JP2020084778A - エンジン用シリンダ - Google Patents

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秀実 荻原
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Abstract

【課題】ガソリンエンジンでは、低燃費化の要求に伴うアイドリング停止機構等によってシリンダの摩耗対策が厳しくなる状況にあり、さらなる改善が望まれていた。【解決手段】ボア内面BAに、多数の微細凹部D1を配列したテクスチャ領域TAを有し、テクスチャ領域TAは、ピストンPの上死点から下降前半領域内の所定位置に至る上側範囲UAと、下死点から上昇前半領域内の所定位置に至る下側範囲LAとであり、上側範囲UAと下側範囲LAとは互いに離間しているエンジン用シリンダCYとし、ボア内面BAの耐摩耗性の向上と同時に低摩擦化を実現した。【選択図】図1

Description

本発明は、自動車等のエンジン用シリンダに関し、とくに、ボア内面の耐摩耗性を改善したエンジン用シリンダに関するものである。
従来において、ボア内面の耐摩耗性を考慮したエンジン用シリンダとしては、特許文献1に記載されているものがある。特許文献1に記載のエンジン用シリンダは、ボア内面の全体にクロスハッチを形成している。クロスハッチは、ホーニング砥石の回転と上下動の軌跡により幾何学的に形成される多数の微細な交差溝であり、いわゆる油溜まりとして機能する。そして、上記のエンジン用シリンダは、クロスハッチの角度を設定することにより、ピストンの摺動時の摩擦を低減して耐摩耗性と摩擦特性を向上させる。
特開2014−43828号公報
しかしながら、近年のガソリンエンジンでは、低燃費化の要求に伴うアイドリング停止機構や低粘度エンジン油の使用の拡大により、シリンダの摩耗対策が厳しくなる状況にあることから、さらなる改善が望まれていた。
本発明は、上記従来の状況に鑑みて成されたもので、とくに、ピストンの上下動がコネクティングロッドを介してクランクシャフトの回転運動に伝達される構造上、シリンダのボア内面において摩耗する位置や領域に所定の傾向があることに着目し、ボア内面の耐摩耗性の向上と同時に低摩擦化を実現するエンジン用シリンダを提供することを目的としている。
本発明に係わるエンジン用シリンダは、ボア内面に、多数の微細凹部を配列したテクスチャ領域を有し、テクスチャ領域は、ピストンの上死点から下降前半領域内の所定位置に至る上側範囲と、ピストンの下死点から上昇前半領域内の所定位置に至る下側範囲とであり、上側範囲と下側範囲とは互いに離間していることを特徴としている。
本発明に係わるエンジン用シリンダは、ピストンの上下動がコネクティングロッドを介してクランクシャフトの回転運動に伝達される構造上、シリンダのボア内面において摩耗する位置や領域に所定の傾向がある。テクスチャ領域である上側範囲及び下側範囲は、摩耗が生じ易い部分であり、試験等により位置や領域を特定することが可能である。テクスチャ領域では、微細凹部がいわゆる油溜まりとして機能し、ボア内面とピストンとの間に油を介在させて互いの摺動接触による摩擦を低減する。
本発明に係わるエンジン用シリンダは、上記構成を採用したことにより、ボア内面の耐摩耗性の向上と同時に低摩擦化を実現することができる。また、本発明に係わるエンジン用シリンダは、ボア内面の一部である上側範囲及び下側範囲にテクスチャ領域を形成すれば耐摩耗性向上の効果が得られるので、ボア内面の加工時間の短縮や製造コストの低減などにも貢献することができる。
本発明に係わるエンジン用シリンダの第1実施形態を説明するシリンダの断面図(A)及びシリンダに対するピストンの摺動接触範囲を示す説明図(B)である。 ピストンの上下運を説明する各々断面図(A)〜(D)である。 クランクピンの位置によりテクスチャ領域を決定する要領を説明する各々断面図(A)(B)である。 テクスチャ領域の微細凹部を説明する平面図(A)、及び微細凹部の拡大平面図とこれに対応する断面図(B)である。 本発明に係わるエンジン用シリンダの第2実施形態を説明する断面図(A)、及びシリンダボアの周方向におけるテクスチャ領域の範囲を説明する平面図(B)である。 第3実施形態としてテクスチャ領域における微細凹部の他の例を説明する平面図(A)、及び微細凹部の拡大平面図とこれに対応する断面図(B)である。
〈第1実施形態〉
図1〜図4は、本発明に係わるエンジン用シリンダの第1実施形態を説明する図である。
図1(A)に示すエンジン用シリンダ(以下、単に「シリンダ」と記す)CYは、エンジンにおいて、ピストンPを往復動可能に収容する。なお、以下においては、ピストンPの燃焼室側の移動端である上死点、及びピストンのクランクシャフト側の移動端である下死点を基準にして、構成部位の上下関係を説明する。
シリンダCYは、ボア内面BAに多数の微細凹部を配列したテクスチャ領域TAを有している。テクスチャ領域TAは、ピストンPの上死点から下降前半領域内の所定位置に至る上側範囲UAと、ピストンPの下死点から上昇前半領域内の所定位置に至る下側範囲LAとであり、上側範囲UAと下側範囲LAとは互いに離間している。
この実施形態の上側範囲UA及び下側範囲LAは、ボア内面BAの全周わたって設けてある。また、上側範囲UAと下側範囲LAとの間は、とくに限定されないが、望ましくは鏡面仕上げが施される。
より具体的には、テクスチャ領域TAの上側範囲UAは、図中に点線で示すピストンPの上死点から、ピストンPの下死点に至る範囲を10分割したときに、上死点から3/10の位置に至る範囲である。他方、下側範囲LAは、7/10の位置から、ピストンPの下死点に至る範囲である。
但し、ピストンPは、図1(B)に示すように、上側から順に第1〜第3のリングR1〜R3を備えている。最下段の第3リングR3は、オイルリングである。したがって、ピストンPは、最上段の第1リングR1から最下段の第3リングR3に至る間が、ボア内面BAに対する摺動接触範囲SAである。
そこで、テクスチャ領域TAの設定に際し、ピストンPの上死点から下死点に至る範囲は、ピストンPの一点を基準にするのではなく、上記のピストンPの摺動接触範囲SAを基準にしている。つまり、本発明において、ピストンPの上死点から下死点に至る範囲は、上記の摺動接触範囲SAを包含する範囲であり、上死点にあるピストンPの第1リングR1の位置から、下死点にあるピストンPの第3リングR3に至る範囲である。そして、この範囲の中でピストンリングとボアとの非接触部を除く上側範囲UA及び下側範囲LAの設定基準にしている。
上記のテクスチャ領域TAを設定するにあたり、実際に使用したエンジンのボア内面に生じた摩耗状況を調査した。その結果、ボア内面には摩耗する位置や領域に以下の傾向があり、その傾向とピストンの姿勢とに有意な関係性があることを突き止めた。
具体的には、ボア内面の全体にクロスハッチを形成したエンジンを用い、十分になじみ運転が終了した後や、耐久試験の終了後にボア内面を観察した結果、摩耗が原因と思われるクロスハッチの摩耗や消失を確認した。また、クロスハッチの摩耗や消失は、ボア内面全面ではなく、部分的であることも確認した。
クロスハッチの摩耗や消失は、ピストン及びピストンリングのかじりや焼付きの発生に至る懸念があり、さらには、ピストン及びピストンリングとボア内面との摩擦増大、オイルの消費、ブローバイガス、及びピストン打音等の増大につながりかねない。
ボア内面に上記の部分的な摩耗が生じるのは、ピストンの上下動がコネクティングロッドを介してクランクシャフトの回転運動に伝達される構造によるものである。このため、ピストンには、ボア内面に対して水平方向に押付けられる側圧と呼ばれる圧力が発生する箇所がある。
エンジンにおいて、ピストンPは、図2に示すように、ピストンピンPPを介してコネクティングロッドCRの上端に連結してある。コネクティングロッドCRは、クランクピンCPを介してクランクシャフトのアームに連結してある。図中の一点鎖線は、クランクシャフトの回転軸を中心とするクランクピンCPの回動軌跡である。
ピストンPは、図2(A)に示す上死点から下降を開始すると、図2(B)に示すように、コネクティングロッドCRの傾斜に伴って、その傾斜方向にごく僅かに傾くと共に、図中の矢印で示すコネクティングロッドCRの倒れ方向に押し付けられる。
また、ピストンPは、図2(C)に示す下死点に達した後、上昇を開始すると、図2(C)に示すように、コネクティングロッドCRの傾斜に伴って、その傾斜方向にごく僅かに傾くと共に、図中の矢印で示すコネクティングロッドCRの倒れ方向に押し付けられる。このように、ピストンPに側圧が生じる位置は、下降時と上昇時とで180度異なる位置である。
なお、図2では、理解し易くする都合上、ピストンPがボア内面BAに押し付けられる位置を下降時(B)及び上昇時(D)の双方を同じ位置(高さ)に示している。実際には、ピストンPには、燃焼による膨張圧力や圧縮時の圧力が加わるので、ピストンPに側圧が生じる位置は、下降直後及び上昇直後の範囲である。また、ピストンPに側圧が生じる位置でクロスハッチの摩耗が生じることは、調査により確認している。
本発明は、以上の調査結果に基づいて、先述した如くテクスチャ領域TAとしての上側範囲UA及び下側範囲LAを設定している。
また、各範囲UA及びLAは、図3に示すように、クランクシャフトの回転軸に対するクランクピンCPの回動角度から設定することも可能である。すなわち、図3(A)に示すように、ピストンPが実線で示す上死点から、点線で示す下降位置に至る範囲におけるクランクピンCPの回動角度θcから上側範囲UAを設定する。換言すれば、クランクピンCPが上記の回動角度θcの範囲にあるときのピストンPの移動範囲を上側範囲UAとする。この際、上側範囲UAは、先述したピストンPの摺動接触範囲SAを包含する。
下側範囲LAは、同様に、図3(B)に示すように、ピストンPが実線で示す下死点から、点線で示す上降位置に至る範囲におけるクランクピンCPの回動角度θcから上側範囲UAを設定することができる。
一例として、上側範囲UAは、ピストンPが上死点にある状態でのクランクピンCPの回動角度θcを0度とした場合、回動角度θcが0度〜40度の範囲に対応するピストンPの下降範囲にすることが望ましい。また、下側範囲LAは、回動角度θcが180度〜220度の範囲に対応するピストンPの上昇範囲にすることが望ましい。
なお、テクスチャ領域TAの上側範囲UA及び下側範囲LAは、シリンダCYの軸線方向に適当な余裕をもって設定することが望ましい。このため、上側範囲UA及び下側範囲LAは、先述したピストンPの往復動範囲を10分割して設定した範囲と、クランクピンCPの回動角度θcに基づいて設定した範囲とが、完全に一致しなくても構わない。
図4は、上記のテクスチャ領域TAに形成した微細凹部D1を示す図である。微細凹部D1は、基本的に、開口部の平面形状が、ピストンPの上下動方向のうちの少なくとも一方向への先細り部分S1を有する形状である。
この実施形態の微細凹部D1は、概略として鏃状を成しており、中央の先細り部分S1と、これとは逆向きの両側の先細り部分S2,S2とを有している。また、この実施形態では、ピストンPの上昇方向への先細り部分S1を有する微細凹部D1と、ピストンの下降方向への先細り部分S1を有する微細凹部D1とを1組とし、この組を多数配列してテクスチャ領域TAを形成している。つまり、2つの微細凹部D1,D1は、中央の先細り部分S1が互いに逆向きになる配置である。
さらに、微細凹部D1は、図4(B)の断面に示すように、深さが、中央の先細り部分S1の先端方向に漸次減少している。さらに、微細凹部D1は、より望ましい実施形態として、開口部の外接円の直径が0.05mm〜5mmであるものとし、また、最大深さが1μm〜20μmであるものとすることができる。
さらに、微細凹部D1は、その開口部の縁が、ピストンPの進行方向に交差する直線ではなく、同進行方向に交差する円弧である。これは、ボア内面BAにおいて微細凹部D1の無い平面では摩擦が増大するので、その摩擦の増大量を極力小さくするためである。
上記の微細凹部D1は、成形方法がとくに限定されるものではないが、成形形状に対する自由度が高いレーザ加工法により成形することができ、それ以外には、ショットピーニング法、ブラスト法、及びエッチング法などにより成形することもできる。
上記構成を備えたシリンダCYは、テクスチャ領域TAにおいて、微細凹部D1がいわゆる油溜まりとして機能し、ボア内面BAとピストンPとの間に油を介在させて互いの摺動接触による摩擦を低減する。
これにより、シリンダCYは、ボア内面BAの耐摩耗性の向上と同時に低摩擦化を実現することができ、しかも、ボア内面BAの一部である上側範囲UA及び下側範囲LAにテクスチャ領域TAを形成すれば耐摩耗性の効果が得られるので、ボア内面BAの加工時間の短縮や製造コストの低減などにも貢献することができる。
また、シリンダCYは、微細凹部D1の開口部の平面形状が、ピストンPの上下動方向のうちの少なくとも一方向への先細り部分S1を有する形状としたことにより、その一方向における動圧効果を得ることができる。
具体的には、微細凹部D1に対して、ピストンPが先細り部分S1の先端方向に摺動する際、ボア内面BAの油が摺動方向に押し流されると同時に、先細り部分S1により油の圧力が集中的に高くなり、ピストンPとボア内面BAとの直接的な接触を阻止する。これにより、ピストンPとボア内面BAとの間の油膜を維持して摩擦を低減し、耐摩耗性を向上させることとなる。
さらに、シリンダCYは、先細り部分S1を互いに逆向きにした2つの微細凹部D1,D1を1組とし、多数の組を配置してテクスチャ領域(範囲UA,LA)TAを形成しているので、ピストンPの上下動のいずれの方向においても上記の動圧効果を得ることができる。
さらに、シリンダCYは、微細凹部D1の深さを先細り部分S1の先端方向に漸次減少させることにより、上記の動圧効果をより高めることができる。さらに、シリンダCYは、微細凹部D1の開口部の外接円の直径や、微細凹部の最大深さを適切な範囲に設定することによっても、上記の動圧効果をより高めることができる。さらに、シリンダCYは、微細凹部D1の開口部の縁を円弧により形成することによっても、上記の動圧効果をより高めることができる。このように、シリンダCYは、微細凹部D1の形状や深さに異方性をもたせることで、動圧効果のさらなる向上を実現する。
そして、上記のシリンダCYは、動圧効果による耐摩耗性の向上により、ピストンのかじりや焼付きの発生、オイルの消費やブローバイガスの増大、ピストン打音の増大などの防止にも貢献することができる。
〈第2実施形態〉
図5に示すシリンダCYは、テクスチャ領域TAが、ボア内面BAの半周若しくはそれ以下の範囲に設けてある。すなわち、テクスチャ領域TAは、ピストンPが上側範囲UA及び下側範囲LAにあるときに、ボア軸線BCに対してクランクピンCPの回動範囲の反対側となる位置でボア円周上の90度〜180度の範囲に形成してある。
先の実施形態では、図2に基づいて説明したように、ピストンPの下降過程及び上昇過程において、ボア内面BAに対してピストンPがコネクティングロッドCRの倒れ方向に押し付けられ、側圧が生じることを説明した。この際、ピストンPに側圧が生じる位置は、下降時と上昇時とで180度異なる位置である。
そこで、この実施形態のシリンダCYは、主に側圧が生じる位置、つまり、図2(B)に示す下降過程では、ボア軸線BCに対してクランクピンCPの回動範囲の反対側(図中で右側)となる位置に上側範囲UAを設けている。他方、図2(D)に示す上昇過程では、ボア軸線BCに対してクランクピンCPの回動範囲の反対側(図中で左側)となる位置に下側範囲LAを設けている。なお、図5(B)中で下側の太い矢印は、コネクティングロッドCRの揺動方向を示している。
上記のシリンダCYは、先の実施形態と同様の効果を得ることができるうえに、必要最小限の範囲にテクスチャ領域TAを形成することになるので、ボア内面BAの耐摩耗性を向上させつつ、加工時間のさらなる短縮や製造コストのさらなる低減を実現することができる。
〈第3実施形態〉
図6は、本発明に係わるシリンダの第3実施形態として、テクスチャ領域TAにおける微細凹部の他の例を示す図である。図示の微細凹部D2は、上下方向に頂点を有する概略菱形状であって、4辺が中心に向けて凸となる曲線で形成されている。これにより、微細凹部D2は、上側及び下側に先細り部分S1,S1を有している。
また、微細凹部D2は、その深さが、図6(B)の右側に示すように、左右の対角線を中心にして各先細り部分D1の先端に向けて夫々漸次減少している。この微細凹部D2の形状は、図6(A)に示すように、同一直径の複数の円を縦横に半径分ずらせて配置することで決定されている(黒色の部分)。
上記の微細凹部D2を含むテクスチャ領域TAは、シリンダCYのボア内面BAにおいて、先の各実施形態と同様の効果を得ることができる。また、微細凹部D2は、ピストンPの上下動方向のいずれの方向でも、上下の先細り部分S1,S1による動圧効果を得ることができ、しかも、深さを先細り部分S1の先端方向に漸次減少させることで、動圧効果をより高めることができ、耐摩耗性のさらなる向上に貢献することができる。
〈実施例〉
本発明に係わるエンジン用シリンダの効果を確認するため、二輪車用ガソリンエンジンと、浮動ライナーエンジンを用いて試験を行った。
排気量250cc単気筒の市販レース用二輪車のガソリンエンジンを用意し、実施例1〜5については、ピコ秒パルスレーザを用いて、ボア内面に微細凹部を有するテクスチャ領域を形成した。テクスチャ領域は、ピストンの上死点から下死点に至る範囲を10分割し、上死点から3/10の位置に至る範囲を上側範囲とし、7/10の位置から下死点に至る範囲を下側範囲とした(図1参照)。
実施例1は、円形ディンプルである微細凹部を形成した。実施例2は、先細り部分を有する微細凹部を形成した。実施例3及び4は、先細り部分を有し且つ深さが先細り部分の先端方向に漸次減少している微細凹部を形成した。実施例5は、先細り部分が互いに逆向きになる2つの微細凹部を1組とした(図4参照)。比較例1は、ボア内面の全体にクロスハッチを形成した。比較例2は、ボア内面を鏡面仕上げとした。
そして、上記の実施例1〜5及び比較例1,2について、レースを想定した耐久モードでエンジンを所定時間にわたって運転し、その後、エンジンを分解してシリンダのボア内面を目視で観察した。その結果を表1に示す。
Figure 2020084778
表1から明らかなように、比較例1は、ボア内面の上側範囲(UA)及び下側範囲(LA)に相当する部分に、摺動方向に沿った5本以上の線状傷が認められ、比較例2は、広範囲に凝着痕が認められた。これに対して、実施例1〜5は、摺動痕が軽微若しくは観察されない結果であり、とくに、実施例4及び5は、明確な摺動痕が全く観察できなかった。これにより、本発明に係わるシリンダを採用することにより、耐摩耗性の向上と同時に低摩擦化を実現できることを確認した。
次に、ピストンの摩擦損失測定用として浮動ライナーエンジンを使用し、実施例1〜5及び比較例1,2と同じ仕様のシリンダを浮動ライナーエンジンに組み込み、摩擦力測定を実施した。その結果を表2に示す。
Figure 2020084778
表2から明らかなように、比較例1の相対摩擦力を100とした場合、実施例1〜5及び比較例2には、相対摩擦力の明らかな低下が認められた。そして、実施例1〜5は、比較例2よりも相対摩擦力がさらに低いことが認められ、充分な摩擦低減効果が得られることを確認した。
以上の試験結果から、本発明に係わるエンジン用シリンダは、省燃費型ガソリンエンジン用のシリンダとして、耐摩耗性の向上のみならず、摩擦低減効果によるさらなる省燃費化やエンジン騒音低減に非常に有効であることを確認した。
なお、本発明に係わるエンジン用シリンダは、その構成が上記実施形態及び実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、例えば、テクスチャ領域に形成する微細凹部の形状、大きさ、配置などを適宜選択することができる。
BA ボア内面
BC ボア軸線
CP クランクピン
CY シリンダ
D1,D2 微細凹部
LA 下側範囲
R1〜R4 ピストンリング
SA 摺動接触範囲
TA テクスチャ領域
UA 上側範囲

Claims (9)

  1. ボア内面に、多数の微細凹部を配列したテクスチャ領域を有し、
    テクスチャ領域は、ピストンの上死点から下降前半領域内の所定位置に至る上側範囲と、ピストンの下死点から上昇前半領域内の所定位置に至る下側範囲とであり、上側範囲と下側範囲とは互いに離間していることを特徴とするエンジン用シリンダ。
  2. ピストンの上死点から下死点に至る範囲を10分割したときに、
    上側範囲が、上死点から3/10の位置に至る範囲であり、
    下側範囲が、7/10の位置から下死点に至る範囲であることを特徴とする請求項1に記載のエンジン用シリンダ。
  3. ボア内面に対するピストンの摺動接触範囲が、最上段のピストンリングから最下段のピストンリングに至る間であることを特徴とする請求項1又は2に記載のエンジン用シリンダ。
  4. テクスチャ領域は、ピストンが上側範囲及び下側範囲にあるときに、
    ボア軸線に対してクランクピンの回動範囲の反対側となる位置でボア円周上の90度〜180度の範囲に形成してあることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のエンジン用シリンダ。
  5. 微細凹部の開口部の平面形状が、ピストンの上下動方向のうちの少なくとも一方向への先細り部分を有する形状であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のエンジン用シリンダ。
  6. ピストンの上昇方向への先細り部分を有する微細凹部と、ピストンの下降方向への先細り部分を有する微細凹部とを1組とし、この組を多数配列してテクスチャ領域を形成していることを特徴とする請求項5に記載のエンジン用シリンダ。
  7. 微細凹部の深さが、先細り部分の先端方向に漸次減少していることを特徴とする請求項5又は6に記載のエンジン用シリンダ。
  8. 微細凹部の開口部の外接円の直径が、0.05mm〜5mmであることを特徴とする請求項5〜7のいずれか1項に記載のエンジン用シリンダ。
  9. 微細凹部の最大深さが、1μm〜20μmであることを特徴とする請求項5〜8のいずれか1項に記載のエンジン用シリンダ。
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