JP2020094937A - 溝研削焼け検出方法および溝研削焼け検出装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】研削焼けの検出効率を向上させる。【解決手段】溝研削焼け検出方法は、車両用の変速機構の構成部品である固定プーリ91の軸部92に、砥石3による研削によって形成された溝94の研削焼けを、X線の照射によるマルテンサイト相の半価幅αの測定により検出する。溝研削焼け検出方法において、溝肩部94aにおける、砥石3の研削開始位置PsにX線を照射する。【選択図】図5
Description
本発明は、溝研削焼け検出方法および溝研削焼け検出装置に関する。
車両用のベルト式の無段変速機の固定プーリには、軸部の外周に球軸受のボールを支持する溝が設けられている。固定プーリの生産工程では、鍛造された固定プーリの熱処理後に、溝研削装置を用いて溝が研削加工される。
研削加工の際に溝の表面にマルテンサイトを主体とした組織が形成されるが、研削焼けが生じると組織中の残留オーステナイト量が減少し、溝が硬く脆くなって製品性能を発揮できなくなるおそれがある。溝の研削焼けを検出する方法の一つとして溝表面のマルテンサイト相にX線を照射し、回折したX線の強度を測定し、算出した半価幅を閾値と比較する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、X線の照射範囲は非常に狭い。軸方向の断面が半円状の溝の全域にX線を照射するには、X線照射装置を動かしながら照射する必要があり、研削焼けの検出に時間がかかる。
溝研削焼け検出方法および溝研削焼け検出装置において、研削焼けの検出効率を向上させることが求められる。
本発明の溝研削焼け検出方法は、
車両用の変速機構の構成部品である固定プーリの回転軸に、砥石による研削によって形成された溝の研削焼けを、X線の照射によるマルテンサイト相の半価幅の測定により検出する溝研削焼け検出方法であって、
前記溝の肩部における、前記砥石の研削開始位置に前記X線を照射する。
車両用の変速機構の構成部品である固定プーリの回転軸に、砥石による研削によって形成された溝の研削焼けを、X線の照射によるマルテンサイト相の半価幅の測定により検出する溝研削焼け検出方法であって、
前記溝の肩部における、前記砥石の研削開始位置に前記X線を照射する。
また、本発明の溝研削焼け検出装置は、
車両用の変速機構の構成部品である固定プーリの回転軸に、砥石による研削によって形成された溝の研削焼けを、X線の照射によるマルテンサイト相の半価幅の測定により検出する溝研削焼け検出装置であって、
前記溝の肩部における、前記砥石の研削開始位置に前記X線を照射する。
車両用の変速機構の構成部品である固定プーリの回転軸に、砥石による研削によって形成された溝の研削焼けを、X線の照射によるマルテンサイト相の半価幅の測定により検出する溝研削焼け検出装置であって、
前記溝の肩部における、前記砥石の研削開始位置に前記X線を照射する。
本発明によれば、研削焼けが発生しやすい個所にピンポイントでX線を照射するため、研削焼けの検出効率を向上させることができる。
以下、本発明の実施形態を説明する。
図1は、本実施形態にかかる溝研削装置1を説明する図である。
図1の(a)は、固定プーリ91の軸部92の外周に溝94を形成している途中の溝研削装置1を上方から見た図である。図1の(b)は、溝研削装置1を(a)における軸線Y方向から見た図である。
図1は、本実施形態にかかる溝研削装置1を説明する図である。
図1の(a)は、固定プーリ91の軸部92の外周に溝94を形成している途中の溝研削装置1を上方から見た図である。図1の(b)は、溝研削装置1を(a)における軸線Y方向から見た図である。
図2の(a)は、外周に溝94が研削加工された固定プーリ91を、溝94側から見た図である。図2の(b)は、(a)におけるA−A断面図である。
さらに、図2の(a)では、固定プーリ91の軸部92における可動プーリ95が外挿される領域を説明するために、可動プーリ95を仮想線で示している。
さらに、図2の(a)では、固定プーリ91の軸部92における可動プーリ95が外挿される領域を説明するために、可動プーリ95を仮想線で示している。
図1の(a)に示すように、固定プーリ91は、当該固定プーリ91の回転軸方向に沿う軸部92を有している。軸部92では、長手方向の一方の端部92a寄りの位置に、軸部92よりも外径が大きいフランジ部93を有している。
図2の(a)に示すように、軸部92では、長手方向の他方の端部92b側であって、フランジ部93よりも他方の端部92b側に、可動プーリ95が外挿される。
図2の(a)に示すように、軸部92では、長手方向の他方の端部92b側であって、フランジ部93よりも他方の端部92b側に、可動プーリ95が外挿される。
可動プーリ95は、軸部92に外挿された筒状部96と、筒状部96の一端から径方向外側に延びるフランジ部97と、を有している。
軸部92において可動プーリ95は、軸部92の長手方向に沿う軸線X回りの回転が規制された状態で、軸線X方向に移動可能に設けられる。固定プーリ91と可動プーリ95とで、ベルト式の無段変速機が備えるプーリ9を構成している。
軸部92において可動プーリ95は、軸部92の長手方向に沿う軸線X回りの回転が規制された状態で、軸線X方向に移動可能に設けられる。固定プーリ91と可動プーリ95とで、ベルト式の無段変速機が備えるプーリ9を構成している。
軸部92における可動プーリ95が外挿された領域の外周には、軸線Xに沿って溝94が形成されている。軸部92の、フランジ部93と他方の端部92bとの間には、大径部92cが形成されており、溝94はこの大径部92cに形成される。
図2の(b)に示すように、軸部92の周方向に等間隔で3つの溝94a、94b、94cが形成されているが、形成する溝の数は限定されない。以降の説明において、溝94a〜94cを特に区別せずに説明する場合は、単に溝94という。
溝94は、回転方向の荷重を受ける玉軸受構造を構成する玉軸受のボールを保持するために設けられる。
図2の(b)に示すように、軸部92の周方向に等間隔で3つの溝94a、94b、94cが形成されているが、形成する溝の数は限定されない。以降の説明において、溝94a〜94cを特に区別せずに説明する場合は、単に溝94という。
溝94は、回転方向の荷重を受ける玉軸受構造を構成する玉軸受のボールを保持するために設けられる。
溝94は、鍛造により作成された固定プーリ91の熱処理(浸炭処理)後に、溝研削装置1を用いて形成される。
図1の(a)に示すように、溝研削装置1は、支持軸2の先端2a側に固定されて、支持軸2と一体に回転する砥石3を有している。図1の(b)に示すように、砥石3は、円板形状を成している。砥石3の回転軸(軸線Y)方向から見て円形を成す砥石3の外周部は、研削粒から成る研削部31となっている。
図1の(a)、(b)に示すように、溝研削装置1は、固定プーリ91の軸部92の端部92a、92bを支持する一対の支持具(固定センタ61、テールセンタ62)を有している。
固定センタ61とテールセンタ62は、軸部92の端部92a、92bに開口する油穴(図示せず)に、軸線X方向からそれぞれ挿入される。
固定プーリ91は、固定センタ61とテールセンタ62の間でセンタリングされ、軸部92をクランプ爪63で把持(クランプ)することにより、軸線X回りの回転が拘束される。
固定センタ61とテールセンタ62は、軸部92の端部92a、92bに開口する油穴(図示せず)に、軸線X方向からそれぞれ挿入される。
固定プーリ91は、固定センタ61とテールセンタ62の間でセンタリングされ、軸部92をクランプ爪63で把持(クランプ)することにより、軸線X回りの回転が拘束される。
本実施形態では、固定センタ61とテールセンタ62は、共通の軸線X上で対向配置されており、固定プーリ91が固定センタ61とテールセンタ62で把持されると、軸部92の長手方向に沿う中心線(軸線X)が、砥石3の回転軸(軸線Y)に直交する向きで配置される。
図1の(a)に示すように、砥石3は、支持軸2の先端2aに締結されたロックナット21により、支持軸2からの脱落が規制されている。
砥石3は、支持軸2に対して着脱自在である。砥石3の外周の研削部31が摩耗した場合には、他の新しい砥石3に交換することや、ドレッサ(図示せず)によるドレス操作により研削部31の形状を再成形することができるようになっている。
砥石3は、支持軸2に対して着脱自在である。砥石3の外周の研削部31が摩耗した場合には、他の新しい砥石3に交換することや、ドレッサ(図示せず)によるドレス操作により研削部31の形状を再成形することができるようになっている。
支持軸2は、軸線Xに直交する向きで設けられており、軸線Xから離れる方向に直線状に延びている。支持軸2の基端2bは、溝研削装置1の本体ケース4内で、モータMに回転伝達可能に連結されている。支持軸2は、長手方向の基端2bが片持ち支持されている。
溝研削装置1では、モータMが駆動されると支持軸2が軸線Y回りに回転し、支持軸2の先端2a側に装着された砥石3が、軸線Y回りに回転する。
溝研削装置1には、支持軸2を軸線X、Y、Z方向に移動させる移動機構(図示せず)が設けられている。
溝研削装置1には、支持軸2を軸線X、Y、Z方向に移動させる移動機構(図示せず)が設けられている。
溝研削装置1では、固定プーリ91の軸部92の外周に溝94を形成する際に、支持軸2(砥石3)を軸線Y回りに回転させた状態で、支持軸2(砥石3)を軸線X方向に変位させる。この際に、溝研削装置1は、研削により生じた切粉を、支持軸2の移動方向とは反対側に送り出す方向に砥石3を回転させる。
この方向に砥石3を回転させながら溝94の研削を行うことを、ダウンカットという。
この方向に砥石3を回転させながら溝94の研削を行うことを、ダウンカットという。
溝94の研削加工は、以下の手順にて実施される。
(1)図1の(b)における反時計回り方向に砥石3を回転させた状態で、支持軸2(砥石3)を軸線Y方向に移動させて、砥石3の中心線と、軸部92の中心線(軸線X)とを一致させる。
(2)砥石3を反時計回り方向に回転させた状態で、支持軸2(砥石3)を軸線Z方向に移動させて初期位置に配置する(図1の(b)、仮想線で示す砥石3の位置)。初期位置において、砥石3は軸部92の大径部92cよりも端部92b側の外周上に位置しており、軸部92には接触していない状態である。
(3)支持軸2(砥石3)を軸線X方向に移動させる。具体的には、砥石3を、軸部92の他方の端部92b側から一方の端部92a側(フランジ部93側)に移動させる。反時計回り方向に回転しながら軸線X方向に移動する砥石3が、軸部92の大径部92cに接触することで、軸部92の研削が開始される。
砥石3が溝94の研削終了位置の手前の所定位置に到達するまで、支持軸2(砥石3)の軸線Z方向の位置を保持し、所定位置に到達した後は、研削終了位置に向かうにつれて、支持軸2(砥石3)を、軸線Z方向における軸部92から離れる方向に移動させる。
(1)図1の(b)における反時計回り方向に砥石3を回転させた状態で、支持軸2(砥石3)を軸線Y方向に移動させて、砥石3の中心線と、軸部92の中心線(軸線X)とを一致させる。
(2)砥石3を反時計回り方向に回転させた状態で、支持軸2(砥石3)を軸線Z方向に移動させて初期位置に配置する(図1の(b)、仮想線で示す砥石3の位置)。初期位置において、砥石3は軸部92の大径部92cよりも端部92b側の外周上に位置しており、軸部92には接触していない状態である。
(3)支持軸2(砥石3)を軸線X方向に移動させる。具体的には、砥石3を、軸部92の他方の端部92b側から一方の端部92a側(フランジ部93側)に移動させる。反時計回り方向に回転しながら軸線X方向に移動する砥石3が、軸部92の大径部92cに接触することで、軸部92の研削が開始される。
砥石3が溝94の研削終了位置の手前の所定位置に到達するまで、支持軸2(砥石3)の軸線Z方向の位置を保持し、所定位置に到達した後は、研削終了位置に向かうにつれて、支持軸2(砥石3)を、軸線Z方向における軸部92から離れる方向に移動させる。
なお、軸部92の大径部92cの外周には、最終的に溝94を形成する領域に、熱処理前に切削加工された荒加工溝940(図2の(a)参照)が形成されている。溝94を形成する際には、砥石3が、この荒加工溝940に沿って移動しつつ、荒加工溝940の周囲を研削することで、最終的に溝94が形成される。
図1の(a)および(b)に示すように、溝研削装置1は、潤滑用のオイル(クーラントOL)の供給ヘッド5を有している。
図1の(b)に示すように、供給ヘッド5は、支持軸2とフランジ部93との間に配置されている。供給ヘッド5は、溝94を形成する際に、支持軸2(砥石3)の軸線X方向の移動に先行して、軸線X方向に移動する。
図1の(b)に示すように、供給ヘッド5は、支持軸2とフランジ部93との間に配置されている。供給ヘッド5は、溝94を形成する際に、支持軸2(砥石3)の軸線X方向の移動に先行して、軸線X方向に移動する。
供給ヘッド5は、図1の(b)において仮想線で示すクーラント供給部8の下部に固定されている。供給ヘッド5は、クーラント供給部8側から供給されたクーラントOLを吐出する吐出ノズルNを有している。
供給ヘッド5は、軸部92の外周に溝94を研削する際に、軸部92における砥石3で研削される領域にクーラントOL(オイル)を供給して、砥石3で研削される領域の潤滑と冷却、そして、溝94の周囲への研削焼けの発生を抑制するために設けられている。
吐出ノズルNは、砥石3を間に挟みこんで、モータM側と先端2a側の両方に設けられている。吐出ノズルNは、供給ヘッド5の移動に伴って砥石3に先行する形で移動し、荒加工溝940に対してクーラントOLを供給する。
供給ヘッド5は、軸部92の外周に溝94を研削する際に、軸部92における砥石3で研削される領域にクーラントOL(オイル)を供給して、砥石3で研削される領域の潤滑と冷却、そして、溝94の周囲への研削焼けの発生を抑制するために設けられている。
吐出ノズルNは、砥石3を間に挟みこんで、モータM側と先端2a側の両方に設けられている。吐出ノズルNは、供給ヘッド5の移動に伴って砥石3に先行する形で移動し、荒加工溝940に対してクーラントOLを供給する。
ここで、図1に示す溝研削装置1を用いて、固定プーリ91に溝94を研削して形成すると、溝94の縁に沿って研削焼けが発生することがある。
研削によって溝94の表面にはマルテンサイトを主体とした組織が形成されるが、研削焼けが生じると、マルテンサイト相の残留オーステナイト量が減少する。残留オーステナイト量が減少すると、溝94の部分が硬く脆くなって固定プーリ91の製品性能を発揮できなくなるおそれがあるため、残留オーステナイト量は30〜50%程度に維持することが望ましい。実施の形態では、溝94へのX線照射により溝94表面のマルテンサイト相の回折X線強度を測定して半価幅を算出し、半価幅と硬度との相関性から求めた閾値THと算出した半価幅を比較することで、研削焼けを検出する。
研削によって溝94の表面にはマルテンサイトを主体とした組織が形成されるが、研削焼けが生じると、マルテンサイト相の残留オーステナイト量が減少する。残留オーステナイト量が減少すると、溝94の部分が硬く脆くなって固定プーリ91の製品性能を発揮できなくなるおそれがあるため、残留オーステナイト量は30〜50%程度に維持することが望ましい。実施の形態では、溝94へのX線照射により溝94表面のマルテンサイト相の回折X線強度を測定して半価幅を算出し、半価幅と硬度との相関性から求めた閾値THと算出した半価幅を比較することで、研削焼けを検出する。
図3は、溝研削焼け検出装置100の構成を示すブロック図である。
図4は、X線の照射と回線X線の検出の態様を説明する図である。図4では、説明の便宜上、溝94の表面を平面で示している。
図3に示すように、溝研削焼け検出装置100は、X線照射部110、X線検出部120および制御部130を有する。
図4に示すように、X線照射部110はX線源等で構成され、固定プーリ91の溝94にX線を照射する。X線検出部120はX線検出器等で構成され、溝94からの回折X線を検出して、回折X線強度を測定する。X線照射部110で溝94に照射しながら、X線検出器を溝94との距離が等しい円周上を所定角度移動させることで、回折面で回折した回折X線の強度を、上記円周上の各点で測定する。
なお、図4において、ψはX線の入射光軸が溝94の表面の法線Zと成す角度を表し、ηは入射光軸と回折面の法線が成す角度であり、かつ出射光軸と回折面の法線が成す角度である。
図4は、X線の照射と回線X線の検出の態様を説明する図である。図4では、説明の便宜上、溝94の表面を平面で示している。
図3に示すように、溝研削焼け検出装置100は、X線照射部110、X線検出部120および制御部130を有する。
図4に示すように、X線照射部110はX線源等で構成され、固定プーリ91の溝94にX線を照射する。X線検出部120はX線検出器等で構成され、溝94からの回折X線を検出して、回折X線強度を測定する。X線照射部110で溝94に照射しながら、X線検出器を溝94との距離が等しい円周上を所定角度移動させることで、回折面で回折した回折X線の強度を、上記円周上の各点で測定する。
なお、図4において、ψはX線の入射光軸が溝94の表面の法線Zと成す角度を表し、ηは入射光軸と回折面の法線が成す角度であり、かつ出射光軸と回折面の法線が成す角度である。
実施の形態において、X線照射部110は溝94の全域ではなく、研削焼けが発生しやすい個所にピンポイントでX線を照射する。
以下、溝94を研削する際の砥石3の移動と研削焼けの発生の関係について説明する。
図5は、溝94の拡大図であり、X線を照射するポイントを示した図である。
図5に示すように、溝94の図中右端側が、砥石3が研削を開始した軸線X方向位置(以降、「研削開始位置Ps」という)であり、図中左端側が砥石3が研削を終了した軸線X方向位置(以降、「研削終了位置Pe」という)である。研削開始位置Psから研削終了位置Peまでの間が砥石3の軸線X方向の移動範囲Rであり、この軸線X方向の移動範囲Rの中央位置を「研削中央位置Pc」という。
図6の(a)は砥石3の研削開始位置Psから研削終了位置Peまでの移動を軸線Y方向から見た図であり、図6の(b)は、研削開始位置Ps、研削中央位置Pc、研削終了位置Peにおける砥石3と軸部92の接触を軸線X方向から見た図である。
以下、溝94を研削する際の砥石3の移動と研削焼けの発生の関係について説明する。
図5は、溝94の拡大図であり、X線を照射するポイントを示した図である。
図5に示すように、溝94の図中右端側が、砥石3が研削を開始した軸線X方向位置(以降、「研削開始位置Ps」という)であり、図中左端側が砥石3が研削を終了した軸線X方向位置(以降、「研削終了位置Pe」という)である。研削開始位置Psから研削終了位置Peまでの間が砥石3の軸線X方向の移動範囲Rであり、この軸線X方向の移動範囲Rの中央位置を「研削中央位置Pc」という。
図6の(a)は砥石3の研削開始位置Psから研削終了位置Peまでの移動を軸線Y方向から見た図であり、図6の(b)は、研削開始位置Ps、研削中央位置Pc、研削終了位置Peにおける砥石3と軸部92の接触を軸線X方向から見た図である。
本件発明者らが鋭意研究した結果、砥石3の移動によって研削される溝94において、研削焼けの発生には、以下のような傾向がある。
(イ)研削開始位置Ps
図6の(a)に示すように、砥石3を反時計回り方向に回転させた状態で、支持軸2(砥石3)を初期位置から軸線X方向に移動させ、研削開始位置Psで砥石3の研削部31が軸部92の大径部92cに接触することで、溝94の研削が開始される。研削開始位置PSにおいて、砥石3は空転状態から負荷がかかる状態に切り替わり、静止摩擦から動摩擦に遷移する。そのため、研削開始位置Psにおいて軸部92の表面には最大摩擦力がかかるため、溝94に研削焼けが発生しやすくなる。また、図6の(b)に示すように、研削開始位置PSは研削される溝94がまだ浅く、軸線Y方向両端の溝肩部94a、94bが高い位置にあるため、吐出ノズルNから供給されるクーラントOLが荒加工溝940に入り込みにくく、これも研削焼けの発生しやすい要因となる。
(イ)研削開始位置Ps
図6の(a)に示すように、砥石3を反時計回り方向に回転させた状態で、支持軸2(砥石3)を初期位置から軸線X方向に移動させ、研削開始位置Psで砥石3の研削部31が軸部92の大径部92cに接触することで、溝94の研削が開始される。研削開始位置PSにおいて、砥石3は空転状態から負荷がかかる状態に切り替わり、静止摩擦から動摩擦に遷移する。そのため、研削開始位置Psにおいて軸部92の表面には最大摩擦力がかかるため、溝94に研削焼けが発生しやすくなる。また、図6の(b)に示すように、研削開始位置PSは研削される溝94がまだ浅く、軸線Y方向両端の溝肩部94a、94bが高い位置にあるため、吐出ノズルNから供給されるクーラントOLが荒加工溝940に入り込みにくく、これも研削焼けの発生しやすい要因となる。
(ロ)支持軸2の先端2a側の溝肩部94a、94b
前記したように、軸部92には荒加工溝940が予め形成されている。
図6の(b)に示すように、砥石3は荒加工溝940の軸線Y方向両端の溝肩部94a、94bに最初に接触して、両端の溝肩部94a、94bを、それぞれ荒加工溝940の軸線Y方向外方に押し広げるように研削して溝94を形成する。
前記したように、軸部92には荒加工溝940が予め形成されている。
図6の(b)に示すように、砥石3は荒加工溝940の軸線Y方向両端の溝肩部94a、94bに最初に接触して、両端の溝肩部94a、94bを、それぞれ荒加工溝940の軸線Y方向外方に押し広げるように研削して溝94を形成する。
そのため、砥石3による軸部92の研削量は溝肩部94a、94bが最も多くなる。研削量が多ければ研削抵抗が高くなり、研削焼け発生しやすい。また、溝肩部94a、94bは研削部31と接触する時間も長くなるため、吐出ノズルNから供給されるクーラントOLが入り込みにくくなり、冷却効果が得られにくいため、これも研削焼けが発生する要因となる。
さらに、軸線Y方向の両端にある溝肩部94a、94bのうち、支持軸2のモータM側の溝肩部94bよりも先端2a側に位置する溝肩部94aの方が、研削焼けは発生しやすい。これは、溝94を研削加工する際に生じる研削抵抗(研削荷重)の影響により、砥石3を支持する支持軸2が、モータM内の軸受部(図示せず)を起点に軸線Yに対して傾く、または支持軸2が先端2a側に撓むことが原因である。
図7の(a)は、支持軸2が、軸線Yに対して所定角度θ傾いた場合を示す図であり、図7の(b)は、支持軸2が所定角度θ傾いた場合の砥石3と軸部92の接触領域を示す図である。
前記したように、本実施形態にかかる溝研削装置1では、先端2a側に砥石3が取り付けられた支持軸2は、基端2b側が片持ち支持されている(図1の(a)参照)。
軸線Y回りに砥石3を回転させながら支持軸2を移動させて溝94を研削形成する際には、研削抵抗が支持軸2の先端2a側に作用する。
そうすると、支持軸2は、砥石3が設けられた先端2a側が、モータMに連結された基端2b側よりも遅れて、支持軸2の送り方向(図7の(a)中、白抜き矢印参照)に移動する傾向がある。
軸線Y回りに砥石3を回転させながら支持軸2を移動させて溝94を研削形成する際には、研削抵抗が支持軸2の先端2a側に作用する。
そうすると、支持軸2は、砥石3が設けられた先端2a側が、モータMに連結された基端2b側よりも遅れて、支持軸2の送り方向(図7の(a)中、白抜き矢印参照)に移動する傾向がある。
かかる場合、支持軸2の先端2a側は、軸線Yに対して所定角度θ傾いた状態で、荒加工溝940を研削することになる。そうすると、図7の(b)に示すように、荒加工溝940における砥石3の研削部31との接触領域Rsは、軸線Xを挟んでモータM側よりも先端2a側の方が、面積が広くなる。支持軸2が先端2a側に撓んだ場合も同様に、モータM側よりも先端2a側の方が、接触領域Rsの面積が広くなる傾向がある。
研削部31と軸部92の接触領域Rsの面積が広くなると、吐出ノズルNから供給されるクーラントOLが入り込みにくくなり冷却効果が得られにくいため、研削焼けが発生する要因となる。従って、支持軸2の先端2a側に位置する溝肩部94aが、モータM側の溝肩部94bよりも研削焼けが発生しやすい。
図5に戻り、ポイントP1は、支持軸2の先端2a側の溝肩部94aの研削開始位置Psである。すなわち、ポイントP1は前記(イ)および(ロ)に示した研削焼けの発生しやすい要因が重なるポイントであるため、ポイントP1をX線照射位置の一つとする。
(ハ)溝94の軸線Y方向の中央位置
図6の(b)に示すように、吐出ノズルNは、軸線Y方向の両端側から荒加工溝940に向かってクーラントOLを供給する。そのため、溝94の軸線Y方向の中心位置(図中、軸線Xが通る位置)にはクーラントOLが入りにくく、研削焼けが発生しやすい。
図6の(b)に示すように、吐出ノズルNは、軸線Y方向の両端側から荒加工溝940に向かってクーラントOLを供給する。そのため、溝94の軸線Y方向の中心位置(図中、軸線Xが通る位置)にはクーラントOLが入りにくく、研削焼けが発生しやすい。
(ニ)砥石3の研削中央位置Pc
図6の(a)に示すように、砥石3は、軸線X方向に移動しながら研削を行う。図6の(b)に示すように、砥石3が軸部92に接触して研削を開始する研削開始位置Psでは、溝94はまだ浅い状態であるが、砥石3が軸線X方向に移動していくに従って溝94は掘り下げられ、砥石3は軸線Z方向の位置Hまで下降した状態で研削中央位置Pcを通過する。
そして、前記したように、砥石3は研削終了位置Peの手前の所定位置で軸線Z方向の上昇を開始して、研削終了位置Peにおいて軸部92から離れる。
図6の(a)に示すように、砥石3は、軸線X方向に移動しながら研削を行う。図6の(b)に示すように、砥石3が軸部92に接触して研削を開始する研削開始位置Psでは、溝94はまだ浅い状態であるが、砥石3が軸線X方向に移動していくに従って溝94は掘り下げられ、砥石3は軸線Z方向の位置Hまで下降した状態で研削中央位置Pcを通過する。
そして、前記したように、砥石3は研削終了位置Peの手前の所定位置で軸線Z方向の上昇を開始して、研削終了位置Peにおいて軸部92から離れる。
そのため、研削中央位置Pcにおける研削部31と軸部92の接触領域Rsの面積は、研削開始位置Psおよび研削終了位置Peにおける接触領域Rsの面積よりも広くなる。研削部31と軸部92の接触領域Rsの面積が広くなると、吐出ノズルNから供給されるクーラントOLが入り込みにくくなり冷却効果が得られにくいため、研削焼けが発生する要因となる。
図5に戻り、ポイントP2は、溝94の軸線Y方向の中央位置であり、かつ砥石3の研削中央位置Pcである。ポイントP1と同様にポイントP2は、前記(ハ)および(ニ)に示した研削焼けが発生しやすい要因が重なるポイントであるため、ポイントP2もX線照射位置の一つとする。
さらに、ポイントP3は支持軸2の先端2a側の溝肩部94aの研削中央位置Pcであり、前記(ロ)および(ニ)に示した研削焼けが発生しやすい要因が重なるポイントであるため、ポイントP3もX線照射位置の一つとする。
実施の形態において、X線照射部110は、前記のポイントP1〜P3に対して、ピンポイントでX線を照射する。なお、ポイントP1〜P3への位置合わせは、手作業で行っても良く、あるいは各ポイントP1〜P3に対応する照射位置の座標を予め決定しておき、不図示の駆動機構によりX線源を各照射位置に移動させても良い。
図3に戻り、制御部130は、例えば、CPU等のプロセッサとメモリを備えた汎用のコンピュータにより構成することができる。メモリに格納したプログラムをプロセッサが実行することにより、制御部130の機能を実現する。メモリには、後述する制御部130および判定部131の処理に必要な閾値等のデータも格納される。
制御部130は、溝研削焼け検出装置100の統括的な制御を行う。詳細は省略するが、制御部130は、例えば、X線照射部110およびX線検出部120との信号の入出力およびパラメータ設定等の制御を行う。制御部130は、またX線検出部120が測定した回線X線強度に基づいて、研削焼けを判定する判定部131を備える。
判定部131は、X線検出部120が回折X線強度を測定した各ポイントP1〜P3について、出射X線の光軸と回折X線の光軸が成す角度である一般的な意味の回折角2θ(図4参照)に対して回折X線のX線強度分布を求めて、回折角2θに対するX線強度分布の半価幅を求める。
図8は、X線検出部120が測定したX線の回折角2θに対する強度分布の一例を示すグラフである。
図8に示すように、X線強度のピーク値から半分の値であるX1、X2になるまでの幅、すなわちX線の回折角2θに対する強度分布の半価幅がαになる。この半価幅αは、溝94の表面に形成されたマルテンサイト相の半価幅であるが、研削焼けによってマルテンサイト相の残留オーステナイト量が減少するほど半価幅αが大きくなる。
実施の形態において、判定部131は、各ポイントP1〜P3で算出した半価幅αの値と閾値THを比較して、溝94に研削焼けが発生していると判定する。閾値THは、溝94の表面の残留オーステナイト量の減少が、製品性能に影響を与える程度であることを示す値である。
図8に示すように、X線強度のピーク値から半分の値であるX1、X2になるまでの幅、すなわちX線の回折角2θに対する強度分布の半価幅がαになる。この半価幅αは、溝94の表面に形成されたマルテンサイト相の半価幅であるが、研削焼けによってマルテンサイト相の残留オーステナイト量が減少するほど半価幅αが大きくなる。
実施の形態において、判定部131は、各ポイントP1〜P3で算出した半価幅αの値と閾値THを比較して、溝94に研削焼けが発生していると判定する。閾値THは、溝94の表面の残留オーステナイト量の減少が、製品性能に影響を与える程度であることを示す値である。
この閾値THは事前に試験を行って決定し、メモリに格納する。
図9は、閾値THを決定する試験を説明する図である。
実施の形態において、閾値THは、ポイントP1〜P3の回折X線強度の半価幅αと硬度の相関関係に基づいて決定する。
図9の(a)に示すように、固定プーリ91の溝94の、軸線X方向に位置をずらした任意の2点Pa、Pbに対して、前記したX線照射部110とX線検出部120により、X線照射と回折X線の検出を行い、回折X線強度の半価幅αを求める。実施の形態では軸部92の大径部92cの周方向等間隔に3つの溝94a、94b、94cが形成されているが(図2の(b)参照)、溝94a、94b、94cのそれぞれに対して2点Pa、Pbの回線X線強度の測定を行う。
図9は、閾値THを決定する試験を説明する図である。
実施の形態において、閾値THは、ポイントP1〜P3の回折X線強度の半価幅αと硬度の相関関係に基づいて決定する。
図9の(a)に示すように、固定プーリ91の溝94の、軸線X方向に位置をずらした任意の2点Pa、Pbに対して、前記したX線照射部110とX線検出部120により、X線照射と回折X線の検出を行い、回折X線強度の半価幅αを求める。実施の形態では軸部92の大径部92cの周方向等間隔に3つの溝94a、94b、94cが形成されているが(図2の(b)参照)、溝94a、94b、94cのそれぞれに対して2点Pa、Pbの回線X線強度の測定を行う。
その後、溝94a、94b、94cの点Pa、点Pbそれぞれを通る軸線Y方向に平行な線に沿って固定プーリ91の軸部92を2箇所で切断し、各溝94a、94b、94cの2点Pa、Pbの切断面の硬度測定試験を行う。硬度測定試験は、例えば、JIS Z 2245に示される「ロックウエル硬さ試験方法」に準じて行う。ロックウエル硬さ試験方法では、圧子を用いて切断面を基準荷重と試験荷重の2段階で押し込んだ後に、基準荷重に戻して切断面のくぼみの深さを測定し、所定式からロックウエル硬度(HRC)を求める。
図9の(b)は、3つの溝94a、94b、94cの2点Pa、Pbについてのロックウエル硬度測定試験の試験結果を示したものであり、図9の(c)は、2点Pa、Pbそれぞれの硬度測定結果と半価幅測定結果の相関関係を示すグラフである。
溝94の表面のマルテンサイト相の残留オーステナイト量が減少するとマルテンサイトの量が増えるため、ロックウエル硬度も上昇する。ここでは、一例として、HRC58以上になると、残留オーステナイト量が減少して研削焼けが生じていると判定する。図9の(b)に示した試験結果では、溝94aの2点Pa、Pbおいて研削焼けが発生していると判定される。
図9の(c)に示すように、ロックウエル硬度の増減と半価幅αの増減には相関性がある。したがって、この実験結果からは、HRC58に対応する半価幅αの値を、閾値THと決定することができる。
溝94の表面のマルテンサイト相の残留オーステナイト量が減少するとマルテンサイトの量が増えるため、ロックウエル硬度も上昇する。ここでは、一例として、HRC58以上になると、残留オーステナイト量が減少して研削焼けが生じていると判定する。図9の(b)に示した試験結果では、溝94aの2点Pa、Pbおいて研削焼けが発生していると判定される。
図9の(c)に示すように、ロックウエル硬度の増減と半価幅αの増減には相関性がある。したがって、この実験結果からは、HRC58に対応する半価幅αの値を、閾値THと決定することができる。
図3に戻り、判定部131は、算出した半価幅αが閾値TH以上の場合に、研削焼けが発生していると判定する。
なお、図示は省略するが、溝研削焼け検出装置100は、判定部131の判定結果を表示する表示装置等を備えても良い。
なお、図示は省略するが、溝研削焼け検出装置100は、判定部131の判定結果を表示する表示装置等を備えても良い。
判定部131において、研削焼けと判定された場合は、研削焼けが判定されたポイントに応じて、研削焼けを防ぐための対処を行うことができる。例えば、ポイントP1で研削焼けが判定された場合には、研削開始位置Psにかかる最大静止摩擦力が大きいことが考えられるので、砥石3の送り速度を低減することが考えられる。さらに、砥石3が傾いて支持軸2の先端2a側に研削焼けが発生している可能性も考えられるので、支持軸2の砥石3の保持位置を調整することができる。
また、例えば、ポイントP2において研削焼けが判定された場合は、クーラントOLが十分に供給されず冷却効果が得られていないことが考えられるので、クーラントOLの流量を調整することができる。また、例えばポイントP3において研削焼けが判定された場合は、砥石3が傾いて支持軸2の先端2a側に研削焼けが発生している可能性も考えられるので、支持軸2の砥石3の保持位置を調整することができる。また、クーラントOLが十分に供給されていない可能性もあるので、クーラントOLの流量を調整することができる。
図10は、溝研削焼け検出装置100の処理を示すフローチャートである。
X線照射部110が、溝94にX線を照射する(ステップS01)。
X線検出部120が、回折X線を検出し、回折X線強度を測定する(ステップS02)。
判定部131は、X線検出部120が測定した回折X線強度の強度分布から半価幅αを求め、閾値THと比較する(ステップS03)。
判定部131は、半価幅αが閾値TH以上であれば(ステップS03:Yes)、判定部131は研削焼けが発生していると判定し(ステップS04)、半価幅αが閾値TH未満であれば(ステップS03:No)、判定部131は研削焼けを判定せずに処理を終了する。
ステップS01〜S04の処理は、溝94a、94b、94cのそれぞれのポイントP1〜P3について行う。
X線照射部110が、溝94にX線を照射する(ステップS01)。
X線検出部120が、回折X線を検出し、回折X線強度を測定する(ステップS02)。
判定部131は、X線検出部120が測定した回折X線強度の強度分布から半価幅αを求め、閾値THと比較する(ステップS03)。
判定部131は、半価幅αが閾値TH以上であれば(ステップS03:Yes)、判定部131は研削焼けが発生していると判定し(ステップS04)、半価幅αが閾値TH未満であれば(ステップS03:No)、判定部131は研削焼けを判定せずに処理を終了する。
ステップS01〜S04の処理は、溝94a、94b、94cのそれぞれのポイントP1〜P3について行う。
以上の通り、実施の形態の溝研削焼け検出方法は、
(1)車両用の変速機構の構成部品である固定プーリ91の軸部92(回転軸)に、砥石3による研削によって形成された溝94の研削焼けを、X線の照射によるマルテンサイト相の半価幅αの測定により検出する溝研削焼け検出方法であって、
溝肩部94a(溝94の肩部)における、砥石3の研削開始位置PsにX線を照射する。
(1)車両用の変速機構の構成部品である固定プーリ91の軸部92(回転軸)に、砥石3による研削によって形成された溝94の研削焼けを、X線の照射によるマルテンサイト相の半価幅αの測定により検出する溝研削焼け検出方法であって、
溝肩部94a(溝94の肩部)における、砥石3の研削開始位置PsにX線を照射する。
固定プーリ91の溝94の全域にX線を照射してマルテンサイト相の半価幅αを測定すると時間がかかるが、研削焼けの発生しやすい研削開始位置PsにピンポイントでX線を照射することで、研削焼けの検出効率を向上させることができる。
(2)溝94は溝研削装置1によって研削されるものであり、
溝研削装置1は、固定プーリ91の回転軸に直交する軸線Yに沿う向きで配置され、先端2a側に砥石3を支持する支持軸2を備え、砥石3を支持軸2の軸線Y回りに回転させながら支持軸2を軸線X方向(回転軸方向)に移動させることで、砥石3により固定プーリ91の回転軸に沿った軸線X方向に延びる軸部92の外周を研削して溝94を形成するものであり、
溝研削焼け検出方法において、支持軸2の先端2a側の溝肩部94aにおける、砥石3の研削開始位置PsであるポイントP1に、X線を照射する。
溝研削装置1は、固定プーリ91の回転軸に直交する軸線Yに沿う向きで配置され、先端2a側に砥石3を支持する支持軸2を備え、砥石3を支持軸2の軸線Y回りに回転させながら支持軸2を軸線X方向(回転軸方向)に移動させることで、砥石3により固定プーリ91の回転軸に沿った軸線X方向に延びる軸部92の外周を研削して溝94を形成するものであり、
溝研削焼け検出方法において、支持軸2の先端2a側の溝肩部94aにおける、砥石3の研削開始位置PsであるポイントP1に、X線を照射する。
溝94を研削する砥石3を、支持軸2により片持ち支持する溝研削装置1の場合、砥石3が傾いたり支持軸2が撓んだりすることによって、支持軸2の先端2a側の溝肩部94aに、特に研削焼けが発生しやすい。支持軸2の先端2a側の溝肩部94aの研削開始位置PsであるポイントP1にピンポイントでX線を照射することで、研削焼けの検出効率を向上させることができる。
(3)溝研削装置1は、軸線Y方向における砥石3の両側に設けられ、支持軸2の軸線X方向の移動に追従し、溝94に向けてクーラントOLを吐出する吐出ノズルN(ノズル)を備え、
溝研削焼け検出方法において、溝94における、砥石3の研削中央位置Pc(回転軸方向の移動範囲Rの中央位置)でありかつ回転軸に直交する軸線Y方向の中央位置であるポイントP2にX線を照射する。
溝研削焼け検出方法において、溝94における、砥石3の研削中央位置Pc(回転軸方向の移動範囲Rの中央位置)でありかつ回転軸に直交する軸線Y方向の中央位置であるポイントP2にX線を照射する。
ポイントP2は、砥石3の研削中央位置Pcであるため、砥石3と軸部92の接触領域Rsの面積が大きくなり、クーラントOLが入りにくいため研削焼けが発生しやすい。また、ポイントP2は軸線Y方向の中央位置でもあるため、クーラントOLが入りにくく、研削焼けが発生しやすい。このポイントP2にピンポイントでX線を照射することで、研削焼けの検出効率を向上させることができる。
(4)溝研削装置1は、軸線Y方向における砥石3の両側に設けられ、支持軸2の軸線X方向の移動に追従し、溝94に向けてクーラントOLを吐出する吐出ノズルN(ノズル)を備え、
溝研削焼け検出方法において、支持軸2の先端2a側の溝肩部94aにおける、砥石3の軸線X方向の研削中央位置Pc(移動範囲Rの中央位置)であるポイントP3にX線を照射する。
溝研削焼け検出方法において、支持軸2の先端2a側の溝肩部94aにおける、砥石3の軸線X方向の研削中央位置Pc(移動範囲Rの中央位置)であるポイントP3にX線を照射する。
ポイントP3は支持軸2の先端2a側の溝肩部94aにあり、砥石3の傾きや支持軸2の撓みによって研削焼けが発生しやすい。また、ポイントP3は砥石3の軸線X方向の研削中央位置Pcであるため砥石3が接触する時間が長く、クーラントOLが入りにくいため研削焼けが発生しやすい。このポイントP3にピンポイントでX線を照射することで、研削焼けの検出効率を向上させることができる。
(5)溝研削焼け検出方法は、溝94に照射して回折したX線の強度を検出し、溝94で回折したX線の回折角2θに対する強度分布の半価幅αを求め、半価幅αを閾値THと比較して研削焼けを判定するものであり、
閾値THは、溝94の軸線X方向に位置をずらした2点Pa、PbにX線を照射して半価幅αの算出を行った後に、当該2点Pa、Pbにおいて軸部92を固定プーリ91の軸線Yに沿って切断し、当該2点Pa、Pbの硬度を測定し、当該2点Pa、Pbにおける半価幅αと硬度の相関関係に基づいて決定する。
閾値THは、溝94の軸線X方向に位置をずらした2点Pa、PbにX線を照射して半価幅αの算出を行った後に、当該2点Pa、Pbにおいて軸部92を固定プーリ91の軸線Yに沿って切断し、当該2点Pa、Pbの硬度を測定し、当該2点Pa、Pbにおける半価幅αと硬度の相関関係に基づいて決定する。
溝94を切断して硬度を測定することにより、研削焼けを検出することはできるが、切断した固定プーリ91は、研削焼けが発生していない場合にも不良品となってしまう。予め試験を行って切断して測定した硬度と、X線照射で測定した半価幅αの相関関係に基づいて研削焼けを判定する閾値THを決定しておけば、溝94を切断せずに研削焼けを検出することができ、非破壊検査の精度を向上させることができる。
前記した溝研削焼け方法を実施する実施の形態の溝研削焼け検出装置100も、同様の効果を得ることができる。
実施の形態では、図5に示した溝94のポイントP1、P2、P3の3個所にX線を照射する例を説明したが、これに限られず、研削焼けの発生傾向に応じてX線の照射個所は適宜増減可能である。ポイントP1、P2、P3のうち、1箇所または2箇所のみ照射しても良い。あるいは、支持軸2の先端2a側の溝肩部94aだけでなく、モータM側の溝肩部94bについても、研削開始位置Psや研削中央位置PcにX線を照射しても良い。
1 溝研削装置
2 支持軸
2a 先端
2b 基端
21 ロックナット
3 砥石
31 研削部
4 本体ケース
5 供給ヘッド
61 固定センタ(支持具)
62 テールセンタ(支持具)
63 クランプ爪(支持具)
8 クーラント供給部
9 プーリ
91 固定プーリ
92 軸部
92a、92b 端部
92c 大径部
93 フランジ部
94 溝
94a 溝肩部
94b 溝肩部
940 荒加工溝
95 可動プーリ
96 筒状部
97 フランジ部
100 溝研削焼け検出装置
110 X線照射部
120 X線検出部
130 制御部
131 判定部
Ps 研削開始位置
Pe 研削終了位置
Pc 研削中央位置
H 軸線Z方向の所定位置
M モータ
N 吐出ノズル
OL クーラント
R 軸線X方向の移動範囲
Rs 接触領域
X、Y、Z 軸線
2 支持軸
2a 先端
2b 基端
21 ロックナット
3 砥石
31 研削部
4 本体ケース
5 供給ヘッド
61 固定センタ(支持具)
62 テールセンタ(支持具)
63 クランプ爪(支持具)
8 クーラント供給部
9 プーリ
91 固定プーリ
92 軸部
92a、92b 端部
92c 大径部
93 フランジ部
94 溝
94a 溝肩部
94b 溝肩部
940 荒加工溝
95 可動プーリ
96 筒状部
97 フランジ部
100 溝研削焼け検出装置
110 X線照射部
120 X線検出部
130 制御部
131 判定部
Ps 研削開始位置
Pe 研削終了位置
Pc 研削中央位置
H 軸線Z方向の所定位置
M モータ
N 吐出ノズル
OL クーラント
R 軸線X方向の移動範囲
Rs 接触領域
X、Y、Z 軸線
Claims (6)
- 車両用の変速機構の構成部品である固定プーリの回転軸に、砥石による研削によって形成された溝の研削焼けを、X線の照射によるマルテンサイト相の半価幅の測定により検出する溝研削焼け検出方法であって、
前記溝の肩部における、前記砥石の研削開始位置に前記X線を照射することを特徴とする溝研削焼け検出方法。 - 前記溝は溝研削装置によって研削されるものであり、
前記溝研削装置は、前記固定プーリの回転軸に直交する軸線に沿う向きで配置され、先端側に前記砥石を支持する支持軸を備え、前記砥石を支持軸の軸線回りに回転させながら前記支持軸を前記回転軸方向に移動させることで、前記砥石により前記固定プーリの回転軸に沿って延びる軸部の外周を研削して前記溝を形成するものであり、
前記支持軸の先端側の前記溝の肩部における、前記砥石の研削開始位置に、前記X線を照射することを特徴とする請求項1記載の溝研削焼け検出方法。 - 前記溝研削装置は、前記軸線方向における前記砥石の両側に設けられ、前記支持軸の前記回転軸方向の移動に追従し、前記溝に向けてクーラントを吐出するノズルを備え、
前記溝における、前記砥石の前記回転軸方向の移動範囲の中央位置でありかつ前記回転軸に直交する軸線方向の中央位置に前記X線を照射することを特徴とする請求項2に記載の研削焼け検出方法。 - 前記溝研削装置は、前記軸線方向における前記砥石の両側に設けられ、前記支持軸の前記回転軸方向の移動に追従し、前記溝に向けてクーラントを吐出するノズルを備え、
前記支持軸の先端側の前記溝の肩部における、前記砥石の前記回転軸方向の移動範囲の中央位置に前記X線を照射することを特徴とする請求項2に記載の溝研削焼け検出方法。 - 前記溝に照射して回折したX線の強度を検出し、前記溝で回折したX線の回折角に対する強度分布の半価幅を求め、前記半価幅を閾値と比較して研削焼けを判定し、
前記閾値は、前記溝の回転軸方向に位置をずらした2点にX線を照射して半価幅の算出を行った後に、当該2点において前記回転軸を前記固定プーリの回転軸に直交する軸線に沿って切断し、当該2点の硬度を測定し、当該2点における前記半価幅と前記硬度の相関関係に基づいて決定することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の溝研削焼け検出方法。 - 車両用の変速機構の構成部品である固定プーリの回転軸に、砥石による研削によって形成された溝の研削焼けを、X線の照射によるマルテンサイト相の半価幅の測定により検出する溝研削焼け検出装置であって、
前記溝の肩部における、前記砥石の研削開始位置に前記X線を照射することを特徴とする溝研削焼け検出装置。
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DE112021003044T5 (de) | 2020-05-29 | 2023-06-07 | Hamamatsu Photonics K.K. | Optische Vorrichtung und Lichtemissionsvorrichtung |
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DE112021003044T5 (de) | 2020-05-29 | 2023-06-07 | Hamamatsu Photonics K.K. | Optische Vorrichtung und Lichtemissionsvorrichtung |
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