JP2020075085A - 吸収性物品 - Google Patents

Abstract

【課題】肌側シートに綿を使用した場合でも、肌側シートの表面において排泄物が平面的に拡散することを抑制しやすくして、吸収性物品から排泄物が漏れる恐れを軽減させることを目的とする。【解決手段】互いに直交する長手方向、幅方向、及び厚さ方向を備え、吸収体（１０）と、厚さ方向において、吸収体（１０）より肌側に配置された肌側シート（２）と、厚さ方向において、吸収体（１０）と肌側シート（２）の間に配置された中間シート（３）と、を有する吸収性物品（１）であって、肌側シート（２）は、綿を有しており、線状圧搾部（Ｅｓ）と孔部（Ｈ）を有し、線状圧搾部（Ｅｓ）は、肌側シート（２）と中間シート（３）のみを厚さ方向に圧搾するように形成されており、孔部（Ｈ）は、肌側から肌側シート（２）及び中間シート（３）を貫通し、且つ吸収体（１０）に達している。【選択図】図４

Description

本発明は、吸収性物品に関する。

着用者の着衣に固定して使用する吸収性物品として、生理用ナプキン、パンティーライナー、及び吸収パッドがある。特許文献１に開示された吸収性物品のように、着用者の肌に直接触れるトップシート１１にコットン繊維を用いて肌触りを向上させることが知られている。

特開２０１７−２０５１４３号

しかしながら、特許文献１に示された、トップシート１１にコットン繊維を用いた吸収性物品は、コットン繊維の吸液性及び保湿性が高いために、トップシート１１の層、つまり、着用者の肌に触れるシート層で被吸収液が拡散されやすく、被吸収液がセカンドシート１２や吸収体１３に達しづらい場合があった。そのため、着用者に被吸収液によるべたつき等の不快感を与えてしまう恐れを生じていた。

本発明は、上記のような従来の問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、肌側シートに綿を含む素材を使用した場合でも、肌側シートの表面において排泄物が平面的に拡散することを抑制しやすくして、吸収性物品から排泄物が漏れる恐れを軽減させることにある。

上記目的を達成するための主たる発明は、互いに直交する長手方向、幅方向、及び厚さ方向を備え、吸収体と、前記厚さ方向において、前記吸収体より肌側に配置された肌側シートと、前記厚さ方向において、前記吸収体と前記肌側シートの間に配置された中間シートと、を有する吸収性物品であって、前記肌側シートは、綿を有しており、線状圧搾部と孔部を有し、前記線状圧搾部は、前記肌側シートと前記中間シートのみを前記厚さ方向に圧搾するように形成されており、前記孔部は、前記肌側から前記肌側シート及び前記中間シートを貫通し、且つ前記吸収体に達していることを特徴とする吸収性物品である。
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。

本発明によれば、肌側シートに綿を使用した場合でも、肌側シートの表面において排泄物が平面的に拡散することを抑制しやすくして、吸収性物品から排泄物が漏れる恐れを軽減させることができる。

図１は、生理用ナプキン１を肌側から見た平面図である。 図２は、ナプキン１を非肌側から見た平面図である。 図３は、図１中のＡ−Ａ矢視で示すナプキン１の概略断面図である。 図４は、中央部１Ｂを拡大した図である。 図５は、図４中のＢ−Ｂ矢視で示す部分の断面を説明する図である。 図６Ａは、図４中のＣ−Ｃ矢視で示す部分の断面を説明する図である。図６Ｂは、図４中のＤ−Ｄ矢視で示す部分の断面を説明する図である。 図７は、本体圧搾領域Ｗについて説明する図である。

本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
互いに直交する長手方向、幅方向、及び厚さ方向を備え、吸収体と、前記厚さ方向において、前記吸収体より肌側に配置された肌側シートと、前記厚さ方向において、前記吸収体と前記肌側シートの間に配置された中間シートと、を有する吸収性物品であって、前記肌側シートは、綿を有しており、線状圧搾部と孔部を有し、前記線状圧搾部は、前記肌側シートと前記中間シートのみを前記厚さ方向に圧搾するように形成されており、前記孔部は、前記肌側から前記肌側シート及び前記中間シートを貫通し、且つ前記吸収体に達していることを特徴とする吸収性物品である。

このような吸収性物品によれば、繊維密度をより高くした線状圧搾部によって、肌側シートの表面における排泄物の平面的な拡散を抑制しやすくし、肌側シートから吸収体まで貫通し、吸収体まで達した孔部によって、排泄物を吸収体に吸収させやすくなる。そのため、肌触りを向上させたり、着用者に高級感を感じさせやすい綿を肌側シートに使用した場合でも、肌側シートの表面において排泄物が平面的に拡散することを抑制しやすくして、吸収性物品から排泄物が漏れてしまう恐れを軽減させることができる。

かかる吸収性物品であって、前記線状圧搾部は、前記長手方向及び前記幅方向とそれぞれ交差していることが望ましい。

このような吸収性物品によれば、肌側シートの表面における排泄物の平面的な拡散を抑制しやすくして、排泄物が吸収性物品から漏れてしまう恐れを軽減させることができる。

かかる吸収性物品であって、前記線状圧搾部は、曲線であることが望ましい。

このような吸収性物品によれば、線状圧搾部を直線とした場合よりも肌側シートの表面における排泄物の平面的な拡散をより抑制しやすし、吸収性物品が線状圧搾部に沿って折れ曲がってしまう恐れを軽減させることができる。

かかる吸収性物品であって、前記線状圧搾部は、複数配置されており、複数の前記線状圧搾部によって囲まれた内側領域が複数設けられており、複数の前記内側領域が、それぞれ、中央部が肌側に突出した凸形状を有することが望ましい。

このような吸収性物品によれば、複数の凸部によって、着用者に対して吸収性物品が柔らかそうな印象を与えやすくなる。

かかる吸収性物品であって、前記線状圧搾部は、複数配置されており、前記線状圧搾部同士の交点を有さない前記線状圧搾部によって囲まれた内側領域が複数設けられていることが望ましい。

このような吸収性物品によれば、排泄物が連続した線状圧搾部に沿って拡散して、吸収性物品の長手方向及び幅方向の外側から漏れてしまう恐れを軽減させることができる。

かかる吸収性物品であって、前記線状圧搾部は、複数配置されており、複数の前記線状圧搾部によって囲まれた内側領域が設けられており、１つの前記内側領域に、少なくとも１つの前記孔部が設けられていることが望ましい。

このような吸収性物品によれば、線状圧搾部によって排泄物の拡散が抑制され、内側領域に留められた排泄物を孔部から吸収体に移動させやすくなる。

かかる吸収性物品であって、前記線状圧搾部及び前記孔部は、それぞれ、複数配置されており、複数の前記線状圧搾部によって囲まれた内側領域が設けられており、複数の前記孔部は、前記長手方向において隣接する第１孔部及び第２孔部を有し、前記長手方向において、前記第１孔部と前記第２孔部との間の距離は、前記内側領域の長さよりも短いことが望ましい。

このような吸収性物品によれば、内側領域に孔部が設けられやすくなるため、排泄物を吸収体により移動させやすくなる。

かかる吸収性物品であって、前記肌側シート、前記中間シート及び前記吸収体を前記厚さ方向に圧搾するように形成された複数の本体圧搾部を有し、前記孔部は、複数の前記本体圧搾部によって囲まれる最大の領域である本体圧搾領域の内側に設けられ、前記本体圧搾領域の外側には設けられておらず、前記線状圧搾部は、前記本体圧搾領域の内側及び外側に設けられていることが望ましい。

このような吸収性物品によれば、より広い領域に線状圧搾部を設けることで、着用者に吸収性物品が柔らかい印象を与えやすくしつつ、排泄物を吸収する量が多い本体圧搾領域の内側のみに孔部を設けることで、孔部を吸収性本体の全域に設けた場合よりも、孔部によって吸収性物品が過度に硬くなってしまう恐れを軽減させることができる。

かかる吸収性物品であって、前記線状圧搾部は、複数配置されており、複数の前記線状圧搾部によって囲まれた内側領域が複数設けられており、前記本体圧搾領域の外側に、前記孔部を有さない前記内側領域が設けられていることが望ましい。

このような吸収性物品によれば、内側領域によって着用者に吸収性物品が柔らかい印象を与えやすくなる。

かかる吸収性物品であって、前記孔部に隣接する隣接部における前記肌側シートの繊維密度は、前記隣接部に外側から隣接する外側領域における前記肌側シートの繊維密度よりも大きいことが望ましい。

このような吸収性物品によれば、外側領域より繊維密度が大きい隣接部は、毛細管現象によって排泄物を吸収体へ移動させやすくなる。

＝＝＝第１実施形態＝＝＝
以下、本発明に係る吸収性物品として生理用ナプキンを例に挙げて実施形態を説明するが、生理用ナプキンに限らず、パンティーライナー、又は軽失禁用パッド等のように、使用者の着衣に固定して使用する吸収性物品であればよい。

＜＜生理用ナプキン１の基本構成＞＞
図１は、生理用ナプキン１（以下「ナプキン」という）を肌側から見た平面図である。図２は、ナプキン１を非肌側から見た平面図である。図３は、図１中のＡ−Ａ線におけるナプキン１の概略断面図である。

ナプキン１は、互いに直交する長手方向、幅方向、及び厚さ方向を有する。ナプキン１の長手方向において、使用者の下腹部に当接する側を「前側」といい、使用者の臀部に当接する側を「後側」という。また、ナプキン１の厚さ方向において、使用者の肌に当接する側を「肌側」といい、その反対側を「非肌側」という。図中のＸ−Ｘ線は幅方向における中心線である。

ナプキン１は、長手方向の中央部から幅方向の両外側に延出した一対のウイング部１Ｗを有している。以下、ナプキン１の長手方向において、ウイング部１Ｗが設けられた部分を中央部１Ｂ、中央部１Ｂより前側の部分を前側部１Ａ、中央部１Ｂより後側の部分を後側部１Ｃという。

また、ナプキン１の幅方向の中央部には、肌側シート２、中間シート３、吸収体１０、非肌側シート４、及びサイドシート６を有している。厚さ方向の肌側から順に、肌側シート２、中間シート３、吸収体１０及び非肌側シート４が積層されており、サイドシート６は、肌側シート２の肌側面の幅方向の端部から吸収体１０の非肌側面の幅方向の端部に亘って配置されている。つまり、サイドシート６は、それぞれ各部材２、３、１０を厚さ方向に挟むように配置されている。なお、サイドシート６は、図３に示すように、１枚のシート部材で構成してもよいし、また、１枚のシート部材を折り返した２重の構成であってもよい。肌側シート２、中間シート３、吸収体１０、非肌側シート４、及びサイドシート６はそれぞれホットメルト接着剤等の接着剤を用いて接合固定されている。接着剤は、各部材の肌面側及び非肌面側のそれぞれに亘って任意の塗布パターンで塗布されており、Ωパターンやスパイラルパターン、ストライプパターン等の塗布パターンから選択することができる。なお、図３等において、便宜上、接着剤を省略して示している。

肌側シート２は、液透過性のシート部材であり、綿のシートである。肌側シート２は、着用中において着用者の肌に直接接触する部分である。そのため、肌側シート２に天然繊維である綿を用いることで、着用者が感じる肌触りをより向上させることができる。特に、生理用ナプキンを着用する生理期間中は、着用者の肌は敏感になりやすいことが知られている。この点、ナプキン１の肌側シート２に綿を用いることで、着用者の肌への刺激を軽減し、着用者の肌の痒みやかぶれ等が起こる恐れを軽減させやすくしたり、視覚的に柔らかそうな印象を与えやすくなり、高級感を実感させたりすることができる。なお、本実施形態においては、１００％の綿からなるシート部材を用いるが、これに限られない。例えば、綿とエアスルー不織布の混合シートであってもよい。ただし、肌側シート２を構成する綿の割合が多いほど、着用者への肌当たりをより向上させやすくなる。

中間シート３は、液透過性のシート部材であり、エアスルー不織布、スパンボンド不織布等を例示できる。ウイングシート５及びサイドシート６は、それぞれ疎水性のシート部材であり、エアスルー不織布、スパンボンド不織布等を例示できる。非肌側シート４は、液不透過性のシート部材であり、ポリエチレン（ＰＥ）の樹脂フィルム等を例示できる。非肌側シート４は、平面サイズが吸収体１０よりも大きく、吸収体１０の平面全体を覆っている。

ウイング部１Ｗは、肌側シート２等の幅方向の両側部から外側に延出しているウイングシート５及び非肌側シート４によって形成されている。なお、ナプキン１がウイング部１Ｗを有さない形態であってもよい。

吸収体１０は、排泄物を吸収して内部に保持する部材である。図３に示すように、吸収体１０は、吸収性コア１１と、吸収性コア１１を覆うカバーシート１２とを有している。吸収性コア１１は、液体吸収性繊維であるパルプ繊維やセルロース系吸収性繊維等に、液体吸収性粒状物である高吸収性ポリマー（所謂ＳＡＰ）等が加えられ、所定の形状に成形されたものである。カバーシート１２は、液透過性のシートであり、ティッシュ等を例示できる。

ナプキン１の非肌側面（つまり、非肌側シート４の非肌側面）には、接着剤が塗布される等した中央粘着部８が設けられている。中央粘着部８は、図２では長手方向に長辺を有する長方形状の１１個の中央粘着部８が幅方向に間隔を空けて配置されているが、中央粘着部８の形状、数、及び配置はこれに限られない。中央粘着部８がナプキン１の使用時に下着等の着衣の肌側面に貼り付けられることで、ナプキン１は下着等に固定される。

同様に、各ウイング部１Ｗの厚さ方向の非肌側面（非肌側シート４の非肌側綿）には、ウイング粘着部９が設けられている。ウイング粘着部９は、図２では、長手方向に長辺を有する長方形状の４個のウイング粘着部９が幅方向に間隔を空けて配置されているが、ウイング粘着部９の形状、数、及び配置はこれに限られない。ナプキン１の使用時にウイング部１Ｗは非肌側に折り曲げられ、ウイング粘着部９は、下着等の非肌側面に張り付けられる。これにより、ウイング部１Ｗは下着等に固定される。

＜＜線状圧搾部Ｅｓ、本体圧搾部Ｅｂ、孔部Ｈについて＞＞
ナプキン１は、複数の線状圧搾部Ｅｓ、複数の本体圧搾部Ｅｂ、及び複数の孔部Ｈを有している。図１及び図４に示すように、ナプキン１を肌側面から見ると、線状圧搾部Ｅｓ、本体圧搾部Ｅｂ、及び孔部Ｈを視認することができる。図４は、中央部１Ｂを拡大した図である。図５は、図４中のＢ−Ｂ矢視で示す部分の断面を説明する図である。図６Ａは、図４中のＣ−Ｃ矢視で示す部分の断面を説明する図であり、図６Ｂは、図４中のＤ−Ｄ矢視で示す部分の断面を説明する図である。図４において、中央部１Ｂのうち、両ウイング部１Ｗを省略し、ナプキン１の幅方向の中央部を拡大して示している。図５、図６Ａ及び図６Ｂは、便宜上、各断面のうち、肌側シート２、中間シート３、及び吸収体１０の部分の断面について図示し、非肌側シート４等は省略している。

複数の線状圧搾部Ｅｓは、肌側シート２と中間シート３とが重ねられた領域の略全域に配置されている。図３及び図５に示すように、１つの線状圧搾部Ｅｓは、肌側シート２と中間シート３のみを厚さ方向から圧搾加工を施すことによって形成された１本の線状の圧搾部である。具体的には、一端と他端の２つの端を有し、長手方向及び幅方向に所定の長さを有する圧搾部であり、肌側シート２と中間シート３とを圧搾している一方で、吸収体１０を圧搾していない部分である。圧搾によって、肌側シート２の繊維密度と中間シート３の繊維密度が、圧搾をしていない部分よりもそれぞれ高くなっている。なお、ナプキン１の線状圧搾部Ｅｓは、円形状の圧搾部の集合によって線状となっているが、これに限られない。例えば、線状の圧搾部を有する線状圧搾部Ｅｓであってもよい。但し、ナプキン１のように円形状の圧搾部の集合による線状圧搾部Ｅｓとすることで、線状の圧搾部の集合による線状圧搾部Ｅｓよりも、肌側シート２及び中間シート３が過度に硬くなってしまう恐れを軽減し、着用時の肌触りを向上させることができる。

複数の孔部Ｈは、ナプキン１の長手方向の中央部及び幅方向の中央部に、略千鳥状に配置されている、図３及び図５に示すように、孔部Ｈは、肌側から肌側シート２と中間シート３及び吸収体１０を貫通した平面視円形の孔である。ナプキン１の孔部Ｈは、肌側面から吸収体１０までピン等を突き刺すことによって形成されており、平面視において線状圧搾部Ｅｓを構成する１つの円形圧搾部の大きさよりも、孔部Ｈの大きさの方が大きい。なお、ナプキン１の孔部Ｈは、吸収体１０の非肌側面に達するぐらいの深さを有しているが、これに限られない。孔部Ｈの深さは、肌側から肌側シート２と中間シート３を貫通し、吸収体１０まで達していればよい。

本体圧搾部Ｅｂは、着用状態において着用者の膣口が当接すると考えられる領域を囲むような形状に設けられている。図５に示すように、本体圧搾部Ｅｂは、肌側シート２と中間シート３と吸収体１０を厚さ方向から圧搾加工を施して、所望の形状に形成された圧搾部である。圧搾によって、肌側シート２の繊維密度と中間シート３の繊維密度、及び吸収体１０の繊維密度が、圧搾をしていない部分よりそれぞれ大きくなっている。

線状圧搾部Ｅｓ、本体圧搾部Ｅｂ及び孔部Ｈは、以下のように形成することができる。まず、接着剤を用いて接合した肌側シート２と中間シート３を、複数の凸部を有する凸ローラー（不図示）と、表面が平らなアンビルローラー（不図示）との間のロール間隙に通して、肌側シート２の肌側面から圧搾加工を行うことで線状圧搾部Ｅｓを形成する。

続いて、吸収体１０の肌側面に、線状圧搾部Ｅｓを形成した肌側シート２と中間シート３を重ねて、接着剤を用いて接合し、孔部Ｈと本体圧搾部Ｅｂを形成するための複数の凸部を有する凸ローラー（不図示）と、アンビルローラー（不図示）との間のロール間隙に通して、孔部Ｈと本体圧搾部Ｅｂを形成する。孔部Ｈと本体圧搾部Ｅｂを形成するための凸ローラーは、孔部Ｈを形成するために、線状圧搾部Ｅｓを形成する凸ローラーの凸部よりも鋭利なピン形状のピン部を有し、本体圧搾部Ｅｓを形成するために、線状圧搾部Ｅｓを形成する凸ローラーの凸部よりも突出長さが長い凸部を有している。

その後、吸収体１０の非肌側に非肌側シート４等を積層させることで、ナプキン１を得ることができる。なお、肌側シート２や中間シート３等の各部材は、複数の各シートが連続した連続シートを用いて、上記加工を経て、個別に切断してナプキン１を形成するものであってもよい。また、孔部Ｈと本体圧搾部Ｅｂは、必ずしも同じローラー上で同時に形成する必要はなく、別々に形成してもよい。

従来、着用状態において、ナプキン１に排泄物を吸収させると、吸液性及び保湿性が高い綿を用いた肌側シート２がより多くの排泄物を吸収しようとするため、肌側シート２の層で排泄物を拡散してしまい、中間シート３や吸収体１０に排泄物が達しにくい場合があった。そのため、ナプキン１の肌側の面に排泄物が留まりつづけやすくなるため、着用者の肌に排泄物が接した状態になりやすく、不快感やかゆみ、かぶれを感じさせやすい恐れがあった。

この点、図５に示すように、ナプキン１は、線状圧搾部Ｅｓを設けて、肌側シート２と中間シート３の繊維密度をより高くすることで、毛細管現象によって線状圧搾部Ｅｓに排泄物が吸収されやすくすることができる。つまり、肌側シート２で受けた排泄物を線状圧搾部Ｅｓで留めやすくなるため、肌側シート２の層で拡散し続けることを線状圧搾部Ｅｓが抑制することができる。そして、線状圧搾部Ｅｓによって拡散が抑制されと、線状圧搾部Ｅｓが設けられた部分の付近の単位面積当たりの排泄物の量が多くなる。この単位面積当たりの量が多くなった排泄物が孔部Ｈに落ちるように入り込むため、肌側シート２や中間シート３の広い範囲に拡散する前に、孔部Ｈに入った排泄物を吸収体１０に吸収させることができる。孔部Ｈがピン等によって形成された場合には、孔部Ｈの周囲の肌側シート２、中間シート３及び吸収体１０の各繊維密度がより高くなっているため、毛細管現象によって、孔部Ｈは排泄物を吸収しやすくなる。これによって、肌触りを向上させたり、視覚的に柔らかそうな印象を与えるために、肌側シート２に綿を用いた場合でも、肌側シート２で表面的に排泄物が拡散して、ナプキン１から排泄物が漏れてしまったり、排泄物が肌に接触し続けることによる不快感を軽減させることができる。

また、図５等に示すように、線状圧搾部Ｅｓは凹部であるため、排泄物を線状圧搾部Ｅｓに移動させやすく、線状圧搾部Ｅｓのより高い繊維密度によって排泄物を肌側シート２から中間シート３へと厚さ方向に拡散させやすくなり、排泄物を吸収体１０まで導きやすくなる。なお、線状圧搾部Ｅｓをより深く形成して吸収体１０まで圧搾すれば、より排泄物を厚さ方向に拡散させやすくなるとも考えられる。しかし、線状圧搾部Ｅｓを吸収体１０に達するまで深く圧搾すると、吸収体１０やナプキン１が線状圧搾部Ｅｓの剛性によって硬くなってしまい、着用時の肌触りが低下したり、着用時に不快感を与えてしまったりする恐れがある。そのため、線状圧搾部Ｅｓは、肌側シート２と中間シート３のみを圧搾したものとすることがよい。

図１及び図４に示すように、各線状圧搾部Ｅｓは、長手方向と幅方向とそれぞれと交差した斜め形状として配置されていることが好ましい。長手方向や幅方向とそれぞれ並行に配置した場合よりも、肌側シート２において直線的に排泄物が拡散してしまう恐れを軽減させやすくなる。また、各線状圧搾部Ｅｓが曲線であることが好ましい。線状圧搾部Ｅｓの繊維密度がより高いことで、毛細管現象により、線状圧搾部Ｅｓに沿って排泄物が拡散させやすくなり、直線的に排泄物が拡散してしまう恐れを軽減させやすくなる。また、線状圧搾部Ｅｓは、線状圧搾部Ｅｓを設けていない部分より剛性が高いため、線状圧搾部Ｅｓを直線で設けた場合よりも線状圧搾部Ｅｓを起点に折れ曲がってしまう恐れを軽減することもできる。

複数の線状圧搾部Ｅｓによって囲まれた内側領域Ｕを有していることが好ましい。ナプキン１は、図４に示すように、４つの線状圧搾部Ｅｓによって四方を囲まれた複数の略ひし形の内側領域Ｕを有し、略同じ形状、略同じ大きさを有している。上述のとおり、線状圧搾部Ｅｓは、複数の円形状の圧搾部の集合により線状となっていることから、内側領域Ｕの上端は、腹側に位置する２つの線状圧搾部Ｅｓのうち最も腹側に位置する円形状の圧搾部の上端であり、内側領域Ｕの下端は、背側に位置する２つの線状圧搾部Ｅｓのうち最も背側に位置する円形状の圧搾部の下端である。同様に、内側領域Ｕの幅方向の一方側の端、例えば左側の端は、左側に位置する２つの線状圧搾部Ｅｓのうち最も左側に位置する円形状の圧搾部の左側の端であり、地側領域Ｕの幅方向の他方側の端、例えば、右側の端は、右側に位置する２つの線状圧搾部Ｅｓの内最も右側に位置する円形状の圧搾部の右側の端である。なお、ナプキン１の内側領域Ｕの長手方向の長さＬｕは、２４．３ｍｍであり、幅方向の長さＷｕは、２１．２ｍｍである。

肌側シート２の層での平面的な排泄物の拡散を抑制する線状圧搾部Ｅｓを四方に有する内側領域Ｕによって、排泄物を内側領域Ｕの内側に留めやすくなり、肌側シート２で排泄物が平面的に拡散してしまう恐れを軽減させやすくなる。また、複数の内側領域Ｕの中央部がそれぞれ肌側に突出した凸形状を有することが好ましい。具体的には、図６Ａ及び図６Ｂに示すように、肌側シート２と中間シート３の圧縮による内側領域Ｕの長手方向の中央部及び幅方向の中央部がそれぞれ肌側に突出した形状をしていることが好ましい。これを肌側から視認すると、キルティング生地のように見えるため、着用者に対して柔らかそうな印象を与えやすくなる。

さらに、図４に示すように、線状圧搾部Ｅｓ同士の交点を有さない線状圧搾部Ｅｓによって囲まれた内側領域Ｕが複数設けられていることがより好ましい。具体的には、ナプキン１は、内側領域Ｕは４つの線状圧搾部Ｅｓによって囲まれており、その４つの線状圧搾部Ｅｓは、互いに交点を有していない。つまり、内側領域Ｕの周囲には、線状圧搾部Ｅｓと圧搾部が形成されていない領域とが設けられている。例えば、１つの内側領域Ｕａを構成する４つの線状圧搾部Ｅｓのうち、長手方向に隣接する腹側の線状圧搾部Ｅｓａと背側の線状圧搾部Ｅｂについて、線状圧搾部Ｅｓａのうち最も背側に位置する円形状の圧搾部の背側の端と、線状圧搾部Ｅｓｂのうち最も腹側に位置する円形状の圧搾部の腹側の端との間には、圧搾されていない非圧搾部Ｎが設けられている。同様に、内側領域Ｕａの左斜め下に設けられた内側領域Ｕｃを構成する４つの線状圧搾部Ｅｓのうち、幅方向に隣接する右側の線状圧搾部Ｅｓｂと左側の線状圧搾部Ｅｓｃについて、線状圧搾部Ｅｓｂのうち最も左側に位置する円形状の圧搾部の左側の端と、線状圧搾部Ｅｓｃのうち最も右側に位置する円形状の圧搾部の右側の端との間には、圧搾されていない非圧搾部Ｎが設けられている。

線状圧搾部Ｅｓは、線状圧搾部Ｅｓを構成していない部分よりも肌側シート２のうち繊維密度が大きい。そのため、着用状態において肌側シート２で吸収した排泄物は、まず、線状圧搾部Ｅｓに沿って拡散する傾向があるところ、線状圧搾部Ｅｓが連続しない部分を設けることで、排泄物の拡散の速度を軽減させることができる。つまり、排泄物が線状圧搾部Ｅｓに沿って拡散し続けてしまう恐れを軽減しつつ、一旦、非圧搾部Ｎに排泄物を留めやすくすることで、厚さ方向への排泄物の吸収を促進しやすくして、ナプキン１の幅方向の外側及び長手方向の外側から排泄物が漏れてしまう恐れを軽減させることができる。なお、非圧搾部Ｎを構成する幅方向に隣接する右側の線状圧搾部Ｅｓｂと左側の線状圧搾部Ｅｓｃについて、線状圧搾部Ｅｓｂのうち最も左側に位置する円形状の圧搾部の左側の端と、線状圧搾部Ｅｓｃのうち最も右側に位置する円形状の圧搾部の右側の端との間の幅方向の距離が、１．５ｍｍ以上で、５．０ｍｍ未満であることが好ましい。ナプキン１においては、２．０ｍｍである。線状圧搾部Ｅｓｂのうち最も左側に位置する円形状の圧搾部の左側の端と、線状圧搾部Ｅｓｃのうち最も右側に位置する円形状の圧搾部の右側の端との間の幅方向の距離が、１．５ｍｍ未満の場合には、線状圧搾部Ｅｓｂと線状圧搾部Ｅｓｃが連続している場合と同じように排泄物が拡散してしまう恐れがあり、排泄物がナプキン１の幅方向の外側に漏れてしまう恐れがある。一方、線状圧搾部Ｅｓｂのうち最も左側に位置する円形状の圧搾部の左側の端と、線状圧搾部Ｅｓｃのうち最も右側に位置する円形状の圧搾部の右側の端との間の幅方向の距離が５．０ｍｍ以上の場合には、肌側シート２の層での平面的な排泄物の拡散を抑制することが困難となってしまう。

図４の内側領域Ｕａや内側領域Ｕｃのように、少なくとも１つの孔部Ｈが設けられていることが好ましい。具体的には、内側領域Ｕａは１つの孔部Ｈ、内側領域Ｕｃは２つの孔部Ｈがそれぞれ設けられている。内側領域Ｕの内側に設けられた孔部Ｈを設けることで、内側領域Ｕの内側に留められた排泄物を孔部Ｈによって、肌側シート２側から吸収体１０まで厚さ方向に落とすような状態にすることができる。その結果、排泄物を吸収体１０で吸収させやすくなる。

図５に示すように、ナプキン１のうち、孔部Ｈに隣接する隣接部Ｘとし、隣接部Ｘに外側から隣接する外側領域Ｙとしたとき、肌側シート２のうち、隣接部Ｘにおける肌側シート２の綿の繊維密度は、外側領域Ｙにおける肌側シート２の綿の繊維密度より大きいことが好ましい。同様に、中間シート３のうち、隣接部Ｘにおける中間シート３の不織布の繊維密度は、外側領域Ｙにおける中間シート３の不織布の繊維密度より大きく、吸収体１０のうち、隣接部Ｘにおける吸収体１０の液体吸収性繊維の繊維密度は、外側領域Ｙにおける吸収体１０の液体吸収性繊維の繊維密度より大きいことが好ましい。隣接部Ｘに達した排泄物は、より繊維密度が大きい各部材の毛細管現象によって、厚さ方向の非肌側に向かって拡散しやすくなり、吸収体１０まで排泄物を移動させやすくなる。孔部Ｈをピン等で押し込んで形成することで、肌側シート２、中間シート３、吸収体１０の各繊維密度をより大きくすることができる。

図４に示すように、長手方向において隣接する孔部Ｈ１と孔部Ｈ２との間の距離Ｌｈは、１２．０ｍｍであり、内側領域Ｕの長手方向の長さＬｕよりも短いことが好ましい（Ｌｈ＜Ｌｕ）。そのため、特に、ナプキン１のように規則的に孔部Ｈを配置する場合は、内側領域Ｕ内に孔部Ｈが配置されやすくなる。そのため、内側領域Ｕ内に留めた排泄物を吸収体１０へ移動させやすくなる。同様に、幅方向において隣接する孔部Ｈ１と孔部Ｈ２との間の距離Ｗｈは、１４．０ｍｍであり、内側領域の幅方向の長さＷｕよりも短いことがより好ましい（Ｗｈ＜Ｗｕ）。

また、孔部Ｈは、複数の本体圧搾部Ｅｂによって囲まれる最大の領域である本体圧搾領域Ｗの内側に設けられ、本体圧搾領域の外側には設けられないことが好ましい。図７は、本体圧搾領域Ｗについて説明する図である。図７では、ナプキン１の各部材を点線で示し、本体圧搾領域Ｗを実線で示している。図７に示すように、ナプキン１は、中心線Ｘ−Ｘについて対称な本体圧搾部Ｅｂが複数設けられており、本体圧搾領域Ｗは、吸収体１０の幅方向の中央部及び長手方向の中央部である、着用時に着用者の股下となる領域を囲むような形状に配置されている。複数の本体圧搾部Ｅｂは、それぞれ離間して配置されており、最も近接する本体圧搾部Ｅｂ同士の最短距離を直線で結んだ状態で本体圧搾部Ｅｂによって囲まれた領域のうちの最大のものを本体圧搾領域Ｗという。このとき、孔部Ｈは、本体圧搾領域Ｗによって囲まれた領域内に設けられている。一方、線状圧搾部Ｅｓは、本体圧搾領域Ｗの内側及び外側に設けられており、本体圧搾部Ｅｂや本体圧搾領域Ｗに関わらず、肌側シート２及び中間シート３の略全域に設けられている。

線状圧搾部Ｅｓは、キルティング生地のように表面に凹凸を形成することができるため、ナプキン１の肌側面のより広い範囲に線状圧搾部Ｅｓを設けると着用者に対して柔らかいナプキン１であるという印象を与えやすくなる。一方、孔部Ｈを吸収体１０の全域に設けた場合には、着用者対し孔部Ｈから漏れてしまうのではないかという心配を与えてしまったり、ピン等で形成した場合には孔部Ｈの周囲が硬くなり、ナプキン１全体が硬くなりすぎてしまったりする恐れがある。そのため、より広い範囲に線状圧搾部Ｅｓを設けて、柔らかい印象を与えつつ、排泄物を吸収する量が多い本体圧搾領域Ｗの内側に孔部Ｈを設けることで、排泄物を確実に吸収させやすくすることができる。また、非圧搾部Ｎの面積よりも孔部Ｈの面積が小さい方がより好ましい。孔部Ｈをナプキン１の図柄の一部として認識されやすくなり、孔部Ｈによって排泄物が垂直方向に漏れてしまうのではないかという印象を与える恐れを軽減させることができる。なお、肌側シート２と非肌側シート４とを複数の溶着部を設けて溶着する場合には、孔部Ｈの面積が、肌側シート２と非肌側シート４との溶着部の大きさと同じであることがより好ましい。

さらに、図１に示すように、本体圧搾領域Ｗより外側に、孔部Ｈを有さない内側領域Ｕｒを有することが好ましい。本体圧搾領域Ｗより外側に内側領域Ｕｒを設けることで、ナプキン１の柔らかい印象を向上させやすくできる。また、本体圧搾領域Ｗより外側は、排泄物を肌側面から直接吸収することは少ないため、孔部Ｈを過度に設けてナプキン１が硬くなりすぎる恐れを軽減させることができる。

＝＝＝その他の実施の形態＝＝＝
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。また、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更や改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれるのはいうまでもない。例えば、以下に示すような変形が可能である。

上述の実施形態においては、線状圧搾部Ｅｓ、本体圧搾部Ｅｂ、及び孔部Ｈをそれぞれ複数配置したが、これに限られない。それぞれ１つずつ配置してもよいし、又はそれぞれの数をナプキン１の肌触りの度合いや排泄物の量に応じて適宜変更してもよい。同様に、線状圧搾部Ｅｓ、本体圧搾部Ｅｂ、及び孔部Ｈの形状や大きさについても適宜変更可能である。内側領域Ｕの形状や大きさについても適宜変更可能である。

上述の実施形態においては、高吸収性ポリマーが加えられた液体吸収性繊維を成形した吸収性コア１１を用いたが、これに限られない。例えば、高吸収性ポリマーのみからなるシート材の吸収性コア１１であってもよいし、液体吸収性繊維のみからなる吸収性コア１１であってもよい。また、必ずしもカバーシートを用いる必要はなく、吸収性コア１１だけで吸収体１０を形成するものであってもよい。

１ ナプキン（吸収性物品）、
１Ａ 前側部、１Ｂ 中央部、１Ｃ 後側部、１Ｗ ウイング部、
２ 肌側シート、３ 中間シート、
４ 非肌側シート、５ ウイングシート、
６ サイドシート、
８ 中央粘着部、９ ウイング粘着部、
１０ 吸収体、１１ 吸収性コア、１２ カバーシート、
Ｅｓ 線状圧搾部、Ｅｂ 本体圧搾部、
Ｈ 孔部、Ｎ 非圧搾部、Ｕ 内側領域、Ｗ 本体圧搾領域

Claims (10)

1. 互いに直交する長手方向、幅方向、及び厚さ方向を備え、
   吸収体と、
   前記厚さ方向において、前記吸収体より肌側に配置された肌側シートと、
   前記厚さ方向において、前記吸収体と前記肌側シートの間に配置された中間シートと、を有する吸収性物品であって、
   前記肌側シートは、綿を有しており、
   線状圧搾部と孔部を有し、
   前記線状圧搾部は、前記肌側シートと前記中間シートのみを前記厚さ方向に圧搾するように形成されており、
   前記孔部は、前記肌側から前記肌側シート及び前記中間シートを貫通し、且つ前記吸収体に達していることを特徴とする吸収性物品。
2. 請求項１に記載の吸収性物品であって、
   前記線状圧搾部は、前記長手方向及び前記幅方向とそれぞれ交差していることを特徴とする吸収性物品。
3. 請求項２に記載の吸収性物品であって、
   前記線状圧搾部は、曲線であることを特徴とする吸収性物品。
4. 請求項１から３のいずれか１項に記載の吸収性物品であって、
   前記線状圧搾部は、複数配置されており、
   複数の前記線状圧搾部によって囲まれた内側領域が複数設けられており、
   複数の前記内側領域が、それぞれ、中央部が肌側に突出した凸形状を有することを特徴とする吸収性物品。
5. 請求項１から４のいずれか１項に記載の吸収性物品であって、
   前記線状圧搾部は、複数配置されており、
   前記線状圧搾部同士の交点を有さない前記線状圧搾部によって囲まれた内側領域が複数設けられていることを特徴とする吸収性物品。
6. 請求項１から５のいずれか１項に記載の吸収性物品であって、
   前記線状圧搾部は、複数配置されており、
   複数の前記線状圧搾部によって囲まれた内側領域が設けられており、
   １つの前記内側領域に、少なくとも１つの前記孔部が設けられていることを特徴とする吸収性物品。
7. 請求項１から６のいずれか１項に記載の吸収性物品であって、
   前記線状圧搾部及び前記孔部は、それぞれ、複数配置されており、
   複数の前記線状圧搾部によって囲まれた内側領域が設けられており、
   複数の前記孔部は、前記長手方向において隣接する第１孔部及び第２孔部を有し、
   前記長手方向において、
   前記第１孔部と前記第２孔部との間の距離は、前記内側領域の長さよりも短いことを特徴とする吸収性物品。
8. 請求項１から７のいずれか１項に記載の吸収性物品であって、
   前記肌側シート、前記中間シート及び前記吸収体を前記厚さ方向に圧搾するように形成された複数の本体圧搾部を有し、
   前記孔部は、複数の前記本体圧搾部によって囲まれる最大の領域である本体圧搾領域の内側に設けられ、前記本体圧搾領域の外側には設けられておらず、
   前記線状圧搾部は、前記本体圧搾領域の内側及び外側に設けられていることを特徴とする吸収性物品。
9. 請求項８に記載の吸収性物品であって、
   前記線状圧搾部は、複数配置されており、
   複数の前記線状圧搾部によって囲まれた内側領域が複数設けられており、
   前記本体圧搾領域の外側に、前記孔部を有さない前記内側領域が設けられていることを特徴とする吸収性物品。
10. 請求項１から９のいずれか１項に記載の吸収性物品であって、
    前記孔部に隣接する隣接部における前記肌側シートの繊維密度は、前記隣接部に外側から隣接する外側領域における前記肌側シートの繊維密度よりも大きいことを特徴とする吸収性物品。

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