JP2020093249A - 分離膜デバイスおよびその製造方法 - Google Patents

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【課題】吸着剤と被処理液の接触を抑制し、かつ除去対象物質を効率的に除去することが可能である、分離膜デバイスを提供する。【解決手段】中空糸膜と、前記中空糸膜を覆うケーシングとを備え、前記中空糸膜の外側表面の平均細孔径(Do)と、内側表面の平均細孔径(Di)とが、Do>Diの関係を満たす内側緻密構造を有するものであり、さらに、外側表面の細孔に、平均粒径が0.01μm〜10μmの範囲内である粉粒体が含まれてなる、分離膜デバイス。【選択図】なし

Description

本発明は、分離膜デバイスおよびその製造方法に関する。
分離膜デバイスは、河川や海水、下廃水から濁質やイオンを取り除き、工業用水や飲料水を製造するための水処理用膜、果汁濃縮等の食品・飲料工業用膜、炭酸ガス等を分離するガス分離膜等、分離膜デバイスは、多岐に渡る用途で使用され、被処理液に含まれる除去対象の物質を排除する目的で用いられる。医療の分野においても、特に体外循環による治療分野において、一般に用いられる医療用途の分離膜デバイスとして、人工腎臓(ダイアライザー)が良く知られている。人工腎臓は、腎機能障害を来たした患者に人工透析を行う際に用いられるデバイスである。その他、吸着剤をカラムに装填した分離膜デバイスも近年用いられてきている。
腎機能に障害を来たした患者は、リン排泄の減少によって高リン血症を併発することが多い。高リン血症はカルシウムやリンの代謝に異常をきたし、血清カルシウムの低下、PHT産生および分泌の促進、異所性石灰化、およびビタミンD活性化抑制などによる腎性骨形成異常症を引き起こし得る。腎機能の障害が進行し、腎不全により透析療法に移行しても、恒常的なリン排泄が行われない限り上記の病態は持続する。そのため、高リン血症の治療は、透析患者、未透析患者の双方にとって必要不可欠なものとなっている。現在、高リン血症の治療は、食事療法によるか、または経口リン吸着剤によることとなっているものの、食事療法のみにより高リン血症の症状を改善することは困難であり、経口リン吸着剤の使用が必要となることが多い。
しかし、一生涯の透析治療とともに、経口リン吸着剤を継続して服用しなければならないことと、その副作用(血中カルシウム濃度の上昇、便秘、および腹部膨張等)を考慮すれば、患者のQOL(クオリティ・オブ・ライフ)を向上することのできる新たな治療形態を検討すべき余地がある。
よって、上記目的に資する新たな分離膜デバイスを提供することは、上記した医療分野においても、意義のあることである。
ここで、特許文献1では、分離膜デバイスのひとつであるリン吸着カラムと、ダイアライザーとの併用について記載されている。
また、特許文献2では、処理を行うための液体である透析液に粒子状のリン吸着剤を分散させた医療デバイスが記載されている。当該医療デバイスでは、吸着剤であるリン吸着剤を透析液に分散させることで、被処理液である血液と吸着剤が直接接触させることを避けている。
特開2002−102335号公報 国際公開第2011/125758号
しかしながら、特許文献1に記載されているような手法の場合、リン吸着剤としては特定構造のポリカチオン性ポリマーが開示されているのみである。また、カラム内に充填したリン吸着剤が溶出し、体内に入るのを防ぐために、下流に活性炭カラムを設置する構成を取っている。しかし活性炭と接触した血液からは、生体に必要なカルシウムイオンまでもが除去されてしまうため、カルシウム提供部をさらに追加的に設けざるを得ない。すなわち、血液透析システムとしては、非常に煩雑な構成となる虞があった。
特許文献2に記載されているような手法の場合、透析液における吸着剤(粒子)の沈降を防ぎ、透析液全体に吸着剤が均一に分散した状態を維持することが難しい。また、かかる吸着剤を含む透析液によって除去対象物質を十分に除去するためには、吸着剤をカラムに担持するような方法に較べて、多量の吸着剤を必要とする。
本発明は上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、吸着剤と被処理液の接触を抑制し、かつ除去対象物質を効率的に除去することが可能である、分離膜デバイスを提供する。
本発明の分離膜デバイスは次の構成を有する。すなわち、
中空糸膜と、前記中空糸膜を覆うケーシングとを備え、
前記中空糸膜の外側表面の平均細孔径(Do)と、内側表面の平均細孔径(Di)とが、Do>Diの関係を満たす内側緻密構造を有するものであり、
さらに、外側表面の細孔に、平均粒径が0.01μm〜10μmの範囲内である粉粒体が含まれてなる、分離膜デバイス、である。
本発明によれば、吸着剤と被処理液の接触を抑制し、かつ除去対象物質を効率的に除去することが可能である、分離膜デバイスを得ることができる。
本発明に係る分離膜デバイスの一実施形態を例示する縦断面図である。 本発明に係る浄化カラムに使用される、粉粒体を含む中空糸膜の軸に直行した方向の断面図である。
本発明の分離膜デバイスについて、以下、具体的に説明する。
本発明の分離膜デバイスは、中空糸膜と、前記中空糸膜を覆うケーシングとを備え、
前記中空糸膜の外側表面の平均細孔径(Do)と、内側表面の平均細孔径(Di)とが、Do>Diの関係を満たす内側緻密構造を有するものであり、さらに、外側表面の細孔に、平均粒径が0.01μm〜10μmの範囲内である粉粒体が含まれてなる。
<中空糸膜>
本発明でいう中空糸膜とは、中空を有する糸状の形態を有するものである。そして膜とは、表面に細孔を有し、細孔のサイズに応じて透過する物質と透過しない物質を選択分離できるものである。また、疎水性高分子を主成分として、これに疎水性基を有しない親水性高分子が配合された高分子材料により構成されてなる。ここで、「主成分」とは、中空糸膜を構成する成分のうち、最も含有量が高いものを言う。
疎水性高分子の濃度を高くすることで、中空糸膜の機械的強度を高めることができる。そのため、中空糸膜を作製する際の、製膜原液における疎水性高分子の濃度は14質量%以上とすることが好ましい。一方で、疎水性高分子の濃度が高めていくと、中空糸の製造段階で、溶解性の低下や製膜原液の粘度増加による吐出不良などの問題を生じやすくなる。また、得られる中空糸膜内表面の密度が上がり、透水性および分画分子量が低下していく。これらの問題を回避または低減し得るため、製膜原液における疎水性高分子の濃度は、24質量%以下とすることが好ましい。
中空糸膜の製造に用いられる具体的な疎水性高分子としては、ポリスルホン系高分子、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリロニトリルなどが挙げられる。中でも、ポリスルホン系高分子は中空糸膜を形成させることが容易であるため、好適に使用される。本発明に用いられる中空糸膜についても、ポリスルホン系高分子と親水性高分子を含むものが好ましい。
本発明でいうポリスルホン系高分子とは、主鎖に芳香環、スルフォニル基およびエーテル基を有する高分子である。ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリールエーテルスルホンなどが挙げられる。例えば、次式(1)または(2)の化学式で示されるポリスルホン系高分子が好適に使用される。式中のnは、50〜80の範囲内であることが好ましい。式(1)と式(2)であらわされるポリスルホン系高分子は組み合せて用いても良い。
Figure 2020093249
ポリスルホン系高分子の具体例としては、ユーデル(登録商標)ポリスルホンP−1700、P−3500(ソルベイ社製)、ウルトラソン(登録商標)S3010、S6010(BASF社製)、ビクトレックス(登録商標)(住友化学)、レーデル(登録商標)A(ソルベイ社製)、ウルトラソン(登録商標)E(BASF社製)、スミカエクセル(登録商標)PES(住友化学)等が挙げられる。また、ポリスルホンとしては、上記式(1)および/または(2)で表される繰り返し単位のみからなる高分子が好適ではあるが、本発明の効果を妨げない範囲で他のモノマーと共重合しているものや、変性体であっても良い。特に限定するものではないが、他の共重合モノマーは10質量%以下であることが好ましい。 本発明でいう親水性高分子とは、親水性ユニットを含有する高分子であり、かつ、水もしくはエタノールに可溶である高分子のことを言う。親水性高分子は、疎水性ユニットを有しないことが好ましい。ここで、「可溶である」とは、20℃での水もしくはエタノール100gに対して、0.1g以上溶解することを指す。
親水性高分子としては、ポリビニルピロリドン、ポリアルキレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリエチレンイミン、ポリアクリル酸などが好ましく用いられる。中でも、ポリスルホン系高分子との相溶性という観点から、ポリビニルピロリドンがより好ましく用いられる。
<膜厚>
中空糸膜の膜厚は、薄くなるほど境膜物質移動係数を低減できるために中空糸膜の物質除去性能は向上する。一方で、膜厚が薄すぎると、製造段階で糸切れや乾燥時のつぶれが発生しやすくなる。中空糸膜のつぶれ易さは、中空糸膜の膜厚と内径に相関がある。そのため、中空糸膜の膜厚は20μm以上が好ましく、25μm以上がより好ましい。一方、50μm以下が好ましく、45μm以下がより好ましい。
中空糸膜の内径は80μm以上が好ましく、100μm以上がより好ましく、120μm以上がさらに好ましい。一方、250μm以下が好ましく、200μm以下がより好ましく、160μm以下がさらに好ましい。
上記中空糸膜内径とは、ランダムに選別した16本の中空糸膜の膜厚をマイクロウォッチャーの1000倍レンズ(VH−Z100;株式会社KEYENCE)で測定し、測定した膜厚の平均値aを求め、以下の式3より算出した値をいう。なお、中空糸膜外径とは、ランダムに選別した16本の中空糸膜の外径をレーザー変位計(例えば、LS5040T;株式会社KEYENCE)でそれぞれ測定して求めた平均値をいう。
式3:
中空糸膜内径(μm)=中空糸膜外径(μm)―2×膜厚(μm)
<中空糸膜の内側緻密構造>
本発明において、中空糸膜の外側平均細孔径(Do)と、内側表面の細孔径である内側平均細孔径(Di)は、Do>Diの関係を満たす。すなわち、本発明に用いられる中空糸膜は、内側緻密構造を有する。
中空糸膜の外側平均細孔径は次に示す方法により測定することが可能である。まず、中空糸膜を十分に湿らせた後に液体窒素に浸し、細孔内の水分を液体窒素で瞬間的に凍結させる。その後、速やかに中空糸膜を折り、0.1torr以下の真空乾燥機内で凍結させた水分を除去して乾燥試料を得る。乾燥した中空糸膜を片刃で半円筒状にそぎ切り、外表面が上向きとなるように両面テープで試料台に貼り付ける。その後、スパッタリングにより、白金(Pt)や白金−パラジウム(Pt−Pd)などの薄膜を中空糸膜外表面に形成して、観察試料とした。走査型電子顕微鏡(たとえば株式会社日立ハイテクノロジーズ社製、S−5500)にて50000倍で観察する。任意の中空糸膜外表面の電子顕微鏡像を印刷したものの上に透明シートを重ね、黒いペンなどを用いて細孔の部分を黒く塗りつぶす。また、定規と黒いペンを用いて、スケールバーも正確に写す。その後、透明シートを白紙にコピーすることにより、細孔は黒、非細孔部分は白と明確に区別することができる。その後、画像解析ソフトを用いて、平均細孔径を求めることができる。画像解析ソフトとしては例えば、「Image J」(開発元Wayne Rasband (NIH))の「Analyze Particles」を用いて計測および細孔の平均細孔径を求めることができる。
中空糸膜の内側平均細孔径は、先述の中空糸膜外側平均細孔径の測定に供した観察試料を用いて、同様の測定方法により得ることができる。但し、試料台には中空糸膜内表面が上向きとなるように貼り付けることが必要である。
<粉粒体>
また、本発明の分離膜デバイスには、粉粒体が含まれている。
前記粉粒体の平均粒径(粒子の直径)は、可能な限り小さいことが好ましい。平均粒径を小さくすることで、比表面積が大きく、吸着効率が高くなりやすい。また、平均粒径が小さいほど、外側表面の細孔内へ導入しやすい。このため、前記粉粒体の平均粒径は、10μm以下が好ましく、5μm以下がより好ましく、1μm以下がさらに好ましい。
一方、前記平均粒径が中空糸膜の細孔径より小さい場合、粉粒体が細孔を通過して血液等の被処理液中に溶出するおそれがある。従って、前記平均粒径は、中空糸膜の細孔径より大きい方が好ましい。このため、前記粉粒体の平均粒径は、0.01μmを超えることが好ましく、0.02μm以上がより好ましく、0.05μm以上がさらに好ましい。
ここで、粉粒体が一次粒子の凝集体の場合、本発明にいう粉粒体の平均粒径とは、一次粒子の凝集体の直径の平均を意味する。すなわち、一次粒子の凝集体の平均粒径が、上記に示す範囲内にあればよい。凝集体に含まれる個々の一次粒子が上記の範囲内である必要はない。
次に、本発明における、粉粒体の平均粒径の測定方法について詳述する。ここでの平均粒径(Dp)は上述のとおり、平均直径を意味する。このDpは光散乱法を用いて行うのが一般的であり、アルゴンや“ヘリウム−ネオン”レーザーを分散液に照射し散乱光を測定することにより求めることができる。この時、粒子の分布が一山であればDpは体積基準の計算により求めることができる。もし、分布に複数のピークを有する多相性があったり、不均一であったりする場合は適宜ピークを分割して体積基準の粒径を求める。
<中空糸膜外側細孔内への粉粒体の導入>
本発明の分離膜デバイスにおいては、吸着剤である粉粒体が、中空糸膜の外側細孔内に含まれている。被処理液と粉粒体の距離を極力近づけることにより、被処理液中の除去対象物質を吸着除去する吸着性能が高くなりやすい。粉粒体が外側細孔内に含まれている状態とは、粉粒体が使用している間に容易に脱離してしまわないように、外側の細孔内に化学的もしくは物理的に導入され、膜に保持されている状態をいう。ここで言う、外側細孔内とは、中空糸膜の細孔内部のみに粉粒体が存在していることを定義しているものではなく、外表面から粉粒体が一部露出していても良いし、外表面において保持されている状態でもかまわない。
これを達成する方法としては例えば、中空糸膜表面にカチオン性基もしくはアニオン性基を付与し、それと反応する官能基を有する粉粒体を反応させて固定化する方法、粒子自体にカチオン性基もしくはアニオン性基を付与し、その官能基に反応する架橋性物質を用いて粒子群を架橋させて固定化する方法が挙げられる。さらには、粉粒体の周りをコーティング処理し、閉じ込める方法などが考えられる。コーティング処理の一形態としては、ポリマーゲルで覆って閉じこめる方法などが考えられる。
上記した、粉粒体の周囲をポリマーゲルで覆って閉じこめる方法としては、粉粒体を有する懸濁液を一方の側から濾過をかけながら膜内に充填し、同時もしくは粒子充填後にコーティング処理用の材料も濾過をかけながら充填した後に架橋させて固定化させる方法が挙げられる。粒子を充填する順番は先にポリマーゲルを導入した場合には後に粒子が物理的に入りづらくなるため、先に粉粒体を導入してから、ポリマーゲルを導入することが好ましい。この順番に導入することによれば、ポリマーゲルは導入しにくいが、ポリマーゲルによって粒子が覆われ、中空糸膜に対し、粒子の固定をより確実に行うことができる。
図1には、本発明に係る分離膜デバイスの一実施形態を例示する縦断面図を示すが、ここでは、本発明の一実施形態として、粉粒体を含む中空糸が、それぞれポリマーゲルによりその外側表面が覆われている態様を示している。また、図2では、本発明に係る浄化カラムに使用される、粉粒体を含む中空糸膜の軸に直行した方向の断面図を示すが、ここでも、中空糸膜の外側がポリマーゲルにより覆われてなる態様を示している。コーティング処理の態様としては、中空糸膜の外側が少なくとも覆われていることが好ましく、中空糸膜の内側がさらに覆われていてもよい。
また、本発明に用いられる該粉粒体の平均粒径(Dp)は、中空糸膜の外側平均細孔径(Do)よりも大きいことが好ましい。DpがDoよりも大きいことにより、膜に粒子が捕捉されて導入効率を高くすることができる。さらに、DpがDoの2倍以上の場合には、捕捉される割合を高めることができるため好ましく、5倍以上の場合は実質的にほとんどの粒子を捕捉できるためにさらに好ましい。これらの粉粒体を充填する操作およびポリマーを導入する操作は、中空糸膜を溶液に浸漬して行うことも可能であるが、中空糸膜をモジュールの形にしてから濾過をかけながら行うことにより、それぞれの物質を安定して導入することができるので、好ましい。
本発明の分離膜デバイスの吸着性能を高めるためには、中空糸膜の外側表面における前記粉粒体の充填率が、5%以上であることが好ましく、10%以上であることがより好ましく、20%以上であることがさらに好ましい。また、粉粒体を充填後、ポリマーゲルを導入しやすくするためには、前記粉粒体の充填率が、90%以下であることが好ましく、80%以下であることがより好ましく、70%以下であることがさらに好ましい。
前記中空糸膜の外側表面における充填率は、次の方法により測定することができる。
まず、外側平均細孔径の測定方法同様に中空糸外側を上向きに試料台に固定化する。その後、スパッタリングにより、白金(Pt)や白金−パラジウム(Pt−Pd)などの薄膜を中空糸膜外表面に形成して、観察試料とした。走査型電子顕微鏡(たとえば株式会社日立ハイテクノロジーズ社製、S−5500)にて400倍で観察する。任意の中空糸膜外表面の電子顕微鏡像を印刷したものの上に透明シートを重ね、黒いペンなどを用いて粉粒体の部分を黒く塗りつぶす。また、定規と黒いペンを用いて、スケールバーも正確に写す。その後、透明シートを白紙にコピーすることにより、粉粒体は黒、非粉粒体部分は白と明確に区別することができる。その後、画像解析ソフトを用いて、粉粒体の総面積を求めることができる。画像解析ソフトとしては例えば、「Image J」(開発元Wayne Rasband (NIH))の「Analyze Particles」を用いて粉粒体の総面積を求めることができる。その後、下記式4により中空糸膜の外側表面における充填率を求めることができる。
式4:
中空糸膜の外側表面における充填率(%)=(外側表面に占める粉粒体の面積/中空糸膜の外側表面積)×100
また、本発明の分離膜デバイスは、前記中空糸膜の外側表面が、ポリマーにより覆われてなることが好ましい。前記ポリマーは、ポリマーゲルであることがより好ましい。
粉粒体が含まれてなる中空糸膜の外側表面を、さらにポリマーで覆うことにより、粉粒体が、中空糸膜から剥離することを抑制し、分離膜デバイスとしての、除去性能の低下を抑えることができる。
ポリマーゲルはポリマーを架橋して作製することができる。架橋の方法としては、γ線を照射して架橋させる方法、化学的な反応を用いて架橋させる方法が挙げられる。γ線を用いて架橋させる方法としては、ポリマーゲルとしてポリピニルピロリドンやポリビニルアルコールなどの、γ線によって架橋する物質を用いることが挙げられる。一方、化学的な反応を用いて架橋させる方法としては、カチオン性のポリマーとアニオン性のポリマーを反応させてゲルを作製することが挙げられる。
ポリマーゲルの製造に用いられるカチオン性ポリマーとしては、その分子中にカチオン性基を有しているものであれば特に制限はされない。そして、カチオン性ポリマーは、水に溶解または膨潤することが可能な程度の親水性を有し、水中でカチオン性基がプラスの電荷を帯びるという特性を有するものが好ましく使用される。カチオン性基としては、例えばアミノ基;メチルアミノ基、エチルアミノ基等のモノアルキルアミノ基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等のジアルキルアミノ基;イミノ基;グアニジノ基などが挙げられ、カチオン性ポリマーとしては、1分子中に2個以上のアミノ基を有するポリマーが好ましい。カチオン性ポリマーとしては、キトサン、部分脱アセチル化キチン、アミノ化セルロース等の塩基性多糖類;ポリリジン、ポリアルギニン、リジンとアルギニンの共重合体等の塩基性アミノ酸の単独重合体または共重合体;ポリビニルアミン、ポリアリルアミン等の塩基性ビニルポリマー、およびこれらの塩類(塩酸塩、酢酸塩等)などのカチオン性ポリマー、ポリエチレンイミンなどのポリマーを挙げることができる。さらに、これらのカチオン性ポリマーを架橋することによって得られる架橋ポリマーを用いることもできる。カチオン性ポリマーを架橋する方法としては、公知の方法のいずれも用いることができる。
カチオン性ポリマーがアミノ基を有する場合には、カチオン性ポリマーのアミノ基をジカルボン酸またはジカルボン酸無水物と縮合反応させることにより架橋する方法が好ましい。カチオン性ポリマーの分子量は特に制限されないが、分子の大きさが、膜の細孔径よりも小さい場合には、膜内に保持しやすくなることから、水中での大きさが、膜細孔径よりも小さいことが好ましい。この分子の大きさは、GPC−MALLS法により測定することができる。また、本発明では2種類以上のポリカチオン性ポリマーを用いることもできる。
本発明に用いられるアニオン性ポリマーとしては、その分子中にアニオン性基を有しているものであればよい。アニオン性基としては、例えばカルボキシル基、硫酸基、スルホン酸基、リン酸基などが挙げられ、アニオン性ポリマーとしては、分子中にカルボキシル基を有するポリマーが好ましく、酸性多糖類がより好ましい。酸性多糖類としては、アルギン酸、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、デキストラン硫酸、ペクチン、キサンタンガム、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルデキストラン、カルボキシメチルデンプン、カルボキシメチルキトサン、硫酸化セルロース、硫酸化デキストラン、カルボキシメチルセルロース酢酸エステル、カルボキシメチルデキストラン酢酸エステル、アルギン酸エチレングリコールエステル、アルギン酸プロピレングリコールエステル、ヒアルロン酸エチレングリコールエステル、ヒアルロン酸プロピレングリコールエステル等が挙げられる。これらの中でもキサンタンガムなどの分岐型のポリマーは水中で膨潤しやすいので好ましい。
また、上述の如く、前記ポリマーゲルは中空糸膜の内側表面に覆われてもいい。前記ポリマーゲルにより、内側表面が覆われていることにより、粉粒体が血液と接触することを抑制しやすくなる。
また、前記ポリマーゲルとは別の態様として、中空糸膜の外側表面を親水性ポリマーで覆ってもよい。同様に、中空糸膜の内側表面も親水性ポリマーで覆ってもよい。
親水性ポリマーにより、中空糸膜の表面を覆う方法としては、当該ポリマーに熱処理をして、コーティングする方法が挙げられる。例えば、国際公開第2017/146101号や、国際公開第2017/146102号に開示されるような膜厚を有するコーティングを用いることができる。
<粉粒体の材質>
本発明に用いられる、中空糸膜の外側表面の細孔内に充填可能な粉粒体としては、例えば、木炭、竹炭、活性炭、炭素繊維、分子ふるいカーボン、カーボンナノチューブ、グラフェン、グラファイト、酸化グラフェン、メソポーラス炭素などの炭素系粉粒体、シリカゲル、マクロポーラスシリカ、活性アルミナ、ゼオライト、スメクタイト、ハイドロキシアパタイト、金属水酸化物、金属含水酸化物、金属炭酸塩などの無機粒子、イオン交換樹脂、キレート樹脂、有機金属錯体、キトサン、セルロースなどの有機粒子、無機メソポーラス体、有機無機ハイブリッドメソポーラス物質、カーボンゲルなどが挙げられる。これらを1種またはそれ以上用いることができる。
<除去対象物質>
本発明において、粉粒体の吸着対象、すなわち除去対象物質は特に限定はされない。
本発明が医療の分野に用いられる場合であって、腎疾患を有する患者に適用される場合には、患者の体内に沈積している老廃物が吸着対象となる。すなわち、例えば、リン酸、尿素、尿酸、クレアチニン、インドキシル硫酸、ホモシステインなどが挙げられる。
一例としてリン酸などのイオン性の低分子化合物を除去対象物質とした場合、本発明の分離膜デバイスにおいて、前記粉粒体が、無機粒子であることが好ましい。
本発明が医療の分野に用いられる場合であって、さらにリン吸着用途に用いられる場合には、吸着剤のリン吸着性能は1mg/g以上であることが好ましく、2mg/g以上であることがより好ましく、5mg/g以上であることがさらに好ましく、15mg/g以上であることがさらにより好ましく、70mg/g以上であることが特に好ましく、100mg/g以上であることが最も好ましい。リン吸着剤のリン吸着性能が前記範囲であることにより、例えば、リン吸着剤をカラムに充填した際、十分なリン吸着除去の効果が得られやすくなる。また、前記リン吸着性能の上限範囲は特に限定されるものではないが、粉粒体であるリン吸着剤の現実的な範囲としては、1000mg/g以下であることが好ましく、800mg/g以下であることがより好ましい。リン吸着性能が前記範囲であることにより、例えば、リンの除去増大で起こりうる低リン血症を防ぎやすくなる。
<粉粒体の吸着性能>
次に吸着剤である粉粒体の吸着性能の測定方法に関し、除去対象物質にリンを用いる場合を例に挙げて、以下説明する。
まず、ウシ血漿にリン酸塩を溶解してリンスタート液(リン濃度:Cs(mg/dL))とする。次に、リン吸着剤0.01gに上記のリンを含むウシ血漿を0.5dL添加し、37℃で4時間振とうする。反応液を遠心分離し、上澄み中のリン濃度を測定し、終濃度をCe(mg/dL)とする。その後、式5にて吸着剤1gあたりのリン吸着性能を計算する。なお、本式から求めたリン吸着性能は吸着飽和してない場合の値となる。
式5: リン吸着性能〔mg/g〕=〔(Cs−Ce)×0.5(dL)〕/0.01(g)
<粉粒体として用いられる無機粒子>
かかる無機粒子として好ましいのは、酸化チタン複合体、希土類元素水酸化物、希土類元素含水酸化物、希土類元素炭酸塩である。ここで、希土類元素とは、周期表の位置で原子番号21番のスカジウム(Sc)、原子番号39のイットリウム(Y)の2元素と、原子番号57番のランタン(La)から71番のルテチウム(Lu)までのLa,Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、15元素の計17元素である。中でも、希土類元素の炭酸塩は水への溶解性は低く、さらに生理食塩中におけるpH変化が小さいため、医療用途により好ましく用いることができる。
前記無機粒子は、前記希土類元素がランタン、セリウム、プラセオジム、サマリウムおよびネオジムからなる群から選ばれることがさらに好ましい。この場合、希土類元素の炭酸塩は炭酸ランタン、炭酸セリウム、炭酸プラセオジム、炭酸サマリウムおよび炭酸ネオジムである。これらの希土類元素の炭酸塩は水への溶解性が低く、pH変化が小さく、さらにイオン性の低分子化合物の吸着性能が高いことから、特に体外循環に適している。
ここで、本発明でいう体外循環とは、生体内の血液を体外に誘導し、所定の物質の除去を行う等した後、再び体内に戻す操作のことをいう。
<粉粒体として用いられるその他の物質>
また、別の除去対象物質の例として、低分子化合物である尿毒素を選定する場合、本発明の分離膜デバイスに用いられる吸着剤である粉粒体には、活性炭、カーボンナノチューブ、グラフェン、グラファイトおよび酸化グラフェンからなる群から選択される1種類以上を含むことが好ましい。当該粉粒体の比表面積は、100m/g以上であることが好ましく、200m/g以上であることがより好ましく、300m/g以上であることがさらに好ましい。また、2500m/g以下であることが好ましく、2000m/g以下であることがより好ましく、1500m/g以下であることがさらに好ましい。比表面積が上記範囲内であると、これら炭素系粉粒体が有する吸着性能が良好に発揮される。また尿毒素とは、尿素、尿酸、クレアチニン、インドキシル硫酸、ホモシステインなど指す。
<粉粒体のその他の特性>
本発明に吸着剤として用いられる粉粒体は、水難溶性が高いほうが好ましい。すなわち、水への溶解性が低いことが好ましい。ここで、水難溶性とは、水100gへの溶解度が1mg以下であることであり、0.1mg以下であることがより好ましく、0.01mg以下であることがさらに好ましい。
上記溶解度の測定においては、恒温槽で20℃にした水100gと回転子をフラスコにいれ、測定する粉粒体1mgを投入し、12時間以上撹拌する。その後、No.5Aのろ紙を用いて濾過し、ろ紙ごと恒量となるまで60度で乾燥し、不溶成分の質量を秤量する。投入量1mgと不溶成分質量の差分を、水100gへの溶解度とする。不溶成分を濾別できなかった場合は、溶解度は1mgを超えるものとする。
本発明に吸着剤として用いられる粉粒体は、生理食塩水中に入れて200rpmで4時間攪拌する前後のpH変化が小さいことが好ましい。具体的には、前記条件におけるpH変化が、−1以上+1以下の範囲内であることが好ましく、−1.0以上+1.0以下の範囲内であることがより好ましく、−0.8以上+0.8以下の範囲内であることがさらに好ましく、−0.6以上+0.6以下の範囲内であることがさらにより好ましく、−0.1以上+0.1以下の範囲内であることが特に好ましい。
一般に、環境及び生体内におけるpHバランスは非常に重要であり、特に生体内のバランスが乱れると様々な疾患に繋がる。本発明に用いられる粉粒体は、血液と接触した際、生理学的血液のpH変化が小さいことから、血液等の体液のpHに影響することが少ない。ここで、本発明では、生理食塩水中でのpH変化を以て、生体内pHバランスに優れているかの指標とする。具体的には、上述の如く、粉粒体を生理食塩水中に入れて200rpmで4時間撹拌する前後のpH変化を測定する。
pH測定方法としては、一般に最も多く用いられている測定法であるガラス電極法を用いる。これは、ガラス電極と比較電極の2本の電極を用いて、この2つの電極の間に生じた電圧(電位差)を知ることで、対象の溶液のpHを測定する方法である。具体的には、堀場製作所製のコンパクトpHメータLAQUAtwin等を用いることができる。この機器では、まず、既知の標準緩衝液(pH4.01及び6.86)を用いて、pH目盛りの校正を行う。生理食塩水のpHを測定し、pH(スタート)とする。その後、測定用繊維0.1gを秤量し、上記と同じ生理食塩水10mLを添加し、室温で4時間撹拌する。1mLをサンプリングし、9000rpmで5分間遠心分離し、上澄み500μLを測定チャンバーに添加し、pHを測定し、pH(4H)とする。pH変化は式6により求めることができる。
式6 pH変化=pH(4H)−pH(スタート)
本発明においては、リンの吸着効率を高めるために、粉粒体が分散媒に分散されているほうが好ましい。
本発明において、吸着性能を高めるためには、粉粒体が前記分散媒に可能な限り多く含まれたほうが好ましく、分散媒における粉粒体の含有量は、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、20質量%以上がさらに好ましい。また、分散安定性を高めるためには、粉粒体の含有量は、80質量%以下が好ましく、70質量%以下がより好ましい。
<中空糸膜および分離膜デバイスの製造方法>
続いて中空糸膜および分離膜デバイスの製造方法について説明する。
本発明では、製膜原液として窒素を含有しない疎水性高分子を含む溶液、芯液として窒素を含有する親水基含有高分子を0.01質量%以上、1質量%以下の範囲内で含む溶液を用い、二重管口金から吐出させることによって、中空糸膜が製造されることが好ましい。
より具体的には、本発明の中空糸膜の製造方法は、製膜原液と芯液を二重管口金から吐出させる工程であって、製膜原液として窒素を含有しない疎水性高分子を含む溶液が用いられ、芯液として窒素を含有する親水基含有高分子を0.01質量%以上、1質量%以下含む溶液が用いられる工程、を含むことが好ましい。
より好ましくは、当該工程において、二重管口金のスリット部から製膜原液が吐出され、円管部から芯液が吐出されることが好ましい。
また、当該工程において、製膜原液は疎水性高分子およびその良溶媒と貧溶媒を含むことが好ましい。
また、本発明の中空糸膜の製造方法は、
製膜原液と芯液を二重管口金から吐出させる工程の後に、
該吐出物を乾式部に導入・通過させ、その後に凝固浴で凝固させることによって中空糸膜を得る工程を含むことが好ましい。
つまり、本発明においては、二重管口金のスリット部から疎水性高分子およびその良溶媒、貧溶媒を含む製膜原液を、円管部から該芯液を吐出し、乾式部を通過させた後に凝固浴で凝固させることによって中空糸膜を製造することが好ましい。
上記製膜原液中の疎水性高分子の濃度を高くすることで、中空糸膜の機械的強度を高めることができる。一方で、疎水性高分子の濃度が高すぎると、溶解性の低下や製膜原液の粘度増加による吐出不良などの問題が生じる。また、疎水性高分子の濃度によって透水性、分画分子量を調整することができる。疎水性高分子の濃度を高くすると、中空糸膜内表面の密度が上がるため、透水性および分画分子量は低下する。以上のことから、製膜原液中の疎水性高分子の濃度は14質量%以上が好ましく、一方で24質量%以下が好ましい。
本発明における良溶媒とは、製膜原液において実質的に疎水性高分子を溶解する溶媒のことである。特に限定はしないが、ポリスルホン系高分子を用いる場合は、その溶解性から、N,N−ジメチルアセトアミドが好適に用いられる。一方、貧溶媒とは、製膜温度において、実質的に疎水性高分子を溶解しない溶媒のことである。特に限定はしないが、水が好適に用いられる。
製膜原液に貧溶媒を添加することで、貧溶媒が核となって、相分離の進行が促進される。一方で貧溶媒の添加量が多すぎると、製膜原液が不安定となって、製膜の再現性を得ることが難しくなる。貧溶媒の最適な添加量は、貧溶媒の種類によって異なるが、代表的な貧溶媒である水を用いる場合は、製膜原液中の貧溶媒の添加量は、0.5質量%以上が好ましく、一方で、4質量%以下であることが好ましい。
なお、親水性基含有高分子を中空糸膜内表面に導入する方法としては、従来から親水性基含有高分子を中空糸膜の製膜原液に混和して成形する方法や、製膜時の芯液に親水性基含有高分子を添加する方法や、中空糸膜製膜後に、膜表面に親水性基含有高分子をコーティングする方法が用いられている。
本発明においては、製膜時の芯液に親水性基含有高分子を添加し、原液とともに吐出することで中空糸膜内表面に親水性基含有高分子を導入する方法が用いられることが好ましい。当該方法を用いることによって、親水性基含有高分子の使用量が少量であっても中空糸膜表面に親水性基含有高分子を密に付与することができるため溶出物を抑制することができる。また、製膜時に親水性基含有高分子を付与するため、紡糸工程にて乾燥を行うことが可能で、特別な設備が不要であり、加えて、血液適合性を有する中空糸膜モジュールを得られることから、本発明では好適な方法である。
また、親水性基含有高分子を中空糸膜内表面に導入する方法として、製膜時の芯液に添加する方法または中空糸膜製膜後に膜表面にコーティングする方法のいずれかを用いる場合においても、製膜原液にも別途親水性基含有高分子を添加することで、増孔剤としての効果による透水性の向上や親水性のさらなる向上が期待できる。ただし、かかる製膜原液中の親水性基含有高分子の添加量が多すぎると、製膜原液の粘度の増加による溶解性の低下や吐出不良が起こることや、中空糸膜中に多量の親水性基含有高分子が残存することで、透過抵抗の増大による透水性の低下などが起こる恐れがある。最適な親水性基含有高分子の製膜原液への添加量は、その種類や目的の性能によって異なるが、1質量%以上が好ましく、一方で15質量%以下が好ましい。かかる製膜原液に添加される親水性基含有高分子としては、特に限定はしないが、疎水性高分子としてポリスルホン系高分子を用いる場合、相溶性が高いことからポリビニルピロリドンが好適に用いられる。
高分子を溶解する際は、高温で溶解することが溶解性向上のために好ましいが、熱による高分子の変性や溶媒の蒸発による組成変化の懸念がある。そのため、溶解温度は、30℃以上、120℃以下が好ましい。ただし、疎水性高分子および添加剤の種類によってこれらの最適範囲は異なることがある。
中空糸製膜時に用いる芯液は良溶媒と貧溶媒の混合液であり、その比率によって中空糸膜の透水性および分画分子量を調整することができる。貧溶媒としては、特に限定しないが、水が好適に用いられる。良溶媒としては、特に限定しないが、N,N―ジメチルアセトアミドが好適に用いられる。
製膜原液と芯液が接触することで、貧溶媒の作用によって製膜原液の相分離が誘起され、凝固が進行する。芯液における貧溶媒比率を高くし過ぎると、膜の透水性および分画分子量が低下する。一方で、貧溶媒比率が低すぎると、液体のまま滴下されることになるため、中空糸膜を得ることができない。芯液における適正な両者の比率は、良溶媒と貧溶媒の種類によって異なるが、貧溶媒が上記両溶媒の混合液中10質量%以上であることが好ましく、一方で80質量%以下であることが好ましい。
また、該芯液に親水性基含有高分子を添加する場合は、中空糸膜内表面に選択的に多くの親水性基含有高分子を導入することができる。これは、芯液が原液中へ拡散し相分離を誘起する際に、芯液中の親水性基含有高分子も原液中に拡散を起こすことで内表面に親水性基含有高分子が取り込まれるためである。そのため、親水性基含有高分子と膜素材の分子の絡み合いが起こり、製膜後に親水性基含有高分子を付与するよりも、膜素材に強固に結合させることができ、溶出物を低減することができる。このように製膜時における親水性基含有高分子の拡散によって内表面に親水性基含有高分子が導入されることから紡糸条件として原液吐出後の乾式部の長さ、すなわち乾式長が重要となる。乾式長が短すぎると親水性基含有高分子の拡散が進行せず内表面への付与が十分にできない可能性があるため、50mm以上が好ましく、さらに好ましくは100mm以上である。一方、乾式長が長すぎると拡散が進行し、親水性基含有高分子が外表面まで到達してしまう可能性があることや糸揺れなどによって紡糸安定性が低下しかねないため、600mm以下が好ましい。また、芯液における良溶媒の濃度にも大きく影響を受ける。良溶媒の濃度が低いと、内表面の凝固が促進され過ぎ、親水性基含有高分子の拡散が進行しにくくなり、一方良溶媒の濃度が高いと、内表面の凝固が抑制され、親水性基含有高分子の拡散が進行し過ぎると考えられる。そのため、芯液において、上記両溶媒中の良溶媒の濃度は40質量%以上が好ましく、さらに好ましくは50質量%以上であり、一方、90質量%以下が好ましく、より好ましくは80質量%以下、さらに好ましくは70%以下である。
ここで、芯液に添加する親水性基含有高分子の量としては、従来は芯液中10質量%程度添加しなければ、十分な量の親水性基を付与できないと考えられていた。しかしながら、かかる多量の添加では、溶出物が増加する虞があった。本願発明に係るドライタイプの中空糸膜の製造においては、上記親水性基含有高分子を含む芯液の設計により、より少量の添加で中空糸膜に十分親水性を付与できることが分かった。一方、親水性基含有高分子の量が少なすぎると、中空糸膜内表面が十分に親水化されず、血液適合性が悪化する。
したがって、本発明において芯液に含有される親水性基含有高分子は0.01質量%以上が好ましく、より好ましくは0.03質量%以上であり、一方で上限値としては、1質量%以下が好ましく、より好ましくは0.5質量%以下、最も好ましくは0.1質量%以下である。
吐出時の二重管口金の温度は、製膜原液の粘度、相分離挙動、芯液の製膜原液への拡散速度に影響を与え得る。一般的に、二重管口金の温度が高い程、得られる中空糸膜の透水性と分画分子量は大きくなる。ただし、二重管口金の温度が高過ぎると製膜原液の粘度の低下や凝固性の低下によって、吐出が不安定となるため紡糸性が低下する。一方で、二重管口金の温度が低いと、結露によって二重管口金に水分が付着することがある。そのため、二重管口金の温度は20℃以上が好ましく、一方で90℃以下が好ましい。
吐出された製膜原液と芯液が乾式部を通過する際に、芯液における貧溶媒の製膜原液への拡散が進み、中空糸内表面側から外表面側にかけて孔径が大きくなっていく膜構造が形成される。さらに、前述したとおり、芯液が原液中へ拡散し相分離を起こす際に、芯液に含まれる親水性基含有高分子が膜内表面に取り込まれる。
乾式部では、外表面が空気と接触することで、空気中の水分を取り込み、これが貧溶媒となるため、相分離が進行する。そのため、乾式部の露点を制御することで、外表面の開孔率を調整することができる。乾式部の露点が低いと相分離が充分に進行しないことがあり、外表面の開孔率が低下し、中空糸膜の摩擦が大きくなって紡糸性が悪化し得る。一方で、乾式部の露点が高過ぎても、外表面が凝固するため開孔率が低下することがある。乾式部の露点は60℃以下が好ましく、一方で10℃以上が好ましい。
凝固浴は貧溶媒を主成分としており、必要に応じて良溶媒が添加される。貧溶媒としては水が好適に用いられる。製膜原液が凝固浴に入ることで、凝固浴中の多量の貧溶媒によって製膜原液は凝固し、膜構造が固定化される。凝固浴の温度を高くする程、凝固が抑制されるため、透水性と分画分子量は大きくなる。
凝固浴で凝固させることによって得られた中空糸膜は、溶媒や原液に由来する余剰の親水性基含有高分子を含んでいるため、水洗が必要である。
水洗が不充分だと、使用前の洗浄が煩雑になり、また溶出物の被処理液への流入が問題になり得る。水洗温度を上げることで水洗効率が上がることから、水洗の温度は、50℃以上が好ましい。
中空糸膜製膜後に中空糸膜内表面にコーティングする際は、コーティング液の親水性基含有高分子濃度、接触時間、コーティング時の温度が、中空糸膜内表面へ付与される親水性基含有高分子量や密度に影響を及ぼす。コーティング液における親水性基含有高分子の濃度は、親水性基含有高分子そのものが溶出することを回避またはその可能性を低減できるため、0.08質量%以下であることが好ましく、0.05質量%以下であることがより好ましい。一方で、上記親水性基含有高分子の濃度は、膜表面に親水性基含有高分子を十分に付与し、溶出物量の増加に伴う血液適合性の悪化を回避または低減できるため、0.001質量%以上であることが好ましく、0.01質量%以上であることがより好ましい。
コーティング液に用いる溶媒としては、作業安全および生物学的な安全性の面から水が好適に使用される。
また、温度は20〜80℃、接触時間は10秒以上が好適であり、コーティング液を膜厚方向に通液することによって、膜表面に密に親水性基含有高分子をコーティングすることができる。
特に、疎水性基を含有する親水性基含有高分子を使用する場合、コーティング液の温度によって膜素材との親和性が大きく影響変化する。親水性基と疎水性基を含有する高分子では、水の温度によって水分子との相互作用の形態が変化し、疎水性基が表面に配向したミセルを形成することで高分子が析出することがある。この温度を曇点と言う。詳細は明らかにはなっていないが、疎水性表面に疎水性基を含有する親水性基含有高分子を使用する場合は、曇点付近の温度でコーティング行うことで、膜表面と親水性基含有高分子中の疎水性基との疎水性相互作用が強まり、効率良く、膜表面に密に親水性基含有高分子をコーティングすることができる。例えば、親水性基含有高分子としてビニルピロリドン/酢酸ビニル(6/4(モル比率))ランダム共重合体(BASF社製“KOLLIDON”(登録商標) VA64”)を用いる場合であれば、曇点はおよそ70℃程度であるため、コーティング液の温度は60〜80℃が好適である。
また、コーティングを連続的に行う場合には、コーティング液の流速は速いほど均一にコーティングが可能であるが、速すぎると十分な量をコーティングできない虞があるので、流速は200〜1000mL/minの範囲内であることが好適である。
また、ケーシングはプラスチックや金属等により構成される器具であることが好ましい。前者の場合には、金型による射出成形や、素材を切削加工することにより製作される。また、後者の場合には、素材を切削加工することにより器具が製作される。中でもコストや成型性、質量、血液適合性の観点からプラスチックが好適に用いられる。
プラスチックの場合は、例えば機械的強度、熱安定性に優れる熱可塑性樹脂が用いられる。このような熱可塑性樹脂の具体例としては、ポリカーボネート系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、セルロース系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリイミド系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、及びこれらの混合物が挙げられる。これらの中でもケーシングに求められる成形性、透明性、放射線耐性の点においてポリスチレン、ポリカーボネートおよびそれらの誘導体が好ましい。透明性に優れた樹脂は、血液灌流時に内部の様子を確認できるため安全性の確保に好都合であり、放射線耐性に優れる樹脂は滅菌時に放射性照射する場合に好ましいためである。
本発明の分離膜デバイスのケーシング長は、1cm以上、500cm以下の範囲内であることが好ましく、より好ましくは3cm以上、50cm以下の範囲内である。ここで、ケーシング長とは、隔壁が設けられる場合や、キャップが装着される前の、筒状ケーシングの軸方向の長さのことである。分離膜デバイスのケーシング長が500cm以下、より好ましくは50cm以下であると、吸着カラム内への分離膜デバイスの挿入性が良好になりやすく、分離膜デバイスとして実使用する際の取扱いが容易になりやすいことが考えられる。また、1cm以上、より好ましくは3cm以上であると、例えば隔壁部を形成する場合などに有利になりやすく、分離膜デバイス化した際の取り扱い性が良好になりやすい。
分離膜デバイスに内蔵する際の中空糸膜の形状としてはストレート形状が好ましく、ストレート形状の繊維を分離膜デバイスのケーシングの長手方向に対して平行に挿入することが好ましい。ストレート形状の分離膜デバイスは、被処理液の流路を確保しやすいため、分離膜デバイス内に被処理液を均等に分配しやすく、また、流路抵抗の抑制がしやすく、被処理液中の溶質の付着などによる圧力損失の増大に対しても有利である。そのため、粘性の高い血液を被処理液とした場合においても、ケーシング内での凝固などのリスクを小さく抑えやすくなる。分離膜デバイスを編物、織物、不織布などとして加工することもできる。ただし、加工に際して糸に大きな張力がかかるため、分離膜デバイスの空孔率を高くできないなどの制約が生じる。さらに、分離膜デバイスを加工することにより、工程数の増加やコストの増大を招く場合がある。
本発明の分離膜デバイスに内蔵する中空糸膜の糸本数は、1000本〜500000本程度が好ましい。
分離膜デバイスのケーシング内における中空糸膜の充填率の上限としては70%が好ましく、更に好ましくは65%以下である。中空糸膜の充填率を70%以下とすると、エア抜け性が良好となりやすい。さらに、中空糸膜を充填しやすくなるため、作業効率が向上しやすくなる。一方、中空糸膜の充填率は5%以上が好ましく、10以上がより好ましく、さらに好ましくは30%以上、さらにより好ましくは45%以上である。中空糸膜の充填率を5%以上とすることにより、血液浄化時、体外に持ち出す血量が低減されるため、患者の負担を軽減しやすくなる。ここで、体外に持ち出す血量とは、血液浄化システム全体の内空体積に相当する。また、ここでいう充填率とは、中空糸膜外径を基準とする中空糸膜の断面積が、ケーシング胴部の断面積に占める割合とする。なお、ケーシング胴部の断面積については、ケーシングにテーパーがある場合は、ケーシング中央における断面積とする。
本発明において、分離膜デバイスとしての、除去対象物質の除去性能については、以下の如く定義する。即ち、まずケーシングに装填される中空糸膜束全体の内空体積をプライミングボリュームと定義する。そして、上記プライミングボリューム1mL当たりの除去性能を、分離膜デバイスの除去性能と定義する。分離膜デバイスによる除去性能は、1mg以上/mL以上が好ましく、5mg/mL以上がより好ましく、10mg以上/mLがさらに好ましい。除去性能が1mg/mL以上であることにより、相対的に小さなカラムサイズでも効率的に除去対象物質を除去できることとなり、ハンドリング性などが向上する。さらには、血液浄化時、分離膜デバイスに起因する、体外への持ち出し血量を低減することができる。また、除去性能の上限は特に限定されるものではないが、物理的な吸着限界を想定し、2000mg以下/mLが好ましい。また、除去対象物質によっては、例えば医療分野に用いる場合は、全量を除去することが、返って当該物質の不足による合併症を引き起こすこともあり、好ましくない場合がある。このように、患者体内に残存しておくべき必要量がある場合、その数値を勘案して除去性能の上限を設定すればよい。
本発明にいう、プライミングボリュームは下記式7により算出する。
式7:
プライミングボリューム(mL)=π×中空糸内径(cm)×カラム長さ(cm)×充填本数/4
本発明における分離膜デバイスの使用用途も多種多様であり、水処理、精製、血液浄化などの用途として用いることができる。血液浄化用途の場合、処理方法には全血を直接灌流する方法と血液から血漿を分離した後に血漿を分離膜デバイスに通す方法とがあるが、本発明の分離膜デバイスはいずれの方法にも用いることができる。
また、血液浄化器として用いる場合、1回の処理量や操作の簡便性などの観点から体外循環回路に組み込みオンラインで吸着除去を行う手法が好ましい。この場合、本発明の分離膜デバイスを単独で用いても良いし、透析時などに人工腎臓と直列に繋いだ、血液浄化システムとして用いることもできる。このような手法を用いることで、透析と同時に人工腎臓のみでは除去が不十分である物質を除去することができる。特に人工腎臓では除去不足である無機リンを本発明に係る分離膜デバイスを用いて吸着除去することで人工腎臓の機能を補完できる。
また、人工腎臓と同時に用いる場合には、回路内において、人工腎臓の前に接続しても良いし人工腎臓の後に接続しても良い。人工腎臓の前に接続するメリットとしては、人工腎臓による透析の影響を受けにくいため、分離膜デバイスの本来の性能を発揮し易いことがある。一方で人工腎臓の後に接続するメリットとしては、人工腎臓で除水を行った後の血液等を処理するため、溶質濃度が高く、無機リンの吸着除去効率の増加が期待できる。
本発明の分離膜デバイスは、上記の方法によって製造された中空糸膜がケーシングに内蔵されることによって得られるものであることが好ましい。
中空糸膜をカラムに内蔵する方法としては、特に限定されないが、一例を示すと次の通りである。まず、中空糸膜を必要な長さに切断し、必要本数を束ねた後、筒状のケーシングに入れる。その後、両端に仮のキャップをし、中空糸膜両端部にポッティング材を入れる。このとき遠心機でモジュールを回転させながらポッティング材を入れる方法は、ポッティング材が均一に充填できるため好ましい方法である。ポッティング材が固化した後。中空糸膜の両端が開口するように両端部を切断する。ケーシングの両端にヘッダーを取り付け、ヘッダーおよびケーシングのノズル部分に栓をすることでカラムを得る。
カラム胴部は血液の入口、出口以外に、粉粒体を充填するために、開孔口が1つ以上設置することが好ましい。開孔口の数は特に限定することがないが、既存人工腎臓のカラム本体の展開が可能である、ノズル部分のような、入口、出口付近に1つずつ設置することが好ましい。
本発明の分離膜カラムは、通常の人工腎臓と同じく、ケーシングの入口、出口付近にノズルを設置し、ノズルを介して透析液を流す使用方法も可能である。その場合、本発明の一態様として、少なくとも中空糸膜の外側表面をポリマーで覆う方法を開示しているが、本方法によらずとも、粉粒体が分離膜カラム外に流出することを防ぐために、少なくともノズルの透析液入口側、出口側にメッシュフィルターを設置してもよい。なお、当該メッシュフィルターは、本発明に用いられる粉粒体の外径よりも小さなフィルター径を有しておくべきことはいうまでもない。また、少なくとも中空糸膜の該表面をポリマーで覆った上で、さらに上記のメッシュフィルターを設置しても良い。
血液浄化用に用いられる分離膜デバイスは滅菌されていることが必要であり、残留毒性の少なさや簡便さの点から、放射線滅菌法が一般に用いられている。使用する放射線としては、α線、β線、γ線、X線、紫外線、電子線などが用いられる。中でも残留毒性の少なさや簡便さの点から、γ線や電子線が好適に用いられる。また、中空糸内表面に取り込まれた親水性基含有高分子は放射線の照射によって膜素材と架橋を起こすことで固定化でき、溶出物の低減にも繋がるため、放射線を照射することが好ましい。放射線の照射線量が低いと滅菌効果が低くなる、一方、照射線量が高いと親水性基含有高分子や膜素材などの分解が起き、血液適合性が低下する。そのため、照射線量は15kGy以上が好ましく、100kGy以下が好ましい。
中空糸膜の透水性としては、100ml/hr/mmHg/m以上が好ましく、より好ましくは200ml/hr/mmHg/m以上、さらに好ましくは300ml/hr/mmHg/m以上である。また、人工腎臓用途の場合、透水性が高すぎると残血などの現象が見られることがあるので、2000ml/hr/mmHg/m以下が好ましく、さらに好ましくは1500ml/hr/mmHg/m以下である。
<血液浄化システム>
本発明の分離膜デバイスは、人工腎臓と組み合せて、血液浄化システムとして用いることができる。さらに除水カラムを備えることもできる。
本発明の血液浄化システムとして、例えば、本発明の分離膜デバイスと除水カラムを直列に連結して、体外循環を行うことができる。除水カラムとは、血液中の水分を除去するカラムであり、人工腎臓を用いることができる。この際、中空糸の内側であるB側は透析と同様に血液を流すが、中空糸の外側であるD側は透析液を流せず、ろ過により水分を除去する。このような手法を用いることで、透析液を使用せずに、人工透析と同様に水分および、水分以外の老廃物を除去することができる。人工透析は老廃物を拡散原理で除去するが、本発明においては、水分はろ過、水分以外の老廃物は吸着で除去する。
現在の人工透析は一回100L以上の透析液を使用する必要があるが、本手法は透析液を使用せずに人工透析と同様な効果が期待できる。
除水に用いる人工腎臓の血液容量として上限としては、好ましくは60mL、より好ましくは50mL、特に好ましくは40mLであり、一方、下限としては、好ましくは10mL、より好ましくは20mL、特に好ましくは30mLである。血液容量が多いと、一回に体内から持ち出す血液量が多くなるため、血圧低下が起こることがある。一方、血液容量が少ないと、除水効果を十分に果たせない可能性がある。
また、除水カラム内には中空糸が内蔵されているが、中空糸材料は特に限定されるものではなく、既に臨床で使用されている、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリールエーテルスルホン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、セルロース、セルローストリアセテート、エチレン−ビニルアルコール共重合体等を用いることができる。
以下、例を挙げて本発明を説明する。
[実施例1]
ポリスルホン(アコモ社製“ユーデル”P−3500 LCD MB7 分子量77000〜83000)16質量%、ポリビニルピロリドン(インターナショナルスペシャルプロダクツ社製;以下ISP社と略す K30)4質量%およびポリビニルピロリドン(ISP社製 K90)を2質量%、N,N−ジメチルアセトアミド77質量%、水1質量%を加熱溶解し、製膜原液とした。
N,N−ジメチルアセトアミド66質量%、水33.97質量%の溶液にビニルピロリドン/酢酸ビニル(6/4(モル比率))ランダム共重合体(BASF社製“KOLLIDON”(登録商標) VA64”)0.03質量%を溶解し、芯液とした。
製膜原液を温度50℃の紡糸口金部へ送り、環状スリット部の外径0.35mm、内径0.25mmのオリフィス型二重管口金の外側の管より吐出し、芯液を内側の管より吐出した。吐出された製膜原液は乾式長350mm、温度30℃、露点28℃のドライゾーン雰囲気を通過した後、水100%、温度40℃の凝固浴に導かれ、60〜75℃で90秒の水洗工程、130℃で2分の乾燥工程を通過させ、160℃のクリンプ工程を経て得られた中空糸膜を巻き取り束とした。中空糸膜の内径は200μm、外径は280μmであった。
直径5mmに長さ120mmのケーシングに、上記中空糸膜40本充填した後、中空糸膜の両端をポッティングによりケーシング端部に固定し、ポッティング材の端部の一部をカッティングすることで両端の中空糸膜を両面開口させ、ケーシング両側にヘッダーを取り付け、中空糸膜の充填率が6.3%で、プライミングボリュームが0.15mLであるモジュールを得た。
(1)粉粒体充填
炭酸ネオジム粉粒体0.1gを水100mLに添加し、200rpmで攪拌しながら、5mL/分でミニカラム(図1)のノズル16Aから送液し、被処理液出口15Bから廃液することで、粉粒体を細孔内に充填した。その際、被処理液入口(15A)およびノズル16Bはシリコン製の栓で封じた。その後、1Wt%に調製したポリエチレンイミン(和光純薬工業、分子量75万)水溶液20mLを同じ16Aから送液し、15Bから廃液した後、16Aおよび15Bを封栓し、γ線照射によりポリマーをゲル化した。これにより、リン除去性能を測定するためのミニカラム、すなわち分離膜デバイスを得た。
(2)中空糸膜の糸径および膜厚の測定
上記のミニモジュールからランダムに選別した16本の中空糸膜の糸径(外径)および膜厚をレーザー変位計(LS5040T;株式会社KEYENCE)でそれぞれ測定した。
(3)中空糸膜の、外側細孔径および内側細孔径
凍結乾燥した中空糸膜を片刃で半円筒状にそぎ切り、外表面及び内表面が上向きとなるようにそれぞれ両面テープで試料台に貼り付け、エッチング後、日立ハイテクノロジーズ社製、S−5500を用いて測定した。
(4)粉粒体の平均粒径の測定
NIKKISO社のMT3300を用いてレーザー回折・散乱法で測定した。粒子形状を非球形と設定し、横軸粒経、縦軸頻度(%)をプロットして、平均粒径として個数平均を用いた。
<性能評価>
(5)リン液調製方法
以下のようにウシ血液を処理してウシ血漿を準備した。
まず、クエン酸(テルモ株式会社ACD−A液)をウシ血液100mLに対し15mL添加し、これを3000rpmで30分、遠心分離することによってウシ血漿を得た。該ウシ血漿について、総タンパク量(TP)が6.5±0.5g/dLとなるように調整した。尚、ウシ血漿は、採血後5日以内のものを用いた。
次に、上記ウシ血漿100mLあたりに無機リン濃度が6mg/dLとなるように、7.85mgのリン酸一水素ナトリウム(NaHPO)及び3.45mgのリン酸二水素カリウム(KHPO)を添加した。
ウシ血漿中の無機リン濃度測定は、以下の方法により行った。すなわち、被処理液200μLを−20℃以下の冷凍庫で保存した後、オリエンタル酵母工業株式会社の長浜ライフサイエンスラボラトリーに送付し、デタミナーL IPIIを用いた酵素法で無機リン濃度を測定し、C(mg/dL)とした。
(6)リン吸着性能
まず、ミニカラムに充填していない粉粒体そのもののリン吸着性能を次のように測定した。
すなわち、上記の(4)の手順により得られたリンを有するウシ血漿のリン濃度をC(mg/dL)とした。次に、リン吸着剤0.01gに上記のリンを含むウシ血漿を0.5dL添加し、37℃で4時間振とうした。反応液を12000rpmで5分間遠心分離し、上澄み中のリン濃度を上記の(4)の手順により測定し、これを終濃度C(mg/dL)とした。その後、次式にて吸着剤1gあたりのリン吸着性能を計算した。
リン吸着性能〔mg/g〕=〔(C−C)×0.5(dL)〕/0.01(g)
(7)ミニカラムのリン除去性能
上記の(5)に示す、ミニカラムに充填していない粉粒体そのもののリン吸着性能と区別するため、ミニカラムとしてのリン吸着性能のことをリン除去性能と呼ぶ。
まず、上記リン液100mLを流速2mL/分でミニカラムに通液し、4時間循環した。所定時間毎に入り口側をサンプリングし、長浜ライフサイエンスラボラトリーに送付し、入り口のリン濃度を測定した。
4時間循環後のリン濃度をC4H(mg/dL)とし、ミニカラムのリン除去性能は下記式により算出した。
ミニカラムのリン除去性能(mg/g)=(C−C4H)/粉粒体充填量(g)
以上の測定結果に関し、表1にまとめた。表1において、ミニカラムの直径、有効長、およびミニカラムとしてのリン除去性能を夫々示す。また、中空糸膜の糸径、膜厚、外側細孔径、内側細孔径、およびミニカラムへの中空糸膜の充填数及び充填率を示す。また、粉粒体の種類、平均粒径、ならびにミニカラムへの充填量、さらに(ミニカラムへ充填していない)粉粒体単位当たりのリン吸着性能を示す。
[実施例2]
粉粒体を炭酸サマリウム0.1gとした以外、実施例1と同じ条件で測定した。結果を表1に示す。
Figure 2020093249
11 筒状のケーシング
13 中空糸膜
14A ヘッダー
14B ヘッダー
15A 被処理液注入口(中空糸膜内側入口)
15B 被処理液排出口(中空糸膜内側出口)
16A ノズル
16B ノズル
17 粉粒体
18 ポリマーゲル

Claims (11)

  1. 中空糸膜と、前記中空糸膜を覆うケーシングとを備え、
    前記中空糸膜の外側表面の平均細孔径(Do)と、内側表面の平均細孔径(Di)とが、Do>Diの関係を満たす内側緻密構造を有するものであり、
    さらに、外側表面の細孔に、平均粒径が0.01μm〜10μmの範囲内である粉粒体が含まれてなる、分離膜デバイス。
  2. さらに、前記中空糸膜の少なくとも外側表面が、ポリマーにより覆われてなる、請求項1に記載の分離膜デバイス。
  3. 前記中空糸膜の内空体積(mL)単位当たりの、除去対象物質(mg)の除去性能が、1mg/mL以上である、請求項1または2に記載の分離膜デバイス。
  4. 前記粉粒体が無機粒子を含むものである、請求項1〜3のいずれかに記載の分離膜デバイス。
  5. 前記無機粒子が、希土類炭酸塩の粒子である、請求項4に記載の分離膜デバイス。
  6. 前記中空糸膜の外側表面の細孔における平均細孔径(Do)と、前記粉粒体の平均粒径(Dp)がDp≧2×Doの関係を満たす、請求項1〜5のいずれかに記載の分離膜デバイス。
  7. 次の式で表される、前記粉粒体の、中空糸膜の外側表面における充填率が、5%以上90%以下の範囲内である、請求項1〜6のいずれかに記載の分離膜デバイス。
    充填率=(外側表面に占める粉粒体の面積/中空糸膜の外側表面積) ×100
  8. 医療用である、請求項1〜7のいずれかに記載の分離膜デバイス。
  9. 前記請求項1〜8のいずれかに記載の分離膜デバイスを備えた人工透析システム。
  10. さらに、除水カラムを備えた、請求項9に記載の人工透析システム。
  11. 請求項1〜8のいずれかに記載の分離膜デバイスを製造する方法であって、
    前記中空糸膜を前記ケーシングに充填する工程と、
    前記粉粒体を前記中空糸膜の外側表面の細孔に導入後、さらにポリマーを外側表面に配置することによって、前記無機粒子を前記中空糸膜の外側表面の細孔に固定する工程と、を有する、分離膜デバイスの製造方法。
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