JP2020074981A - 耐火部材、耐火構造 - Google Patents

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Abstract

【課題】 施工性に優れ、安定した品質の耐火構造を得ることが可能な、耐火部材等を提供する。【解決手段】 耐火部材1は、主に発泡体3、芯材5、熱膨張部材7、不燃材9、袋体11等から構成される。発泡体3は、弾性変形可能な部材であり、例えばウレタン発泡体などの可燃性のスポンジであることが望ましい。発泡体3には、芯材5が積層される。芯材5は、容易に丸めることが可能であるとともに、筒状となった際に、筒の軸方向に対して剛性を確保するものである。芯材5には、火災時等の熱によって膨張する熱膨張部材7が積層される。熱膨張部材7には、弾性変形可能な不燃材9が積層される。発泡体3、芯材5、熱膨張部材7及び不燃材9は、袋体11に収容されて、袋体11によって、一括して覆われる。【選択図】図1

Description

本発明は、例えば、区画部への配管やケーブルなどの貫通部に対して耐火性能を確保するための耐火部材等に関するものである。
建造物等において、区画部で区画された各部屋に配管やケーブル(以下、単に長尺体と称する)が敷設される場合がある。この場合、例えば一方の部屋で火災が発生すると、長尺体を伝って火災が建造物全体に広がり、甚大な被害をもたらすおそれがある。
このような区画部を貫通する長尺体の耐火構造では、長尺体と貫通孔との隙間を埋める必要がある。しかし、区画部に挿通される長尺体の外径は一定ではなく、長尺体の種類に応じて貫通孔と長尺体の隙間は一定ではない。
このような、異なる外径の長尺体に適用するために、長尺体の外周に弾性変形可能な発泡体を配置する方法がある(例えば特許文献1)。また、長尺体の外周に配置される耐火部材の内周面に複数のヒダ片を設け、ヒダ片を長尺体の外周面に密着させる方法がある(例えば特許文献2)。
また、紐状の耐火部材を用いて、紐状の耐火部材を長尺体の外周に複数回巻き付けて隙間を埋める方法がある(特許文献3)。この場合、長尺体と貫通孔との内面との隙間に応じて、紐状の耐火部材の巻き付け回数を変えることで、異なる隙間に対しても適用が可能である。
特開2018−105039号公報 特開2017−128960号公報 特開2001−187969号公報
通常、特許文献1や特許文献2のような方法では、まず、貫通孔に予め挿通された長尺体に対して、貫通孔の外部において耐火部材を長尺体の外周に配置する。次いで、長尺体に沿って耐火部材を貫通孔の内部に移動させることで、貫通孔と長尺体との隙間に耐火部材が配置されて耐火構造が形成される。
しかし、複数種類の長尺体に対しても適用可能とするため、長尺体の周囲に配置される発泡体やヒダ片は、長尺体の外形に対して容易に変形させる必要がある。このため、発泡体やヒダ片は柔軟な部材で構成される。このため、耐火部材を長尺体の外周に配置して、貫通孔内へスライド移動させる際に、発泡体やヒダ片が損傷する恐れがある。しかし、長尺体と接触する耐火部材の剛性を高めると、長尺体の外形への追従性が低くなり、十分に貫通孔と長尺体との隙間を埋めることができない。
一方、特許文献3は、長尺体と貫通孔との隙間に応じて、紐状部材の巻き付け回数を変えることで、貫通孔と長尺体との隙間を埋めることが可能である。しかし、隙間が大きくなれば、巻き付け回数が多くなり、施工性が悪い。特に、狭隘な場所での作業では、長い紐状部材を取り扱って、長尺体の外周に多数回巻き付ける作業は容易ではない。また、巻き付け回数を現場で調整する必要があるため、作業者による施工品質のばらつきが生じやすい。
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、施工性に優れ、安定した品質の耐火構造を得ることが可能な耐火部材等を提供することを目的とする。
前述した目的を達成するため、第1の発明は、長尺体の周りに巻き付けられて用いられる耐火部材であって、弾性変形可能な可燃性の発泡体と、前記発泡体に積層される熱膨張部材と、前記熱膨張部材に積層され、弾性変形可能な不燃材と、前記発泡体、前記熱膨張部材及び前記不燃材を一括で覆う袋体と、を具備することを特徴とする耐火部材である。
前記発泡体と前記熱膨張部材との間に、可燃性の芯材が設けられることが望ましい。
耐火部材を丸めて両端部をラップさせた位置を挟み込んで固定することが可能な金具を具備してもよい。
第1の発明によれば、柔軟で弾性変形可能な発泡体が用いられるため、長尺体の形状に容易に追従し、貫通孔との隙間を埋めることができる。また、発泡体等がすべて袋体に収容されるため、発泡体が露出せず、発泡体と長尺体とが直接接触することがない。このため、施工時における発泡体等の損傷を抑制することができる。
また、熱膨張部材よりも長尺体側(内周側)に配置される発泡体が可燃性であるため、火災等が生じた際に、発泡体が即座に燃焼して、熱膨張部材の膨張の妨げとなることがない。一方、熱膨張部材よりも貫通孔内面側(外周側)には、弾性変形可能な不燃材が設けられる。このため、耐火性能を確保するとともに、貫通孔内面の凹凸等に追従可能なクッションとして機能する。
また、発泡体と熱膨張部材との間に、可燃性の芯材を設けることで、耐火部材を長尺体に沿ってスライドさせて、貫通孔に耐火部材を押し込む際に、耐火部材の押し込み方向への潰れを抑制して、効率よく耐火部材を貫通孔と長尺体との隙間に挿入することができる。また、発泡体と同様に、熱膨張部材よりも長尺体側(内周側)に配置される芯材が可燃性であるため、火災等が生じた際に、発泡体とともに芯材は即座に燃焼して、熱膨張部材の膨張の妨げとなることがない。
また、耐火部材を丸めて両端部をラップさせた位置を挟み込んで固定することが可能な金具を設けることで、耐火部材を貫通孔に移動させる際にもラップ部が開くことがなく、作業性が良好である。
第2の発明は、第1の発明にかかる耐火部材が用いられ、区画部に形成された貫通孔に長尺体が挿通され、前記貫通孔の内部において、前記耐火部材が前記長尺体の周りに巻き付けられて前記長尺体と前記貫通孔の内面との隙間が前記耐火部材で塞がれることを特徴とする耐火構造である。
第2の発明によれば、発泡体によって、確実に長尺体と貫通孔の内面との隙間を埋めることができるとともに、袋体によって、発泡体の損傷を抑制することが可能である。このため、施工品質が安定した耐火構造を得ることができる。
第3の発明は、第1の発明にかかる耐火部材が用いられ、区画部に形成された貫通孔に長尺体が挿通され、前記貫通孔の内部において、前記耐火部材が前記長尺体の周りに巻き付けられて前記長尺体と前記貫通孔の内面との隙間が前記耐火部材で塞がれる、前記金具の一部が、前記区画部の表面と接触して、前記耐火部材の位置決めがなされることを特徴とする耐火構造である。
第3の発明によれば、第2の発明と同様の効果を得ることができるとともに、金具によってラップ部が保持されているため、施工が容易である。また、金具によって、長尺体の周囲に筒状に巻き付けた状態において、耐火部材の軸方向の剛性を高めることができるため、貫通孔への挿入時に耐火部材の押し込み方向の潰れ等を抑制することができる。さらに、金具によって、貫通孔に対する耐火部材の位置決めがなされるため、安定した耐火性能を得ることができる。
本発明によれば、施工性に優れ、安定した品質の耐火構造を得ることが可能な耐火部材等を提供することができる。
耐火部材1を示す分解斜視図。 耐火構造を施工する工程を示す図。 耐火構造を施工する工程を示す図。 耐火部材1を示す長尺体13の外周に巻き付けた状態の断面図。 耐火構造20を示す図 耐火部材用金具21を示す斜視図。 耐火部材用金具21の使用方法を示す図。 耐火部材用金具21によって、耐火部材1を挟み込む工程を示す図。 他の耐火構造を施工する工程を示す図 耐火部材用金具21の固定部を固定した状態を示す図。 (a)は、耐火構造20aを示す図、(b)は、耐火部材用金具21の固定部が解除された状態を示す図。 耐火部材用金具21aを示す斜視図。 耐火部材用金具21bを示す斜視図。 耐火構造20bを示す図。
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は、本発明にかかる耐火部材1を示す分解斜視図である。耐火部材1は、主に発泡体3、芯材5、熱膨張部材7、不燃材9、袋体11等から構成される。
発泡体3は、弾性変形可能な部材であり、例えばウレタン発泡体などの可燃性のスポンジであることが望ましい。すなわち、発泡体3は、厚み方向に容易に変形可能な柔軟な部材からなる。また、発泡体3は、例えば波形発泡体とすることが望ましい。すなわち、発泡体3の一方の面には、波形の山部と谷部が幅方向およびこれと垂直な長手方向に対して規則的に配置される。
発泡体3には、芯材5が積層される。芯材5は、容易に丸めることが可能であるとともに、筒状となった際に、筒の軸方向に対して剛性を確保するものである。芯材5としては、可燃性の部材が用いられ、例えばある程度の厚みの厚紙や樹脂板を適用することができる。
芯材5には、火災時等の熱によって膨張する熱膨張部材7が積層される。すなわち、可燃性の芯材5は、発泡体3と熱膨張部材7との間に設けられる。なお、前述したように、芯材5は、耐火部材1を丸めた際の軸方向の剛性を確保し、後述する貫通孔への挿入性を高めるためのものであるため、長尺体と貫通孔との間に十分なクリアランスがあり、挿入が容易であれば、必ずしも必要ではない。したがって、芯材5が不要の場合には、発泡体3と熱膨張部材7とが直接接するように積層される。
熱膨張部材7には、弾性変形可能な不燃材9が積層される。不燃材9は、厚み方向に変形可能な柔軟な部材からなり、例えば、セラミックファイバウールやロックウールなどが適用可能である。
発泡体3、芯材5、熱膨張部材7及び不燃材9は、袋体11に収容され、袋体11によって一括して覆われる。この際、発泡体3は、山部と谷部により形成される凹凸形状が外側(芯材5とは逆側であって、袋体11と接する側)となるように配置される。なお、袋体11は、発泡体3や不燃材9の厚み方向の変形の妨げとならず、追従可能な柔軟な部材からなり、例えば、不織布等からなる。
次に、耐火部材1を用いた耐火構造の施工方法について説明する。図2〜図5は、耐火構造の施工工程を示す図である。まず、図2に示すように、防火区画部である区画部19に貫通孔17を形成する。区画部19は、例えば建築物などの構造物の内部空間を区画する壁である。次に、区画部19に形成された貫通孔17に長尺体13を挿通する。長尺体13は、例えばケーブルや配管である。なお、複数本の長尺体を挿通してもよい。
次に、図3に示すように、長尺体13に耐火部材1を取り付ける。図4は、長尺体13に耐火部材1を巻き付けた状態の断面図である。このように、耐火部材1は、長尺体13の周りに巻き付けられて用いられる。この際、耐火部材1の最も内側であって、長尺体13と接触する側に発泡体3が配置され、最も外側に不燃材9が配置される。
長尺体13に耐火部材1を巻き付けた際に、耐火部材1の両端部が互いに重なり合い、ラップ部15が形成される。このようにすることで、耐火部材1同士の間に隙間が形成されず、長尺体13の全周を耐火部材1で覆うことができる。
ここで、熱膨張部材7よりも内側に配置される発泡体3と芯材5は、可燃性部材で構成される。通常、火災時には、長尺体13側(耐火部材1の内側)から高温となり、耐火部材1の内周側に配置される発泡体3と芯材5が即座に燃焼する。このため、熱膨張部材7が短時間で加熱され、膨張を即座に開始させることができる。この際、熱膨張部材7の内側の発泡体3等は焼失しているため、長尺体13方向への熱膨張部材7の膨張の妨げとなることがない。
一方、熱膨張部材7の外周側には、不燃材9が配置される。このため、熱膨張部材7と貫通孔内面との間を確実に塞ぐことができる。また、不燃材9は火災時にも焼失しないため、熱膨張部材7を、優先して内側に膨張させることができる。すなわち、熱膨張部材7の膨張方向を制御することができる。
次に、図5に示すように、長尺体13に沿って丸めた状態の耐火部材1を滑らして移動させ、貫通孔17に押し込む。耐火部材1の厚みは、貫通孔17と長尺体13の隙間よりも厚いが、発泡体3や不燃材9が潰れて変形することで、貫通孔17へ挿入することができる。この際、芯材5が配置されているため、耐火部材1を貫通孔17内に押し込む際に、筒状の耐火部材1が軸方向に潰れてしまうことを抑制することができる。
貫通孔17内に挿入された耐火部材1は、発泡体3及び不燃材9の弾性復元によって長尺体13と貫通孔17との隙間を埋めて塞ぐことができる。より具体的には、発泡体3は、長尺体13の外形に追従して変形し、長尺体13の外周面に袋体11を介して密着する。また、不燃材9は、貫通孔17の内面形状に追従して変形し、貫通孔17の内周面に袋体11を介して密着する。
なお、前述した様に、発泡体3の内面側には、凹凸形状が形成される。凹凸形状の山部は、長尺体13と接触して容易につぶれる。したがって、長尺体13の外径や本数が変わっても、同一の耐火部材1で対応することができる。
以上により、貫通孔17の内部において、耐火部材1が長尺体13の周りに巻き付けられ、長尺体13と貫通孔17の内面との隙間が耐火部材1で塞がれた耐火構造20を施工することができる。
以上説明したように、本発明にかかる耐火部材1によれば、最内層に発泡体3が配置され、長尺体13の外径に応じて、発泡体3が容易に潰れるため、一つの耐火部材1によって、複数の径の長尺体13に適用することができ、確実に耐火部材1を長尺体13の外周に密着させることができる。また、長尺体13と発泡体3とが直接接触しないため、長尺体13に沿って耐火部材1を移動させる際などにおいて、発泡体3が損傷することを抑制することができる。
また、筒状に耐火部材1を丸めた際、発泡体3や不燃材9等は、その軸方向にも容易に変形するが、芯材5を用いることで、筒形状を保持することができる。このため、貫通孔17内部への耐火部材1の挿入が容易となる。
また、熱膨張部材7の内周側には可燃性の部材を用いることで、火災の際に、発泡体3と芯材5とが焼失し、熱膨張部材7を短時間で膨張を開始させることができ、長尺体13方向への膨張の妨げとなることがない。
次に、第2の実施形態について説明する。図6は、耐火部材用金具21を示す斜視図である。耐火部材用金具21は、長尺体13の周りに巻き付けられる耐火部材1に用いられる金具である。耐火部材用金具21は、バネ鋼などの線材が折り曲げられて一体で形成される。耐火部材用金具21は、例えばフォーミング加工によって加工される。
耐火部材用金具21は、主に、クリップ部23a、23b、位置決め部25、固定部27a、27b等から構成される。クリップ部23a、23bは、耐火部材1を挟み込む部位である。通常時には、クリップ部23a、23bは、一方の方向に開いた状態であり、開口側から、クリップ部23a、23bの間に、耐火部材1を挿入することができる。
位置決め部25は、クリップ部23a、23bの挟み込み方向(対向方向)に対して外側に屈曲して形成される。より詳細には、位置決め部25は、クリップ部23a、23bの開口側であって、耐火部材用金具21の端部近傍に形成され、クリップ部23a、23bの開口部よりも外側に向けて屈曲して形成される。
固定部27a、27bは、それぞれクリップ部23a、23bの端部に形成される。固定部27aは、先端側に向かって凸形状に屈曲した部位であり、固定部27bは、固定部27aと対向した位置に略直線状に形成される。固定部27a、27bは、クリップ部23a、23bで耐火部材1を挟む込んだ状態で保持する部位である。より詳細には、クリップ部23a、23bを閉じ、固定部27aを固定部27bに引っ掛けることで、クリップ部23a、23bが閉じた状態で固定される。また、固定部27a、27bの引っ掛かりを解除することで、クリップ部23a、23bが閉じた状態が解放される。
なお、耐火部材用金具21の形状は図示した例には限られず、上述した機能を奏する部位を有すれば、他の形態であってもよい。
次に、耐火部材用金具21と耐火部材1を用いた耐火構造の施工方法について説明する。図7(a)は、前述したように、耐火部材1を長尺体13の外周に巻き付けた状態を示す図である。前述したように、耐火部材1の両端部は互いに重なり合い、ラップ部15が形成される。
次に、耐火部材1を丸めて両端部をラップさせた位置に、耐火部材用金具21を挿入する(図中矢印A)。図7(b)は、耐火部材用金具21を取り付けた状態を示す図である。この際、クリップ部23a、23bによってラップ部15が挟み込まれて、ラップ部15を固定することができる。より詳細には、耐火部材1と長尺体13との隙間にクリップ部23bを挿入し、クリップ部23aは、ラップ部15の外周に配置される。挟み込まれたラップ部15は、クリップ部23a、23bによってわずかに潰される。
図8(a)は、耐火部材1のラップ部15を耐火部材用金具21で挟み込んだ状態を示す側面概念図である。このように、耐火部材1のラップ部15は、耐火部材用金具21のクリップ部23a、23bによって挟み込まれるため、ラップ部15が開くことがない。また、ラップ部15が、クリップ部23a、23bによってわずかに潰されるため、厚みをやや薄くすることができる。
次に、図8(b)に示すように、クリップ部23a、23bを閉じていくと(図中矢印B)、耐火部材1のラップ部15がさらに潰されていく。さらに、クリップ部23a、23bを閉じていくと、図8(c)に示すように、固定部27aを固定部27bに引っ掛けて(図中矢印C)、クリップ部23a、23bを固定することができる。すなわち、ラップ部15を潰した状態で固定することができる。
次に、図9(a)に示すように、耐火部材用金具21が取り付けられた金具付きの耐火部材1を、長尺体13に沿って貫通孔17の方向へ移動させる(図中矢印D)。この際、位置決め部25は、貫通孔17とは逆側に向けて配置されている。
図9(b)に示すように、位置決め部25が区画部19の表面と接触するまで、金具付きの耐火部材1を長尺体13に沿って移動させることで、貫通孔17の内部に耐火部材1を配置することができる。すなわち、耐火部材1のラップ部15が、耐火部材用金具21のクリップ部23a、23bで挟み込まれた状態で、位置決め部25が区画部19の表面と接触して、貫通孔17に対する耐火部材1の位置決めがなされる。
図10は、ラップ部15がクリップ部23a、23bで挟み込まれて潰された状態で貫通孔17の内部に配置された状態を示す正面概念図である。前述したように、貫通孔17と長尺体13との隙間よりも耐火部材1の厚みが厚いため、耐火部材1を貫通孔17に挿入する際には、耐火部材1を潰しながら挿入する必要がある。
一方、ラップ部15は、耐火部材1同士が重なり合っているため、特に厚みが厚くなる部位である。このため、ラップ部15は、貫通孔17への挿入の際、最も挿入しにくい部位である。本実施形態では、耐火部材1に耐火部材用金具21が用いられているため、ラップ部15が潰されて貫通孔17への挿入性を高めることができる。また、耐火部材用金具21は、剛性を有するため、耐火部材用金具21(位置決め部25)を貫通孔方向に押し込むだけで、耐火部材1が押し込み方向へ潰れることなく、貫通孔17に挿入することができる。
次に、図11(a)に示すように、金具付きの耐火部材1を貫通孔17内に配置した後に、固定部27a、27bを解除して、クリップ部23a、23bを開放する(図中矢印E)。これにより、潰されていたラップ部15の潰れが開放される。
図11(b)は、クリップ部23a、23bによるラップ部15の潰れが解放された状態を示す正面概念図である。クリップ部23a、23bを開放することで、耐火部材1は、発泡体3及び不燃材9の復元力で元の厚みに戻ろうとする。このため、耐火部材1によって貫通孔17と長尺体13との隙間を確実に埋めて、耐火部材1を両者に密着させることができる。
第2の実施形態によれば、耐火部材用金具21を用いることで、ラップ部15がクリップ部23a、23bで挟み込まれた金具付き耐火部材を得ることができる。このような金具付き耐火部材によれば、ラップ部15がクリップ部23a、23bで挟み込まれて固定されるため、作業時にラップ部15が開くことがない。
また、ラップ部15を潰すことができるため、貫通孔17へ耐火部材1を挿入するのが容易となる。また、耐火部材用金具21の剛性によって、貫通孔17内で耐火部材1が軸方向に潰れてしまうことがなく、貫通孔17内の所定の範囲に耐火部材1を配置することができる。また、貫通孔17へ挿入した後は、クリップ部23a、23bの固定を解除することで、耐火部材1の潰れを復元して、確実に、貫通孔17と長尺体13との隙間を埋めることができる。
なお、固定部27a、27bは、必ずしも必要ではない。例えば、固定部23aを指で押さえて閉じた状態を保持して、耐火部材1を貫通孔17に挿入した後、固定部23aを離せば、クリップ部23a、23bが解放される。この際には、固定部23aの凸形状は、クリップ部23a、23bを閉じる際のつまみとして機能する。
また、位置決め部25が貫通孔17の外側の区画部19と接触するまで、耐火部材1を貫通孔に押し込むだけで、貫通孔17に対する耐火部材1の位置を容易に決めることができる。このため、貫通孔17に対する耐火部材1の端部位置を容易に合わせることができ、作業者によらず、安定した施工品質を確保することができる。
また、耐火部材用金具21は、線材が折り曲げられて形成される。このため、耐火部材1に対し、耐火部材用金具21の影になる部分がほとんどなく、火災等の際には、内部の熱膨張部材7の膨張の妨げとなることがない。
なお、図12に示すような耐火部材用金具21aを用いることもできる。耐火部材用金具21aは、耐火部材用金具21とほぼ同様であるが、固定部27bの脇に挿入部29が形成され、クリップ部23aの一部に屈曲部31が形成される点で異なる。
挿入部29は、固定部27bの脇において、前方に向かって凸形状に屈曲する部位である。すなわち、挿入部29は固定部27aと同様の形態である。固定部27aの先端を固定部27bの下部に挿入する際に、挿入部29は、固定部27aとの干渉を避ける部位となる。
挿入部29は、固定部27bの脇に形成されるため、平面視において、固定部27aと挿入部29とはずれた位置に形成される。このため、固定部27aを挿入部29に挿入する際には、固定部27aを少し横にずらしながら挿入部29に誘導して、挿入部29に挿入された後に、固定部27aを固定部27bと引っ掛かる位置に戻す。このようにすることで、固定部27a、27bの固定が容易となる。
また、屈曲部31は、クリップ部23aの側方に向けて突出する部位である。通常、線材をフォーミング加工する際には、線材の形状加工後の端部を切断するために、切断部を製品部の線材と重ならない位置とするのが製造上、望ましいため、クリップ部23a、23bを超えて長く突出させる必要があるが、屈曲部31を形成することで、よりコンパクトな耐火部材用金具21aを得ることができる。
また、クリップ部23aの一部に屈曲部31を形成することで、クリップ部23aとクリップ部23bとで耐火部材1を挟み込む際、クリップ部23aの変形の起点が屈曲部31近傍となる。このため、クリップ部23aの剛性を高めて、クリップ部23a、23bによるクリップ力を高めることができる。このように、耐火部材用金具21aも耐火部材用金具21と同様に利用することができる。
また、より簡易な構造として、図13に示す耐火部材用金具21bを用いてもよい。耐火部材用金具21bは、金属製の板状部材を折り曲げて形成され、固定部等は形成されない。
耐火部材用金具21bでは、一方の端部が折り曲げられて位置決め部25となる。また、耐火部材用金具21bの他方の端部が、位置決め部25とは逆側にコの字状に折り返されて、互いに対向する部位が、クリップ部23a、23bとなる。なお、クリップ部23bは、耐火部材用金具21bの全長に対して十分に短い。
図14は、耐火部材用金具21bを用いた耐火構造20bを示す図である。耐火部材用金具21bでは、クリップ部23a、23bの間隔が固定であるため、耐火部材1を挟み込んだ状態を開放することはできない。このため、この部位は、クリップ部23a、23bで挟み込まれて潰された状態が維持される。クリップ部23a、23b以外の部位では、耐火部材1は挟み込まれていないため、貫通孔17の内部で耐火部材1の弾性復元力によって長尺体13及び貫通孔17内面に密着して、両者の隙間を埋めることができる。
この場合でも、位置決め部25によって、耐火部材1の位置決めが容易である。また、ラップ部15の一部をクリップ部23a、23bで固定することができるため、ラップ部15の開きを抑制することができる。また、貫通孔17に対して挿入される先端側のラップ部15を潰しているため、貫通孔17への挿入作業を容易にすることができる。このように、金具付き耐火部材としては、少なくとも、耐火部材1を挟み込むクリップ部23a、23bと位置決め部25とを有すれば、両者の効果を得ることができる。
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
1………耐火部材
3………発泡体
5………芯材
7………熱膨張部材
9………不燃材
11………袋体
13………長尺体
15………ラップ部
17………貫通孔
19………区画部
20、20a、20b………耐火構造
21、21a、21b………耐火部材用金具
23a、23b………クリップ部
25………位置決め部
27a、27b………固定部
29………挿入部
31………屈曲部

Claims (5)

  1. 長尺体の周りに巻き付けられて用いられる耐火部材であって、
    弾性変形可能な可燃性の発泡体と、
    前記発泡体に積層される熱膨張部材と、
    前記熱膨張部材に積層され、弾性変形可能な不燃材と、
    前記発泡体、前記熱膨張部材及び前記不燃材を一括で覆う袋体と、
    を具備することを特徴とする耐火部材。
  2. 前記発泡体と前記熱膨張部材との間に、可燃性の芯材が設けられることを特徴とする請求項1記載の耐火部材。
  3. 耐火部材を丸めて両端部をラップさせた位置を挟み込んで固定することが可能な金具を具備することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の耐火部材。
  4. 請求項1から請求項3のいずれかに記載の耐火部材が用いられ、
    区画部に形成された貫通孔に長尺体が挿通され、
    前記貫通孔の内部において、前記耐火部材が前記長尺体の周りに巻き付けられて前記長尺体と前記貫通孔の内面との隙間が前記耐火部材で塞がれることを特徴とする耐火構造。
  5. 請求項3に記載の耐火部材が用いられ、
    区画部に形成された貫通孔に長尺体が挿通され、
    前記貫通孔の内部において、前記耐火部材が前記長尺体の周りに巻き付けられて前記長尺体と前記貫通孔の内面との隙間が前記耐火部材で塞がれ、
    前記金具の一部が、前記区画部の表面と接触して、前記耐火部材の位置決めがなされることを特徴とする耐火構造。
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