JP2020037978A - ガス貯蔵用の高圧タンク - Google Patents
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Abstract
【課題】繊維強化樹脂により高圧タンクの強度を確保しつつ、ライナを透過したガスを、外部に十分に排出することができるガス貯蔵用の高圧タンクを提供する。【解決手段】樹脂製のライナ3と、ライナ3の外周面を被覆した補強層4と、補強層4の外周面を被覆した繊維強化樹脂製の保護層5と、を備えたガス貯蔵用の高圧タンク1であって、保護層5は、補強層4の外周面を被覆し、ガラス繊維とマトリクス樹脂とからなる繊維強化樹脂からなる第1保護層5aと、第1保護層5aの外周面を被覆し、マトリクス樹脂を含む第2保護層5bとを備えており、保護層5のマトリクス樹脂の含有率が、補強層4のマトリクス樹脂の含有率よりも低く、第2保護層5bには、高圧タンク1を周回するように延在し、かつ、第2保護層5bの表面から、第1および第2保護層5a、5bとの界面まで到達した亀裂6が形成されている。【選択図】図1
Description
本発明は、ガス貯蔵用の高圧タンクに関する。
従来から、ガス貯蔵用の高圧タンクでは、ガスを収容する樹脂製のライナの外周面は、繊維強化樹脂で覆われている。高圧タンクに貯蔵されたガスが、ライナを透過し、樹脂製のライナと繊維強化樹脂層との間に閉じ込められると、このガスでライナが変形することがある。
この変形を防止するために、たとえば、特許文献1には、針により、繊維強化樹脂層の外表面から、繊維強化樹脂層と樹脂製ライナとの界面まで到達した孔を有した高圧タンクが開示されている。この高圧タンクによれば、樹脂製のライナを透過したガスを孔を介して、高圧タンクの外部へ放出することができ、ライナの変形を防止することができる。
しかしながら、特許文献1に示す高圧タンクは、繊維強化樹脂層に、ライナの表面まで到達した孔を有するため、この孔により、繊維強化樹脂層自体の強度が低下することがある。このような点を考慮すると、この孔をより小さくし、その個数を少なくすることも考えられるが、この場合には、ライナを透過したガスが、高圧タンクの外部に十分に排出することができないこともある。
本発明は、このような点を鑑みてなされたものであり、本発明として、繊維強化樹脂により高圧タンクの強度を確保しつつ、ライナを透過したガスを、外部に十分に排出することができるガス貯蔵用の高圧タンクを提供する。
前記課題を鑑みて、本発明に係るガス貯蔵用の高圧タンクは、ガスを収容する樹脂製のライナと、前記ライナの外周面を被覆し、炭素繊維を強化繊維とした繊維強化樹脂製の補強層と、前記補強層の外周面を被覆し、ガラス繊維を強化繊維とした繊維強化樹脂製の保護層と、を少なくとも備えたガス貯蔵用の高圧タンクであって、前記保護層は、前記補強層の外周面を被覆し、ガラス繊維とマトリクス樹脂とで構成される繊維強化樹脂からなる第1保護層と、前記第1保護層の外周面を被覆し、前記マトリクス樹脂を含む第2保護層とを備えており、前記保護層のマトリクス樹脂の含有率が、前記補強層のマトリクス樹脂の含有率よりも低く、前記第2保護層には、前記高圧タンクを周回するように延在し、かつ、前記第2保護層の表面から、前記第1および第2保護層との界面まで到達した亀裂が形成されていることを特徴とする。
本発明によれば、高圧タンクの外周面に形成された第2保護層には、高圧タンクを周回するように延在し、かつ、第2保護層の表面から、第1および第2保護層の界面まで到達した亀裂が形成されている。これにより、ライナ、補強層、および第1保護層の順に透過したガスを、第2保護層に形成された亀裂を介して、高圧タンクの外部へ放出することができる。また、補強層自体には、この亀裂は到達していないので、補強層の強度の低下を招くことはない。特に、保護層のマトリクス樹脂の含有率を、補強層のマトリクス樹脂の含有率よりも低くしたので、製造時にマトリクス樹脂のにじみ出しにより形成される第2保護層の厚さを抑え、この第2保護層に上述した亀裂を容易に形成することができる。
以下に、図1〜図3を参照しながら、本実施形態のガス貯蔵用の高圧タンク1について説明する。図1は、本実施形態に係るガス貯蔵用の高圧タンク1の軸方向に沿った模式的断面図である。図2は、図1のA−A線に沿った矢視方向の断面図である。図3は、本実施形態に係る高圧タンク1に形成された亀裂6のパターンを示した模式的断面図である。
本実施形態のガス貯蔵用の高圧タンク1は、中心軸Xを中心とする中空の容器であり、高圧水素ガスや高圧天然ガスなどの高圧流体を貯蔵するための圧力容器である。
図1に示すように、高圧タンク1は、ガスを収容する樹脂製のライナ3と、ライナ3の外周面を被覆している補強層4と、補強層4の外周面を被覆している保護層5と、を少なくとも備えている。また、高圧タンク1の両端には、それぞれ、口金部2、2が設けられている。
ライナ3は、胴体部31と、側端部32、32とを備え、ガスを貯蔵するための内部空間34を形成している。胴体部31は、高圧タンク1の図1に示す高圧タンク1の中心軸Xに沿って、所定の長さを有して延在する筒状部分である。側端部32、32は、胴体部31の両側に連続して形成されたドーム状の部分であり、各側端部32は、胴体部31から遠ざかるにつれて縮径しており、最も縮径した部分の中心に開口部33が形成されている。各開口部33には、口金部2が形成されている。
ライナ3は、ガスバリア性を有する樹脂で形成されている。このような樹脂の例として、ポリエチレン、ポリプロピレン、またはナイロンなどを挙げることができる。また、ライナ3は、上述した樹脂に水素吸蔵合金などのガス不透過材料を混入して形成されてもよい。
補強層4は、炭素繊維を強化繊維とした繊維強化樹脂(炭素繊維強化樹脂(CFRP))で形成されている。具体的には、炭素繊維強化樹脂の繊維をフープ巻およびヘリカル巻でライナ3の外周面に巻きつけて、形成されている。
強化繊維に含浸されたマトリクス樹脂として、熱硬化性樹脂を挙げることができる。熱硬化性樹脂として、たとえば、エポキシ樹脂、エポキシ変性ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、または熱硬化性ポリイミド樹脂などを単独でまたは2種類以上を混合して用いてよい。
保護層5は、ガラス繊維を強化繊維とした繊維強化樹脂(ガラス繊維強化樹脂(GFRP))で形成されている。具体的には、保護層5は、ガラス繊維強化樹脂のガラス繊維を例えばヘリカル巻およびフープ巻で補強層4の外周面に巻き付けて、形成されている。
本実施形態では、保護層5は、補強層4の外周面を被覆する第1保護層5aと、第1保護層5aの外周面を被覆する第2保護層5bとを備えている。第2保護層5bは、後述する熱硬化工程において、巻き付けられたガラス繊維強化樹脂の表面に、ガラス繊維に含浸したマトリクス樹脂の一部がにじみ出た状態で、これを硬化した層である。
第1保護層5aは、ガラス繊維とマトリクス樹脂とで構成された繊維強化樹脂からなる。第1保護層5a(保護層5)に含まれるマトリクス樹脂の例としては、上述した補強層4のマトリクス樹脂と同様のものを挙げることができる。また、第1保護層5a(保護層5)に含まれるマトリクス樹脂は、補強層4に含まれるマトリクス樹脂と同じ種類のものでもよく、異なる種類のものでもよい。
第2保護層5bは、マトリクス樹脂を含み、これを主材としている。このマトリクス樹脂は、上述したように、保護層5のガラス繊維に含浸したマトリクス樹脂の一部が、保護層5の表面にじみ出たものであり、第2保護層5bのマトリクス樹脂の含有率は、第1保護層5aのマトリクス樹脂の含有率よりも高い。このような第2保護層5bは、マトリクス樹脂のみでもよく、第1保護層5aから分離したガラス繊維を一部含んでもよい。
さらに、本実施形態では、保護層5全体に対する保護層5のマトリクス樹脂の含有率が、補強層4全体に対する補強層4のマトリクス樹脂の含有率よりも低い。保護層5のマトリクス樹脂の含有率を、補強層4のマトリクス樹脂の含有率よりも低くしたので、製造時に第1保護層5aから第2保護層5bに染み出すマトリクス樹脂を低減することができる。これにより、第2保護層5bの厚みが薄くなるため、後述する亀裂6を発生し易くすることができる。
本実施形態では、図3に示すように、第2保護層5bには、高圧タンク1を周回するように延在し、かつ、第2保護層5bの表面から、第1および第2保護層5a、5bとの界面まで到達した亀裂6が形成されている。亀裂6は、ライナ3から透過したガスを高圧タンク1の外部へ放出するガス通路となる。
亀裂6は、図3の(a―1)〜(a―4)に示すように、第2保護層5bの厚さ方向に沿って1つの亀裂で構成されていてもよく、図3の(b―1)〜(b―4)に示すように、第2保護層5bの厚さ方向に複数に枝分かれした亀裂であってもよい。また、図3の(c―1)〜(c―4)に示すように複数の亀裂6が連結してもよい。
また、図3の(d―1)から(d―4)に示すように、第1保護層5aに含まれるガラス繊維から分離したガラス繊維Gが亀裂6に介在してもよい。さらに、図3の(e―1)〜(e―4)に示すように、第1および第2保護層5a、5bとの間において、亀裂6の先端に空隙s1が形成されていてもよい。なお、本実施形態に係る亀裂6の態様は、図3に示すものに限定されるものではない。また、亀裂6は、高圧タンク1を周回するように、連続的に形成されていてもよく、断続的に形成されていてもよい。
図4に示すように、補強層4と保護層5とが積層された積層方向に対する、第2保護層5bのガス透過率λP2の最小値は、ライナ3のガス透過率λSよりも大きい(λs<λP2)ことがより好ましい。ここで、第2保護層5bのガス透過率λP2の最小値が、ライナ3のガス透過率λS以下である場合には、亀裂6が十分に形成されていないため、ライナ3から透過したガスを外部へ放出し難くなることがある。
一方、補強層4と保護層5とが積層された積層方向に対する、第2保護層5bのガス透過率λP2の最大値は、補強層4のガス透過率の最小値λRLよりも小さい(λP2<λRL)ことがより好ましい。ここで、第2保護層5bのガス透過率λP2の最大値が、補強層4のガス透過率の最小値λRL以上である場合には、亀裂6が過剰に形成されることになり、高圧タンク1の強度が低下するおそれがある。
第2保護層5bの亀裂6は、高圧タンク1を周回するので、1本あればよいが、複数本あることがより好ましく、高圧タンク1の中心軸Xに沿った方向において、lmあたりに10本以上であることが好ましい。これにより、第2保護層5bの積層方向に対するガス透過率を確保し、ライナ3から透過したガスを亀裂6を介して安定的に外部に放出することができる。
本実施形態によれば、第2保護層5bには、高圧タンク1を周回するように延在し、かつ、第2保護層5bの表面から、第1および第2保護層5a、5bの界面まで到達した複数の亀裂6が形成されている。これにより、ライナ3、補強層4、および第1保護層5aの順に透過したガスは、第2保護層5bに形成された亀裂6を介して、高圧タンク1の外部へ均一に放出される。
このため、ライナ3から透過したガスが、第1および第2保護層5a、5bとの界面に蓄積されることがないため、ガスが第2保護層5bを破りながら放出することはなく、ガスが外部に一気に放出した時に生じる放射音の発生を防止することができる。また、補強層4自体には、亀裂6は到達していないので、補強層4の強度の低下を招くことはない。
以下に、図5および図6を参照しながら、本実施形態のガス貯蔵用の高圧タンク1の製造方法を、図5に示す各工程に沿って説明する。図5は、本実施形態に係るガス貯蔵用の高圧タンク1の製造方法の工程を説明するフロー図である。図6(a)は、本実施形態に係る第2保護層5bに亀裂6となる空隙s2を形成する工程を説明するための模式的概念図であり、図6(b)は図6(a)のB部の拡大図である。
本実施形態の製造方法では、まず、口金組付工程S1を行う。この工程では、図1に示す形状を有した樹脂製のライナ3を準備する。準備したライナ3の各側端部32に形成された開口部33に、口金部2を取り付ける。
次に、第1巻き付け工程S2を行う。この工程では、強化繊維である炭素繊維に未硬化のマトリクス樹脂が含浸されたプリプレグ(CFRPプリプレグ)を準備する。準備したCFRPプリプレグは、帯状または紐状であり、このプリプレグを、所定の巻き張力をかけながら、口金部2を取り付けたライナ3の表面に、層状に巻き付ける。巻き付けは、フィラメントワインディング法(FW法)により、フープ巻きおよびヘリカル巻きで行う。これにより、未硬化の補強層4が形成される。
次に、第2保護層の厚さ決定工程S3を行う。具体的には、後述する熱硬化工程S6で形成される第2保護層5bに亀裂6が発生する第2保護層5bの厚さを決定する。
次に、保護層のマトリクス樹脂の含有率の決定工程S4を行う。具体的には、この決定工程S4では、第2保護層5bの厚さが上述した厚さになるように、保護層5となるGFRPのマトリクス樹脂の含有率の決定を行う。なお、本実施形態では、保護層5となるGFRPのマトリクス樹脂の含有率を、補強層4となるCFRPのマトリクス樹脂の含有率よりも低くする。これにより、第1保護層5aから第2保護層5bとしてにじみ出すマトリクス樹脂の量を抑え、第2保護層5bの厚さを、より薄くし、後述する加圧検査工程S7において亀裂6が進展し易い厚さとすることができる。
次に、第2巻き付け工程S5を行う。この工程では、まず、強化繊維であるガラス繊維に未硬化のマトリクス樹脂が、上述した含有率で含有したプリプレグ(GFRPプリプレグ)を準備する。準備したGFRPプリプレグは、帯状または紐状であり、このプリプレグを、ライナ3に巻き付けられたCFRPプリプレグの表面に、上述の巻き付けと同様にして、さらに層状に巻き付ける。GFRPプリプレグは、CFRPプリプレグを巻き付けた巻き張力よりも低い巻き張力で巻かれる。このようにして、未硬化の保護層5が形成される。
次いで、熱硬化工程S6を行う。この工程では、高圧タンク1の外側から、マトリクス樹脂の硬化温度で高圧タンク1を加熱し、補強層4および保護層5に含まれる未硬化のマトリクス樹脂を硬化させる。
この工程で加熱が始まると、巻き付けられた保護層5の表面には、GFRPのマトリクス樹脂の一部がにじみ出る。にじみ出た部分は、厚さ0.1〜0.5mmの層(液膜)状態となる。このようにして、未硬化の保護層5は、ガラス繊維とマトリクス樹脂とを含む第1保護層5aと、にじみ出たマトリクス樹脂を主に含む第2保護層5bとの2層状態となる。この2層状態の保護層5では、第2保護層5bの表面のマトリクス樹脂から順に硬化し、硬化によりマトリクス樹脂の体積が減少するため、第2保護層5bは収縮する。
ここで、第2保護層5bのうち、第1保護層5a側の部分は、第1保護層5aにガラス繊維があるため、自由に収縮することができない。これにより、図6(a)に示すように、第2保護層5bの中間部分は、周方向に引張の残留応力Pが付与され、第2保護層5bの内部に空隙s2を形成しながら硬化していく。その結果、内部に空隙s2を有する状態で硬化した第2保護層5bが形成される。さらに第2保護層5bの硬化後、第1保護層5aに含まれる未硬化のマトリクス樹脂が硬化する。
次いで、加圧検査工程S7を行う。この工程では、出荷前に行う、高圧タンク1の加圧検査用の圧力試験での加圧を利用して、第2保護層5bに亀裂6を形成する。具体的には、ライナ3の内部空間34に水を充填して、所定の水圧(たとえば、105MPa)を加える。これにより、高圧タンク1全体に引張ひずみが生じるため、空隙s2は、図6(b)に示す矢印の方向に沿った亀裂6となり、この亀裂6が進展する。
このようにして、第2保護層5bには、高圧タンク1を周回するように延在し、かつ、第2保護層5bの表面から、第1、第2保護層5a、5bの界面まで到達した亀裂6を複数形成することができる。
ここで、図10に示すように、従来の高圧タンクの製造方法では、口金組付工程S11から熱硬化工程S14までを行った後、本実施形態のものよりも厚さの厚い第2保護層が形成されるため、ライナから透過したガスを高圧タンクの外部へ十分に放出することができなかった。そのため、熱硬化工程S14後、加圧検査工程S16前に、保護層の表面を削るため表面研磨工程S15が必要であった。
しかしながら、本実施形態では、第2保護層5bに形成した亀裂6により外部にガスを放出することができるため、これまでの表面研磨工程S15は不要である。このような亀裂6は、これまでの加圧検査工程における圧力試験を利用して、第2保護層5bに形成することができるため、亀裂形成用の工程を別途設ける必要もない。
図5では、第2保護層の厚さ決定工程S3と保護層のマトリクス樹脂の含有率の決定工程S4とにより、第2保護層5bに亀裂6が発生し易い条件を決定したが、たとえば、これらの工程に代わり、以下に示す、保護層5の選定工程S3’を行ってもよい(図7参照)。この工程では、所定の破壊靱性値となるマトリクス樹脂を選定し、保護層5全体に対する保護層5のマトリクス樹脂の含有率を決定する。
具体的には、保護層5に含まれるマトリクス樹脂として、このマトリクス樹脂の破壊靱性値が、補強層4に含まれるマトリクス樹脂の破壊靱性値よりも低い関係を満たす材料を選定する。次に、選定したマトリクス樹脂を含むGFRPに対して、さらに、マトリクス樹脂の含有率を決定する。この際、保護層5となるGFRPのマトリクス樹脂の含有率を、補強層4となるCFRPのマトリクス樹脂の含有率よりも低くする。このように、補強層4のマトリクス樹脂の破壊靱性値よりも、第2保護層5bの破壊靱性値が低くなるため、熱硬化工程S6で第2保護層5bに形成した空隙s2から、加圧検査工程S7で亀裂6を形成し、これを進展させ易くなる。
ここで、発明者らは、図5に示す本実施形態の製造方法に沿って、本実施形態の高圧タンクに対応する複数の試験体を製造し、これらの試験体の1つに対して、X線を用いて保護層の断面を観察した。さらに、これらの試験体に対して、亀裂の本数と第2保護層のガス透過率を測定した。以下にこれらの結果を説明する。
図8は、本実施形態に係る試験体の断面観察結果を示した写真である。図8からわかるように、第2保護層には、第1保護層から分離したガラス繊維の散逸が認められた。このガラス繊維が第2保護層に散逸することにより亀裂が生じやすくなると考えられる。
図9は、本実施形態の試験体に係る第2保護層のガス透過率と第2保護層の表面の亀裂本数との関係を示すグラフである。第2保護層のガス透過率は積層方向のガス透過率であり、亀裂本数は、高圧タンクの長手方向(中心軸)に沿って1mあたりの本数である。
図9から、第2保護層の亀裂の本数が増加するに従って、ガス透過率も大きくなることが分かる。また、高圧タンクの長手方向に沿って、1mあたり、10本程度の亀裂が存在すれば、2Pa/s程度のガス透過率が確保されることが分かる。そして、このガス透過率を有する試験体では、ライナから透過したガスを、十分に外部に放出することができた。
これらの結果から、第2保護層に、高圧タンクの長手方向に沿って1mあたり、10本以上の亀裂がある場合に、ライナから透過したガスをより確実かつ安定的に外部に放出することができると考えられる。
以上、本発明の一実施形態について詳述したが、本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。
たとえば、上述した実施形態では、マトリクス樹脂として、熱硬化性樹脂を用いたが、亀裂を形成することができれば、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、またはポリエーテルスルホン樹脂を単独でまたは2種類以上を混合した熱可塑性樹脂であってもよい。
1:高圧タンク、3:樹脂製のライナ、4:補強層、5:保護層、5a:第1保護層、5b:第2保護層、6:亀裂
Claims (1)
- ガスを収容する樹脂製のライナと、前記ライナの外周面を被覆し、炭素繊維を強化繊維とした繊維強化樹脂製の補強層と、前記補強層の外周面を被覆し、ガラス繊維を強化繊維とした繊維強化樹脂製の保護層と、を少なくとも備えたガス貯蔵用の高圧タンクであって、
前記保護層は、前記補強層の外周面を被覆し、ガラス繊維とマトリクス樹脂とで構成される繊維強化樹脂からなる第1保護層と、前記第1保護層の外周面を被覆し、前記マトリクス樹脂を含む第2保護層とを備えており、
前記保護層のマトリクス樹脂の含有率が、前記補強層のマトリクス樹脂の含有率よりも低く、
前記第2保護層には、前記高圧タンクを周回するように延在し、かつ、前記第2保護層の表面から、前記第1および第2保護層との界面まで到達した亀裂が形成されていることを特徴とするガス貯蔵用の高圧タンク。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2018165443A JP2020037978A (ja) | 2018-09-04 | 2018-09-04 | ガス貯蔵用の高圧タンク |
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JP2018165443A JP2020037978A (ja) | 2018-09-04 | 2018-09-04 | ガス貯蔵用の高圧タンク |
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN111716764A (zh) * | 2020-06-24 | 2020-09-29 | 安徽大盘特种装备车辆有限公司 | 一种cng气瓶玻璃纤维缠绕方法 |
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2018
- 2018-09-04 JP JP2018165443A patent/JP2020037978A/ja active Pending
Cited By (1)
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