[第1の実施の形態]
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。始めに、図1を参照して、本発明の第1の実施の形態に係る磁気センサ装置の概略の構成について説明する。本実施の形態に係る磁気センサ装置1は、外部磁界の、互いに直交する3方向の成分を検出する装置である。
図1に示したように、磁気センサ装置1は、プリント回路板2と複合チップ部品3とセンサチップ4とを備えている。プリント回路板2と複合チップ部品3とセンサチップ4は、いずれも直方体形状を有している。また、プリント回路板2と複合チップ部品3とセンサチップ4は、いずれも外面を有している。
プリント回路板2の外面は、互いに反対側に位置する上面2aおよび下面2bと、上面2aと下面2bを接続する4つの側面を含んでいる。複合チップ部品3の外面は、互いに反対側に位置する上面3aおよび下面3bと、上面3aと下面3bを接続する4つの側面を含んでいる。センサチップ4の外面は、互いに反対側に位置する上面4aおよび下面4bと、上面4aと下面4bを接続する4つの側面を含んでいる。
複合チップ部品3は、下面3bがプリント回路板2の上面2aに対向する姿勢で、上面2a上に実装されている。センサチップ4は、下面4bが複合チップ部品3の上面3aに対向する姿勢で、上面3a上に実装されている。
複合チップ部品3は、本発明における支持体に対応する。複合チップ部品3の上面3aは、本発明における基準平面に対応する。以下、複合チップ部品3の上面3aを、基準平面RPとも言う。
複合チップ部品3は、上面3aに設けられた端子群を備えている。センサチップ4は、上面4aに設けられた端子群を備えている。センサチップ4の端子群は、例えば複数のボンディングワイヤによって、複合チップ部品3の端子群に接続されている。
磁気センサ装置1は、更に、複合チップ部品3およびセンサチップ4の周囲を封止する封止部5を備えている。封止部5は、例えば樹脂によって構成されている。磁気センサ装置1は、電子部品パッケージの形態を有している。
後で詳しく説明するが、センサチップ4は、第1の磁気センサ10と、第2の磁気センサ20と、第3の磁気センサ30を含んでいる。センサチップ4が複合チップ部品3の上面3a上に実装されることによって、第1ないし第3の磁気センサ10,20,30は、複合チップ部品3と一体化する。また、複合チップ部品3の上面3aは、基準平面RPでもある。従って、第1ないし第3の磁気センサ10,20,30は、基準平面RP上に実装されているとも言える。
ここで、本実施の形態における基準座標系と第1ないし第3のセンサ座標系について説明する。基準座標系は、複合チップ部品3を基準にして設定された座標系である。第1ないし第3のセンサ座標系は、それぞれ第1ないし第3の磁気センサ10,20,30を基準にして設定された座標系である。以下、第1ないし第3のセンサ座標系を代表して、単にセンサ座標系と言う。基準座標系とセンサ座標系のいずれにおいても、以下のようにX方向、Y方向、Z方向が定義されている。
基準座標系におけるX方向、Y方向、Z方向は、互いに直交する。基準座標系におけるZ方向は、複合チップ部品3の上面3aに垂直な方向であって、複合チップ部品3の下面3bから上面3aに向かう方向である。基準座標系におけるX方向とY方向は、複合チップ部品3の上面3aに平行な方向である。
センサ座標系におけるX方向、Y方向、Z方向は、互いに直交する。センサ座標系におけるZ方向は、センサチップ4の上面4aに垂直な方向であって、センサチップ4の下面4bから上面4aに向かう方向である。センサ座標系におけるX方向とY方向は、センサチップ4の上面4aに平行な方向である。
また、基準座標系とセンサ座標系のいずれにおいても、X方向とは反対の方向を−X方向とし、Y方向とは反対の方向を−Y方向とし、Z方向とは反対の方向を−Z方向とする。以下、基準の位置に対してZ方向の先にある位置を「上方」と言い、基準の位置に対して「上方」とは反対側にある位置を「下方」と言う。また、磁気センサ装置1の構成要素に関して、Z方向の端に位置する面を「上面」と言い、−Z方向の端に位置する面を「下面」と言う。
磁気センサ装置1は、第1ないし第3のセンサ座標系が基準座標系と一致するように設計されている。しかし、複合チップ部品3に対するセンサチップ4のアライメントのずれや、第1ないし第3の磁気センサ10,20,30の相互の位置ずれ等によって、第1ないし第3のセンサ座標系のうちの少なくとも1つが基準座標系と一致しない場合が起こり得る。
以下、特段の断りが無い限り、複数の図に示したX方向、Y方向、Z方向は、基準座標系とセンサ座標系の両方に当てはまる。
図2は、図1に示した磁気センサ装置1の分解斜視図である。図2に示したように、磁気センサ装置1は、更に、第1の磁界発生器71と、第2の磁界発生器72と、第3の磁界発生器73とを備えている。第1ないし第3の磁界発生器71〜73は、複合チップ部品3と一体化されている。本実施の形態では特に、第1ないし第3の磁界発生器71〜73は、複合チップ部品3に含まれている。
複合チップ部品3は、更に、集積回路チップ70を含んでいる。集積回路チップ70は、第1ないし第3の磁気センサ10,20,30の検出信号に対して補正処理を施す補正処理回路と、第1ないし第3の磁界発生器71,72,73を制御する制御回路とを含んでいる。集積回路チップ70は、例えば特定用途向け集積回路(ASIC)によって構成されている。
第1の磁界発生器71は、第1の付加的磁界を発生可能である。第1の磁界発生器71は、基準座標系におけるX方向の互いに異なる位置に配置された第1のコイル71Aと第2のコイル71Bを含んでいる。
第2の磁界発生器72は、第2の付加的磁界を発生可能である。第2の磁界発生器72は、基準座標系におけるY方向の互いに異なる位置に配置された第3のコイル72Aと第4のコイル72Bを含んでいる。
第3の磁界発生器73は、第3の付加的磁界を発生可能である。第3の磁界発生器73は、第5のコイルによって構成されている。
図3は、複合チップ部品3およびセンサチップ4を示す平面図である。図3に示したように、センサチップ4は、前述の第1の磁気センサ10、第2の磁気センサ20および第3の磁気センサ30を含んでいる。
基準平面RPは、互いに異なる第1の領域A10と第2の領域A20と第3の領域A30を含んでいる。第1の領域A10は、基準平面RPに第1の磁気センサ10を垂直投影してできる領域である。第2の領域A20は、基準平面RPに第2の磁気センサ20を垂直投影してできる領域である。第3の領域A30は、基準平面RPに第3の磁気センサ30を垂直投影してできる領域である。
ここで、基準平面RP内に位置して、第3の領域A30の重心C30を通り、第3の方向(Z方向)に垂直で且つ互いに直交する2つの直線を第1の直線L1と第2の直線L2とする。第1の領域A10の少なくとも一部は第1の直線L1と交差する位置にあり、第2の領域A20の少なくとも一部は第2の直線L2と交差する位置にある。本実施の形態では特に、第1の直線L1は基準座標系におけるX方向に平行であり、第2の直線L2は基準座標系におけるY方向に平行である。
本実施の形態では特に、第1の磁気センサ10は、基準座標系におけるX方向の互いに異なる位置に配置された第1の部分11と第2の部分12を含んでいる。第1の領域A10は、基準平面RPに第1の磁気センサ10の第1の部分11を垂直投影してできる第1の部分領域A11と、基準平面RPに第1の磁気センサ10の第2の部分12を垂直投影してできる第2の部分領域A12を含んでいる。第1および第2の部分領域A11,A12は、第1の直線L1に平行な方向における第3の領域A30の両側に位置している。
また、第2の磁気センサ20は、基準座標系におけるY方向の互いに異なる位置に配置された第1の部分21と第2の部分22を含んでいる。第2の領域A20は、基準平面RPに第2の磁気センサ20の第1の部分21を垂直投影してできる第3の部分領域A21と、基準平面RPに第2の磁気センサ20の第2の部分22を垂直投影してできる第4の部分領域A22を含んでいる。第3および第4の部分領域A21,A22は、第2の直線L2に平行な方向における第3の領域A30の両側に位置している。
本実施の形態では特に、第1および第2の部分領域A11,A12は、いずれも第1の直線L1と交差する位置にある。また、第3および第4の部分領域A21,A22は、いずれも第2の直線L2と交差する位置にある。また、本実施の形態では特に、第1および第2の部分領域A11,A12の各々は、第1の直線L1に対して線対称な形状である。同様に、第3および第4の部分領域A21,A22の各々は、第2の直線L2に対して線対称な形状である。
なお、第1の磁気センサ10は複数の部分に分割されていなくてもよい。この場合、第1の領域A10は1つの領域である。同様に、第2の磁気センサ20は複数の部分に分割されていなくてもよい。この場合、第2の領域A20は1つの領域である。
第1の領域A10が互いに分離された複数の部分領域からなる場合には、その複数の部分領域の全てではない1つ以上の部分領域が第1の直線L1と交差する位置にあってもよい。同様に、第2の領域A20が互いに分離された複数の部分領域からなる場合には、その複数の部分領域の全てではない1つ以上の部分領域が第2の直線L2と交差する位置にあってもよい。
第1の領域A10が1つの領域であるか複数の部分領域からなるかにかかわらず、第1の領域A10のいかなる部分も第2の直線L2とは交差しないことが好ましい。同様に、第2の領域A20が1つの領域であるか複数の部分領域からなるかにかかわらず、第2の領域A20のいかなる部分も第1の直線L1とは交差しないことが好ましい。
本実施の形態では特に、第1の領域A10と第2の領域A20は、上方から見て、第3の領域A30の重心C30を中心として第1の領域A10を90°回転すると第2の領域A20に重なる位置関係である。図3において、重心C30を中心として反時計回り方向に第1および第2の部分領域A11,A12を90°回転すると、第1および第2の部分領域A11,A12はそれぞれ第3および第4の部分領域A21,A22に重なる。
第1ないし第3の磁気センサ10,20,30の各々は、少なくとも1つの磁気検出素子を含んでいる。
次に、図4ないし図6を参照して、複合チップ部品3の構造の一例について説明する。始めに、第1ないし第3の磁界発生器71,72,73について説明する。図4は、第1ないし第3の磁界発生器71,72,73の形状と配置の一例を示す平面図である。なお、図4では、便宜上、第1ないし第3の磁界発生器71,72,73を、ハッチングを付して示している。図5は、図4の5−5線で示した位置における断面を示す断面図である。図6は、図4の6−6線で示した位置における断面を示す断面図である。なお、図5および図6では、複合チップ部品3の複数の構成要素のX方向、Y方向、Z方向の寸法の比率は、実際の比率とは必ずしも一致しない。
図4に示したように、上方から見たときに、第1の磁界発生器71の第1および第2のコイル71A,71Bの各々は、基準座標系におけるY方向に長い矩形の外周および内周を有している。第1および第2のコイル71A,71Bの各々は、基準座標系におけるXY平面に沿って平面渦巻き状に複数回巻かれた導線を有している。上方から見たときに、第1および第2のコイル71A,71Bは、図3に示した第1の直線L1と交差する位置にある。
上方から見たときに、第1のコイル71Aの内周の内側の中空部は、第1の部分領域A11よりも基準座標系におけるY方向に長く、且つ第1の部分領域A11に対して基準座標系におけるX方向の先に位置している。
上方から見たときに、第2のコイル71Bの内周の内側の中空部は、第2の部分領域A12よりも基準座標系におけるY方向に長く、且つ第2の部分領域A12に対して基準座標系における−X方向の先に位置している。
上方から見たときに、第2の磁界発生器72の第3および第4のコイル72A,72Bの各々は、基準座標系におけるX方向に長い矩形の外周および内周を有している。第3および第4のコイル72A,72Bの各々は、基準座標系におけるXY平面に沿って平面渦巻き状に複数回巻かれた導線を有している。上方から見たときに、第3および第4のコイル72A,72Bは、図3に示した第2の直線L2と交差する位置にある。
上方から見たときに、第3のコイル72Aの内周の内側の中空部は、第3の部分領域A21よりも基準座標系におけるX方向に長く、且つ第3の部分領域A21に対して基準座標系におけるY方向の先に位置している。
上方から見たときに、第4のコイル72Bの内周の内側の中空部は、第3の部分領域A22よりも基準座標系におけるX方向に長く、且つ第3の部分領域A22に対して基準座標系における−Y方向の先に位置している。
上方から見たときに、第3の磁界発生器73を構成する第5のコイルは、正方形またはほぼ正方形の外周および内周を有している。第5のコイルは、基準座標系におけるXY平面に沿って平面渦巻き状に複数回巻かれた導線を有している。上方から見たときに、第5のコイルの内周は、図3に示した第3の領域A30の外縁のわずかに外側に位置している。
図5および図6に示したように、集積回路チップ70は、上面70aと下面70bを有している。集積回路チップ70の上面70aは絶縁性を有している。複合チップ部品3は、集積回路チップ70および第1ないし第3の磁界発生器71,72,73の他に、それぞれ絶縁材料よりなる絶縁層74A,74B,74C,74D,74E,74Fを含んでいる。
図4ないし図6に示した例では、第3の磁界発生器73は、集積回路チップ70の上面70aの上に配置されている。絶縁層74Aは、上面70aの上において第3の磁界発生器73の周囲に配置されている。絶縁層74Bは、第3の磁界発生器73および絶縁層74Aを覆っている。第1の磁界発生器71の第1および第2のコイル71A,71Bは、絶縁層74Bの上に配置されている。絶縁層74Cは、絶縁層74Bの上においてコイル71A,71Bの周囲に配置されている。絶縁層74Dは、コイル71A,71Bおよび絶縁層74Cを覆っている。第2の磁界発生器72の第3および第4のコイル72A,72Bは、絶縁層74Dの上に配置されている。絶縁層74Eは、絶縁層74Dの上においてコイル72A,72Bの周囲に配置されている。絶縁層74Fは、コイル72A,72Bおよび絶縁層74Eを覆っている。複合チップ部品3の上面3aは、絶縁層74Fの上面によって構成されている。
次に、図7および図8を参照して、センサチップ4の構成の一例について説明する。図7は、センサチップ4の構成を示す説明図である。図8は、センサチップ4の回路構成の一例を示す回路図である。
前述のように、センサチップ4は、第1ないし第3の磁気センサ10,20,30を含んでいる。第1の磁気センサ10は、外部磁界の、第1の感磁方向の成分である第1の外部磁界成分を検出するためのものである。第2の磁気センサ20は、外部磁界の、第2の感磁方向の成分である第2の外部磁界成分を検出するためのものである。第3の磁気センサ30は、外部磁界の、第3の感磁方向の成分である第3の外部磁界成分を検出するためのものである。
本実施の形態では特に、第1の感磁方向は、第1のセンサ座標系におけるX方向に平行な方向である。第1の感磁方向は、第1のセンサ座標系におけるX方向と−X方向とを含む。第2の感磁方向は、第2のセンサ座標系におけるY方向に平行な方向である。第2の感磁方向は、第2のセンサ座標系におけるY方向と−Y方向とを含む。第3の感磁方向は、第3のセンサ座標系におけるZ方向に平行な方向である。第3の感磁方向は、第3のセンサ座標系におけるZ方向と−Z方向とを含む。また、本実施の形態では特に、第1および第2の感磁方向は、基準平面RPに平行である。第3の感磁方向は、基準平面RPに垂直である。第1ないし第3のセンサ座標系が一致する場合には、第1ないし第3の感磁方向は互いに直交することになる。
図7に示したように、センサチップ4は、更に、第1ないし第3の磁気センサ10,20,30を支持する基板51を含んでいる。基板51は、上面51aと下面を有している。第1ないし第3の磁気センサ10,20,30は、基板51の上面51aの上または上方に配置されている。
また、図7に示したように、センサチップ4の端子群は、第1の磁気センサ10に対応する電源端子Vxおよび出力端子Vx+,Vx−と、第2の磁気センサ20に対応する電源端子Vyおよび出力端子Vy+,Vy−と、第3の磁気センサ30に対応する電源端子Vzおよび出力端子Vz+,Vz−と、第1ないし第3の磁気センサ10,20,30で共通に使用されるグランド端子Gとを含んでいる。
図8に示した例では、第1の磁気センサ10は、ホイートストンブリッジ回路を構成する4つの抵抗部Rx1,Rx2,Rx3,Rx4を含んでいる。抵抗部Rx1,Rx2,Rx3,Rx4の各々は、第1の外部磁界成分に応じて変化する抵抗値を有する。抵抗部Rx1は、電源端子Vxと出力端子Vx+との間に設けられている。抵抗部Rx2は、出力端子Vx+とグランド端子Gとの間に設けられている。抵抗部Rx3は、電源端子Vxと出力端子Vx−との間に設けられている。抵抗部Rx4は、出力端子Vx−とグランド端子Gとの間に設けられている。
第2の磁気センサ20は、ホイートストンブリッジ回路を構成する4つの抵抗部Ry1,Ry2,Ry3,Ry4を含んでいる。抵抗部Ry1,Ry2,Ry3,Ry4の各々は、第2の外部磁界成分に応じて変化する抵抗値を有する。抵抗部Ry1は、電源端子Vyと出力端子Vy+との間に設けられている。抵抗部Ry2は、出力端子Vy+とグランド端子Gとの間に設けられている。抵抗部Ry3は、電源端子Vyと出力端子Vy−との間に設けられている。抵抗部Ry4は、出力端子Vy−とグランド端子Gとの間に設けられている。
第3の磁気センサ30は、ホイートストンブリッジ回路を構成する4つの抵抗部Rz1,Rz2,Rz3,Rz4を含んでいる。抵抗部Rz1,Rz2,Rz3,Rz4の各々は、後述する磁界変換部から出力される出力磁界成分に応じて変化する抵抗値を有する。抵抗部Rz1は、電源端子Vzと出力端子Vz+との間に設けられている。抵抗部Rz2は、出力端子Vz+とグランド端子Gとの間に設けられている。抵抗部Rz3は、電源端子Vzと出力端子Vz−との間に設けられている。抵抗部Rz4は、出力端子Vz−とグランド端子Gとの間に設けられている。
以下、抵抗部Rx1,Rx2,Rx3,Rx4,Ry1,Ry2,Ry3,Ry4,Rz1,Rz2,Rz3,Rz4のうちの任意の1つを抵抗部Rと言う。抵抗部Rは、少なくとも1つの磁気検出素子を含んでいる。本実施の形態では特に、少なくとも1つの磁気検出素子は、少なくとも1つの磁気抵抗効果素子である。以下、磁気抵抗効果素子をMR素子と記す。
本実施の形態では特に、MR素子は、スピンバルブ型のMR素子である。このスピンバルブ型のMR素子は、方向が固定された磁化を有する磁化固定層と、印加磁界の方向に応じて方向が変化可能な磁化を有する自由層と、磁化固定層と自由層の間に配置されたギャップ層とを有している。スピンバルブ型のMR素子は、TMR(トンネル磁気抵抗効果)素子でもよいし、GMR(巨大磁気抵抗効果)素子でもよい。TMR素子では、ギャップ層はトンネルバリア層である。GMR素子では、ギャップ層は非磁性導電層である。スピンバルブ型のMR素子では、自由層の磁化の方向が磁化固定層の磁化の方向に対してなす角度に応じて抵抗値が変化し、この角度が0°のときに抵抗値は最小値となり、角度が180°のときに抵抗値は最大値となる。各MR素子において、自由層は、磁化容易軸方向が、磁化固定層の磁化の方向に直交する方向となる形状異方性を有している。
図8において、塗りつぶした矢印は、MR素子における磁化固定層の磁化の方向を表している。図8に示した例では、抵抗部Rx1,Rx4の各々におけるMR素子の磁化固定層の磁化の方向は、第1のセンサ座標系におけるX方向である。抵抗部Rx2,Rx3の各々におけるMR素子の磁化固定層の磁化の方向は、第1のセンサ座標系における−X方向である。
また、抵抗部Ry1,Ry4の各々におけるMR素子の磁化固定層の磁化の方向は、第2のセンサ座標系におけるY方向である。抵抗部Ry2,Ry3の各々におけるMR素子の磁化固定層の磁化の方向は、第2のセンサ座標系における−Y方向である。抵抗部Rz1,Rz2,Rz3,Rz4の各々におけるMR素子の磁化固定層の磁化の方向については、後で説明する。
出力端子Vx+と出力端子Vx−との間の電位差は、第1の外部磁界成分と対応関係を有する。第1の磁気センサ10は、出力端子Vx+と出力端子Vx−との間の電位差に対応する第1の検出信号を生成する。第1の検出信号は、出力端子Vx+と出力端子Vx−との間の電位差に対して振幅やオフセットの調整を施したものであってもよい。
出力端子Vy+と出力端子Vy−との間の電位差は、第2の外部磁界成分と対応関係を有する。第2の磁気センサ20は、出力端子Vy+と出力端子Vy−との間の電位差に対応する第2の検出信号を生成する。第2の検出信号は、出力端子Vy+と出力端子Vy−との間の電位差に対して振幅やオフセットの調整を施したものであってもよい。
出力端子Vz+と出力端子Vz−との間の電位差は、第3の外部磁界成分と対応関係を有する。第3の磁気センサ30は、出力端子Vz+と出力端子Vz−との間の電位差に対応する第3の検出信号を生成する。第3の検出信号は、出力端子Vz+と出力端子Vz−との間の電位差に対して振幅やオフセットの調整を施したものであってもよい。
ここで、図7を参照して、抵抗部Rx1,Rx2,Rx3,Rx4,Ry1,Ry2,Ry3,Ry4の配置の一例について説明する。この例では、第1の磁気センサ10の第1の部分11は抵抗部Rx1,Rx4を含み、第1の磁気センサ10の第2の部分12は抵抗部Rx2,Rx3を含んでいる。また、第2の磁気センサ20の第1の部分21は抵抗部Ry1,Ry4を含み、第2の磁気センサ20の第2の部分22は抵抗部Ry2,Ry3を含んでいる。
図7において、塗りつぶした矢印は、MR素子における磁化固定層の磁化の方向を表している。図7に示した例では、第1の磁気センサ10の第1の部分11と、第1の磁気センサ10の第2の部分12と、第2の磁気センサ20の第1の部分21と、第2の磁気センサ20の第2の部分22の各々において、そこに含まれる複数のMR素子の磁化固定層の磁化の方向が同じ方向になる。そのため、この例によれば、複数のMR素子の磁化固定層の磁化の方向の設定が容易になる。
次に、図9を参照して、MR素子の構成の一例について説明する。図9に示したMR素子100は、基板51側から順に積層された反強磁性層101、磁化固定層102、ギャップ層103および自由層104を含んでいる。反強磁性層101は、反強磁性材料よりなり、磁化固定層102との間で交換結合を生じさせて、磁化固定層102の磁化の方向を固定する。
なお、MR素子100における層101〜104の配置は、図9に示した配置とは上下が反対でもよい。また、MR素子100は、反強磁性層101を含まない構成であってもよい。この構成は、例えば、反強磁性層101および磁化固定層102の代わりに、2つの強磁性層とこの2つの強磁性層の間に配置された非磁性金属層とを含む人工反強磁性構造の磁化固定層を含む構成であってもよい。また、磁気検出素子は、ホール素子、磁気インピーダンス素子等、MR素子以外の磁界を検出する素子であってもよい。
次に、図10を参照して、抵抗部Rの構成の一例について説明する。この例では、抵抗部Rは、直列に接続された複数のMR素子100を含んでいる。抵抗部Rは、更に、複数のMR素子100が直列に接続されるように、回路構成上隣接する2つのMR素子100を電気的に接続する1つ以上の接続層を含んでいる。図10に示した例では、抵抗部Rは、1つ以上の接続層として、1つ以上の下部接続層111と、1つ以上の上部接続層112とを含んでいる。下部接続層111は、回路構成上隣接する2つのMR素子100の下面に接し、この2つのMR素子100を電気的に接続する。上部接続層112は、回路構成上隣接する2つのMR素子100の上面に接し、この2つのMR素子100を電気的に接続する。
次に、図11を参照して、第3の磁気センサ30の構成の一例について説明する。第3の磁気センサ30は、抵抗部Rz1,Rz2,Rz3,Rz4の他に、軟磁性材料よりなる軟磁性構造体40を含んでいる。軟磁性構造体40は、磁界変換部42と、少なくとも1つの軟磁性層を含んでいる。磁界変換部42は、第3の外部磁界成分を受けて第3の感磁方向に垂直な方向の出力磁界成分を出力する。出力磁界成分の強度は、第3の外部磁界成分の強度と対応関係を有する。第3の磁気センサ30は、出力磁界成分の強度を検出することによって、第3の外部磁界成分の強度を検出する。
図11に示した例では、磁界変換部42は、抵抗部Rz1に対応する下部ヨーク42B1および上部ヨーク42T1と、抵抗部Rz2に対応する下部ヨーク42B2および上部ヨーク42T2と、抵抗部Rz3に対応する下部ヨーク42B3および上部ヨーク42T3と、抵抗部Rz4に対応する下部ヨーク42B4および上部ヨーク42T4とを含んでいる。
下部ヨーク42B1,42B2,42B3,42B4および上部ヨーク42T1,42T2,42T3,42T4の各々は、第3のセンサ座標系におけるZ方向に垂直な方向に長い直方体形状を有している。
下部ヨーク42B1および上部ヨーク42T1は、抵抗部Rz1の近傍に配置されている。下部ヨーク42B1は、抵抗部Rz1よりも、基板51の上面51aにより近い位置に配置されている。上部ヨーク42T1は、抵抗部Rz1よりも、基板51の上面51aからより遠い位置に配置されている。上方から見たときに、抵抗部Rz1は、下部ヨーク42B1と上部ヨーク42T1の間に位置している。
下部ヨーク42B2および上部ヨーク42T2は、抵抗部Rz2の近傍に配置されている。下部ヨーク42B2は、抵抗部Rz2よりも、基板51の上面51aにより近い位置に配置されている。上部ヨーク42T2は、抵抗部Rz2よりも、基板51の上面51aからより遠い位置に配置されている。上方から見たときに、抵抗部Rz2は、下部ヨーク42B2と上部ヨーク42T2の間に位置している。
下部ヨーク42B3および上部ヨーク42T3は、抵抗部Rz3の近傍に配置されている。下部ヨーク42B3は、抵抗部Rz3よりも、基板51の上面51aにより近い位置に配置されている。上部ヨーク42T3は、抵抗部Rz3よりも、基板51の上面51aからより遠い位置に配置されている。上方から見たときに、抵抗部Rz3は、下部ヨーク42B3と上部ヨーク42T3の間に位置している。
下部ヨーク42B4および上部ヨーク42T4は、抵抗部Rz4の近傍に配置されている。下部ヨーク42B4は、抵抗部Rz4よりも、基板51の上面51aにより近い位置に配置されている。上部ヨーク42T4は、抵抗部Rz4よりも、基板51の上面51aからより遠い位置に配置されている。上方から見たときに、抵抗部Rz4は、下部ヨーク42B4と上部ヨーク42T4の間に位置している。
磁界変換部42が出力する出力磁界成分は、下部ヨーク42B1および上部ヨーク42T1によって生成されて抵抗部Rz1に印加される磁界成分と、下部ヨーク42B2および上部ヨーク42T2によって生成されて抵抗部Rz2に印加される磁界成分と、下部ヨーク42B3および上部ヨーク42T3によって生成されて抵抗部Rz3に印加される磁界成分と、下部ヨーク42B4および上部ヨーク42T4によって生成されて抵抗部Rz4に印加される磁界成分を含んでいる。
図11において、4つの白抜きの矢印は、それぞれ、第3の外部磁界成分の方向が第3のセンサ座標系におけるZ方向であるときに、抵抗部Rz1,Rz2,Rz3,Rz4に印加される磁界成分の方向を表している。また、図11において、4つの塗りつぶした矢印は、それぞれ、抵抗部Rz1,Rz2,Rz3,Rz4のMR素子100の磁化固定層102の磁化の方向を表している。抵抗部Rz1,Rz4のMR素子100の磁化固定層102の磁化の方向は、それぞれ、第3の外部磁界成分の方向が第3のセンサ座標系におけるZ方向であるときに抵抗部Rz1,Rz4に印加される磁界成分の方向と同じ方向である。抵抗部Rz2,Rz3のMR素子100の磁化固定層102の磁化の方向は、それぞれ、第3の外部磁界成分の方向が第3のセンサ座標系におけるZ方向であるときに抵抗部Rz2,Rz3に印加される磁界成分の方向とは反対方向である。
ここで、第3の磁気センサ30の作用について説明する。第3の外部磁界成分が存在しない状態では、抵抗部Rz1,Rz2,Rz3,Rz4のMR素子100の自由層104の磁化の方向は、磁化固定層102の磁化の方向に対して垂直である。
第3の外部磁界成分の方向が第3のセンサ座標系におけるZ方向であるときには、抵抗部Rz1,Rz4のMR素子100では、自由層104の磁化の方向は、磁化固定層102の磁化の方向に対して垂直な方向から、磁化固定層102の磁化の方向に向かって傾く。このとき、抵抗部Rz2,Rz3のMR素子100では、自由層104の磁化の方向は、磁化固定層102の磁化の方向に対して垂直な方向から、磁化固定層102の磁化の方向とは反対方向に向かって傾く。その結果、第3の外部磁界成分が存在しない状態と比べて、抵抗部Rz1,Rz4の抵抗値は減少し、抵抗部Rz2,Rz3の抵抗値は増加する。
第3の外部磁界成分の方向が第3のセンサ座標系における−Z方向の場合は、上述の場合とは逆に、第3の外部磁界成分が存在しない状態と比べて、抵抗部Rz1,Rz4の抵抗値は増加し、抵抗部Rz2,Rz3の抵抗値は減少する。
抵抗部Rz1,Rz2,Rz3,Rz4の抵抗値の変化量は、第3の外部磁界成分の強度に依存する。
第3の外部磁界成分の方向と強度が変化すると、抵抗部Rz1,Rz2,Rz3,Rz4のそれぞれの抵抗値は、抵抗部Rz1,Rz4の抵抗値が増加すると共に抵抗部Rz2,Rz3の抵抗値が減少するか、抵抗部Rz1,Rz4の抵抗値が減少すると共に抵抗部Rz2,Rz3の抵抗値が増加するように変化する。これにより、出力端子Vz+と出力端子Vz−との間の電位差が変化する。従って、この電位差に基づいて、第3の外部磁界成分を検出することができる。第3の磁気センサ30は、出力端子Vz+と出力端子Vz−との間の電位差に対応する第3の検出信号を生成する。第3の検出信号は、出力端子Vz+と出力端子Vz−との間の電位差に対して振幅やオフセットの調整を施したものであってもよい。
次に、図12を参照して、第1ないし第3の磁気センサ10,20,30の構造の一例について説明する。図12は、第1ないし第3の磁気センサ10,20,30のそれぞれの一部を示している。この例では、第1ないし第3の磁気センサ10,20,30は、基板51の上に配置されている。基板51は、上面51aと下面51bを有している。
第1の磁気センサ10は、抵抗部Rx1,Rx2,Rx3,Rx4の他に、それぞれ絶縁材料よりなる絶縁層66A,67A,68Aを含んでいる。絶縁層66Aは、基板51の上面51aの上に配置されている。抵抗部Rx1,Rx2,Rx3,Rx4は、絶縁層66Aの上に配置されている。図12には、抵抗部Rx1,Rx2,Rx3,Rx4に含まれる複数のMR素子100のうちの1つと、それに接続された下部接続層111および上部接続層112を示している。絶縁層67Aは、絶縁層66Aの上面の上において抵抗部Rx1,Rx2,Rx3,Rx4の周囲に配置されている。絶縁層68Aは、抵抗部Rx1,Rx2,Rx3,Rx4および絶縁層67Aを覆っている。
第2の磁気センサ20の構造は、第1の磁気センサ10と同様である。すなわち、第2の磁気センサ20は、抵抗部Ry1,Ry2,Ry3,Ry4の他に、それぞれ絶縁材料よりなる絶縁層66B,67B,68Bを含んでいる。絶縁層66Bは、基板51の上面51aの上に配置されている。抵抗部Ry1,Ry2,Ry3,Ry4は、絶縁層66Bの上に配置されている。図12には、抵抗部Ry1,Ry2,Ry3,Ry4に含まれる複数のMR素子100のうちの1つと、それに接続された下部接続層111および上部接続層112を示している。絶縁層67Bは、絶縁層66Bの上面の上において抵抗部Ry1,Ry2,Ry3,Ry4の周囲に配置されている。絶縁層68Bは、抵抗部Ry1,Ry2,Ry3,Ry4および絶縁層67Bを覆っている。
第3の磁気センサ30は、抵抗部Rz1,Rz2,Rz3,Rz4および軟磁性構造体40の他に、それぞれ絶縁材料よりなる絶縁層61,62,63,64を含んでいる。図12に示した例では、軟磁性構造体40は、磁界変換部42と、2つの軟磁性層41,43を含んでいる。
磁界変換部42は、図11に示した下部ヨーク42B1,42B2,42B3,42B4および上部ヨーク42T1,42T2,42T3,42T4を含んでいる。図12では、下部ヨーク42B1,42B2,42B3,42B4のうちの1つを符号42Bで示し、それに対応する上部ヨーク42T1,42T2,42T3,42T4のうちの1つを符号42Tで示している。
軟磁性層41は、基板51の上面51aの上に配置されている。下部ヨーク42B1,42B2,42B3,42B4は、軟磁性層41の上に配置されている。絶縁層61は、軟磁性層41の上において下部ヨーク42B1,42B2,42B3,42B4の周囲に配置されている。
抵抗部Rz1,Rz2,Rz3,Rz4は、絶縁層61の上に配置されている。図12には、抵抗部Rz1,Rz2,Rz3,Rz4に含まれる複数のMR素子100のうちの1つと、それに接続された下部接続層111および上部接続層112を示している。絶縁層62は、下部ヨーク42B1,42B2,42B3,42B4および絶縁層61の上において抵抗部Rz1,Rz2,Rz3,Rz4の周囲に配置されている。
上部ヨーク42T1,42T2,42T3,42T4は、絶縁層62の上に配置されている。絶縁層63は、抵抗部Rz1,Rz2,Rz3,Rz4および絶縁層62の上において上部ヨーク42T1,42T2,42T3,42T4の周囲に配置されている。
軟磁性層43は、上部ヨーク42T1,42T2,42T3,42T4および絶縁層63の上に配置されている。絶縁層64は、軟磁性層43を覆っている。
上方から見たときに、軟磁性層41,43は、第3の磁気センサ30の全域またはほぼ全域にわたって存在する。言い換えると、複合チップ部品3の上面3aすなわち基準平面RPに軟磁性層41を垂直投影してできる領域と、基準平面RPに軟磁性層43を垂直投影してできる領域は、いずれも、第3の領域A30と一致するかほぼ一致する。
図12に示した例では、第1ないし第3の磁気センサ10,20,30に含まれる全ての磁気検出素子すなわちMR素子100は、基板51の上面51aから等しい距離の位置に配置されている。本実施の形態では、基板51の上面51aは、複合チップ部品3の上面3aに対して平行である。従って、第1ないし第3の磁気センサ10,20,30に含まれる全てのMR素子100は、複合チップ部品3の上面3aすなわち基準平面RPから等しい距離の位置に配置されている。
なお、磁界変換部42は、下部ヨーク42B1,42B2,42B3,42B4と、上部ヨーク42T1,42T2,42T3,42T4の一方のみを含んでいてもよい。また、軟磁性構造体40は、軟磁性層41,43の一方のみを含んでいてもよい。
次に、図13ないし図15を参照して、第1の磁界発生器71の構成について詳しく説明する。図13は、第1の磁界発生器71を示す平面図である。図14は、図13に示した第1の磁界発生器71のうちの記号Aで示した部分を拡大して示している。記号Aで示した部分は、第1のコイル71Aの一部分である。図15は、図13に示した第1の磁界発生器71のうちの記号Bで示した部分を拡大して示している。記号Bで示した部分は、第2のコイル71Bの一部分である。
図14に示したように、第1のコイル71Aは、基準座標系におけるXY平面に沿って平面渦巻き状に複数回巻かれた導線71Aaと、導線71Aaの両端に接続された2つの端子71Ab,71Acとを有している。導線71Aaの巻き数は、例えば16回である。導線71Aaの厚みは、例えば1μmである。導線71Aaの幅は、例えば2μmである。導線71Aaにおける隣り合うターンの間隔は、例えば2μmである。端子71Ab,71Acは、集積回路チップ70内の制御回路に接続されている。
図15に示したように、第2のコイル71Bは、基準座標系におけるXY平面に沿って平面渦巻き状に複数回巻かれた導線71Baと、導線71Baの両端に接続された2つの端子71Bb,71Bcとを有している。導線71Baの巻き数、厚み、幅および間隔は、導線71Aaと同じであってもよい。端子71Bb,71Bcは、集積回路チップ70内の制御回路に接続されている。
次に、図16ないし図19を参照して、第2の磁界発生器72の構成について詳しく説明する。図16は、第2の磁界発生器72を示す平面図である。図17は、図16に示した第2の磁界発生器72のうちの記号Cで示した部分を拡大して示している。記号Cで示した部分は、第3のコイル72Aの一部分である。図18は、図16に示した第2の磁界発生器72のうちの記号Dで示した部分を拡大して示している。記号Dで示した部分は、第4のコイル72Bの一部分である。図19は、図16に示した第2の磁界発生器72のうちの記号Eで示した部分を拡大して示している。記号Eで示した部分は、第4のコイル72Bの他の部分である。
図17に示したように、第3のコイル72Aは、平面渦巻き状に複数回巻かれた導線72Aaと、導線72Aaの両端に接続された2つの端子72Ab,72Acとを有している。導線72Aaの巻き数、厚み、幅および間隔は、導線71Aaと同じであってもよい。端子72Ab,72Acは、集積回路チップ70内の制御回路に接続されている。
図18および図19に示したように、第4のコイル72Bは、平面渦巻き状に複数回巻かれた導線72Baと、導線72Baの両端に接続された2つの端子72Bb,72Bcとを有している。導線72Baの巻き数、厚み、幅および間隔は、導線71Aaと同じであってもよい。端子72Bb,72Bcは、それぞれ、集積回路チップ70内の制御回路に接続されている。
次に、第3の磁界発生器73の構成について簡単に説明する。前述のように、第3の磁界発生器73を構成する第5のコイルは、平面渦巻き状に複数回巻かれた導線を有している。第5のコイルは、更に、上記の導線の両端に接続された2つの端子を有している。2つの端子は、集積回路チップ70内の制御回路に接続されている。
次に、図20および図21を参照して、第1の磁界発生器71の作用について説明する。図20は、第1の磁界発生器71の作用を示す説明図である。図21は、第1の付加的磁界を模式的に示す説明図である。第1の磁界発生器71によって第1の付加的磁界が発生されたとき、第1ないし第3の磁気センサ10,20,30の各々には、第1の付加的磁界の第1の方向に平行な方向の成分である第1の付加的磁界成分が印加される。第1の方向は、基準平面内における一方向である。本実施の形態では特に、第1の方向は、基準座標系におけるX方向と一致する。
また、本実施の形態では、第1の磁界発生器71の第1のコイル71Aに電流Ixaを流し、第1の磁界発生器71の第2のコイル71Bに電流Ixbを流すことによって、第1の付加的磁界が発生する。ここで、第1の磁気センサ10の第1および第2の部分11,12に印加される第1の付加的磁界成分を、それぞれ記号MF1a,MF1bで表す。また、第2の磁気センサ20の第1および第2の部分21,22に印加される第1の付加的磁界成分を、それぞれ記号MF1c,MF1dで表す。また、第3の磁気センサ30に印加される第1の付加的磁界成分を記号MF1eで表す。
図20において、記号Ixaを付した矢印は電流Ixaの方向を示し、記号Ixbを付した矢印は電流Ixbの方向を示している。また、図21において、記号MF1を付した曲線は、第1の付加的磁界に対応する磁束であって、第1の磁気センサ10の第1の部分11と第2の部分12を通過する磁束MF1を示している。図20に示したように、電流Ixaの方向を上方から見て時計回り方向とし、電流Ixbの方向を上方から見て反時計回り方向とした場合には、磁束MF1は、図21において矢印で示したように流れる。この場合、第1の付加的磁界成分MF1a,MF1b,MF1c,MF1d,MF1eの方向は、いずれも基準座標系におけるX方向となる。なお、電流Ixaの大きさと電流Ixbの大きさは、等しいかほぼ等しい。
電流Ixa,Ixbの方向をそれぞれ図20に示した例とは逆にすると、磁束MF1は図21に示した例とは逆方向に流れる。この場合、第1の付加的磁界成分MF1a,MF1b,MF1c,MF1d,MF1eの方向は、いずれも基準座標系における−X方向となる。
なお、電流Ixa,Ixbの大きさと、第1の付加的磁界成分MF1a,MF1b,MF1c,MF1d,MF1eの強度の関係は、予め求められている。電流Ixa,Ixbの大きさがある値であるとき、MF1a,MF1bの強度は互いに等しいかほぼ等しく、MF1c,MF1dの強度は互いに等しいかほぼ等しい。なお、電流Ixa,Ixbの大きさがある値であるとき、MF1a,MF1bの各々の強度と、MF1c,MF1dの各々の強度と、MF1eの強度は、互いに異なっていてもよい。例えば、MF1a,MF1bの各々の強度は、MF1c,MF1dの各々の強度およびMF1eの強度よりも大きくてもよい。
次に、図22および図23を参照して、第2の磁界発生器72の作用について説明する。図22は、第2の磁界発生器72の作用を示す説明図である。図23は、第2の付加的磁界を模式的に示す説明図である。第2の磁界発生器72によって第2の付加的磁界が発生されたとき、第1ないし第3の磁気センサ10,20,30の各々には、第2の付加的磁界の第2の方向に平行な方向の成分である第2の付加的磁界成分が印加される。第2の方向は、基準平面RP内における一方向であり、第1の方向とは異なる方向である。本実施の形態では特に、第2の方向は、基準座標系におけるY方向と一致する。
また、本実施の形態では、第2の磁界発生器72の第3のコイル72Aに電流Iyaを流し、第2の磁界発生器72の第4のコイル72Bに電流Iybを流すことによって、第2の付加的磁界が発生する。ここで、第1の磁気センサ10の第1および第2の部分11,12に印加される第2の付加的磁界成分を、それぞれ記号MF2a,MF2bで表す。また、第2の磁気センサ20の第1および第2の部分21,22に印加される第2の付加的磁界成分を、それぞれ記号MF2c,MF2dで表す。また、第3の磁気センサ30に印加される第2の付加的磁界成分を記号MF2eで表す。
図22において、記号Iyaを付した矢印は電流Iyaの方向を示し、記号Iybを付した矢印は電流Iybの方向を示している。また、図23において、記号MF2を付した曲線は、第2の付加的磁界に対応する磁束であって、第2の磁気センサ20の第1の部分21と第2の部分22を通過する磁束MF2を示している。図22に示したように、電流Iyaの方向を上方から見て時計回り方向とし、電流Iybの方向を上方から見て反時計回り方向とした場合には、磁束MF2は、図23において矢印で示したように流れる。この場合、第2の付加的磁界成分MF2a,MF2b,MF2c,MF2d,MF2eの方向は、いずれも基準座標系におけるY方向となる。なお、電流Iyaの大きさと電流Iybの大きさは、等しいかほぼ等しい。
電流Iya,Iybの方向をそれぞれ図22に示した例とは逆にすると、磁束MF2は図23に示した例とは逆方向に流れる。この場合、第2の付加的磁界成分MF2a,MF2b,MF2c,MF2d,MF2eの方向は、いずれも基準座標系における−Y方向となる。
なお、電流Iya,Iybの大きさと、第2の付加的磁界成分MF2a,MF2b,MF2c,MF2d,MF2eの強度の関係は、予め求められている。電流Iya,Iybの大きさがある値であるとき、MF2a,MF2bの強度は互いに等しいかほぼ等しく、MF2c,MF2dの強度は互いに等しいかほぼ等しい。なお、電流Iya,Iybの大きさがある値であるとき、MF2a,MF2bの各々の強度と、MF2c,MF2dの各々の強度と、MF2eの強度は、互いに異なっていてもよい。例えば、MF2c,MF2dの各々の強度は、MF2a,MF2bの各々の強度およびMF2eの強度よりも大きくてもよい。
次に、図3および図4を参照して、第3の磁界発生器73が発生する第3の付加的磁界について説明する。第3の磁界発生器73によって第3の付加的磁界が発生されたとき、第3の磁気センサ30には、第3の付加的磁界の第3の方向に平行な方向の成分である第3の付加的磁界成分が印加される。第3の方向は、基準平面RPに垂直である。本実施の形態では特に、第3の方向は、基準座標系におけるZ方向と一致する。
また、本実施の形態では、第3の磁界発生器73を構成する第5のコイルに電流を流すことによって、第3の付加的磁界が発生する。第5のコイルに流す電流の方向を上方から見て反時計回り方向とした場合には、第3の付加的磁界成分の方向は、基準座標系におけるZ方向となる。また、第5のコイルに流す電流の方向を上方から見て時計回り方向とした場合には、第3の付加的磁界成分の方向は、基準座標系における−Z方向となる。
なお、本実施の形態では、第1および第2の磁気センサ10,20の各々には、第3の付加的磁界成分は全くまたはほとんど印加されない。
次に、第1および第2の磁界発生器71,72の作用を確認したシミュレーションの結果について説明する。シミュレーションでは、本実施の形態に係る磁気センサ装置1に対応する実施例のモデルを用いた。実施例のモデルでは、第1ないし第3のセンサ座標系は、いずれも基準座標系と一致するものとした。
シミュレーションでは、実施例のモデルを用いて、第1の磁界発生器71によって第1の付加的磁界が発生されたときの抵抗部Rx1,Rx2,Rx3,Rx4,Ry1,Ry2,Ry3,Ry4における磁束密度のX方向に平行な方向の成分BxとY方向に平行な方向の成分Byを求めた。第1の付加的磁界を発生させるための電流Ixa,Ixbの方向は、図20に示した方向とした。また、電流Ixa,Ixbの大きさは、それぞれ1mAとした。
また、シミュレーションでは、実施例のモデルを用いて、第2の磁界発生器72によって第2の付加的磁界が発生されたときの抵抗部Rx1,Rx2,Rx3,Rx4,Ry1,Ry2,Ry3,Ry4における磁束密度のX方向に平行な方向の成分BxとY方向に平行な方向の成分Byを求めた。第2の付加的磁界を発生させるための電流Iya,Iybの方向は、図22に示した方向とした。また、電流Iya,Iybの大きさは、それぞれ1mAとした。
以下、抵抗部Rx1,Rx2によって構成されるハーフブリッジ回路を記号Rx12で表し、抵抗部Rx3,Rx4によって構成されるハーフブリッジ回路を記号Rx34で表し、抵抗部Ry1,Ry2によって構成されるハーフブリッジ回路を記号Ry12で表し、抵抗部Ry3,Ry4によって構成されるハーフブリッジ回路を記号Ry34で表す。シミュレーションでは、抵抗部Rx1,Rx2における磁束密度の平均値をハーフブリッジ回路Rx12における磁束密度とし、抵抗部Rx3,Rx4における磁束密度の平均値をハーフブリッジ回路Rx34における磁束密度とした。また、抵抗部Ry1,Ry2における磁束密度の平均値をハーフブリッジ回路Ry12における磁束密度とし、抵抗部Ry3,Ry4における磁束密度の平均値をハーフブリッジ回路Ry34における磁束密度とした。
次に、シミュレーションの結果について説明する。始めに、第1の付加的磁界が発生されたときについて説明する。表1に、第1の付加的磁界が発生されたときの、抵抗部Rx1,Rx2,Rx3,Rx4とハーフブリッジ回路Rx12,Rx34における磁束密度を示す。また、表2に、第1の付加的磁界が発生されたときの、抵抗部Ry1,Ry2,Ry3,Ry4とハーフブリッジ回路Ry12,Ry34における磁束密度を示す。表1および表2には、磁束密度の成分Bx,Byの大きさを示している。なお、表1および表2では、X方向の成分BxとY方向の成分Byを正の値で表し、−X方向の成分Bxと−Y方向の成分Byを負の値で表している。また、表1および表2に示した磁束密度の値は、小数点以下第2位を四捨五入した値である。
磁束密度の成分Bxは、磁界のX方向に平行な方向の成分に対応する。磁束密度の成分Byは、磁界のY方向に平行な方向の成分に対応する。表1および表2に示した結果から、第1の磁界発生器71によって第1の付加的磁界が発生されたとき、第1の磁気センサ10と第2の磁気センサ20のいずれにおいても、第1の付加的磁界の、X方向に平行な成分である第1の付加的磁界成分が印加され、第1の付加的磁界の、Y方向に平行な方向の成分は全くまたはほとんど印加されないことが分かる。また、表1および表2に示した結果から、電流Ixa,Ixbの大きさがある値であるとき、MF1a,MF1bの各々の強度は、MF1c,MF1dの各々の強度よりも大きくなることが分かる。
次に、第2の付加的磁界が発生されたときについて説明する。表3に、第2の付加的磁界が発生されたときの、抵抗部Rx1,Rx2,Rx3,Rx4とハーフブリッジ回路Rx12,Rx34における磁束密度を示す。また、表4に、第2の付加的磁界が発生されたときの、抵抗部Ry1,Ry2,Ry3,Ry4とハーフブリッジ回路Ry12,Ry34における磁束密度を示す。表3および表4には、表1および表2と同様に、磁束密度の成分Bx,Byの大きさを示している。また、表3および表4に示した磁束密度の値は、小数点以下第2位を四捨五入した値である。
表3および表4に示した結果から、第2の磁界発生器72によって第2の付加的磁界が発生されたとき、第1の磁気センサ10と第2の磁気センサ20のいずれにおいても、第2の付加的磁界の、Y方向に平行な成分である第2の付加的磁界成分が印加され、第2の付加的磁界の、X方向に平行な方向の成分は全くまたはほとんど印加されないことが分かる。また、表3および表4に示した結果から、電流Iya,Iybの大きさがある値であるとき、MF2c,MF2dの各々の強度は、MF2a,MF2bの各々の強度よりも大きくなることが分かる。
次に、本実施の形態に係る磁気センサ装置1の作用および効果について説明する。第1の磁気センサ10は、外部磁界の、第1の感磁方向の成分である第1の外部磁界成分を検出する。第2の磁気センサ20は、外部磁界の、第2の感磁方向の成分である第2の外部磁界成分を検出する。第3の磁気センサ30は、外部磁界の、第3の感磁方向の成分である第3の外部磁界成分を検出する。第1の感磁方向は、第1のセンサ座標系におけるX方向に平行な方向である。第2の感磁方向は、第2のセンサ座標系におけるY方向に平行な方向である。第3の感磁方向は、第3のセンサ座標系におけるZ方向に平行な方向である。
ここで、基準座標系におけるX方向である第1の方向に平行な方向を、第1の主軸方向と言う。そして、第1の主軸方向の磁界の強度の変化に対する第1の検出信号の変化の比率を、第1の主軸感度と言う。また、第1の主軸方向以外の方向の磁界の強度の変化に対する第1の検出信号の変化の比率を、第1の磁気センサ10の他軸感度と言う。
また、基準座標系におけるY方向である第2の方向に平行な方向を、第2の主軸方向と言う。そして、第2の主軸方向の磁界の強度の変化に対する第2の検出信号の変化の比率を、第2の主軸感度と言う。また、第2の主軸方向以外の方向の磁界の強度の変化に対する第2の検出信号の変化の比率を、第2の磁気センサ20の他軸感度と言う。
また、基準座標系におけるZ方向である第3の方向に平行な方向を、第3の主軸方向と言う。そして、第3の主軸方向の磁界の強度の変化に対する第3の検出信号の変化の比率を、第3の主軸感度と言う。また、第3の主軸方向以外の方向の磁界の強度の変化に対する第3の検出信号の変化の比率を、第3の磁気センサ30の他軸感度と言う。
本実施の形態に係る磁気センサ装置1では、以下のようにして、第1ないし第3の主軸感度と、第2の方向に平行な方向についての第1の磁気センサ10の他軸感度と、第1の方向に平行な方向についての第2の磁気センサ20の他軸感度と、第1の方向に平行な方向についての第3の磁気センサ30の他軸感度と、第2の方向に平行な方向についての第3の磁気センサ30の他軸感度を測定することができる。
始めに、第1の主軸感度と、第2の方向に平行な方向についての第1の磁気センサ10の他軸感度の測定方法について説明する。第1の磁界発生器71によって第1の付加的磁界が発生されたとき、第1の磁気センサ10には、第1の付加的磁界成分が印加される。第1の付加的磁界成分は、第1の付加的磁界の、第1の方向に平行な方向すなわち第1の主軸方向の成分である。従って、集積回路チップ70内の制御回路によって第1の磁界発生器71を制御して第1の付加的磁界成分の強度を変化させ、集積回路チップ70内の補正処理回路によって、そのときの第1の検出信号の変化の情報を取得することにより、補正処理回路によって第1の主軸感度を測定することができる。
また、第2の磁界発生器72によって第2の付加的磁界が発生されたとき、第1の磁気センサ10には、第2の付加的磁界成分が印加される。第2の付加的磁界成分は、第2の付加的磁界の、第2の方向に平行な方向の成分である。従って、制御回路によって第2の磁界発生器72を制御して第2の付加的磁界成分の強度を変化させ、補正処理回路によって、そのときの第1の検出信号の変化の情報を取得することにより、補正処理回路によって、第2の方向に平行な方向についての第1の磁気センサ10の他軸感度を測定することができる。
次に、第2の主軸感度と、第1の方向に平行な方向についての第2の磁気センサ20の他軸感度の測定方法について説明する。第2の磁界発生器72によって第2の付加的磁界が発生されたとき、第2の磁気センサ20には、第2の付加的磁界成分が印加される。第2の付加的磁界成分は、第2の付加的磁界の、第2の方向に平行な方向すなわち第2の主軸方向の成分である。従って、制御回路によって第2の磁界発生器72を制御して第2の付加的磁界成分の強度を変化させ、補正処理回路によって、そのときの第2の検出信号の変化の情報を取得することにより、補正処理回路によって第2の主軸感度を測定することができる。
また、第1の磁界発生器71によって第1の付加的磁界が発生されたとき、第2の磁気センサ20には、第1の付加的磁界成分が印加される。従って、制御回路によって第1の磁界発生器71を制御して第1の付加的磁界成分の強度を変化させ、補正処理回路によって、そのときの第2の検出信号の変化の情報を取得することにより、補正処理回路によって、第1の方向に平行な方向についての第2の磁気センサ20の他軸感度を測定することができる。
次に、第3の主軸感度と、第1の方向に平行な方向についての第3の磁気センサ30の他軸感度と、第2の方向に平行な方向についての第3の磁気センサ30の他軸感度の測定方法について説明する。第3の磁界発生器73によって第3の付加的磁界が発生されたとき、第3の磁気センサ30には、第3の付加的磁界成分が印加される。第3の付加的磁界成分は、第3の付加的磁界の、第3の方向に平行な方向すなわち第3の主軸方向の成分である。従って、制御回路によって第3の磁界発生器73を制御して第3の付加的磁界成分の強度を変化させ、補正処理回路によって、そのときの第3の検出信号の変化の情報を取得することにより、補正処理回路によって第3の主軸感度を測定することができる。
また、第1の磁界発生器71によって第1の付加的磁界が発生されたとき、第3の磁気センサ30には、第1の付加的磁界成分が印加される。従って、制御回路によって第1の磁界発生器71を制御して第1の付加的磁界成分の強度を変化させ、補正処理回路によって、そのときの第3の検出信号の変化の情報を取得することにより、補正処理回路によって、第1の方向に平行な方向についての第3の磁気センサ30の他軸感度を測定することができる。
また、第2の磁界発生器72によって第2の付加的磁界が発生されたとき、第3の磁気センサ30には、第2の付加的磁界成分が印加される。従って、制御回路によって第2の磁界発生器72を制御して第2の付加的磁界成分の強度を変化させ、補正処理回路によって、そのときの第3の検出信号の変化の情報を取得することにより、補正処理回路によって、第2の方向に平行な方向についての第3の磁気センサ30の他軸感度を測定することができる。
本実施の形態において、基準座標系は、複合チップ部品3を基準にして設定されている。また、複合チップ部品3と第1ないし第3の磁界発生器71,72,73は、一体化されている。本実施の形態では特に、第1ないし第3の磁界発生器71,72,73は、複合チップ部品3に含まれている。従って、基準座標系に対する第1ないし第3の磁界発生器71,72,73の位置ずれは生じない。従って、第1ないし第3の付加的磁界成分のそれぞれ方向は、基準座標系において精度よく規定される。そのため、本実施の形態によれば、第1ないし第3の主軸感度と前述の4つの他軸感度を精度よく測定することが可能になる。
前述のように、磁気センサ装置1は、第1ないし第3のセンサ座標系が基準座標系と一致するように設計されている。しかし、複合チップ部品3に対するセンサチップ4のアライメントのずれや、第1ないし第3の磁気センサ10,20,30の相互の位置ずれ等によって、第1ないし第3のセンサ座標系のうちの少なくとも1つが基準座標系と一致しない場合が起こり得る。この場合であっても、本実施の形態によれば、基準座標系を基準とした磁界、すなわち第1ないし第3の付加的磁界成分を用いて測定された第1ないし第3の主軸感度と前述の4つの他軸感度を用いて第1ないし第3の検出信号を補正することにより、第1ないし第3の検出信号を、基準座標系を基準とした検出信号に変換することが可能になる。
なお、本実施の形態では、第3の磁界発生器73によって第3の付加的磁界が発生されたとき、第1および第2の磁気センサ10,20には第3の付加的磁界成分は印加されない。そのため、本実施の形態では、第3の方向に平行な方向についての第1の磁気センサ10の他軸感度と、第3の方向に平行な方向についての第2の磁気センサ20の他軸感度を測定することができない。しかし、本実施の形態では、以下の第1および第2の理由から、上記の2つの他軸感度をいずれも0とみなしても問題はない。第1の理由は、第1および第2の磁気センサ10,20は、本来的に、それらのセンサ座標系におけるZ方向に平行な方向についての感度が小さいことである。第2の理由は、磁気センサ装置1の構造上、基準座標系におけるZ方向に対する第1および第2のセンサ座標系におけるZ方向の傾きは、全くまたはほとんど生じないことである。
次に、集積回路チップ70内の補正処理回路によって、第1ないし第3の検出信号に対して施される補正処理の概略について説明する。
始めに、理想状態を、以下の第1ないし第3の要件によって定義する。第1の要件は、第1の感磁方向は第1の方向に平行な方向と一致し、第2の感磁方向は第2の方向に平行な方向と一致し、第3の感磁方向は第3の方向に平行な方向と一致する、というものである。
第2の要件は、第1の外部磁界成分の変化に対する第1の検出信号の変化の比率と、第2の外部磁界成分の変化に対する第2の検出信号の変化の比率と、第3の外部磁界成分の変化に対する第3の検出信号の変化の比率は等しい、というものである。
第3の要件は、第1の外部磁界成分の変化に対する第2の検出信号の変化の比率と、第1の外部磁界成分の変化に対する第3の検出信号の変化の比率と、第2の外部磁界成分の変化に対する第1の検出信号の変化の比率と、第2の外部磁界成分の変化に対する第3の検出信号の変化の比率と、第3の外部磁界成分の変化に対する第1の検出信号の変化の比率と、第3の外部磁界成分の変化に対する第2の検出信号の変化の比率は、いずれも0である、というものである。
ここで、理想状態における第1の検出信号を第1の理想信号と言い、理想状態における第2の検出信号を第2の理想信号と言い、理想状態における第3の検出信号を第3の理想信号と言う。補正処理は、補正前の第1ないし第3の検出信号に比べて第1ないし第3の補正後信号が第1ないし第3の理想信号に近づくように、第1ないし第3の検出信号を補正して第1ないし第3の補正後信号を生成する処理である。
第1の補正後信号は、例えば、補正前の第1ないし第3の検出信号にそれぞれ第1ないし第3の補正係数を乗じて得られる3つの項の総和である。同様に、第2の補正後信号は、例えば、補正前の第1ないし第3の検出信号にそれぞれ第4ないし第6の補正係数を乗じて得られる3つの項の総和である。同様に、第3の補正後信号は、例えば、補正前の第1ないし第3の検出信号にそれぞれ第7ないし第9の補正係数を乗じて得られる3つの項の総和である。本実施の形態では、第3および第6の補正係数は0である。その他の補正係数は、第1ないし第3の主軸感度と前述の4つの他軸感度の測定結果に基づいて算出される。
[第1ないし第4の変形例]
次に、本実施の形態に係る磁気センサ装置1の第1ないし第4の変形例について説明する。始めに、第1の変形例について説明する。第1の変形例は、第1ないし第3の磁界発生器71,72,73をそれぞれ単独で駆動する動作の他に、第1ないし第3の磁界発生器71,72,73のうちの2つまたは3つを同時に駆動する動作を行うことができるようにしたものである。これにより、第1の変形例では、基準座標系におけるXY平面に平行で且つセンサチップ4と交差する所定の平面内の所定の位置に、任意の方向の磁界を発生させることが可能である。以下、この磁界を、方向可変磁界と言う。第1ないし第3の磁界発生器71,72,73のうちの2つまたは3つを同時に駆動した場合には、これらが発生する2つまたは3つの付加的磁界が合成されて、方向可変磁界が形成される。
例えば、第1および第2の磁界発生器71,72をそれぞれ単独で駆動する動作と、第1および第2の磁界発生器71,72を同時に駆動する動作を組み合わせることによって、方向可変磁界の方向を、基準座標系におけるXY平面に平行な任意の方向に設定することができる。以下、基準座標系におけるXY平面に平行な任意の方向の方向可変磁界を、特に回転磁界MFrと言う。また、第1および第2の磁界発生器71,72の少なくとも一方と、第3の磁界発生器73を同時に駆動することによって、方向可変磁界の方向を、基準座標系におけるXY平面に平行な方向以外の任意の方向に設定することができる。
第1の変形例によれば、上記の所定の位置に磁気センサを配置することにより、この磁気センサに対して、任意の方向の磁界を印加することが可能になる。これにより、例えば、この磁気センサの主軸感度および他軸感度を測定する際の基準座標系を変更することが可能になる。
以下、回転磁界MFrの方向の設定方法のいくつかの例を示す。以下の説明では、基準座標系におけるX方向に対して回転磁界MFrの方向がなす角度を回転磁界角度と言う。回転磁界角度を0°にする場合には、例えば、図20に示したように、電流Ixaの方向を上方から見て時計回り方向とし、電流Ixbの方向を上方から見て反時計回り方向とし、電流Iya,Iybの大きさを0とする。また、回転磁界角度を90°にする場合には、例えば、図22に示したように、電流Iyaの方向を上方から見て時計回り方向とし、電流Iybの方向を上方から見て反時計回り方向とし、電流Ixa,Ixbの大きさを0とする。
回転磁界角度を45°にする場合には、例えば、電流Ixa,Iyaの方向を上方から見て時計回り方向とし、電流Ixb,Iybの方向を上方から見て反時計回り方向とし、電流Ixa,Ixbの各々の大きさに対する電流Iya,Iybの各々の大きさの比率を1とする。図24には、回転磁界角度を45°にする場合における磁界MFa,MFb,MFc,MFd,MFrの方向を、それぞれ記号MFa,MFb,MFc,MFd,MFrを付した矢印で示している。
また、回転磁界角度を30°にする場合には、例えば、電流Ixa,Iyaの方向を上方から見て時計回り方向とし、電流Ixb,Iybの方向を上方から見て反時計回り方向とし、電流Ixa,Ixbの各々の大きさに対する電流Iya,Iybの各々の大きさの比率を1/√(3)とする。
また、回転磁界角度を180°にする場合には、電流Ixaの方向を上方から見て反時計回り方向とし、電流Ixbの方向を上方から見て時計回り方向とし、電流Iya,Iybの大きさを0とする。また、回転磁界角度を270°にする場合には、例えば、電流Iyaの方向を上方から見て反時計回り方向とし、電流Iybの方向を上方から見て時計回り方向とし、電流Ixa,Ixbの大きさを0とする。
次に、図5、図6および図25を参照して、第2の変形例について説明する。図25は、第1の磁界発生器71と第3の磁界発生器73を示す平面図である。第2の変形例では、第1の磁界発生器71の第1および第2のコイル71A,71Bと第3の磁界発生器73は、同一平面上、例えば集積回路チップ70の上面70aの上に配置されている。第1のコイル71Aは、第3の磁界発生器73に対して基準座標系におけるX方向の先に位置している。第2のコイル71Bは、第3の磁界発生器73に対して基準座標系における−X方向の先に位置している。
また、第2の変形例では、絶縁層74C,74Dが設けられていない。絶縁層74Aは、上面70aの上においてコイル71A,71Bおよび第3の磁界発生器73の周囲に配置されている。絶縁層74Bは、コイル71A,71B、第3の磁界発生器73および絶縁層74Aを覆っている。第2の磁界発生器72の第3および第4のコイル72A,72Bと絶縁層74Eは、絶縁層74Bの上に配置されている。
第2の変形例では、絶縁層74C,74Dの分だけ、複合チップ部品3(図1等参照)のZ方向の寸法を、図5および図6に示した例よりも小さくすることができる。
次に、図26および図27を参照して、第3の変形例について説明する。図26は、第1の磁界発生器71と第2の磁界発生器72の一部を示す平面図である。図27は、第2の磁界発生器72の他の一部を示す平面図である。第3の変形例では、第2の磁界発生器72は、第3および第4のコイル72A,72Bの代わりに、第3のコイル72Cと第4のコイル72Dを含んでいる。
上方から見たときの第3のコイル72Cの形状および配置は、第3のコイル72Aと同じである。第3のコイル72Cは、第1および第2のコイル71A,71Bと同一平面上に配置された2つのコイル部分72C1,72C2と、基準平面RP(図1参照)に垂直な方向においてコイル部分72C1,72C2とは異なる位置に配置された2つのコイル部分72C3,72C4とを含んでいる。コイル部分72C1,72C2は、第1のコイル71Aと第2のコイル71Bの間において、基準座標系におけるY方向の互いに異なる位置に配置されている。コイル部分72C3,72C4は、基準座標系におけるX方向の互いに異なる位置に配置されている。
コイル部分72C1〜72C4は、それぞれ、複数の導線部分を含んでいる。上方から見て、コイル部分72C3の複数の導線部分の一部は、コイル部分72C1の複数の導線部分の一部とコイル部分72C2の複数の導線部分の一部に重なっている。上方から見て、コイル部分72C4の複数の導線部分の一部は、コイル部分72C1の複数の導線部分の他の一部とコイル部分72C2の複数の導線部分の他の一部に重なっている。複数の導線部分のうち、上方から見て互いに重なり合った部分は、基準座標系におけるXY平面に沿って平面渦巻き状に複数回巻かれた1つの導線が構成されるように、例えば複数のスルーホールによって接続されている。
また、上方から見たときの第4のコイル72Dの形状および配置は、第4のコイル72Bと同じである。第4のコイル72Dは、第1および第2のコイル71A,71Bと同一平面上に配置された2つのコイル部分72D1,72D2と、基準平面RP(図1参照)に垂直な方向においてコイル部分72D1,72D2とは異なる位置に配置された2つのコイル部分72D3,72D4とを含んでいる。コイル部分72D1,72D2は、第1のコイル71Aと第2のコイル71Bの間において、基準座標系におけるY方向の互いに異なる位置に配置されている。コイル部分72D3,72D4は、基準座標系におけるX方向の互いに異なる位置に配置されている。
コイル部分72D1〜72D4は、それぞれ、複数の導線部分を含んでいる。上方から見て、コイル部分72D3の複数の導線部分の一部は、コイル部分72D1の複数の導線部分の一部とコイル部分72D2の複数の導線部分の一部に重なっている。上方から見て、コイル部分72D4の複数の導線部分の一部は、コイル部分72D1の複数の導線部分の他の一部とコイル部分72D2の複数の導線部分の他の一部に重なっている。複数の導線部分のうち、上方から見て互いに重なり合った部分は、基準座標系におけるXY平面に沿って平面渦巻き状に複数回巻かれた1つの導線が構成されるように、例えば複数のスルーホールによって接続されている。
ここで、第3および第4のコイル72C,72Dと絶縁層74B,74C,74D,74E,74F(図5および図6参照)との位置関係について説明する。コイル部分72C1,72C2,72D1,72D2は、絶縁層74Bの上に配置されている。絶縁層74Cは、絶縁層74Bの上においてコイル71A,71Bおよびコイル部分72C1,72C2,72D1,72D2の周囲に配置されている。絶縁層74Dは、コイル71A,71B、コイル部分72C1,72C2,72D1,72D2および絶縁層74Cを覆っている。コイル部分72C3,72C4,72D3,72D4は、絶縁層74Dの上に配置されている。前記複数のスルーホールは、絶縁層74Dに埋め込まれている。絶縁層74Eは、絶縁層74Dの上においてコイル部分72C3,72C4,72D3,72D4の周囲に配置されている。絶縁層74Fは、コイル部分72C3,72C4,72D3,72D4および絶縁層74Eを覆っている。
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。始めに、図28を参照して、本実施の形態に係る磁気センサ装置1の構成が第1の実施の形態と異なる点について説明する。図28は、本実施の形態における第3の磁界発生器を示す平面図である。上方から見たときに、第3の磁界発生器73は、正方形またはほぼ正方形の外周および内周を有している。本実施の形態では、上方から見たときに、第3の磁界発生器73は、第1ないし第4の部分領域A11,A12,A21,A22を囲っている。
なお、図示しないが、第1および第2の磁界発生器71,72の構成、形状および配置は、第1の実施の形態と同じである。
次に、図28を参照して、第3の磁界発生器73が発生する第3の付加的磁界の作用および効果について説明する。本実施の形態では、第3の磁界発生器73によって第3の付加的磁界が発生されたとき、第1ないし第3の磁気センサ10,20,30の各々には、第3の付加的磁界成分が印加される。第3の付加的磁界成分は、第3の付加的磁界の、第3の方向すなわち基準座標系におけるZ方向に平行な方向の成分である。
本実施の形態では、集積回路チップ70(図2等参照)内の制御回路によって第3の磁界発生器73を制御して第3の付加的磁界成分の強度を変化させ、集積回路チップ70内の補正処理回路によって、そのときの第1の検出信号の変化の情報を取得することにより、補正処理回路によって、第3の方向に平行な方向についての第1の磁気センサ10の他軸感度を測定することができる。
同様に、制御回路によって第3の磁界発生器73を制御して第3の付加的磁界成分の強度を変化させ、補正処理回路によって、そのときの第2の検出信号の変化の情報を取得することにより、補正処理回路によって、第3の方向に平行な方向についての第2の磁気センサ20の他軸感度を測定することができる。
第1の実施の形態で説明したように、第3の付加的磁界成分の方向は、基準座標系において精度よく規定される。そのため、本実施の形態によれば、上記の2つの他軸感度を精度よく測定することが可能になる。
なお、第1の実施の形態で説明したように、補正処理回路によって第1ないし第3の検出信号に対して施される補正処理では、第1ないし第9の補正係数が用いられる。本実施の形態では、第1ないし第9の補正係数は、上記2つの他軸感度の測定結果と、第1の実施の形態で説明した第1ないし第3の主軸感度および4つの他軸感度の測定結果に基づいて算出される。
[第1ないし第3の変形例]
次に、本実施の形態に係る磁気センサ装置1の第1ないし第3の変形例について説明する。始めに、図29および図30を参照して、第1の変形例について説明する。図29は、第1の磁界発生器71と第3の磁界発生器73を示す平面図である。図30は、第2の磁界発生器72を示す平面図である。第1の変形例では、第1の磁界発生器71の第1および第2のコイル71A,71Bと第3の磁界発生器73は、同一平面上、例えば集積回路チップ70の上面70a(図5および図6参照)の上に配置されている。なお、図29に示した例では、第3の磁界発生器73のX方向の寸法とY方向の寸法は、図28に示した例よりも小さい。
図29に示したように、第1のコイル71Aは、第3の磁界発生器73に対して基準座標系におけるX方向の先の位置に配置されている。第1のコイル71AのX方向の寸法とY方向の寸法は、第1の実施の形態における図4等に示した第1のコイル71Aよりも大きい。
図29に示したように、第2のコイル71Bは、第3の磁界発生器73に対して基準座標系−X方向の先の位置に配置されている。第2のコイル71BのX方向の寸法とY方向の寸法は、第1の実施の形態における図4等に示した第2のコイル71Bよりも大きい。
図30に示したように、第2の磁界発生器72の第3のコイル72Aは、上方から見たときに、第3の磁界発生器73に対して基準座標系におけるY方向の先の位置に配置されている。第3のコイル72AのX方向の寸法とY方向の寸法は、第1の実施の形態における図4等に示した第3のコイル72Aよりも大きい。
図30に示したように、第2の磁界発生器72の第4のコイル72Bは、上方から見たときに、第3の磁界発生器73に対して基準座標系における−Y方向の先の位置に配置されている。第4のコイル72BのX方向の寸法とY方向の寸法は、第1の実施の形態における図4等に示した第4のコイル72Bよりも大きい。
ここで、第1ないし第3の磁界発生器71〜73と、第1の実施の形態における図5および図6に示した絶縁層74A〜74Eとの位置関係について説明する。第1の変形例では、絶縁層74C,74Dが設けられていない。絶縁層74Aは、集積回路チップ70の上面70aの上においてコイル71A,71Bおよび第3の磁界発生器73の周囲に配置されている。絶縁層74Bは、コイル71A,71B、第3の磁界発生器73および絶縁層74Aを覆っている。第2の磁界発生器72の第3および第4のコイル72A,72Bと絶縁層74Eは、絶縁層74Bの上に配置されている。
第1の変形例では、絶縁層74C,74Dの分だけ、複合チップ部品3(図1等参照)のZ方向の寸法を、図5および図6に示した例よりも小さくすることができる。
次に、図31を参照して、第2の変形例について説明する。図31は、第1の磁界発生器71と第3の磁界発生器73を示す平面図である。第2の変形例は、以下の点で第1の変形例と異なっている。第2の変形例では、第1の変形例と同様に、第1の磁界発生器71の第1および第2のコイル71A,71Bと第3の磁界発生器73は同一平面上に配置されている。ただし、上方から見たときに、第3の磁界発生器73は、第1および第2のコイル71A,71Bを囲っている。
また、図示しないが、上方から見たときに、第2の磁界発生器72の第3および第4のコイル72A,72Bは、第3の磁界発生器73を構成する第5のコイルの内周の内側に位置している。
次に、図32および図33を参照して、第3の変形例について説明する。図32は、第1の磁界発生器71と第2の磁界発生器71の一部と第3の磁界発生器73の一部を示す平面図である。図33は、第2の磁界発生器72の他の一部と第3の磁界発生器73の他の一部を示す平面図である。第3の変形例では、第2の磁界発生器72は、第3および第4のコイル72A,72Bの代わりに、第1の実施の形態の第3の変形例において説明した第3のコイル72Cと第4のコイル72Dを含んでいる。第3のコイル72Cは、コイル部分72C1,72C2,72C3,72C4を含んでいる。第4のコイル72Dは、コイル部分72D1,72D2,72D3,72D4を含んでいる。
第3の磁界発生器73を構成する第5のコイルは、第1の磁界発生器71の第1および第2のコイル71A,71B、第3のコイル72Cのコイル部分72C1,72C2、および第4のコイル72Dのコイル部分72D1,72D2と同一平面上に配置された4つのコイル部分73A1,73A2,73A3,73A4と、基準平面RP(図1参照)に垂直な方向においてコイル部分73A1〜73A4とは異なる位置に配置された4つのコイル部分73B1,73B2,73B3,73B4とを含んでいる。コイル71A,71Bおよびコイル部分72C1,72C2,72D1,72D2,73A1〜73A4は、例えば集積回路チップ70の上面70a(図5および図6参照)の上に配置されている。
コイル部分73A1は、第1のコイル71Aの内周の内側の中空部に位置する。コイル部分73A2は、第2のコイル71Bの内周の内側の中空部に位置する。コイル部分73A3は、第3のコイル72Cの内周の内側の中空部のうち、コイル部分72C1とコイル部分72C2の間に位置する。コイル部分73A4は、第4のコイル72Dの内周の内側の中空部のうち、コイル部分72D1とコイル部分72D2の間に位置する。
コイル部分73B1は、第3のコイル72Cの内周の内側の中空部のうち、コイル部分73C3によって囲まれた部分に位置する。コイル部分73B2は、第3のコイル72Cの内周の内側の中空部のうち、コイル部分73C4によって囲まれた部分に位置する。コイル部分73B3は、第4のコイル72Dの内周の内側の中空部のうち、コイル部分73D3によって囲まれた部分に位置する。コイル部分73B4は、第4のコイル72Dの内周の内側の中空部のうち、コイル部分73D4によって囲まれた部分に位置する。
コイル部分73A1〜73A4,73B1〜73B4は、それぞれ、複数の導線部分を含んでいる。上方から見て、コイル部分73B1の複数の導線部分の一部は、コイル部分73A1の複数の導線部分の一部とコイル部分73A3の複数の導線部分の一部に重なっている。上方から見て、コイル部分73B2の複数の導線部分の一部は、コイル部分73A2の複数の導線部分の一部とコイル部分73A3の複数の導線部分の一部に重なっている。上方から見て、コイル部分73B3の複数の導線部分の一部は、コイル部分73A1の複数の導線部分の一部とコイル部分73A4の複数の導線部分の一部に重なっている。上方から見て、コイル部分73B4の複数の導線部分の一部は、コイル部分73A2の複数の導線部分の一部とコイル部分73A4の複数の導線部分の一部に重なっている。複数の導線部分のうち、上方から見て互いに重なり合った部分は、基準座標系におけるXY平面に沿って平面渦巻き状に複数回巻かれた1つの導線が構成されるように、例えば複数のスルーホールによって接続されている。
ここで、第1ないし第3の磁界発生器71〜73と、第1の実施の形態における図5および図6に示した絶縁層74A〜74Eとの関係について説明する。第3の変形例では、絶縁層74C,74Dが設けられていない。絶縁層74Aは、集積回路チップ70の上面70aの上においてコイル71A,71Bおよびコイル部分72C1,72C2,72D1,72D2,73A1〜73A4の周囲に配置されている。絶縁層74Bは、コイル71A,71B、コイル部分72C1,72C2,72D1,72D2,73A1〜73A4および絶縁層74Aを覆っている。コイル部分72C3,72C4,72D3,72D4,73B1〜73B4は、絶縁層74Bの上に配置されている。絶縁層74Eは、絶縁層74Bの上においてコイル部分72C3,72C4,72D3,72D4,73B1〜73B4の周囲に配置されている。絶縁層74Fは、コイル部分72C3,72C4,72D3,72D4,73B1〜73B4および絶縁層74Eを覆っている。
第3の変形例では、絶縁層74C,74Dの分だけ、複合チップ部品3(図1等参照)のZ方向の寸法を、図5および図6に示した例よりも小さくすることができる。
本実施の形態におけるその他の構成、作用および効果は、第1の実施の形態と同様である。
[第3の実施の形態]
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。始めに、本実施の形態に係る磁気センサ装置1の構成が第1の実施の形態と異なる点について説明する。本実施の形態では、第1の実施の形態における第3の磁界発生器73、絶縁層74A,74Bが設けられていない。第1の磁界発生器71と絶縁層74Cは、集積回路チップ70の上面70a(図5および図6参照)の上に配置されている。
次に、図34を参照して、本実施の形態における第3の付加的磁界について説明する。図34は、第1および第2の磁界発生器71,72の作用を示す説明図である。本実施の形態では、第1の磁界発生器71の第1および第2のコイル71A,71Bと、第2の磁界発生器72の第3および第4のコイル72A,72Bは、協働して、第3の付加的磁界を発生させる。第1ないし第4のコイル71A,71B,72A,72Bによって第3の付加的磁界が発生されたとき、第3の磁気センサ30には、第3の付加的磁界成分が印加される。
第3の付加的磁界成分の方向は、第1のコイル71Aに流す電流Ixaと、第2のコイル71Bに流す電流Ixbと、第3のコイル72Aに流す電流Iyaと、第4のコイル72Bに流す電流Iybによって制御される。第3の磁気センサ30に、基準座標系におけるZ方向の第3の付加的磁界成分を印加する場合には、電流Ixa,Ixb,Iya,Iybの方向をそれぞれ上方から見て時計回り方向とする。また、第3の磁気センサ30に、基準座標系における−Z方向の第3の付加的磁界成分を印加する場合には、電流Ixa,Ixb,Iya,Iybの方向をそれぞれ上方から見て反時計回り方向とする。電流Ixa,Ixb,Iya,Iybの大きさは、互いに等しいかほぼ等しい。なお、電流Ixa,Ixbと電流Iya,Iybを所定の間隔で交互に流してもよい。
図34には、第3の磁気センサ30に、基準座標系における−Z方向の第3の付加的磁界成分を印加する場合の、電流Ixa,Ixb,Iya,Iybの方向を示している。図34において、符号MF3を付した記号は、第3の磁気センサ30に印加される第3の付加的磁界成分の方向を表している。
なお、第3の磁気センサ30に第3の付加的磁界成分を印加する場合には、第1および第2の磁気センサ10,20にも、第3の付加的磁界の一部が印加される。図34には、第3の磁気センサ30に、基準座標系における−Z方向の第3の付加的磁界成分がされたときの、第3の付加的磁界の、基準座標系におけるXY平面に平行な成分MF3a,MF3b,MF3c,MF3dを示している。成分MF3aは、第1の磁気センサ10の第1の部分11に印加される成分である。成分MF3bは、第1の磁気センサ10の第2の部分12に印加される成分である。成分MF3cは、第2の磁気センサ20の第1の部分21に印加される成分である。成分MF3dは、第2の磁気センサ20の第2の部分22に印加される成分である。
本実施の形態では、第3の磁界発生器73を設けずに、第3の磁気センサ30に第3の付加的磁界成分を印加することができる。これにより、本実施の形態によれば、複合チップ部品3(図1等参照)のZ方向の寸法を小さくすることができる。
本実施の形態におけるその他の構成、作用および効果は、第1の実施の形態と同様である。
なお、本発明は、上記各実施の形態に限定されず、種々の変更が可能である。例えば、第1ないし第3の磁気センサ10,20,30と第1ないし第3の磁界発生器71,72,73の構成は、各実施の形態に示した例に限られず、請求の範囲の要件を満たすものであればよい。
また、本発明の磁気センサ装置は、磁気センサ10,20,30のうちの1つまたは2つの磁気センサのみを備えていてもよい。磁気センサ装置が1つの磁気センサのみを備えている場合には、その磁気センサが本発明における第1の磁気センサに対応する。磁気センサ装置が2つの磁気センサのみを備えている場合には、その2つの磁気センサが本発明における第1および第2の磁気センサに対応する。