JP2020095772A - 円形加速器 - Google Patents
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Abstract
【課題】耐久性が高く、高速回転可能な回転コンデンサによる円形加速器を提供すること。【解決手段】ステータ電極と、このステータ電極のステータ電極面との間で静電容量を形成するロータ電極面を有するロータ電極と、を備え、このロータ電極が回転することにより、静電容量が変化する回転コンデンサが筐体内に設けられた円形加速器において、ロータ電極は、筐体内に固定された金属の軸受により回転可能に保持されるシャフトによって保持され、シャフトは軸方向の少なくとも一部の領域が直流を絶縁する絶縁材料で構成され、軸受と筐体との間に、少なくとも一部の領域が直流を絶縁する絶縁材料で形成された軸受ホルダが配置されるようにした。【選択図】図1
Description
本発明は、粒子線治療装置などに利用される高エネルギーの粒子線を出射する円形加速器であるシンクロサイクロトロン加速器の、特にキャパシタンス変調素子に関する。
シンクロサイクロトロン加速器は、周波数変調を用いたサイクロトロン加速器である。荷電粒子の速度上昇とそれに伴う相対論的質量増加によって起こる周回周波数の低下に対して、高周波電源から投入されるDee電極間の高周波電界の周波数を同期させる。
高周波電界の周波数を変化させる場合、共振空洞内の電気的な共振周波数を高速に変化させる必要があった。上記の問題を解決するため、シンクロサイクロトロンでは電源と負荷であるDee電極との間に挿入された変調素子によって、共振周波数を変化させてきた。
上記の変調素子としては、時間的に静電容量を変化させる回転コンデンサなどが用いられ、回転コンデンサを構成する電極対の一方が高速に回転することにより、共振周波数を変化させる。(例えば、特許文献1、特許文献2参照)
シンクロサイクロトロンの共振周波数を変調する回転コンデンサには、その回転軸を受けるために軸受が用いられる。この軸受に直流もしくは交流の電流が流れた場合、軸受内の鋼球もしくは円筒(コロ)の狭い接触箇所に電流が集中するため、軸受が損傷し易く、コンデンサの寿命が短いという問題があった。一方、軸受にセラミックを用いた場合は、電流は流れないが、最高回転数や耐荷重が金属の軸受より劣り、回転コンデンサが所望の周期で、所望の静電容量の変化を達成できない懸念がある。
本発明は、上記のような課題を解決するために成されたものであり、耐久性が高い、高速回転可能な回転コンデンサによる円形加速器を提供することを目的としている。
本発明は、荷電粒子を磁場により螺旋軌道に沿って周回させながら、ディー電極によって発生する高周波電界により加速する円形加速器において、高周波電界を発生させる高周波電力を供給するための高周波整合回路の部材として、ステータ電極と、このステータ電極のステータ電極面との間で静電容量を形成するロータ電極面を有するロータ電極と、を備え、このロータ電極が回転することにより、静電容量が変化する回転コンデンサが、当該円形加速器を構成する筐体の内部に設けられ、ロータ電極は、筐体の内部に固定された金属の軸受により回転可能に保持されるシャフトによって保持され、シャフトは軸方向の少なくとも一部の領域が直流を絶縁する絶縁材料で構成され、軸受と筐体との間に、少なくとも一部の領域が直流を絶縁する絶縁材料で形成された軸受ホルダが配置されているものである。
この発明によれば、回転コンデンサの回転シャフトを絶縁材料、軸受を金属で構成したため、耐久性が高く、高速回転可能な回転コンデンサによる円形加速器を提供できる。
まず、本発明が適用される一例としての粒子線治療装置の概要を、図15を参照して説明する。本発明が適用される粒子線治療装置100は、図15のブロック図に示すように、治療計画部4と、粒子線発生部5と、粒子線輸送部6と、粒子線照射部7などを備える。粒子線輸送部6は、粒子線発生部5と、粒子線照射部7とを連結し、粒子線発生部5において加速器200を用いて加速させた荷電粒子の束である粒子線を粒子線照射部7に輸送する粒子線輸送路を有する。粒子線照射部7は、粒子線を患者の患部である照射目標へ照射する照射ノズル71、治療台72、位置決め装置73などを備えている。また、粒子線発生部5および粒子線照射部7は、治療計画部4で設定した照射線量に基づき治療制御部8を介して制御される。
荷電粒子の束である粒子線を照射目標である患者の患部に照射したとき、その荷電粒子のエネルギーに応じて、患者の患部の深さ方向の照射位置が決まる。したがって、荷電粒子のエネルギーを変えることにより、深さ方向の照射位置を変えることができる。また、照射ノズル71には粒子線を偏向して、粒子線の進行方向に対して垂直な方向に粒子線を走査するためのビーム走査装置を備えている。ビーム走査装置は、治療制御部8のビーム走査制御部からの指令により粒子線を粒子線の進行方向に対して垂直な2次元方向に走査する。このようにして、3次元の領域である患者の患部に粒子線を照射することができる。以下で説明するように、加速器200がシンクロサイクロトロンの場合、荷電粒子を加速するためにDee電極の高周波電界の周波数を変調する必要があり、加速空洞内の電気的な共振周波数を機械的に変調する機構を有する。本発明は、円形加速器であるシンクロサイクロトロンにおいて、共振周波数変調素子である回転コンデンサの軸受における直流電流、交流電流と発熱による損傷抑制に関するものである。
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1による円形加速器の要部である回転コンデンサ300の概略構成を示す断面模式図である。また、図2は、粒子線治療装置に用いる本発明の実施の形態1による円形加速器であるシンクロサイクロトロン200の概略構成を示す上面断面模式図であり、図3は側面断面模式図である。図2および図3に示すように円形加速器であるシンクロサイクロトロン200は、上下に対向して配置された一対のコイル9とヨーク10から成る偏向電磁石400と高周波電力が供給される共振空洞11とを備えている。共振空洞11は、加速電極であるDee電極(ディー電極とも称する)1、回転コンデンサ300を有する。偏向電磁石400によってDee電極1にZ軸方向の磁場が形成される。イオン源12から取出された荷電粒子は、コイル9により発生したZ軸方向の磁場によってDee電極1内を周回し、半周期ごとにDee電極1間の加速ギャップ30へ到達する。Dee電極1間の加速ギャップ30に発生する高周波電界は荷電粒子の周回周期と同期するよう調整されているため、荷電粒子は加速ギャップ30を通過する毎に加速され、荷電粒子の加速軌道は図2の破線で示すような、螺旋軌道となる。
図1は、本発明の実施の形態1による円形加速器の要部である回転コンデンサ300の概略構成を示す断面模式図である。また、図2は、粒子線治療装置に用いる本発明の実施の形態1による円形加速器であるシンクロサイクロトロン200の概略構成を示す上面断面模式図であり、図3は側面断面模式図である。図2および図3に示すように円形加速器であるシンクロサイクロトロン200は、上下に対向して配置された一対のコイル9とヨーク10から成る偏向電磁石400と高周波電力が供給される共振空洞11とを備えている。共振空洞11は、加速電極であるDee電極(ディー電極とも称する)1、回転コンデンサ300を有する。偏向電磁石400によってDee電極1にZ軸方向の磁場が形成される。イオン源12から取出された荷電粒子は、コイル9により発生したZ軸方向の磁場によってDee電極1内を周回し、半周期ごとにDee電極1間の加速ギャップ30へ到達する。Dee電極1間の加速ギャップ30に発生する高周波電界は荷電粒子の周回周期と同期するよう調整されているため、荷電粒子は加速ギャップ30を通過する毎に加速され、荷電粒子の加速軌道は図2の破線で示すような、螺旋軌道となる。
円形加速器であるシンクロサイクロトロン200は、真空装置13、高周波電源14、入力カプラ15、回転コンデンサ300と制御回路を備える。真空装置13は共振空洞11の内部を低圧に維持し、加速される荷電粒子の散乱や放電を抑制する。高周波電源14は入力カプラ15を介して共振空洞11内に高周波電力を供給し、制御回路は加速される荷電粒子のエネルギーに対応した周波数の高周波電力を出力できるよう電源を調整する。
共振周波数の変調素子として、例えば可変インダクタンス素子や可変キャパシタンス素子を考えることができる。変調素子のインダクタンスやキャパシタンスを荷電粒子の周回周波数の変化に対応するように変調させることで共振空洞11の共振周波数が変調される。可変キャパシタンス素子としては、回転コンデンサ300があげられる。図1に示すように回転コンデンサ300はロータ電極3とステータ電極2を有する。ロータ電極3はモータ16によって駆動する。ステータ電極2は伝送線路17に固定される。回転コンデンサ300の形成する静電容量は、以下の式(1)からステータ電極2とロータ電極3の対向面積Sと電極間距離dと誘電率εにより規定される。
C=ε S/d (1)
C=ε S/d (1)
図1が示す回転コンデンサ300の駆動機構はロータ電極3を保持するシャフト18と、シャフト18を回転保持する軸受19と、軸受19を保持する軸受ホルダ20と、軸受ホルダ20を保持し、共振空洞11と連結する筐体21から構成される。シャフト18はモータ16から伝達される動力によって回転し、ロータ電極3を回転させる。上記駆動機構は真空槽である共振空洞11内に設置される。モータ16は共振空洞11の外部に設置し、図に示すような、例えば磁気カプラ22、磁気流体やOリングのような運動用シールを用いた動力伝達機構によりシャフト18に動力を伝達する。ただし、動力を発生させるモータ16を、共振空洞11内に設置し、シャフト18を直接回転させるようにしても良い。
図4(a)は、本発明の実施の形態1による円形加速器の回転コンデンサの電極部を回転軸方向から見た模式図である。また、図4(b)は回転軸Ceを含む位置での断面図である。ロータ電極3は、回転軸Ceに対して垂直方向に伸びる電極部を複数有する円盤形状のロータ電極面31が回転軸Ce方向に複数配置された構成となっている。ステータ電極2は伝送線路17の端部に接続され、回転軸Ceに対して垂直方向に伸びる電極部を複数有する円盤形状のステータ電極面23が回転軸Ce方向に複数配置された構成となっている。ステータ電極2とロータ電極3は、ステータ電極面23とロータ電極面31が互い違いに位置するように配置されており、ロータ電極面31とステータ電極面23が対向したときに、電極間距離dを形成する。上記の電極配置とロータ電極3の回転により、ロータ電極面31とステータ電極面23の対向面積Sを時間的に変化させることができ、ステータ電極2とロータ電極3とで形成される静電容量は時間的に変化する。一般に共振周波数fはインダクタンスLとキャパシタンスCから以下の式(2)で定義されるため、静電容量が増加すると共振周波数は低下する。
f=1/(2π√(LC)) (2)
f=1/(2π√(LC)) (2)
よってDee電極1と回転コンデンサ300を含む共振空洞11は静電容量の変化により、その共振周波数を変化させることができる。ロータ電極3は、伝送線路17の端部に接続されたステータ電極2と直流絶縁される。また、ロータ電極3およびステータ電極2は電気伝導性材料によって構成される。この材料は例えば銅やアルミニウムなどの電気伝導率の高い材料が好ましい。
図5にステータ電極面の形状の一例を示す、図5のステータ電極面23は、一部がカットされた形状となっている。このように、周波数変調に必要な静電容量変化のプロファイルを生成するため、ステータ電極2のステータ電極面23の形状を適当な形状に調整することで対向面積Sの変化プロファイルを調整することができる。形状を調整するのは、ロータ電極3のロータ電極面31であってもよく、またステータ電極面23およびロータ電極3のロータ電極面31の両方の形状を調整しても良い。さらにまた、ロータ電極とステータ電極の積層数を変更することによって静電容量を調整しても良い。
また、図6に、ロータ電極3とステータ電極2の別の例の分解斜視図を示す。ロータ電極3は、円筒形状であり内面に回転軸Ceの方向に伸びる凸部を複数有することにより、回転軸Ceから一定半径の位置に、円筒状にロータ電極面31が複数配置された構成となっている。また、ステータ電極2は伝送線路17の端部で接続され、回転軸Ceからの距離がロータ電極3のロータ電極面31とは異なる一定の距離の位置に、回転軸方向に伸びた複数の板状のステータ電極面23が円筒状に配置された構成となっている。図6ではステータ電極2をロータ電極3の内部から引き出した状態を示しているが、実際には、ステータ電極2がロータ電極3の内部に挿入された配置となっており、ロータ電極3のロータ電極面31とステータ電極2のステータ電極面23が対向したときに、電極間距離dを形成する。
ロータ電極3を保持するシャフト18は絶縁材料から形成される。これにより、共振空洞11内を流れる直流電流から軸受19を絶縁することができる。このとき用いる絶縁材料は、例えば、アルミナ、窒化ケイ素やサファイアなどのセラミックから成る絶縁材料でよい。上記セラミック材料を用いることで、ロータ電極3の回転に必要な機械強度を保つとともに直流絶縁を実現する。シャフト18にて直流絶縁を実現することにより、シャフト18を回転保持する軸受19はセラミックの軸受と比較して高速回転が可能で耐荷重が大きな金属軸受を用いることができる。なお、上記絶縁材料は機械的な強度を満たすものであれば良く、ガラス、樹脂などの材料や、FRPのように上記材料を組合せたものを用いても良い。
また、ロータ電極3は回転するロータ電極3と筐体21の間に、図1の符号24で示すように短絡コンデンサを有する。このため、ロータ電極3から筐体21へ流れる高周波電流は、シャフト18から軸受19を介して筐体21へ流れる高周波電流と、ロータ電極3から短絡コンデンサ24を介して筐体21へ流れる高周波電流に分割して流れる。
図7に回転コンデンサ300の等価回路を示す。回転コンデンサ300はロータ電極3とステータ電極2から形成される可変静電容量Cv、ロータ電極3と筐体21の間で形成される短絡コンデンサ24の静電容量Csと、シャフト18を絶縁材料としたことで、ロータ電極3と軸受19の間で形成される静電容量Cpから構成される。CsとCpはCvに対して直列に配置され、CpはCsに対して、並列に配置される。CvおよびCsは共振空洞11内の真空によって、Cpはシャフト18を構成する絶縁材料によって直流絶縁される。一方、共振空洞11内を流れる交流の高周波電流はCvを介して、CsとCpの2つの経路に分流し、筐体21へと流れる。このときCvを流れる高周波電流は、CsとCpの比の大きさに応じて分流するため、静電容量の比Cs/Cpを大きくすることで軸受19を通過する交流である高周波電流を小さくできる。具体的には、Csの値を大きくするため、ロータ電極3と筐体21に凹凸形状を追加し、筐体21との対向面積を増やしても良い。或いはロータ電極3と筐体21間との距離を可能な限り小さくすることによりCsの値を大きくすることもできる。
以上説明したように、実施の形態1の円形加速器では、回転コンデンサ300のシャフト18を絶縁材料とすることによって、軸受19に流れる電流量が低下することによって、軸受19の損傷が抑制される。また、シャフト18にて絶縁されることで、金属ベアリングを使用することができる。
実施の形態2.
実施の形態2ではより好適な軸受部分における高周波電流の抑制機構を示す。実施の形態2においては駆動機構の内、軸受19と筐体21の間に絶縁構造を有する。具体的には、絶縁材料から成るシャフト18に加えて軸受ホルダ20も絶縁材料とする。この構成によれば、ロータ電極3と軸受19の間に形成される静電容量Cpに対して、軸受19と筐体21の間に形成される静電容量Cppが直列に追加される構成となっている。図8の等価回路に示すように軸受ホルダ20を絶縁材料とすることで、筐体21とロータ電極3と間に軸受19を挟んでCpとCppから成る直列コンデンサを形成することができる。このときCpとCppの合成容量Callは下記の式(3)で表現される。
Call=Cp X Cpp/(Cp+Cpp) = Cp/((Cp/Cpp) + 1) (3)
実施の形態2ではより好適な軸受部分における高周波電流の抑制機構を示す。実施の形態2においては駆動機構の内、軸受19と筐体21の間に絶縁構造を有する。具体的には、絶縁材料から成るシャフト18に加えて軸受ホルダ20も絶縁材料とする。この構成によれば、ロータ電極3と軸受19の間に形成される静電容量Cpに対して、軸受19と筐体21の間に形成される静電容量Cppが直列に追加される構成となっている。図8の等価回路に示すように軸受ホルダ20を絶縁材料とすることで、筐体21とロータ電極3と間に軸受19を挟んでCpとCppから成る直列コンデンサを形成することができる。このときCpとCppの合成容量Callは下記の式(3)で表現される。
Call=Cp X Cpp/(Cp+Cpp) = Cp/((Cp/Cpp) + 1) (3)
この式より合成容量CallはCpよりも値が小さくなるため、ロータ電極3と筐体21との間の静電容量Csとの比Cs/Callをより大きくとることができる。また、この比の値は、絶縁材料から成る軸受ホルダ20の構成を調整してCppの値を制御することによって制御可能である。具体的には例えば円筒形状から成る軸受ホルダ20の厚さを制御することでCppの値を制御することが可能である。また、軸の直径や長さを調整することにより、Cpの値を調整して比Cs/Callの値を調整してもよい。実施の形態2では実施の形態1で示した軸のみを直流絶縁する場合と比べ、軸と軸受ホルダの静電容量比によって合成容量の値が決定するため、軸受周りの構造的な制約条件に対して、そのいずれか、もしくは両方を調整することができ、さらに高周波電流を抑制できる。また、軸受ホルダ20およびシャフト18の絶縁材料を変更することにより、誘電率εによって静電容量を制御することも可能である。以上説明したように、軸受19と筐体21の間に絶縁材料を挿入することで、直列の静電容量を形成し、軸のみを絶縁する場合と比較して軸受19に流れる高周波電流をより小さくできるため、軸受19の損傷を抑制することができる。
実施の形態3.
実施の形態3ではより好適な軸受損傷の抑制機構を示す。例えば、図1に示す駆動機構の内、アルミナなどの絶縁材料から成るシャフト18や軸受ホルダの一部を金属膜化、即ちメタライズする。メタライズしたシャフト18はロウ付や溶接によって金属との接合が可能となるため、シャフト18をセラミックと金属から形成することでロータ電極3と軸受19の間の静電容量Cpを高精度に制御できる。このとき、実施の形態2における静電容量Csとの比Cs/Callを大きくすることができるため、軸受に流れる高周波電流をさらに抑制できる。また、図9に示すように、軸受19とロータ電極3の直流絶縁を維持する範囲において、シャフト18をセラミック部分181と金属部分182から形成することによって、強度が必要な部分のみを金属とすることもできる。具体的には、図9に示すシャフト18の金属部分182のように、軸受19と接触する部分を金属、残りの部分をセラミック部分181とすることができる。さらに、セラミック材料から成る軸受ホルダ20と筐体21の界面もメタライズ後、例えばロウ付により接合しても良い。軸受ホルダ20と筐体21の接合界面は密に結合するため、軸受ホルダ20を筐体21にネジ締結などによって固定した場合と比較して、軸受19の高周波電流貫通による発熱を効率よく筐体21へと伝達することができる。これによって、熱による軸受19の損傷を抑制することができる。さらにまた、軸受ホルダ20は軸受19と筐体21の直流絶縁を維持する範囲においてセラミックと金属から形成しても良い。
実施の形態3ではより好適な軸受損傷の抑制機構を示す。例えば、図1に示す駆動機構の内、アルミナなどの絶縁材料から成るシャフト18や軸受ホルダの一部を金属膜化、即ちメタライズする。メタライズしたシャフト18はロウ付や溶接によって金属との接合が可能となるため、シャフト18をセラミックと金属から形成することでロータ電極3と軸受19の間の静電容量Cpを高精度に制御できる。このとき、実施の形態2における静電容量Csとの比Cs/Callを大きくすることができるため、軸受に流れる高周波電流をさらに抑制できる。また、図9に示すように、軸受19とロータ電極3の直流絶縁を維持する範囲において、シャフト18をセラミック部分181と金属部分182から形成することによって、強度が必要な部分のみを金属とすることもできる。具体的には、図9に示すシャフト18の金属部分182のように、軸受19と接触する部分を金属、残りの部分をセラミック部分181とすることができる。さらに、セラミック材料から成る軸受ホルダ20と筐体21の界面もメタライズ後、例えばロウ付により接合しても良い。軸受ホルダ20と筐体21の接合界面は密に結合するため、軸受ホルダ20を筐体21にネジ締結などによって固定した場合と比較して、軸受19の高周波電流貫通による発熱を効率よく筐体21へと伝達することができる。これによって、熱による軸受19の損傷を抑制することができる。さらにまた、軸受ホルダ20は軸受19と筐体21の直流絶縁を維持する範囲においてセラミックと金属から形成しても良い。
実施の形態4.
図10(a)は本発明の実施の形態4による円形加速器の回転コンデンサ300の概略構成を示す断面模式図である。実施の形態4では好適な軸受19の絶縁機構を示す。例えば、図10(a)に示す駆動機構の内、シャフト18は回転軸Ceに対して垂直方向に突き出したフランジ形状25を有する。シャフト18が絶縁材料で構成される場合、ロータ電極3と軸受19の間には電位差が生じ、この距離が小さい場合には絶縁体の表面に沿って放電する沿面放電が懸念される。沿面放電抑制の手段として図10(b)に示すように、沿面経路の長さ、すなわち沿面距離を長くすることが考えられるため、ロータ電極3と軸受19の間にフランジ形状25を追加する。このとき沿面距離はシャフト18のフランジ径に比例するため、ロータ電極3と軸受19の間の電位差から、必要な沿面距離に応じた大きさのフランジ形状25をシャフト18に追加することにより沿面放電を抑制することができる。また、沿面距離を長くする方法としてはフランジ形状25でなくともよく、ロータ電極3と軸受19の間に凸形状や凹形状をシャフト18に追加することにより沿面距離を長くしても良い。
図10(a)は本発明の実施の形態4による円形加速器の回転コンデンサ300の概略構成を示す断面模式図である。実施の形態4では好適な軸受19の絶縁機構を示す。例えば、図10(a)に示す駆動機構の内、シャフト18は回転軸Ceに対して垂直方向に突き出したフランジ形状25を有する。シャフト18が絶縁材料で構成される場合、ロータ電極3と軸受19の間には電位差が生じ、この距離が小さい場合には絶縁体の表面に沿って放電する沿面放電が懸念される。沿面放電抑制の手段として図10(b)に示すように、沿面経路の長さ、すなわち沿面距離を長くすることが考えられるため、ロータ電極3と軸受19の間にフランジ形状25を追加する。このとき沿面距離はシャフト18のフランジ径に比例するため、ロータ電極3と軸受19の間の電位差から、必要な沿面距離に応じた大きさのフランジ形状25をシャフト18に追加することにより沿面放電を抑制することができる。また、沿面距離を長くする方法としてはフランジ形状25でなくともよく、ロータ電極3と軸受19の間に凸形状や凹形状をシャフト18に追加することにより沿面距離を長くしても良い。
実施の形態5.
図11は本発明の実施の形態5による円形加速器の回転コンデンサ300の要部を示す断面図である。実施の形態5では、好適な軸受19の絶縁機構を示す。図11は、軸受19の周辺を拡大して示す断面図であり、Dee電極に接続されるステータ電極の部分は図示されていない。図11に示す駆動機構は、軸受19をシャフト上に固定するセットカラー26を有する。セットカラー26は軸受19の内輪191に接触し、軸受19の内輪191と等電位となる。また、駆動機構は軸受ホルダ20内に軸受19を固定する金属製のホルダキャップ27を有する。このホルダキャップ27は、軸受19の外輪192と接触し、軸受19の外輪192と等電位となる。このときセットカラー26は筐体に対して静電容量C1をもち、ホルダキャップ27はロータ電極3に対して静電容量C2をもつ。
図11は本発明の実施の形態5による円形加速器の回転コンデンサ300の要部を示す断面図である。実施の形態5では、好適な軸受19の絶縁機構を示す。図11は、軸受19の周辺を拡大して示す断面図であり、Dee電極に接続されるステータ電極の部分は図示されていない。図11に示す駆動機構は、軸受19をシャフト上に固定するセットカラー26を有する。セットカラー26は軸受19の内輪191に接触し、軸受19の内輪191と等電位となる。また、駆動機構は軸受ホルダ20内に軸受19を固定する金属製のホルダキャップ27を有する。このホルダキャップ27は、軸受19の外輪192と接触し、軸受19の外輪192と等電位となる。このときセットカラー26は筐体に対して静電容量C1をもち、ホルダキャップ27はロータ電極3に対して静電容量C2をもつ。
図12に軸受19周りの等価回路を示す。この回路はホイートストンブリッジとして知られ、構成する4つのキャパシタンスCp、Cpp、C1、C2が、下記の式(4)を満たすとき、接点1と接点2をつなぐ線路上の電流Iが0となる。
Cp×Cpp=C1×C2 (4)
このときCpとCppについてはシャフト18と軸受ホルダを形成するセラミックが、C1とC2については真空ギャップが誘電体として作用する。ホイートストンブリッジ回路では、4種のキャパシタンスの内、少なくとも1つのキャパシタンスを調整可能にすることによって、上記の式を実現する。調整可能とするために、例えば、C2は静電容量の調整機構を有する。この調整機構は、軸受19をシャフト18上に固定するセットカラー26によって構成される。
Cp×Cpp=C1×C2 (4)
このときCpとCppについてはシャフト18と軸受ホルダを形成するセラミックが、C1とC2については真空ギャップが誘電体として作用する。ホイートストンブリッジ回路では、4種のキャパシタンスの内、少なくとも1つのキャパシタンスを調整可能にすることによって、上記の式を実現する。調整可能とするために、例えば、C2は静電容量の調整機構を有する。この調整機構は、軸受19をシャフト18上に固定するセットカラー26によって構成される。
図13にセットカラー26の一例を示す。セットカラー26は軸受19固定するため、例えば止めネジによる固定機構を有する。または2分割され、シャフト18を挟み込むような構造でもよい。さらにセットカラー26は複数の電極面を有する。図11に示すように、セットカラー26は回転軸Ceに対して垂直方向に延びる複数の電極面が筐体21の溝と噛み合うことによって静電容量を形成する。また、この電極面の枚数を調整することによって、ホイートストンブリッジの調整可能なキャパシタンスとして作用する。この静電容量の調整は、電極面の一部に切欠きを設けることによって実現しても良い。このとき、回転時のアンバランスを抑制するため電極面の切欠きはシャフト18に対して軸対象が望ましい。また、電極面は図6に示すステータ電極2の電極面のように回転軸Ce方向に延びるものでもよい。
また、図14に斜視図として示すような形状のホルダキャップ27によって静電容量の調整を行うこともできる。図14に示すホルダキャップ27は、図11に示すように、ロータ電極3との間に複数の電極面を有する形状によって、ロータ電極3とホルダキャップ27の静電容量C1を調整することができる。また、セットカラー26とホルダキャップ27の電極面は共に回転軸Ceに対して垂直方向に延びるものでもよく、もしくは回転軸Ceに対して平行に延びるものでもよい。さらに、その両方を組み合わせても良い。さらに電極面の切欠きはセットカラー26とホルダキャップ27のどちらか一方、もしくはその両方にあっても良い。また、軸受ホルダ20の厚さやシャフト18の径を変更することによって、静電容量の調整を実現しても良い。
以上をまとめると、式(4)を満足するように、C1またはC2の少なくとも一方を調整できる構造とすれば良い。すなわち、軸受19の外輪192に接続され、ロータ電極3との間で静電容量C1を構成する第一金属部材27(図11の例ではホルダキャップ27)を設け、第一金属部材27とロータ電極3との対向面積・距離を調整することにより静電容量C1を調整する。または軸受19の内輪191に接続され、筐体21との間で静電容量C2を構成する第二金属部材26(図11の例ではセットカラー26)を設け、第二金属部材26と筐体21との対向面積・距離を調整することにより静電容量C2を調整する。C1に相当する静電容量は、第一金属部材27を設けなくても、軸受19の外輪192とロータ電極3の間でごくわずかであるが値を有する。同様に、C2に相当する静電容量は、第二金属部材26を設けなくても、軸受19の内輪191と筐体21の間でごくわずかであるが値を有する。従って、原理的には少なくとも第一金属部材27または第二金属部材26のいずれかを設けることで、式(4)を満足するようにできる。ただし、第一金属部材または第二金属部材の一方を設けない場合、設けない側の静電容量がごく小さい値となるため、式(4)を満足するためには、他方の金属部材により形成される静電容量をかなり大きくする必要がある。よって、第一金属部材27および第二金属部材26の両方の金属部材を設けるのが好ましい。
上記のようにホイートストンブリッジ回路を構成する軸受19周りの構造を調整することによって、流れる電流を0とすることができるため、軸受19に流れる電流の導通による損傷を抑制することができる。
なお、本発明は、その発明の範囲内において、各実施の形態を組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略したりすることが可能である。
1 Dee電極(ディー電極)、2 ステータ電極、3 ロータ電極、16 モータ、17 伝送線路、18 シャフト、19 軸受、191 内輪、192 外輪、20 軸受ホルダ、21 筐体、22 磁気カプラ、23 ステータ電極面、24 短絡コンデンサ、25 フランジ形状、26 第二金属部材(セットカラー)、27 第一金属部材(ホルダキャップ)、31 ロータ電極面、200 シンクロサイクロトロン(円形加速器)、300 回転コンデンサ
Claims (7)
- 荷電粒子を磁場により螺旋軌道に沿って周回させながら、ディー電極によって発生する高周波電界により加速する円形加速器において、
前記高周波電界を発生させる高周波電力を供給するための高周波整合回路の部材として、ステータ電極と、このステータ電極のステータ電極面との間で静電容量を形成するロータ電極面を有するロータ電極と、を備え、このロータ電極が回転することにより、前記静電容量が変化する回転コンデンサが、当該円形加速器を構成する筐体の内部に設けられ、
前記ロータ電極は、前記筐体の内部に固定された金属の軸受により回転可能に保持されるシャフトによって保持され、前記シャフトは軸方向の少なくとも一部の領域が直流を絶縁する絶縁材料で構成され、前記軸受と前記筐体との間に、少なくとも一部の領域が直流を絶縁する絶縁材料で形成された軸受ホルダが配置されていることを特徴とする円形加速器。 - 前記シャフトの一部が導電材料で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の円形加速器。
- 前記シャフトの前記絶縁材料の少なくとも一部の表面に導電材料が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の円形加速器。
- 前記軸受ホルダの少なくとも一部の表面に導電材料が形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の円形加速器。
- 前記シャフトは、前記ロータ電極に固定される部分が前記絶縁材料で形成されるとともに、前記ロータ電極に固定される近傍の外周形状が凸となる凸部、または凹となる凹部を有することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の円形加速器。
- 前記軸受は、前記シャフト側に配置された内輪と、前記軸受ホルダ側に配置された外輪とを備え、前記外輪に接続され、前記ロータ電極との間で静電容量を構成する第一金属部材が配置されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の円形加速器。
- 前記軸受は、前記シャフト側に配置された内輪と、前記軸受ホルダ側に配置された外輪とを備え、前記内輪に接続され、前記筐体との間で静電容量を構成する第二金属部材が配置されていることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の円形加速器。
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