以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
また、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する複数の構成要素を、同一の符号の後に異なるアルファベットを付して区別する場合もある。ただし、実質的に同一の機能構成を有する複数の構成要素の各々を特に区別する必要がない場合、複数の構成要素の各々に同一符号のみを付する。
<1.制御装置の概要>
まず、図1を参照しながら、本発明の実施形態に係る車両の制御装置の概要について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る車両の制御装置の概要を説明するための図である。本実施形態に係る車両の制御装置200は、車両10に搭載され、車両10の発進方向に車両10と衝突する可能性がある物体20が存在する場合に、車両10の発進を制限する機能を有する。
具体的に、図1には停止している車両10と、車両10の発進方向(本実施形態では車両10の前方)に存在する物体20とが示されている。まず、車両10は、ミリ波等の送信波40を車両10の発進方向に出力する。続いて、車両10は、送信波40が物体20に衝突して反射した反射波42を受信する。
車両10に搭載された制御装置200は、反射波42から得られる情報に対して後述する所定の処理を行うことにより、物体20が車両10と衝突する可能性がある障害物であるか否かの判定を行う。制御装置200は、物体20が車両10と衝突する可能性がある障害物である場合、車両10の発進を制限する。
例えば、当該所定の処理が行われた結果、物体20の地面30からの高さが所定の高さ以上であると推定された場合、制御装置200は、物体20が車両10と衝突する可能性がある障害物であると判定し、車両10の発進を制限する。
一方、物体20の地面30からの高さが所定の高さより低いと推定された場合、制御装置200は、物体20が車両10と衝突する可能性がないものであると判定し、車両10の発進を制限しない。
以下、このような本実施形態に係る車両の制御装置200の構成及び動作を順次詳細に説明する。
<2.制御装置の構成>
図2〜図3を参照しながら、本実施形態に係る車両の制御装置200の構成について説明する。以下では、まず車両10の全体構成例について説明した後、制御装置200の詳細な構成について説明する。
(2−1.車両の全体構成例)
図2は、本実施形態に係る車両の制御装置200を適用可能な車両10の構成例を示す模式図である。図2に示すように、車両10は、駆動源としてのエンジン110、クラッチ機構120、変速機構130及び駆動輪140を備える。また、車両10は、制御装置200、送受信機300、ブレーキセンサ401、アクセルセンサ403、ギヤポジションセンサ405及び駆動輪センサ407を備える。
エンジン110は、ガソリンやディーゼル等を燃料として動力を生成する。エンジン110により生成された動力は、クラッチ機構120、変速機構130及び図示しないデファレンシャル機構等を介して駆動輪140へ伝達され、車両10を駆動させる。
なお、上記では動力を生成する駆動源がエンジン110である例について示したが、かかる例に限定されない。例えば、駆動源がモータであってもよく、エンジン及びモータを組み合わせたハイブリッド式の駆動源であってもよい。
送受信機300は、ミリ波等の送信波40を出力する。また、送受信機300は、送信波40が物体20に衝突して反射した反射波42を受信する。また、送受信機300は、受信した反射波42から得られる情報(以下、反射波情報とも称する)を制御装置200へ出力する。
例えば、送受信機300は、連続的に送信波40を出力し、送信波40が反射波42として戻ってきた場合、反射波42を受信し、反射波情報を制御装置200へ出力する。
ここで、反射波情報には、送信波40が物体20に衝突した位置を示す衝突位置Rに関する情報が含まれる。衝突位置Rに関する情報とは、例えば、送受信機300から衝突位置Rまでの距離、送受信機300から見た衝突位置Rの仰俯角及び送受信機300から見た衝突位置Rの水平方向の角度等の球面座標系における衝突位置Rの座標を示す情報である。
送受信機300から衝突位置Rまでの距離は、例えば、送受信機300が送信波40を出力してから反射波42を受信するまでに掛かった時間から求めることができる。本実施形態においては、送受信機300が送受信機300から衝突位置Rまでの距離を求める例について説明するが、かかる例に限定されない。例えば、制御装置200が送受信機300から衝突位置Rまでの距離を求めてもよい。
ブレーキセンサ401は、ブレーキペダルの操作量を検出する。アクセルセンサ403は、アクセルペダルの操作量を検出する。ギヤポジションセンサ405は、シフトレバーの位置を検出する。駆動輪センサ407は、駆動輪140の回転速度を検出する。
制御装置200は、送受信機300から入力された反射波情報等に基づいて、車両10の動作を制御する。制御装置200の一部又は全ては、マイコン、マイクロプロセッサユニット等から構成される。また、例えば、制御装置200の一部又は全ては、ファームウェア等の更新可能なもので構成されてもよく、CPU等からの指令によって実行されるプログラムモジュール等であってもよい。また、例えば、制御装置200は、1つのマイコン、マイクロプロセッサユニット等であってもよく、また、複数から構成されていてもよい。以下、このような制御装置200の詳細な構成について説明する。
(2−2.制御装置)
図3は、本実施形態に係る車両の制御装置の構成例を示すブロック図である。図3に示すように、制御装置200は、取得部210及び制御部230を有する。
取得部210は、車両10の停止時に車両10に搭載されている各装置から出力される情報を取得し、制御部230へ出力するインターフェースである。例えば、取得部210は、車両10の停止時に送受信機300から出力される反射波情報及び上述した各センサから入力されるセンシング情報を取得し、制御部230へ出力する。
車両10が停止しているか否かの判定は、例えば、駆動輪センサ407から出力される駆動輪140の回転速度に基づいて行われる。例えば、駆動輪センサ407により検出された駆動輪140の回転速度が0である場合、取得部210は、車両10が停止していると判定する。
制御部230は、取得部210が取得した情報に基づいて、車両10の動作を制御する。例えば、制御部230は、取得部210が取得した反射波情報及びセンシング情報に基づいて、車両10の発進を制限する。図3に示すように、制御部230は、変換部232、フィルタ部234、計算部236、判定部238及び制限部240を有する。
変換部232は、入力された情報に含まれる座標の座標系を変換する。例えば、変換部232は、入力された情報に含まれる球面座標系の座標を直交座標系の座標に変換する。具体的に、変換部232は、取得部210から反射波情報が入力された場合、反射波情報に含まれる球面座標系で示される衝突位置Rの座標を直交座標系の座標に変換する。
本実施形態において、変換部232は、車両10の車長方向をX軸、車両10の車幅方向をY軸、車両10の車高方向をZ軸として、衝突位置Rの座標を直交座標系に変換する。本実施形態において、直交座標系の原点は、車両10の前方の先端位置(例えば、車両10のフロントバンパーの先端部)をX=0、車両10の車幅方向の中心位置をY=0、地面30の位置をZ=0として設定される。
図1に示す例では、衝突位置Rは、X軸方向の座標がdx、Z軸方向の座標がdzとして直交座標系で示されている。なお、図1には示されていないが、衝突位置RのY軸方向の座標はdyとする。
このように、反射波情報に含まれる衝突位置Rの座標は、直交座標系に変換される。直交座標系に変換された衝突位置Rの座標を含む反射波情報は、フィルタ部234へ出力される。なお、以下の説明では、衝突位置RのZ軸方向の座標(つまり、衝突位置Rの地面30からの高さ)dzを衝突位置高さdzとも称する。
フィルタ部234は、入力された情報をフィルタリングする。例えば、フィルタ部234は、変換部232から入力された反射波情報のうち、車両10の発進方向の進路上に存在する物体20に衝突して反射した反射波42から得られた反射波情報のみを計算部236へ出力する。
また、例えば、フィルタ部234は、変換部232から入力された反射波情報のうち、車両10から所定の距離の範囲に存在する物体20に衝突して反射した反射波42から得られた反射波情報のみを計算部236へ出力する。以下、図4を参照しながら、フィルタ部234が反射波情報をフィルタリングする方法の一例を説明する。
図4は、本実施形態に係る車両の制御装置が行うフィルタリングについて説明するための説明図である。図4には、車両10の前方の先端位置(例えば、車両10のフロントバンパーの先端部)からX軸方向に距離L1離れた位置から長さL2を有し、車両10の車幅方向の中心線Cを中心にY軸方向に長さWを有する領域50が示されている。
領域50は、車両10の発進方向に画定される範囲であり、車両10が誤発進した場合に物体20が存在すると車両10が物体20と衝突する可能性がある範囲を示す。以下、このような車両10が誤発進した場合に物体20が存在すると車両10が物体20と衝突する可能性がある範囲を衝突可能性範囲とも称する。
車両10の発進方向は、例えば、ギヤポジションセンサ405により検出されるシフトレバーの位置に基づいて判定される。シフトレバーが前進走行用の位置にある場合、車両10の発進方向は前方であると判定され、シフトレバーが後進走行用の位置にある場合、車両10の発進方向は後方であると判定されてよい。
例えば、距離L1、長さL2及び長さWの値は、車両10が誤発進した場合、物体20が領域50の範囲内にあると車両10が物体20と衝突する可能性がある値に設定される。換言すれば、距離L1、長さL2及び長さWの値は、車両10が誤発進した場合であっても物体20が領域50の範囲外にあれば車両10が物体20と衝突する可能性がない値に設定される。
例えば、距離L1及び長さL2の値は、車両10が誤発進した場合であっても運転者Uが誤発進に気づいてブレーキを掛けることにより衝突を回避できる値に設定されてよい。また、例えば、長さWの値は、車両10の車幅の値より広く設定されてよい。
なお、距離L1の値は、比較的小さい値であってよく、0であってもよい。ただし、物体20が車両10の前方の先端位置からX軸方向に比較的近い位置(例えば、車両10の前方の先端位置からX軸方向に距離0の位置)に存在する場合、例えば、送受信機300が反射波42を正常に受信できず、物体20を検出できないことがある。したがって、距離L1の値は、送受信機300が物体20を検出することができる程度に領域50が車両10の前方の先端位置からX軸方向に離れた位置に画定されるように決定されることが好ましい。
なお、上記では、衝突可能性範囲がX軸方向及びY軸方向に画定される例について示したが、かかる例に限定されない。例えば、衝突可能性範囲がX軸方向にのみ画定されれば十分な場合、X軸方向にのみ画定されてよい。
具体的に、図4に示す例において、車両10の前方の先端位置からX軸方向にL1+L2離れた位置までの範囲における送信波40のY軸方向への出力範囲が車両10の車幅方向の中心線Cを中心にY軸方向に長さWの範囲内である場合、衝突可能性範囲がX軸方向にのみ画定されてよい。
フィルタ部234は、変換部232から入力された反射波情報に含まれる衝突位置RのX軸方向の座標及びY軸方向の座標が上述した領域50の範囲内であるか否かに基づいて、反射波情報をフィルタリングする。フィルタ部234は、変換部232から入力された反射波情報のうち、反射波情報に含まれる衝突位置RのX軸方向の座標及びY軸方向の座標が領域50の範囲内である反射波情報のみを計算部236へ出力する。
計算部236は、フィルタ部234から入力された反射波情報から衝突位置高さdzの平均値及び衝突位置高さdzの分散を求める。以下では、図5A及び図5Bを参照しながら、衝突位置高さdzの平均値及び衝突位置高さdzの分散の意味について説明した後、計算部236が衝突位置高さdzの平均値及び衝突位置高さdzの分散を求める方法について説明する。
まず、衝突位置高さdzの平均値及び衝突位置高さdzの分散の意味について説明する。図5A及び図5Bは、衝突位置高さdzの平均値及び衝突位置高さdzの分散の意味について説明するための図である。
図5Aには、車両10の発進方向において地面30からZ軸方向に連続して延在する物体20aが示されている。地面30から物体20aの最上端までの高さはH1である。また、図5Bには、車両10の発進方向において地面30からZ軸方向に連続して延在する物体20bが示されている。地面30から物体20bの最上端までの高さはH2である。ここで、高さH1は、高さH2より高い。
一般的に、物体20はある程度の大きさを有するため、送信波40が物体20に衝突した位置を示す衝突位置Rは、送受信機300から出力される送信波40の方向に応じて異なる。図5Aの物体20aで示す例において、衝突位置は、R1a〜R1eの5点で示されている。
このとき、物体20aに衝突して反射した反射波42から得られる反射波情報から求められる衝突位置高さの平均値とは、衝突位置R1a〜R1eのそれぞれの衝突位置高さの平均値であり、図5Aにmzaで示される高さである。衝突位置高さの平均値mzaは、地面30から物体20aのZ軸方向の中心位置までの高さと同等となる。衝突位置高さの平均値mzaは、地面30から物体20aのZ軸方向の中心位置までの高さが高いほど大きくなり、地面30から物体20aのZ軸方向の中心位置までの高さが低いほど小さくなる。
また、このとき、衝突位置高さの分散とは、衝突位置R1a〜R1eのそれぞれの衝突位置高さのばらつきの程度を示す値である。衝突位置高さの分散は、物体20aが衝突位置高さの平均値mzaを中心としてZ軸方向に延在する長さが長いほど大きくなり、物体20aが衝突位置高さの平均値mzaを中心としてZ軸方向に延在する長さが短いほど小さくなる。衝突位置高さの分散を求めることにより、物体20aが衝突位置高さの平均値mzaを中心としてZ軸方向にどの程度の長さ延在するかを推定することができる。
このように、衝突位置高さの平均値及び衝突位置高さの分散を求めることにより、地面30から物体20のZ軸方向の中心位置までの高さ及び物体20が衝突位置高さの平均値を中心としてZ軸方向にどの程度の長さ延在するかを推定することができる。つまり、車両10の発進方向において物体20がZ軸方向にどのように存在するかを推定することができる。
図5Aに示す例では、衝突位置高さの平均値及び衝突位置高さの分散を求めることにより、地面30から物体20aのZ軸方向の中心位置までの高さがmzaであり、物体20aがmzaを中心としてZ軸方向に長さH1だけ延在することを推定することができる。また、図5Bに示す例では、地面30から物体20bのZ軸方向の中心位置までの高さがmzbであり、物体20bがmzbを中心としてZ軸方向に長さH2だけ延在することを推定することができる。
続いて、計算部236が衝突位置高さdzの平均値及び衝突位置高さdzの分散を求める方法について説明する。上述したように、衝突位置Rは、送受信機300から出力される送信波40の方向に応じて異なる。以下では、異なる衝突位置Rを示すp個の反射波情報が計算部236に入力される場合に、計算部236が衝突位置高さdzの平均値及び衝突位置高さdzの分散を求める方法について説明する。
上述したように、反射波情報には衝突位置Rの地面30からの高さを示す衝突位置高さdzが含まれる。以下では、p個の反射波情報に含まれる各々の衝突位置高さdzについて、変数iを用いてdziで表す。変数iは、1からpまでの連続する整数を示す変数である。また、1個目からi個目までの反射波情報から求められる衝突位置高さdzの平均値をmziで表し、1個目からi個目までの反射波情報から求められる衝突位置高さdzの分散をvziで表し、1個目からi個目までの反射波情報を数えた数をnziで表す。
計算部236は、以下に示した(数式1)により衝突位置高さdzの平均値mziを求める。なお、mz0は初期値として0に設定され、nz0は初期値として0に設定される。
また、計算部236は、以下に示した(数式2)により衝突位置高さdzの分散vziを求める。なお、vz0は初期値として0に設定される。
また、計算部236は、以下に示した(数式3)により1個目からi個目までの反射波情報を数えた数であるnziを求める。
計算部236は、上記の(数式1)、(数式2)及び(数式3)を変数iが1からpに至るまで繰り返す。それにより、p個の反射波情報の衝突位置高さdzの平均値及び衝突位置高さdzの分散が求められる。
判定部238は、計算部236により求められた衝突位置高さdzの平均値及び衝突位置高さdzの分散に基づいて、物体20が車両10と衝突する可能性がある障害物であるか否かを判定する。
物体20が車両10の発進方向において地面30からZ軸方向に連続して延在している場合(例えば、物体20がブロック塀等である場合)、地面30から物体20の最上端までの高さが高いほど、地面30から物体20のZ軸方向の中心位置までの高さは高くなり、物体20が衝突位置高さdzの平均値を中心としてZ軸方向に延在する長さは長くなる。つまり、衝突位置高さdzの平均値及び衝突位置高さdzの分散は大きくなる。
そこで、判定部238は、衝突位置高さdzの平均値が第1の閾値以上であり、かつ、衝突位置高さdzの分散が第2の閾値以上である場合、物体20が車両10と衝突する可能性がある障害物であると判定する。
第1の閾値及び第2の閾値は、例えば、衝突位置高さdzの平均値が第1の閾値であり衝突位置高さdzの分散が第2の閾値である場合に推定される物体20の地面30からの高さが所定の高さより高くなる値であってよい。第1の閾値及び第2の閾値は、このような所定の高さに応じて様々な値を取り得る。
例えば、所定の高さは、車両10が物体20を乗り越えて発進できる高さの上限値又は車両10が物体20を跨いで発進できる高さの上限値等であってよく、適宜設定される。具体的に、所定の高さは、地面30から車両10の車体やバンパーの最下端までの高さに設定されてよい。
ところで、一般的に、送受信機300を介して取得される反射波情報には、送受信機300の性能等に起因した誤差が生じ得る。つまり、反射波情報から得られる衝突位置高さdzには誤差が生じ得る。物体20が車両10と衝突する可能性があるか否かを、1つのパラメータを用いて判定しようとした場合、上記の誤差に起因して、物体20が車両10と衝突する可能性がないにも関わらず、物体20が車両10と衝突する可能性がある障害物であると判定されることがある。
例えば、物体20が車両10と衝突する可能性があるか否かを判定するパラメータとして、衝突位置高さdzの最大値(複数の衝突位置高さdzの中で一番大きい値)を用いる場合、上記の誤差に起因して、衝突位置高さdzの最大値が実際の物体20の地面30からの高さより大きくなることがある。このような場合、物体20が車両10と衝突する可能性がないにも関わらず、物体20が車両10と衝突する可能性がある障害物であると判定されるおそれがある。
一方、本実施形態では、物体20が車両10と衝突する可能性があるか否かを、衝突位置高さdzの平均値及び衝突位置高さdzの分散という2つのパラメータを用いて判定する。それにより、上記の誤差がある場合であっても、物体20が車両10と衝突する可能性がないにも関わらず、物体20が車両10と衝突する可能性がある障害物であると判定されることを抑制することができる。
具体的には、送受信機300のゼロ点が正確に調整されていないことに起因して、衝突位置高さdzが全体的にZ軸方向の正方向側にずれて取得されることがある。このような場合、衝突位置高さdzの最大値が実際の物体20の地面30からの高さより大きくなる。したがって、物体20が車両10と衝突する可能性がないにも関わらず、物体20が車両10と衝突する可能性がある障害物であると判定されるおそれがある。一方、上記のような場合であっても、衝突位置高さdzの分散は、実際の物体20のZ軸方向の長さに応じた値となる。したがって、衝突位置高さdzの分散が第2の閾値を下回っていれば、物体20が車両10と衝突する可能性がないにも関わらず、物体20が車両10と衝突する可能性がある障害物であると判定されることを抑制することができる。
このように、物体20が車両10の発進方向において地面30からZ軸方向に連続して延在している場合、衝突位置高さdzの平均値及び衝突位置高さdzの分散という2つのパラメータを用いることによって、物体20が車両10と衝突する可能性がないにも関わらず、物体20が車両10と衝突する可能性がある障害物であると判定されることを抑制することができる。
ここで、物体20が車両10の発進方向において地面30からZ軸方向に連続して延在していない場合(例えば、物体20が陸橋等である場合)、車両10が物体20を潜り抜けることができる場合がある。つまり、衝突位置高さdzの平均値が第1の閾値以上であり、かつ、衝突位置高さdzの分散が第2の閾値以上であるにも関わらず、物体20が車両10と衝突する可能性がない場合がある。
判定部238は、このような場合に物体20が車両10と衝突する可能性がある障害物であると判定されないように、第3の閾値を用いることができる。具体的に、判定部238は、衝突位置高さdzの平均値が第1の閾値以上、かつ、第3の閾値以下であり、衝突位置高さdzの分散が第2の閾値以上である場合、車両10の発進方向に存在する物体20が障害物であると判定することができる。
例えば、第3の閾値は、衝突位置高さdzの平均値が第3の閾値であり衝突位置高さdzの分散が第2の閾値である場合に推定される物体20の最下端から地面30までの高さが所定の高さより低くなる値であってよい。第3の閾値は、このような所定の高さに応じて様々な値を取り得る。また、後述するように、第3の閾値は、衝突位置高さdzの分散に応じて変化し得る。判定部238は、このような所定の高さ又は衝突位置高さdzの分散に応じて第3の閾値を決定することができる。
例えば、所定の高さは、車両10が物体20を潜り抜けて発進できる高さの下限値等であってよく、適宜設定される。具体的に、所定の高さは、車両10の車体の最上端の高さに設定されてよい。
また、ここで、衝突位置高さdzの分散が第2の閾値より小さいにも関わらず、車両10が物体20と衝突する可能性がある場合がある。物体20が車両10の発進方向において地面30からZ軸方向に連続して延在していない場合(例えば、物体20が踏切の遮断機等である場合)、衝突位置高さdzの分散が第2の閾値より小さいにも関わらず、物体20が車両10と衝突する可能性がある。
そこで、第2の閾値は、衝突位置高さdzの平均値に応じて変化してもよい。具体的に、衝突位置高さdzの平均値が車両10の車体の最下端から最上端までの範囲内の高さである場合、衝突位置高さdzの分散に関わらず物体20が車両10と衝突する可能性が高い。したがって、例えば、衝突位置高さdzの平均値が車両10の車体の最下端から最上端までの範囲内の高さである場合、第2の閾値は、例えば0等の小さい値に設定されてよい。
上記では、衝突位置高さdzの平均値に応じて第2の閾値が変化する例について説明したが、衝突位置高さdzの分散に応じて第1の閾値又は第3の閾値が変化してもよい。
例えば、物体20が車両10の発進方向において地面30からZ軸方向に連続して延在していない場合、衝突位置高さdzの分散に応じて第1の閾値が変化してもよい。
具体的に、衝突位置高さdzの分散が比較的小さい場合(つまり、物体20のZ軸方向に延在する長さが比較的短い場合)、物体20の最上端が車両10の車体の最下端よりも低くなる範囲において第1の閾値は比較的大きい値に設定されてよい。一方、衝突位置高さdzの分散が比較的大きい場合(つまり、物体20のZ軸方向に延在する長さが比較的長い場合)、物体20の最上端が車両10の車体の最下端よりも低くなるように第1の閾値は比較的小さい値に設定されてよい。それにより、物体20の最上端が車両10の車体の最下端よりも低い位置にあるか否かの切り分けがより正確に行われる。つまり、物体20が車両10と衝突する可能性があるか否かの切り分けがより正確に行われる。
また、例えば、物体20が車両10の発進方向において地面30からZ軸方向に連続して延在していない場合(例えば、物体20が天井から吊り下げられている看板等である場合)、衝突位置高さdzの分散に応じて第3の閾値が変化してもよい。
具体的に、衝突位置高さdzの分散が比較的大きい場合(つまり、物体20のZ軸方向に延在する長さが比較的長い場合)、物体20の最下端が車両10の車体の最上端よりも高くなるように第3の閾値は比較的大きい値に設定されてよい。一方、衝突位置高さdzの分散が比較的小さい場合(つまり、物体20のZ軸方向に延在する長さが比較的短い場合)、物体20の最下端が車両10の車体の最上端よりも高くなる範囲において第3の閾値は比較的小さい値に設定されてよい。それにより、物体20の最下端が車両10の車体の最上端よりも高い位置にあるか否かの切り分けがより正確に行われる。つまり、物体20が車両10と衝突する可能性があるか否かの切り分けがより正確に行われる。
制限部240は、判定部238の判定結果に基づいて、車両10の発進を制限する。具体的に、制限部240は、車両10の発進方向に存在する物体20が障害物であると判定された状態において運転者Uが車両10を発進させようとした場合、車両10の発進を制限する。
運転者Uが車両10を発進させようとしているか否かの判定は、例えば、ブレーキセンサ401が検出するブレーキペダルの操作量、アクセルセンサ403が検出するアクセルペダルの操作量及びギヤポジションセンサ405が検出するシフトレバーの位置に基づいて行われる。例えば、シフトレバーが前進走行用の位置にあり、ブレーキペダルの操作量が0であり、アクセルペダルの操作量が0でない場合、制限部240は、運転者Uが車両10を発進させようとしていると判定する。
車両10の発進を制限するために、例えば、制限部240は、エンジン110の出力を制御する。例えば、制限部240は、エンジン110への燃料噴射量を減少させることによりエンジン110の出力を低下させることができる。また、例えば、制限部240は、エンジン110への燃料噴射を中止することによりエンジン110の出力を0とすることができる。それにより、車両10の発進が制限される。
なお、制限部240が車両10の発進を制限する手段は、かかる例に限定されない。例えば、制限部240は、車両10の発進を制限するために、クラッチ機構120を制御することによりエンジン110と変速機構130との締結を解放してもよい。また、例えば、制限部240は、車両10の発進を制限するために、変速機構130を制御することによりエンジン110から駆動輪140への動力の伝達を遮断してもよい。
<3.制御装置の動作例>
以上、本実施形態に係る車両の制御装置200の構成を説明した。続いて、図6を参照しながら、本実施形態に係る車両の制御装置200の動作について説明する。図6は、本実施形態に係る車両の制御装置の動作例を示すフローチャートである。
まず、制御装置200の取得部210は、車両10が停止しているかの判定を行う(S201)。車両10が停止していないと判定された場合(S201/no)、制御装置200は、そのまま処理を終了する。一方、車両10が停止していると判定された場合(S201/yes)、取得部210は、送受信機300から出力される反射波情報及び各種センサから入力されるセンシング情報を取得する。取得部210が取得した反射波情報に含まれる衝突位置Rの座標は、変換部232により直交座標系に変換される。
フィルタ部234は、変換部232から入力された反射波情報のうち、反射波情報に含まれる衝突位置Rの座標が上述した領域50の範囲内である反射波情報のみを計算部236へ出力する(S203)。
計算部236は、フィルタ部234から入力された反射波情報から衝突位置高さdzの平均値及び衝突位置高さdzの分散を求める(S205)。
判定部238は、計算部236により求められた衝突位置高さdzの平均値及び衝突位置高さdzの分散に基づいて、車両10の発進方向に存在する物体20が障害物であるか否かを判定する(S207)。例えば、判定部238は、あらかじめ設定された所定の高さ(例えば、地面30から車両10の車体の最下端までの高さ)、衝突位置高さdzの平均値又は衝突位置高さdzの分散に応じて第1の閾値及び第2の閾値を決定する。そして、判定部238は、衝突位置高さdzの平均値が第1の閾値以上であり、かつ、衝突位置高さdzの分散が第2の閾値以上である場合、物体20が車両10と衝突する可能性がある障害物であると判定する。
車両10の発進方向に存在する物体20が障害物であると判定された場合(S207/yes)、制限部240は、車両10の発進を制限する(S209)。
<4.作用効果>
本実施形態に係る車両の制御装置200により得られる作用効果について言及する。
本実施形態に係る車両の制御装置200は、車両10の発進方向に出力された送信波40が物体20に衝突して反射した反射波42から得られる反射波情報を取得する。また、制御装置200は、車両の停止時に当該反射波情報から衝突位置高さdzの平均値及び衝突位置高さdzの分散を求める。それにより、車両10の発進方向に存在する物体20が車両10と衝突する可能性があるものか否かを判定することができる。また、制御装置200は、求められた衝突位置高さdzの平均値及び衝突位置高さdzの分散に基づいて、車両10の発進を制限する。それにより、車両10の発進方向に存在する物体20が車両10と衝突する可能性があるものである場合に、車両10の発進が制限される。
また、本実施形態に係る車両の制御装置200は、車両10の発進方向の進路上に存在する物体20に衝突して反射した反射波42から得られる反射波情報から衝突位置高さdzの平均値及び衝突位置高さdzの分散を求める。それにより、車両10の発進方向に存在する物体20が車両10と衝突する可能性があるか否かの切り分けがより適切に行われる。
また、本実施形態に係る車両の制御装置200は、反射波42のうち車両10から所定の距離の範囲に存在する物体20に衝突して反射した反射波42から得られる反射波情報から衝突位置高さdzの平均値及び衝突位置高さdzの分散を求める。それにより、車両10の発進方向に存在する物体20が車両10と衝突する可能性があるか否かの切り分けがより適切に行われる。
また、本実施形態に係る車両の制御装置200は、衝突位置高さdzの平均値が第1の閾値以上であり、かつ、衝突位置高さdzの分散が第2の閾値以上である場合、物体20が車両10と衝突する可能性がある障害物であると判定する。それにより、車両10の発進方向に存在する物体20が車両10と衝突する可能性があるか否かの切り分けがより正確に行われる。
また、本実施形態に係る車両の制御装置200は、衝突位置高さdzの平均値が第1の閾値以上、かつ、第3の閾値以下であり、衝突位置高さdzの分散が第2の閾値以上である場合、車両10の発進方向に存在する物体20が障害物であると判定することができる。それにより、車両10の発進方向に存在する物体20が車両10と衝突する可能性があるか否かの切り分けがより正確に行われる。
また、本実施形態に係る車両の制御装置200において、第2の閾値は、衝突位置高さdzの平均値に応じて変化してもよい。それにより、車両10の発進方向に存在する物体20が車両10と衝突する可能性があるか否かの切り分けがより正確に行われる。
また、本実施形態に係る車両の制御装置200において、第1の閾値又は第3の閾値は、衝突位置高さdzの分散に応じて変化してもよい。それにより、車両10の発進方向に存在する物体20が車両10と衝突する可能性があるか否かの切り分けがより正確に行われる。
<5.応用例>
以上、本実施形態に係る車両の制御装置200の基本的な構成例を説明したが、車両の制御装置200は種々の応用が可能である。以下、本実施形態に係る車両の制御装置200の応用例を説明する。
応用例に係る制御装置200は、衝突位置高さdzの平均値及び衝突位置高さdzの分散を求めた回数に応じて第1の閾値又は第2の閾値が変化する点で上記の実施形態と異なる。
一般的に、衝突位置高さdzの平均値を求めた回数(つまり、(数式1)を実行した回数)及び衝突位置高さdzの分散を求めた回数(つまり、(数式2)を実行した回数)に応じて、衝突位置高さdzの平均値及び衝突位置高さdzの分散の精度は変化する。具体的に、衝突位置高さdzの平均値を求めた回数及び衝突位置高さdzの分散を求めた回数が増えるにつれて、衝突位置高さdzの平均値及び衝突位置高さdzの分散の精度は高くなる。
例えば、衝突位置高さdzの平均値を求めた回数及び衝突位置高さdzの分散を求めた回数が比較的少なく、衝突位置高さdzの平均値及び衝突位置高さdzの分散の精度が比較的低い場合、衝突位置高さdzの平均値及び衝突位置高さdzの分散から推定される物体20の地面30からの高さ(以下、推定高さとも称する)が現実の物体20の地面からの高さ(以下、現実高さとも称する)と異なる場合がある。
かかる場合、現実高さが推定高さよりも高く、物体20が車両10と衝突する可能性があるにも関わらず、物体20が車両10と衝突する可能性がないと判定されることを防止するため、第1の閾値及び第2の閾値は安全サイドに設定される。つまり、第1の閾値及び第2の閾値は、現実高さと対応する第1の閾値及び第2の閾値よりも小さい値に設定される。
一方、衝突位置高さdzの平均値を求めた回数及び衝突位置高さdzの分散を求めた回数が比較的多く、衝突位置高さdzの平均値及び衝突位置高さdzの分散の精度が比較的高い場合、推定高さと現実高さとは同等となる。
かかる場合、第1の閾値及び第2の閾値は、現実高さと対応する第1の閾値及び第2の閾値に近しい値に設定される。つまり、衝突位置高さの平均値及び衝突位置高さの分散の精度が比較的低い場合に比べて、第1の閾値及び第2の閾値が大きい値に設定される。
なお、上記では、第1の閾値又は第2の閾値が衝突位置高さdzの平均値及び衝突位置高さdzの分散を求めた回数に応じて変化する例について説明したが、第3の閾値についても衝突位置高さdzの平均値及び衝突位置高さdzの分散を求めた回数に応じて変化してよい。
図7を参照しながら、応用例に係る車両の制御装置200の動作について説明する。図7は、応用例に係る車両の制御装置の動作例を示すフローチャートである。
図7に示す例において、ステップS201〜S205の処理は、上述の実施形態で説明した通りであるので、ここでの詳細な説明を省略する。本応用例において、ステップS205の後、判定部238は、衝突位置高さdzの平均値を求めた回数及び衝突位置高さdzの分散を求めた回数に応じて、第1の閾値及び第2の閾値の値を変化させる(S206)。
続いて、制御装置200は、ステップS207〜S209の処理を行う。ステップS207〜S209の処理は、上述の実施形態で説明した通りであるので、ここでの詳細な説明を省略する。制御装置200は、ステップS209の処理を行った後、再度ステップS201の処理に戻り、以降の処理を繰り返す。
このように、応用例に係る制御装置200において、第1の閾値及び第2の閾値は、衝突位置高さdzの平均値及び衝突位置高さdzの分散を求めた回数に応じて変化する。
それにより、衝突位置高さdzの平均値を求めた回数及び衝突位置高さdzの分散を求めた回数が比較的少ない場合には、物体20が車両10と衝突する可能性があるにも関わらず、物体20が車両10と衝突する可能性がないと判定されることを防止することができる。
また、衝突位置高さdzの平均値を求めた回数及び衝突位置高さdzの分散を求めた回数が比較的多い場合には、物体20が車両10と衝突する可能性がないにも関わらず、物体20が車両10と衝突する可能性があると判定されることを防止することができる。つまり、車両10の発進方向に存在する物体20が車両10と衝突する可能性があるか否かの切り分けをより正確に行うことができる。
<6.むすび>
以上説明したように、本発明の実施形態によれば、車両の停止時に車両の発進方向に存在する物体が車両と衝突する可能性があるものである場合に、車両の発進を制限することが可能となる。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例、又は修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
例えば、上記実施形態における各ステップは、必ずしもフローチャートとして記載された順序に沿って時系列に処理される必要はない。例えば、上記実施形態の処理における各ステップは、フローチャートとして記載した順序と異なる順序で処理されても、並列的に処理されてもよい。
また、上記実施形態における説明では、送信波40がミリ波である例(つまり、反射波42がミリ波である例)を挙げたが、かかる例に限定されない。例えば、送信波40及び反射波42は、超音波、赤外線又はレーザ光等であってよく、反射波42から得られる反射波情報により衝突位置高さの平均値及び前記衝突位置高さの分散を求めることができるものであればよい。
また、上記実施形態における説明では、車両10の発進方向が前方である例について説明したが、かかる例に限定されない。車両10の発進方向が後方である場合についても、本発明に係る車両の制御装置を適用することにより、車両の停止時に車両の発進方向に存在する物体が車両と衝突する可能性があるものである場合に、車両の発進を制限することが可能となる。
また、例えば、上述した制御装置200の機能の全部又は一部は、他の機器に実装されてもよい。例えば、送受信機300が取得部210及び制御部230に相当する機能を有してもよい。