JP2020073476A - ヘキサノールの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】触媒の存在下でセルロース系バイオマス中のセルロースからヘキサノールを、ヘミセルロースからペンタノールを効率よく得ることのできるヘキサノール/ペンタノールの製造方法の提供。【解決手段】Ir−Re(イリジウム−レニウム)系触媒の存在下且つセルロース/ヘミセルロースを分解する温度において、水相中のセルロース系バイオマスを加水分解し糖化させるとともに水素化分解させ、これと隣接配置された液体の炭化水素からなる油相にヘキサノール/ペンタノールを溶解させて得ることを特徴とする。【選択図】図1
Description
本発明は、セルロース系バイオマスからヘキサノールを製造する方法に関し、特に、触媒の存在下でセルロース系バイオマス中のセルロースからヘキサノールを高い生産効率で得るための製造方法に関する。
植物などを由来とするセルロース系バイオマスから燃料用などのアルコールを製造する方法が提案されている。1つの例として、バイオマス中のセルロースを加水分解すると糖化し単糖類のグルコースとなり、更に、水素化すると炭素数が6の糖アルコールであるソルビトールが主に得られる。この糖アルコールを水素化分解するとOH基の数の減ったアルコールが得られる。ここで、セルロースから炭素数6の糖アルコールであるソルビトールへの変換、及び、ソルビトールからOH基の数の減ったアルコールへの変換については、それぞれ触媒を用いた変換方法が提案されている。
例えば、特許文献1では、スルホ基の結合した担体に貴金属触媒としてルテニウム若しくはパラジウムを担持させた触媒を用いて非食性バイオマスを糖化する方法を開示している。糖化のための貴金属触媒としては、金、銀、白金、ロジウム、イリジウム、オスミウム等も知られているが、セルロース等の分解しにくい非食性バイオマスを糖化するには、ルテニウムとパラジウムが特に優れ、グルコース、スクロース、フルクトース、オリゴ糖(2〜4糖)、ヒドロキシメチルフルフラール(5−HMF)等を得ることができるとしている。ここで、グルコース収率を高めるには、スルホ基の結合した担体に特定の結晶化度のセルロースの炭化物を用いることが好ましいと述べている。
また、特許文献2では、固体担体に8〜11族に属する遷移金属を担持した固体触媒を用いて、水存在下で且つ水素分圧雰囲気下でセルロースを加水分解、水素化して糖アルコール、特に、ソルビトール及び/又はマンニトールを製造する方法を開示している。ここで、固体担体は、シリカ、アルミナ、シリカ−アルミナ、ゼオライト、チタニア、ジルコニア、活性炭から選択され、遷移金属は、白金、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、イリジウム、ニッケル、コバルト、鉄、銅、銀及び金から選択されるとしている。
一方、特許文献3では、活性化された酸化ジルコニウムからなる支持体に触媒金属を支持させ、水相環境で水素とともに糖アルコールを導いて、ポリオール及び/又はより短い炭素鎖主鎖を有するアルコールに変換する方法を開示している。触媒活性金属としては、銅、ニッケル、スズ、ルテニウム、レニウム、白金、パラジウム、コバルト、鉄などを挙げている。また、得られるアルコールとしては、プロピレングリコール(1,2−プロパンジオール)、エチレングリコール、トリメチレングリコール(1,3−プロパンジオール)、グリセリン、メタノール、エタノール、プロパノール、及びブタンジオールを挙げている。
更に、非特許文献1では、水素化と酸の能力を有する水素化分解触媒Ir−ReOx/SiO2について、ソルビトールやキシリトールといった糖アルコールを炭素鎖の切断や異性化なく炭化水素に変換し得ることを開示している。
冨重圭一、先端研究助成基金助成金(最先端・次世代研究開発支援プログラム) 実施状況報告書(平成24年度)
各種工業用用途において、炭素数のより大きなアルコールを求められることがある。ここで、化学式C6H14O6で表されるソルビトールから得られる最も炭素鎖の長いアルコールはヘキサノールである。また、化学式C5H12O5で表されるキシリトールから得られる最も炭素鎖の長いアルコールはペンタノールである。このヘキサノール又はペンタノールを得るにあたっては、セルロース又はヘミセルロースから炭素鎖の切断なく効率よく変換を行うことが必要とされる。
本発明は、上記したような状況に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、触媒の存在下でセルロース系バイオマス中のセルロースから主にヘキサノールを効率よく得ることのできるヘキサノールの製造方法を提供することにある。なお、以下において特に断りのない限り、「ヘキサノール」は直鎖で1価のアルコールであり、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、3−ヘキサノールをすべて含み得るものとする。また、「ペンタノール」は直鎖で1価のアルコールであり、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノールをすべて含み得るものとする。
本発明者らは、セルロースからグルコース、ソルビトールを経てヘキサノールを得る一連の工程、又は、ヘミセルロースからキシロース、キシリトールを経てペンタノールを得る一連の工程を単一の反応容器内で行って、ヘキサノール/ペンタノールを効率よく生産し得る製造方法について検討した。つまり、単一の触媒下で一連の工程を行わせるにあたっては、同一環境下で複数の工程が効率よく進行するよう、考慮しなければならない。ここで、セルロース/ヘミセルロースの加水分解の工程では、高温での反応が望ましい。一方、ソルビトールからヘキサノールを得る工程、又は、キシリトールからペンタノールを得る工程では、水素化分解において炭素鎖の切断を抑制するよう、低温での反応が望ましい。
そこで、本発明によるセルロース系バイオマス中のセルロースからヘキサノールを製造する方法は、Ir−Re(イリジウム−レニウム)系触媒の存在下且つセルロースを分解する温度において、水相中のセルロース系バイオマスを加水分解し糖化させるとともに水素化分解させ、これと隣接配置された液体の炭化水素からなる油相にヘキサノールを溶解させて得ることを特徴とする。
かかる発明によれば、セルロースからヘキサノールを得るまでの一連の工程を単一の反応容器内において効率よく行い得る。ここで、Ir−Re系触媒では、セルロース系バイオマスから比較的低い温度でセルロースを加水分解でき、かかる温度であればソルビトールの炭素鎖の切断を抑制しつつヘキサノールを得ることができる。
また、上記した発明において、前記水相上に前記油相を層状に隣接配置することを特徴としてもよい。かかる発明によれば、単一の容器内に与えられる油相にヘキサノールを回収し得て、セルロースからヘキサノールを得るまでの一連の工程を単一の反応容器内において効率よく行い得る。
また、上記した発明において、前記炭化水素は飽和炭化水素又は芳香族炭化水素であることを特徴としてもよい。また、上記した発明において、前記炭化水素の沸点は1MPaで140℃以上であることを特徴としてもよい。かかる発明によれば、単一の容器内に与えられる特定の油相にヘキサノールを効率よく回収し得て、セルロースからヘキサノールを得るまでの一連の工程を単一の反応容器内において効率よく行い得る。
また、上記した発明において、前記セルロース系バイオマスを可溶化処理する前処理を含むことを特徴としてもよい。かかる発明によれば、より低温にてセルロースの加水分解をできて、セルロースからヘキサノールを得るまでの一連の工程を単一の反応容器内において効率よく行い得る。
また、上記した発明において、前記触媒はIr−ReOx/SiO2であることを特徴としてもよい。更に、上記した発明において、前記触媒のIrに対するReのモル比が1以上であることを特徴としてもよい。かかる発明によれば、炭素鎖の切断を抑制でき、セルロースからヘキサノールを得るまでの一連の工程を単一の反応容器内において効率よく行い得る。
以下に、本発明のヘキサノールの製造方法について詳細を説明する。
本発明のヘキサノールの製造方法は、セルロース系バイオマスから直鎖のモノアルコールであるヘキサノールを製造する方法である。ここで、セルロース系バイオマスとしては、セルロース及び/又はヘミセルロースを主として含むものであれば特に限定されないが、例えば、稲藁や麦藁等の藁類、籾殻、草本類などの農業系バイオマス、林地残材、製材所廃材、剪定枝、果樹剪定枝、建築解体廃材、新増築廃材などの木質系バイオマス、または、紙ごみ、廃綿繊維、飲食料品残渣などの廃棄物系バイオマス等が好ましい。
図1は、本発明におけるヘキサノールを得るための反応の一例を示す図である。加水分解工程では、セルロース系バイオマス中のセルロースを加水分解し糖化させ、炭素数が6のグルコースを得る。さらに、水素化分解工程では、グルコースを水素化して炭素数が6の糖アルコールであるソルビトールを生成させ、さらに水素化分解反応によって炭素数が6のヘキサノールを得る。つまり、本発明では、セルロース系バイオマスを加水分解し糖化させるとともに、これを水素化分解してヘキサノールを得るのである。ヘキサノールとしては、ヒドロキシ基の位置により、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、3−ヘキサノールの3種類となるが、本発明においてはそのいずれをも含み得る。
ここで、加水分解工程及び水素化分解工程は、単一の容器内に与えられた同一のIr−Re系触媒の存在下で進行させているが、加水分解工程を比較的低い温度で進行させることができるため、水素化分解工程ではグルコースの炭素数を維持してヘキサノールを良好な収率で得ることができるのである。
また、図2に示すように、触媒1を与えた水相2の上に隣接して、ヘキサノールを溶解させる溶媒としての油相3を層状に配置している。少なくとも水相2を攪拌させながら反応を進行させると、水相2中で生成されたヘキサノールが油相3に移動して溶解する。このような水相2の上に層状に油相3を形成する溶媒として、詳細は後述するが、例えば、ノルマルパラフィン、イソパラフィン、シクロパラフィン等の飽和炭化水素、若しくは、芳香族炭化水素が好ましい。
ところで、油相3を形成する溶媒は、上記した加水分解工程及び水素化分解工程における反応を阻害しないものである。例えば、エーテルを溶媒として用いると、エーテル自体が分解されるため、アルコールを溶解させる油相3としての機能を損ない得る。また、OH基を有するアルコールなどは触媒に吸着して活性点を覆うため触媒能を損なわせ得る。さらに、不飽和炭化水素、例えば、オレフィン系炭化水素は、それ自体が水素化され、グルコースの水素化及びソルビトールの水素化分解に用いられる水素を消費してヘキサノールの収率を低下させてしまう。なお、芳香族炭化水素も水素化され得るが、かかる水素化の反応速度は遅いことから、溶媒としても用い得る。
更に、油相3を形成する溶媒は、Ir−Re系触媒の反応条件としての温度及び圧力において液相(液体)であることが必要である。典型的には、同触媒の反応条件は140℃〜200℃、1MPa〜10MPaであるから、溶媒の沸点は1MPaにおいて140℃以上、好ましくは1MPaにおいて200℃以上であり、より好ましくは290℃以上である。また、油相3を取り出す際に固相となってしまうとアルコールの回収が困難になるため、常温常圧でも液相を維持することが好ましい。このような飽和炭化水素として、例えば、n−ドデカンやn−デカンなどを用い得る。なお、油相3を形成する溶媒は2種以上を混合して用いてもよい。
Ir−Re系触媒としては、IrとReを含むことを基本とし特に限定はされないが、Ir−ReOx/SiO2であると、後述するヘキサノールの転化率及び収率を高め得る。ここで、ReOxにおけるxは酸化数を示し、任意の実数である。特に、Ir−ReOx/SiO2である場合に、Irに対するReのモル比を1以上とすることで、ヘキサノールをより高い収率で得ることができて好ましい。
なお、以上において、反応容器4としては、後述する反応条件の温度及び圧力に耐え得て、触媒活性を損なわない内表面を有することを要する。例えば、ガラス製反応容器や金属製反応容器を用い得るが、金属製反応容器の場合にはFeやNiの含有量の少ないものであると触媒活性を損なわず好ましい。
上記したように、本発明ではセルロースからヘキサノールを得るまでの加水分解工程及び水素化分解工程を含む一連の工程を、Ir−Re系触媒の存在下で、単一の反応容器内において効率よく行うことができる。また、Ir−Re系触媒を用いて、比較的低い温度でセルロースを加水分解でき、かかる温度であればソルビトールの炭素鎖の切断を抑制しつつヘキサノールを得ることができる。
典型的には、例えば、Ir−Re系触媒としてIr−ReOx/SiO2を用いて所定の環境条件下で、後述するセルロースの転化率及びヘキサノールの収率をそれぞれ50%以上及び7%以上とでき得る。さらに、上記したようにIrに対するReのモル比を1以上とすると、この転化率及び収率をそれぞれ65%以上及び18%以上とできる。
なお、上記と同様の手法でヘミセルロースからペンタノールを得られる。すなわち、図3に示すように、バイオマスに含まれるヘミセルロースのうち五炭糖の結合体、典型的にはキシランを加水分解し糖化させ、炭素数が5のキシロースを得て、これを水素化して炭素数が5の糖アルコール、主にキシリトールを生成させ、さらに水素化分解反応によって炭素数が5のペンタノールを得られるのである。
[A.ヘキサノールの製造試験]
以下にヘキサノールの製造方法についての実施例について説明する。なお、ここでは、触媒1にIr−ReOx/SiO2触媒を用いた。
以下にヘキサノールの製造方法についての実施例について説明する。なお、ここでは、触媒1にIr−ReOx/SiO2触媒を用いた。
[触媒の調製]
二酸化ケイ素(SiO2)(富士シリシア化学株式会社製「CARiACT G−6」)に塩化イリジウム酸(H2IrCl6)水溶液を滴下して、全体を湿潤させ、90℃程度で乾燥させる。かかる湿潤及び乾燥工程を繰り返して、触媒全体に対してIrを4質量%となるようにして、更に、110℃で半日程度の乾燥を行った。次に、過レニウム酸アンモニウム(NH4ReO4)水溶液で同様の湿潤及び乾燥工程を繰り返して、ReがIrに対するモル比、すなわち[Re]/[Ir]を0.25〜3とするように担持させた。その後、空気雰囲気下で、500℃、3時間焼成して、Ir−ReOx/SiO2触媒を得た。
二酸化ケイ素(SiO2)(富士シリシア化学株式会社製「CARiACT G−6」)に塩化イリジウム酸(H2IrCl6)水溶液を滴下して、全体を湿潤させ、90℃程度で乾燥させる。かかる湿潤及び乾燥工程を繰り返して、触媒全体に対してIrを4質量%となるようにして、更に、110℃で半日程度の乾燥を行った。次に、過レニウム酸アンモニウム(NH4ReO4)水溶液で同様の湿潤及び乾燥工程を繰り返して、ReがIrに対するモル比、すなわち[Re]/[Ir]を0.25〜3とするように担持させた。その後、空気雰囲気下で、500℃、3時間焼成して、Ir−ReOx/SiO2触媒を得た。
[還元処理]
反応容器として、ガラス製内管を有するSUS316製オートクレーブ(容量:190mL)を用いた。反応容器は内部を加熱できるよう、その周囲に電気炉を配置している。また、内部を攪拌できるように、反応容器をマグネチックスターラーの上に配置するとともに、テフロン(登録商標)コーティングを施されたマグネチックスターラーチップ(攪拌子)を反応容器の内管の内側に収容する。上記した触媒の調製で得られた触媒を150mg、水9.5gを反応容器に入れ、水素置換を三回以上繰り返す。反応容器内が200℃になった時に、全圧を8MPaとするように水素を導入し、200℃で1時間保持して触媒を還元させた。還元処理後の触媒を収容する反応容器を後述する実施例及び比較例のそれぞれに対応して準備した。
反応容器として、ガラス製内管を有するSUS316製オートクレーブ(容量:190mL)を用いた。反応容器は内部を加熱できるよう、その周囲に電気炉を配置している。また、内部を攪拌できるように、反応容器をマグネチックスターラーの上に配置するとともに、テフロン(登録商標)コーティングを施されたマグネチックスターラーチップ(攪拌子)を反応容器の内管の内側に収容する。上記した触媒の調製で得られた触媒を150mg、水9.5gを反応容器に入れ、水素置換を三回以上繰り返す。反応容器内が200℃になった時に、全圧を8MPaとするように水素を導入し、200℃で1時間保持して触媒を還元させた。還元処理後の触媒を収容する反応容器を後述する実施例及び比較例のそれぞれに対応して準備した。
[可溶化処理(硫酸処理)]
後述する実施例8、9及び比較例2の反応に用いるセルロースには予め可溶化処理を施しておく。かかる可溶化処理では、0.6%のH2SO4溶液25mLに微結晶セルロース10gを加えて数分間攪拌し、更に、45〜55℃で48時間保持し乾燥させることで行った。
後述する実施例8、9及び比較例2の反応に用いるセルロースには予め可溶化処理を施しておく。かかる可溶化処理では、0.6%のH2SO4溶液25mLに微結晶セルロース10gを加えて数分間攪拌し、更に、45〜55℃で48時間保持し乾燥させることで行った。
[ミル処理]
後述する実施例及び比較例に用いたセルロースには予めミル処理を施しておいた。かかるミル処理では、ボールミルのドラムにセルロースとともにZrO2球を100個投入し、回転数を300rpmとし、実施例1〜7及び比較例1では2時間の粉砕を行った。なお、2時間以上粉砕すれば、得られるセルロースは十分に粉砕されている。後述する実施例8、9及び比較例2では、可溶化処理の後に本ミル処理において10時間の粉砕を行って、可溶化セルロースを得ている。
後述する実施例及び比較例に用いたセルロースには予めミル処理を施しておいた。かかるミル処理では、ボールミルのドラムにセルロースとともにZrO2球を100個投入し、回転数を300rpmとし、実施例1〜7及び比較例1では2時間の粉砕を行った。なお、2時間以上粉砕すれば、得られるセルロースは十分に粉砕されている。後述する実施例8、9及び比較例2では、可溶化処理の後に本ミル処理において10時間の粉砕を行って、可溶化セルロースを得ている。
[生成物の収率・転化率]
ここで、収率はセルロースから転化された着目する生成物、すなわちヘキサノール及びその他(表1参照)のモル収率であり、次式で与えられる。
収率(%)=(着目する生成物の総炭素モル数)/(セルロースの総炭素モル数)×100
例えば、「着目する生成物の総炭素モル数」は、ガスクロマトグラフ及び高速液体クロマトグラフによって分析された着目する生成物のモル数に、その生成物の炭素数をかけて算出できる。また、「セルロースの総炭素モル数」は、反応容器4に仕込んだセルロースの単糖単位のモル数に、それぞれの単糖単位の炭素数をかけて算出できる。
ここで、収率はセルロースから転化された着目する生成物、すなわちヘキサノール及びその他(表1参照)のモル収率であり、次式で与えられる。
収率(%)=(着目する生成物の総炭素モル数)/(セルロースの総炭素モル数)×100
例えば、「着目する生成物の総炭素モル数」は、ガスクロマトグラフ及び高速液体クロマトグラフによって分析された着目する生成物のモル数に、その生成物の炭素数をかけて算出できる。また、「セルロースの総炭素モル数」は、反応容器4に仕込んだセルロースの単糖単位のモル数に、それぞれの単糖単位の炭素数をかけて算出できる。
また、転化率はセルロースをセルロース以外の物質に転化させた割合であり、次式で与えられる。
転化率(%)=100−(反応後のセルロース量)/(反応前のセルロース量)×100
例えば、「反応後のセルロース量」は、反応後の固体残渣量から反応に用いた触媒量を引いて算出できる。また、反応前のセルロース量は反応容器に仕込んだセルロースの量である。
転化率(%)=100−(反応後のセルロース量)/(反応前のセルロース量)×100
例えば、「反応後のセルロース量」は、反応後の固体残渣量から反応に用いた触媒量を引いて算出できる。また、反応前のセルロース量は反応容器に仕込んだセルロースの量である。
[実施例1〜5]
上記したように触媒の還元処理を行った反応容器内に、ミル処理を施したセルロース0.5gを加えた。ここで、触媒におけるIrに対するReのモル比;[Re]/[Ir]を、0.25(実施例1)、0.5(実施例2)、1(実施例3)、2(実施例4)及び3(実施例5)とした。反応容器内に油相3としてn−ドデカン4mLを加え、室温で6MPaとなるよう水素を導入し、190℃で24時間保持した。表1には、反応後の生成物を分析した結果を示した。なお、分析にはガスクロマトグラフ及び高速液体クロマトグラフを用いたが、以下においても同様である。
上記したように触媒の還元処理を行った反応容器内に、ミル処理を施したセルロース0.5gを加えた。ここで、触媒におけるIrに対するReのモル比;[Re]/[Ir]を、0.25(実施例1)、0.5(実施例2)、1(実施例3)、2(実施例4)及び3(実施例5)とした。反応容器内に油相3としてn−ドデカン4mLを加え、室温で6MPaとなるよう水素を導入し、190℃で24時間保持した。表1には、反応後の生成物を分析した結果を示した。なお、分析にはガスクロマトグラフ及び高速液体クロマトグラフを用いたが、以下においても同様である。
[実施例6、7]
実施例4に対して、油相3の量を変えて試験を行った。すなわち、触媒の還元処理を行った反応容器内に、ミル処理を施したセルロース0.5gを加え、油相3とする溶媒を加えず(実施例6)若しくは油相3としてn−ドデカン20mLを加え(実施例7)、その上で、室温で6MPaとなるよう水素を導入し、190℃で24時間保持した。なお、触媒におけるIrに対するReのモル比;[Re]/[Ir]は2である。
実施例4に対して、油相3の量を変えて試験を行った。すなわち、触媒の還元処理を行った反応容器内に、ミル処理を施したセルロース0.5gを加え、油相3とする溶媒を加えず(実施例6)若しくは油相3としてn−ドデカン20mLを加え(実施例7)、その上で、室温で6MPaとなるよう水素を導入し、190℃で24時間保持した。なお、触媒におけるIrに対するReのモル比;[Re]/[Ir]は2である。
[実施例8]
実施例7に対して、セルロースを可溶化した試験を行った。すなわち、触媒の還元処理を行った反応容器内に、可溶化処理及びミル処理を施した可溶化セルロース0.5gを加え、油相3としてn−ドデカン20mLを加えた。更に、室温で6MPaとなるよう水素を導入し、140℃で32時間保持した。なお、触媒におけるIrに対するReのモル比;[Re]/[Ir]は2である。
実施例7に対して、セルロースを可溶化した試験を行った。すなわち、触媒の還元処理を行った反応容器内に、可溶化処理及びミル処理を施した可溶化セルロース0.5gを加え、油相3としてn−ドデカン20mLを加えた。更に、室温で6MPaとなるよう水素を導入し、140℃で32時間保持した。なお、触媒におけるIrに対するReのモル比;[Re]/[Ir]は2である。
[実施例9]
実施例8に対して、油相3を形成する溶媒を変更した試験を行った。すなわち、触媒の還元処理を行った反応容器内に、可溶化処理及びミル処理を施した可溶化セルロース0.5gを加え、油相3としてn−デカン20mLを加えた。更に、室温で6MPaとなるよう水素を導入し、140℃で32時間保持した。なお、触媒におけるIrに対するReのモル比;[Re]/[Ir]は2である。
実施例8に対して、油相3を形成する溶媒を変更した試験を行った。すなわち、触媒の還元処理を行った反応容器内に、可溶化処理及びミル処理を施した可溶化セルロース0.5gを加え、油相3としてn−デカン20mLを加えた。更に、室温で6MPaとなるよう水素を導入し、140℃で32時間保持した。なお、触媒におけるIrに対するReのモル比;[Re]/[Ir]は2である。
[比較例1]
実施例4に対して、油相3としてエーテル類を用いた試験を行った。すなわち、触媒の還元処理を行った反応容器内に、ミル処理を施したセルロース0.5gを加え、油相3としてn−ヘキシルエーテル4mLを加えた。更に、室温で6MPaとなるよう水素を導入し、190℃で24時間保持した。なお、触媒におけるIrに対するReのモル比;[Re]/[Ir]は2である。
実施例4に対して、油相3としてエーテル類を用いた試験を行った。すなわち、触媒の還元処理を行った反応容器内に、ミル処理を施したセルロース0.5gを加え、油相3としてn−ヘキシルエーテル4mLを加えた。更に、室温で6MPaとなるよう水素を導入し、190℃で24時間保持した。なお、触媒におけるIrに対するReのモル比;[Re]/[Ir]は2である。
[比較例2]
実施例8、9に対して、油相3としてアルコール類を用いた試験を行った。すなわち、触媒の還元処理を行った反応容器内に、可溶化処理及びミル処理を施した可溶化セルロース0.5gを加え、油相3として2−ヘキサノール20mLを加えた。更に、室温で6MPaとなるよう水素を導入し、140℃で32時間保持した。なお、触媒におけるIrに対するReのモル比;[Re]/[Ir]は2である。ここで、油相3として2−ヘキサノールを用いた関係上、分析対象となるヘキサノールは1−ヘキサノール及び3−ヘキサノールである。
実施例8、9に対して、油相3としてアルコール類を用いた試験を行った。すなわち、触媒の還元処理を行った反応容器内に、可溶化処理及びミル処理を施した可溶化セルロース0.5gを加え、油相3として2−ヘキサノール20mLを加えた。更に、室温で6MPaとなるよう水素を導入し、140℃で32時間保持した。なお、触媒におけるIrに対するReのモル比;[Re]/[Ir]は2である。ここで、油相3として2−ヘキサノールを用いた関係上、分析対象となるヘキサノールは1−ヘキサノール及び3−ヘキサノールである。
[試験結果]
表1中、「その他」はn−ヘキサン、n−ペンタン、n−ブタン、プロパン、エタン、メタン、n−ペンタノール、2,5−ジメチルテトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロピラン、及び未同定物質を示す。表1から、実施例1〜9はいずれも50%以上のセルロースの転化率を得て、ヘキサノールを7%以上の収率で得られている。すなわち、いずれの実施例も加水分解工程及び水素化分解工程を単一の反応容器内、つまり同一の温度及び圧力で進行させ得るのである。特に、触媒において[Re]/[Ir]を1以上とした実施例3〜9は、セルロースの転化率が65%以上であって、ヘキサノールを18%以上の収率で得られている。さらに、実施例1〜5のうち、[Re]/[Ir]=2とした実施例4において最も転化率及び収率が高くなった。
表1中、「その他」はn−ヘキサン、n−ペンタン、n−ブタン、プロパン、エタン、メタン、n−ペンタノール、2,5−ジメチルテトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロピラン、及び未同定物質を示す。表1から、実施例1〜9はいずれも50%以上のセルロースの転化率を得て、ヘキサノールを7%以上の収率で得られている。すなわち、いずれの実施例も加水分解工程及び水素化分解工程を単一の反応容器内、つまり同一の温度及び圧力で進行させ得るのである。特に、触媒において[Re]/[Ir]を1以上とした実施例3〜9は、セルロースの転化率が65%以上であって、ヘキサノールを18%以上の収率で得られている。さらに、実施例1〜5のうち、[Re]/[Ir]=2とした実施例4において最も転化率及び収率が高くなった。
また、油相3のn−ドデカンの量を変化させた実施例4、6及び7を比較すると、転化率及び収率は、n−ドデカンを加えなかった実施例6でそれぞれ88.1%及び20.2%と低かったのに対し、4mLを加えた実施例4でそれぞれ91.9%及び27.6%と高くなり、20mL加えた実施例7でそれぞれ96.0%及び36.9%とさらに高くなった。つまり、生成されたヘキサノールは油相3に収率よく回収できるから、油相3の存在が生産効率の向上に寄与するのである。
さらに、硫酸を用いて可溶化処理を施した可溶化セルロースによる実施例8では、他の実施例の190℃の反応温度に対して、140℃と低い反応温度で最も高い転化率及び収率、それぞれ99.2%及び53.0%を得られた。また、ドデカンの代わりに油相3をデカンとした実施例9においても、実施例8と同等の高い転化率及び収率、それぞれ98.8%及び53.6%を得られている。
なお、油相3としてn−ヘキシルエーテルを用いた比較例1については、実施例4に比べてヘキサノールの収率が低かった。比較例1ではヘキサンが多量に生じていることから、n−ヘキシルエーテルが分解しているものと考える。また、同様に、油相3として1,4−ジオキサンを用いた場合にも、多量にエタンを生じ、油相3としてn−ドデカンを用いた場合に比べてヘキサノールの収率が低下することも確認している。これも同様に、1,4−ジオキサンの分解によるものと考える。つまり、エーテル類を油相3として用いると、Ir−Re系触媒に接触したエーテルが分解し、ヘキサノールを溶解させる油相としての機能を損ない、ヘキサノールの収率を低下させてしまうのである。
また、油相3としてアルコール類である2−ヘキサノールを用いた比較例2では、ヘキサノールの収率は0%であった。実施例8及び9ではヘキサノールの収率が高かったが、比較例2ではその他の生成物のほとんどがソルビトールであり、水素化分解をほとんど進行させ得ない。アルコール類はOH基を含み、Ir−ReOx触媒へ吸着されて、触媒の活性点を覆ってしまったものと考える。
[B.ペンタノールの製造試験]
以下に、ペンタノールの製造方法についての実施例について説明する。なお、触媒の調製、還元処理、ミル処理、生成物の収率・転化率については、上記「A.ヘキサノールの製造方法」において、セルロースをキシランと、ヘキサノールをペンタノールと置き換えれば同様であるのでその説明を省略する。但し、還元処理について、実施例16及び17の触媒の量は150mg(上記「還元処理」参照)ではなく200mgである。また、キシランの可溶化処理は行っておらず、実施例14のミル処理については10時間、実施例15のミル処理については硫酸を加えた上で10時間行っており、その他はミル処理を行っていない。
以下に、ペンタノールの製造方法についての実施例について説明する。なお、触媒の調製、還元処理、ミル処理、生成物の収率・転化率については、上記「A.ヘキサノールの製造方法」において、セルロースをキシランと、ヘキサノールをペンタノールと置き換えれば同様であるのでその説明を省略する。但し、還元処理について、実施例16及び17の触媒の量は150mg(上記「還元処理」参照)ではなく200mgである。また、キシランの可溶化処理は行っておらず、実施例14のミル処理については10時間、実施例15のミル処理については硫酸を加えた上で10時間行っており、その他はミル処理を行っていない。
[実施例10〜13]
上記したように触媒の還元処理を行った反応容器内に、キシラン0.5g及び油相3としてn−ドデカン20mLを加え、室温で6MPaとなるよう水素を導入し、所定の温度及び時間の保持を行った。実施例10では140℃で96時間の保持、実施例11では140℃で144時間の保持、実施例12では150℃で48時間の保持、実施例13では150℃で96時間の保持を行った。なお、触媒におけるIrに対するReのモル比;[Re]/[Ir]は2である。表2には、反応後の生成物を分析した結果を示した。なお、分析にはガスクロマトグラフ及び高速液体クロマトグラフを用いたが、以下においても同様である。
上記したように触媒の還元処理を行った反応容器内に、キシラン0.5g及び油相3としてn−ドデカン20mLを加え、室温で6MPaとなるよう水素を導入し、所定の温度及び時間の保持を行った。実施例10では140℃で96時間の保持、実施例11では140℃で144時間の保持、実施例12では150℃で48時間の保持、実施例13では150℃で96時間の保持を行った。なお、触媒におけるIrに対するReのモル比;[Re]/[Ir]は2である。表2には、反応後の生成物を分析した結果を示した。なお、分析にはガスクロマトグラフ及び高速液体クロマトグラフを用いたが、以下においても同様である。
[実施例14]
実施例11に対して、上記したようにミル処理を10時間施したキシランを用いた。すなわち、触媒の還元処理を行った反応容器内に、キシラン0.5g及び油相3としてn−ドデカン20mLを加え、室温で6MPaとなるよう水素を導入し、140℃で144時間保持した。なお、触媒におけるIrに対するReのモル比;[Re]/[Ir]は2である。
実施例11に対して、上記したようにミル処理を10時間施したキシランを用いた。すなわち、触媒の還元処理を行った反応容器内に、キシラン0.5g及び油相3としてn−ドデカン20mLを加え、室温で6MPaとなるよう水素を導入し、140℃で144時間保持した。なお、触媒におけるIrに対するReのモル比;[Re]/[Ir]は2である。
[実施例15]
実施例11に対して、上記したように硫酸を加えたミル処理を10時間施したキシランを用いた。すなわち、触媒の還元処理を行った反応容器内に、キシラン0.5g及び油相3としてn−ドデカン20mLを加え、室温で6MPaとなるよう水素を導入し、140℃で144時間保持した。なお、触媒におけるIrに対するReのモル比;[Re]/[Ir]は2である。
実施例11に対して、上記したように硫酸を加えたミル処理を10時間施したキシランを用いた。すなわち、触媒の還元処理を行った反応容器内に、キシラン0.5g及び油相3としてn−ドデカン20mLを加え、室温で6MPaとなるよう水素を導入し、140℃で144時間保持した。なお、触媒におけるIrに対するReのモル比;[Re]/[Ir]は2である。
[実施例16]
実施例11に対して、触媒の量を変更した試験を行った。すなわち、上記したように触媒の量を200mgとして還元処理を行った反応容器内に、キシラン0.5g及び油相3としてn−ドデカン20mLを加え、室温で6MPaとなるよう水素を導入し、140℃で144時間保持した。なお、触媒におけるIrに対するReのモル比;[Re]/[Ir]は2である。
実施例11に対して、触媒の量を変更した試験を行った。すなわち、上記したように触媒の量を200mgとして還元処理を行った反応容器内に、キシラン0.5g及び油相3としてn−ドデカン20mLを加え、室温で6MPaとなるよう水素を導入し、140℃で144時間保持した。なお、触媒におけるIrに対するReのモル比;[Re]/[Ir]は2である。
[実施例17]
実施例13に対して、触媒の量を変更した試験を行った。すなわち、上記したように触媒の量を200mgとして還元処理を行った反応容器内に、キシラン0.5g及び油相3としてn−ドデカン20mLを加え、室温で6MPaとなるよう水素を導入し、150℃で96時間保持した。なお、触媒におけるIrに対するReのモル比;[Re]/[Ir]は2である。
実施例13に対して、触媒の量を変更した試験を行った。すなわち、上記したように触媒の量を200mgとして還元処理を行った反応容器内に、キシラン0.5g及び油相3としてn−ドデカン20mLを加え、室温で6MPaとなるよう水素を導入し、150℃で96時間保持した。なお、触媒におけるIrに対するReのモル比;[Re]/[Ir]は2である。
[試験結果]
表2中、「その他」はヘキサノール、n−ペンタン、2−メチルブタン、シクロペンタン、n−ヘキサン、2−メチルペンタン、3−メチルペンタン、n−ブタン、プロパン、エタン、メタン、環状エーテル、2−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、2,5−ジメチルテトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロピラン、及び未同定物質を示す。表2から、実施例10〜17はいずれも90%以上のキシランの転化率を得て、ペンタノールを4%以上の収率で得られている。すなわち、いずれの実施例も加水分解工程及び水素化分解工程を単一の反応容器内、つまり同一の温度及び圧力で進行させ得るのである。特に、触媒の量を150mgとした実施例10〜15は、ペンタノールを12%以上の収率で得られている。さらに、実施例10〜15のうち、140℃で144時間の保持を行った実施例11、14及び15、さらには150℃で96時間の保持を行った実施例15において、ペンタノールの収率を30%以上と高くできた。
表2中、「その他」はヘキサノール、n−ペンタン、2−メチルブタン、シクロペンタン、n−ヘキサン、2−メチルペンタン、3−メチルペンタン、n−ブタン、プロパン、エタン、メタン、環状エーテル、2−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、2,5−ジメチルテトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロピラン、及び未同定物質を示す。表2から、実施例10〜17はいずれも90%以上のキシランの転化率を得て、ペンタノールを4%以上の収率で得られている。すなわち、いずれの実施例も加水分解工程及び水素化分解工程を単一の反応容器内、つまり同一の温度及び圧力で進行させ得るのである。特に、触媒の量を150mgとした実施例10〜15は、ペンタノールを12%以上の収率で得られている。さらに、実施例10〜15のうち、140℃で144時間の保持を行った実施例11、14及び15、さらには150℃で96時間の保持を行った実施例15において、ペンタノールの収率を30%以上と高くできた。
また、実施例14及び15において、10時間のミル処理を行い、さらにはミル処理において硫酸を加えたが、キシランの転化率、ペンタノールの収率はどちらも実施例11と同程度であった。つまり、キシランは比較的加水分解されやすく、ミル処理の有無による影響が小さいのである。
以上のように、加水分解工程及び水素化分解工程を同一の触媒を用いて単一の反応容器内にて進行させ得ることを示したが、加水分解工程及び水素化分解工程をそれぞれ分けて行うこともできる。この場合、加水分解工程及び水素化分解工程のそれぞれにおいて、Ir−Re系触媒の例えば上記したモル比を変更するなど、加水分解工程及び水素化分解工程のそれぞれを最適化し得て、ヘキサノール/ペンタノールの収率を高め得る。
以上、本発明による実施例及びこれに基づく変形例を説明したが、本発明は必ずしもこれに限定されるものではなく、当業者であれば、本発明の主旨又は添付した特許請求の範囲を逸脱することなく、様々な代替実施例及び改変例を見出すことができるであろう。
Claims (7)
- セルロース系バイオマス中のセルロースからヘキサノールを製造する方法であって、
Ir−Re(イリジウム−レニウム)系触媒の存在下且つセルロースを分解する温度において、水相中のセルロース系バイオマスを加水分解し糖化させるとともに水素化分解させ、前記水相上に層状に隣接配置された液体の炭化水素からなる油相にヘキサノールを回収するにあたり、前記水相に対する前記油相の体積比を0.4以上とすることを特徴とするヘキサノールの製造方法。 - 前記セルロース系バイオマスを硫酸処理及びミル処理する前処理を含むことを特徴とする請求項1記載のヘキサノールの製造方法。
- 前記水相に対する前記油相の体積比を2.1以上とすることを特徴とする請求項1又は2に記載のヘキサノールの製造方法。
- 前記炭化水素は飽和炭化水素又は芳香族炭化水素であることを特徴とする請求項1乃至3のうちの1つに記載のヘキサノールの製造方法。
- 前記炭化水素の沸点は1MPaで140℃以上であることを特徴とする請求項4記載のヘキサノールの製造方法。
- 前記触媒はIr−ReOx/SiO2であることを特徴とする請求項1乃至5のうちの1つに記載のヘキサノールの製造方法。
- 前記触媒のIrに対するReのモル比が1以上であることを特徴とする請求項6記載のヘキサノールの製造方法。
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