JP2020097256A - 操舵機能付ハブユニットおよび操舵システム並びにこれを備えた車両 - Google Patents
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Abstract
Description
車両のジオメトリには、(1) 左右輪の切れ角度が同じである「パラレルジオメトリ」、(2) 旋回中心を1か所にするために旋回内輪車輪角度を旋回外輪車輪角度よりも大きく切る「アッカーマンジオメトリ」が知られている。
特許文献2に記載の技術は、転舵軸に対しハブベアリングを片持ち支持しているため、剛性が低下し、過大な走行Gの発生によってステアリングジオメトリが変化してしまう可能性がある。
また、転舵軸上に減速機を設けた場合、モータを含めてサイズが大きくなる。サイズが大きくなると車輪の内周部に全体を配置することが困難となる。また、減速比の大きい減速機を設けた場合、応答性が悪化する。
また、キングピン軸と転舵軸が一致する場合は、構成要素部品がハブユニットの後方(車体側)に配置されるために全体のサイズが大きくなり重くなる。
しかし、制御中に位置センサが失陥した場合には、モータのレゾルバ等の回転センサの値と位置センサの値が整合できなくなり、即座に制御が停止してしまう。これを回避するために、磁気センサ等の位置センサを2個設置すると、操舵機能付ハブユニットが大きくなり、サスペンション等の他部品に干渉する可能性がある。
操舵機能付ハブユニットを車輪内の限られたスペースに収容するためには小型化が必要であるが、2個の位置センサを適切に配することが課題となる。
懸架装置の足回りフレーム部品に設けられ、前記ハブユニット本体を上下方向に延びる転舵軸心回りに回転自在に支持するユニット支持部材と、
前記ハブユニット本体を前記転舵軸心回りに回転駆動させる操舵用アクチュエータと、を備え、
前記操舵用アクチュエータは、回転駆動源と、この回転駆動源の回転出力を直進運動に変換する直動機構とを有し、
前記直動機構の前記出力ロッドの移動量を監視する位置センサを有し、この位置センサは、位置の変化を検出する半導体素子を1パッケージに2個有し、前記各半導体素子の出力を前記パッケージの外部に出力する出力端子を個別に有する。
具体的には、この構成を操舵輪である前輪に適用した場合、通常のステアリング装置により運転者のハンドル操作で、車輪はナックルおよびユニット支持部とともに操舵されるが、この操舵に付加する形で、この操舵機能付ハブユニットにおける転舵軸心回りに僅かな角度の補助的な操舵を車輪毎に独立して行える。
また、この構成を非転舵輪である後輪に適用した場合は、操舵機能付ハブユニットの全体は転舵しないが、補助操舵機能により、前輪と同様に僅かな角度の転舵を車輪毎に独立して行える。
前記操舵用アクチュエータにより、ハブベアリングを有するハブユニット本体を転舵軸心回りに一定の範囲で自由に回転させることができ、車両の走行状況に応じて、例えば車輪のトー角を任意に変更することができる。
また、旋回走行時に、走行速度に応じて左右輪の舵角差を変えることができる。例えば高速域の旋回走行においてはパラレルジオメトリとし、低速域の旋回走行においてはアッカーマンジオメトリとする等、走行中にステアリングジオメトリを変化させることができる。このように走行中に車輪角度を自由に変更することができるため、車両の運動性能を向上させ、安定・安全に走行することが可能となる。さらに、左右の車輪の操舵角度を適切に変えることで、旋回走行における車両の旋回半径を小さくし、小回り性能を向上させることもできる。
後輪に適用した場合は、舵角を前輪と同じ位相にすると、転舵時に発生するヨーを抑え、車両の安定性を高めることができる。さらに、直線走行時にも左右独立でトー角度を調整することで、走行安定性を確保することができる。
このように車両の挙動を制御するためには、正確に車輪の舵角を制御する必要があるとともに、異常時にはタイヤの角度を初期状態に戻して、安全に制御を停止させる必要がある。
この発明では、車輪の角度を適切に管理し、または指令値通りに動作しているかを確認するために、直動機構の出力ロッドの移動量を監視するセンサとして、直線位置センサである位置センサを用いているため、モータから直動機構に駆動力を伝達する減速機等の経路中や、直動機構自体の遊びに影響されずに精度良く検出できる。また、モータにレゾルバ等の高精度の回転センサを設けた場合も、何回転目であるかの判断を前記位置センサの出力によって行え、かつ相互チョックにより検出の信頼性が高められる。
さらに、前記位置センサには、位置の変化を検出する半導体素子を1パッケージに2個有する、いわゆるデュアルダイの位置センサを配置している。そのため、この操舵機能付ハブユニットは、冗長性を確保し、小型化することができる。
磁気センサであると、光源が不要で構成が簡素となり、また走行に伴い振動を受ける環境下での耐久性に優れる。
この構成の操舵システムによると、この発明の操舵機能付ハブユニットを簡単な構成で制御して、この操舵機能付ハブユニットの上記利点を効果的に得ることができる。
このセンサ異常判定部を備えることにより、デュアルダイの位置センサを用いたことと相まって、より信頼性の高い操舵の制御が行える。
この構成の車両によると、この発明の操舵機能付ハブユニットを前輪に装備した場合の前記各効果を得ることができる。
この構成の車両によると、この発明の操舵機能付ハブユニットを後輪に装備した場合の前記各効果を得ることができる。
この発明の第1の実施形態に係る操舵機能付ハブユニットを図1ないし図10と共に説明する。
<操舵機能付ハブユニットの概略構造>
図1に示すように、この操舵機能付ハブユニット1は、ハブベアリング15を有するハブユニット本体2と、ユニット支持部材3と、操舵用アクチュエータ5とを備える。前記ユニット支持部材3は、足回りフレーム部品であるナックル6に一体に設けられている。このユニット支持部材3のインボード側に、操舵用アクチュエータ5のアクチュエータ本体7が設けられ、ユニット支持部材3のアウトボード側に、ハブユニット本体2が設けられる。操舵機能付ハブユニット1を車両に搭載した状態で、車両の車幅方向外側をアウトボード側といい、車両の車幅方向中央側をインボード側という。なお、操舵機能付ハブユニット1を、以下単にハブユニット1と言う場合がある。
この操舵機能付ハブユニット1は、この実施形態では操舵輪に設けられている。具体的には図10に示すように、この操舵機能付ハブユニット1は、車両10の前輪9Fの通常の操舵を行うステアリング装置11による操舵に付加して左右輪個別に微小な角度(約±5deg)を操舵させる機構として、懸架装置12のナックル6に一体に設けられる。
図1に示すように、ハブユニット本体2は、車輪9の支持用のハブベアリング15と、アウターリング16と、このアウターリング16に設けられた後述の補助操舵用の操舵力受け部であるアーム部17(図3)とを備える。
ハブベアリング15は、内輪18と、外輪19と、これら内外輪18,19間に介在したボール等の転動体20とを有し、車体側の部材と車輪9とを繋ぐ役目をしている。
図6に示すように、各回転許容支持部品4は転がり軸受から成る。この例では、転がり軸受として、円すいころ軸受が適用されている。転がり軸受は、転舵軸部16bの外周に嵌合した内輪4aと、ユニット支持部材3に嵌合した外輪4bと、内外輪4a,4b間に介在する複数の転動体4cとを有する。
図3に示すように、操舵用アクチュエータ5は、ハブユニット本体2を転舵軸心A(図1)回りに回転駆動させるアクチュエータ本体7を有する。
図2に示すように、アクチュエータ本体7は、駆動源であるモータ26と、モータ26の回転を減速する減速機27と、この減速機27の正逆の回転出力を出力ロッド25aの往復直線動作に変換する直動機構25とを備える。モータ26は、例えば永久磁石型同期モータとされるが、直流モータであっても、誘導モータであってもよい。モータ26には回転位置を検出するレゾルバ等の回転センサ53が設けられている。
直動機構25は、滑りねじまたはボールねじ等の送りねじ機構、またはラック・ピニオン機構等を用いることができ、この例では台形ねじの滑りねじを用いた送りねじ機構が用いられている。この直動機構25は、具体的には、外周部に前記ドリブンプーリ27bが設けられて軸方向両側の軸受42,42によりユニット支持部材3に回転自在に設置されたナット部材25bと、このナット部材25bに噛み合う雄ねじ部25aa(図7参照)が外周に設けられた前記出力ロッド25aとでなる。出力ロッド25aは、軸状の回り止め部材51によってユニット支持部材3に対して回り止めされている。回り止め部材51は、出力ロッド25aの後端に取付けられていて、外周にローラ51aを有し、このローラ51aは、出力ロッド25aの進退時に、ユニット支持部材3に設けられた回り止め用ガイド面52に回転しながら案内される。
直動機構25は、前記台形ねじの滑りねじを用いた送りねじ機構を備えるため、タイヤ9bからの逆入力の防止効果を高め得る。モータ26、減速機27および直動機構25を備えたアクチュエータ本体7は、サブアセンブリとして組み立てられてケース6bにボルト等により着脱自在に取り付けられる。なおモータ26の駆動力を、減速機を介さず直接に直動機構25へ伝達する機構も可能である。
図7に拡大して示すように、操舵用アクチュエータ5には直動機構25の出力ロッド25aの移動量を監視する直線位置センサである位置センサ44を備える。この位置センサ44は、図8に概念的に示すように、位置の変化を検出する半導体素子45を、1つのパッケージ46に2個有し、各半導体素子45,45の出力をパッケージ46の外部に出力する出力端子47,47を個別に有している。位置センサ44は、磁気式、光学式、静電容量式等の各種のセンサを用いることができるが、この実施形態では、磁気センサが用いられ、前記半導体素子45,45にはホール素子が用いられている。
図2において、前記ケース6bは、ユニット支持部材3の一部として、ユニット支持部材本体3Aに一体に形成されている。ケース6bは、有底筒状に形成され、モータ26を支持するモータ収容部と、直動機構25を支持する直動機構収容部が設けられている。前記モータ収容部には、モータ26をケース内所定位置に支持する嵌合孔が形成されている。前記直動機構収容部には、直動機構25をケース内所定位置に支持する嵌合孔、および、出力ロッド25aの進退を許す貫通孔等が形成されている。
図2に示すように、この操舵システムは、第1の実施形態に係る操舵機能付ハブユニット1と、この操舵機能付ハブユニット1の操舵用アクチュエータ5を制御する制御装置29とを備える。制御装置29は、操舵制御部30と、アクチュエータ駆動制御部31と、センサ異常判定部52を有する。
上位制御部32は操舵制御部30の上位の制御手段であり、この上位制御部32として、例えば、車両全般を制御する電気制御ユニット(Vehicle Control Unit, 略称VCU)が適用される。
アクチュエータ駆動制御部31は、例えば、図示外のスイッチ素子を用いたハーフブリッジ回路を構成し、前記スイッチ素子のON−OFFデューティ比によりモータ印加電圧を決定するPWM制御を行う。
なお、回転センサ53に異常が発生した場合に、位置センサ44の検出値を用いて前記制御を行うようにしてもよく、またモータ26に回転センサ53を設けずに、位置センサ44の検出値のみを用いてフィードバック等の制御を行うようにしてもよい。
この操舵機能付ハブユニット1は、非操舵輪に対して用いてもよい。例えば、図11に示すように、前輪操舵の車両において、後輪9Rを支持する懸架装置12Rの車輪用軸受設置部となる足回りフレーム部品6Rに設定し、後輪操舵に用いてもよい。
その他図12に示すように、操舵機能付ハブユニット1を、操舵輪である左右の前輪9F,9Fおよび非操舵輪である左右の後輪9R,9Rにそれぞれ用いてもよい。
上記構成の操舵機能付ハブユニット1によれば、通常の操舵を行うステアリング装置11(図8参照)のキングピン軸とは異なる転舵軸心Aを持ち、ハブベアリング15を有するハブユニット本体2が前記転舵軸心A回りに上下両端部で回転可能に保持されている。また、ハブユニット1内に配置される操舵用アクチュエータ5によって、ハブユニット本体2を転舵軸心Aを中心として回転作動させることが可能である。これによって、簡単な構造でハブユニット本体2に取り付けられた車輪9のトー角度を走行中に自由に変更することができる。
具体例を挙げると、高速域の旋回走行においてはパラレルジオメトリとし、低速域の旋回走行においてはアッカーマンジオメトリとする等、走行中にステアリングジオメトリを変化させることができる。このように走行中に車輪角度を自由に変更することができるため、車両10の運動性能を向上させ、安定・安全に走行することが可能となる。さらに、左右の操舵輪の転舵角度を適切に変えることで、旋回走行における車両10の旋回半径を小さくし、小回り性能を向上させることもできる。直線走行時にも、それぞれの場面に合わせてトー角度の量を調整することで、低速時にはタイヤをまっすぐに向け抵抗を小さくし燃費を悪化させることなく、高速時にはタイヤ角度をトーインとし走行安定性を確保するなど調整が可能である。
直動機構25の出力ロッド25aの移動量を監視するセンサとして、直線位置センサである位置センサ44を用いているため、モータ26から直動機構25に駆動力を伝達する減速機等の経路中や、直動機構25自体の遊びに影響されずに精度良く検出できる。またモータ26にレゾルバ等の高精度の回転センサ53を設けた場合も、何回転目であるかの判断を前記位置センサ53の出力によって行え、かつ相互チェックにより検出の信頼性が高められる。
この操舵機能付ハブユニット1において、転舵角を細密に制御するためには、直動機構25の出力ロッド25aの移動量を適切に管理する必要がある。また、制御中にモータ26のレゾルバなどの回転センサ53と位置センサ44の値を相互チェックすることで、操舵用アクチュエータ5が正しく動作しているかを互いに確認し、どちらかに異常が生じた場合には制御を停止することが望ましい。そこで、センサ異常判定部52を設け、図9に示す処理を行っている。
それぞれの値の偏差が大きい場合、どちらかの位置センサ(1) ,(2) が失陥していると考えられるため、どちらの位置センサ(1) ,(2) が失陥しているかを判断するために、モータレゾルバ値(R) と位置センサ2の値(B) を比較する。(ステップS3)
この時に、モータレゾルバ値(R) と位置センサ(2) の値(B) の偏差が小さい場合は、位置センサ(1) の異常を出力(ステップS4)し、制御は継続する。(ステップS5)
位置センサ(1) と位置センサ(2) の値の偏差が小さい場合は、モータレゾルバが異常と判断し、モータレゾルバ異常を出力(ステップS7)して、制御を停止する。(ステップS9)
この様に、モータレゾルバ値と位置センサ44の出力2個を比較することで、冗長性を確保することが可能となる。
Claims (6)
- 車輪を支持するハブベアリングを有するハブユニット本体と、
懸架装置の足回りフレーム部品に設けられ、前記ハブユニット本体を上下方向に延びる転舵軸心回りに回転自在に支持するユニット支持部材と、
前記ハブユニット本体を前記転舵軸心回りに回転駆動させる操舵用アクチュエータと、を備え、
前記操舵用アクチュエータは、回転駆動源と、この回転駆動源の回転出力を直進運動に変換する直動機構とを有し、
前記直動機構の前記出力ロッドの移動量を監視する位置センサを有し、この位置センサは、位置の変化を検出する半導体素子を1パッケージに2個有し、前記各半導体素子の出力を前記パッケージの外部に出力する出力端子を個別に有する操舵機能付ハブユニット。 - 請求項1に記載の操舵機能付ハブユニットにおいて、前記位置センサが磁気センサである操舵機能付ハブユニット。
- 請求項1または請求項2に記載の操舵機能付ハブユニットと、制御装置とを備え、前記制御装置は、上位制御部の指令信号を受け、前記直動機構の駆動源となるモータに対する電流指令信号を出力する操舵制御部、および前記電流指令信号に応じた電流を出力して前記モータに印加し前記操舵用アクチュエータを駆動するアクチュエータ駆動制御部を有する操舵システム。
- 請求項3に記載の操舵システムにおいて、前記操舵機能付ハブユニットに、前記直動機構の駆動源であるモータの回転を検出する回転センサを有し、前記制御装置に、前記位置センサの前記個々の半導体素子の検出値である2つの検出値と前記回転センサの検出値とを相互に比較して、前記位置センサが異常であるか、および前記回転センサが異常であるかを判定し、異常である場合に制御停止指令を出力するセンサ異常判定部を有する操舵システム。
- 請求項1もしくは請求項2に記載の操舵機能付ハブユニット、または請求項3もしくは請求項4に記載の操舵システムを備え、前記操舵機能付ハブユニットを、左右の前輪に装備した車両。
- 請求項1もしくは請求項2に記載の操舵機能付ハブユニット、または請求項3もしくは請求項4に記載の操舵システムを備え、前記操舵機能付ハブユニットを、左右の後輪に装備した車両。
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