JP2020100354A - 制御装置及び転舵装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】左右の転舵機構が互いに連結されていない転舵装置において、すべり角を検出するためのセンサがなくとも、スプリットμ路における車両の安定性を維持する。【解決手段】制御装置50は、左右の転舵機構のそれぞれに対応した目標ヨーレートを決定する目標ヨーレート決定部20bと、決定された目標ヨーレートに応じた電流指令値を、各電動モータに出力する電流指令値決定部(左転舵ECU30L及び右転舵ECU30R)と、左右の転舵輪のそれぞれと路面との摩擦係数を比較し、摩擦係数が低い方の転舵輪に対応する電動モータの出力を略ゼロとする出力補正部とを備える。【選択図】図1
Description
本発明は、制御装置及び転舵装置に関する。
ステアリングホイールと転舵機構とが機械的に接続されていない車両用の転舵装置がある。例えば、特許文献1には、左右独立操舵可能であるステアリング装置が記載されている。左右の転舵輪それぞれに転舵機構が設けられ、各転舵機構は、電動モータを動力源とする転舵用アクチュエータを備える。転舵機構はそれぞれ、異なった転舵角で独立に転舵輪を転舵可能である。さらに、特許文献1では、スプリットμ路などの、右輪と左輪とで路面から受ける摩擦係数(μ)が異なる場合に、車両の安定性を保つべく、左右の車輪に対して異なる転舵制御を行っている。具体的には、摩擦係数の高い方の車輪に対してはヨーレートに基づいた転舵制御するとともに、摩擦係数の低い方の車輪に対しては当該車輪のすべり角が略ゼロとなるように転舵制御している。
ところで、特許文献1では、車輪に作用するすべり角を検出するために、高価なセンサが必要であるが、軽量化やコストダウンの観点から当該センサがなくとも、スプリットμ路における車両の安定性を維持することが求められている。
そこで、本発明の目的は、左右の転舵機構が互いに連結されていない転舵装置において、すべり角を検出するためのセンサがなくとも、スプリットμ路における車両の安定性の維持可能な制御装置及び転舵装置を提供する
本発明の一態様に係る制御装置は、互いに機械的に接続されていない左右の転舵機構を備え且つ左右の転舵機構のそれぞれに備えられる各電動モータの駆動力によって左右の転舵輪を個別に転舵する車両用の転舵装置の制御装置であって、左右の転舵機構のそれぞれに対応した目標ヨーレートを決定する目標ヨーレート決定部と、決定された目標ヨーレートに応じた電流指令値を、各電動モータに出力する電流指令値決定部と、左右の転舵輪のそれぞれと路面との摩擦係数を比較し、摩擦係数が低い方の転舵輪に対応する電動モータの出力を略ゼロとする出力補正部と、備えている。
本発明の一態様に係る転舵装置は、上記制御装置と、左の転舵機構及び右の転舵機構とを備え、左の転舵機構は、左の転舵輪を個別に転舵するための駆動力を発生する左の電動モータを有し、右の転舵機構は、右の転舵輪を個別に転舵するための駆動力を発生する右の電動モータを有する。
本発明によれば、左右の転舵機構が互いに連結されていない転舵装置において、すべり角を検出するためのセンサがなくとも、スプリットμ路における車両の安定性を維持することができる。
以下、実施の形態に係る転舵装置等を、図面を参照しながら説明する。なお、以下で説明される実施の形態は、包括的又は具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ(工程)、並びにステップの順序等は、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。また、各図は模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。さらに、各図において、実質的に同一の構成要素に対しては同一の符号を付しており、重複する説明は省略又は簡略化される場合がある。
[実施の形態]
まず、本発明の実施の形態に係る車両用の転舵装置100の全体的な構成を説明する。図1は、実施の形態に係る転舵装置100の全体的な構成の一例を示すブロック図である。転舵装置100は、車両1に搭載され、左右独立転舵システムが採用されたステア・バイ・ワイヤシステムの構成を備えている。転舵装置100は、運転者が操向のために操作する操舵部材としてのステアリングホイール2と、車両1の前方側に配置された左転舵輪3L及び右転舵輪3Rとを備える。さらに、転舵装置100は、左転舵輪3Lを個別に転舵するための左転舵機構4Lと、左転舵機構4Lと機械的に接続されておらず且つ右転舵輪3Rを個別に転舵するための右転舵機構4Rと、これらを制御するための制御装置50とを備える。左転舵機構4Lは、ステアリングホイール2の回転操作に応じて左転舵輪3Lを転舵する。右転舵機構4Rは、ステアリングホイール2の回転操作に応じて右転舵輪3Rを転舵する。
まず、本発明の実施の形態に係る車両用の転舵装置100の全体的な構成を説明する。図1は、実施の形態に係る転舵装置100の全体的な構成の一例を示すブロック図である。転舵装置100は、車両1に搭載され、左右独立転舵システムが採用されたステア・バイ・ワイヤシステムの構成を備えている。転舵装置100は、運転者が操向のために操作する操舵部材としてのステアリングホイール2と、車両1の前方側に配置された左転舵輪3L及び右転舵輪3Rとを備える。さらに、転舵装置100は、左転舵輪3Lを個別に転舵するための左転舵機構4Lと、左転舵機構4Lと機械的に接続されておらず且つ右転舵輪3Rを個別に転舵するための右転舵機構4Rと、これらを制御するための制御装置50とを備える。左転舵機構4Lは、ステアリングホイール2の回転操作に応じて左転舵輪3Lを転舵する。右転舵機構4Rは、ステアリングホイール2の回転操作に応じて右転舵輪3Rを転舵する。
左転舵機構4L及び右転舵機構4Rはそれぞれ、ステアリングホイール2の回転操作に応じて駆動される左転舵アクチュエータ5L及び右転舵アクチュエータ5Rを備える。左転舵アクチュエータ5L及び右転舵アクチュエータ5Rの例は、電動モータである。また、左転舵機構4Lは、左転舵アクチュエータ5Lから受ける回転駆動力により左転舵輪3Lを転舵させる。右転舵機構4Rは、右転舵アクチュエータ5Rから受ける回転駆動力により右転舵輪3Rを転舵させる。ステアリングホイール2と、左転舵機構4L及び右転舵機構4Rとの間には、ステアリングホイール2に加えられた操舵トルクを機械的に伝達する機械的結合はない。左転舵アクチュエータ5Lは、左転舵輪3Lのみを転舵し、右転舵アクチュエータ5Rは、右転舵輪3Rのみを転舵する。
左転舵機構4L及び右転舵機構4Rはそれぞれ、左転舵輪3L及び右転舵輪3Rを転舵させるための回転軸である左転舵軸6L及び右転舵軸6Rを有している。左転舵軸6L及び右転舵軸6Rは、図示しないハブユニットを介して車両1のフロントサスペンションによって支持されている。左転舵軸6L及び右転舵軸6Rを支持するフロントサスペンションは、ストラット式、ダブルウィッシュボーン式及びマルチリンク式等のいかなる形式のサスペンションであってもよい。
さらに、転舵装置100は、車両1の目標ヨーレートとして、ステアリングホイール2の操舵角を検出する操舵角センサ10を備える。本実施の形態では、操舵角センサ10は、ステアリングホイール2の回転シャフトの回転角を検出する。また、転舵装置100は、左転舵輪3Lの転舵角を検出する左転舵角センサ11Lと、右転舵輪3Rの転舵角を検出する右転舵角センサ11Rとを備える。
また、車両1には、車両1の速度を検出する車速センサ12、及び慣性計測装置(以下、「IMU(Inertial Measurement Unit)」とも呼ぶ)13が設けられている。IMU13は、ジャイロセンサ、加速度センサ及び地磁気センサ等で構成され得る。例えば、IMU13は、車両1の3軸方向の加速度及び角速度等を検出する。角速度の3軸方向の例は、ヨーイング、ピッチング及びローリング方向である。IMU13は、例えばヨーイング方向の角速度(「ヨーレート」とも呼ぶ)を検出する。さらに、IMU13は、ピッチング及びローリング方向の角速度を検出してもよい。
また、車両1には、左転舵輪3Lと、右転舵輪3Rの車輪速ωl、ωrを検出する車輪速センサ14L、14Rが設けられている。なお、図示はしていないが、車両1の各後輪の車輪速を検出する車輪速センサも設けられている。
また、転舵装置100は、上位ECU(電子制御ユニット:Electronic Control Unit)20及び記憶部21を備える。記憶部21は、上位ECU20と別に配置され、上位ECU20と電気的に接続されていてもよく、上位ECU20に含まれていてもよい。左転舵機構4Lは、下位ECUの1つである左転舵ECU30Lを備え、右転舵機構4Rは、下位ECUの1つである右転舵ECU30Rを備える。上位ECU20は、左転舵ECU30L、右転舵ECU30R、操舵角センサ10、車速センサ12、IMU13及び車輪速センサ14L、14Rと電気的に接続されている。左転舵ECU30Lは、上位ECU20、左転舵角センサ11L、左転舵アクチュエータ5L及び右転舵ECU30Rと電気的に接続されている。右転舵ECU30Rは、上位ECU20、右転舵角センサ11R、右転舵アクチュエータ5R及び左転舵ECU30Lと電気的に接続されている。上位ECU20、左転舵ECU30L、右転舵ECU30R、左転舵アクチュエータ5L、右転舵アクチュエータ5R及び各センサ間の通信は、CAN(Controller Area Network)等の車載ネットワークを介した通信であってもよい。ここで、上位ECU20、左転舵ECU30L及び右転舵ECU30Rは、車両1の制御装置50を構成する。
上位ECU20は、操舵角センサ10、車速センサ12、IMU13、左転舵ECU30L、右転舵ECU30R及び記憶部21から取得する情報に基づき、目標ヨーレートを決定し、当該目標ヨーレートに基づく駆動信号を左転舵ECU30L及び右転舵ECU30Rに出力する。
記憶部21は、種々の情報の格納及び取り出しを可能にする。記憶部21は、例えば、ROM(Read-Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリなどの半導体メモリ、ハードディスクドライブ、又はSSD等の記憶装置によって実現される。
上位ECU20、左転舵ECU30L及び右転舵ECU30Rは、CPU(Central Processing Unit)又はDSP(Digital Signal Processor)等のプロセッサ及びメモリを備えるマイクロコンピュータにより構成されてもよい。メモリは、RAM等の揮発性メモリ、及び、ROM等の不揮発性メモリであってもよく、記憶部21であってもよい。上位ECU20、左転舵ECU30L及び右転舵ECU30Rの一部又は全部の機能は、CPUがRAMを作業用のメモリとして用いてROMに記録されたプログラムを実行することによって達成されてもよい。
次いで、上位ECU20、左転舵ECU30L及び右転舵ECU30Rの詳細を説明する。図2は、図1の上位ECU20の機能的な構成の一例を示すブロック図である。
図2に示すように、上位ECU20は、取得部20aと、目標ヨーレート決定部20b、出力補正部20dと、を含む。取得部20aは、操舵角センサ10によって検出された操舵角、車速センサ12によって検出された車両1の速度、IMU13によって検出された車両1のヨーレート(実ヨーレートとも称す)を取得する。取得部20aは、操舵角センサ10から操舵角を取得することによって、ステアリングホイール2の回転シャフトの回転角を取得する。なお、取得部20aは、左転舵ECU30L及び右転舵ECU30Rから左転舵輪3L及び右転舵輪3Rの実転舵角及び車速センサ12から検出された車両1の速度を取得し、当該実転舵角及び車両1の速度に基づいて車両1の実ヨーレートを算出し、取得してもよい。
目標ヨーレート決定部20bは、左転舵機構4L及び右転舵機構4Rそれぞれに対応した目標ヨーレートを決定する。具体的には、目標ヨーレート決定部20bは、取得部20aによって取得された転舵角、車速センサ12によって検出された車両1の速度、IMU13によって検出された実ヨーレート等を用いて、目標ヨーレートを算出する。
出力補正部20dは、左転舵輪3L及び右転舵輪3Rそれぞれと路面との摩擦係数を比較し、摩擦係数が低い方の転舵輪に対応する電動モータの出力をゼロとする。具体的には、出力補正部20dは、比較部20cと、閾値決定部20eとを有している。
比較部20cは、左転舵輪3L及び右転舵輪3Rそれぞれと路面との摩擦係数を比較する。具体的には、比較部20cは、車両1に備わる全ての車輪速センサ14L、14Rの検出結果に基づいて、左転舵輪3Lのスリップ率Sl(=(ωl−V)/ωl:Vは4輪の平均車輪速)と、右転舵輪3Rのスリップ率Sr(=(ωr−V)/ωr)とを求めて、スリップ率Sl、Srを比較する。ここで、スリップ率が大きくなるほど、車輪と路面との間に発生する摩擦係数は小さくなる。つまり、スリップ率Sl、Srを比較することは、換言すると、各転舵輪(左転舵輪3L及び右転舵輪3R)と路面との摩擦係数を比較しているとも言える。例えば、この比較により、スリップ率Slの方がスリップ率Srよりも大きい場合には、比較部20cは、左転舵輪3L側の路面を低μ路と判断し、右転舵輪3R側の路面を高μ路と判断する。また、スリップ率Srの方がスリップ率Slよりも大きい場合には、比較部20cは、右転舵輪3R側の路面を低μ路と判断し、左転舵輪3L側の路面を高μ路と判断する。
なお、比較部20cは、上述した比較時には、スリップ率Sl、Srの差分の絶対値が、予め設定されている閾値(後述のスリップ率閾値Sthに相当)を超えた場合に、低μ路か高μ路かの判断を行う。つまり、前記差分の絶対値が閾値を超えない場合には、比較部20cは、左転舵輪3L側の路面と、右転舵輪3R側の路面とは同程度の摩擦係数であると判断する。
出力補正部20dは、比較部20cの判断結果に基づいて、各アクチュエータ(左転舵アクチュエータ5L、右転舵アクチュエータ5R)の駆動力に基づく、各転舵輪(左転舵輪3L及び右転舵輪3R)に対する出力トルクを制御する。具体的には、出力補正部20dは、比較部20cの判断結果が高μ路となった転舵輪の転舵ECUに対しては、目標ヨーレート決定部20bで算出された目標ヨーレートに応じた駆動信号(電流指令値)を出力する。転舵ECUでは、目標ヨーレートに基づいた転舵角となるようにアクチュエータが駆動されるので、転舵輪には目標ヨーレートに対応した出力トルクが作用することになる。比較部20cの判断結果が、左転舵輪3L側の路面と、右転舵輪3R側の路面とが同程度の摩擦係数と判断されていた場合にも同様である。
一方、出力補正部20dは、比較部20cの判断結果が低μ路となった転舵輪の転舵ECUに対しては、目標ヨーレートともに、アクチュエータに対する駆動信号の電流を略ゼロとするゼロ指令を含んだ駆動信号(電流指令値)を出力する。転舵ECUでは、アクチュエータへの駆動信号の電流が略ゼロとなるため、アクチュエータが概ねフリーとなり、出力トルクも略ゼロとなる。この状態となることで、低μ路側の転舵輪は、高μ路側の転舵輪の転舵によって車両1の進行方向が変化すると、復元トルクによって車両1の進行方向に転舵輪の向きを揃えようとし、すべり角がゼロ付近に補正される。つまり、低μ路側の転舵輪は、高μ路側の転舵輪の転舵に追従して転舵することになる。
図3は、実施の形態に係る低μ路側の転舵輪3に対して作用する復元トルクを示す説明図である。図3の(a)は転舵輪3と接地面の側面図であり、図3の(b)は転舵輪3と接地面の上面図である。なお、図中、P1はタイヤ中心点を示し、P2はタイヤ荷重点を示している。
まず、タイヤ中心点P1には、セルフアライニングトルクSATが作用する。セルフアライニングトルクSATは、タイヤ中心点P1回りのモーメントのことであり、式(1)で求められる。
SAT=Frat×ξN・・・(1)
ここで、Fratはタイヤ横力、ξNはニューマティックトレールである。
ここで、Fratはタイヤ横力、ξNはニューマティックトレールである。
一方、復元トルクToは、キングピン軸Kの軸回りのモーメントのことであり、以下の式(2)で求められる。
To=Frat×ξ+Flong×R・・・(2)
ここで、Fratはタイヤ横力、ξはトレール、Flongはタイヤ前後力、Rはスクラブ半径(キングピン軸とタイヤ中心線との間隔)である。図3に示すようにトレールξは、キャスタートレールξcとニューマティックトレールξNとの合計値であるため、式(2)は、式1の関係を基に以下の式(3)となる。
ここで、Fratはタイヤ横力、ξはトレール、Flongはタイヤ前後力、Rはスクラブ半径(キングピン軸とタイヤ中心線との間隔)である。図3に示すようにトレールξは、キャスタートレールξcとニューマティックトレールξNとの合計値であるため、式(2)は、式1の関係を基に以下の式(3)となる。
To=Frat×(ξc+ξN)+Flong×R
=Frat×ξc+Frat×ξN+Flong×R
=Frat×ξc+SAT+Flong×R・・・(3)
=Frat×ξc+Frat×ξN+Flong×R
=Frat×ξc+SAT+Flong×R・・・(3)
このような復元トルクToがキングピン軸Kの軸回りに作用するので、転舵輪3は、車両の進行方向Y1に対してすべり角βfがゼロとなるように転舵されることとなる。つまり、この際には転舵輪3の横力もゼロとなる。
図4は、実施の形態に係る低μ路側の転舵輪と高μ路側の転舵輪との摩擦円のイメージ例を示す説明図である。この例では、左転舵輪が低μ路側とし、右転舵輪が高μ路側としている。また、X軸方向をタイヤ前後力とし、Y軸方向をタイヤ横力としている。図4の(a)は、低μ路側の左転舵輪に対する出力トルクをゼロとしなかった場合(以降、トルクゼロ制御OFFと称す。)を示し、図4の(b)は、低μ路側の左転舵輪に対する出力トルクをゼロとした場合(以降、トルクゼロ制御ONと称す。)を示している。
摩擦円は摩擦係数とタイヤ垂直荷重との積算で求められるため、図4に示すように、左転舵輪の摩擦円Clは、右転舵輪の摩擦円Crよりも小さくなっている。摩擦円Cl、Crは、トルクゼロ制御ON時においてもトルクゼロ制御OFF時においても変わらないものとする。
トルクゼロ制御OFFで転舵する際には、図4の(a)に示すように、左転舵輪にタイヤ横力Fyl1が作用するとともにタイヤ前後力Fxl1が作用する。右転舵輪には、タイヤ横力Fyr1が作用するとともにタイヤ前後力Fxr1が作用する。
一方、図4の(a)と同条件でトルクゼロ制御ONとなった場合、図4の(b)に示すように、左転舵輪では、すべり角がゼロとなるのでタイヤ横力は作用せずに、タイヤ前後力Fxl1のみが作用する。このため、摩擦円Clでは、タイヤ前後力では余剰分Eが生じるので、この余剰分Eだけ制動力に使用することが可能となる。タイヤ横力Fyl1は、余力のある右転舵輪に分配される。
一方、右転舵輪には、図4の(a)の場合と同様のタイヤ前後力Fxr1が作用するとともに、タイヤ横力Fyr1に加えて、タイヤ横力Fyl1も作用する。これは、摩擦円Crが摩擦円Clよりも大きいために許容される。
図5は、実施の形態に係るトルクゼロ制御の有無によるタイヤ横力及びタイヤ前後力の関係を示したグラフである。図5の(a)はタイヤ横力の関係を示し、図5の(b)はタイヤ前後力の関係を示している。図5中の破線は、摩擦円におけるタイヤ横力またはタイヤ前後力の限界値を示している。
図5の(a)に示すように、タイヤ横力においては、トルクゼロ制御OFF時に左転舵輪に作用していたタイヤ横力Fyl1が、トルクゼロ制御ONによってなくなり、右転舵輪に分配される。このため、左転舵輪及び右転舵輪の合計としてのタイヤ横力は、トルクゼロ制御ON、OFFでは同等となる。
図5の(b)に示すように、左転舵輪のタイヤ前後力においては、トルクゼロ制御ONによって余剰分Eが発生する。このため、左転舵輪及び右転舵輪の合計としてのタイヤ前後力は、トルクゼロ制御ONの方がトルクゼロ制御OFFよりも大きくなる。
閾値決定部20eは、トルクゼロ制御時に用いられる種々の閾値を決定する。具体的には、閾値決定部20eは、タイマー閾値Tth、スリップ率閾値Sth、転舵角閾値δthを決定する。
タイマー閾値Tthは、トルクゼロ制御の実行時間を決めるための閾値である。閾値決定部20eは、取得部20aが取得した車両1の速度に基づいてタイマー閾値Tthを決定する。具体的には、閾値決定部20eは、車両1の速度が大きくなるほどタイマー閾値Tthを小さくする。これは、車両1の速度が大きいほど車両挙動の変化が現れやすいことに起因している。また、閾値決定部20eは、IMU13が検出した車両1の3軸方向の加速度及び角速度に基づいて、タイマー閾値Tthを決定する。具体的には、上下方向の加速度の変動が大きくなるほどタイマー閾値Tthを小さくする。これは、上下方向の加速度の変動が大きいほど、悪路を走行していることとなり、転舵角が変動しやすいことに起因している。また、閾値決定部20eは、IMU13が検出した車両1の3軸方向の加速度及び角速度から得られる車両1の姿勢に基づいて、タイマー閾値Tthを決定する。具体的には、車両1の姿勢により上り坂または下り坂を走行していることが判断できるが、このような姿勢の場合に閾値決定部20eはタイマー閾値Tthを小さくする。これは、上り坂または下り坂走行時には、走行抵抗、制動力、加速による力が車両1に対してかかりやすくなり、キングピン軸回りのトルクが大きくなり、操舵角が動かされるリスクがあがることに起因している。また、車両1の姿勢により片勾配の路面を走行していることが判断できるが、このような姿勢の場合にも閾値決定部20eはタイマー閾値Tthを小さくする。
スリップ率閾値Sthは、低μ路か高μ路かの判断を行うか否かを決めるための閾値である。スリップ率は、タイヤの摩耗状態或いはブレーキの左右差で変動するものである。このため、閾値決定部20eは、左右均等のμ路面でのスリップ率を履歴として記録し、この履歴に基づいてスリップ率閾値Sthを決定する。なお、スリップ率閾値Sthは、車両試験などで事前に求めた固定値であってもよい。
転舵角閾値δthは、高速走行時の安定性を維持するための閾値である。転舵角閾値δthは、トルクゼロ制御ONとなった転舵輪(左転舵輪3L及び右転舵輪3Rの一方)の転舵角と、トルクゼロ制御OFFとなった転舵輪(左転舵輪3L及び右転舵輪3Rの他方)の転舵角との差分の閾値である。閾値決定部20eは、取得部20aが取得した車両1の速度と、左転舵角センサ11L及び右転舵角センサ11Rのそれぞれの検出結果とに基づいて、転舵角閾値δthを決定する。具体的には、閾値決定部20eは、車両の速度が大きくなるほど転舵角閾値δthを小さくする。これは、車両1の速度が大きいほど転舵角の常用域が狭くなることに起因している。
図1に示すように、左転舵ECU30Lは、左転舵角センサ11Lが検出する転舵角(「検出転舵角」又は「実転舵角」とも呼ぶ)を上位ECU20に出力し、上位ECU20から受け取る駆動信号に基づき、左転舵アクチュエータ5Lを動作させる。右転舵ECU30Rは、右転舵角センサ11Rが検出する実転舵角を上位ECU20に出力し、上位ECU20から受け取る駆動信号に基づき、右転舵アクチュエータ5Rを動作させる。左転舵ECU30L及び右転舵ECU30Rは、電流指令値決定部の一例である。
以下、左転舵ECU30Lについて詳細に説明する。図6は、図1の左転舵ECU30Lの機能的な構成の一例を示すブロック図である。なお、右転舵ECU30Rについては、左転舵ECUと基本的に同じ構成であるのでその説明は省略する。
図6に示すように、左転舵ECU30Lは、左転舵制御部31Lと、駆動回路32Lとを備えている。左転舵制御部31Lは、駆動回路32Lを介して、左転舵アクチュエータ5Lの動作を制御する。駆動回路32Lは、左転舵制御部31Lによって制御され、左転舵アクチュエータ5Lに電力を供給する。駆動回路32Lは、インバータ回路で構成される。
左転舵制御部31Lは、取得部20aによって取得される実ヨーレートγRが、上位ECUから与えられた駆動信号に含まれる目標ヨーレートγTに等しくなるように、駆動回路32Lを制御する。左転舵制御部31Lは、複数の処理機能部として機能し、ヨーレート偏差演算部41Lと、ヨーレートPI(Proportional Integral)制御部42Lと、電流値決定部43Lと、PWM(Pulse Width Modulation)制御部44Lとを含む。
ヨーレート偏差演算部41Lは、上位ECU20から与えられる目標ヨーレートγTと、取得部20aによって取得される実ヨーレートγRとの偏差ΔγLを演算する。なお、偏差ΔγL=γT−γRである。ヨーレートPI制御部42Lは、ヨーレート偏差演算部41Lによって算出される偏差ΔγLに対するPI演算を行うことによって、左転舵輪3Lの目標転舵角δLを演算する。電流値決定部43Lは、ヨーレートPI制御部42Lによって算出された目標転舵角δLに基づいて、左転舵アクチュエータ5Lに流すべき電流の電流値を演算し、当該電流値を含んだ駆動指令値を生成する。
ここで、出力補正部20dは、駆動信号にゼロ指令が含まれている場合には、電流値決定部43Lで決定された電流値を補正する。具体的には、出力補正部20dは、駆動信号にゼロ指令が含まれている場合には、左転舵アクチュエータ5Lに流すべき電流の電流値が略ゼロとなるように、電流指令値を補正する。「略ゼロ」とは、電流値がゼロとなることはもちろんであるが、左転舵輪3Lに作用する出力トルクが概ねフリーになる電流値も含むものとする。例えば「略ゼロ」には、目標転舵角δLに基づいて求められた電流値の数%程度も含むものとする。より具体的には、電流値を、左転舵機構4Lによる摩擦以下となるトルクを発生させる電流値以下とすればよい。これは、左転舵機構4Lの摩擦トルクを打ち消す程度の電流を流すことで、摩擦が打ち消され、よりフリーな状態となるためである。このようなことにより、左転舵アクチュエータ5Lの出力が略ゼロとなる。
また、出力補正部20dは、電流値決定部43Lが決定した電流値を補正するだけでなく、電流値決定部43Lに対して電流値を略ゼロとさせる指示を付与することで、補正を行ってもよい。また、出力補正部20dは、ヨーレートPI制御部42Lに対して、電流値が略ゼロとなる目標転舵角δLを演算させることで、補正を行ってもよい。
PWM制御部44Lは、駆動指令値に対応するデューティ比の左PWM制御信号を生成し、駆動回路32Lに出力する。これにより、駆動回路32Lは、駆動指令値に対応した電力を、左転舵アクチュエータ5Lに供給する。
上述の左転舵制御部31Lの各構成要素及び上位ECU20の各構成要素は、CPU又はDSP等のプロセッサ、並びに、RAM及びROM等のメモリなどからなるコンピュータシステム(図示せず)により構成されてもよい。各構成要素の一部又は全部の機能は、CPU又はDSPがRAMを作業用のメモリとして用いてROMに記録されたプログラムを実行することによって達成されてもよい。また、各構成要素の一部又は全部の機能は、電子回路又は集積回路等の専用のハードウェア回路によって達成されてもよい。各構成要素の一部又は全部の機能は、上記のソフトウェア機能とハードウェア回路との組み合わせによって構成されてもよい。
次に、実施の形態に係る転舵装置100の動作を説明する。図7は、実施の形態に係る転舵装置100の動作の流れの一例を示すフローチャートである。図7に示すように、ステップS1では、上位ECU20の閾値決定部20eは、取得部20aが取得した車両1の速度に基づいてタイマー閾値Tthを決定する。
ステップS2では、閾値決定部20eは、左転舵輪3L及び右転舵輪3Rのスリップ率Sl、Srの履歴に基づいてスリップ率閾値Sthを決定する。
ステップS3では、閾値決定部20eは、取得部20aが取得した車両1の速度と、左転舵角センサ11L及び右転舵角センサ11Rのそれぞれの検出結果とに基づいて、転舵角閾値δthを決定する。
ステップS4では、上位ECU20は、現在の時間Tがタイマー閾値Tthよりも小さいか否かを判断する。上位ECU20は、現在の時間Tがタイマー閾値Tthよりも小さい場合にはステップS5に移行して、現在の時間Tがタイマー閾値Tth以上である場合にはステップS6に移行する。
ステップS5では、上位ECU20は、現在のスリップ率Sl、Srの差分を求め、その絶対値がスリップ率閾値Sthよりも大きいか否かを判断する。上位ECU20は、スリップ率Sl、Srの差分の絶対値がスリップ率閾値Sthよりも大きい場合にはステップS10に移行し、スリップ率Sl、Srの差分の絶対値がスリップ率閾値Sth以下である場合にはステップS6に移行する。
ステップS6では、上位ECU20は、左転舵角センサ11L及び右転舵角センサ11Rのそれぞれの検出結果に基づいて、トルクゼロ制御ONとなった転舵輪の転舵角と、トルクゼロ制御OFFとなった転舵輪の転舵角との差分を求める。上位ECU20は、その差分の絶対値が転舵角閾値δthよりも大きいか否かを判断する。上位ECU20は、差分の絶対値が転舵角閾値δthよりも大きい場合にはステップS9に移行し、差分の絶対値が転舵角閾値δth以下である場合にはステップS7に移行する。
ステップS7では、上位ECU20は、時間Tをゼロにリセットし、ステップS8に移行する。
ステップS8では、上位ECU20は、左転舵ECU30L及び右転舵ECU30Rのそれぞれに通常の駆動信号、つまり、ゼロ指令を含んでいない駆動信号を出力する。これにより、通常の転舵制御が左転舵ECU30L及び右転舵ECU30Rで実行される。
ステップS9では、上位ECU20は、差分の絶対値が転舵角閾値δthよりも大きいので、フリー側の転舵輪が異常な方向に向いていると判定し、復帰制御を実行する。復帰制御は、フリー側の転舵輪に対して異常な方向から正常な方向に電動モータを動作させるための制御である。これにより、目標ヨーレートに基づいた転舵角となるように電動モータが駆動される。
ステップS10では、上位ECU20は、左転舵輪3Lのスリップ率Slが右転舵輪3Rのスリップ率Srよりも大きいか否かを判断する。上位ECU20は、スリップ率Slがスリップ率Srよりも大きい場合にはステップS11に移行し、スリップ率Slがスリップ率Sr以下である場合にはステップS12に移行する。つまり、ステップS11に移行する場合は、左転舵輪3L側の路面が低μ路で、右転舵輪3R側の路面が高μ路と判断されたと言うことであり、ステップS12に移行する場合は、右転舵輪3R側の路面が低μ路で、左転舵輪3L側の路面が高μ路と判断されたということである。
ステップS11では、上位ECU20は、低μ路側の左転舵ECU30Lに対する駆動信号にゼロ指令を含ませることを決定し、ステップS13に移行する。
ステップS12では、上位ECU20は、低μ路側の右転舵ECU30Rに対する駆動信号にゼロ指令を含ませることを決定し、ステップS13に移行する。
ステップS13では、上位ECU20は、左転舵ECU30L及び右転舵ECU30Rのそれぞれに通常の駆動信号を出力する。これにより、高μ路側の転舵ECUでは、トルクゼロ制御がOFFであるため、目標ヨーレートに基づいた転舵角となるようにアクチュエータが駆動されるので、高μ路側の転舵輪には目標ヨーレートに対応した出力トルクが作用することになる。一方、低μ路側の転舵ECUでは、トルクゼロ制御がONであるため、アクチュエータへの駆動信号の電流が略ゼロとなり、出力トルクも略ゼロとなる。
ステップS14では、上位ECU20は、左転舵角センサ11L及び右転舵角センサ11Rのそれぞれの検出結果に基づいて、トルクゼロ制御ONとなった転舵輪の転舵角と、トルクゼロ制御OFFとなった転舵輪の転舵角との差分を求める。上位ECU20は、その差分の絶対値が転舵角閾値δthよりも大きいか否かを判断する。上位ECU20は、差分の絶対値が転舵角閾値δthよりも大きい場合にはステップS15に移行し、差分の絶対値が転舵角閾値δth以下である場合にはステップS16に移行する。
ステップS15では、上位ECU20は、時間Tをカウントアップし、ステップS1に移行する。時間Tがタイマー閾値Tthとなるまで、ステップS5〜S15が繰り返されるので、復帰制御が行われるまでにこれらの繰り返しを複数回実行するように、閾値決定部20eがタイマー閾値Tthを設定してもよい。
ステップS16では、上位ECU20は、時間Tをゼロにリセットし、ステップS1に移行する。
上記実施の形態に係る転舵装置100の上位ECU20、左転舵ECU30L及び右転舵ECU30Rを含む制御装置50は、互いに機械的に接続されていない左右の転舵機構(左転舵輪3L及び右転舵輪3R)を備え且つ左右の転舵機構のそれぞれに備えられる各電動モータ(左転舵アクチュエータ5L及び右転舵アクチュエータ5R)の駆動力によって左右の転舵輪(左転舵輪3L及び右転舵輪3R)を個別に転舵する車両1用の転舵装置100の制御装置である。制御装置50は、左右の転舵機構それぞれに対応した目標ヨーレートを決定する目標ヨーレート決定部20bと、決定された目標ヨーレートに応じた電流指令値を、各電動モータに出力する電流指令値決定部(左転舵ECU30L及び右転舵ECU30R)と、前記左右の転舵輪のそれぞれと路面との摩擦係数を比較し、摩擦係数が低い方の転舵輪に対応する電動モータの出力を略ゼロとする出力補正部20dとを備えている。
また、上記実施の形態に係る転舵装置100は、上記制御装置50と、左の転舵機構(左転舵輪3L)及び右の転舵機構(右転舵輪3R)とを備え、左の転舵機構は、左の転舵輪を個別に転舵するための駆動力を発生する左の電動モータ(左転舵アクチュエータ5L)を有し、右の転舵機構は、右の転舵輪を個別に転舵するための駆動力を発生する右の電動モータ(右転舵アクチュエータ5R)を有する。
これによれば、摩擦係数が低い方の転舵輪、つまり低μ路側の転舵輪に対する出力トルクが略ゼロとなる。このようなトルクゼロ補正であれば、低μ路側の転舵輪は、高μ路側の転舵輪の転舵によって車両1の進行方向が変化すると、復元トルクによってすべり角がゼロ付近に補正される。つまり、低μ路側の転舵輪は、高μ路側の転舵輪の転舵に追従して転舵することになる。これにより、スプリットμ路における車両1の安定性を維持することができる。
このようなトルクゼロ制御は、転舵輪に作用するすべり角を検出するためのセンサも不要であるので、車両1の軽量化やコストダウンを図ることができる。
また、出力補正部20dは、摩擦係数が低い方の転舵輪に対応した電動モータの出力が略ゼロとなるように、電流指令値を補正する。
これによれば、トルクゼロ制御時には、摩擦係数が低い方の転舵輪に対応した電動モータの出力が略ゼロとなるように、電流指令値が補正されるので、別途特別な装置を設けなくとも、トルクゼロ制御が可能となる。これにより、車両1の軽量化やコストダウンを図ることができる。また、トルクゼロ制御時には、一方の転舵輪に対応した電動モータに対する駆動信号の電流が略ゼロとなるので、消費電力を抑制することができる。
また、出力補正部20dは、左右の転舵輪のそれぞれのスリップ率Sl、Srに基づいて比較を行う。これにより、予め車両1に搭載されている車輪速センサ14L、14Rを使用することで得られたスリップ率Sl、Srで、左右の転舵輪のそれぞれと路面との摩擦係数を比較することができる。つまり、摩擦係数計測用の装置を新たに設ける必要がないので、車両1の軽量化やコストダウンを図ることができる。
また、制御装置50は、出力補正部20dによって、摩擦係数が低い方の転舵輪に対応した電動モータの出力がゼロになるように駆動信号が補正される実行時間を決めるためのタイマー閾値を決定する閾値決定部20eを備え、閾値決定部20eは、車両1の速度が大きくなるほどタイマー閾値Tthを小さくする。
これによれば、車両1の速度が大きくなるほどタイマー閾値Tthが小さくなるので、車両1の速度に応じた車両挙動の変化を抑制することができる。
また、閾値決定部20eは、車両1の上下方向の加速度の変動が大きくなるほどタイマー閾値Tthを小さくする。
これによれば、車両1の上下方向の加速度の変動が大きくなるほどタイマー閾値Tthが小さくなるので、車両1の上下方向の加速度の変動に応じた転舵角の変動を抑制することができる。
また、閾値決定部20eは、車両1の姿勢に基づいて、タイマー閾値Tthを決定する。
車両1の姿勢により上り坂または下り坂を走行していることが判断できるが、このような姿勢の場合に閾値決定部20eはタイマー閾値Tthを小さくする。これは、上り坂または下り坂走行時には、走行抵抗、制動力、加速による力が車両1に対してかかりやすくなり、キングピン軸回りのトルクが大きくなり、操舵角が動かされるリスクがあがることに起因している。
また、閾値決定部20eは、出力補正部20dによる駆動信号に対する補正が実行されている場合の転舵輪の転舵角と、当該補正が行われていない場合の転舵輪の転舵角との差分の閾値である転舵角閾値δthを決定する際に、車両1の速度が大きくなるほど転舵角閾値δthを小さくする。
これによれば、車両の速度が大きくなるほど転舵角閾値δthが小さくなるので、車両1の速度が大きいほど転舵角の常用域が狭くなることに対応できる。
[変形例]
次に、変形例について説明する。なお、以下の説明において上記実施の形態と同一部分については同一の符号を付してその説明を省略する場合がある。図8は、変形例に係る転舵装置100Aの全体的な構成の一例を示すブロック図である。図8は、図1に対応する図である。
次に、変形例について説明する。なお、以下の説明において上記実施の形態と同一部分については同一の符号を付してその説明を省略する場合がある。図8は、変形例に係る転舵装置100Aの全体的な構成の一例を示すブロック図である。図8は、図1に対応する図である。
変形例に係る転舵装置100Aは、上記実施の形態に係る転舵装置100に対して、路面検出部15L、15Rを追加した点で異なる。図8に示すように、転舵装置100Aは、左右の転舵輪のそれぞれに対応した路面の路面状態を検出する路面検出部15L、15Rを備えている。具体的には、路面検出部15Lは、左転舵輪3Lが接地した路面の路面状態を検出できるように、左転舵輪3Lの近傍に配置されている。路面検出部15Rは、右転舵輪3Rが接地した路面の路面状態を検出できるように、右転舵輪3Rの近傍に配置されている。路面検出部15L、15Rは、例えば水分量センサであり、路面上の水分を検出することで、各転舵輪が接地した路面状態を検出する。
変形例に係る制御装置50aの比較部20cは、路面検出部15L、15Rの検出結果に基づいて、左転舵輪3Lと路面との摩擦係数及び右転舵輪3Rと路面との摩擦係数を推定し、当該摩擦係数を比較する。具体的には、比較部20cは、路面上の水分量が多いと摩擦係数は低くなる関係性を基にして推定を行う。
このように、転舵装置100Aは、左右の転舵輪のそれぞれに対応した路面の路面状態を検出する路面検出部15L、15Rを備え、比較部20cは、路面検出部15L、15Rの検出結果に基づいて、左右の転舵輪のそれぞれと路面との摩擦係数を比較する。
これによれば、比較部20cが行う比較には、路面検出部15L、15Rの検出結果が用いられるので、実際の路面状態を反映した比較が行われることになる。したがって、比較の精度を高めることができ、スプリットμ路における車両1の安定性をより確実に維持することができる。
比較部20cは、路面検出部15L、15Rの検出結果のみで比較を行ってもよいが、当該比較結果とスリップ率とを複合的に用いて比較を行ってもよい。この場合、より比較の精度を高めることができる。
なお、路面検出部としては、水分量センサ以外の、路面状態を検出することが可能な周知のセンサを採用することができる。例えば、路面検出部としては、路面を撮像するカメラであってもよい。比較部20cは、カメラが取得した路面の画像に対して画像処理を施すことで、路面状態を検出して、摩擦係数を推定することができる。なお、画像検出部は、各転舵輪に対して一つずつ設けられていてもよいし、車両1に対して一つ設けられていてもよい。車両1に対して一つだけ画像検出部が設けられている場合には、カメラの画角内に、各転舵輪が設置した路面を収めていればよい。
また、路面状態には、路面の水分量だけでなく、その水分の状態(液体か固体か)を含めてもよい。路面の水分が液体か固体かである判断は、比較部20cがカメラの画像に対して画像処理を施すことで判断可能である。また、外気温センサの検出温度に基づいて比較部20cが前記判断を行うことも可能である。路面の水分が固体である場合には、凍結路面であるため、摩擦係数がより低くなる。
[その他]
以上、本発明の1つ以上の態様に係る転舵装置等について、実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、実施の形態に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したものや、異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、本発明の1つ以上の態様の範囲内に含まれてもよい。
以上、本発明の1つ以上の態様に係る転舵装置等について、実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、実施の形態に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したものや、異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、本発明の1つ以上の態様の範囲内に含まれてもよい。
例えば、上記実施の形態では、取得部20aが操舵角センサ10及び車速センサ12の検出結果に基づいて目標ヨーレートを算出することで当該目標ヨーレートを取得する場合を例示した。しかし、取得部としては、目標ヨーレートを取得できるのであれば、如何なる態様であってもよい。例えば、車両1が自動運転車である場合には、走行中に作成される走行経路に基づいて目標ヨーレートを算出して取得する取得部であってもよい。また、取得部とは別の算出部が算出した目標ヨーレートを、取得部が取得してもよい。なお、目標ヨーレートは、目標旋回半径を含んでもよい。つまり、上記実施の形態の目標ヨーレートに変えて、目標旋回半径を使用してもよく、この場合、実ヨーレートは実旋回半径となる。
また、操舵角センサ10の代わりに、トルクセンサを設けてもよい。この場合、取得部は、トルクセンサ及び車速センサ12の検出結果に基づいて目標ヨーレートを算出して取得してもよい。さらに、取得部は、車両に備わるカメラが撮像した画像データ、または車両に備わるGPSが取得した位置情報などに基づいて、目標よーレートを算出して取得してもよい。
また、上記実施の形態では、スリップ率を用いた比較によって、各転舵輪(左転舵輪3L及び右転舵輪3R)と路面との摩擦係数を比較する場合を例示した。しかし、各転舵輪と路面との摩擦係数の比較は、これ以外の手法を用いてもよい。具体的には、例えば、車両がABS(Anti-lock Brake System)やトラクションコントロール装置を備えている場合には、このABSやトラクションコントロール装置からの作動信号により、各転舵輪と路面との摩擦係数の比較を行ってもよい。
また、上記実施の形態では、出力補正部20dが、アクチュエータに対する駆動信号の電流を略ゼロとするゼロ指令を含んだ駆動信号を転舵ECUに対して出力することで、出力トルクを略ゼロとする場合を例示した。しかし、出力トルクが略ゼロとなるのであれば、出力補正部の制御は如何様でもよい。例えば、アクチュエータの動力伝達系統に、動力伝達を一時的に遮断自在なクラッチが設けられている場合には、出力補正部は、このクラッチを制御して動力伝達を遮断することで、出力トルクをゼロとしてもよい。また、アクチュエータまたはサスペンションに作用する反力に相反する力を付与する機構が設けられている場合には、出力補正部は、この機構を制御することで、出力トルクをゼロとしてもよい。
また、上記実施の形態では、出力補正部20dが、電流指令値決定部を制御して、摩擦係数が低い方の転舵輪に対応したアクチュエータに対する駆動信号の電流をその瞬時に略ゼロとする場合を例示した。この場合、駆動信号の電流が瞬時に略ゼロとなるため、その切り替わり時に車両1の挙動が不安定になるおそれがある。これを抑制するため、出力補正部20dは、摩擦係数が低い方の転舵輪に対応した電動モータに対する駆動信号の電流が漸減するように、駆動信号を補正してもよい。これにより、当該転舵輪に対する出力トルクも漸減するため、出力トルクが略ゼロになる際の車両1の挙動の安定性を維持することができる。
また、上述したように、本発明の技術は、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラム又はコンピュータ読取可能な記録ディスク等の記録媒体で実現されてもよく、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラム及び記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記録媒体は、例えばCD−ROM等の不揮発性の記録媒体を含む。
例えば、上記実施の形態に含まれる各処理部は典型的には集積回路であるLSI(Large Scale Integration:大規模集積回路)として実現される。これらは個別に1チップ化されてもよいし、一部又は全てを含むように1チップ化されてもよい。
また、集積回路化はLSIに限るものではなく、専用回路又は汎用プロセッサで実現してもよい。LSI製造後にプログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)、又はLSI内部の回路セルの接続や設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサを利用してもよい。
なお、上記実施の形態において、各構成要素は、専用のハードウェアで構成されるか、各構成要素に適したソフトウェアプログラムを実行することによって実現されてもよい。各構成要素は、CPUなどのプロセッサ等のプログラム実行部が、ハードディスク又は半導体メモリ等の記録媒体に記録されたソフトウェアプログラムを読み出して実行することによって実現されてもよい。
また、上記構成要素の一部又は全部は、脱着可能なIC(Integrated Circuit)カード又は単体のモジュールから構成されてもよい。ICカード又はモジュールは、マイクロプロセッサ、ROM、RAM等から構成されるコンピュータシステムである。ICカード又はモジュールは、上記のLSI又はシステムLSIを含むとしてもよい。マイクロプロセッサが、コンピュータプログラムにしたがって動作することにより、ICカード又はモジュールは、その機能を達成する。これらICカード及びモジュールは、耐タンパ性を有するとしてもよい。
また、上位ECU20、左転舵ECU30L及び右転舵ECU30Rは、一つのECUとして構成されていてもよい。
本発明に係る技術は、各転舵輪を転舵させる機構が独立している転舵装置に有用である。
1…車両、2…ステアリングホイール、3…転舵輪、3L…左転舵輪、3R…右転舵輪、4L…左転舵機構、4R…右転舵機構、5L…左転舵アクチュエータ、5R…右転舵アクチュエータ、6L…左転舵軸、6R…右転舵軸、10…操舵角センサ、11L…左転舵角センサ、11R…右転舵角センサ、12…車速センサ、13…IMU、14L、14R…車輪速センサ、15L、15R…路面検出部、20…上位ECU、20a…取得部、20b…目標ヨーレート決定部、20c…比較部、20d…出力補正部、20e…閾値決定部、21…記憶部、30L…左転舵ECU、30R…右転舵ECU、31L…左転舵制御部、32L…駆動回路、41L…ヨーレート偏差演算部、42L…ヨーレートPI制御部、43L…電流値決定部、44L…PWM制御部、50、50a…制御装置、100、100A…転舵装置
Claims (10)
- 互いに機械的に接続されていない左右の転舵機構を備え且つ前記左右の転舵機構のそれぞれに備えられる各電動モータの駆動力によって左右の転舵輪を個別に転舵する車両用の転舵装置の制御装置であって、
前記左右の転舵機構のそれぞれに対応した目標ヨーレートを決定する目標ヨーレート決定部と、
決定された目標ヨーレートに応じた電流指令値を、前記各電動モータに出力する電流指令値決定部と、
前記左右の転舵輪のそれぞれと路面との摩擦係数を比較し、前記摩擦係数が低い方の転舵輪に対応する電動モータの出力を略ゼロとする出力補正部と、
を備えた
制御装置。 - 前記出力補正部は、前記摩擦係数が低い方の転舵輪に対応した電動モータの出力が略ゼロとなるように、前記電流指令値を補正する
請求項1に記載の制御装置。 - 前記出力補正部は、前記摩擦係数が低い方の転舵輪に対応した前記電動モータに対する前記電流指令値の電流が漸減するように、当該電流指令値を補正する
請求項2に記載の制御装置。 - 前記出力補正部は、前記左右の転舵輪のそれぞれのスリップ率に基づいて前記比較を行う
請求項1〜3のいずれか一項に記載の制御装置。 - 前記転舵装置は、前記左右の転舵輪のそれぞれに対応した路面の路面状態を検出する路面検出部を備え、
前記出力補正部は、前記路面検出部の検出結果に基づいて、前記比較を行う
請求項1〜3のいずれか一項に記載の制御装置。 - 前記出力補正部によって、前記摩擦係数が低い方の転舵輪に対応した電動モータの出力がゼロになるように前記電流指令値が補正される実行時間を決めるためのタイマー閾値を決定する閾値決定部を備え、
前記閾値決定部は、前記車両の速度が大きくなるほど前記タイマー閾値を小さくする
請求項1〜5のいずれか一項に記載の制御装置。 - 前記閾値決定部は、前記車両の上下方向の加速度の変動が大きくなるほど前記タイマー閾値を小さくする
請求項6に記載の制御装置。 - 前記閾値決定部は、前記車両の姿勢に基づいて、前記タイマー閾値を決定する
請求項6または7に記載の制御装置。 - 前記閾値決定部は、前記出力補正部による前記電流指令値に対する補正が実行されている場合の前記転舵輪の転舵角と、当該補正が行われていない場合の前記転舵輪の転舵角との差分の閾値である転舵角閾値を決定する際に、前記車両の速度が大きくなるほど前記転舵角閾値を小さくする
請求項6〜8のいずれか一項に記載の制御装置。 - 請求項1〜9のいずれか一項に記載の制御装置と、
前記左の転舵機構及び前記右の転舵機構とを備え、
前記左の転舵機構は、前記左の転舵輪を個別に転舵するための駆動力を発生する左の前記電動モータを有し、
前記右の転舵機構は、前記右の転舵輪を個別に転舵するための駆動力を発生する右の前記電動モータを有する
転舵装置。
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2022064028A (ja) * | 2020-10-13 | 2022-04-25 | 株式会社デンソー | 車両転舵装置 |
-
2018
- 2018-12-25 JP JP2018241287A patent/JP2020100354A/ja active Pending
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2022064028A (ja) * | 2020-10-13 | 2022-04-25 | 株式会社デンソー | 車両転舵装置 |
JP7400686B2 (ja) | 2020-10-13 | 2023-12-19 | 株式会社デンソー | 車両転舵装置 |
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