JP2020088232A - 吐出材吐出装置およびインプリント装置 - Google Patents

吐出材吐出装置およびインプリント装置 Download PDF

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Abstract

【課題】可撓性膜によって収容容器が2つの収容部に分けられている場合に、収容容器の密着性を向上させること。【解決手段】吐出材吐出装置10は、吐出材を吐出する吐出ヘッド14と、可撓性膜によって内部空間が、吐出ヘッド14に供給される吐出材を収容する第1収容空間5と、作動液を収容する第2収容空間6と、に分離された収容容器13と、第2収容空間6の内圧を制御する圧力制御手段と、を備える。可撓性膜は、第1収容空間5を覆う第1フィルム1と、第2収容空間6を覆う第2フィルム2と、第1フィルム1と第2フィルム2との間に位置する膜間空間4と、を含み、収容容器13は、第1フィルム1と第2フィルム2との間にスペーサ16を含む。【選択図】図1

Description

本発明は、吐出材吐出装置およびインプリント装置に関する。
収容容器に収容された液体または液状の吐出材を吐出ヘッドから吐出する吐出材吐出装置がある。特許文献1には、可撓性の仕切り部材によって2つの収容部に分けられた収容容器を用いる構成が記載されている。この収容容器における一方の収容部には吐出材が収容され、他方の収容部には液体が収容され、他方の収容部の液体の内圧を制御することによって、間接的に一方の収容部の内圧が調整される。
そして、特許文献1には、可撓性の仕切り部材に生じた破損を検知する技術が記載されている。具体的には、特許文献1には、吐出材とは物性が異なり、かつ吐出材とは混ざり合わない液体を他方の収容部に収容し、吐出材が他方の収容部に混入したときの液体の物性の変化を検知する技術が記載されている。
特開2016−032103号公報
しかしながら、特許文献1の技術は、それぞれの収容部に収容される吐出材と液体とが、異なる物性を有するものに制限される。吐出材の種類によっては、液体と混ざり合わなくても液体と接触するだけで品質が劣化してしまうものもある。その場合、液体と接触した吐出材の吐出を行うと、品質が劣化するおそれがある。このため、本発明者は、可撓性膜内に膜間空間を設けることで、それぞれの収容部に収容される吐出材と液体との接触を避けることを検討したが、密着力が不足する課題を見出した。
本発明は、可撓性膜によって収容容器が2つの収容部に分けられている場合に、収容容器の密着性を向上させた吐出材吐出装置およびインプリント装置を提供することを目的とする。
本発明の一態様に係る吐出材吐出装置は、吐出材を吐出する吐出ヘッドと、可撓性膜によって内部空間が、前記吐出ヘッドに供給される前記吐出材を収容する第1収容空間と、作動液を収容する第2収容空間と、に分離された収容容器と、前記第2収容空間の内圧を制御する圧力制御手段と、を備える吐出材吐出装置であって、前記可撓性膜は、前記第1収容空間を覆う第1フィルムと、前記第2収容空間を覆う第2フィルムと、前記第1フィルムと前記第2フィルムとの間に位置する膜間空間と、を含み、前記収容容器は、前記第1フィルムと前記第2フィルムとの間にスペーサを含むことを特徴とする。
本発明によれば、可撓性膜によって収容容器が2つの収容部に分けられている場合に、収容容器の密着性を向上させることができる。
吐出装置の構成図である。 吐出ヘッドにおける吐出口付近の拡大図である。 収容容器の分解斜視図である。 スペーサとフィルムの溶着した外観を示す図である。 収容容器のフィルムの一部が例を示す図である。 スペーサと2枚のフィルムとを一体とした外観を示す図である。 吐出装置を含むインプリント装置の構成図である。
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態を説明する。尚、以下に述べる実施形態は、適切な具体例であるから、技術的に好ましい様々の限定が付けられている。しかし、本明細書の実施形態やその他の具体的方法に限定されるものではない。なお、同一の構成については、同じ符号を付して説明する。
<<第1実施形態>>
図1は、本実施形態の吐出材吐出装置(以下、単に「吐出装置」ともいう)の概略構成図である。本実施形態の吐出装置10は、大気連通する内部に作動液35を貯留するメインタンク34と、大気連通しかつメインタンク34と連通可能な内部に作動液35を貯留するサブタンク26と、サブタンク26と連通する吐出材収容ユニット100と、を備える。吐出材収容ユニット100は、吐出材を収容する収容容器13と、収容容器13に装着される吐出ヘッド14と、を含む。なお、収容容器13と吐出ヘッド14とは、別体として構成されていてもよく、一体的に構成されていてもよい。収容容器13は、カートリッジ式であってもよい。吐出ヘッド14は、吐出ヘッドの外面(吐出面)に開口する吐出口15から吐出材を吐出可能である。本実施形態の吐出口15は、吐出ヘッド14の吐出面において、1インチ当たり500から1000個の密度で配設されている。
図1に示すように、吐出装置10には、吐出ヘッド14の吐出面に対向するように、ベースプレート63に搭載された搬送部62が配置されている。搬送部62は、不図示の吸着手段によって、吐出材を付与する対象物である媒体61を吸着して保持しつつ、ベースプレート63上を移動して、吐出ヘッド14に対して媒体61を相対移動させることができる。収容容器13内に収容されている吐出材は、吐出ヘッド14の吐出口15から、吐出口15と対向する位置に搬送された媒体61の吐出材付与領域に対して吐出される。これによって、所望のパターン(例えば、記録画像)が形成される。
<吐出材>
吐出材は、例えば液体または液状の物質である。吐出材は、収容容器13内において、および吐出ヘッド14から吐出される際に、固体とは異なり、定まった形をもたずに流動性を有し、かつ体積変化が気体のようには大きくない物質である。吐出材は、ペースト状物質または高分子材料等の物質であってもよい。また、本実施形態の吐出材として、インクを用いてもよい。インクの非限定的な例としては、画像記録用のインク、電子回路製造用の導電性インク、またはUV硬化性インク等の多様なインクが挙げられる。導電性インクの例としては、金属粒子を含むインク、特には、数〜数十ナノメートルの金属ナノ粒子が液中分散した金属ナノインクが挙げられる。金属ナノインクとしては、例えば、銀ナノインクが挙げられる。また、吐出材の例として、インプリント材が挙げられる。半導体デバイス等の製造プロセスにおいて、パターンが形成されたモールド(型)を基板上のインプリント材に接触させ、モールドの形状をインプリント材に転写してパターンを形成する、いわゆるインプリント技術がある。インプリント材としては、光硬化型樹脂または熱硬化型樹脂等のレジストが用いられる。このような吐出材は、収容容器13内の第1収容空間5に収容されている。
<作動液>
作動液は、気体に比べて、外的な温度および圧力による密度(体積)の変化が無視できるほど小さい、非圧縮性を有する物質である。そのため、吐出装置の周辺の気温または気圧が変化しても、作動液の体積はほとんど変化しない。作動液としては、例えば、水のような液体およびゲル状物質から選択される物質を用いることができる。通常、吐出材の密度と作動液の密度との差は、吐出材の密度と気体の密度との差に比べて小さくなる。
吐出装置10をプリント装置のインク吐出装置として使用する場合、吐出材には当然のことながらインクが用いられるが、作動液としては高価なインクを使用する必要はなく、インクと比重の近い水を使用することができる。より具体的には、水の腐敗および雑菌の繁殖を防止するために、防腐作用のある添加剤を添加した水を作動液として使用することができる。作動液は、収容容器13内においては、第2収容空間6に収容されている。
<吐出ヘッドの構成>
図2は、吐出ヘッド14における吐出口15近傍の拡大図である。吐出ヘッド14において、吐出口15のそれぞれに対応して設けられた圧力室19内には、アクチュエータ(不図示)が実装されている。アクチュエータは、吐出材を微細液滴、例えば1pL(ピコリットル)などの液滴として吐出可能なエネルギを発生することができるものであればよく、具体例として、ピエゾ素子(圧電素子)または発熱抵抗体素子等を挙げることができる。ピエゾ素子を用いる場合は、発熱抵抗体素子を用いる場合と比べて温度変化(昇温)による吐出特性への影響が小さいので、高温下での使用が可能となる。そのため、粘性の高い樹脂など幅広い種類の吐出材を用いることができる。また、発熱抵抗体素子を用いる場合は、一般的に製造コストが相対的に廉価であり得る。本実施形態におけるアクチュエータは、ピエゾ素子であり、ピエゾ素子を駆動制御することにより、圧力室19内の容積を変化させて、圧力室19内の吐出材を吐出口15から吐出させる。ピエゾ素子は、MEMS(Micro Electro Mechanical System:微小電気機械システム)技術を用いて実装されてもよい。
各圧力室19は、共通液室20と連通している。共通液室20は、収容容器13の第1収容空間5と連通している。吐出口15から吐出される吐出材は、第1収容空間5から共通液室20を経て圧力室19に供給される。吐出ヘッド14は、第1収容空間5との間に制御弁を持たない。そのため、第1収容空間5の内圧は、吐出ヘッド14の吐出口15の外部の大気圧(外気圧)よりも若干負圧であるように制御される。この負圧制御により、吐出口15内の吐出材は、外気との界面でメニスカス17を形成し、意図しないタイミングでの吐出口からの吐出材の漏出(滴下)が防止される。本実施形態では、第1収容空間5の内圧は、外気圧よりも0.40±0.04kPaだけ負圧になるように制御される。
<収容容器の構成>
図1に示すように、収容容器13は、筐体11と筐体12とにより外郭および内容積が画定されている。筐体11と筐体12との間には、収容容器13の内部空間を、第1収容空間5と第2収容空間6とに水平方向に仕切る仕切り部材として、可撓性部材(可撓性膜)が配置されている。可撓性部材は、可撓性の2つのフィルム(第1フィルム1と第2フィルム2)の層構成を含む多層構造である。第1フィルム1および第2フィルム2は、それぞれ10〜100マイクロメートルの厚さの薄膜であり、結合部3において、接着剤または溶着などの手段により互いに連結されている。結合部3は、第1フィルム1と第2フィルム2との対向面において部分的に設けられており、第1フィルム1および第2フィルム2は、互いに関して連結されていない非連結領域を有する。
筐体11は、筐体12に対向する側に開口する第1開口部と、吐出ヘッド14に対向する側に開口する第2開口部と、を有する。筐体側に開口する第1開口部は、第1フィルム1によって全面が覆われて密封されており、筐体11の内面と第1フィルム1との間には第1収容空間5が形成される。第2開口部は、吐出ヘッド14の共通液室20と連通しており、これにより、第1収容空間5は、吐出ヘッド14を介して外部空間と連通する。第1収容空間5は、吐出材によって満たされており、吐出材と外気との界面は、図2のように吐出口15内に位置付けられる。
筐体12は、筐体11に対向する側に開口する開口部を有する。この開口部は、第2フィルム2によって全面が覆われて密封されており、筐体12の内面と第2フィルム2との間には第2収容空間6が形成される。第2収容空間6は、作動液35で満たされている。また、第2収容空間6は、管24を介してサブタンク26の内部と連通すると共に、制御弁21およびポンプ22を備える管23を介して、サブタンク26の内部と連通可能に構成されている。サブタンク26は、作動液35を貯留する液体収容部である。作動液35は、第2収容空間6内において、液状充填剤として機能する。第1フィルム1および第2フィルム2は、それぞれ、第1収容空間5と第2収容空間6との間の隔壁として機能する。
<フィルムの材質>
第1フィルム1および第2フィルム2の材質としては、接液性等の観点から、吐出材および作動液に対して耐性のある材質であればよい。例えば、PFA(テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキル ビニルエーテル共重合体)、ETFE(エチレンテトラフルオロエチレン)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)のようなテフロン(登録商標)系のフッ素樹脂を用いることができる。また、例えば、PE(ポリエチレン)、PVC(ポリ塩化ビニル)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PVAL(ポリビニルアルコール)、PVDC(ポリ塩化ビニリデン)、ナイロン等のポリアミド合成樹脂を用いることができる。第1フィルム1および第2フィルム2は、同一の材料(材質、厚さ)であってもよく、異なる材料であってもよい。例えば、第1フィルム1には吐出材に対して耐性のあるPTFEのような材質を用い、第2フィルム2には作動液に対して耐性があるナイロン系の材質を用いることができる。
<第1収容空間内と第2収容空間内との圧力関係>
第1収容空間5と第2収容空間6との間において内圧の差が生じると、それぞれ可撓性を有する第1フィルム1および第2フィルム2は一体となって内圧の低い側へと移動し、内圧差が無くなった時点で移動を停止する動きを繰り返す。そのため、第1収容空間5および第2収容空間6の内圧を相互に等しい状態に保つことができる。
より具体的に説明する。吐出ヘッド14から吐出材が吐出されると、その吐出された吐出材の分だけ、第1収容空間5内の吐出材の容積が減って、その第1収容空間5の内圧が下がる。このとき、第2収容空間6の内圧は、第1収容空間5の内圧よりも相対的に高くなる。可撓性の第1フィルム1および第2フィルム2は、結合部3によって連動可能に結合されているため、第1収容空間5の内圧が下がることに応じて一体となって第1収容空間5側へ移動する。それと同時に、サブタンク26から、管24を介して作動液35が第2収容空間6内に吸い上げられる。これにより、第1収容空間5および第2収容空間6の内圧は、再び等しくなって平衡状態となる。
図1に示すように、サブタンク26は、管25によって外部空間と連通しているため、その内圧は大気圧と等しい。サブタンク26内と第2収容空間6とを連通する管24には作動液35が満たされており、且つ、鉛直方向におけるサブタンク26内の作動液35の液面位置(以下、「液面高さ」ともいう)は、吐出ヘッド14の吐出口15よりも低い位置に設定されている。サブタンク26内の作動液35の液面位置と、吐出口15が開口する吐出面の位置と、の高さの差(鉛直方向における距離)をΔHとする。本実施形態では、吐出口15内において吐出材のメニスカス17が形成される状態(図2に示す状態)を維持するように、差ΔHを設定する。つまり、吐出材が吐出口15から外部に漏出または滴下したり、メニスカス17が過度に奥部(例えば、共通液室近傍)に引込んだりすることがないように、差ΔHを設定する。具体的には、第1収容空間5の内圧を、外気圧に対して0.40±0.04kPaだけ低い値に制御するように、高さの差ΔHを41±4mmに設定する。
高さの差ΔHは、適宜設定することができる。本実施形態は、上述のように、1pL程度またはそれ以下の液量の吐出が可能なプリント装置に適用可能な吐出装置である。例えば吐出材が画像記録用のインクである場合、吐出口15の直径は直径10μm(ミクロン)程度である。また、本実施形態では、吐出材および作動液は、それぞれ水とほぼ等しい密度を有するものとする。本実施形態では、このような条件下において、吐出口15内に吐出材のメニスカス17を形成するために、高さの差ΔHを上述した41mm±4mmの範囲に設定している。なお、例えば、解像度の低いプリント装置における吐出口15の直径は数十μmであり、また、樹脂等を吐出材として用いる3Dプリンタにおける吐出口の直径は数百μmである。このように、吐出装置の適用機種によって、吐出口15の直径が異なり、また吐出材の物性(例えば、密度、粘性等)も異なるため、重力、毛管力、表面張力等の影響により、吐出装置の適用対象によって高さの差ΔHは適宜設定される。
<補正動作>
本実施形態においては、基準となる液面高さに対して、サブタンク26内の作動液の液面高さが所定の範囲から外れたときに、補正動作が実行される。上記の例で説明すると、基準となる液面高さ(吐出口15より41mmだけ低い高さ)に対して、サブタンク26内の作動液の液面高さが所定の範囲(基準となる液面高さ±4mmの範囲)から外れたときに、補正動作が実行される。補正動作は、メインタンク34とサブタンク26との間における作動液の移動によって、サブタンク26内の作動液の液面高さを所定の範囲に収める「液面調整」の動作である。
サブタンク26には、液面センサ41が設置されている。本実施形態における液面センサ41は、サブタンク26内の作動液の液面高さおよびその変化(変位)を検知可能なセンサである。メインタンク34とサブタンク26とは、制御弁31およびポンプ32を備える管33を介して連通可能となっている。吐出装置10は、制御弁31およびポンプ32を駆動して、サブタンク26の作動液の液面高さを所望の範囲内に制御(液面調整)する。具体的には、液面センサ41によって、サブタンク26の作動液35の液面高さが所定の範囲よりも下がったことが検知されたときに、制御弁31を開放し、ポンプ32を駆動させて、メインタンク34からサブタンク26に作動液を供給する。また、液面センサ41によって、サブタンク26内の作動液35の液面高さが所定の範囲内にあることが検知されたときに、ポンプ32の駆動を停止し、制御弁31を閉鎖させて、メインタンク34からサブタンク26への作動液の供給を止める。また、制御弁31とポンプ32を制御することにより、サブタンク26からメインタンク34に作動液を戻すこともできる。これにより、サブタンク26内の液面高さは、所定の範囲内に維持される。
<サブタンク>
サブタンク26は、その内部の天井面(鉛直方向における最上部)が吐出ヘッド14の吐出口15よりも鉛直方向において低くなるように配置されることが好ましい。このように配置することにより、仮に、上述の液面調整によってサブタンク26が満水状態になるまでメインタンク34から作動液が供給されたとしても、サブタンク26内の作動液35の液面位置が吐出口15の吐出面の位置よりも高くなることはない。つまり、サブタンク26の天井面によって、サブタンク26内の作動液35の液面高さが制限されるため、作動液35の液面と吐出口との鉛直方向における相対的な位置関係(高低関係)が維持され、高さの差ΔHは0(零)に至ることはない。したがって、外気圧に対して、第1収容空間5および第2収容空間6の内圧を負圧に保つことが可能となり、吐出口15からの吐出材の漏出および滴下を防止することができる。
<循環系>
第2収容空間6とサブタンク26とは、管24を介して連通されていると共に、制御弁21およびポンプ22を備える管23を介しても連通可能となっている。吐出装置10に対して、収容容器13を一度取り外して再度取り付けた場合、管24に泡が入る可能性がある。その場合には、制御弁21を開いてポンプ22を作動させ、管24、第2収容空間6、および管23を通して作動液35を循環させて、その作動液をサブタンク26に送ることによって、管24内の泡を取り除くことができる。制御弁21は、ポンプ22を使用しないときに閉じ、ポンプ22を使用するときに開く。
<ポンプ>
ポンプ22およびポンプ32の例として、シリンジポンプ、チューブポンプ、ダイアフラムポンプ、ギアポンプ等が挙げられる。ただし、ポンプ22およびポンプ32は、送液手段の機能を有していればよいため、ポンプに限定されるわけではなく、吐出材の吐出装置に適した送液手段を選定することが可能である。
<第1フィルム1および第2フィルム2>
先に説明したように、収容容器13の内部空間は、隔壁として機能する2枚のフィルム(第1フィルム1および第2フィルム2)を含む可撓性部材によって、第1収容空間5と第2収容空間6とに分離されている。第1収容空間5と第2収容空間6との間(即ち、第1フィルム1と第2フィルム2との間)には、膜間空間4が形成される。本実施形態においては、第1フィルム1と第2フィルム2とが連動して一体的に変形して移動可能であるため、吐出ヘッド14内の圧力を制御することができる。即ち、サブタンク26の液面調整をすることで第2収容空間6内の内圧を制御し、これにより、間接的に第1収容空間5の内圧が制御される。仮に、第1フィルム1と第2フィルム2とが連結されておらず、それぞれ独立して変形および移動可能である場合には、サブタンク26内における作動液の液面高さを調整しても吐出ヘッド14内の圧力を上述のように制御することはできない。
なお本実施形態では、結合部3で溶着等によって第1フィルム1および第2フィルム2が部分的に結合される例を示しているが、これに限られない。第1フィルム1および第2フィルム2の間の膜間空間4が複数あり、その一部が微負圧になって第1フィルム1および第2フィルムが部分的に結合状態となっている場合には、第1フィルム1および第2フィルムを溶着などによって連結しなくてもよい。この場合であっても、第1フィルム1と第2フィルム2とが連動して一体的に変更して移動可能である。
第1フィルム1と第2フィルム2とが連動して一体的に変更して移動可能でない場合には、吐出ヘッド14内の圧力を制御することができない。比較例として、第1フィルム1と第2フィルム2とが、それぞれ独立して変形および移動可能な形態を例に挙げて、吐出ヘッド14内の圧力を制御できないことを説明する。サブタンク26内における作動液の液面位置(液面高さ)を吐出口15が開口する吐出面の位置よりも低い位置に調整しようとする場合を説明する。この場合、第2収容空間6内の作動液は、重力によって鉛直方向下方のサブタンク26内に移動しようとする。この比較例においては、第2フィルム2は、第1フィルム1とは無関係に移動可能であるので、第2収容空間6内の作動液35のサブタンク26への移動に伴って、第2フィルム2は、第1フィルム1から離れて図1中のX方向に移動する。その作動液35の移動によって高さの差ΔHが小さくなり過ぎたときに、サブタンク26の液面調整機能により、ポンプ32によって、サブタンク26内の作動液35がメインタンク34に送られる。あるいはまた、サブタンク26内の作動液35は、サブタンク26の吸気口としても機能する大気連通の管25から外部に溢れ出る。いずれの場合においても、最終的には、第2収容空間6から流出可能な作動液が無くなって、第2フィルム2は、第1フィルム1から離れて筐体12の内壁面に張り付いた状態となる。このとき、第1フィルム1は、第2フィルム2と無関係であって移動しないので、第1収容空間5の内圧は変化しない。このように、第1フィルム1と第2フィルム2とが連動しない構成である場合には、作動液35の液面位置の調整によって、吐出ヘッド14内(より詳細には、第1収容空間5内)の圧力を制御することはできない。
これに対し、本実施形態では、第1フィルム1および第2フィルム2の対向面に分布する結合部3によって、第1フィルム1および第2フィルム2が複数箇所で連結されている。このため、第1フィルム1および第2フィルム2は、連動して同時に同方向に移動する。これにより、吐出ヘッド14内の圧力を制御することができる。第1収容空間5は、吐出ヘッド14の吐出口15を介して外気と連通しており、その吐出口内における吐出材と外気との界面において、吐出材には、大気圧、吐出材の重力、および吐出口の内壁による流抵抗、および表面張力等の力が働く。力の釣り合いの関係から、吐出材は吐出口から外部に流れ出ようとし、第1フィルム1を図中のX方向とは反対の−X方向に移動させようとする。本実施形態においては、第2フィルム2を図中のX方向に移動させようとする力と、第1フィルム1を−X方向に移動させようとする力と、のバランスにより、第1収容空間5および第2収容空間6の内圧が等しい状態が維持される。したがって、高さの差ΔHを所定の範囲に保つことによって、吐出口15内に適切なメニスカス17を形成するための負圧を維持するように、第1収容空間5と第2収容空間6との内圧が釣り合った状態となる。したがって、サブタンク26内の作動液35の液面位置を調整することによって、吐出ヘッド14内の圧力を制御することができる。
<収容容器>
図3は、収容容器13の分解斜視図である。第1フィルム1と筐体11との間は、弾性材81によって密閉され、同様に、第2フィルム2と筐体12との間は、弾性材82によって密閉されている。弾性材81および弾性材82は、例えばOリングまたはシート状に型抜きされた樹脂を用いることができる。一方、第1フィルム1と第2フィルム2との間には、スペーサ16が挟まれている。そして、図示しない固定ボルトを締めこむことにより、筐体11と筐体12との間において、スペーサ16が、第1フィルム1および第2フィルム2の2枚のフィルムの押さえ板として機能し、密閉性を保つように筐体とフィルムとが密着される。スペーサ16の材質は、第1フィルム1および第2フィルム2の材質と同じであることが好ましく、スペーサ16の材質を例えばPTFEとすることができる。仮に、第1フィルム1が破損して、第1フィルム1および第2フィルム2の間の膜間空間4に吐出材が流れ出したとしても、吐出材が、フィルム1と同じ品質の部材以外と接触する事態を避けることができるからである。第1フィルム1および第2フィルムとスペーサ16との密着度を向上させるために、第1フィルム1および第2フィルム2とスペーサ16とを溶着による接合または接着固定してもよい。
図4は、フィルムとスペーサ16とが溶着されている様子を示す図である。第1フィルム1とスペーサ16とは、接合部18をレーザー加工機で溶着することにより接合される。接合部は必ずしも面でなくてもよく、線状や複数の点上に接合されてもよいが、弾性材とのフィルム当接面とが平らになるように接合部を溶着するが好ましい。第2フィルム2とスペーサ16とに対しても、同様の接合面(不図示)を溶着することで、第1フィルム1と第2フィルム2とスペーサ16とを一体構造として扱える。そのため、第1フィルム1および第2フィルム2を筐体11と筐体12とに密着する際に、密着時に発生するフィルムのシワやよれ等を防止することができ、収容容器13の密閉性を向上させることが可能となる。
また、スペーサ16を用いることで、第1フィルム1と第2フィルム2との間の膜間空間4内の密閉性も向上する。このため、フィルムが破損し、第1収容空間5または第2収容空間6から、第1フィルム1と第2フィルム2との間の膜間空間4内に液体が侵入したとしても、膜間空間4内とスペーサ16との間からの液漏れ(浸みだし)も防止できる。
図3に示すように、スペーサ16には、上部(天面)には、外部と導通する吸気口83が設けられ、下部には、外部と導通する排液口84が設けられている。スペーサ16の内部には、吸気口83および排液口84と連通する流路が形成されている。排液口84の下方には、後述する漏液センサ42が配置される。後述するように、第1フィルム1または第2フィルム2のいずれかが破損し、第1収容空間5または第2収容空間6のいずれかから膜間空間4内に液体(吐出材または作動液)が漏れ出た場合、その液体は、スペーサ16によって排液口84に導かれる。そして、排液口84を通って下方に滴下して漏液センサ42により検知される。図1において、スペーサ16の内側の面は、簡略化されて平面として表示されているが、排液口84に向かって傾斜することが好ましい。
仮にスペーサ16の上部に外部と導通する吸気口83が設けられておらず、下部に外部と導通する排液口84が設けられていない場合であっても、第1フィルム1と第2フィルム2との2枚のフィルムで吐出材と作動液とを分離できる。このため、どちらか一方のフィルムが破損し、液体が漏液したとしても、各液体が混ざりあうことを抑制することができる。
なお、スペーサ16を設けず、Oリング等の弾性材を介してそれぞれのフィルムを固定する場合、フィルムにシワが発生し、リークしやすくなるという現象が生じる。しかし、本実施形態の構成であれば、それぞれのフィルムを弾性材と平らな(剛性のある)スペーサ16とで挟む構造にすることで、それぞれのフィルム押さえに影響しない構造とすることができる。
リークを発生させないために、スペーサ16のフィルムと当接する面、特にフィルムを介して弾性材と当接する部分は、100μm以下の平面度であればよい。また、スペーサ16の厚さについては、フィルムを固定する際に、弾性材の反力に対して十分な剛性となるように1mm以上であることが好ましい。厚さについては、収容空間の密閉性を保てばよく、材質によって適切に選択される。また、スペーサ16の材質は、フィルム1が破損し吐出材とスペーサ16とが接触した状態で吐出材の品質を劣化させないものが好ましい。また、吐出材に対して耐性があるものが好ましい。例えばPFAやPTFE等のフッ素樹脂材料、または、吐出材と触れても金属溶出が起こらないように表面をフッ素樹脂膜等でコーティングされた金属材料を用いてもよい。
スペーサ16に当接される弾性材81、82もまた、吐出材および作動液に耐性がある材質のものを選択して使用することができる。特に吐出材と接液する側の弾性材81の品質は、フッ素系の材料が好ましい。また、弾性材81は、吐出材と常時接液するため、酸洗浄を実施し、表面に付着した金属粒子を除去したものが好ましい。弾性材81と弾性材82とは、同材料、同形状のもので、フィルムを固定するのが好ましいが、その組み合わせについては限定されない。
このように、それぞれのフィルムを弾性材と平らなプレートとで押さえることで、フィルムのシワ発生を防ぎ、収容容器13の密閉性が向上させることが出来る。このため、リークに対する品質を向上させることができる。
図3に示すように、第1フィルム1および第2フィルム2は、筐体11の内部の凹形状に対応するように、PTFEフィルムによって凸形状に成型されている。第2フィルム2には複数の連結用の凸部が形成されている。第1フィルム1および第2フィルム2を重ねてから、レーザー加工機によって、第2フィルムの凸部と第1フィルム1との接触部分にレーザーを照射することにより、その接触部分が熱溶着されて第1フィルム1および第2フィルム2が連結される。これにより、結合部3が形成される。
なお、図3では、第2フィルム2側に凸部を設けた場合について説明した。しかし、そのような凸部はなくてもよく、例えば、レーザー加工機によって、重ねた状態のフィルム1,2を線状の溶着ラインに沿って溶着、あるいは複数の溶着点において溶着することも可能である。また、溶着に限らず、粘着性のある両面テープで接続することも可能である。また、前述したように、膜間空間を複数設け、一部の膜間空間を微負圧にして結合状態にしてもよい。
図3および図1に示すように、可撓性部材の2枚の第1フィルム1および第2フィルム2の間は、吸気口83と排液口84によって外気(大気)と連通する。一方、第1収容空間5および第2収容空間6は、外気圧(大気圧)に対して、等しく負圧状態を保つように内圧が制御される。そのため、第1フィルム1および第2フィルム2の溶着されていない部分である非連結領域は、それぞれのフィルムが覆う第1収容空間5および第2収容空間6に向かって引っ張られる。このため、第1フィルム1および第2フィルム2の間には、膨張した状態の膜間空間4が形成される。
<フィルムの破損検知>
次に、フィルムが破損した場合の破損検知を行う例を説明する。本実施形態では、フィルムの破損を、大きく2通りの方法で検知することができる。第1の検知方法は、サブタンク26内の作動液の液面変化を検知する方法である。第2の検知方法は、スペーサ16の排液口84からの漏液を検知する方法である。
<第1の検知方法>
第1の検知方法を説明する。第1の検知方法は、サブタンク26内の作動液の液面が、予期せず上昇したことを検知する方法である。詳細は後述するが、本実施形態の構成においてフィルムが破損した場合、サブタンク26内の作動液の液面が上昇する。また、本実施形態の構成においては、サブタンク26内の作動液の変化が、フィルム破損に関わらずに生じ得る。例えば、前述したように、図1に示す高さの差ΔHの値を所定の範囲内に維持するためにメインタンク34からサブタンク26に作動液35を補給する場合には、当然のことながら、サブタンク26内の作動液35の液面上昇が発生する。しかしながら、この場合には、作動液の液送量が分かっているので、作動液補給による液面高さの変化と、予期せぬ異常な液面高さの変化と、を区別することができる。また、吐出口15から吐出材が吐出された場合には、その吐出分だけ、サブタンク26から第2収容空間6へ作動液が供給される。これによりサブタンク26内の作動液の液面高さは変化するが、この場合、その液面は下降する方向に変化する。そのため、吐出材の吐出による液面高さの下降方向の変化と、フィルム破損による液面高さの上昇方向の変化と、を明確に区別することができる。つまり、予期せぬ液面上昇を検知した場合に、フィルム破損が生じたと検知することができる。
次に、フィルムが破損した場合の挙動を説明する。まず、第2フィルム2の一部に破損が発生した場合を説明する。
図5は、図1の吐出材収容ユニット100の一部を拡大した図であり、第2フィルム2の一部が破損して孔が空いた例を示している。第2フィルム2の一部が破損して孔73が空いた場合、その破損個所を通って第2収容空間6内に気泡74が吸い込まれる。気泡74は大気圧と等しい圧力であるため、その気泡74によって第2収容空間6内の内圧が上昇して、大気圧に近づく。この結果、水頭差により、第2収容空間6内の作動液がサブタンク26に流れ込み、この流れ込んだ作動液により、サブタンク26内の作動液の液面が上昇する。この液面上昇が液面センサ41によって検知される。予期せぬ異常な液面高さが検知されることにより、フィルムに破損が生じて気泡74が収容空間に入り込んだことが検知できる。このように、第2フィルム2の一部に破損が発生した場合には、液面センサ41により、サブタンク26における作動液35の液面上昇を検知して、フィルムの破損の発生を検知することができる。
次に、第1フィルム1の一部に破損が発生した場合について説明する。この場合の吐出装置の状態および挙動は、第2フィルム2の一部が破損した場合と同様となる。すなわち、第1フィルム1の一部に破損が生じると、その破損箇所を通って第1収容空間5内に気泡が吸い込まれる。気泡は大気圧と等しい圧力であるため、その気泡によって第1収容空間5内の内圧が上昇して、その内圧が第2収容空間6の内圧よりも高くなる。これにより、隔壁として機能する第1フィルム1および第2フィルム2が一体的に第2収容空間6側へ移動して、その第2収容空間6内の作動液35がサブタンク26へ押し出される。その押し出された作動液によりサブタンク26内の作動液の液面が上昇し、この上昇が液面センサ41によって検知される。予期せぬ異常な液面高さが検知されることにより、フィルムに破損が生じて気泡が収容空間に入り込んだことが検知できる。このように、第1フィルム1の一部に破損が発生した場合にも、液面センサ41により、サブタンク26における作動液35の液面上昇を検知して、フィルムの破損の発生を検知することができる。
また、図1において、第2収容空間6とサブタンク26の内部とを連通させる管24には、流速センサ77が備えられている。第1フィルム1および第2フィルム2のいずれかに破損が発生すると、前述したように、第2収容空間6の作動液35が管24を経由してサブタンク26に押し出される。このときの作動液の流速は、流速センサ77によって検知できる。一方、吐出口15から吐出材が吐出された場合は、その吐出された分だけ、サブタンク26内の作動液が管24を経由して第2収容空間6へ供給される。このとき作動液は流れの向きは、フィルムに破損が発生したときの逆になる。そのため、吐出材の吐出による作動液の流れと、フィルムの破損による作動液の流れと、明確に区別することができる。つまり、流速センサ77による流速を検知することでも、フィルムの破損を検知することができる。
次に、作動液35の液面変化を検知することの詳細を説明する。不図示の制御装置は、液面センサ41によって計測された液面高さに基づいて、液面位置の変化量と、時間毎の液面位置の変化率(以下、「液面変化速度」ともいう)と、の2種類の値を算出する。サブタンク26内の作動液35の液面は、例えば、地震などの振動によって急激に変化することがある。しかしながら、地震による液面変動では、液面変化速度が正負の値が入れ替わるように検知される。これに対して、先に説明したフィルム破損によるサブタンク26内の作動液の液面上昇では、正方向の液面変化速度だけが検知される。よって、制御装置は、液面変化速度の挙動によって、地震などの振動による液面変化と、フィルムの破損による液面変化と、を分離して認知することができる。
また、前述したように、高さの差ΔHの値を一定の範囲内に保つために、メインタンク34から作動液35をサブタンク26へ供給する動作が行われる。このような通常の供給動作では、メインタンク34からサブタンク26への作動液35の送液量は既知であり、液面変化速度も制御装置によって算出され、既知である。例えば、サブタンク26から第2収容空間6に補充された作動液の量の積算値は、第1収容空間5内の吐出材が減少した量と等しい。メインタンク34からサブタンク26への送液量は、吐出材の減少量に対応する。作動液35の液送中にフィルムの破損が発生した場合には、液面変化速度が、既知の値よりも大きく検知されるため、フィルムの破損による異常状態を検知することができる。
以上のように、第1フィルム1および第2フィルム2のどちらが破損した場合にも、液面センサ41および流速センサ77のうちの少なくとも一方を用いることによって、いずれかのフィルムが破損したことを検知することができる。また、第1フィルム1および第2フィルム2のどちらが破損した場合でも、吐出材と作動液は分離されたままとなり、互いに接触することは無い。このため、フィルム破損に伴い吐出材と作動液とが混ざり合うことを防止できる。
なお、本実施形態において、第1フィルム1と第2フィルム2との間の膜間空間4は、外気と連通して大気圧と等しい圧力となる。しかし、膜間空間4と外気との連通を制御するためのバルブを設け、膜間空間4内の気圧を外気によって予め大気圧に調整した後に、バルブを閉じて膜間空間4を密閉空間としてもよい。この場合であっても、膜間空間4と第1収容空間5および第2収容空間6との間の差圧を保つことができる。この状態において、第1フィルム1および第2フィルム2のいずれかが破損すると、膜間空間4内の気体が第1収容空間5および第2収容空間6のいずれかに流入する。この場合、気体の流入量は、最大でも、第1フィルム1と第2フィルム2との間の容積分である。そのため、膜間空間4が外気と連通している場合と比べて極めて少ない気体の流入量によって、フィルムの破損の発生を検知して、吐出口からの吐出材の滴下を抑制することができる。
<フィルム破損の影響>
次に、フィルム破損により生じる影響とフィルム破損によっても吐出材と作動液が接触しないことの意義を説明する。フィルムの破損により、収容容器13内の圧力制御が失われ、その結果、第1収容空間5の内圧が、外気圧と等しくなるまで上昇する可能性がある。その場合、吐出材は、メニスカス17を形成する状態を維持することができず、意図しないタイミングで吐出口15から滴下してしまうおそれがある。しかしながら、本実施形態の吐出装置10は、前述したように、第1収容空間5の内圧が上昇に転じた時点で異常を検知することができる。このため、異常の検知に基づいて異常警報を発報することにより、吐出材が滴下する前に滴下防止手段を作動させることが可能である。滴下防止手段の例としては、例えば、吐出口のキャッピング、および、圧力制御手段による第2収容空間の負圧制御などが挙げられる。
フィルムに破損が発生する原因は様々であり、例えば、インクを吐出材とするプリント装置では、製造上のバラツキにより、隔壁としてのフィルムに孔が空いてしまうおそれがある。また、隔壁としてのフィルムが収容容器13内において移動・変形を繰り返すことにより、孔が空いてしまうおそれもある。本実施形態のように可撓性部材が2つのフィルムで構成されていないような形態では、フィルムに孔が空くと同時に吐出材中に作動液が混入してしまう。吐出材に作動液が混入すると、問題が発生する。例えば、画像記録用のインクに対して作動液としての水が混入して拡散すると、インクが水で薄まり記録画像がかすれてしまう。また、作動液は不純物である添加剤を含んでいるため、直径が10μm程度の吐出口15に、作動液中の析出物または作動液中のパーティクルが詰って、吐出不能な状況に陥るおそれがある。従って、隔壁としてのフィルムに孔が空いたとしても、吐出材と作動液とが接触したり、混入したりしないことが極めて重要となる。
本実施形態の吐出装置が半導体露光装置用の感光レジスト塗布装置に適用される場合、吐出材と作動液とが接触しないことによる効果はさらに大きい。感光レジスト塗布装置では、吐出パターンの密度が細かいので、吐出口15の口径は高密度のプリント装置と同様に10μm程度である。そのため、不純物の詰りが重大な問題となる。さらに、感光レジストの必要条件として、レジスト内に溶出するNa、Mg等の金属イオンの濃度は、数ppb未満であることが要求される。感光レジストと作動液とが混入するに至らなくても、接触が発生しただけでも、作動液中の金属イオンが感光レジスト内に移動して、金属イオン汚染が発生する。しかも、金属イオン汚染の発生した感光レジストがウエハに塗布された場合には、このウエハと接触した次工程以降の全ての生産装置に金属イオン汚染が拡散して重大な問題となる。このように、吐出材と作動液とが接触することなく、フィルム破損の発生を検知できることの重要性は極めて大きい。
<第2の検知方法>
次に、フィルム破損を検知する第2の検知方法を説明する。第2の検知方法は、スペーサ16の排液口84からの漏液を検知する方法である。図5で説明したように、第2フィルム2が破損して孔73が空いた場合、気泡74が第2収容空間6に吸い込まれて、それらの収容空間の内圧が外気圧に近づく。さらに、フィルムの破損の程度が大きく、直径2mm以上の孔78が空く場合、あるいは複数の孔73が同時に空く場合も想定される。図5のように、第2フィルム2に孔73,78が空いた場合には、気泡74が孔78から第2収容空間6内に吸い込まれると同時に、作動液が漏液79となって孔73から膜間空間4内に漏れ出す。第2収容空間6とサブタンク26との間の管24の配管抵抗によっては、サブタンク26側に作動液が押し戻されるより先に、作動液が漏液79となって排液口84から外部に漏れ出す。そして漏液79は、漏液センサ42上に滴下して検知される。同様に、第1フィルム1に孔が空いた場合には、気泡が孔から第1収容空間5内に吸い込まれると同時に、吐出材が漏液となって孔から膜間空間4内に漏れ出し、その漏液が漏液センサ42によって検知される。このように、スペーサ16の排液口84からの漏液を漏液センサ42によって検知することで、フィルム破損を検知することができる。
また、吐出材として感光レジストを使用し、作動液として、防腐剤を混入した水を用いる吐出装置において、漏液センサ42として光学式の漏液センサを用いることにより、漏液が吐出材または作動液のいずれかを判定することができる。その場合、その光学式の漏液センサは、吐出材および作動液のそれぞれに対する感度をもつことになる。但し、通電・短絡検知式の漏液センサを用いた場合には、その機種によっては、感光レジストに対する感度はもつものの、水に対する感度はもたないもの、または、水に対する感度はもつものの、感光レジストに対する感度はもたないものがある。このような場合には、複数の機種の漏液センサを用いて対応することができる。つまり、感光レジストを検知する検知部と、水を検知する検知部と、を含む漏液センサを用いることにより、第1フィルム1または第2フィルム2のいずれに破損が発生したかを区別して検知可能である。
本実施形態では、第1の検知方法および第2の検知方法のうちの少なくとも一方を用いてフィルム破損を検知することができる。もちろん、第1の検知方法および第2の検知方法の両方を用いてフィルム破損を検知してもよい。
以上説明したように、本実施形態では、可撓性膜を第1フィルム1と第2フィルム2との2重構造とするため、第1フィルム1と第2フィルム2の一方が破損しても吐出材と作動液との接触を避けることができる。さらに、第1フィルム1と第2フィルム2との膜間空間4を利用して、その膜間空間4の状態の変化によって生じる現象を検知することにより、第1フィルム1と第2フィルム2の少なくとも一方の破損を速やかに検知することができる。さらに、第1フィルム1と第2フィルム2との間に設けたスペーサ16により、吐出材を収容する第1収容空間5と作動液を収容する第2収容空間6とのシール性を向上し、作動液と吐出材料の吐出装置外への漏液を防止することができる。また、本実施形態においては、液面センサ41および流速センサ77の少なくとも一方によるフィルム破損の検知と、漏液センサ42によるフィルム破損の検知と、を並行して実施することができる。したがって、フィルムの破損の程度に拘わらず、その破損を迅速かつ確実に検知して対応することができる。特に、漏液センサ42は、漏液を直接検知するため、より確実にフィルム破壊を検知することができる。
<<第2実施形態>>
第2実施形態は、第1実施形態とは、フィルムが異なる構成である。本実施形態の基本的な構成は、第1実施形態と同様であるため、以下では、相違する点を中心に説明する。
図6は、第2実施形態のフィルムおよびスペーサを示す図である。本実施形態では、実施形態1で説明した第1フィルムおよび第2フィルムが、一体化したフィルム51として、収容容器13に構成されている。スペーサ16は、フィルム51の膜間空間内に収容されており、フィルム51とスペーサ16とは、一体成型されており、分離できない。
フィルム51内の膜間空間4において、スペーサ16は位置が拘束されている状態であると共に、フィルム51は膜間空間4が密閉空間となるようにフィルム端部を溶着や加熱等により接合し、スペーサ16をフィルム内部に収容する。その後、スペーサ16を収容したままフィルムの重なり部を同時に所望の形状に成形加工を行う。フィルムを重ねた状態で同時に成形することにより、フィルム51には、見かけ上の第1フィルム1および第2フィルム2に相当するフィルム部が形成される。
本実施形態の収容容器13においては、第1実施形態と同様に、見かけ上の第1フィルム1および第2フィルム2により2枚のフィルムが隔壁として機能し、収容容器13を第1収容空間5と第2収容空間6とに分離することができる。また、膜間空間4が密閉空間となっているため、見かけ上の第1フィルム1と第2フィルム2が収容空間内を一体的に変形して移動可能となる。その結果、収容空間内の圧力をサブタンク26内の作動液の液面高さを調整して制御することができ、吐出ヘッド14内の圧力制御が可能となる。
本実施形態においても、スペーサ16が収容されたフィルム51で弾性材を押さえることで、フィルムのシワ発生を防ぎ、収容容器13の密閉性が向上させることが出来るため、リークに対する品質を向上させることが可能である。また、第1実施形態と同様に、スペーサ16の上部に、外部と導通する吸気口を、その下部に外部と導通する排液口を設けることで、同様の効果を得ることができる。この場合、第1実施形態と同様に、見かけ上の第1フィルム1と第2フィルム2とが一体的に変更するように、部分的に結合状態となるようにすればよい。
<<その他の実施形態>>
<インプリント装置>
図7は、第1実施形態または第2実施形態で説明した吐出装置10を含むインプリント装置200の一例を示す図である。図7を参照しながら吐出装置10を用いたインプリント装置200を説明する。ここでは、一例として光(紫外光)の照射によって樹脂(インプリント材・感光レジスト)を硬化させるUV光硬化型インプリント装置を用いる例を説明する。なお、他の波長域の光の照射によって樹脂を硬化させるインプリント装置や、他のエネルギー(例えば、熱)によって樹脂を硬化させるインプリント装置であってもよい。ここでは、吐出材の例として樹脂(インプリント材)を用いるものとする。
インプリント装置200は、吐出装置10で樹脂(インプリント材)98を基板94の上に吐出(塗布、供給)する。インプリント装置200は、吐出された樹脂98にモールド91を接触させ、その状態で樹脂98に照射部97から紫外光99を照射して樹脂98を硬化させることでパターンを転写する。モールド91には微細な凹凸状のパターンが形成されており、基板94の上にモールドパターンに対応した素子パターンを作成することができる。基板ステージ96は、基板94を保持しながらベースフレーム95上を移動可能である。モールド91を上下駆動させるモールド駆動部92は、構造体93に保持され、モールド91を基板94に近接させ、樹脂98を介して押し付ける押印動作が可能である。モールド91の上方に配置された照射部97は、モールド91を介して樹脂98に紫外光99を照射して硬化させる。紫外光99は、例えば、i線、g線を発生するハロゲンランプなどの光源であり、照射部97は、光源が発生した光を集光し成形する機能を含む。
次に、インプリント動作を説明する。基板94を基板ステージ96に搭載する。基板94は、基板ステージ96によって吐出装置10(ディスペンサ)の吐出ヘッド14(吐出口15)の下に移動される。基板ステージ96を移動させながら吐出ヘッド14から所定量の樹脂98を吐出することで、樹脂98が基板94上の所望の位置に吐出される。基板ステージ96を移動させずに吐出装置10を移動させて基板94上に樹脂98を吐出してもよい。基板ステージ96を移動させて、基板94の樹脂98を吐出した部分をモールド91の下に移動させる。モールド91をモールド駆動部92により降下させて、モールド91と基板94とが近接した状態とする。その状態で、不図示のアライメントスコープによりモールド91上のマークと基板94上のマークとを検出し、検出結果を用いてモールド91と基板94との相対位置調整を行う。
次に、モールド駆動部92によりモールド91を基板94の方向にさらに降下させ、樹脂98とモールド91のパターンとを接触させる。その後、照射部97から紫外光99を照射すると、モールド91を透過した紫外光99は樹脂98に照射される。樹脂98の光硬化反応が開始して樹脂98が硬化する。最後に、モールド駆動部92によってモールド91と基板94との間隔を広げることにより、モールド91を硬化した樹脂98から引き離す離型動作が行われる。これにより、基板94上にパターンが形成されインプリント動作が終了する。
1 第1フィルム
2 第2フィルム
4 膜間空間
5 第1収容空間
6 第2収容空間
16 スペーサ

Claims (20)

  1. 吐出材を吐出する吐出ヘッドと、
    可撓性膜によって内部空間が、前記吐出ヘッドに供給される前記吐出材を収容する第1収容空間と、作動液を収容する第2収容空間と、に分離された収容容器と、
    前記第2収容空間の内圧を制御する圧力制御手段と、
    を備える吐出材吐出装置であって、
    前記可撓性膜は、前記第1収容空間を覆う第1フィルムと、前記第2収容空間を覆う第2フィルムと、前記第1フィルムと前記第2フィルムとの間に位置する膜間空間と、を含み、
    前記収容容器は、前記第1フィルムと前記第2フィルムとの間にスペーサを含むことを特徴とする吐出材吐出装置。
  2. 前記第1フィルムは、第1の弾性材と前記スペーサとの間に位置し、前記第2フィルムは、第2の弾性材と前記スペーサとの間に位置する、請求項1に記載の吐出材吐出装置。
  3. 前記スペーサにおいて、前記第1フィルムを介して前記第1の弾性材と当接する部分、および、前記第2フィルムを介して前記第2の弾性材と当接する部分は、100μm以下の平面度を有する、請求項2に記載の吐出材吐出装置。
  4. 前記スペーサの厚さは、1mm以上である、請求項1から3のいずれか一項に記載の吐出材吐出装置。
  5. 前記スペーサと、前記第1フィルムまたは前記第2フィルムとは、溶着または接着により固定されている、請求項1から4のいずれか一項に記載の吐出材吐出装置。
  6. 前記第1フィルムと前記第2フィルムとは、部分的に結合されている、請求項1から3のいずれか一項に記載の吐出材吐出装置。
  7. 前記スペーサと、前記第1フィルムと、前記第2フィルムとは、一体成型されたものである、請求項1から4のいずれか一項に記載の吐出材吐出装置。
  8. 前記スペーサと、前記第1フィルムと、前記第2フィルムとは、同一の材質である、請求項1から7のいずれか一項に記載の吐出材吐出装置。
  9. 前記スペーサは、前記膜間空間と前記スペーサの外部とを連通させる流路を有する、請求項1から8のいずれか一項に記載の吐出材吐出装置。
  10. 前記スペーサは、前記流路の鉛直方向の上部に吸気口を備え、前記流路の鉛直方向の下部に排液口を備えている、請求項9に記載の吐出材吐出装置。
  11. 前記流路は、前記排液口に向けて傾斜している、請求項10に記載の吐出材吐出装置。
  12. 前記流路の鉛直方向の下方に漏液を検知するセンサをさらに備えている、請求項9から11のいずれか一項に記載の吐出材吐出装置。
  13. 前記収容容器は、第1の筐体と第2の筐体とを有し、
    前記第1収容空間は、前記第1の筐体の前記第2の筐体側に開口する開口部が前記第1フィルムによって覆われた空間であり、
    前記第2収容空間は、前記第2の筐体の前記第1の筐体側に開口する開口部が前記第2フィルムによって覆われた空間である、請求項1から12のいずれか一項に記載の吐出材吐出装置。
  14. 前記収容容器において前記第1収容空間と前記第2収容空間とは、水平方向に分離された空間である、請求項1から13のいずれか一項に記載の吐出材吐出装置。
  15. 前記第1フィルムと前記第2フィルムとは、一体的に前記第1収容空間または前記第2収容空間に移動可能である、請求項1から14のいずれか一項に記載の吐出材吐出装置。
  16. 前記第1収容空間および前記第2収容空間は、大気よりも負圧に構成されており、
    前記圧力制御手段は、前記作動液を収容し、前記第2収容空間および大気と連通するサブタンクを備え、
    前記サブタンクの液面変化を検知するセンサをさらに備える、請求項1から15のいずれか一項に記載の吐出材吐出装置。
  17. 前記第1収容空間および前記第2収容空間は、前記膜間空間よりも負圧に構成されており、
    前記圧力制御手段は、前記作動液を収容し、前記第2収容空間および大気と連通するサブタンクを備え、
    前記サブタンクの液面変化を検知するセンサをさらに備えている、請求項1から15のいずれか一項に記載の吐出材吐出装置。
  18. 前記圧力制御手段は、前記サブタンクの液面と前記吐出ヘッドの吐出面との鉛直方向の距離が所定の範囲になるように制御する、請求項16または17に記載の吐出材吐出装置。
  19. 前記吐出材は、インプリント材である、請求項1から18のいずれか一項に記載に記載の吐出材吐出装置。
  20. 基板の上のインプリント材にパターンを形成するインプリント装置であって、
    前記インプリント材を前記吐出材として前記基板の上に吐出する請求項1から19のいずれか一項に記載の吐出材吐出装置を含むことを特徴とする、インプリント装置。
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