本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
展開状態において、互いに交差する長手方向と、幅方向と、厚さ方向と、を有し、吸収性本体と、前記吸収性本体よりも前記厚さ方向の非肌側に設けられた外装体と、を有するパンツ型使い捨ておむつであって、前記吸収性本体の前記幅方向の両側には、防漏壁部が設けられており、前記防漏壁部は、前記長手方向における両端部が前記吸収性本体に対して起立不能に固定された両端固定部と、前記長手方向において前記両端固定部の間で、前記厚さ方向の肌側に起立可能な起立部と、を有し、前記起立部の一部を前記外装体に剥離可能に接合する接合部を有し、前記パンツ型使い捨ておむつが着用された後で、前記接合部が剥離されることによって、前記一部が起立可能となる、ことを特徴とするパンツ型使い捨ておむつ。
このようなパンツ型使い捨ておむつによれば、着用時に、防漏壁部(起立部)が外装体と共に幅方向の外側に引っ張られることで、起立部が着用者の股下部にフィットしやすく、また、起立部が内側に倒れてしまうことが抑制される。そして、着用後に接合部が剥離することで、防漏壁部(起立部)の起立高さが確保され、排泄物の横漏れ等を抑制できる。これにより、フィット性が高く排泄物の漏れが生じ難い防漏壁部を備えたパンツ型おむつを提供することができる。
かかるパンツ型使い捨ておむつであって、前記接合部は、前記起立部と前記外装体とを剥離可能に接着する接着材によって形成されている、ことが望ましい。
このようなパンツ型使い捨ておむつによれば、起立部や外装体を損壊させることなく、両者を容易に離脱させることができる。また、接着材の塗布量や塗布範囲を変更することによって、接合部の接合強度を自在に調整することができる。これにより、着用後に接合部を剥離させやすくすることができる。したがって、防漏壁部のフィット性を高めつつ、排泄物の漏れを生じ難くすることができる。
かかるパンツ型使い捨ておむつであって、前記接合部を剥離させたときに、前記起立部に付着している前記接着材の単位面積当たりの量は、前記外装体に付着している前記接着材の単位面積当たりの量よりも多い、ことが望ましい。
このようなパンツ型使い捨ておむつによれば、接合部を剥離させたときに、防漏壁部を構成するシート部材から繊維が引き剥がされ難くなる。すなわち、防漏壁部において引き剥がされる繊維量が、外装体において引き剥がされる繊維量よりも少なくなる。これにより、防漏壁部の強度が低下し難くなり、着用時に防漏壁部が破れてしまうこと等を抑制することができる。
かかるパンツ型使い捨ておむつであって、前記外装体は、着用者の腹側に配置される前側ベルト部と、前記着用者の背側に配置される後側ベルト部と、を有し、前記幅方向の両側において、前記前側ベルト部と前記後側ベルト部とを係止する係止部を有し、前記長手方向において、前記係止部の内側端よりも内側に、前記接合部が位置している、ことが望ましい。
このようなパンツ型使い捨ておむつによれば、着用者が脚を前後に動かす際の付け根となる位置である係止部の長手方向の内側端よりも内側(上下方向の下側)に接合部が設けられていることにより、着用者の脚の動きが接合部に作用しやすい。したがって、着用後に、着用者が脚を動かすことによって、接合部を自然に剥離させやすくなる。
かかるパンツ型使い捨ておむつであって、前記外装体は、少なくとも前記接合部が設けられている部分において、前記幅方向の伸縮性を有している、ことが望ましい。
このようなパンツ型使い捨ておむつによれば、外装体を着用者の胴回りにしっかりとフィットさせることができる。したがって、吸収性本体が長手方向に引っ張られたときであっても、外装体の位置ずれが生じ難く、吸収性本体による長手方向の引っ張り力を接合部に作用させやすくすることができる。したがって、着用者の脚の動きによって、接合部をより剥離させやすくすることができる。
かかるパンツ型使い捨ておむつであって、前記接合部の前記長手方向における長さは、前記接合部の前記幅方向における長さよりも長い、ことが望ましい。
このようなパンツ型使い捨ておむつによれば、接合部の幅方向における長さ(幅)が短い縦長の形状であることにより、接合部に対して長手方向に引っ張る力が作用したときに、長手方向の端部における抵抗が小さく、接合部が容易に剥がれ易くなる。これにより、着用者の脚の動きによって、接合部の全体を剥離させやすくすることができる。
かかるパンツ型使い捨ておむつであって、前記接合部の前記長手方向の外側端における前記幅方向の長さは、前記接合部の前記長手方向の内側端における前記幅方向の長さよりも短い、ことが望ましい。
このようなパンツ型使い捨ておむつによれば、長手方向において接合部の外側端を内側に引っ張る力が作用した際に、該外側端が小さな力でも剥がれやすくなり、剥離の起点を形成しやすくすることができる。
かかるパンツ型使い捨ておむつであって、前記防漏壁部は、前記長手方向に沿って伸縮する弾性部材を有し、前記長手方向において、前記弾性部材による伸縮性が発現している領域と、前記接合部とが重複している、ことが望ましい。
このようなパンツ型使い捨ておむつによれば、弾性部材によって発現する長手方向に沿った伸縮力が、接合部にも作用するようになる。したがって、防漏壁部が長手方向に引っ張られる際に、弾性部材による伸縮力(収縮力)が加わることで、接合部に対して長手方向に沿ってより大きな力が作用するようになる。これにより、接合部をより剥離させやすくすることができる。
かかるパンツ型使い捨ておむつであって、前記接合部は、前記幅方向において、前記防漏壁部の先端から所定の距離を置いて設けられている、ことが望ましい。
このようなパンツ型吸収性物品によれば、接合部と防漏壁部の先端部とが接触し難くなるため、先端部がべたついてしまうことを抑制できる。これにより、着用者に不快感(べたつき)を感じさせ難くすることができる。
かかるパンツ型使い捨ておむつであって、前記防漏壁部の少なくとも一部は、前記長手方向に沿った折り曲げ線にて、前記幅方向の外側から内側に折り返されており、前記接合部は、前記幅方向において、前記折り曲げ線から所定の距離を置いて設けられている、ことが望ましい。
このようなパンツ型使い捨ておむつによれば、防漏壁の起立部のうち、折り曲げ線よりも内側の部分を外装体と接合させつつ、接合部と防漏壁部の先端部とが接触することを抑制することができる。これにより、起立部が幅方向の内側に倒れてしまうことを抑制すると共に、着用者に不快感(べたつき)を感じさせ難くすることができる。
===実施形態===
パンツ型使い捨ておむつとして、大人向けのパンツ型使い捨ておむつ(以下、単に「おむつ1」とも呼ぶ)を例に挙げて実施形態を説明する。ただしこれに限定されず、本発明に係るパンツ型使い捨ておむつは、例えば子供向け(乳幼児用)の使い捨ておむつや生理用ショーツ等としても適用できる。
<おむつ1の基本構成>
図1は、パンツ型使い捨ておむつ1の概略斜視図である。図2は、展開且つ伸長状態のおむつ1の概略平面図である。なお、おむつ1の伸長状態とは、おむつ1を皺なく伸長させた状態であり、おむつ1を構成する各部材(例えば、後述する外装体20を構成するシート等)の寸法がその部材単体の寸法と一致又はそれに近い長さになるまで伸長した状態である。
パンツ型状態のおむつ1は、図1に示されるように互いに交差する上下方向、左右方向、及び、前後方向を有する。また、図2に示されるようにおむつ1を展開した状態において、互いに交差する長手方向、幅方向、及び厚さ方向を有する。長手方向は、パンツ型状態の上下方向に沿った方向である。幅方向は、パンツ型状態の左右方向と同じ方向である。厚さ方向は、おむつ1を構成する各部材が積層されている方向である。上下方向において、着用者の胴側となる側を上側とし、着用者の股下となる側を下側とする。前後方向において、着用者の腹側となる側を前側とし、着用者の背側となる側を後側とする。厚さ方向において、着用者に接する側を肌側とし、その反対側を非肌側とする。
おむつ1は、吸収性本体10(おむつ1の内層体に相当する)と、吸収性本体10の非肌側に位置する外装体20とを有している。外装体20は、着用者の腹側に配置される前側ベルト部21(ベルト部)と、着用者の背側に配置される後側ベルト部22(ベルト部)と、それらを繋ぐ股下部23とを有している。
なお、本実施形態のおむつ1では外装体20が3部材(前側ベルト部21、後側ベルト部22、及び、股下部23)から構成されているが、これに限らない。例えば、前側ベルト部21、後側ベルト部22、及び、股下部23が連続した1部材で構成されていても良い。また、股下部23を有さない構成としても良い。
図2に示す展開状態のおむつ1では、吸収性本体10の長手方向の一端側(前側)に、前側ベルト部21が位置し、吸収性本体10の長手方向の他端側(後側)に、後側ベルト部22が位置している。展開状態のおむつ1において、吸収性本体10が長手方向の略中央で2つ折りされ、前側ベルト部21の幅方向(左右方向)の両側部と後側ベルト部22の幅方向(左右方向)の両側部とが溶着等で係止され、一対の係止部24が形成されることにより、図1に示すパンツ型となる。これにより、吸収性本体10の長手方向がおむつ1の上下方向に沿うと共に、前側ベルト部21と後側ベルト部22とが環状に繋り、その上端に胴回り開口1aが形成され、また、左右方向の両側に一対の脚回り開口1bが形成される。
図3は、吸収性本体10の概略平面図及び概略断面図である。吸収性本体10は、図3に示すように、吸収性コア11と、吸収性コア11の肌側に位置する液透過性のトップシート12と、吸収性コア11の非肌側に位置するバックシート13とを有している。バックシート13は、液不透過性シート13a、及び、その非肌側に配された液透過性シート13bの二層構造である。
吸収性コア11は、尿等の排泄液を吸収して保持する部材であり、例えば高吸収性ポリマー(SAP)が混入したパルプ繊維等の液体吸収性繊維により形成される。図示しないが、吸収性コア11は、ティッシュペーパーや不織布等の液透過性のシートによって、外周面が覆われていても良い。
また、液透過性シート13bは、幅方向において吸収性コア11よりも外側に延出する部分を有しており、当該延出した部分が、長手方向に沿った折り曲げ線f1(図3では幅方向の外側端の位置)において幅方向の内側且つ厚さ方向の肌側に折り返されることにより、防漏壁部40を形成している。この防漏壁部40は、吸収性本体10の幅方向の両側に、長手方向に沿って一対ずつ設けられており、さらに、長手方向に伸縮する複数の防漏壁弾性部材41,41…を備えている。そして、長手方向の両端部には両端固定部42,42が設けられている。両端固定部42では、ホットメルト接着剤等の接着材によって、防漏壁部40が吸収性本体10(トップシート12)に対して起立不能に固定されている。
一方、長手方向における両端固定部42,42の間の領域は、おむつ1の着用時において、防漏壁弾性部材41が発現する伸縮性に基づいて、防漏壁部40の頂点部40etが着用者の肌側に向けて起立可能となる。以下、防漏壁部40のうち、長手方向において両端固定部42,42の間で、厚さ方向の肌側に起立可能な領域を起立部43とする。おむつ1の着用時には、吸収性本体10の幅方向両側から防漏壁部40の起立部43が肌側に起立することによって、尿等の排泄物が吸収性本体10(吸収性コア11)から幅方向の外側に移動することが抑制される。これにより、おむつ1の外部に排泄物が漏出すること(すなわち、排泄物の横漏れ)を抑制できる。なお、本実施形態では、吸収性本体10を構成する液透過性シート13b(バックシート13)によって防漏壁部40が形成されているが、他のシート部材によって防漏壁部40が形成されていても良い。
前側ベルト部21、及び、後側ベルト部22は、それぞれ図2に示すように、上下方向において係止部24と重複する部位である胴回り領域211,221と、胴回り領域211,221よりも下側の股下側領域212,222とを有している。
股下側領域212,222は略台形形状を成し、下側に向かうにつれて横幅(左右方向の長さ)が狭くなっている。また、前側ベルト部21に比べて後側ベルト部22の方が、股下側領域222が大きく、着用者の臀部を被覆可能となっている。
前側ベルト部21、後側ベルト部22、股下部23は、それぞれ肌側シート213,223,231と、非肌側シート214,224,232と、それらの間に位置する伸縮性不織布215,225,233とが厚さ方向に積層されることによって形成されている。さらに、図2に示されるように、肌側シート213(223)と非肌側シート214(224)との厚さ方向の間に、幅方向(左右方向)に延びる帯状の伸縮性フィルム31が設けられていても良い。伸縮性不織布215,225及び伸縮性フィルム31は、少なくともおむつ1の左右方向に伸縮するシートである。前側ベルト部21及び後側ベルト部22は、これらの伸縮性部材によって、幅方向(左右方向)に対する伸縮性を有している。
肌側シート213,223,231及び非肌側シート214,224,232としては、スパンボンド不織布やSMS不織布等により形成された柔軟なシートを例示できる。また、伸縮性不織布215,225,233としては、弾性を有する熱可塑性エラストマーの一種であるポリウレタン系エラストマーの伸縮性繊維、及び、非弾性を有する熱可塑性樹脂の一種であるポリオレフィン系樹脂のポリプロピレン(PP)の非伸縮性繊維に、ギア延伸等の適宜な延伸処理が施された不織布を例示できる。また、伸縮性フィルム31としては、ウレタンやスチレンのようなエラストマー樹脂を溶融し、均一厚さのシート状とした伸縮性を有する弾性部材を例示できる。
図4は、おむつ1の吸収性本体10(内層体)と、外装体20との接合状態について説明する概略平面図である。図5は、図4のA−A断面について表す概略断面図である。吸収性本体10は、図4の斜線部で示される本体固定部50を介して外装体20の肌側面に接合・固定されている。本体固定部50は、外装体20の肌側、若しくは吸収性本体10の非肌側の所定の領域に、ホットメルト接着剤等の接着材A1を塗布することによって形成されている。
また、防漏壁部40の起立部43の一部の領域が、接合部60によって外装体20に接合されている。接合部60は、長手方向の前側に設けられた1対の前側接合部61、及び、1対の後側接合部62を有している。前側接合部61は、図4及び図5に示されるように、長手方向の中心よりも前側(腹側)且つ幅方向の両端部において、長手方向に沿った帯状の領域であり、起立部43の非肌側面と、前側ベルト部21の肌側面とを互いに接合している。同様に、後側接合部62は、長手方向の中心よりも後側(背側)且つ幅方向の両端部において、長手方向に沿った帯状の領域であり、起立部43の非肌側面と、後側ベルト部22の肌側面とを互いに接合している。
接合部60は、起立部43の非肌側の所定の領域に、ホットメルト接着剤等の接着材A2を塗布することによって形成されている。本実施形態において、接合部60を形成する接着材A2と、本体固定部50を形成する接着材A1とは異なる接着材であり、本体固定部50と接合部60とはそれぞれ接合強度が異なっている。具体的に、接合部60は、起立部43と外装体20とを剥離可能に接合し、本体固定部50は、吸収性本体10と外装体20とを剥離不能に接合している。
ここで、「剥離可能」な接合強度とは、起立部43(防漏壁部40)及び外装体20を構成するシート部材が破れたり、各々の機能を発揮できなくなるほど損壊させたりすることなく、接合部60を引き剥がすことができる程度の接合強度である。すなわち、接合部60は起立部43と外装体20とを仮止めするための接合部であり、接合部60を剥がした場合であっても、外装体20及び起立部43(防漏壁部40)の機能を維持することが可能である。
一方、「剥離不能」な接合強度とは、本体固定部50を剥がした場合に、吸収性本体10や外装体20を構成するシート部材が破れたり、機能を維持できなくなるほど損壊したりする程度の接合強度である。
接合部60を形成する接着材A2としては、例えば、ヘンケルシ゛ャハ゜ン(株)製のMQ699を使用することが可能である。そして、設定温度を150℃として、対象箇所に20g/m2以下の目付量でMQ699を塗工することにより、剥離可能な接合部60を形成することができる。さらに、接着材A2としては、なるべくタック力の低い接着材を選定することが望ましい。本実施形態では、MQ699のようなタック力の低い接着材を使用することにより、接合部60を剥離させた後で、接合部60を形成していた接着材A2が着用者の肌や衣服に再接着してしまうこと等を抑制できる。
また、本実施形態において、接着材A2の塗工幅(接合部60の幅W60に相当)は、なるべく狭いことが望ましい。例えば、図4では、塗工幅(W60)を2mm程度としている。塗工幅を狭くして接合強度を低くすることにより、接合部60を剥離させやすくすることができる。なお、塗工幅を広くする場合には、その分接着材A2の目付量を下げることが望ましい。さらに、各々の接合部60を、複数の領域に分割して形成するようにしても良い。例えば、幅4mm分の接合部60を形成する場合、幅4mmの1本の帯状領域に接着材A2を塗工するよりも、幅2mmの2本の帯状領域に分割して接着材A2を塗工すると良い。すなわち、長手方向に沿った幅狭の帯状領域が、幅方向に所定の間隔を空けて複数並ぶように接合部を形成すると良い。これにより、帯状領域1本あたりの接合強度をより低くすることができるため、おむつ1の着用前に剥離し難く、着用後に剥離しやすい接合部60を形成することができる。
一方、本体固定部50を形成する接着材A1としては、例えば、ヘンケルシ゛ャハ゜ン(株)製のMQ7837EKを使用することが可能である。そして、対象箇所に8〜10g/m2程度の目付量でMQ7837EKを塗工することにより、一旦接合した後は剥離不能な本体固定部50を形成することができる。
<おむつ1の着用時について>
パンツ型状態のおむつ1を着用する際には、ベルト部21,22を左右方向の両側に引っ張って胴回り開口1aを広げ、胴回り開口1aから一対の脚回り開口1bへと着用者の両脚を通しつつ、おむつ1をつま先側から股下側まで引き上げる動作が行われる。そして、着用者の股下部に吸収性本体10をフィットさせると共に、防漏壁部40を起立させて着用者の鼠蹊部に沿ってフィットさせる動作が行われる。
しかしながら、従来のパンツ型おむつでは、着用時にベルト部(外装体)を左右方向の両側に引っ張る際に、ベルト部が左右方向の外側に広がるのに対して、一対の防漏壁部は左右方向の外側に広がらず、該防漏壁部を着用者の鼠蹊部にフィットさせることが困難であった。つまり、防漏壁部とベルト部とが接合されていないため、防漏壁部とベルト部との動きが連動せず、ベルト部が左右方向の外側に広げられた場合であっても、防漏壁部の位置は変動し難く、着用者の鼠蹊部の位置に合わせることが難しかった。また、防漏壁部の頂点部が左右方向の内側に倒れてしまい、防漏壁部が起立し難くなる場合があった。そのため、従来のおむつでは、フィット性が悪化したり、排泄部の横漏れが生じたりするおそれがあった。
これに対して、本実施形態のおむつ1では、図5に示されるように、防漏壁部40の起立部43の一部と、外装体20とが接合部60によって互いに接合されている。したがって、おむつ1の着用動作時に、外装体20(前側ベルト部21及び後側ベルト部22)が左右方向(幅方向)の両側に引っ張られると、外装体20に連動して一対の防漏壁部40,40が左右方向の外側に広げられる。すなわち、一対の防漏壁部40,40の頂点部40et,40etの左右方向(幅方向)における間隔が広げられ、着用者の股下部を挟んで、鼠蹊部にフィットさせやすくすることができる。また、防漏壁部40,40が左右方向の両側に引っ張られることにより、頂点部40etが内側に倒れてしまうことが抑制され、防漏壁部40(頂点部40et)を起立させやすくすることができる。
一方、おむつ1を着用した後で、防漏壁部40の起立部43の一部が外装体20に接合されたままであると、当該接合されている部分では、起立部43の肌側への起立が制限されるため、防漏壁部40の起立可能な高さが低くなってしまうおそれがある。
そこで、本実施形態のおむつ1では、おむつ1が着用された後で、起立部43の一部と外装体20とを接合する接合部60を剥離させる。図6は、おむつ1の着用時において、接合部60が剥離されたときの防漏壁部40の状態について説明する概略断面図である。接合部60が剥離されると、防漏壁部40の起立部43は、図6のように本体固定部50若しくは吸収性コア11の幅方向外側端付近の位置を起立基部40bとして、起立基部40bと頂点部40etとの間の部分が肌側に起立可能となる。なお、接合部60を剥がした場合であっても、上述したように、外装体20及び防漏壁部40(起立部43)は損壊することなく、機能を維持することができる。これにより、おむつ1の着用時において、防漏壁部40(起立部43)の起立高さが十分に確保され、横漏れ等を生じ難くすることができる。
なお、接合部60は、着用者等が両手でそれぞれ起立部43と外装体20とを掴んで引っ張ることにより、簡単に剥離させることが可能である。また、本実施形態では、着用者等が意図して接合部60を剥がす動作を行わない場合であっても、おむつ1を着用した状態で着用者が両脚を動かす動作(例えば、歩行等)を行うことにより、自然に剥がれるようになっている。
図7A〜図7Cは、歩行動作によって接合部60が剥離することについて説明する図である。図7Aは、着用者がおむつ1を着用した状態について表す概略側面図である。同図7Aでは、着用者の股下部に沿って吸収性本体10及び防漏壁部40が設けられており、吸収性本体10よりも肌側に外装体20(前側ベルト部21及び後側ベルト部22)が設けられている。また、防漏壁部40は、前側上端部において、前側接合部61を介して前側ベルト部21と接合されている。同様に、後側上端部において、後側接合部62を介して後側ベルト部22と接合されている。
図7Bは、図7Aの状態から、着用者が左脚を前方に振り出したときの様子、すなわち、着用者が左脚から歩行動作を開始したときの様子について表している。着用者が左脚を前側に振り出す動作を行うと、左脚の動きに従って吸収性本体10及び防漏壁部40が全体として前側に引っ張られる。このとき、後側ベルト部22は、伸縮性不織布225や伸縮性フィルム31(図7Bでは不図示)によって作用する左右方向の収縮力によって、着用者の背側にフィットした状態が保たれ、位置ずれは生じ難い。したがって、防漏壁部40は、後側ベルト部22に対して長手方向の前側(腹側)に相対的に移動するように引っ張られる。そして、このような引っ張り力が着用者の左脚側に配置された後側接合部62に作用することにより、後側接合部62が剥離し、防漏壁部40(起立部43)と後側ベルト部22との接合が解除される。
続いて、図7Cは、図7Bの状態から、着用者が左脚を後側に戻したときの様子、すなわち、着用者の歩行動作が継続されたときの様子について表している。着用者が左脚を後側に動かすことにより、左脚の動きに従って吸収性本体10及び防漏壁部40は、後側に引っ張られる。このとき、前側ベルト部21は、後側ベルト部22と同様に、着用者の腹側にフィットした状態に保たれ、位置ずれは生じ難い。したがって防漏壁部40は、前側ベルト部21に対して長手方向の後側(背側)に相対的に移動するように引っ張られ、着用者の左脚側に配置された前側接合部61が剥離して、防漏壁部40(起立部43)と前側ベルト部21との接合が解除される。
なお、前側接合部61及び後側接合部62は、一度の脚の動きだけで全体が剥離するとは限らないが、着用者が脚の前後運動(歩行)を継続することによって、完全に剥離させることができる。また、着用者の右脚側に配置されたに配置された接合部60(61,62)も、左脚側に配置された接合部60(61,62)と同様にして剥離させることができる。したがって、おむつ1の着用時において、着用者が接合部60を剥離させるための動作を行わなかったとしても、接合部60を自然に剥離させることが可能となる。これにより、防漏壁部40をしっかりと起立させ、排泄物の横漏れ等を抑制することができる。
そして、おむつ1では、防漏壁部40(起立部43)と前側ベルト部21とを接合する接合部60が、剥離可能な接着材A2によって形成されていることにより、上述の様に、起立部43や前側ベルト部21を損壊させることなく、両者を容易に離脱させることができる。また、接着材A2の塗布範囲や塗布量、接着剤A2自体のタック力等を変更することによって、接合部60の接合強度を自在に調整することが可能である。これにより、接合部60の剥離しやすさを調整することができる。
また、接合部60は、図4に示されるように、展開状態のおむつ1の長手方向において、係止部24の内側端24b(上下方向における下端)よりも、内側(上下方向における下側)に位置している。係止部24の長手方向の内側端24bは、着用者が脚を前後に動かす際の付け根となる位置であるため、仮に接合部60が、長手方向において内側端24bよりも外側(上下方向における上側)に位置している場合、図7で説明したような脚の動きによる力が接合部60に伝わり難くなる。これに対して、本実施形態では、接合部60が長手方向において内側端24bよりも内側(上下方向における下側)に位置しているため、着用者の脚の動きが直接的に接合部60に作用しやすい。したがって、おむつ1の着用後に、着用者が脚を動かすことによって、接合部60を自然に剥離させやすくすることができる。
また、外装体20(前側ベルト部21及び後側ベルト部22)は、少なくとも接合部60が設けられている部分において、左右方向(幅方向)の伸縮性を有している。外装体20が左右方向(幅方向)の伸縮性を有していることにより、おむつ1の着用時に、ベルト部21,22を着用者の胴回りにしっかりとフィットさせることができる。したがって、図7Bや図7Cで説明したように、吸収性本体10(防漏壁部40)が長手方向に引っ張られた場合であっても、ベルト部21,22の位置ずれが生じ難く、吸収性本体10による長手方向の引っ張り力が接合部60に作用しやすくなる。したがって、着用者の脚の動きによって、接合部60を自然に剥離させやすくすることができる。
また、図4に示されるように、接合部60の長手方向における長さL60は、幅方向における長さ(幅)W60よりも長くなっている(L60>W60)。つまり、接合部60は、長手方向に沿った縦長の形状を有している。本実施形態では、おむつ1を着用した状態で着用者が脚を前後に動かすことによって接合部60を簡単に剥離できるようにしている。したがって、仮に、接合部60の幅W60が長さL60よりも長い横長形状である場合、接合部60に対して長手方向に引っ張る力が作用したとしても、抵抗が大きく、接合部60が剥離し難くなるおそれがある。一方、本実施形態のように接合部60の幅方向における長さW60が短い縦長の形状であれば、接合部60に対して長手方向に引っ張る力が作用したときに、長手方向の端部における抵抗が小さく、接合部60が容易に剥がれ易くなる。すなわち、接合部60が剥がれ始める起点が形成されやすくなり、着用者の脚の動きによって、接合部60の全体を剥離させやすくすることができる。
また、図4に示されるように、長手方向において、接合部60は、防漏壁弾性部材41の伸縮性が発現している領域(防漏壁弾性部材41の有効長範囲)と重複する位置に配置されている。すなわち、防漏壁弾性部材41が発現している長手方向に沿った伸縮力が、接合部60にも作用している。したがって、図7Bや図7Cのように、防漏壁部40(及び吸収性本体10)が、着用者の脚の前後運動によって長手方向に引っ張られる際に、防漏壁弾性部材41による伸縮力(収縮力)が加わることで、接合部60に対して長手方向に沿ったより大きな力が作用するようになる。これにより、接合部60をより剥離させやすくすることができる。
また、接合部60を剥離させたときに、防漏壁部40の起立部43側に付着している接着材A2の単位面積当たりの量は、外装体20側に付着している接着材A2の単位面積当たりの量よりも多いことが望ましい。例えば、前側接合部61を剥がしたときに、起立部43において前側接合部61が設けられていた部分に残留している接着材A2の単位面積当たりの量が、前側ベルト部21において前側接合部61が設けられていた部分に残留している接着材A2の単位面積当たりの量よりも多くなるようにする。
このような構成であれば、接合部60を剥離させる際に、防漏壁部40側の繊維が引き剥がされ難くなる。防漏壁部40は、着用者の鼠蹊部と当接した状態で着用者の身体の動きに合わせて変形する部位であることから、着用者が身体を動かしたときに破れてしまうことがないように、ある程度の強度を有している必要がある。そこで、接合部60を剥離させた際に、防漏壁部40において引き剥がされる繊維量が、外装体20において引き剥がされる繊維量よりも少なくなるようにして、防漏壁部40の強度が低下することを抑制する。これにより、おむつ1の着用時において防漏壁部40を破れ難くすることができる。
なお、接合部60によって防漏壁部40(起立部43)と外装体20とを接合する際には、防漏壁部40(起立部43)側に接着材A2が塗布されるようにすると良い。このようにすれば、起立部43を構成する液透過性シート13bの繊維間に接着材Aが染みこみやすく、接合部60を剥離させたときに、起立部43に残留する接着材A2の単位面積当たりの量を大きくすることができる。ここで、防漏壁部40または外装体20に付着している単位面積当たりの接着剤A2の量は、例えば、接着剤A2が塗布される前の防漏壁部40及び外装体20の単位面積当たりの重量と、接合部60を剥離させ後のおむつ1から切り出した防漏壁部40及び外装体20の単位面積当たりの重量とをそれぞれ比較することによって算出することができる。
また、接合部60は、幅方向において、防漏壁部40(起立部43)の頂点部40etと所定の距離を置いて設けられている。言い換えると、防漏壁部40の頂点部40etと接合部60との間には所定の間隔が設けられている。例えば、図5では、接合部60の幅方向における外側端60eoと、防漏壁部40の頂点部40etとの間に、距離L1が設けられている。接合部60は、粘性を有する接着材A2によって形成されるため、接合部60が剥離された後でも、該接合部60が設けられていた部分には多少のべたつきが残る。したがって、頂点部40etと接合部60との間に所定の距離(図5ではL1)を設けることにより、おむつ1の着用時に着用者の肌と接触する可能性の高い頂点部40etをべたつき難くすることができる。これにより、着用者に不快感(べたつき)を感じさせ難くすることができる。
さらに、防漏壁部40の頂点部40etと接合部60との間の距離が、防漏壁部40の起立基部40bと接合部60との間の距離よりも長くなるようにすると良い。すなわち、接合部60が頂点部40etよりも起立基部40b寄りに設けられていると良い。このようにすれば、接合部60を形成する接着材A2が防漏壁部40の頂点部40etにより付着し難くなるため、頂点部40etをべたつき難くすることができる。
なお、本実施形態では、防漏壁部40(起立部43)の先端側の一部分が折り曲げ線f1にて幅方向の内側且つ厚さ方向の肌側に折り返されている。この場合、接合部60は、幅方向において、折り曲げ線f1と所定の距離を置いて設けられるようにすることが望ましい。すなわち、接合部60は、幅方向において、折り曲げ線f1の位置よりも防漏壁部40の起立基部40b側に設けられていることが望ましい。例えば、図5では、接合部60の幅方向における外側端60eoと、折り曲げ線f1との間に、距離L2が設けられている。このようにすれば、防漏壁部40の起立部43のうち、折り曲げ線f1よりも内側(且つ非肌側)の部分を外装体20と接合(仮止め)して起立部43が幅方向の内側に倒れてしまうこと等を抑制しつつ、接合部60を構成する接着材A2が防漏壁部40の頂点部40etに付着することを抑制することができる。
また、接合部60の形状は以下のように変形しても良い。図8は、接合部60の形状の変形例について表す概略平面図である。本変形例では、長手方向の一方側に配置されている接合部60について、長手方向の一方側(すなわち、長手方向の外側)端における幅が、長手方向の他方側(すなわち、長手方向の内側)端における幅よりも短く(狭く)なるように、接合部60が形成される。図8の例では、長手方向の前側に配置された前側接合部61の幅方向における長さ(幅)W61が、長手方向の前側(外側)ほど短くなった、所謂釣り鐘型の形状を有している。つまり、長手方向の前側端における幅W61fが、長手方向の後側端における幅W61bよりも狭くなっている(W61f<幅W61b)。また、図8では示されていないが、長手方向において、後側に配置された後側接合部62の幅W62が、後側ほど細くなっていても良い。
図7で説明したように、接合部60が剥離されるときには、接合部60に対して長手方向の一方側から他方側に引っ張る力が作用する。例えば、図7Cにおいては、前側接合部61を長手方向の前側から後側に引っ張る力が作用する。この場合、前側接合部61の前側端における幅W61fを短くしておくことで、前側端において前側接合部61が剥がれやすくなる。すなわち、長手方向において前側接合部61の前側端を後側に引っ張る力が作用した際に、前側端部が小さな力でも剥がれやすくなり、剥離の起点が形成されやすくなる。そして、前側端において、一旦剥離起点が形成されると、前側接合部61は、前側から後側に向かって簡単に剥がれやすくなる。したがって、接合部60の長手方向外側端における幅W60fが、長手方向内側端における幅W60bよりも短くなるように接合部60を形成することによって、おむつ1の着用後に、接合部60を自然に剥離させやすくすることができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。また、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更や改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれるのはいうまでもない。