JP2020085095A - 高圧タンク - Google Patents
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Abstract
【課題】強度を確保するとともに、巻回されたGFRPにより形成されるGFRP層に亀裂が入りやすく、透過水素が溜まることを防止することができる高圧タンクを提供する。【解決手段】ライナの外側にCFRP繊維束が巻回されて形成されたCFRP層14と、CFRP層14の外側にGFRP繊維束が巻回されて形成されたGFRP層15と、を有する高圧タンク10であって、GFRP繊維束は、CFRP繊維束に比べて低張力でかつCFRP層14の最外層においてCFRP繊維束がタンク回転軸の軸線CLとの間のなす角度よりも低角度で巻回されていることを特徴とする。【選択図】図5
Description
本発明は、ライナの外周に繊維束が巻回された高圧タンクに関する。
この種の高圧タンクとして、ライナの外周に第1繊維束としての炭素繊維強化プラスチック(CFRP:Carbon Fiber Reinforced Plastics、以下CFRPという。)繊維束が巻回されたCFRP層と、CFRP層の外側に第2繊維束としてのガラス繊維強化プラスチック(GFRP:Glass Fiber Reinforced Plastics、以下GFRPという。)繊維束が巻回されたGFRP層とを有するものが開示されている(特許文献1参照)。
図10は、特許文献1に示される従来技術を説明する図である。
特許文献1に記載の高圧タンクは、ライナ1の外周にCFRP繊維束をヘリカル巻きで巻回することによりCFRP層2が形成され、CFRP層2の外周にGFRP繊維束をフープ巻で巻回することによりGFRP層3が形成されている(従来例1)。
特許文献1に記載の高圧タンクは、ライナ1の外周にCFRP繊維束をヘリカル巻きで巻回することによりCFRP層2が形成され、CFRP層2の外周にGFRP繊維束をフープ巻で巻回することによりGFRP層3が形成されている(従来例1)。
CFRP繊維束及びGFRP繊維束は、複数本のCFRP繊維及び複数本のGFRP繊維を長さ方向に揃えて束ねたものであるため、繊維束の長さ方向に直交する繊維直交方向に繊維割れし易く、繊維長さ方向に繊維割れしにくい構造となっている。GFRP層3は、ライナ1にGFRP繊維束をフープ巻きしており、GFRP繊維束がタンク回転軸に対して高角度で巻回されている。高圧タンクは、軸線方向に作用する応力よりも周方向に作用する応力の方が大きい。したがって、フープ巻きは、繊維束の向きが繊維割れしにくい方向となっている。つまり、応力のかかる周方向が、「繊維割れしにくい繊維方向」と一致しており、GFRP層3に亀裂が入りにくい構造となっている。
一方、CFRP繊維束をヘリカル巻きで巻回することにより形成されたCFRP層2は、図10(b)に示すように、繊維間に亀裂が入っている。高圧タンク内の水素などのガスは、CFRP層2の亀裂やボイドを透過して、GFRP層3まで到達するが、GFRP層3や樹脂からなる表層4に亀裂などの欠陥がないと、GFRP層3まで到達したガスは、高圧タンクの外部に抜けるための抜け道がない。高圧タンクの出荷時においては、CFRP層2の亀裂やボイドを透過してGFRP層3まで到達した水素は、GFRP層3で溜まっている状態となっている。
高圧タンクは、GFRP層3や表層4にガスの抜け道がない場合、市場において使用されていると、図10(c)に示すように、GFRP層3に透過水素が溜まる量が増え、一定圧を超えると表層4が破裂するおそれがあるという問題がある。
特許文献1に記載の高圧タンクと異なる構造のもので(従来例2)、表層に、樹脂が含浸されていない繊維束をライナに巻き付け、樹脂が含浸されたCFRP層からの染み出し樹脂を吸収することで、表層の樹脂層の厚みを低減した構造のものがある。従来例2の高圧タンクにおいては、図11(a)に示すように、CFRP層からの染み出し樹脂は、下層の繊維間または繊維密度が低い部位から出てくるため、全体に均一ではなく、かつ拡散力が弱くなる。
したがって、従来例2の高圧タンクにおいては、染み出し樹脂により含浸した表層は、繊維体積含有率(Vf%)が低くなり高圧タンクの強度の低下を招くという問題がある。また、表層の樹脂が含浸されていない部分が亀裂の起点となり、高圧タンクの疲労強度の低下を招くという問題がある。
また、特許文献1に記載の高圧タンクと異なる他の構造のもので、表層の樹脂層をエポキシ分解溶液により揮発させ、表層の樹脂層の厚みを低減した構造のものがある(従来例3)。従来例3の高圧タンクにおいては、表層の樹脂層に架橋反応に寄与しない成分が混じるため、エポキシ樹脂の強度や伸び破壊靭性値などの物性が低下することがある。また、表層の硬化時に一部、揮発成分とエポキシ樹脂とが結合するが、市場での耐久時に結合が切れて異物として析出することがある。最表層以外で揮発した成分は、表層内にボイドとして硬化してしまう。
したがって、従来例3の高圧タンクにおいては、表層に揮発性物質が混入することで高圧タンクの強度が低下するという問題がある。また、市場での高圧タンクの使用時に揮発残成分が析出し高圧タンクの表層に異物が生ずるという問題がある。また、揮発性物質の表層への混入により、粘度が低下して繊維束を巻回する際に滑りが発生し張力が低下することがあり、その結果、繊維体積含有率(Vf%)が低下して高圧タンクの強度が低下するという問題がある。また、揮発成分が表層内に気泡として残留し高圧タンクの強度が低下するという問題がある。
また、特許文献1に記載の高圧タンクと異なる他の構造のもので、表層のみ破断ひずみの低い樹脂を用いて、出荷前に耐圧試験で微小クラックを入れて水素の透過パスを確保する構造のものがある(従来例4)。従来例4の高圧タンクにおいては、耐圧試験時の微小クラックは繊維と樹脂界面で生じるのが支配的で、樹脂がひずみ限界で割れることはほとんどない。樹脂ではなく繊維束の巻き方を工夫して繊維間で確実に割る対策が必要となる。したがって、従来例4の高圧タンクにおいては、耐圧試験で表層にクラックが入らず、クラックにより水素が溜まることを防止することができないという問題がある。
また、特許文献1に記載の高圧タンクと異なる他の構造のもので、ライナの外層をすべてヘリカル巻きで形成し、誘導加熱(IH:Induction Heating)、即ち、電磁誘導の原理を利用して電流を流し、外層を発熱させて硬化させる構造のものがある(従来例5)。従来例5の高圧タンクにおいては、外層すべてが高圧タンク回転軸の軸線に対して低い巻付角度で形成されているため、ライナの円筒部に巻回する際に、繊維束に張力をかけて巻回することができず、ボイド、繊維ゆるみが多く、高圧タンクの剛性が低くなる。
したがって、従来例5の高圧タンクにおいては、図11(b)に示すように、巻付角度が低角度での繊維束の巻回は、ライナの両端部分の鏡部では強度を担保することはできるが、円筒部では繊維束に張力がかからずボイドが発生するという問題がある。また、円筒部では、強度を担保することができないという問題がある。
本発明は、このような問題を解決するためになされたもので、強度を確保するとともに、GFRP層に亀裂が入りやすく、透過水素が溜まることを防止することができる高圧タンクを提供することを課題とする。
本発明に係る高圧タンクは、ライナの外側にCFRP繊維束が巻回されて形成されたCFRP層と、該CFRP層の外側にGFRP繊維束が巻回されて形成されたGFRP層とを有する高圧タンクであって、前記GFRP繊維束は、前記CFRP繊維束に比べて低張力でかつ前記CFRP層の最外層において前記CFRP繊維束がタンク回転軸の軸線との間になす角度よりも低角度で巻回されていることを特徴とする。
本発明に係る高圧タンクにおいては、GFRP繊維束がCFRP繊維束に比べ、低張力でかつCFRP層の最外層においてCFRP繊維束がタンク回転軸の軸線との間になす角度よりも低角度で巻回されているので、GFRP層に亀裂が入りやすくなる。そのため、高圧タンクの内部の水素は、GFRP層に生じた亀裂を透過して外部に抜ける。その結果、ライナ及びCFRP層を透過した水素がGFRP層に溜まることが防止される。一方、CFRP繊維束は、GFRP繊維束に比べて比較的に高い張力でかつCFRP層の最外層においてタンク回転軸の軸線に対して比較的に高角度で巻回されてCFRP層を形成しているので、CFRP層により高圧タンクの強度が確保される。
本発明によれば、強度を確保するとともに、GFRP層に亀裂が入りやすく、透過水素が溜まることを防止することができる高圧タンクを提供することができる。
本発明に係る高圧タンクを適用した実施形態に係る高圧タンク10について図面を参照して説明する。
本実施形態に係る高圧タンク10は、図1(a)、図1(b)および図1(c)に示すように、ライナ11と、口金12、13と、ライナ11の外周面を被覆するCFRP層14と、CFRP層14の外周面を被覆するGFRP層15と、GFRP層15の外周面を被覆する表層16とにより構成されている。高圧タンク10は、気体を透過させにくい性質、いわゆるガスバリア性を有しており内部には水素などの高圧のガスが充填されるよう構成されている。
ライナ11は、筒状の中空容器からなり、シリンダ部21と、一対のドーム部22とにより構成されており、ポリアミド樹脂(PA)、いわゆるナイロン(登録商標)などの高い機械的強度を有するエンジニアリングプラスチックで一体的に成形されている。
シリンダ部21は、円筒状に形成され、両端部で各ドーム部22と一体的に形成されている。各ドーム部22は、略半球体状の中空で、ライナ11の軸線に沿った長手方向端部に、ライナ11の軸線を中心とする所定の深さの凹みを有する口金装着部23を有している。口金装着部23の内周の壁面は、図1(c)の破線で示すように、均等の間隔で凹凸部23aが形成されている。
口金12は、ライナ11の口金装着部23に装着されるフランジ12aと、フランジ12aからドーム部22の外側に突出する口金本体12bと、口金本体12bと軸線を同じくしフランジ12aからドーム部22の内側に突出する突出部12cとを有している。口金12にはバルブ接続孔12dが貫通して形成されている。口金12は、金属材料で形成されている。
口金13は、口金12と同様に形成されているが、口金12のバルブ接続孔12dが省略されている。口金13は、ライナ11の口金装着部23に装着されるフランジ13aと、フランジ13aからドーム部22の外側に突出する口金本体13bと、口金本体13bと軸線を同じくしフランジ13aからドーム部22の内側に突出する突出部13cとを有している。口金13も、口金12と同様に、金属材料で形成されている。
CFRP層14は、図1(c)に示すように、ライナ11の外周面を覆う層からなり、CFRP繊維束がライナ11の外周面に巻回されることにより形成されている。CFRP繊維束は、数十本のCFRP繊維の単繊維を撚り合わせて1本の糸にした、いわゆるマルチフィラメントが、数千〜数万本程度束ねられた繊維束からなる。
CFRP層14は、CFRP繊維束をフープ巻きおよびヘリカル巻きで巻回することによって形成される。フープ巻きは、図2(a)に示すように、CFRP繊維束の巻回軌跡が高圧タンク10における高圧タンク回転軸の軸線CLに対して、例えば、巻付角度θ(°)が90°程度の直角に近い高角度で交差する巻き付け方で、CFRP繊維束がライナ11のシリンダ部21の外周面に繰り返し巻回される。なお、巻付角度θ(°)は、CFRP繊維束の巻付方向と高圧タンク回転軸の軸線CLとの間のなす角(°)をいう。
ヘリカル巻きは、図2(b)に示すように、CFRP繊維束の巻回軌跡が高圧タンク10における高圧タンク回転軸の軸線CLに対して、例えば、巻付角度θ(°)が10°〜30°程度の低角度で交差する巻き付け方で、CFRP繊維束が高圧タンク10のシリンダ部21と、一対のドーム部22の全体に亘って螺旋状に繰り返し巻回される。
CFRP層14の形成は、例えば、フィラメントワインディング法(Filament Winding Process、以下FW法という。)によって行われる。このFW法は、太い繊維束を引き伸ばして細くするとともに、緩い撚りを与えて粗糸とし、巻き取ったいわゆる粗紡糸(カーボンロービング、ガラスロービングなどのロービング)に樹脂を含浸させながら、または、あらかじめ樹脂を含侵させた粗紡糸にテンションをかけ、被加工物に連続的に巻き付ける製造方法をいう。
この製造方法によれば、ライナ11に巻き付ける際の角度を調整することにより、被加工物の軸方向および周方向の強度を調整することができる。なお、FW法における張力(N)、巻付角度(°)などの繊維束を巻き付ける際の条件や設定諸元をFW仕様という。
粗紡糸に含浸させる樹脂は、例えば、エポキシ樹脂(EP)、ポリエステル樹脂(PE)などの熱硬化性樹脂からなり、粗紡糸は、一般に、カーボン繊維(Carbon Fiber)、ガラス繊維(Glass Fiber)やアラミド繊維(Aromatic Polyamide Fiber)などの繊維からなる。
CFRP層14は、具体的には、1層から25層の複数層で形成され、図3の表1に示すFW仕様に基づいてFW法により形成される。CFRP層14のFW仕様は、表1に示すように各層ごとに異なっている。FW仕様における張力(N)は、10N〜50Nの範囲で設定される。
また、CFRP層14のFW仕様は、巻付角度(°)が、フープ巻きの場合80.8°〜89°、ヘリカル巻きの場合には11.9°〜20°に設定されており、ライナ11の外周面を過不足ない状態で覆うようになっている。図3の表1に示すFW仕様によれば、CFRP層14の最外層においてCFRP繊維束がタンク回転軸の軸線CLとの間になす角度、つまり、CFRP層14の25層の巻付角度は、89°に設定されている。
GFRP層15は、図1(c)に示すように、ライナ11のCFRP層14の外周面を覆う層からなり、GFRP繊維束がライナ11のCFRP層14の外周面に巻回されることにより形成されている。GFRP繊維束は、CFRP繊維束と同様、数十本のGFRP繊維の単繊維を撚り合わせて1本の糸にした、いわゆるマルチフィラメントが、数千〜数万本程度束ねられた繊維束からなる。GFRP層15の形成は、CFRP層14と同様、FW法によって行われる。
GFRP層15は、GFRP繊維束をヘリカル巻きで巻回することによって形成される。具体的には、GFRP層15は、26層目以降の複数層で形成され、図4(a)の表3に示すFW仕様に基づいてFW法により形成される。GFRP層15は、FW仕様における巻付角度(°)が12.5°に設定されている。
GFRP層15のGFRP繊維束は、CFRP層14のCFRP繊維束に比べて低張力でかつCFRP層14の最外層においてCFRP繊維束がタンク回転軸の軸線CLとの間になす角度よりも低角度で巻回されている。具体的には、GFRP層15のGFRP繊維束は、張力が10Nに設定され、巻付角度が12.5°に設定されている。一方、CFRP層14の最外層のCFRP繊維束は、張力が50Nに設定され、巻付角度が89°に設定されている。このように、GFRP層15には、CFRP層14よりも低張力で且つCFRP層14の最外層におけるCFRP繊維束の巻付角度よりも低角度でGFRP繊維束が巻き付けられている。
表層16は、図1(c)に示すように、ライナ11のGFRP層15の外周面を覆う層からなり、エポキシ樹脂(EP)で形成されている。
以上のように構成された実施形態に係る高圧タンク10の効果について説明する。
本実施形態に係る高圧タンク10は、GFRP繊維束が、CFRP繊維束に比べて低張力(N)でかつCFRP層の最外層においてCFRP繊維束がタンク回転軸の軸線CLとの間になす角度よりも低角度(°)で巻回されてGFRP層15を形成しているので、GFRP層15に亀裂が入りやすくなる。高圧タンク10の内部の水素は、GFRP層15に生じた亀裂を透過して外部に抜けることができる。その結果、GFRP繊維束が巻回されて形成されたGFRP層15に、透過した水素が溜まることが防止されるという効果が得られる。
一方、CFRP繊維束は、GFRP繊維束に比べて比較的に高い張力(N)で、かつ高圧タンク回転軸の軸線CLに対して比較的に高角度(°)で巻回されてCFRP層14を形成しているので、CFRP層14により高圧タンク10の強度、即ち、タンク耐圧性能が確保されるという効果が得られる。
本実施形態に係る高圧タンク10は、具体的には、図5(a)に示すように、GFRP層のGFRP繊維束を巻付角度がCFRP層14の最外層のCFRP繊維束とタンク回転軸の軸線との間のなす角度より低角度、CFRP繊維束に比べて低張力で、GFRP繊維束間の隙間および交差が多くなるようにヘリカル巻きでライナ11のCFRP層14の外周面に巻回されている。ヘリカル巻きでは、繊維が割れる方向は、太い矢印で示すように繊維と交差する繊維直交方向であるので、応力のかかる周方向に沿うように配置され、GFRP層15に亀裂が入りやすくなる。
また、図5(b)に示すように、高圧タンク10の出荷時においては、出荷時の耐圧試験でGFRP層15に亀裂が入る。即ち、GFRP層15のGFRP繊維束が低張力で巻回されているので、GFRP層15の剛性が低下し、出荷時の耐圧試験でGFRP繊維束に沿って亀裂が入る。また、出荷時の耐圧試験でGFRP繊維束間の隙間や交差点でのボイドを起点に亀裂が入る。
GFRP層15に生じた亀裂は、樹脂層である表層16に伝播し、表層16にもGFRP層15と同様に亀裂が入る。その結果、図5(c)の矢印で示すように、水素がGFRP層15および表層16の亀裂から高圧タンク10の外部に放出されるため、表層16の下に水素が滞留することはなく、市場において表層16の破裂を防止することができるという効果が得られる。
本実施形態に係る高圧タンク10においては、高圧タンク10の表層16に入った亀裂を探傷試験方法で検証した。探傷試験方法では、探傷液を使用し、探傷液を高圧タンク10の表面に塗布またはスプレーし、亀裂部を色分けすることで目視により亀裂の有無が観察される。図4(b)の水準1および図6(a)に示すように、従来技術における高圧タンクにおいては、表層の亀裂を確認することができなかった。なお、図中のドット状の点は、繊維亀裂ではなく、探傷液の溜まりの部分である。
一方、本実施形態に係る高圧タンク10は、CFRP層14のCFRP繊維束と比べて低張力でかつGFRP層15におけるGFRP繊維束の巻付角度が12.5°の低角度でヘリカル巻きが行われており、図4(b)の水準2および図6(b)に示すように、繊維に沿って表層16まで貫通する亀裂が発生していることが確認された。
次いで、本実施形態に係る高圧タンク10の繊維の割れやすさについて理論的な検討を行った。以下、繊維の割れやすさについて図面を参照して説明する。
図7(a)に示すように、高圧タンクにおいては、薄肉円筒に作用する応力の理論式によると、高圧タンクの内部圧力により軸方向および周方向に応力が作用する。軸方向に作用する応力をσとすると、周方向に作用する応力は、2σとなり、周方向には軸方向の2倍の応力がかかる。
次いで、繊維の割れやすい方向について説明する。図7(b)に示すように、高圧タンクの亀裂は、樹脂破壊によるものと、炭素繊維−樹脂界面破壊、即ち、CF−樹脂界面破壊によるものとが加わって生ずる。以下、炭素繊維をCFという。
高圧タンクにおいて、図7(b)に示す繊維方向に応力σがかかる場合、CFの伸びが約2%でCF破断が生ずるのに対して、樹脂の伸びが約6%以上で樹脂破断が生ずる。したがって、繊維束の伸びによる破断は、樹脂破断よりもCF破断の方が先に生ずることになる。
繊維束においては、CFの剛性が高いので、繊維の伸びによる破断は生じにくいとともに、繊維束が伸びると、樹脂よりも先にCFが破断するので、樹脂が破断するまで繊維束が伸びることはない。したがって、繊維方向に応力σがかかる場合、繊維束には亀裂が生じにくい。
高圧タンクにおいて、図7(c)に示す繊維直交方向に応力σがかかる場合、樹脂の伸びが約2%で樹脂破断が生ずるのに対して、CF−樹脂界面の伸びが約0.34%でCF−樹脂界面破壊が生ずる。なお、約0.34%でCF−樹脂界面破壊が生ずることは実測による検証がなされており、約0.34%は検証値である。
したがって、繊維直交方向に応力σがかかる場合、樹脂の伸びによる樹脂破断よりも先に、CF−樹脂界面破壊が生ずることになる。即ち、CF−樹脂界面から割れが生ずる。
次いで、高圧タンクの表面の繊維直交方向に生ずるひずみと亀裂発生の有無についての検討を行った。
図8(a)に示すように、高圧タンクの接線の方向をx、軸の方向をyとし、高圧タンクの外径をDo(mm)、内径をDi(mm)とした。したがって、高圧タンクの肉厚(mm)は、Do−Diとなる。
接線方向の応力をσx(MPa)とし、接線方向のヤング率(GPa)をExとし、接線方向のひずみをεxとし、高圧タンクの内圧(MPa)をPとすると、図8(b)に示すように、σx、P、Exおよびεxは、式(1)で表される。
一方、軸方向の応力をσy(MPa)とし、軸方向のヤング率(GPa)をEyとし、軸方向のひずみをεyとし、高圧タンクの内圧(MPa)をPとすると、図8(b)に示すように、σy、P、Eyおよびεyは、式(2)で表される。
式(1)および式(2)に、繊維束のライナへの巻回により16層を形成した高圧タンク(従来技術)と、同様に25層を形成した25層仕様の高圧タンクと、27層を形成した27層仕様の高圧タンクについて、それぞれ下記の具体的な数値を代入して解析を行った。結果を図8(c)に示す。
従来技術による高圧タンクは、Diが310、Doが351、Pが105、Exが78.9Eyが99.1の各数値を式(1)および式(2)にそれぞれ代入すると、εxは、約1.08、εyは約0.38となった。従来技術による高圧タンクは、εyが約0.38以上で亀裂が発生していることが分かった。なお、前述のように接線方向(x方向)には亀裂が発生せず、軸方向(y方向)に亀裂が発生する。
本実施形態による25層仕様の高圧タンクは、Diが260、Doが300、Pが105、Exが78.9Eyが99.1の各数値を式(1)および式(2)にそれぞれ代入すると、εxは、約0.94、εyは約0.32となった。本実施形態による25層仕様の高圧タンクは、εyが約0.32で亀裂が発生していないことが分かった。
本実施形態による27層仕様の高圧タンクは、Diが260、Doが300、Pが105、Exが78.9Eyが105.3の各数値を式(1)および式(2)にそれぞれ代入すると、εxは、約0.94、εyは約0.32となった。本実施形態による27層仕様の高圧タンクは、εyが約0.32で亀裂が発生していないことが分かった。
次いで、巻付角度と繊維直交方向に生ずるひずみとの関係について検討を行った。
図9(a)に示すように、高圧タンクの巻付角度(°)は、高圧タンク回転軸の軸線CLと繊維束の巻付方向との間のなす角(°)であり、ひずみεは、繊維束の巻付方向に直交する方向、即ち繊維直交方向に生ずるひずみである。
ひずみεは、具体的には、図8(a)に示す接線方向(x方向)のひずみεxと、軸方向(y方向)のひずみεyと、巻付角度θとにより、図9(b)に示す式(3)により求めることができる。
前述の高圧タンク10の繊維の割れやすさについての理論的な検討および高圧タンクの表面の繊維直交方向に生ずるひずみと亀裂発生の有無についての検討の結果より、表層16に亀裂を生じさせるには、CF−繊維直交方向に、ひずみεが0.38となるように、耐圧試験において、高圧タンクの内圧P(MPa)を加える必要がある。
具体的には、図9(b)のグラフに示すように、巻付角度θ(°)が70°以下で、εが0.38になるので、GFRP層15のヘリカル巻きの巻付角度θを70°以下にすれば、表層16に亀裂が生ずることが分かる。本実施形態の高圧タンク10においては、巻付角度θを12.5°で実施しており、図6(b)に示すように、表層16に亀裂が発生していることが確認されている。
したがって、本実施形態にかかる高圧タンク10においては、強度、即ちタンク耐圧性能が確保されるとともに、GFRP繊維束が巻回されて形成されたGFRP層15に亀裂が入りやすく、透過水素が溜まることを防止することができるという効果が得られる。
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。
10・・・高圧タンク、11・・・ライナ、12,13・・・口金、12a,13a・・・フランジ、12b,13b・・・口金本体、12c,13c・・・突出部、12d・・・バルブ接続孔、14・・・CFRP層、15・・・GFRP層、16・・・表層、21・・・シリンダ部、22・・・ドーム部、23・・・口金装着部、23a・・・凹凸部、CL・・・タンク回転軸の軸線
Claims (1)
- ライナの外側にCFRP繊維束が巻回されて形成されたCFRP層と、該CFRP層の外側にGFRP繊維束が巻回されて形成されたGFRP層とを有する高圧タンクであって、
前記GFRP繊維束は、前記CFRP繊維束に比べて低張力でかつ前記CFRP層の最外層において前記CFRP繊維束がタンク回転軸の軸線との間のなす角度よりも低角度で巻回されていることを特徴とする高圧タンク。
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