以下、記録装置の一実施形態を図面に従って説明する。
図1に示すように、記録装置11は、例えば複合機であり、水平な使用場所に設置された状態で、高さ、奥行、及び幅としてそれぞれ所定の長さを有する筐体12を有する。記録装置11は、用紙等の媒体Mに記録を行う。本実施形態の記録装置11は、筐体12の上部に原稿Dを読み取ってその画像を取得する読取装置13を有している。記録装置11は、読取装置13が読み取った原稿Dの画像を媒体Mに記録することでコピーを行う。よって、複合機よりなる記録装置11は、印刷とスキャンとコピーとが可能である。
読取装置13は、原稿台14と、原稿台14に対して開閉可能に設けられたカバー15と、カバー15に搭載された自動原稿送り装置16(ADF(Auto Document Feeder))とを備える。原稿トレイ17にセットされた複数の原稿Dは自動原稿送り装置16により1枚ずつ給送され、その搬送過程で原稿Dの画像が読み取られた後、原稿Dは排出部18へ排出される。また、カバー15を開けて原稿台14上の原稿台ガラス(図示略)にセットされた原稿Dは、原稿台14内の読取部(図示略)によって読み取られる。
記録装置11は、筐体12の一側面に開口する被挿着口12Aに着脱自在な状態で挿着されたカセット19を備える。また、カセット19の上方位置には、記録済みの媒体Mが排出される排出口20が設けられている。排出口20の下方位置には、排出口20から排出される記録済みの媒体Mを支持する排出トレイ21が伸縮自在な状態で取着されている。また、筐体12の前面上部には、各種の操作を行うための操作パネル22が設けられている。また、筐体12の前面上部には、各種の操作を行うための操作パネル22が設けられている。
操作パネル22は、ユーザーが記録装置11に指示を与える際に操作される複数のボタンを含む操作部23と表示部24とを有している。操作部23は、例えば、電源ボタンや選択ボタンなどを含んでいる。表示部24には、メニューやメッセージ等の各種情報が表示される。表示部24をタッチパネルとし操作部23の一部を兼ねた構成としてもよい。なお、記録装置11は、操作パネル22が配置されている側の面が前面とされ、その反対側の面が背面(後面)とされている。
図1に示すように、筐体12の後上部には、いわゆる手差し印刷を行うための媒体Mを支持して給送する媒体給送機構25が設けられている。媒体給送機構25は、ユーザーがスライドさせて所定角度の延出状態に変位可能な供給トレイ29(図2参照)を有し、延出状態の供給トレイ29上にセットされた複数の媒体Mを1枚ずつ筐体12内へ給送可能に構成されている。なお、本実施形態では、筐体12の前面から後面に向かう方向と平行な方向を奥行方向Xとし、奥行方向X及び鉛直方向Zの両方と直交する方向を幅方向Yとする。幅方向Y及び奥行方向Xは実質的に水平面に沿う。奥行方向Xは、カセット19から供給された媒体Mが記録部26と対向する位置を搬送されるときの搬送方向と平行な方向であるので、搬送方向Xともいう。また、幅方向Yは、筐体12内を搬送されるときの媒体Mの幅方向に一致し、搬送方向Xと交差する方向である。
図1に示すように、筐体12の内部には、インクが収容されたタンク又はインクカートリッジよりなるインク供給源(図示略)と、インク供給源から供給されたインクを、カセット19から供給された媒体Mに記録する記録部26とがそれぞれ設けられている。記録部26は、媒体Mに記録を行う記録ヘッド27と、記録ヘッド27を搭載するキャリッジ28とを備える。記録ヘッド27は、インク供給源からチューブ(図示略)を通じて供給されるインクを吐出する複数のノズル(図示略)を有する。キャリッジ28が幅方向Yに往復動する過程で記録ヘッド27が媒体Mに向けてインク滴を吐出することで媒体Mに画像や文書等が印刷される。このとき、読取装置13により読み取られた原稿Dの画像を記録部26が媒体Mに記録することでコピー印刷が行われる。なお、幅方向Yは、キャリッジ28が走査される方向でもあるので、走査方向Yともいう。
図2は、読取装置13を取り外した状態の記録装置11の内部構造を示す。図2に示すように、記録装置11は、媒体Mを搬送する搬送部30を備える。搬送部30は、カセット19から媒体Mを供給する第1給送部31と、媒体給送機構25を構成する供給トレイ29に載置された媒体Mを給送する第2給送部32と、給送された媒体Mを受け取って記録部26に向かって搬送する搬送機構40とを備える。第1給送部31はカセット19にセットされた媒体Mを1枚ずつ給送可能な給送ローラー33を備える。また、第2給送部32は、供給トレイ29に支持された複数の媒体Mを記録部26に向けて1枚ずつ給送する給紙ローラー34を備える。なお、カセット19は底部にホッパー(図示略)を備え、カセット19が被挿着口12Aに挿着されるとホッパーが上昇することで、ホッパー上の媒体Mが給送ローラー33に押し付けられる。
媒体給送機構25は、上端が開口したハウジング35と、ハウジング35の上端の開口を開閉する蓋体36とを備える。ハウジング35内には、スライド式の供給トレイ29が収縮状態で収容される。供給トレイ29は、媒体Mを載置可能な板状の載置部37と、載置部37に対して斜め上方へスライドして図2に示す伸長状態とされる複数段のサポート部38とを備える。そして、供給トレイ29に支持された複数の媒体Mは給紙ローラー34により記録部26に向けて1枚ずつ給送される。
搬送機構40により搬送される媒体Mの搬送経路の途中に位置する記録位置の上方には前述の記録部26が設けられ、記録部26と搬送経路を挟んで対向する下方位置に媒体Mを支持する支持台41が配置されている。記録部26は、前述の記録ヘッド27とキャリッジ28とを備える。キャリッジ28は、筐体12の内部に架設された幅方向Yに延びるガイド軸42に沿って移動可能に支持されている。そして、キャリッジ28をガイド軸42に沿って走査方向Yに移動させながら記録ヘッド27から支持台41上の媒体Mにインクを吐出させることにより、媒体Mに画像や文書等が記録される。詳しくは、キャリッジ28が走査方向Yに移動する過程で記録ヘッド27がインクを吐出して媒体Mに1走査分の記録を施す走査動作と、搬送機構40が媒体Mを次の記録位置まで搬送する搬送動作とを交互に繰り返し行うことで、媒体Mに記録がなされる。記録済みの媒体Mは、搬送機構40によって排出口20から排出トレイ21上に排出される。
次に、図3を参照して、搬送部30の構成について詳細に説明する。なお、媒体Mが上流から下流へ向かって搬送される経路に沿う方向を第1搬送方向X1とする。また、媒体Mが下流から上流へ向かって搬送される経路に沿う方向を第2搬送方向X2とする。
搬送部30は、媒体Mを搬送する搬送経路F0を備える。搬送経路F0は、第1給送部31が媒体Mを給送する第1搬送経路F1と、第2給送部32が媒体Mを給送する第2搬送経路F2と、搬送機構40が媒体Mの搬送と排出とを行う第3搬送経路F3とを有する。また、搬送経路F0は、両面印刷時に第3搬送経路F3を途中まで第1搬送方向X1へ排出された記録後の媒体Mが、第1搬送方向X1とは反対の方向である第2搬送方向X2へ逆搬送された後、引き続き媒体Mを第2搬送方向X2に逆搬送して再び第1搬送経路F1へ戻す第4搬送経路F4を有している。
第1給送部31は、カセット19(図2参照)内の複数の媒体Mのうち最上位の一枚に接触する給送ローラー33(ピックアップローラー)と、分離ローラー43と、分離ローラー43と対をなすリタードローラー44と、分離ローラー43から分離されて送り出された1枚の媒体Mを上方へ案内するローラー45とを備える。なお、第1給送部31の後方(図3では右方)には、増設カセット(図示略)からの媒体Mが給送される給送経路を形成するガイド50が下方から上方に向かって延びている。
また、第1給送部31は、給送ローラー33と第2給送部32との間の高さ位置に2つの中間ローラー51,52を備える。2つの中間ローラー51,52は、搬送方向Xに沿って並んで配置されている。すなわち、第1給送部31は、第1中間ローラー51と、第1中間ローラー51よりも第1搬送方向X1の下流の位置に配置された第2中間ローラー52とを備える。第1中間ローラー51と第2中間ローラー52は、連動して回転駆動する。
また、第1中間ローラー51の外周面には二つの従動ローラー53が接触し、第2中間ローラー52の外周面には従動ローラー54が接触している。カセット19から供給された媒体Mは、第1中間ローラー51と二つの従動ローラー53との間に挟持された状態で、第1中間ローラー51の反時計回り方向の回転によって第1搬送方向X1の下流へと搬送される。第1中間ローラー51から搬送された媒体Mは、第2中間ローラー52の外周面に接触する従動ローラー54との間に挟持された状態で、第2中間ローラー52の反時計回り方向の回転によって第1搬送方向X1の下流へと搬送される。第1搬送経路F1と第2搬送経路F2とは、第2中間ローラー52の外周面上の合流箇所で合流している。そして、合流箇所よりも下流では媒体Mは共通の搬送経路である第1搬送経路F1に沿って搬送される。
第2給送部32は、給紙ローラー34と、給紙ローラー34と第2搬送経路F2を挟んで対向する位置に配置されたリタードローラー46と、給紙ローラー34よりも第1搬送方向X1の下流となる位置に配置されたローラー対47とを備える。給紙ローラー34は例えば断面がD字形状を有し、給紙ローラー34が1回転する過程でその円弧面とリタードローラー46との間にニップされた媒体Mを給送する。この給送過程で供給トレイ29(図2参照)に載置された複数の媒体Mのうち最上位の1枚の媒体Mがリタードローラー46の作用により分離される。第2給送部32により第2搬送経路F2に沿って給送された媒体Mは、合流箇所から第1搬送経路F1に送られる。
なお、第1給送部31は、第2中間ローラー52の外周面の下部に接触する従動ローラー55と、第1中間ローラー51の外周面の下部に接触する従動ローラー56とを備える。2つの中間ローラー51,52が図3における反時計回り方向に回転することで各従動ローラー55,56との間に挟持された記録後の媒体Mが第4搬送経路F4に沿って第2搬送方向X2に逆搬送される。
搬送機構40は、記録部26よりも搬送方向Xの上流の位置に配置された搬送ローラー対60を含む。搬送ローラー対60は、回転駆動する搬送ローラー60Aと、搬送ローラー60Aの回転に連れ回りする従動ローラー60Bとを有する。搬送ローラー対60は、給送された媒体Mを受け取って記録部26へ向けて搬送する。
また、搬送機構40は、記録ヘッド27の下流に配置されて媒体Mを記録ヘッド27と対向する位置から排出する排出ローラー対の一例としての第1排出ローラー対61を含む。第1排出ローラー対61は、回転駆動する排出ローラー61Aと、排出ローラー61Aの回転に連れ回りする従動ローラー61Bとを有する。さらに搬送機構40は、第1排出ローラー対61の搬送方向Xの下流の位置に配置された第2排出ローラー対62を含む。第2排出ローラー対62は、回転駆動する排出ローラー62Aと、排出ローラー62Aの回転に連れ回りする従動ローラー62Bとを有する。2つの排出ローラー対61,62は、搬送ローラー対60と共に連動して駆動され、媒体Mを記録部26と対向する記録位置に間欠的に搬送するとともに、記録を終えた媒体Mを搬送方向Xに排出する。
また、記録装置11には、搬送中の媒体Mを検知可能な複数のセンサー71〜74が搬送経路F0に沿って配置されている。詳しくは、分離ローラー43と第1中間ローラー51との間の位置で給送途中の媒体Mを検知する給送センサー71と、第2中間ローラー52と従動ローラー54とのニップ位置近傍で媒体Mを検知する中間センサー72と、搬送ローラー対60よりも上流の位置で媒体Mを検知する搬送センサー73とが設けられている。さらに、記録装置11は、第1排出ローラー対61の下流側に検出部の一例としての排出センサー74を備える。排出センサー74は、第3搬送経路F3において記録ヘッド27よりも下流の位置で記録後の媒体Mを検知する。
給送センサー71は、カセット19(図2参照)から次に給送される後続の媒体Mが、待機位置まで給送されたことを検知する。中間センサー72は、中間ローラー51,52等が媒体Mの先端が中間センサー72に到達する回転量だけ回転したにも関わらず、中間センサー72に媒体Mが検知されないことをもって媒体Mのジャムを検出する。さらに、搬送センサー73は、中間ローラー51,52等が媒体Mの先端が搬送センサー73に到達する回転量だけ回転したにも関わらず、媒体Mが搬送センサー73に検知されないことをもって媒体Mのジャムを検出する。また、搬送センサー73は、搬送ローラー対60により搬送される媒体Mの搬送位置を後述する第2カウンター92が計数するに当たり、計数開始位置に媒体Mが達したことを検知する。さらに、排出センサー74は、搬送ローラー対60及び第1排出ローラー対61が媒体Mの先端が排出センサー74に到達する回転量だけ回転したにも関わらず媒体Mが検知されないことをもって媒体Mのジャムを検出する。図3に示す例では、排出センサー74は、搬送方向Xにおいて第1排出ローラー対61と第2排出ローラー対62との間の位置に配置されている。
排出センサー74は、例えば光学式センサーにより構成される。本例では、光反射型の光学式センサー又は光透過型の光学式センサーにより構成される。なお、排出センサー74は、光学式センサー等の非接触式センサーに限らず、接触式センサーであってもよい。接触式センサーとしては、搬送された媒体Mに押されて傾動するレバーと、レバーが媒体Mに押されていないときの待機位置から媒体Mに押されて所定位置まで傾いたレバーを検知するセンサーとを有するレバー型センサーなどが挙げられる。
また、給送系の給送ローラー33、給紙ローラー34、分離ローラー43及び2つの中間ローラー51,52は、同一の駆動源である給送モーター69(図6参照)により駆動される。また、搬送機構40を構成する、搬送ローラー60A及び排出ローラー61A,62Aは、同一の駆動源である搬送モーター66(図6参照)により駆動される。
図4に示すように、記録装置11内でガイド軸42に案内されて幅方向Yに往復動可能に設けられるキャリッジ28は、その背面後方位置に幅方向Yに沿って延びる状態で張設された無端状のタイミングベルト48の一部に固定されている。キャリッジモーター49の動力でタイミングベルト48が正転又は逆転することで、キャリッジ28はガイド軸42に沿って走査方向Yに往復動する。
図4、図5に示すように、記録ヘッド27の移動領域と対向する下方位置には、媒体Mを支持する支持台41が配置されている。媒体Mの支持台41に支持された部分と記録ヘッド27との間に適切なギャップが確保される。キャリッジ28がガイド軸42に沿って走査方向Yに往復動される過程で、記録ヘッド27がインクを媒体Mに向けて吐出することによって、媒体Mに画像等が印刷される。
図4、図5においてキャリッジ28の移動経路上の一端部は、キャリッジ28が非記録時に待機するホーム位置HP(ホームポジション)となっている。このホーム位置HPに配置されたキャリッジ28の直下に相当する位置には、記録ヘッド27のクリーニング等を行う他の機構の一例としてのメンテナンス機構75が配設されている。メンテナンス機構75は、記録ヘッド27の複数のノズル(図示略)が開口するノズル開口面27Aに接触してノズルを覆うことが可能なキャップ76と、ノズル開口面27Aを払拭するワイパー77と、キャップ76及びワイパー77を昇降させる昇降機構78と、キャップ76内とチューブを通じて連通する吸引ポンプ79とを備える。
キャリッジ28が図4に実線で示すホーム位置HPにある状態では、キャップ76が昇降機構78により図4に示す待機位置からノズル開口面27Aに接触するキャッピング位置まで上昇して記録ヘッド27をキャッピングすることで、記録ヘッド27のノズル内のインクの増粘等を防止する。また、メンテナンス時期になると、キャップ76がキャッピング位置に配置され、キャップ76とノズル開口面27Aとの間にノズルと連通する状態に形成される閉空間の空気を吸引ポンプ79が吸引して閉空間を負圧にすることで、ノズルを通じて記録ヘッド27内の増粘インクや気泡等をインクと共に吸引排出するクリーニングが行われる。
また、キャリッジ28は印刷中に定期又は不定期にホーム位置HPへ移動して、記録ヘッド27のノズルから印刷とは関係のないインク滴をキャップ76に向けて吐出するフラッシングを行う。フラッシングにより印刷中に不使用のノズル内のインクをリフレッシュし、ノズルの目詰まりを防止する。クリーニングやフラッシングで溜まったキャップ76内の廃インクは、吸引ポンプ79に吸引されて廃液タンク64に排出され、インク吸収材65に吸収保持される。なお、メンテナンス機構75の吸引ポンプ79を含む構成要素の一部は、搬送機構40と共通の搬送モーター66を駆動源とする。また、記録装置11は、支持台41に対する記録ヘッド27の高さ位置を変更して記録ヘッド27と媒体Mとのギャップを調整するギャップ調整機構(図示略)を備える。
搬送機構40は、搬送方向Xにおいて記録ヘッド27の走査経路の位置よりも上流位置に配置された搬送ローラー対60と、記録ヘッド27の走査経路の位置よりも下流位置に配置された第1排出ローラー対61及び第2排出ローラー対62とを備える。搬送方向Xの上流側から、搬送ローラー対60、第1排出ローラー対61及び第2排出ローラー対62の順に配置されている。搬送ローラー60A及び2つの排出ローラー61A,62Aは搬送モーター66の動力で駆動される。なお、2つの排出ローラー対61,62を構成する従動ローラー61B,62Bは、歯付きローラーよりなる。搬送モーター66が正転駆動されると、各ローラー対60〜62が媒体Mを第1搬送方向X1に搬送するときの方向に回転し、逆転駆動されると、各ローラー対60〜62が媒体Mを第2搬送方向X2に搬送するときの方向に回転する。メンテナンス機構75は、搬送モーター66が逆転駆動されるときに駆動される。
また、図5に示すように、筐体12内には、リニアエンコーダーよりなる第1エンコーダー67がガイド軸42に沿って延在する状態で設けられている。第1エンコーダー67は、一定ピッチ毎に多数のスリットが形成されたテープ状の符号板67Aと、キャリッジ28に設けられた光学式のセンサー67Bとを備える。第1エンコーダー67は、キャリッジ28の移動距離に比例するパルス数で、かつキャリッジ28の移動速度に反比例する周期のパルス信号を出力する。記録装置11では、第1エンコーダー67からのパルス信号のパルスを検出して把握されるキャリッジ28の移動位置、移動速度及び移動方向に基づいて、キャリッジ28の速度制御及び位置制御が行われる。
また、搬送ローラー対60の駆動軸の端部には、例えばロータリーエンコーダーよりなる第2エンコーダー68が取着されている。第2エンコーダー68からは、搬送モーター66の回転量に比例する数のパルスを有するパルス信号が出力される。記録装置11では、第2エンコーダー68からのパルス信号のパルスを検出して媒体Mの搬送時の速度制御及び停止位置制御が行われる。
また、図5に示すように、記録装置11には搬送中の媒体Mを所定箇所で検出可能な中間センサー72、搬送センサー73及び排出センサー74が、搬送方向Xの上流側からこの順に配置されている。各センサー72〜74は、幅方向Yには媒体搬送幅内の幅中心となる位置に配置されている。本例では、媒体Mの幅中心が媒体搬送幅内の幅中心に一致する状態で媒体Mが給送されるセンター給送方式が採用されている。このため、媒体Mがどの幅サイズでも各センサー71〜74により検出される。
次に、図6を参照して、記録装置11の電気的構成を説明する。なお、図6では、記録装置11の記録制御に係る電気的構成を示し、読取装置13の電気的構成は省略している。
図6に示すように、記録装置11は制御部80を備える。制御部80は、コンピューター81とメモリー82とを内蔵し、コンピューター81がメモリー82に記憶されたプログラムPRを実行することにより記録制御を含む各種の制御を行う。記録装置11は、ホスト装置200と通信可能に接続される。制御部80は、ホスト装置200から受信した印刷データPDに基づいて記録制御を行う。なお、ホスト装置200は、例えば、パーソナルコンピューター、携帯情報端末(PDA(Personal Digital Assistants))、タブレットPC、スマートフォン、携帯電話等のうちいずれか1つにより構成される。
制御部80の入力端子には、給送センサー71、中間センサー72、搬送センサー73、排出センサー74、第1エンコーダー67及び第2エンコーダー68が電気的に接続されている。また、制御部80の出力端子には、記録ヘッド27、キャリッジモーター49、給送モーター69及び搬送モーター66が電気的に接続されている。なお、制御部80は、読取装置13と電気的に接続され、自動原稿送り装置16による原稿Dの搬送制御及び読取装置13の原稿Dの読取制御も行う。
制御部80は、各センサー71〜74の検出結果に基づいて媒体Mの有無やジャムの有無を検出する。排出センサー74は、記録ヘッド27よりも下流の位置で媒体Mの有無を検知する。本例では、排出センサー74は、搬送方向Xにおいて第1排出ローラー対61と第2排出ローラー対62との間の位置で、媒体Mの有無を検知する。排出センサー74は、搬送センサー73よりも下流の領域での媒体Mのジャムの検出にも用いられる。
制御部80は、記録ヘッド27、キャリッジ28及び搬送機構40を制御する。制御部80は、搬送機構40による媒体Mの搬送動作と、キャリッジ28による記録ヘッド27の走査動作とを、搬送動作の搬送期間FPと走査動作の走査期間SPとを一部重ねて同時に行う重ね合わせ制御を実行させる。そして、制御部80は、重ね合わせ制御の実行中に、搬送機構40による次の搬送で、媒体Mの先端が第1排出ローラー対61のニップ位置に到達する搬送においては、重ね合わせ制御を実行しない。
ここで、給送モーター69の回転方向と各ローラー33,43,51,52等の回転方向の関係と、搬送モーター66の回転方向と各ローラー対60〜62の回転方向との関係を説明する。図6に示すように、給送モーター69は、歯車機構101を介して給送ローラー33、分離ローラー43及び中間ローラー51,52と動力伝達可能に接続されている。給送モーター69の正転駆動時は、両ローラー33,43共に正転し、給送モーター69の逆転駆動時は、中間ローラー51,52が正転するが、給送ローラー33及び分離ローラー43は停止する。これにより、給送ローラー33の回転により後続の媒体Mを第1中間ローラー51の上流のニップ位置の手前の待機位置まで送り出し、後続の媒体Mをその待機位置に待機させたまま、先行の媒体Mを中間ローラー51,52の回転により搬送することができる。
搬送モーター66は、歯車機構102を介して搬送ローラー対60、第1排出ローラー対61及び第2排出ローラー対62と動力伝達可能に接続されている。各ローラー対60〜62は、搬送モーター66の正転駆動時に正転して媒体Mを第1搬送方向X1に搬送し、搬送モーター66の逆転駆動時に逆転して媒体Mを第1搬送方向X1と反対の方向である第2搬送方向X2に搬送する。
また、搬送モーター66は、歯車機構103を介してメンテナンス機構75と動力伝達可能に接続されている。搬送モーター66が正転駆動するときは動力がメンテナンス機構75に伝達されず、逆転駆動するときに動力がメンテナンス機構75に伝達される。制御部80は、印刷停止中にメンテナンス時期になると、搬送モーター66を逆転駆動させることで、メンテナンス機構75の吸引ポンプ79を駆動して記録ヘッド27のクリーニングを行う。
本実施形態では、第1排出ローラー対61を駆動する搬送モーター66、歯車機構102及び歯車機構103により、第1排出ローラー対61を駆動する駆動機構100が構成される。排出センサー74の下流に設けられた第2排出ローラー対62は、駆動機構100で駆動される。駆動機構100は正転駆動で第1排出ローラー対61及び第2排出ローラー対62に媒体Mを排出方向に搬送する駆動力を伝達し、逆転駆動で他の機構への駆動力を伝達可能である。本例では、他の機構はメンテナンス機構75であり、駆動機構100が逆転駆動されると、メンテナンス機構75が駆動される。
駆動機構100は正転駆動による媒体Mの排出方向である第1搬送方向X1への搬送と、逆転駆動による媒体Mの排出方向とは逆方向である第2搬送方向X2への逆搬送とが可能である。例えば、両面印刷時には、媒体Mの第1面に印刷が施された後、駆動機構100を構成する搬送モーター66の正転駆動により記録中の媒体Mは第1搬送方向X1に搬送され、媒体Mの第1面への記録が完了すると、搬送モーター66が逆転駆動されることで媒体Mが逆方向である第2搬送方向X2に逆搬送される。この逆搬送によって媒体Mは、第3搬送経路F3から第4搬送経路F4へ送られ、この逆搬送過程で給送モーター69が逆転駆動されることで中間ローラー51,52により第4搬送経路F4から第1搬送経路F1へ戻される。そして、媒体Mは第1中間ローラー51の外周面に沿って反転され、記録済みの第1面と反対側の面である第2面が上向きとなる向きで記録部26に向かって搬送される。記録部26により第2面に印刷された両面印刷後の媒体Mは排出トレイ21上へ排出される。
また、図6に示すように、制御部80は、コンピューター81に、第1カウンター91、第2カウンター92、算出部93及び判定部94を備える。制御部80がホスト装置200から受信する印刷データPDには、印刷画像データと印刷条件情報とが含まれる。印刷条件情報には、ヘッド擦れ回避モードの有無、印刷モード、媒体種、媒体サイズ、媒体種、印刷色(カラー/グレイスケール)、両面印刷の有無(片面印刷/両面印刷)等の情報が含まれる。
ここで、「ヘッド擦れ回避モード」とは、媒体Mが記録ヘッド27のノズル開口面27Aに擦れることを積極的に回避するモードである。ユーザーは、ホスト装置200又は操作部23を操作して「ヘッド擦れ回避モード」を選択する。「ヘッド擦れ回避モード」が選択されているときは、ギャップ調整機構の調整により、記録ヘッド27と媒体Mとのギャップが、このモードが選択されていないときの第1ギャップよりも大きな第2ギャップで記録が行われる。また、印刷モードには、普通印刷モードと高精細印刷モードとを含む複数種の印刷モードが含まれる。高精細印刷モードとは、媒体Mに第1解像度で画像を記録する普通印刷モードよりも解像度の高い第2解像度で画像を記録する印刷モードである。
制御部80は、記録ヘッド27、キャリッジ28及び搬送機構40を制御する。制御部80は、搬送機構40による媒体Mの搬送動作と、キャリッジ28による記録ヘッド27の走査動作とを、搬送動作の搬送期間FPと走査動作の走査期間SPとを一部重ねて同時に行う重ね合わせ制御を実行させる。制御部80は、重ね合わせ制御の実行中に、搬送機構40による次の搬送で、媒体Mの先端が排出ローラー対61のニップ位置に到達する搬送においては、重ね合わせ制御を実行しない。制御部80は、重ね合わせ制御を実行しないとき、媒体Mの先端が排出ローラー対61のニップ位置に到達する搬送動作の停止を待ってから次の走査動作を開始する。
本実施形態では、制御部80は、所定モードにおける重ね合わせ制御の実行中に、搬送機構40による次の搬送で、媒体Mの先端が排出ローラー対61のニップ位置に到達する搬送においては、重ね合わせ制御を実行しない。ここで、所定モードは、記録ヘッド27と媒体Mとの擦れを回避するヘッド擦れ回避モード、又は媒体Mに高解像度の画像を記録する高精細モードを含む。なお、搬送機構40による次の搬送で、媒体Mの先端が排出ローラー対61のニップ位置に到達する搬送とは、次の搬送の搬送量が、媒体Mの先端が第1排出ローラー対61のニップ位置に達するまでの搬送量以上の搬送量である搬送を指す。
第1カウンター91は、第1エンコーダー67からのパルス信号に基づいて例えばパルスエッジの数を計数することで、例えばホーム位置HPを原点とする走査方向Yにおけるキャリッジ28の位置(キャリッジ位置)に相当する計数値を計数する。
第2カウンター92は、第2エンコーダー68からのパルス信号に基づいて例えばパルスエッジの数を計数することで、搬送方向Xにおける媒体Mの先端の位置である搬送位置に相当する計数値を計数する。第2カウンター92は、例えば搬送センサー73が媒体Mの先端を検知するとリセットされ、搬送センサー73が媒体Mの先端を検知したときを起点として計数値を計数する。
算出部93は、第2カウンター92の計数値から定まる媒体Mの現在の搬送位置と、印刷データPD中の次の搬送動作を指令する搬送コマンドで指示された搬送量とに基づいて、次の搬送動作で媒体Mの先端が到達する搬送位置を算出する。
判定部94は、算出部93が算出した次の搬送動作で媒体Mの先端が到達する搬送位置を基に、次の搬送動作で媒体Mの先端が第1排出ローラー対61に突入するか否かを判定する。また、判定部94は、第1排出ローラー対61のニップ位置に到達する搬送後に、媒体Mの下流側の先端Maが第1排出ローラー対61のニップ位置に到達したか否かを判定する。
制御部80は、媒体Mの先端を排出センサー74が検出したことをもって、媒体Mの先端が第1排出ローラー対61のニップ位置に到達したと判断する。制御部80は、媒体Mの先端を排出センサー74で検出する位置まで次の搬送で到達すると判定したにも関わらず、次の搬送の終了後に排出センサー74が媒体Mを検知しなかった場合、媒体Mのジャムが発生したと判定する。
ここで、制御部80が記録制御で実行する重ね合わせ制御について説明する。図7は、所定モード以外のときに制御部80が行う重ね合わせ制御を示す。制御部80は、搬送モーター66とキャリッジモーター49とを駆動制御し、搬送機構40による媒体Mの搬送動作と、キャリッジ28による記録ヘッド27の走査動作とを、搬送動作の搬送期間FPと走査動作の走査期間SPとを一部重ねて同時に行う重ね合わせ制御を実行する。具体的には、制御部80は、搬送モーター66とキャリッジモーター49とを、図7に示すタイミングで駆動制御し、搬送動作の搬送期間FPと走査動作の走査期間SPとを一部重ねて同時に行う重ね合わせ制御を実行する。このため、搬送モーター66が減速する減速過程の途中からキャリッジモーター49の駆動が開始され、媒体Mの搬送動作の減速過程の途中から記録ヘッド27の走査動作が開始される。また、キャリッジモーター49が減速する減速過程の途中から搬送モーター66の駆動が開始され、キャリッジ28の走査動作の減速過程の途中から媒体Mを次の記録位置まで搬送する搬送動作が開始される。この搬送期間FPと走査期間SPとの一部重複により、その重複した期間の分だけ、印刷速度が高速になる。
所定モード以外のときは、判定部94が搬送動作の前の第1判定時期に第1判定を行う。この第1判定では、次の搬送動作で、媒体Mの先端が排出センサー74の検知域に到達するか否かを判定する。行う第1判定の判定結果に応じて次の搬送動作で重ね合わせ制御を実行するか否かを決める。また、第1判定で、次の搬送動作で媒体Mの先端が排出センサー74の検知域に到達すると判定した場合、次の搬送動作の終了を待った第2判定時期で第2判定を行う。図7に示すように、第2判定で排出センサー74の検出状態が「媒体あり」であれば、そのまま重ね合わせ制御の実行を継続する。一方、図8に示すように、第2判定で排出センサー74の検出状態が「媒体なし」であれば、既に開始されたキャリッジ28による記録ヘッド27の走査動作を終えた後に、記録制御が強制停止される。
図9は、所定モードのときに制御部80が行う重ね合わせ制御を示す。重ね合わせ制御そのものは、所定モード以外のときの図7と同様である。所定モードのときは、所定モード以外のときの第1判定の判定内容と同様の判定の他、次の搬送動作が、媒体Mの先端が第1排出ローラー対61に突入する搬送動作、つまり第1排出ローラー対61のニップ位置に到達する搬送動作であるという所定条件を満たすか否かの判定が含まれる。判定部94は搬送動作の前の第1判定時期に行う第1判定の判定結果に応じて、次の搬送動作で重ね合わせ制御を実行するか否かを決定する。
図9、図10に示すように、第1判定で、次の搬送動作で媒体Mの先端が第1排出ローラー対61に突入すると判定されれば、同図に示すように、次の搬送動作で重ね合わせ制御を行わない。また、第1判定で、所定モード以外のときと同様の判定で、次の搬送動作で媒体Mの先端が排出センサー74の検知域に到達すると判定した場合、次の搬送動作の終了を待った第2判定時期で図7と同様の第2判定を行う。よって、図9に示すように、第2判定で排出センサー74の検出状態が「媒体あり」であれば、次の搬送動作の終了を待って、キャリッジ28による記録ヘッド27の走査動作が開始される。一方、図10に示すように、第2判定で排出センサー74の検出状態が「媒体なし」であれば、次のキャリッジ28による記録ヘッド27の走査動作を開始することなく記録制御が強制停止される。
制御部80は、媒体Mの記録を完了すると、駆動機構100を正転駆動で第1排出ローラー対61及び第2排出ローラー対62に媒体Mを排出方向に搬送する駆動力を伝達し、記録後の媒体Mを排出する。制御部80は、他の機構を駆動すべき所定時期になると、駆動機構100を逆転駆動で他の機構へ駆動力を伝達し、他の機構を駆動させる。本実施形態の制御部80は、メンテナンス時期になると、駆動機構100を逆転駆動させて他の機構の1つであるメンテナンス機構75を駆動させ、記録ヘッド27のクリーニングを行う。詳しくは、制御部80は、キャリッジ28がホーム位置HPに位置し、記録ヘッド27のノズル開口面27Aがキャップ76で覆われたキャッピング状態の下で、駆動機構100を逆転駆動させることで吸引ポンプ79を駆動させる。これにより吸引ポンプ79でキャップ76に負圧を与えることで、記録ヘッド27のノズルからインクを強制的に吸引するクリーニングを行う。このとき、制御部80は、メンテナンス機構75を駆動させるときは、排出センサー74が媒体Mを検出しない状態で、駆動機構100を逆転駆動させる。制御部80は、駆動機構100を逆転駆動させて他の機構の1つであるメンテナンス機構75を駆動している最中に、排出センサー74が媒体Mを検知すると、駆動機構100の逆転駆動を停止させる。これは、排出されたはずの先行の媒体M1(図21参照)が第2排出ローラー対62に接触していたなどの理由で、メンテナンス機構75の駆動時に逆転する第2排出ローラー対62により上流へ引き戻されたことにより媒体Mが検知された異常と判定し、駆動機構100の逆転駆動を非常停止する。
次に、記録装置11の作用について説明する。
制御部80は、印刷データPDを受信して印刷ジョブを受け付けると、印刷データPD中の印刷条件情報を基に所定モードであるか否かを判断する。制御部80は、所定モードでなければ、図11に示す記録制御を実行する。一方、制御部80は、所定モードであれば、図12に示す記録制御を実行する。ここで、所定モードには、「ヘッド擦れ回避モード」と「高精細印刷モード」とが含まれる。
以下では、まず、所定モード以外のときの記録制御について説明する。例えば、「ヘッド擦れ回避モード」が設定されていないときの「普通印刷モード」のときが該当する。
制御部80は、まず給送モーター69を駆動して指定の媒体供給源であるカセット19又は供給トレイ29から媒体Mを給送する。例えばカセット19から媒体Mを給送するときは、給送モーター69を正転駆動させてカセット19の最上位の媒体Mを給送ローラー33及び分離ローラー43の回転により第1搬送経路F1を経由して給送し、さらに2つの中間ローラー51,52の回転によりこれらの外周面を経由して媒体Mを搬送ローラー対60へ送る。媒体Mの先端が搬送センサー73に検知されると、この検知を起点として第2カウンター92により媒体Mの先端の位置である搬送位置が計数される。また、印刷データPD中の記録画像データを基に定まる印刷開始位置まで媒体Mを搬送する。媒体Mの先端が搬送センサー73に検知された後、媒体Mが印刷開始位置まで搬送される搬送動作を含め、キャリッジ28の1回の走査により記録ヘッド27が1走査(1パス)分の記録を行う走査動作と、媒体Mを次の記録位置まで搬送する搬送動作とが交互に繰り返し行われ、媒体Mに印刷データPDに基づく画像を記録する記録制御が行われる。
以下、図11を参照して、制御部80が所定モード以外のときに実行する記録制御について説明する。
まずステップS11では、制御部80は、次の搬送で排出センサー74の検知域に到達するか否かを判定する。次の搬送で排出センサー74の検知域に到達すると判定しなければステップS12に進み、次の搬送で排出センサー74の検知域に到達すると判定すればステップS13に進む。
ステップS12では、制御部80は、フラグFをリセットする。
ステップS13では、制御部80は、フラグFをセットする。
ステップS14では、制御部80は、搬送動作を重ね合わせ制御で実行する。このとき、媒体Mを印刷開始位置まで搬送する最初の搬送動作では、記録ヘッド27の1回目の走査動作がまだ開始されていないので、重ね合わせなしで搬送動作を行う。そして、記録ヘッド27が1回目の走査動作を開始した後の次回以降の搬送動作を重ね合わせ制御で行う。
ステップS15では、制御部80は、キャリッジ28による記録ヘッド27の走査動作を重ね合わせ制御で実行する。つまり、制御部80は、キャリッジモーター49を駆動させてキャリッジ28を記録ヘッド27と共に走査方向Yに移動させ、走査中の記録ヘッド27にノズルからインク滴を吐出させることで1走査(1パス)分の記録を行う。
ステップS16では、制御部80は、フラグFはリセットであるか否かを判断する。フラグFがリセットでなければステップS17に進み、フラグFがリセットであればステップS19に進む。
ステップS17では、制御部80は、排出センサー74が媒体ありの検出状態であるか否かを判断する。排出センサー74の検出状態が媒体ありでなければ、つまり媒体なしであればステップS18に進む。一方、排出センサー74の検出状態が媒体ありであれば、ステップS19に進む。
ステップS18では、制御部80は、ジャムエラーと判定する。つまり、制御部80は、搬送動作により媒体Mを所定送り量だけ送られたことによって到達するはずの媒体Mが排出センサー74の検知域に到達しておらず、排出センサー74が媒体なしの検出状態にあれば、その搬送途中で媒体Mのジャムが発生したとしてジャムエラーと判定する。
例えば、重ね合わせ制御の実行中に、図15に示すように、媒体Mが実線で示す位置にあるとき、次の搬送で、媒体Mの先端が排出センサー74の検知域に到達すると判定されたとする。この場合、次の搬送で、媒体Mは、図17に示す位置まで搬送され、排出センサー74が媒体Mを検知する。しかし、次の搬送を終えても、排出センサー74が媒体Mを検知しないときは、制御部80は、次の搬送の途中で媒体Mにジャムが発生したと判定する(ステップS18)。この場合、記録装置11は強制停止される。
図11におけるステップS19では、制御部80は、印刷完了であるか否かを判断する。印刷完了でなければステップS11に戻り、ステップS11〜ステップS19の処理を繰り返す。そして、印刷ジョブで指示された印刷を完了すると、当該記録制御ルーチンを終了する。そして、制御部80は、搬送モーター66を正転駆動させて印刷完了後の媒体Mを排出トレイ21へ排出する。
図7に示すように、この所定モード以外の記録制御では、制御部80は、搬送機構40による媒体Mの搬送動作と、キャリッジ28による記録ヘッド27の走査動作とを、搬送期間FPと走査期間SPとを一部重ねて同時に行う重ね合わせ制御を実行する。具体的には、制御部80は、搬送モーター66とキャリッジモーター49とを、図7に示すタイミングで駆動制御し、搬送動作の搬送期間FPと走査動作の走査期間SPとを一部重ねて同時に行う重ね合わせ制御を実行する。このため、搬送モーター66の減速過程の途中から、キャリッジモーター49の駆動が開始され、搬送動作の減速過程の途中から記録ヘッド27の走査動作が開始される。また、キャリッジモーター49の減速過程の途中から、搬送モーター66の駆動が開始され、記録ヘッド27の走査動作の減速過程の途中から媒体Mの搬送動作が開始される。この搬送期間FPと走査期間SPとの一部重複により、その重複した期間の分だけ、印刷速度が高速になる。
この所定モード以外のときは、次の搬送動作を開始する前の第1判定時期で、次の搬送で排出センサー74の検知域に到達するか否かを判定する第1判定が行われる(ステップS11)。そして、次の搬送を終えた第2判定時期で、排出センサー74は媒体ありか否かを判定する第2判定が行われる(ステップS17)。第2判定結果が、排出センサー74が媒体Mを検知していて「媒体あり」であれば、図7に示すように重ね合わせ制御が継続される。
一方、図8に示すように、次の搬送を終えた第2判定時期で第2判定結果が、排出センサー74が媒体Mを検知しておらず「媒体なし」であれば、ジャムエラーとして記録制御が強制停止される。このとき、次回の搬送動作は行わないが、キャリッジ28は重ね合わせ制御で既に走査を開始しているため、キャリッジ28は1走査を終えた後に停止される。但し、制御部80は、キャリッジモーター49の負荷を監視しており、その負荷がジャムの原因で閾値を超えた場合はキャリッジ28の移動途中であってもその時点でキャリッジ28を強制停止させる。なお、ジャムエラー判定時点でキャリッジ28を強制停止させてもよい。
次に、図12を参照して、所定モードのときの記録制御について説明する。ここで、所定モードには、「ヘッド擦れ回避モード」と「高精細印刷モード」とが含まれる。以下、所定モードのときの記録制御について説明する。
制御部80は、印刷データPD中の印刷条件情報を基に所定モードと判定すれば、図12に示す記録制御を実行する。制御部80は、まず給送モーター69を駆動して例えばカセット19から媒体Mを給送し第1搬送経路F1を経て搬送ローラー対60へ送られる。媒体Mの先端が搬送センサー73に検知されると、この検知を起点として第2カウンター92により媒体Mの先端の位置である搬送位置が計数される。媒体Mは搬送ローラー対60により印刷開始位置まで搬送される。こうして記録開始位置への搬送動作を含む記録制御が開始される。
まずステップS21では、制御部80は、次の搬送で排出ローラー対61に突入するか否かを判定する。つまり、制御部80は、次の搬送で、媒体Mの先端が排出ローラー対61のニップ位置に到達するか否かを判定する。詳しくは、制御部80は、算出部93が算出した搬送位置と、第1排出ローラー対61のニップ位置とを比較し、搬送位置がニップ位置と同じかニップ位置を過ぎていれば、次の搬送で、媒体Mの先端が排出ローラー対61のニップ位置に到達すると判定する。次の搬送で排出ローラー対61に突入すると判定しなければステップS22に進み、次の搬送で排出ローラー対61に突入すると判定すればステップS23に進む。
ステップS22では、制御部80は、次の搬送で排出センサー74の検知域に到達するか否かを判定する。次の搬送で排出センサー74の検知域に到達すると判定しなければステップS24に進み、次の搬送で排出センサー74の検知域に到達すると判定すればステップS27に進む。
ステップS24では、制御部80は、フラグFをリセットする。
次のステップS25では、制御部80は、搬送動作を重ね合わせ制御で実行する。このとき、媒体Mを印刷開始位置まで搬送する最初の搬送動作では、記録ヘッド27はまだ1回目の走査動作を開始する前なので、重ね合わせなしで搬送動作を行う。そして、記録ヘッド27が1回目の走査動作を開始した後の次回以降の搬送動作を重ね合わせ制御で行う。
次のステップS26では、制御部80は、キャリッジ28による記録ヘッド27の走査動作を重ね合わせ制御で実行する。つまり、制御部80は、キャリッジモーター49を駆動させてキャリッジ28を記録ヘッド27と共に走査方向Yに移動させ、走査中の記録ヘッド27にノズルからインク滴を吐出させることで1走査(1パス)分の記録を行う。ステップS26の処理を終えると、ステップS36に進む。こうして、次の搬送で排出ローラー対61に突入もせず(S21で否定判定)、しかも次の搬送で排出センサー74の検知域に到達もしないうちは(S22で否定判定)、重ね合わせ制御が行われる。例えば、印刷開始位置から媒体Mの先端が第1排出ローラー対61のニップ位置に到達するまでに複数回の搬送動作が行われるときは、媒体Mの先端が第1排出ローラー対61のニップ位置に到達する前に1回以上の搬送及び走査が重ね合わせ制御で行われる。なお、本実施形態では、ステップS21,S25,S26の処理が第1制御ステップの一例に相当する。
一方、ステップS22において、制御部80が、次の搬送で排出センサー74の検知域に到達すると判定した場合は、ステップS27において、フラグFをセットする。
また、ステップS21において、制御部80が、次の搬送で排出ローラー対61に突入すると判定した場合に進んだステップS23では、制御部80は、ステップS22と同様の判定処理を行う。
すなわち、ステップS23では、制御部80は、次の搬送で排出センサー74の検知域に到達するか否かを判定する。次の搬送で排出センサー74の検知域に到達すると判定しなければステップS28に進み、次の搬送で排出センサー74の検知域に到達すると判定すればステップS29に進む。
ステップS28では、制御部80は、フラグFをリセットする。
ステップS29では、制御部80は、フラグFをセットする。
ステップS27、S28及びS29で、フラグFの処理を終えた後、いずれの場合もステップS30の処理に移行する。
ステップS30では、制御部80は、搬送動作を実行する。このとき、制御部80は、媒体Mを重ね合わせなしの搬送動作を行う。記録ヘッド27の走査動作が開始された後の次回以降の搬送動作であっても重ね合わせなしの搬送動作を行う。すなわち、制御部80は、キャリッジモーター49の駆動が停止したタイミングで搬送モーター66の駆動を開始する。
次のステップS31では、制御部80は、搬送停止待ちを行う。すなわち、制御部80は、搬送動作が終了し媒体Mが停止するまで待機する。具体的には、制御部80は、搬送動作のため駆動中の搬送モーター66の駆動が停止するまで待機する。
次のステップS32では、制御部80は、フラグFがリセットであるか否かを判断する。フラグFがリセットでなければステップS33に進み、フラグFがリセットであればステップS35に進む。
ステップS33では、制御部80は、排出センサー74が媒体ありの検出状態であるか否かを判断する。排出センサー74の検出状態が媒体ありでなければ、つまり媒体なしであればステップS34に進む。一方、排出センサー74の検出状態が媒体ありであれば、ステップS35に進む。
ステップS34では、制御部80は、ジャムエラーと判定する。つまり、制御部80は、搬送動作により媒体Mを所定送り量だけ送られたことによって到達するはずの媒体Mが排出センサー74の検知域に到達しておらず、排出センサー74の検出状態が媒体なしであれば、その搬送途中で媒体Mのジャムが発生したとしてジャムエラーと判定する。この場合、記録制御は強制停止される。このとき、キャリッジ28はまだ走査を開始していないので、制御部80はキャリッジモーター49の駆動を開始させない。
一方、ステップS35では、制御部80は、キャリッジ28による記録ヘッド27の走査動作を実行する。この走査動作は重ね合わせなしで行われる。すなわち、制御部80は、搬送モーター66の駆動が停止したタイミングでキャリッジモーター49の駆動を開始する。記録ヘッド27を走査させることで走査途中にノズルからインク滴を吐出することにより1走査(1パス)分の記録を行う。なお、本実施形態では、ステップS21,S30,S35の処理が、第2制御ステップの一例に相当する。
次のステップS36では、制御部80は、印刷完了であるか否かを判断する。印刷完了でなければステップS21に戻り、ステップS21〜ステップS36の処理を繰り返す。そして、印刷ジョブで指示された印刷を完了すると、当該記録制御ルーチンを終了する。そして、制御部80は、搬送モーター66を正転駆動させて印刷完了後の媒体Mを排出トレイ21へ排出する。
図9に示すように、所定モードのときの記録制御では、制御部80は、搬送機構40による媒体Mの搬送動作と、キャリッジ28による記録ヘッド27の走査動作とを、搬送期間FPと走査期間SPとを一部重ねて同時に行う重ね合わせ制御を実行する。具体的には、制御部80は、搬送モーター66とキャリッジモーター49とを、図9に示すタイミングで駆動制御し、搬送期間FPと走査期間SPとを一部重ねて同時に行う重ね合わせ制御を実行する。このため、搬送モーター66の減速過程の途中からキャリッジモーター49の駆動が開始され、搬送動作の減速過程の途中から記録ヘッド27の走査動作が開始される。また、キャリッジモーター49の減速過程の途中から搬送モーター66の駆動が開始され、走査動作の減速過程の途中から媒体Mの搬送動作が開始される。この搬送期間FPと走査期間SPとの一部重複により、その重複した期間の分だけ、印刷速度が高速になる。
この所定モードのときは、次の搬送動作の開始前の第1判定時期で、次の搬送で排出ローラー対61に突入するか否かの判定(ステップS21)と、次の搬送で排出センサー74の検知域に到達するか否かを判定とを含む第1判定(ステップS22,S23)が行われる。そして、第1判定結果が、次の搬送で排出ローラー対61に突入するという判定結果を含む場合、重ね合わせ制御は行われない。すなわち、次の搬送動作は重ね合わせなしで行われる。このため、図9に示すように、この判定結果が得られた第1判定時期の次の搬送動作は、走査期間SPと搬送期間FPとが重ならないように行われる(ステップS30,S31,S35)。
例えば、図13〜図15に実線で示す位置に媒体Mがあるとき、次の搬送は、図13に示すように第1排出ローラー対61のニップ位置に到達しない場合、図14に示すように媒体Mの先端Maが第1排出ローラー対61のニップ位置に到達する場合、図15に示すように媒体Mの先端Maが排出センサー74の検知域に到達する場合がある。
図13に示す場合、次の搬送では媒体Mの先端Maがまだ第1排出ローラー対61に突入しないので、重ね合わせ制御が行われる。この場合、印刷開始後、媒体Mの先端Maが第1排出ローラー対61のニップ位置に到達するまでに、搬送と走査の重ね合わせ制御が1回以上行われることになる。
図14、図15に示すように、次の搬送で、媒体Mの先端が第1排出ローラー対61に突入するときは、図16に示すように、媒体Mの先端が第1排出ローラー対61に突入したときに媒体Mが一瞬撓んで浮き上がる。この媒体Mの浮き上がり時に重ね合わせ制御で記録ヘッド27が既に走査を開始していると、媒体Mの浮き上がった部分が移動中の記録ヘッド27のノズル開口面27Aに接触する擦れが発生し易い。特に、媒体Mが撓みやすい材質や厚さの薄いものである場合は、媒体Mの浮き上がり量が大きくなり易く、媒体Mが移動中の記録ヘッド27のノズル開口面27Aに一層擦れ易い。媒体Mと記録ヘッド27との擦れは、媒体Mのインク汚れの原因となるうえ、記録ヘッド27の損傷を招く場合もある。
しかし、本実施形態では、図16に示すように、媒体Mの先端が第1排出ローラー対61への突入時に一瞬浮き上がっても、そのとき重ね合わせ制御を行わないので、浮き上がった媒体Mに移動中の記録ヘッド27のノズル開口面27Aが接触する擦れが発生しない。
つまり、図14と図15に示す場合、次の搬送で媒体Mの先端Maが第1排出ローラー対61に突入するので、重ね合わせ制御なしで次の搬送動作が行われる。すなわち、図14及び図15に二点鎖線で示す位置まで搬送された媒体Mが停止した後に、キャリッジ28の駆動が開始される。媒体Mの浮き上がり時は、記録ヘッド27は走査開始前の位置で停止中なので、媒体Mの上方位置から幅方向Y外側へ退避した位置にあるか、仮に媒体Mの上方に位置しても停止中である。このため、図16に示すように媒体Mの先端Maが第1排出ローラー対61に突入した際に媒体Mが一瞬撓んで浮き上がっても、そのとき記録ヘッド27は走査開始前の位置で停止しているので、媒体Mのヘッド擦れが回避される。なお、次の搬送が、媒体Mの先端がニップ位置に丁度達する搬送量であっても、第1排出ローラー対61に突入するときの媒体Mの先端がニップ位置から上下にずれた位置でローラーに当たる場合は、媒体Mは撓んで浮き上がる。そして、この種の媒体Mの浮き上がり時も、媒体Mとノズル開口面27Aとの擦れが回避される。
また、第1判定で媒体Mの先端が排出センサー74の検知域に到達すると判定された場合(ステップS22,S23で肯定判定)、図9に示すように、次の搬送動作を終えた第2判定時期に、排出センサー74が媒体ありの検出状態にあるか否かを判定する第2判定が行われる(ステップS33)。第2判定結果が「媒体あり」であれば、図9に示すように、以後の走査動作と搬送動作において重ね合わせ制御が再開される。図15に示すように、次の搬送で、媒体Mの先端Maが排出センサー74の検知域に到達すると判定された場合、図17に示すように、次の搬送動作でジャムが発生することなく搬送を終えた媒体Mが排出センサー74に検知されれば、前回の搬送動作で一時的に止めていた重ね合わせ制御が再開される(図9参照)。
一方、図10に示すように、次の搬送動作を終えた第2判定時期で排出センサー74が媒体Mを検知しておらず第2判定結果が「媒体なし」であれば、ジャムエラーと判定され(ステップS34)、その時点で記録制御が強制停止される。このとき、次の走査動作は開始前なので、次の走査動作が開始されることなく直ちに記録制御は強制停止される(図10参照)。なお、ステップS21で否定判定かつステップS22で肯定判定の場合は、媒体Mの先端が既に第1排出ローラー対61のニップ位置を通過した位置から次の搬送を行う場合であって、次の搬送で、媒体Mの先端が排出センサー74の検知域に到達しない搬送である場合に相当する。この場合、媒体Mの先端がまだ排出センサー74の検知域に到達する前であり、媒体Mのジャムが発生していない確証がないので、重ね合わせ制御を行わない(ステップS30,S31,S35)。但し、媒体Mの先端は排出センサー74の検知域には到達する前であるものの、既に第1排出ローラー対61へ突入済みの媒体Mは第1排出ローラー対61にニップされた状態にあるので、重ね合わせ制御を行う(ステップS25,26)制御内容としてもよい。この場合、ステップS25,S26の次に第2判定時期に行う第2判定の処理(ステップS32〜S34)を行うことが好ましい。
また、図18に示すように、両面印刷時は、記録部26により第1面の記録を終えた媒体Mは、それまでの搬送方向である第1搬送方向X1と反対の第2搬送方向X2に逆搬送される。例えば、第1面の記録終了時に媒体Mの後端Mbがまだ搬送センサー73の検知域を第1搬送方向X1に通過しておらず搬送センサー73が検知状態にある場合、媒体Mはその後端Mbが搬送センサー73に検知される位置まで第1搬送方向X1に一旦排出された後、逆搬送される。逆搬送された媒体Mは第3搬送経路F3から第4搬送経路F4へ送られる。こうして両面印刷時に媒体Mは搬送と逆搬送とを伴うスイッチバック搬送される。
スイッチバック後の媒体Mは、第4搬送経路F4に沿って2つの中間ローラー51,52の下方を通る経路で第2搬送方向X2に逆搬送され、第1搬送経路F1で第1中間ローラー51の外周面に沿って反転される。反転後の媒体Mは、記録済みの第1面と反対の第2面が上向きとなる向きで記録部26に向かって搬送される。そして、記録部26により媒体Mの第2面に印刷された後、両面印刷済みの媒体Mは排出トレイ21上へ排出される。この第2面への印刷時も、制御部80は、所定モードであるか否かに応じて、所定モード以外のときの図11に示す記録制御、又は所定モードのときの図12に示す記録制御を行う。
ところで、図19に二点鎖線で示すように先に排出された先行の媒体M1が第2排出ローラー対62のニップ位置の外側等に接触していると、第1面の記録を完了した媒体Mの逆搬送のために逆転した第2排出ローラー対62によって先行の媒体M1が同図に実線で示すように筐体12内へ引き戻される場合がある。駆動機構100の逆転駆動中に排出センサー74が媒体Mの逆搬送方向における後端(先端Ma)を検出した後、排出センサー74が再び図19に実線で示す先行の媒体M1を検出したら駆動機構100の逆転駆動を停止する。よって、排出されたはずの先行の媒体M1が第2排出ローラー対62に接触などして、媒体Mの逆搬送過程で先行の媒体M1が第2排出ローラー対62の逆転により逆搬送されて上流へ引き戻されても、排出センサー74が、その先行の媒体M1を検知した時点で駆動機構100が停止される。その結果、先行の媒体M1の引き戻し量が少なく抑えられる。そのため、ユーザーは引き戻された媒体M1を比較的簡単に除去できる。
なお、図20に示すように、引き戻された先行の媒体M1を排出センサー74が検知して駆動機構100の逆転駆動の停止後に、搬送センサー73の検出結果から、媒体Mの逆搬送方向である第2搬送方向X2の後端(先端Ma)が搬送ローラー対60のニップ位置を上流へ過ぎている場合がある。この場合、搬送機構40の駆動源と、第1給送部31の駆動源は別々のモーター66,69なので、各ローラー対60〜62を図20に示す二点鎖線の矢印で示す方向に正転させても、中間ローラー51,52(図3参照)の正転を維持できれば媒体Mの逆搬送を継続できる。そのため、搬送センサー73の検出結果から、媒体Mの第2搬送方向X2の後端が搬送ローラー対60のニップ位置を上流へ過ぎていたら、駆動機構100を正転駆動させ、図20に示すように3つのローラー対60〜62を正転させ、引き戻された先行の媒体M1を再び排出する。この場合、記録装置11の非常停止を回避できる。よって、記録装置11を非常停止させて記録が中断されてしまい、ユーザーが先行の媒体M1の引き戻しのトラブルを解消する作業を強いられる事態を回避できる。
さらに、メンテナンス時期になると、制御部80は、駆動機構100の逆転駆動でメンテナンス機構75を駆動させる。制御部80は、メンテナンス機構75を駆動させるときは、排出センサー74が先行の媒体M1を検出しない状態で駆動機構100を逆転駆動させる。例えば、先行の媒体M1が排出口20の内方周辺に残っていたり、ジャム検出時など強制停止時の先行の媒体M1が第3搬送経路F3に残っていたりして、排出センサー74が先行の媒体M1を検出する状態では、メンテナンス機構75は駆動されない。よって、駆動機構100を逆転駆動させてメンテナンス機構75を駆動するときに一緒に逆転駆動される第2排出ローラー対62によって先行の媒体M1が筐体12内へ引き戻されてしまう事態が回避される。
図21に示すように、メンテナンス時期に駆動機構100の逆転駆動を開始してメンテナンス機構75の駆動を開始した後の駆動中に、排出センサー74が先行の媒体M1を検出したら駆動機構100の逆転駆動を停止する。よって、メンテナンス機構75の駆動開始後に第2排出ローラー対62の逆転によって筐体12内へ先行の媒体M1が引き戻された場合、駆動機構100の逆転駆動が停止され、メンテナンス機構75の駆動が停止される。この結果、その引き戻された先行の媒体M1の引き戻し量が少なく抑えられる。そのため、ユーザーは引き戻された先行の媒体M1を比較的簡単に除去できる。
なお、メンテナンス時期に排出センサー74が先行の媒体M1を検出する状態にあったり、メンテナンス時期に駆動を開始したメンテナンス機構75の駆動中に排出センサー74が先行の媒体M1を検出したために駆動機構100の逆転駆動を停止したりした場合、検出された先行の媒体M1を排出するために駆動機構100を正転駆動させてもよい。この場合、図21に示すように3つのローラー対60〜62が同図に二点鎖線の矢印で示す方向に正転することで、筐体12内に残っていた先行の媒体M1、又は引き戻された先行の媒体M1は排出される。そして、排出センサー74が先行の媒体M1を検知しなくなってから更に先行の媒体M1を排出トレイ21へ排出するに十分な各ローラー対60〜62の所定搬送量の正転の後、駆動機構100の逆転駆動を開始する。この場合、メンテナンス動作を開始できない原因である先行の媒体M1を搬送経路から排除できるので、記録装置11を非常停止させることなくメンテナンス動作を行うことができる。よって、先行の媒体M1が筐体12内に残っていてメンテナンス動作が行われなかったり、一旦は開始されたメンテナンス動作が引き戻された先行の媒体M1を原因とする非常停止により中断されたりすること、及びユーザーが筐体12内に残った先行の媒体M1又は引き戻された先行の媒体M1を除去する作業を強いられる事態を回避できる。
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)記録装置11は、媒体Mに記録を行う記録ヘッド27と、記録ヘッド27を搭載して走査されるキャリッジ28と、記録ヘッド27の下流に配置されて媒体Mを記録ヘッド27と対向する位置から排出する排出ローラー対61を含む搬送機構40と、記録ヘッド27、キャリッジ28及び搬送機構40を制御する制御部80とを備える。制御部80は、記録ヘッド27、キャリッジ28及び搬送機構40を制御し、搬送機構40による媒体Mの搬送動作と、キャリッジ28による記録ヘッド27の走査動作とを、搬送動作の搬送期間FPと走査動作の走査期間SPとを一部重ねて同時に行う重ね合わせ制御を実行させる。また、制御部80は、搬送機構40による次の搬送で、媒体Mの先端が排出ローラー対61のニップ位置に到達する搬送においては、重ね合わせ制御を実行しない。よって、媒体Mの先端が排出ローラー対61に突入する際に媒体Mが撓んで浮き上がっても、そのとき記録ヘッド27が走査開始前の位置で停止している頻度が高い。このため、媒体Mの浮き上がり部分が記録ヘッド27と擦れることを低減できる。また、媒体Mの先端が排出ローラー対61のニップ位置に到達する搬送の前における搬送と走査は重ね合わせ制御で実行されるので、記録速度を高めることができる。よって、記録のスループットを高く維持しつつ、媒体Mと記録ヘッド27との擦れを低減できる。
(2)制御部80は、重ね合わせ制御を実行しない搬送においては、媒体Mの先端が排出ローラー対61のニップ位置に到達する搬送動作の停止を待ってから次の走査動作を開始する。よって、媒体Mが記録ヘッド27に擦れることをより確実に回避できる。
(3)重ね合わせ制御は、媒体Mの先端が排出ローラー対61のニップ位置に到達する前に1回以上行われる。よって、媒体Mの先端が排出ローラー対61のニップ位置に到達する前に1回以上行われる重ね合わせ制御によって、記録のスループットの向上に寄与できる。
(4)制御部80は、所定モードにおける重ね合わせ制御の実行時に、搬送機構40による次の搬送で、媒体Mの先端が排出ローラー対61のニップ位置に到達する搬送においては、重ね合わせ制御を実行しない。よって、媒体Mと記録ヘッド27との擦れの回避が特に望ましい所定モードにおいて、媒体Mの先端が排出ローラー対61に突入したときの媒体Mの浮き上がりに起因する記録ヘッド27との擦れを回避し、記録品質の高い記録物を得ることができる。
(5)制御部80は、排出ローラー対61のニップ位置に到達する搬送後に、媒体Mの下流側先端が排出ローラー対61のニップ位置に到達したか否かを判定する。よって、排出ローラー対61のニップ位置に到達する搬送後に、媒体Mの下流側先端が排出ローラー対61のニップ位置に到達したか否かを判定するので、搬送途中のジャムなどの搬送異常を検出できる。
(6)排出ローラー対61の下流に設けられた排出センサー74を備える。制御部80は、排出センサー74が媒体Mの先端を検出したことで、媒体Mの先端が排出ローラー対61のニップ位置に到達したと判断する。よって、排出ローラー対61の下流に位置する排出センサー74により媒体Mの先端が排出ローラー対61のニップ位置に到達したことを確実に検出できる。したがって、搬送途中のジャムなどの搬送異常を一層確実に検出できる。
(7)第1排出ローラー対61を駆動する駆動機構100と、駆動機構100で駆動され、排出センサー74の下流に設けられた第2排出ローラー対62を備える。よって、媒体Mが排出ローラー対61のニップ位置に到達し且つ下流の第2排出ローラー対62に到達しない搬送においても、その搬送が正しく終了したことを排出センサー74により確実に検出することができる。
(8)駆動機構100は正転駆動で排出ローラー対61及び第2排出ローラー対62に媒体Mを排出方向に搬送する駆動力を伝達し、逆転駆動で他の機構の一例としてのメンテナンス機構75への駆動力を伝達可能である。制御部80は、メンテナンス機構75を駆動させるときは、排出センサー74が媒体Mを検出しない状態で駆動機構100を逆転駆動させる。
よって、排出センサー74が媒体Mを検出しない状態で駆動機構100が逆転駆動されることで、メンテナンス機構75が駆動される。つまり、排出センサー74が媒体Mを検出する状態では、メンテナンス機構75は駆動されない。よって、駆動機構100を逆転駆動させてメンテナンス機構75を駆動するときに一緒に逆転駆動される第2排出ローラー対62によって媒体Mが筐体12内へ引き戻されてしまう事態を回避できる。
(9)排出センサー74が媒体Mを検出したら駆動機構100の逆転駆動を停止する。よって、メンテナンス機構75の駆動開始後に第2排出ローラー対62の逆転によって筐体12内へ先行の媒体M1が引き戻された場合、駆動機構100の逆転駆動が停止され、メンテナンス機構75の駆動が停止されるので、その引き戻された媒体Mの引き戻し量が少なく抑えられる。
(10)排出センサー74が媒体Mを検出したら駆動機構100の逆転駆動を停止した後、駆動機構100を正転駆動させる。よって、引き戻された先行の媒体M1を再び排出することができる。例えば、ユーザーが先行の媒体M1の引き戻しのトラブルを解消する作業を強いられる事態を回避できる。
(11)駆動機構100は正転駆動による媒体Mの排出方向への搬送と、逆転駆動による媒体Mの排出方向とは逆方向への逆搬送とが可能である。逆転駆動中に排出センサー74が媒体Mの逆方向における後端(先端Ma)を検出した後、排出センサー74が再び媒体Mを検出したら駆動機構100の逆転駆動を停止する。よって、排出されたはずの先行の媒体M1が第2排出ローラー対62に接触などしていると、媒体Mの逆搬送過程で先行の媒体M1が第2排出ローラー対62の逆転により逆搬送されて引き戻される場合がある。このような場合でも、排出センサー74が、逆搬送中の媒体Mの逆方向における後端(先端Ma)を検出した後、再び媒体M1を検出したら駆動機構100の逆転駆動が停止される。よって、媒体Mの逆搬送に伴う第1排出ローラー対61の逆転駆動時に先行の媒体M1が第2排出ローラー対62の逆転により上流へ引き戻されてしまっても、その先行の媒体M1の引き戻し量を少なく抑えることができる。
(12)駆動機構100の逆転駆動の停止後に、媒体Mの逆搬送方向である第2搬送方向X2の後端(先端Ma)が搬送ローラー対60のニップ位置を上流へ過ぎていたら、駆動機構100を正転駆動させる。よって、引き戻された先行の媒体M1を再び排出することができる。例えば、記録装置11を非常停止させて記録が中断されてしまい、ユーザーが先行の媒体M1の引き戻しのトラブルを解消する作業を強いられる事態を回避できる。
(13)所定モードは、記録ヘッド27と媒体Mとの擦れを回避するヘッド擦れ回避モード、又は媒体Mに第1解像度で画像を記録する普通印刷モードよりも解像度の高い第2解像度で画像を記録する高精細印刷モードを含む。よって、ヘッド擦れ回避モード、又は高精細印刷モードのときに、媒体Mと記録ヘッド27との擦れを回避して汚れの少ない高品質な印刷画像を得ることができる。
(14)記録装置11は、媒体Mに記録を行う記録ヘッド27と、記録ヘッド27を搭載して走査されるキャリッジ28と、記録ヘッド27の下流に配置されて媒体Mを記録ヘッド27と対向する位置から排出する排出ローラー対61を含む搬送機構40と、記録ヘッド27、キャリッジ28、搬送機構40を制御する制御部80とを備える。制御部80は、搬送機構40による媒体Mの搬送期間FPと、キャリッジ28による記録ヘッド27の走査期間SPとの一部を同時に行う重ね合わせ制御を実行させる。この記録装置11の制御方法は、重ね合わせ制御の実行中に、搬送機構40による次の搬送が、媒体Mの先端が排出ローラー対61のニップ位置に到達する搬送の前の搬送であれば、次の搬送動作を重ね合わせ制御で行う第1制御ステップ(S25,S26)を含む。さらに、重ね合わせ制御の実行中に、搬送機構40による次の搬送が、媒体Mの先端が排出ローラー対61のニップ位置に到達する搬送であれば、次の搬送動作を重ね合わせ制御を止めて搬送期間FPと走査期間SPとを重ねない制御で行う第2制御ステップ(S30,S35)を含む。よって、この記録装置11の制御方法によれば、上記記録装置11における前記(1)と同様の作用効果が得られる。
なお、上記実施形態は以下に示す変更例のような形態に変更することもできる。さらに、上記実施形態および以下に示す変更例を適宜組み合わせたものを更なる変更例とすることもできるし、以下に示す変更例同士を適宜組み合わせたものを更なる変更例とすることもできる。
・排出センサー74の検知域に到達しない搬送動作においては、第2カウンター92の計数値で把握される媒体Mの先端の位置と、今回の搬送動作で指示された搬送量で媒体Mが搬送されたときに到達する計算上の先端の位置とが許容範囲内で不一致と判定された場合にジャムエラーと判定し、記録動作を強制停止させてもよい。また、搬送モーター66の負荷を検出し、負荷が所定の閾値を超えたときをジャムエラーと判定し、記録動作を強制停止させてもよい。これらの構成によれば、媒体Mの先端が排出センサー74に到達する搬送が行われる時よりも前の搬送で早期にジャムを検出して記録動作を強制停止できる。例えばジャムが発生しているにも関わらず、キャリッジ28の走査や媒体Mの搬送を行われ、ジャムが酷くなってその解消作業が面倒になることや、記録ヘッド27の損傷等を回避できる。
・媒体Mの後端Mbが搬送ローラー対60のニップ位置を過ぎるときの搬送動作において重ね合わせ制御をしない構成としてもよい。媒体Mの後端Mbが搬送ローラー対60のニップ位置を過ぎるときは、媒体Mの後端部が搬送ローラー対60の蹴飛ばしや、ニップが外れたときの反動で一時的に浮き上がる場合があるので、重ね合わせ制御を行わず搬送動作が終了して媒体Mの停止を待った後に、キャリッジ28の走査を開始する。このように媒体Mの先端が第1排出ローラーのニップ位置に到達する搬送動作と、媒体Mの後端Mbが搬送ローラー対60のニップ位置を過ぎるときの搬送動作とにおいて重ね合わせ制御を一時的に中断することで、媒体Mの記録ヘッド27との擦れを一層回避できる。
・媒体Mの先端が排出ローラー対61に突入する搬送動作の全てについて重ね合わせ制御を行わない構成に限定されない。例えば、媒体Mの先端が排出ローラー対61及び検出部の一例である排出センサー74の検知域に到達する搬送である場合、媒体Mの先端を排出センサー74が検知した後であれば、重ね合わせ制御でのキャリッジ28による記録ヘッド27の走査を開始してもよい。これは、排出ローラー対61の下流に位置する排出センサー74の検知域まで媒体Mの先端が到達していれば、排出ローラー対61への突入時の媒体Mの一時的な浮き上がりが解消されているとみなされるからである。また、第2カウンター92の計数値から得られる媒体Mの搬送位置が、その媒体Mの先端Maが第1排出ローラー対61に突入して浮き上がりが解消されるタイミングの搬送位置まで搬送されれば、重ね合わせ制御でのキャリッジ28による記録ヘッド27の走査を開始してもよい。これらの構成によれば、媒体Mが第1排出ローラー対61へ突入するときでも、突入して所定時間を経過した後、あるいは突入してから所定搬送量の搬送が行われた後であって、媒体Mの一時的な浮き上がりが解消された後においては、重ね合わせ制御を実行することにより印刷速度の高速化を図れる。なお、第1排出ローラー対61のニップ位置と排出センサー74の検知域の位置との搬送経路上の距離が極めて短い場合は、媒体Mの検知後に更に媒体Mの所定量の搬送を計数した後に重ね合わせ制御の開始を許可することが好ましい。
・重ね合わせ制御をしない制御は、対象となる搬送動作を前回のキャリッジ28の走査動作の停止を待って開始する制御と、対象となる搬送動作の停止を待って次回のキャリッジ28の走査動作を開始する制御との両方を含んだが、これに限定されない。対象となる搬送動作を前回のキャリッジ28の走査動作の停止を待って開始する制御と、対象となる搬送動作の停止を待って次回のキャリッジ28の走査動作を開始する制御とのいずれか一方のみを行わない構成としてもよい。
・記録位置よりも下流に位置する排出ローラー対は1つでもよい。また、排出ローラー対は3つ以上の複数備えてもよい。
・検出部の一例である排出センサー74は、記録ヘッド27と対向する記録位置よりも下流の位置であれば、第1排出ローラー対61よりも上流の位置に配置されてもよい。また、排出センサー74は、第2排出ローラー対62よりも下流の位置に配置されてもよい。排出センサー74を第2排出ローラー対62の下流に設ける場合は、記録位置からの下流へ経路に沿う距離が、記録ヘッド27が記録している途中の媒体Mを検知可能な範囲内となる位置に排出センサー74を設けることが好ましい。これらの構成でも、記録中の媒体Mのジャムを検出できる。
・媒体Mは、用紙に限らず、可撓性のプラスチックフィルムや、布、不織布などであってもよい。
・記録装置11は、インクジェット方式などの液体吐出方式に限定されず、ドットインパクト方式又は電子写真方式でもよい。また、記録装置11は、捺染装置でもよい。
前記実施形態および変更例から把握される技術思想を、その作用効果と共に以下に記載する。
記録装置は、媒体に記録を行う記録ヘッドと、前記記録ヘッドを搭載して走査されるキャリッジと、前記記録ヘッドの下流に配置されて媒体を前記記録ヘッドと対向する位置から排出する排出ローラー対を含む搬送機構と、前記記録ヘッド、前記キャリッジ及び前記搬送機構を制御し、前記搬送機構による媒体の搬送動作と、前記キャリッジによる前記記録ヘッドの走査動作とを、前記搬送動作の搬送期間と前記走査動作の走査期間とを一部重ねて同時に行う重ね合わせ制御を実行させる制御部と、を備え、前記制御部は、前記重ね合わせ制御の実行中に、前記搬送機構による次の搬送で、媒体の先端が前記排出ローラー対のニップ位置に到達する搬送においては、前記重ね合わせ制御を実行しない。
この構成によれば、媒体の先端が排出ローラー対のニップ位置に到達する搬送においては重ね合わせ制御を実行しないので、媒体の先端が排出ローラー対に突入する際に撓んで媒体Mが浮き上がっても、そのとき記録ヘッドは次の走査開始前の位置に停止している頻度が高い。このため、媒体の浮き上がり部分が記録ヘッドと擦れることを低減できる。また、媒体Mの先端が排出ローラー対のニップ位置に到達する搬送の前においては、搬送と走査が重ね合わせ制御で実行されるので、記録速度を高めることができる。よって、記録のスループットを高く維持しつつ、媒体と記録ヘッドとの擦れを低減できる。
上記記録装置において、前記制御部は、前記重ね合わせ制御を実行しない前記搬送においては、媒体の先端が前記排出ローラー対のニップ位置に到達する搬送動作の停止を待ってから次の走査動作を開始するとよい。
この構成によれば、媒体の先端が排出ローラー対のニップ位置に到達する搬送動作の停止を待ってから次の走査動作が開始されるので、媒体が記録ヘッドに擦れることをより確実に回避できる。
上記記録装置において、前記重ね合わせ制御は、前記媒体の先端が前記排出ローラー対のニップ位置に到達する前に1回以上行われるとよい。
この構成によれば、媒体の先端がニップ位置に到達する前に1回以上行われる重ね合わせ制御によって、記録のスループットの向上に寄与できる。
上記記録装置において、前記制御部は、所定モードにおける重ね合わせ制御の実行時に、前記搬送機構による次の搬送で、媒体の先端が前記排出ローラー対のニップ位置に到達する搬送においては、前記重ね合わせ制御を実行しなくてもよい。
この構成によれば、媒体と記録ヘッドとの擦れの回避が望ましい所定モードにおいて、媒体の先端が排出ローラー対のニップ位置に到達したときの媒体の浮き上がりに起因する記録ヘッドとの擦れを回避し、記録品質の高い記録物を得ることができる。
上記記録装置において、前記制御部は、前記排出ローラー対のニップ位置に到達する搬送後に、媒体の下流側先端が前記排出ローラー対のニップ位置に到達したか否かを判定してもよい。
この構成によれば、排出ローラー対のニップ位置に到達する搬送後に、媒体の下流側先端が排出ローラー対のニップ位置に到達したか否かを判定するので、搬送途中のジャムなどの搬送異常を検出できる。
上記記録装置において、前記排出ローラー対の下流に設けられた検出部を備え、前記制御部は、前記検出部が媒体の先端を検出したことで、媒体の先端が前記排出ローラー対のニップ位置に到達したと判断してもよい。
この構成によれば、排出ローラー対の下流側に位置する検出部により媒体の先端が排出ローラー対のニップ位置に到達したことを確実に検出できる。よって、搬送途中のジャムなどの搬送異常を一層確実に検出できる。
上記記録装置において、前記排出ローラー対を駆動する駆動機構と、前記駆動機構で駆動され、前記検出部の下流に設けられた第2排出ローラー対を備えてもよい。
この構成によれば、媒体が排出ローラー対のニップ位置に到達し且つ下流の第2排出ローラー対には到達しない搬送においても、その搬送が正しく終了したことを検出部により確実に検出することができる。
上記記録装置において、前記駆動機構は正転駆動で前記排出ローラー対及び前記第2排出ローラー対に媒体を排出方向に搬送する駆動力を伝達し、逆転駆動で他の機構への駆動力を伝達可能であり、前記制御部は、前記他の機構を駆動させるときは、前記検出部が媒体を検出しない状態で前記駆動機構を逆転駆動させてもよい。
この構成によれば、検出部が媒体を検出しない状態で駆動機構が逆転駆動されることで、他の機構が駆動される。つまり、検出部が媒体を検出する状態では、他の機構は駆動されない。よって、駆動機構を逆転駆動させて他の機構を駆動するときに一緒に逆転駆動される第2排出ローラー対によって媒体が引き戻されてしまう事態を回避できる。
上記記録装置において、前記検出部が媒体を検出したら前記駆動機構の逆転駆動を停止してもよい。
この構成によれば、他の機構の駆動開始後に第2排出ローラー対の逆転によって先行の媒体が引き込まれた場合、駆動機構の逆転駆動が停止されるので、媒体の引き戻し量が少なく抑えられる。
上記記録装置において、前記駆動機構は正転駆動による媒体の排出方向への搬送と、逆転駆動による媒体の排出方向とは逆方向への逆搬送とが可能であり、逆転駆動中に前記検出部が媒体の逆方向における後端を検出した後、前記検出部が再び媒体を検出したら前記駆動機構の逆転駆動を停止してもよい。
この構成によれば、排出されたはずの先行の媒体が第2排出ローラー対に接触などしていると、媒体の逆搬送過程で先行の媒体が第2排出ローラー対の逆転により逆搬送されて引き戻される場合がある。このような場合でも、検出部が、逆搬送中の媒体の逆方向における後端を検出した後、再び媒体を検出したら駆動機構の逆転駆動が停止される。よって、媒体の逆搬送に伴う第1排出ローラー対の逆転駆動時に先行の媒体が第2排出ローラー対の逆転により上流へ引き戻されてしまっても、先行の媒体の引き戻し量を少なく抑えることができる。
上記記録装置において、前記所定モードは、前記記録ヘッドと媒体とのギャップを当該モードが選択されていないときの第1ギャップよりも大きな第2ギャップで記録を行うヘッド擦れ回避モード、又は媒体に第1解像度で画像を記録する普通印刷モードよりも解像度の高い第2解像度で画像を記録する高精細印刷モードを含むとよい。
この構成によれば、ヘッド擦れ回避モード、又は高精細印刷モードのときに、媒体と記録ヘッドとの擦れを回避して汚れの少ない高品質な印刷画像を得ることができる。
記録装置の制御方法は、媒体に記録を行う記録ヘッドと、前記記録ヘッドを搭載して走査されるキャリッジと、前記記録ヘッドの下流側に配置されて媒体を前記記録ヘッドと対向する位置から排出する排出ローラー対を含む搬送機構と、前記記録ヘッド、前記キャリッジ、前記搬送機構を制御し、前記搬送機構による媒体の搬送期間と、前記キャリッジによる前記記録ヘッドの走査期間との一部を同時に行う重ね合わせ制御を実行させる制御部とを備え、前記重ね合わせ制御の実行中に、前記搬送機構による次の搬送が、媒体の先端が前記排出ローラー対のニップ位置に到達する搬送の前の搬送であれば、前記次の搬送を前記重ね合わせ制御で行う第1制御ステップと、前記重ね合わせ制御の実行中に、前記搬送機構による次の搬送が、媒体の先端が前記排出ローラー対のニップ位置に到達する搬送であれば、前記次の搬送を、前記重ね合わせ制御を止めて前記搬送期間と前記走査期間とを重ねない制御で行う第2制御ステップと、を含む。この方法によれば、上記記録装置と同様の作用効果が得られる。