤滑組成物7が封入されている。転がり軸受における内輪、外輪、転動体、および保持器は、他の軸受部材と転がり運動または滑り運動する。図2において、内輪軌道面2a、外輪軌道面3a、転動体4の転動面などが本発明の摺動面に相当する。シール部材6は、内輪2および外輪3の軸方向両端開口部8a、8bにそれぞれ外輪3等に固定されて設けられる。シール部材6は、潤滑組成物7の漏洩を防止するとともに、走行補助として噴霧されるエステル油の侵入や異物の混入を防止する。
転がり軸受において、軸受部材である内輪、外輪、転動体、および保持器の材質は特に限定されないが、少なくとも、内輪、外輪、および転動体が鉄系材料からなることが好ましい。鉄系材料としては、軸受部材として一般的に用いられる任意の鋼材などを使用でき、例えば、高炭素クロム軸受鋼、炭素鋼、工具鋼、マルテンサイト系ステンレス鋼などが挙げられる。鉄系材料であることから、グラファイト様の被膜が形成されやすくなる。
本発明の転がり軸受は、深溝玉軸受の形式に限らず、種々の形式の転がり軸受に適用可能である。例として、アンギュラ玉軸受、スラスト玉軸受、円筒ころ軸受、針状ころ軸受、スラスト円筒ころ軸受、スラスト針状ころ軸受、円すいころ軸受、スラスト円すいころ軸受、自動調心玉軸受、自動調心ころ軸受、スラスト自動調心ころ軸受、すべり軸受などが挙げられる。
本発明の転がり軸受は、高温条件下において摺動面にグラファイトの被膜が形成されるため、潤滑機能を長時間維持できる。特に、高温条件下で使用される転がり軸受に適しており、例えば、フィルム延伸装置に用いられるテンタークリップ用転がり軸受などに適している。グラファイトの形成は、摺動面のラマンスペクトルにおいて1580cm−1付近のピークの有無を確かめることにより確認できる。使用前(摺動前)の摺動面のラマンスペクトルでは、1580cm−1付近にピークがなく、高温大気下で摺動した後には1580cm−1付近にピークが出現する。本発明の摺動部材は、摺動面をラマン分光法により測定したラマンスペクトルにおいて、1550cm−1〜1650cm−1にピークを有する被膜が形成されている。そのため、グラファイト化により潤滑性が付与されたことが確認できる。グラファイトは耐熱性の高い固体潤滑剤として一般に知られている。
また、本発明は、二物体が転がり運動または滑り運動する摺動面と、該摺動面を潤滑する潤滑組成物とを備える高温用摺動部材の使用方法であり、上記潤滑組成物が分子中にフェニル基を有する基油を90質量%以上含み、上記高温用摺動部材を300℃以上の高温条件下で摺動させることを特徴とする。上記潤滑組成物は、基油のみからなることが好ましく、また、上記基油がアルキル置換ジフェニルエーテル油であることが好ましい。
実施例1
潤滑組成物として、アルキル置換ジフェニルエーテル油(40℃における動粘度32mm2/s)を用いた。
実施例2
潤滑組成物として、アルキル置換ジフェニルエーテル油(40℃における動粘度69mm2/s)を用いた。
実施例3
潤滑組成物として、アルキル置換ジフェニルエーテル油(40℃における動粘度102mm2/s)を用いた。
潤滑組成物として、アルキル置換ジフェニルエーテル油(40℃における動粘度32mm2/s)を用いた。
実施例2
潤滑組成物として、アルキル置換ジフェニルエーテル油(40℃における動粘度69mm2/s)を用いた。
実施例3
潤滑組成物として、アルキル置換ジフェニルエーテル油(40℃における動粘度102mm2/s)を用いた。
比較例1
潤滑組成物として、PAO油(40℃における動粘度46mm2/s)を60質量%、窒化ホウ素を40質量%混合した組成物を用いた。
比較例2
潤滑組成物として、アルキル置換ジフェニルエーテル油(40℃における動粘度102mm2/s)を40質量%、二硫化モリブデンを60質量%混合した組成物を用いた。
比較例3
潤滑組成物として、PAO油(40℃における動粘度17mm2/s)を用いた。
比較例4
潤滑組成物として、PAO油(40℃における動粘度46mm2/s)を用いた。
比較例5
潤滑組成物として、PAO油(40℃における動粘度65mm2/s)を用いた。
潤滑組成物として、PAO油(40℃における動粘度46mm2/s)を60質量%、窒化ホウ素を40質量%混合した組成物を用いた。
比較例2
潤滑組成物として、アルキル置換ジフェニルエーテル油(40℃における動粘度102mm2/s)を40質量%、二硫化モリブデンを60質量%混合した組成物を用いた。
比較例3
潤滑組成物として、PAO油(40℃における動粘度17mm2/s)を用いた。
比較例4
潤滑組成物として、PAO油(40℃における動粘度46mm2/s)を用いた。
比較例5
潤滑組成物として、PAO油(40℃における動粘度65mm2/s)を用いた。
実施例および比較例の潤滑組成物を用いて、以下に示すSRV摩擦摩耗試験に供し、350℃の大気環境における潤滑維持性能を評価した。具体的には、試験開始から120分までの間、経時的に摩擦係数を測定した。実施例および比較例の摩擦係数の経時的変化を示したグラフを図5に示す。
<SRV摩擦摩耗試験>
テストピース:
ボール直径;9.525mm(Si3N4)
円盤プレート直径;24mm×7.9mm(SUS440C)
評価条件:
点接触最大面圧;1.7GPa
周波数;10Hz
振幅;1mm
試験温度;350℃
テストピース:
ボール直径;9.525mm(Si3N4)
円盤プレート直径;24mm×7.9mm(SUS440C)
評価条件:
点接触最大面圧;1.7GPa
周波数;10Hz
振幅;1mm
試験温度;350℃
図5に示すように、潤滑組成物が分子中にフェニル基を含む基油のみからなる場合(実施例1〜3)では、350℃の高温大気下でも摩擦係数がほとんど上昇することなく、潤滑性が維持できた。これに対して、分子中にフェニル基を含まない基油のみからなる潤滑組成物(比較例3〜5)や、その基油および固体潤滑剤からなる潤滑組成物(比較例1)の場合には、摩擦係数が大幅に増加し、潤滑性が維持できない結果となった。特に、比較例3〜5では、昇温段階の300℃付近ですでに摩擦係数が増大した結果となった。比較例2は、分子中にフェニル基を含む基油を40質量%含んでおり、試験開始後しばらくの間は摩擦係数の上昇を抑えられたが、最終的に摩擦係数が上昇する結果となった。
<ラマン分光測定>
実施例2および比較例4について、SRV摩擦摩耗試験終了後のテストピースをラマン分光法により測定した。各ラマンスペクトルを図6および図7に示す。
実施例2および比較例4について、SRV摩擦摩耗試験終了後のテストピースをラマン分光法により測定した。各ラマンスペクトルを図6および図7に示す。
図6に示すように、良好な潤滑性を示した実施例2では、グラフェンの特徴的なピークの一つである1580cm−1付近のGバンドが現れた。Gバンドは、通常1550cm−1〜1650cm−1に観測され、図6では1596cm−1のピークである。一方、比較例4ではGバンドは観測されず、層状構造を持たない炭素膜で一般的にみられる1270〜1450cm−1付近のDバンドのみが認められた。
このように分子中にフェニル基を含む基油のみを用いた場合には、摺動面にグラファイトが形成されたのに対して、分子中にフェニル基を含まない基油を用いた場合には、そのような層状構造は形成されなかった。SRV摩擦摩耗試験の結果からも、高温大気下において摺動面で基油がグラファイト化することで、潤滑性が維持されたことが判明した。
本発明の高温用摺動部材は、高温大気条件下でも潤滑機能を長時間維持できるので、300℃以上の高温条件下でも使用可能である。そのため、高温条件下で使用される転がり軸受に適しており、特に、フィルム延伸装置用のテンタークリップに用いられる転がり軸受として好適である。
1 深溝玉軸受
2 内輪
3 外輪
4 転動体
5 保持器
6 シール部材
7 潤滑組成物
8a 開口部
8b 開口部
9 押出機
10 Tダイ
11 縦延伸機
12 ガイドレール
13 横延伸装置
14 引巻取機
15 テンタークリップ
15a テンタークリップ本体
16 シートの片端
17 把持部
18 テンタークリップ用転がり軸受
2 内輪
3 外輪
4 転動体
5 保持器
6 シール部材
7 潤滑組成物
8a 開口部
8b 開口部
9 押出機
10 Tダイ
11 縦延伸機
12 ガイドレール
13 横延伸装置
14 引巻取機
15 テンタークリップ
15a テンタークリップ本体
16 シートの片端
17 把持部
18 テンタークリップ用転がり軸受
Claims (6)
- 高温下で二物体が転がり運動または滑り運動する摺動面と、該摺動面を潤滑する潤滑組成物とを備える高温用摺動部材であって、
前記高温が300℃以上であり、前記潤滑組成物が分子中にフェニル基を有する基油を90質量%以上含むことを特徴とする高温用摺動部材。 - 前記摺動面をラマン分光法により測定したラマンスペクトルにおいて、1550cm−1〜1650cm−1にピークを有する被膜が形成されていることを特徴とする請求項1記載の高温用摺動部材。
- 前記潤滑組成物が前記基油のみからなることを特徴とする請求項1または請求項2記載の高温用摺動部材。
- 前記基油が、アルキル置換ジフェニルエーテル油であることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項記載の高温用摺動部材。
- 前記基油の40℃における動粘度が50〜90mm2/sであることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項記載の高温用摺動部材。
- 前記高温用摺動部材が転がり軸受であり、該転がり軸受が、フィルム延伸装置用のテンタークリップに用いられる軸受であることを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれか1項記載の高温用摺動部材。
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