以下、本発明に係る電力変換装置の各実施の形態を図面とともに詳述する。なお、各図における同一の番号は、同一の構成を示すものとする。
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る電力変換装置1の構成を示すブロック図である。本実施の形態1に係る電力変換装置1は、第1の電源スイッチ2と、第2の電源スイッチ3と、第1の電流制限部4と、第2の電流制限部5と、電力変換回路6と、制御部10とを備えて構成される。
以下、図1を用いて、本実施の形態1の電力変換装置1の構成要素および機能について説明する。
電力変換装置1は、図1に示すように、第1の直流電源としての直流電源200と、第2の直流電源としての直流電源100とに接続されている。ここでは、基本的に、第1の電流制御部4および第2の電流制御部5が接続されている直流電源を「第1の直流電源」と呼び、第1の電源スイッチ2および第2の電源スイッチ3が接続されている直流電源を「第2の直流電源」と呼ぶこととする。また、電力変換装置1内に設けられた電力変換回路6も、図1に示すように、直流電源100および直流電源200に接続されている。直流電源100および直流電源200は、共に、充放電可能な直流電源である。
また、第1の電源スイッチ2および第2の電源スイッチ3は、直流電源100と電力変換回路6とを接続する経路に設けられている。一方、第1の電流制限部4および第2の電流制限部5は、直流電源200と電力変換回路6とを接続する経路に設けられている。
第1の電源スイッチ2は、直流電源100から電力変換回路6へ向かう方向の電流を導通および遮断する機能を有する。なお、第1の電源スイッチ2は、電力変換回路6から直流電源100へ向かう方向の電流を制限することはしない。なお、第1の電源スイッチ2は、直流電源100の陽極端子側に接続されている。
第2の電源スイッチ3は、電力変換回路6から直流電源100へ向かう方向の電流を導通および遮断する機能を有する。なお、第2の電源スイッチ3は、直流電源100から電力変換回路6へ向かう方向の電流を制限することはしない。なお、第2の電源スイッチ3は、直流電源100の陽極端子側に接続されている。
第1の電源スイッチ2および第2の電源スイッチ3は、例えば、MOSFET(Metal−Oxide−Semiconductor Field−Effect Transistor)から構成される。しかしながら、MOSFETに限定されず、第1の電源スイッチ2および第2の電源スイッチ3を他のスイッチング素子から構成してもよい。
第1の電流制限部4は、直流電源200から電力変換回路6へ向かう方向の電流が、あらかじめ設定された電流制限値を超えて流れないように制限する機能を有する。すなわち、直流電源200から電力変換回路6へ向かう方向の電流の値が、電流制限値未満の場合は、制限せずに、そのままの電流を流す。一方、直流電源200から電力変換回路6へ向かう方向の電流の値が、電流制限値以上の場合は、当該電流の値を電流制限値に制限して流す。なお、第1の電流制限部4は、電力変換回路6から直流電源200へ向かう方向の電流を制限はしない。なお、第1の電流制限部4は、直流電源200の陽極端子側に接続されている。
第2の電流制限部5は、電力変換回路6から直流電源200へ向かう方向の電流が、あらかじめ設定された電流制限値を超えて流れないように制限する機能を有する。すなわち、電力変換回路6から直流電源200へ向かう方向の電流の値が、電流制限値未満の場合は、制限せずに、そのままの電流を流す。一方、電力変換回路6から直流電源200へ向かう方向の電流の値が、電流制限値以上の場合は、当該電流の値を電流制限値に制限して流す。なお、第2の電流制限部5は、直流電源200から電力変換回路6へ向かう方向の電流を制限はしない。なお、第2の電流制限部5は、直流電源200の陽極端子側に接続されている。
以下、第1の電流制限部4および第2の電流制限部5の構成例について、図2から図4までを用いて説明する。
第1の電流制限部4および第2の電流制限部5の構成としては、それぞれ、例えば図2に示すように、シャント抵抗21と、アンプ22と、基準電圧源23と、コンパレータ24と、ゲート駆動回路25と、抵抗26と、MOSFET20とを備えた構成が考えられる。
この場合、図2に示すように、MOSFET20のドレインからソースに向かって電流が流れる場合に、アンプ22の出力電圧が正の方向に増加するように、アンプ22が配置されている。コンパレータ24は、アンプ22の出力電圧と、電流制限値を示す基準電圧源23の電圧とを比較する。コンパレータ24の出力は、MOSFET20のゲート端子に接続されている。MOSFET20は、ゲート駆動回路25によってONまたはOFFされる。
また、図2の場合の第1の電流制限部4および第2の電流制限部5による電流制限の動作としては、例えば、以下の方法がある。シャント抵抗21を流れる電流の増加に応じてアンプ22の出力電圧が増える。このとき、アンプ22の出力電圧が、基準電圧源23の電圧以上となった場合に、コンパレータ24の出力がMOSFET20のゲート電圧を下げる方向に動作する。そのため、MOSFET20のON抵抗が増加するため、第1の電流制限部4および第2の電流制限部5を流れる電流を制限することができる。あるいは、別の方法として、コンパレータ24によって、MOSFET20に、ONまたはOFFの高速スイッチング動作を繰り返させて、第1の電流制限部4および第2の電流制限部5を流れる電流を制限する方法が考えられる。
また、図3に示すように、第1の電流制限部4および第2の電流制限部5は、それぞれ、シャント抵抗21と、ゲート駆動回路25、抵抗26と、トランジスタ27と、MOSFET20とを備えた構成であってもよい。
この場合、図3に示すように、MOSFET20のドレインからソースに向かって電流が流れる場合に、トランジスタ27のエミッタベース間電流が増加する方向に、トランジスタ27が配置されている。また、トランジスタ27のコレクタは、MOSFET20のゲート端子に接続されている。MOSFET20は、ゲート駆動回路25によってONまたはOFFされる。
図3の場合の第1の電流制限部4および第2の電流制限部5による電流制限の動作としては、例えば、以下の方法がある。シャント抵抗21を流れる電流の増加に応じてトランジスタ27のエミッタベース間電流が増える。このとき、トランジスタ27のエミッタコレクタ間電流も増加し、MOSFET20のゲートソース間電圧を下げる方向に動作する。そのため、MOSFET20のON抵抗が増加するため、第1の電流制限部4および第2の電流制限部5を流れる電流を制限することができる。あるいは、別の方法として、トランジスタ27によって、MOSFET20に、ONまたはOFFの高速スイッチング動作を繰り返させて、第1の電流制限部4および第2の電流制限部5を流れる電流を制限する方法が考えられる。
なお、上記の図2および図3のシャント抵抗21の代わりに、ホールIC等の磁気センサを用いた非接触電流センサを用いるようにしてもよい。
また、図4に示すように、第1の電流制限部4および第2の電流制限部5は、センス端子を有するMOSFET20Aを備えた構成であってもよい。センス端子とは、電流検出端子のことである。この場合、第1の電流制限部4および第2の電流制限部5は、それぞれ、図4に示すように、基準電圧源23と、コンパレータ24と、ゲート駆動回路25と、抵抗26と、MOSFET20Aとを備えている。
この場合、図4に示すように、MOSFET20Aのセンス端子とソースとの間に抵抗26を配置する。コンパレータ24は、抵抗26の両端電圧と、電流制限値を示す基準電圧源23の電圧とを比較する。コンパレータ24の出力は、MOSFET20Aのゲート端子に接続されている。MOSFET20Aは、ゲート駆動回路25によってONまたはOFFされる。
この場合の第1の電流制限部4および第2の電流制限部5による電流制限の動作としては、例えば、以下の方法がある。MOSFET20Aのドレイン電流の増加に伴って、抵抗26の両端電圧が増える。このとき、抵抗26の両端電圧が、基準電圧源23の電圧以上となった場合に、コンパレータ24の出力がMOSFET20Aのゲート電圧を下げる方向に動作する。そのため、MOSFET20AのON抵抗が増加するため、第1の電流制限部4および第2の電流制限部5を流れる電流を制限することができる。あるいは、別の方法として、コンパレータ24によって、MOSFET20Aに、ONまたはOFFの高速スイッチング動作を繰り返させて、第1の電流制限部4および第2の電流制限部5を流れる電流を制限する方法が考えられる。
図1の説明に戻る。電力変換回路6は、直流電流を交流電流に変換する機能、および、交流電流を直流電流に変換する機能を有している。電力変換回路6は、例えば、少なくとも2つのブリッジ回路30を備えた構成が考えられる。具体的には、電力変換回路6は、図5に示すフルブリッジ回路を備えた構成にしてもよく、あるいは、図6に示す三相ブリッジ回路を備えた構成にしてもよい。なお、いずれの場合においても、図5または図6に示すように、コンデンサ31およびモータ負荷コイル32を必要に応じて配置する。なお、ブリッジ回路30を用いた電力変換回路6の制御方法は、従来より種々の方法が提案されており、それらの既存の技術が適用できるため、ここでは、その説明を省略する。
制御部10は、第1の電源スイッチ2、第2の電源スイッチ3、第1の電流制限部4、および、第2の電流制限部5の導通/遮断の切り替えの制御を行う。また、制御部10は、電力変換回路6の動作についても制御する。
図1において、直流電源100および直流電源200の系電圧は同じと考える。
図7は、本実施の形態1に係る電力変換装置1における電源起動時の電源起動シーケンスを示すフローチャートである。以下、図7に示すフローチャートを用いて、電力変換装置1の電源起動シーケンスについて、具体的に説明する。図7の各ステップは、制御部10によって実行される。
なお、以下の説明において、電力変換装置1の停止状態とは、第1の電源スイッチ2および第2の電源スイッチ3は遮断の状態であり、第1の電流制限部4および第2の電流制限部5は電流制限値が0の状態、すなわち、電流遮断の状態を意味する。
図7において、まず、ステップS100では、制御部10は、停止状態から第1の電流制限部4を起動あるいは有効にし、電流制限値を0から予め設定された電流値に変更し、ステップS101へと進む。これにより、直流電源200から電力変換回路6への電流が導通される。但し、電流量は、電流制限値によって制限される。
なお、「予め設定された電流値」の設定方法としては、例えば、電力変換回路6が消費する電流量の最大値よりも大きい値に設定する方法、直流電源200が供給できる電流量よりも小さな値に設定する方法、直流電源200と電力変換装置1とを接続する配線の許容電流量よりも小さな値に設定する方法などが考えられる。
ステップS101では、制御部10は、電力変換回路6の短絡故障があるか否かを判定する。電力変換回路6に短絡故障があると判定した場合は、ステップS102へと進み、一方、電力変換回路6に短絡故障がないと判定した場合は、ステップS103へと進む。
ここで、制御部10による電力変換回路6の短絡故障の判定方法としては、例えば、以下の方法がある。第1の電流制限部4を流れる電流量が予め設定された電流制限値以上である場合に、電力変換回路6に短絡故障があると判定する。あるいは、起動時の過渡的な突入電流が見られる電流制限時間を超えて、電流制限状態が継続している場合に、電力変換回路6に短絡故障があると判定する。あるいは、第1の電流制限部4の入出力間電位差が電流制限状態を示す電位差以上の場合に、電力変換回路6に短絡故障があると判定する。あるいは、電力変換回路6の入力電圧が、直流電源200の陽極電位よりも明らかに小さい電位である状態が、起動時の過渡的な突入電流が見られる電流制限時間を超えて継続している場合に、電力変換回路6に短絡故障があると判定する。
ステップS102では、制御部10は、第1の電流制限部4を電流遮断の状態にし、電力変換回路6の異常、すなわち、短絡故障を、図示しない上位ECU(Elecrtic Control Unit)に報知して、電源起動シーケンスを終了する。
一方、ステップS103では、制御部10は、第2の電流制限部5を起動あるいは有効にし、電流制限値を、0から予め設定された電流値に変更し、ステップS104へと進む。これにより、電力変換回路6から直流電源200への電流が導通される。但し、電流量は、電流制限値によって制限される。なお、ステップS103での「予め設定された電流値」と、上記のステップS100の「予め設定された電流値」とは、同じ値であっても、異なる値であってもよい。すなわち、第1の電流制限部4における導通状態時の電流制限値を「第1の電流制限値」とし、第2の電流制限値における導通状態時の電流制限値を「第2の電流制限値」とすると、「第1の電流制限値」の値と「第2の電流制限値」の値とは同じであっても、異なっていてもよい。
ステップS104では、制御部10は、第2の電源スイッチ3を導通の状態に設定し、ステップS105に進む。これにより、電力変換回路6から直流電源100への電流が導通される。
ステップS105では、制御部10は、第1の電流制限部4を流れる電流量が、予め設定された電流制限値以上か否かを判定する。第1の電流制限部4を流れる電流量が、予め設定された電流制限値以上の場合はステップS106へと進む。一方、第1の電流制限部4を流れる電流量が、予め設定された電流制限値未満である場合はステップS107へと進む。
ステップS106では、制御部10は、第2の電源スイッチ3を遮断の状態に設定すると共に、第1の電源スイッチ2を導通の状態に設定する。これにより、電力変換回路6から直流電源100への電流は遮断され、一方、直流電源100から電力変換回路6への電流は導通される。さらに、電力変換装置1は、直流電源100の電圧低下を、上位ECUに報知して、電源起動シーケンスを終了する。なお、このとき、第1の電流制限部4は電流導通状態であるため、直流電源200から電力変換回路6への電流も導通している。
一方、ステップS107では、第1の電源スイッチ2を導通の状態に設定し、ステップS108へと進む。これにより、直流電源100から電力変換回路6への電流が導通される。なお、このとき、第1の電流制限部4は電流導通状態であるため、直流電源200から電力変換回路6への電流も導通している。
ステップS108では、第2の電流制限部5を流れる電流量が予め設定された電流制限値以上か否かを判定する。第2の電流制限部5を流れる電流量が予め設定された電流制限値以上の場合はステップS109へと進み、第2の電流制限部5を流れる電流量が予め設定された電流制限値未満である場合は、ステップS110へと進む。
ステップS110では、電力変換装置1の正常起動を、上位ECUに報知して、電源起動シーケンスを終了する。なお、このとき、第1の電源スイッチ2、第2の電源スイッチ3、第1の電流制限部4、および、第2の電流制限部5は、すべて、導通状態である。
ステップS109では、制御部10は、第2の電流制限部5を電流遮断の状態にする。これにより、電力変換回路6から直流電源200への電流は遮断される。なお、このとき、第1の電流制限部4は電流導通状態であるため、直流電源200から電力変換回路6への電流は導通している。また、電力変換装置1は、直流電源200の電圧低下を、上位ECUに報知して、電源起動シーケンスを終了する。
図8は、本実施の形態1に係る電力変換装置1における直流電源100および直流電源200の電圧低下、または、電力変換回路6の短絡故障が発生した場合のフェイルセーフ動作を示すフローチャートである。
以下、図8に示すフローチャートを用いて、電力変換装置1のフェイルセーフ動作について、具体的に説明する。図8の各ステップは、制御部10によって実行される。
ステップS200では、制御部10は、第1の電流制限部4が電流制限の状態であるか否かを判定する。第1の電流制限部4が電流制限の状態である場合は、ステップS201へと進み、第1の電流制限部4が電流制限の状態でない場合は、ステップS205へと進む。
ステップS201では、制御部10は、第2の電源スイッチ3を遮断の状態に設定し、ステップS202へと進む。なお、ステップS201では、第1の電流制限部4を流れる電流、すなわち、直流電源200から電力変換回路6へ流れる電流が、電流制限値以上であるため、第2の電源スイッチ3を遮断の状態に設定して、電力変換回路6から直流電源100に流れる電流を遮断する。
ステップS202では、第1の電流制限部4の電流制限の状態が、予め設定された設定時間以上継続しているか否かを判定する。第1の電流制限部4の電流制限の状態が、予め設定された設定時間以上継続している場合はステップS203へと進む。一方、第1の電流制限部4の電流制限の状態が、設定時間未満であれば、ステップS204へと進む。
ここで、予め設定された設定時間の設定方法は、例えば、電流制限によって自己発熱し、第1の電流制限部4が過熱保護温度に到達するまでの時間を基に設定する方法、あるいは、直流電源200の放電容量を基に設定する方法などが考えられる。
ステップS203では、制御部10は、第1の電流制限部4、第1の電源スイッチ2、および、第2の電流制限部5を電流遮断の状態にして、電力供給を遮断する。さらに、制御部10は、電力変換回路6の短絡故障を上位ECUに報知し、図8のフェイルセーフ動作を停止する。
ステップS204では、制御部10は、直流電源100の電圧低下を上位ECUに報知して、ステップS205へと進む。
ステップS205では、制御部10は、第2の電流制限部5が電流制限の状態であるか否かを判定する。第2の電流制限部5が電流制限の状態である場合は、ステップS206へと進み、第2の電流制限部5が電流制限の状態でない場合は、ステップS200へと戻る。
ステップS206では、第2の電流制限部5の電流制限の状態が、予め設定された設定時間以上継続しているか否かを判定する。第2の電流制限部5の電流制限の状態が、設定時間以上が継続している場合は、ステップS207へと進む。一方、第2の電流制限部5の電流制限の状態が、設定時間未満であれば、ステップS200へと戻る。
ここで、予め設定された設定時間の設定方法は、例えば、電流制限によって自己発熱し、第2の電流制限部5が過熱保護温度に到達するまでの時間を基に設定する方法、あるいは、直流電源100の放電容量を基に設定する方法などが考えられる。
ステップS207では、制御部10は、第2の電流制限部5および第1の電流制限部4を電流遮断の状態にすると共に、直流電源200の電圧低下を上位ECUに報知し、ステップS200へと戻る。
以上のように、本実施の形態1では、系電圧が同じ2つの直流電源を用いた2系統入力とする電力変換装置1において、第1の電流制限部4および第2の電流制限部5が直流電源200への入出力電流を制限する。そのため、少なくともいずれか一方の電源から常に電力変換装置1に電源供給することができ、電源喪失への耐性が向上する。また、直流電源100と直流電源200との間の電位差による干渉電流も抑制することができる。その結果、複数の直流電源100および200から電力変換装置1に電力供給を実施することができる。なお、本実施の形態1では、第1の電源スイッチ2および第2の電源スイッチ3を設けた例について説明したが、第1の電源スイッチ2および第2の電源スイッチ3は必ずしも設ける必要はない。第1の電流制限部4を備えていれば、電源喪失への耐性を向上させることができる。
また、第1の電源スイッチ2、第2の電源スイッチ3、第1の電流制限部4、および、第2の電流制限部5を設けて、それらをすべて導通の状態にしたときは、ダイオードの順方向電圧よりも電圧降下が小さいので、直流電源100および200から電力変換回路6へ至る回路の損失を低減することができる。
さらに、直流電源100および直流電源200の負荷である電力変換回路6が短絡故障しても、少なくとも1系統の電源供給経路には第1の電流制限部4を備えてあるので、電流を制限することができる。そのため、直流電源200の電圧低下を抑制でき、同系統に接続される他のECUの最低動作電圧を下回って、動作不能に至る事態を防止することができる。一方、上記の特許文献1に記載の車両制御装置においては、負荷が短絡した場合は、高電圧電源および低電圧電源の両方が電圧低下することになる。その場合、同電源系統に接続されている他のECUが動作停止に至る、あるいは、誤動作する恐れがある。これに対して、本実施の形態1においては、第1の電流制限部4を備えてあるので、直流電源100および直流電源200の両方が電圧低下になることはない。
加えて、電力変換装置1への電源供給線が1本断線しても、もう1系統から電力変換装置1へ電力を供給し続けているため、電力変換回路6は絶えず電力変換動作を継続することが可能である。
実施の形態2.
上述の実施の形態1では、電源系統が2系統の場合について説明したが、本発明は、これに限定されず、多系統の電源構成であってもよく、少なくとも1系統に第1の電流制限部4および第2の電流制限部5を備えることで同様の効果を得ることができる。
例えば、図9では、本発明の実施の形態2に係る電力変換装置1として、3系統の直流電源が接続される場合について示している。図9においては、1系統に第1の電流制限部4および第2の電流制限部5が備えられ、他の2系統に、第1の電源スイッチ2および第2の電源スイッチ3が、それぞれ、備えられている。従って、直流電源200が「第1の直流電源」であり、直流電源100および300が「第2の直流電源」である。また、以下では、説明が分かりやすくなるように、直流電源100に接続された第1の電源スイッチ2を「第1の電源スイッチ2A」と呼び、直流電源300に接続された第1の電源スイッチ2を「第1の電源スイッチ2B」と呼ぶこととする。同様に、直流電源100に接続された第2の電源スイッチ3を「第2の電源スイッチ3A」と呼び、直流電源300に接続された第2の電源スイッチ3を「第2の電源スイッチ3B」と呼ぶこととする。
具体的には、図9においては、直流電源100、直流電源200、および、直流電源300の3系統の電源系統が設けられている。直流電源100、直流電源200、および、直流電源300は、共に、充放電可能な直流電源である。
第1の電源スイッチ2Aおよび第2の電源スイッチ3Aは、直流電源100と電力変換回路6とを接続する経路に設けられている。また、第1の電源スイッチ2Bおよび第2の電源スイッチ3Bは、直流電源300と電力変換回路6とを接続する経路に設けられている。一方、第1の電流制限部4および第2の電流制限部5は、直流電源200と電力変換回路6とを接続する経路に設けられている。
第1の電源スイッチ2Bは、直流電源300から電力変換回路6へ向かう方向の電流を導通または遮断する機能を有する。なお、第1の電源スイッチ2Bは、電力変換回路6から直流電源300へ向かう方向の電流を制限することはしない。なお、第1の電源スイッチ2Bは、通常時は遮断の状態に設定されており、直流電源100が電圧低下していて、且つ、直流電源300が電圧低下していない場合のみ、導通の状態に設定される。なお、第1の電源スイッチ2Bは、直流電源300の陽極端子側に接続されている。
第2の電源スイッチ3Bは、電力変換回路6から直流電源300へ向かう方向の電流を導通または遮断する機能を有する。なお、第2の電源スイッチ3Bは、直流電源300から電力変換回路6へ向かう方向の電流を制限することはしない。なお、第2の電源スイッチ3Bは、通常時は遮断の状態に設定されており、直流電源100が電圧低下していて、且つ、直流電源300が電圧低下していない場合のみ、導通の状態に設定される。なお、第2の電源スイッチ3Bは、直流電源300の陽極端子側に接続されている。
第1の電源スイッチ2Bおよび第2の電源スイッチ3Bは、例えば、MOSFETから構成される。しかしながら、これに限定されず、第1の電源スイッチ2Bおよび第2の電源スイッチ3Bを他のスイッチング素子から構成してもよい。
ここで、直流電源100、直流電源200、および、直流電源300の系電圧は同じと考える。
他の構成については、実施の形態1と同じであるため、ここでは、その説明を省略する。なお、図9では、図の簡略化のために、制御部10の図示が省略されているが、実際には、図1と同様に、電力変換装置1内に、制御部10が設けられている。
以下、本実施の形態2に係る電力変換装置1の動作について説明する。
図10は、本実施の形態2に係る電力変換装置1における電源起動時の電源起動シーケンスを示すフローチャートである。以下、図10に示すフローチャートを用いて、電力変換装置1の電源起動シーケンスについて、具体的に説明する。なお、図10の各ステップは、制御部10によって実行される。
図10において、ステップS300では、制御部10は、停止状態から第1の電流制限部4を起動あるいは有効にし、電流制限値を0から予め設定された電流値に変更し、ステップS301へと進む。
ステップS301では、制御部10は、電力変換回路6に短絡故障がないか否かを判定する。電力変換回路6に短絡故障があると判定した場合は、ステップS302へと進み、一方、電力変換回路6に短絡故障がないと判定した場合は、ステップS303へと進む。
ステップS302では、制御部10は、第1の電流制限部4を電流遮断の状態にし、電力変換装置1の異常、すなわち、短絡故障を、上位ECUに報知して、電源起動シーケンスを終了する。
一方、ステップS303では、制御部10は、第2の電流制限部5を起動あるいは有効にし、電流制限値を0から予め設定された電流値に変更し、ステップS304へと進む。
ステップS304では、いずれか一方の第2の電源スイッチ3を導通の状態に設定し、ステップS305に進む。ここでは、第2の電源スイッチ3Aを導通の状態に設定する。
ステップS305では、第1の電流制限部4を流れる電流量が、予め設定された電流制限値以上か否かを判定する。第1の電流制限部4を流れる電流量が、予め設定された電流制限値以上の場合は、ステップS306へと進む。一方、第1の電流制限部4を流れる電流量が、予め設定された電流制限値未満である場合は、ステップS310へと進む。
ステップS310では、導通の状態にある第2の電源スイッチ3と同系統の直流電源100に接続されている第1の電源スイッチ2Aを導通の状態に設定し、ステップS311へと進む。
一方、ステップS306では、第2の電源スイッチ3Aを導通の状態から遮断の状態に設定すると共に、もう一方の第2の電源スイッチ3Bを導通の状態に設定し、ステップS307へと進む。
ステップS307では、第1の電流制限部4を流れる電流量が、予め設定された電流制限値以上か否かを判定する。第1の電流制限部4を流れる電流量が、予め設定された電流制限値以上の場合は、ステップS308へと進む。一方、第1の電流制限部4を流れる電流量が、予め設定された電流制限値未満である場合は、ステップS309へと進む。
ステップS308では、制御部10は、導通の状態にある前述の第2の電源スイッチ3Bを遮断の状態に設定すると共に、第2の電源スイッチ3Bと同系統の直流電源300に接続されている第1の電源スイッチ2Bを導通の状態に設定する。さらに、制御部10は、直流電源100および直流電源300の電圧低下を上位ECUに報知して、電源起動シーケンスを終了する。
一方、ステップS309では、制御部10は、第2の電源スイッチ3Bと同系統の直流電源300に接続されている第1の電源スイッチ2Bを導通の状態に設定し、直流電源100の電圧低下を上位ECUに報知して、ステップS311へと進む。
ステップS311では、第2の電流制限部5を流れる電流量が、予め設定された電流制限値以上か否かを判定する。第2の電流制限部5を流れる電流量が、予め設定された電流制限値以上の場合は、ステップS312へと進む。一方、第2の電流制限部5を流れる電流量が、予め設定された電流制限値未満である場合は、ステップS313へと進む。
ステップS313では、電力変換装置1の起動完了を上位ECUに報知して、電源起動シーケンスを終了する。
一方、ステップS312では、制御部10は、第2の電流制限部5を電流遮断の状態にし、直流電源200の電圧低下を上位ECUに報知して、電源起動シーケンスを終了する。
図11は、本実施の形態2に係る電力変換装置1における直流電源100、直流電源200および直流電源300の電圧低下、または、電力変換回路6の短絡故障が発生した場合のフェイルセーフ動作を示すフローチャートである。以下、図11に示すフローチャートを用いて、電力変換装置1のフェイルセーフ動作について、具体的に説明する。なお、図11の各ステップは、制御部10によって実行される。
図11において、ステップS400では、制御部10は、第1の電流制限部4が電流制限の状態であるか否かを判定する。第1の電流制限部4が電流制限の状態である場合は、ステップS401へと進む。一方、第1の電流制限部4が電流制限の状態でない場合は、ステップS405へと進む。
ステップS405では、制御部10は、第2の電流制限部5が電流制限の状態であるか否かを判定する。第2の電流制限部5が電流制限の状態である場合はステップS406へと進み、第2の電流制限部5が電流制限の状態でない場合はステップS400へと戻る。
ステップS406では、第2の電流制限部5の電流制限の状態が、予め設定された設定時間以上継続しているか否かを判定する。第2の電流制限部5の電流制限の状態が、予め設定された設定時間以上が継続している場合は、ステップS407へと進む。一方、第2の電流制限部5の電流制限の状態が、設定時間未満であれば、ステップS400へと戻る。
ステップS407では、制御部10は、第2の電流制限部5および第1の電流制限部4を電流遮断の状態にすると共に、直流電源200の電圧低下を上位ECUに報知し、ステップS400へと戻る。
一方、ステップS401では、制御部10は、第2の電源スイッチ3Aを遮断の状態に設定し、ステップS402へと進む。
ステップS402では、第1の電流制限部4の電流制限の状態が、予め設定された設定時間以上継続しているか否かを判定する。第1の電流制限部4の電流制限の状態が、予め設定された設定時間以上継続している場合は、ステップS403へと進む。一方、第1の電流制限部4の電流制限の状態が、設定時間未満であれば、ステップS404へと進む。
ステップS403では、制御部10は、第1の電流制限部4、第1の電源スイッチ2A、および、第2の電流制限部5を電流遮断の状態にして、電力供給を遮断する。さらに、制御部10は、電力変換回路6の短絡故障を上位ECUに報知し、図11のフェイルセーフ動作を停止する。
一方、ステップS404では、制御部10は、直流電源100の電圧低下を上位ECUに報知して、ステップS408へと進む。
ステップS408では、前述のステップS401で遮断の状態に設定した第2の電源スイッチ3とは異なるもう一方の第2の電源スイッチ3Bを導通の状態に設定し、ステップS409へ進む。
ステップS409では、制御部10は、第1の電流制限部4が電流制限の状態であるか否かを判定する。第1の電流制限部4が電流制限の状態である場合は、ステップS410へと進む。一方、第1の電流制限部4が電流制限の状態でない場合は、ステップS411へと進む。
ステップS410では、制御部10は、第2の電源スイッチ3Bを遮断の状態に設定し、直流電源300の電圧低下を上位ECUに報知して、ステップS400へと戻る。
ステップS411では、導通の状態に設定した第2の電源スイッチ3Bと同系統の直流電源300に接続されている第1の電源スイッチ2Bを導通の状態に設定し、ステップS400に戻る。
以上のように、本実施の形態2では、系電圧が同じ3つの直流電源を設けて、3系統入力とする電力変換装置1において、第1の電流制限部4および第2の電流制限部5が直流電源200への入出力電流を制限すると共に、直流電源100および直流電源300に接続される各第1の電源スイッチ2Aおよび2B、および、各第2の電源スイッチ3Aおよび3Bを同時に導通の状態にしないので、直流電源100と300との間の電位差による干渉電流を抑制し、複数の直流電源から電力変換装置1に電力供給を実施することができる。
また、第1の電源スイッチ2、第2の電源スイッチ3、第1の電流制限部4、および、第2の電流制限部5を導通の状態にしたときは、ダイオードの順方向電圧よりも電圧降下が小さいので、直流電源から電力変換回路6へ至る回路の損失を低減することができる。
さらに、少なくとも1系統の電源供給経路には第1の電流制限部4を備え、直流電源200から電力変換回路6への電流を制限すると共に、1系統は第1の電源スイッチ2および第2の電源スイッチ3が遮断の状態であるため、直流電源100の負荷である電力変換回路6が短絡故障しても、直流電源100が電圧低下して、同系統に接続される他のECUが動作不能に至る事態を防止することができる。
加えて、電力変換装置1への電源供給線が1本断線しても、もう1系統から電力変換装置1へ電力を供給し続けているため、電力変換回路6は絶えず電力変換動作を継続することが可能である。
なお、実施の形態2においては、電源系統が3系統の場合について説明したが、この場合に限らず、電源系統が4系統以上でもよい。また、電源系統が4系統以上の場合においても、本実施の形態2と同様の動作とすればよいことは言うまでもない。ここで、電源系統が4系統以上の場合には、少なくとも1つの任意の個数の「第1の直流電源」のそれぞれに第1の電流制限部4および第2の電流制限部5を接続し、また、少なくとも1つの任意の個数の「第2の直流電源」のそれぞれに第1の電源スイッチ2および第2の電源スイッチ3を接続するようにすればよい。第1の電流制限部4および第2の電流制限部5は、必ずしも両方設ける必要はなく、いずれか一方のみでもよい。同様に、第1の電源スイッチ2および第2の電源スイッチ3は、必ずしも両方設ける必要はなく、いずれか一方のみでもよい。
実施の形態3.
上述の実施の形態1および実施の形態2では、第1の電源スイッチ2、第2の電源スイッチ3、第1の電流制限部4、および、第2の電流制限部5が、全て、直流電源の陽極端子側に接続される場合について説明した。しかしながら、本発明はこれに限らず、直流電源の陰極端子側に、第1の電源スイッチ2、第2の電源スイッチ3、第1の電流制限部4、および、第2の電流制限部5を接続してもよい。いずれの場合においても、少なくとも1系統に、第1の電流制限部4および第2の電流制限部5を備えることで、上述の実施の形態1および実施の形態2と同様の効果を得ることができる。
例えば、図12では、本発明の実施の形態3に係る電力変換装置1として、2系統の直流電源が接続される場合について示している。図12では、2系統のうちの1系統である直流電源200の陰極端子側に、第1の電流制限部4および第2の電流制限部5が備えられ、もう一方の1系統である直流電源100の陰極端子側に第1の電源スイッチ2および第2の電源スイッチ3が備えられている。なお、直流電源100および直流電源200の系電圧は同じと考える。
他の構成については、実施の形態1または2と同じであるため、ここでは、その説明を省略する。なお、図12では、図の簡略化のために、制御部10の図示が省略されているが、実際には、図1と同様に、電力変換装置1内に、制御部10が設けられている。
以下、本実施の形態3に係る電力変換装置1の動作について説明する。
図13は、本実施の形態3に係る電力変換装置1における電源起動時の電源起動シーケンスを示すフローチャートである。以下、図13に示すフローチャートを用いて、電力変換装置1の電源起動シーケンスについて、具体的に説明する。なお、図13の各ステップは、制御部10によって実行される。
ステップS500では、制御部10は、停止状態から第2の電流制限部5を起動あるいは有効にし、電流制限値を0から予め設定された電流値に変更し、ステップS501へと進む。
ステップS501では、電力変換回路6に短絡故障があるか否かを判定し、短絡故障があると判定された場合はステップS502へと進み、短絡故障がないと判定された場合はステップS503へと進む。
ステップS502では、制御部10は、第2の電流制限部5を電流遮断の状態にし、電力変換回路6の異常、すなわち、短絡故障を、上位ECUに報知して、電源起動シーケンスを終了する。
一方、ステップS503では、制御部10は、第1の電流制限部4を起動あるいは有効にし、電流制限値を0から予め設定された電流値に変更し、ステップS504へと進む。
ステップS504では、第1の電源スイッチ2を導通の状態に設定し、ステップS505に進む。
ステップS505では、第2の電流制限部5を流れる電流量が予め設定された電流制限値以上の場合は、ステップS506へと進み、第2の電流制限部5を流れる電流量が予め設定された電流制限値未満である場合はステップS507へと進む。
ステップS506では、制御部10は、第1の電源スイッチ2を遮断の状態に設定すると共に、第2の電源スイッチ3を導通の状態に設定する。また、制御部10は、直流電源100の電圧低下を上位ECUに報知して、電源起動シーケンスを終了する。
一方、ステップS507では、第2の電源スイッチ3を導通の状態に設定し、ステップS508へと進む。
ステップS508では、第1の電流制限部4を流れる電流量が予め設定された電流制限値以上である場合はステップS509へと進み、第1の電流制限部4を流れる電流量が予め設定された電流制限値未満である場合は、ステップS510へと進む。
ステップS510では、電力変換装置1の正常起動を上位ECUに報知して、電源起動シーケンスを終了する。
ステップS509では、制御部10は、第1の電流制限部4を電流遮断の状態にし、直流電源200の電圧低下を上位ECUに報知して、電源起動シーケンスを終了する。
このように、本実施の形態3の電源起動シーケンスは、図7に示した実施の形態1の電源起動シーケンスと基本的には同様であるが、第1の電源スイッチ2と第2の電源スイッチ3とを起動させる順序が実施の形態1と逆であり、また、第1の電流制限部4と第2の電流制限部5とを起動させる順序が実施の形態1と逆である。
図14は、本実施の形態3に係る電力変換装置1における直流電源100および直流電源200の電圧低下、または、電力変換回路6の短絡故障が発生した場合のフェイルセーフ動作を示すフローチャートである。以下、図14に示すフローチャートを用いて、電力変換装置1のフェイルセーフ動作について、具体的に説明する。なお、図14の各ステップは、制御部10によって実行される。
ステップS600では、制御部10は、第2の電流制限部5が電流制限の状態であるか否かを判断し、電流制限の状態である場合はステップS601へと進み、電流制限の状態でない場合はステップS605へと進む。
ステップS601では、制御部10は、第1の電源スイッチ2を遮断の状態に設定し、ステップS602へと進む。
ステップS602では、第2の電流制限部5の電流制限の状態が予め設定された設定時間以上継続しているか否かを判定する。第2の電流制限部5の電流制限の状態が予め設定された設定時間以上が継続している場合は、ステップS603へと進み、第2の電流制限部5の電流制限の状態が予め設定された設定時間未満であれば、ステップS604へと進む。
ステップS603では、制御部10は、第2の電流制限部5、第2の電源スイッチ3、および、第1の電流制限部4を電流遮断の状態にして電力供給を遮断すると共に、電力変換回路6の短絡故障を上位ECUに報知し、図14のフェイルセーフ動作を停止する。
一方、ステップS604では、制御部10は、直流電源100の電圧低下を上位ECUに報知して、ステップS605へと進む。
ステップS605では、制御部10は、第1の電流制限部4が電流制限の状態であるか否かを判定する。第1の電流制限部4が電流制限の状態である場合は、ステップS606へと進み、第1の電流制限部4が電流制限の状態でない場合はステップS600へと戻る。
ステップS606では、第1の電流制限部4の電流制限の状態が、予め設定された設定時間以上継続しているか否かを判定する。第1の電流制限部4の電流制限の状態が、予め設定された設定時間以上継続している場合はステップS607へと進み、第1の電流制限部4の電流制限の状態が、予め設定された設定時間未満であれば、ステップS600へと戻る。
ステップS607では、制御部10は、第1の電流制限部4および第2の電流制限部5を電流遮断の状態にすると共に、直流電源200の電圧低下を上位ECUに報知し、ステップS600へと戻る。
以上のように、実施の形態3では、系電圧が同じ直流電源を2系統入力とする電力変換装置1において、第1の電流制限部4および第2の電流制限部5が直流電源200への入出力電流を制限するので、直流電源間の電位差による干渉電流を抑制し、複数の直流電源から電力変換装置1に電力供給を実施することができる。
また、第1の電源スイッチ2、第2の電源スイッチ3、第1の電流制限部4、および、第2の電流制限部5を導通の状態にしたときは、ダイオードの順方向電圧よりも電圧降下が小さいので、直流電源から電力変換回路6へ至る回路の損失を低減することができる。
さらに、直流電源の負荷である電力変換回路6が短絡故障しても、少なくも1系統の電源供給経路には第1の電流制限部4を備え、直流電源200から電力変換回路6への電流を制限するので、直流電源200の電圧低下を抑制でき、同系統に接続される他のECUの最低動作電圧を下回って、動作不能に至る事態を防止することができる。
加えて、電力変換装置1への電源供給線が1本断線しても、もう1系統から電力変換装置1へ電力を供給し続けているため、電力変換回路6は絶えず電力変換動作を継続することが可能である。
また、第1の電源スイッチ2、第2の電源スイッチ3、第1の電流制限部4、および、第2の電流制限部5を直流電源の陰極端子側に配置したので、第1の電源スイッチ2、第2の電源スイッチ3、第1の電流制限部4、および、第2の電流制限部5を駆動するためのレベルシフタのような電位変換回路が不要となり、回路構成の簡素化と小型化、および、コスト低減を図ることができる。
実施の形態4.
本発明の実施の形態4では、全ての電源系統の陰極端子側に第1の電流制限部4を各々備えると共に、電力変換回路6の陽極側に1つの第1の電流制限部4を設けることで、実施の形態1から実施の形態3までと同様の効果を得る。
図15は、本発明の実施の形態4に係る電力変換装置1の構成を示すブロック図である。図15では、電力変換装置1に、2系統の直流電源100および200が接続される場合について示している。図15では、2つの電源系統の陰極端子側に、第1の電流制限部4が各々備えられている。また、電力変換回路6の陽極側にも、第1の電流制限部4が1つ備えられている。以下の説明においては、直流電源200の陰極端子側に接続された第1の電流制限部4を「第1の電流制限部4A」と呼び、直流電源100の陰極端子側に接続された第1の電流制限部4を「第1の電流制限部4B」と呼び、電力変換回路6の陽極側に接続された第1の電流制限部4を「第1の電流制限部4C」と呼ぶこととする。
また、直流電源100と直流電源200の系電圧は同じと考える。
他の構成については、実施の形態1〜3と同じであるため、ここでは、その説明を省略する。なお、図15では、図の簡略化のために、制御部10の図示が省略されているが、実際には、図1と同様に、電力変換装置1内に、制御部10が設けられている。
以下、実施の形態4に係る電力変換装置1の動作について説明する。
図16は、本実施の形態4に係る電力変換装置1における電源起動時の電源起動シーケンスを示すフローチャートである。以下、図16に示すフローチャートを用いて、電力変換装置1の電源起動シーケンスについて、具体的に説明する。なお、図16の各ステップは、制御部10によって実行される。
ステップS700では、制御部10は、停止状態から、電力変換回路6の陽極側に設けられた第1の電流制限部4Cを起動あるいは有効にし、電流制限値を0から予め設定された電流値に変更し、ステップS701へと進む。
ステップS701では、電力変換回路6の短絡故障があるか否かを判定し、短絡故障があると判定された場合はステップS702へと進み、短絡故障がないと判定された場合はステップS703へと進む。
ステップS702では、制御部10は、電力変換回路6の陽極側に設けられた第1の電流制限部4Cを電流遮断の状態にし、電力変換装置1の異常、すなわち、短絡故障を上位ECUに報知して、電源起動シーケンスを終了する。
一方、ステップS703では、制御部10は、各電源系統の陰極端子側の第1の電流制限部4Aおよび4Bを起動あるいは有効にし、電流制限値を0から予め設定された電流値に変更し、ステップS704へと進む。
ステップS704では、各電源系統の陰極端子側の第1の電流制限部4Aおよび4Bの少なくともいずれか一方を流れる電流量が予め設定された電流制限値以上の場合はステップS705へと進み、第1の電流制限部4Aおよび4Bを流れる電流量が予め設定された電流制限値未満である場合はステップS706へと進む。
ステップS706では、電力変換装置1の正常起動を上位ECUに報知して、電源起動シーケンスを終了する。
ステップS705では、制御部10は、電流制限状態の第1の電流制限部4Aまたは4Bを遮断の状態に設定すると共に、電流制限状態の第1の電流制限部4Aまたは4Bが接続されている側の直流電源200または100の電圧低下を上位ECUに報知して、電源起動シーケンスを終了する。
図17は、本実施の形態4に係る電力変換装置1における直流電源100および直流電源200の地絡を含む電圧低下、または、電力変換回路6の短絡故障が発生した場合のフェイルセーフ動作を示すフローチャートである。以下、図17に示すフローチャートを用いて、電力変換装置1のフェイルセーフ動作について、具体的に説明する。なお、図17の各ステップは、制御部10によって実行される。
ステップS800では、制御部10は、電力変換回路6の陽極側に設けられた第1の電流制限部4Cが電流制限の状態であるか否かを判定する。第1の電流制限部4Cが電流制限の状態である場合はステップS801へと進み、第1の電流制限部4Cが電流制限の状態でない場合はステップS803へと進む。
ステップS801では、制御部10は、電力変換回路6の陽極側に設けられた第1の電流制限部4Cの電流制限の状態が、予め設定された時間以上継続しているか否かを判定する。第1の電流制限部4Cの電流制限の状態が、予め設定された設定時間以上が継続している場合はステップS802へと進み、第1の電流制限部4Cの電流制限の状態が、予め設定された設定時間未満であれば、ステップS803へと進む。
ステップS802では、制御部10は電力変換回路6の陽極側に設けられた第1の電流制限部4Cを電流遮断の状態にして電力供給を遮断すると共に、電力変換回路6の短絡故障を上位ECUに報知し、図17のフェイルセーフ動作を停止する。
ステップS803では、制御部10は、各電源系統の陰極端子側の第1の電流制限部4Aおよび4Bが電流制限の状態であるか否かを判定する。第1の電流制限部4Aおよび4Bの少なくともいずれか一方が電流制限の状態である場合はステップS804へと進み、第1の電流制限部4Aおよび4Bが共に電流制限の状態でない場合はステップS800へと戻る。
ステップS804では、各電源系統の陰極端子側の第1の電流制限部4Aまたは4Bの電流制限の状態が、予め設定された設定時間以上継続しているか否かを判定する。第1の電流制限部4Aまたは4Bの電流制限の状態が、予め設定された設定時間以上が継続している場合はステップS805へと進み、第1の電流制限部4Aまたは4Bの電流制限の状態が、設定時間未満であれば、ステップS800へと戻る。
ステップS805では、制御部10は、電流制限状態の第1の電流制限部4Aまたは4Bを遮断の状態に設定すると共に、電流制限状態であった第1の電流制限部4Aまたは4Bが接続されている直流電源200または100の電圧低下を上位ECUに報知し、ステップS800へと戻る。
以上のように、実施の形態4では、系電圧が同じ直流電源を2系統入力とする電力変換装置1において、第1の電流制限部4Aおよび4B直流電源100および直流電源200への入出力電流を制限するので、直流電源間の電位差による干渉電流を抑制し、複数の直流電源から電力変換装置1に電力供給を実施することができる。
また、第1の電流制限部4Cを導通状態にしたときは、ダイオードの順方向電圧よりも電圧降下が小さいので、直流電源200から電力変換回路6へ至る回路の損失を低減することができる。
さらに、直流電源100および200の負荷である電力変換回路6が短絡故障しても、電力変換回路6の陽極側の第1の電流制限部4Cによって短絡電流を制限するので、直流電源100および直流電源200共に電圧低下を抑制でき、同系統に接続される他のECUの最低動作電圧を下回って、動作不能に至る事態を防止することができる。
加えて、電力変換装置1への電源供給線が1本断線あるいは地絡しても、直流電源100または200の陰極端子側の第1の電流制限部4Aまたは4Bによって短絡電流を制限すると共に、もう1系統から電力変換装置1へ電力を供給し続けているため、電力変換回路6は絶えず電力変換動作を継続することが可能である。
また、上述の実施の形態1から実施の形態3までにおいては、第1の電源スイッチ2および第2の電源スイッチ3を備える電源系統における電力変換装置1の入力端、すなわち、陽極側が地絡故障した場合、電力変換動作を絶えず継続することが難しいが、本実施の形態4では、全ての電源系統の陰極端子側に第1の電流制限部4Aおよび4Bを各々備えると共に、電力変換回路6の陽極側に第1の電流制限部4Cを設けることで、電力変換装置1の入力端、すなわち、陽極側が地絡故障した場合、電力変換動作を絶えず継続することが可能である。
実施の形態5.
本発明の実施の形態5に係る電力変換装置1では、全ての電源系統の陽極端子側に、第2の電流制限部5を各々備えると共に、電力変換回路6の陰極側に1つの第2の電流制限部5を設けることで、実施の形態1から実施の形態3までと同様の効果を得る。
図18は、本実施の形態5に係る電力変換装置1の構成を示すブロック図である。図18では、2系統の直流電源が接続される場合について示している。図18では、2つの電源系統の陽極端子側に、第2の電流制限部5が各々備えられている。また、電力変換回路6の陰極側に、第2の電流制限部5が1つ備えられている。以下の説明においては、直流電源200の陽極端子側に接続された第2の電流制限部5を「第2の電流制限部5A」と呼び、直流電源100の陽極端子側に接続された第2の電流制限部5を「第2の電流制限部5B」と呼び、電力変換回路6の陰極側に接続された第2の電流制限部5を「第2の電流制限部5C」と呼ぶこととする。
なお、直流電源100と直流電源200の系電圧は同じと考える。
他の構成については、実施の形態1〜4と同じであるため、ここでは、その説明を省略する。なお、図18では、図の簡略化のために、制御部10の図示が省略されているが、実際には、図1と同様に、電力変換装置1内に、制御部10が設けられている。
以下、本実施の形態5に係る電力変換装置1の動作について説明する。
図19は、本実施の形態5に係る電力変換装置1における電源起動時の電源起動シーケンスを示すフローチャートである。以下、図19に示すフローチャートを用いて、電力変換装置1の電源起動シーケンスについて、具体的に説明する。なお、図19の各ステップは、制御部10によって実行される。
ステップS900では、制御部10は、停止状態から、電力変換回路6の陰極側に設けられた第2の電流制限部5Cを起動あるいは有効にし、電流制限値を0から予め設定された電流値に変更し、ステップS901へと進む。
ステップS901では、電力変換回路6に短絡故障があるか否かを判定し、短絡故障があると判定されていた場合は、ステップS902へと進み、短絡故障がないと判定された場合は、ステップS903へと進む。
ステップS902では、制御部10は、電力変換回路6の陰極側に設けられた第2の電流制限部5Cを電流遮断の状態にし、電力変換装置1の異常、すなわち、短絡故障を上位ECUに報知して、電源起動シーケンスを終了する。
一方、ステップS903では、制御部10は、各電源系統の陽極端子側の第2の電流制限部5Aおよび5Bを起動あるいは有効にし、電流制限値を0から予め設定された電流値に変更し、ステップS904へと進む。
ステップS904では、各電源系統の陽極端子側の第2の電流制限部5Aおよび5Bを流れる電流量が予め設定された電流制限値以上か否かを判定する。第2の電流制限部5Aおよび5Bの少なくとも1つを流れる電流量が予め設定された電流制限値以上の場合は、ステップS905へと進む。一方、第2の電流制限部5Aおよび5Bを流れる電流量が予め設定された電流制限値未満の場合は、ステップS906へと進む。
ステップS906では、電力変換装置1の正常起動を上位ECUに報知して、電源起動シーケンスを終了する。
ステップS905では、電流制限状態の第2の電流制限部5Aまたは5Bを遮断の状態に設定すると共に、制御部10は、電流制限状態であった第2の電流制限部5Aおよび5Bが接続されている電源系統の電圧低下を上位ECUに報知して、電源起動シーケンスを終了する。
図20は、本実施の形態5に係る電力変換装置1における直流電源100および直流電源200の地絡を含む電圧低下、または、電力変換回路6の短絡故障が発生した場合のフェイルセーフ動作を示すフローチャートである。以下、図20に示すフローチャートを用いて、電力変換装置1のフェイルセーフ動作について、具体的に説明する。なお、図20の各ステップは、制御部10によって実行される。
ステップS1000では、制御部10は、電力変換回路6の陰極側に設けられた第2の電流制限部5Cが電流制限の状態であるか否かを判定する。第2の電流制限部5Cが電流制限の状態である場合は、ステップS1001へと進み、第2の電流制限部5Cが電流制限の状態でない場合は、ステップS1003へと進む。
ステップS1001では、制御部10は、電力変換回路6の陰極側に設けられた第2の電流制限部5Cの電流制限の状態が予め設定された設定時間以上継続しているか否かを判定する。第2の電流制限部5Cの電流制限の状態が予め設定された設定時間以上継続している場合はステップS1002へと進み、第2の電流制限部5Cの電流制限の状態が設定時間未満であれば、ステップS1003へと進む。
ステップS1002では、制御部10は、電力変換回路6の陰極側に設けられた第2の電流制限部5Cを電流遮断の状態にして電力供給を遮断すると共に、電力変換回路6の短絡故障を上位ECUに報知し、図20のフェイルセーフ動作を停止する。
ステップS1003では、制御部10は、各電源系統の陽極端子側の第2の電流制限部5Aおよび5Bが電流制限の状態であるか否かを判定する。第2の電流制限部5Aおよび5Bが電流制限の状態である場合はステップS1004へと進み、第2の電流制限部5Aおよび5Bが電流制限の状態でない場合はステップS1000へと戻る。
ステップS1004では、各電源系統の陽極端子側の第2の電流制限部5Aおよび5Bの電流制限の状態が予め設定された設定時間以上継続しているか否かを判断し、第2の電流制限部5Aおよび5Bの電流制限の状態が設定時間以上継続している場合はステップS1005へと進み、第2の電流制限部5Aおよび5Bの電流制限の状態が設定時間未満であれば、ステップS1000へと戻る。
ステップS1005では、制御部10は、電流制限状態の第2の電流制限部5Aおよび5Bを遮断の状態に設定すると共に、電流制限状態であった第2の電流制限部5Aおよび5Bが接続されている直流電源200および100の電圧低下を上位ECUに報知し、ステップS1000へと戻る。
以上のように、本実施の形態5では、系電圧が同じ直流電源を2系統入力とする電力変換装置1において、第2の電流制限部5Aおよび5Bが直流電源100および直流電源200への入出力電流を制限するので、直流電源100および200間の電位差による干渉電流を抑制し、複数の直流電源から電力変換装置1に電力供給を実施することができる。
また、第2の電流制限部5Cを導通状態にしたときは、ダイオードの順方向電圧よりも電圧降下が小さいので、直流電源100および200から電力変換回路6へ至る回路の損失を低減することができる。
さらに、直流電源200の負荷である電力変換回路6が短絡故障しても、電力変換回路6の陰極側の第2の電流制限部5Cによって短絡電流を制限するので、直流電源100および直流電源200共に電圧低下を抑制でき、同系統に接続される他のECUの最低動作電圧を下回って、動作不能に至る事態を防止することができる。
加えて、電力変換装置1への電源供給線が1本断線あるいは地絡しても、直流電源200または100の陽極端子側の第2の電流制限部5Aまたは5Bによって短絡電流を制限すると共に、もう1系統から電力変換装置1へ電力を供給し続けているため、電力変換回路6は絶えず電力変換動作を継続することが可能である。
また、上述の実施の形態1から実施の形態3まででは、第1の電源スイッチ2および第2の電源スイッチ3を備える電源系統における電力変換装置1の入力端が地絡故障した場合、電力変換動作を絶えず継続することが難しいが、本実施の形態5では、全ての電源系統の陽極端子側に第2の電流制限部5Aおよび5Bを各々備えると共に、電力変換回路6の陰極側に第2の電流制限部5Cを設けるようにしたので、電力変換装置1の入力端が地絡故障した場合においても、電力変換動作を絶えず継続することができる。
実施の形態6.
上述の実施の形態1から実施の形態5まででは、電力変換装置1へ接続される電源系統の系電圧が同じである場合について説明した。本発明はこれに限らず、電源系統の系電圧が異なる場合でもよく、第1の電流制限部4および第2の電流制限部5を備えることで同様の効果を得ることができる。
例えば、図21は、本実施の形態6に係る電力変換装置1の構成を示すブロック図である。図21では、2系統の直流電源が接続される場合について示している。図21では、直流電源110のほうが直流電源200よりも電圧が高い場合を考える。図21では、2つの電源系統の陽極端子側に第2の電源スイッチ3が各々備えられている。以下では、直流電源200の陽極端子側の第2の電源スイッチ3を「第2の電源スイッチ3C」と呼び、直流電源110の陽極端子側の第2の電源スイッチ3を「第2の電源スイッチ3D」と呼ぶこととする。また、図21では、電力変換回路6の陰極側に、第2の電流制限部5が1つ備えられている。さらに、低圧側の直流電源200の陽極端子側に、第1の電流制限部4が1つ備えられている。
他の構成については、実施の形態1〜5と同じであるため、ここでは、その説明を省略する。なお、図21では、図の簡略化のために、制御部10の図示が省略されているが、実際には、図1と同様に、電力変換装置1内に、制御部10が設けられている。
以下、実施の形態6に係る電力変換装置1の動作について説明する。
図22は、本実施の形態6に係る電力変換装置1における電源起動時の電源起動シーケンスを示すフローチャートである。以下、図22に示すフローチャートを用いて、電力変換装置1の電源起動シーケンスについて、具体的に説明する。なお、図22の各ステップは、制御部10によって実行される。
ステップS1100では、制御部10は、停止状態から、電力変換回路6の陰極側に設けられた第2の電流制限部5を起動あるいは有効にし、電流制限値を0から予め設定された電流値に変更し、ステップS1101へと進む。
ステップS1101では、電力変換回路6に短絡故障があるか否かを判定する。電力変換回路6に短絡故障があると判定された場合は、ステップS1102へと進み、電力変換回路6に短絡故障がないと判定された場合はステップS1103へと進む。
ステップS1102では、制御部10は、電力変換回路6の陰極側に設けられた第2の電流制限部5を電流遮断の状態にし、電力変換装置1の異常、すなわち、短絡故障を上位ECUに報知して、電源起動シーケンスを終了する。
一方、ステップS1103では、第2の電流制限部5を流れる電流が全く検出されないか否かを判定する。第2の電流制限部5を流れる電流が全く検出されない場合は、ステップS1104へ進み、そうでない場合は、ステップS1108に進む。
ステップS1104では、直流電源110の電圧低下を上位ECUに報知して、ステップS1105に進む。
ステップS1105では、第1の電流制限部4を起動あるいは有効にし、電流制限値を0から予め設定された電流値に変更し、ステップS1106へと進む。
ステップS1106では、第1の電流制限部4を流れる電流量が、予め設定された電流制限値以上の場合は、ステップS1107に進む。一方、第1の電流制限部4を流れる電流量が、予め設定された電流制限値未満である場合は、電源起動シーケンスを終了する。
ステップS1107では、制御部10は、第1の電流制限部4を遮断の状態にすると共に、電力変換回路6の異常、すなわち、短絡故障を、上位ECUに報知して、電源起動シーケンスを終了する。
一方、ステップS1108では、高圧側の直流電源110に接続される第2の電源スイッチ3Dを導通の状態にして、ステップS1109へ進む。
ステップS1109では、第1の電流制限部4を起動あるいは有効にし、電流制限値を0から予め設定された電流値に変更し、ステップS1110へと進む。
ステップS1110では、第1の電流制限部4を流れる電流量が、予め設定された電流制限値以上の場合は、ステップS1111に進む。一方、第1の電流制限部4を流れる電流量が、予め設定された電流制限値未満である場合は、ステップS1112へ進む。
ステップS1112では、電力変換装置1の正常起動を上位ECUに報知して、電源起動シーケンスを終了する。
ステップS1111では、制御部10は、高圧側の直流電源110に接続される第2の電源スイッチ3Dを遮断の状態にすると共に、低圧側の直流電源200に接続される第2の電源スイッチ3Cを導通の状態にして、直流電源110の電圧低下を上位ECUに報知して、電源起動シーケンスを終了する。
図23は、本実施の形態6に係る電力変換装置1における直流電源110および直流電源200の電圧低下、または、電力変換回路6の短絡故障が発生した場合のフェイルセーフ動作を示すフローチャートである。以下、図23に示すフローチャートを用いて、電力変換装置1のフェイルセーフ動作について、具体的に説明する。なお、図23の各ステップは、制御部10によって実行される。
ステップS1200では、制御部10は、第2の電流制限部5が電流制限の状態であるか否かを判定する。第2の電流制限部5が、電流制限の状態である場合は、ステップS1201へと進み、第2の電流制限部5が、電流制限の状態でない場合は、ステップS1203へと進む。
ステップS1201では、制御部10は、第2の電流制限部5の電流制限の状態が予め設定された設定時間以上継続しているか否かを判定する。第2の電流制限部5の電流制限の状態が、設定時間以上が継続している場合はステップS1202へと進む。一方、第2の電流制限部5の電流制限の状態が、設定時間未満であれば、ステップS1203へと進む。
ステップS1202では、制御部10は、第2の電流制限部5および第1の電流制限部4を電流遮断の状態にして電力供給を遮断すると共に、電力変換回路6の短絡故障を上位ECUに報知し、図23のフェイルセーフ動作を停止する。
ステップS1203では、制御部10は、第1の電流制限部4が電流制限値の状態であるか否かを判定する。第1の電流制限部4が電流制限の状態である場合は、ステップS1204へと進み、第1の電流制限部4が電流制限の状態でない場合はステップS1200へと戻る。
ステップS1204では、第1の電流制限部4の電流制限の状態が予め設定された設定時間以上継続しているか否かを判定する。第1の電流制限部4の電流制限の状態が、予め設定された設定時間以上が継続している場合は、ステップS1205へと進み、第1の電流制限部4の電流制限の状態が、設定時間未満であれば、ステップS1200へと戻る。
ステップS1205では、制御部10は、高圧側の直流電源110に接続される第2の電源スイッチ3Dを遮断の状態に設定すると共に、低圧側の直流電源200に接続される第2の電源スイッチ3Cを導通の状態にして、直流電源110の電圧低下を上位ECUに報知し、ステップS1200へと戻る。
以上のように、本実施の形態6では、系電圧が異なる直流電源を2系統入力とする電力変換装置1において、第1の電流制限部4が直流電源110から直流電源200への入出力電流を制限し、第2の電源スイッチ3Cおよび3Dが直流電源110と直流電源200との間の入出力電流を遮断するので、直流電源間の電位差による干渉電流を抑制し、複数の直流電源から電力変換装置1に電力供給を実施することができる。
また、第2の電源スイッチ3Cおよび3D、第1の電流制限部4、および、第2の電流制限部5を導通の状態にしたときは、ダイオードの順方向電圧よりも電圧降下が小さいので、直流電源110および200から電力変換回路6へ至る回路の損失を低減することができる。
さらに、直流電源110および200の負荷である電力変換回路6が短絡故障しても、電力変換回路6の陰極側の第2の電流制限部5によって短絡電流を制限するので、直流電源110および直流電源200共に電圧低下を抑制でき、同系統に接続される他のECUの最低動作電圧を下回って、動作不能に至る事態を防止することができる。
加えて、電力変換装置1への電源供給線が1本断続しても、もう1系統から電力変換装置1へ電力を供給し続けているため、電力変換回路6は絶えず電力変換動作を継続することが可能である。
実施の形態7.
本発明の実施の形態7では、電源系統の系電圧が異なる場合であって、実施の形態6の変形例を示す。図24は、本実施の形態7による電力変換装置1の構成を示すブロック図である。
図24では、2系統の直流電源が接続される場合について示しており、直流電源110のほうが直流電源200よりも電圧が高い場合を考える。図24では、電力変換回路6の陽極側に、第1の電流制限部4が1つ備えられている。また、2つの電源系統の陰極端子側に第1の電源スイッチ2が各々備えられている。以下では、直流電源200の陽極端子側の第1の電源スイッチ2を「第1の電源スイッチ2C」と呼び、直流電源110の陽極端子側の第1の電源スイッチ2を「第1の電源スイッチ2D」と呼ぶこととする。また、図24では、低圧側の直流電源200の陰極端子側に、第2の電流制限部5が1つ備えられている。
他の構成については、実施の形態1〜6と同じであるため、ここでは、その説明を省略する。なお、図24では、図の簡略化のために、制御部10の図示が省略されているが、実際には、図1と同様に、電力変換装置1内に、制御部10が設けられている。
以下、本実施の形態7に係る電力変換装置1の動作について説明する。
図25は、本実施の形態7に係る電力変換装置1における電源起動時の電源起動シーケンスを示すフローチャートである。以下、図25に示すフローチャートを用いて、電力変換装置1の電源起動シーケンスについて、具体的に説明する。なお、図25の各ステップは、制御部10によって実行される。
ステップS1300では、制御部10は、停止状態から、電力変換回路6の陽極側に設けられた第1の電流制限部4を起動あるいは有効にし、電流制限値を0から予め設定された電流値に変更し、ステップS1301へと進む。
ステップS1301では、電力変換回路6に短絡故障があるか否かを判定する。電力変換回路6に短絡故障があると判定された場合はステップS1302へと進み、電力変換回路6に短絡故障がないと判定された場合はステップS1303へと進む。
ステップS1302では、制御部10は、電力変換回路6の陽極側に設けられた第1の電流制限部4を電流遮断の状態にし、電力変換装置1の異常、すなわち、短絡故障を上位ECUに報知して、電源起動シーケンスを終了する。
一方、ステップS1303において、第1の電流制限部4を流れる電流が全く検出されないか否かを判定する。第1の電流制限部4を流れる電流が全く検出されない場合は、ステップS1304へ進み、そうでない場合は、ステップS1308に進む。
ステップS1304では、直流電源110の電圧低下を上位ECUに報知して、ステップS1305に進む。
ステップS1305では、第2の電流制限部5を起動あるいは有効にし、電流制限値を0から予め設定された電流値に変更し、ステップS1306へと進む。
ステップS1306では、第2の電流制限部5を流れる電流量が予め設定された電流制限値以上の場合は、ステップS1307に進む。一方、第2の電流制限部5を流れる電流量が予め設定された電流制限値未満である場合は、電源起動シーケンスを終了する。
ステップS1307では、制御部10は、第2の電流制限部5を遮断の状態にすると共に、電力変換装置1の異常、すなわち、短絡故障を上位ECUに報知して、電源起動シーケンスを終了する。
一方、ステップS1308では、高圧側の直流電源110に接続される第1の電源スイッチ2を導通の状態にして、ステップS1309へ進む。
ステップS1309では、第2の電流制限部5を起動あるいは有効にし、電流制限値を0から予め設定された電流値に変更し、ステップS1310へと進む。
ステップS1310では、第2の電流制限部5を流れる電流量が予め設定された電流制限値以上の場合は、ステップS1311に進む。一方、第2の電流制限部5を流れる電流量が予め設定された電流制限値未満である場合は、ステップS1312へ進む。
ステップS1312では、電力変換装置1の正常起動を上位ECUに報知して、電源起動シーケンスを終了する。
ステップS1311では、制御部10は、高圧側の直流電源110に接続される第1の電源スイッチ2Dを遮断の状態にすると共に、低圧側の直流電源200に接続される第1の電源スイッチ2Cを導通の状態にして、直流電源110の電圧低下を上位ECUに報知して、電源起動シーケンスを終了する。
図26は、本実施の形態7に係る電力変換装置1における直流電源110および直流電源200の電圧低下、または、電力変換回路6の短絡故障が発生した場合のフェイルセーフ動作を示すフローチャートである。以下、図26に示すフローチャートを用いて、電力変換装置1のフェイルセーフ動作について、具体的に説明する。なお、図26の各ステップは、制御部10によって実行される。
ステップS1400では、制御部10は、第1の電流制限部4が電流制限の状態であるか否かを判定し、第1の電流制限部4が電流制限の状態である場合は、ステップS1401へと進み、第1の電流制限部4が電流制限の状態でない場合はステップS1403へと進む。
ステップS1401では、制御部10は、第1の電流制限部4の電流制限の状態が予め設定された設定時間以上継続しているか否かを判定する。第1の電流制限部4の電流制限の状態が、予め設定された設定時間以上が継続している場合はステップS1402へと進み、第1の電流制限部4の電流制限の状態が設定時間未満であれば、ステップS1403へと進む。
ステップS1402では、制御部10は第1の電流制限部4および第2の電流制限部5を電流遮断の状態にして、直流電源200から電力変換回路6への電力供給および電力変換回路6から直流電源200への電力供給を遮断すると共に、電力変換回路6の短絡故障を上位ECUに報知し、図26のフェイルセーフ動作を停止する。
ステップS1403では、制御部10は、第2の電流制限部5が電流制限の状態であるか否かを判定し、第2の電流制限部5が電流制限の状態である場合はステップS1404へと進み、第2の電流制限部5が電流制限の状態でない場合はステップS1400へと戻る。
ステップS1404では、第2の電流制限部5の電流制限の状態が、予め設定された設定時間以上継続しているか否かを判定する。第2の電流制限部5の電流制限の状態が、予め設定された設定時間以上が継続している場合は、ステップS1405へと進み、第2の電流制限部5の電流制限の状態が、設定時間未満であれば、ステップS1400へと戻る。
ステップS1405では、制御部10は、高圧側の直流電源110に接続される第1の電源スイッチ2を遮断の状態に設定すると共に、低圧側の直流電源200に接続される第1の電源スイッチ2を導通の状態にして、直流電源110の電圧低下を上位ECUに報知し、ステップS1400へと戻る。
以上のように、実施の形態7では、系電圧が異なる直流電源を2系統入力とする電力変換装置1において、第2の電流制限部5が、直流電源110から直流電源200への入出力電流を制限し、第1の電源スイッチ2が、直流電源110と直流電源200との間の入出力電流を遮断するので、直流電源110および200間の電位差による干渉電流を抑制し、複数の直流電源から電力変換装置1に電力供給を実施することができる。
また、第1の電源スイッチ2、第1の電流制限部4、および、第2の電流制限部5を導通の状態にしたときは、ダイオードの順方向電圧よりも電圧降下が小さいので、直流電源から電力変換回路6へ至る回路の損失を低減することができる。
さらに、直流電源110および200の負荷である電力変換回路6が短絡故障しても、電力変換回路6の陽極側の第1の電流制限部4によって短絡電流を制限するので、直流電源110および直流電源200共に電圧低下を抑制でき、同系統に接続される他のECUの最低動作電圧を下回って、動作不能に至る事態を防止することができる。
加えて、電力変換装置1への電源供給線が1本断線しても、もう1系統から電力を供給し続けているため、電力変換回路6は絶えず電力変換動作を継続することが可能である。
なお、上述した実施の形態1から実施の形態7において、図27のように、第1の電流制限部4および第2の電流制限部5の各温度を検出する温度検出部7が設けられていてもよい。図27では、第1の電流制限部4に接続された第1の温度検出部としての温度検出部7のみを図示しているが、第2の電流制限部5に接続される第2の温度検出部としての温度検出部7についても、図27と同様の接続方法で接続する。なお、図27では、第1の電流制限部4が図2に示す構成を有している場合を例に挙げて図示しているが、その場合に限らず、第1の電流制限部4が図3または図4に示す構成を有している場合でも、同様に、温度検出部7を設けることができることは言うまでもない。また、第2の電流制限部5についても同様である。こうして、温度検出部7によって検出した第1の電流制限部4および第2の電流制限部5の各温度が、予め設定された閾値以上であれば、該当する第1の電流制限部4または第2の電流制限部5を電流遮断の状態に設定する。
ここで、予め設定された閾値の設定方法としては、第1の電流制限部4あるいは第2の電流制限部5の動作温度の上限値をもとに設定する方法、最大接合部温度を基に設定する方法、あるいは、最大損失を基に設定する方法が考えられる。
温度検出部7としては、例えば、サーミスタのような温度検出素子8を温度検出対象部の近傍に設け、温度検出素子8の両端に電流を流し、温度に応じた抵抗変化を電圧変化に変換して検出する方法が考えられる。
図27では、第1の電流制限部4および第2の電流制限部5の温度を、それぞれ直接検出するので、電流制限状態にあっても、第1の電流制限部4および第2の電流制限部5の過熱保護を実施することができる。そのため、第1の電流制限部4および第2の電流制限部5の短絡故障による直流電源間の短絡、あるいは、直流電源と電力変換回路6との間の電源供給経路の短絡を防止することができる。
ここで、上述した実施の形態1から実施の形態7までで記載した制御部10のハードウェア構成について説明する。
上述した実施の形態1〜7に係る電力変換装置における制御部10の各機能は、処理回路によって実現される。各機能を実現する処理回路は、専用のハードウェアであってもよく、メモリに格納されるプログラムを実行するプロセッサであってもよい。図28は、本発明の実施の形態1〜7に係る制御部10の各機能を専用のハードウェアである処理回路1000で実現する場合を示した構成図である。また、図29は、本発明の実施の形態1〜7に係る制御部10の各機能をプロセッサ2001およびメモリ2002を備えた処理回路2000により実現する場合を示した構成図である。
処理回路が専用のハードウェアである場合、処理回路1000は、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、またはこれらを組み合わせたものが該当する。制御部10の各部の機能それぞれを個別の処理回路1000で実現してもよいし、各部の機能をまとめて処理回路1000で実現してもよい。
一方、処理回路がプロセッサ2001の場合、電力変換装置1の制御部10の各部の機能は、ソフトウェア、ファームウェア、またはソフトウェアとファームウェアとの組み合わせにより実現される。ソフトウェアおよびファームウェアは、プログラムとして記述され、メモリ2002に格納される。プロセッサ2001は、メモリ2002に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、各部の機能を実現する。すなわち、電力変換装置1の制御部10は、処理回路2000により実行されるときに、図7,図8,図10,図11,図13,図14,図16,図17,図19,図20,図22,図23,図25,図26の各フローチャートにおける各ステップが結果的に実行されることになるプログラムを格納するためのメモリ2002を備える。
これらのプログラムは、上述した各部の手順あるいは方法をコンピュータに実行させるものであるともいえる。ここで、メモリ2002とは、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)等の、不揮発性または揮発性の半導体メモリが該当する。また、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク、DVD等も、メモリ2002に該当する。
なお、上述した各部の機能について、一部を専用のハードウェアで実現し、一部をソフトウェアまたはファームウェアで実現するようにしてもよい。
このように、処理回路は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、またはこれらの組み合わせによって、上述した各部の機能を実現することができる。
なお、本発明は、その発明の範囲内において、各実施の形態1〜7を自由に組み合わせることが可能である。あるいは、各実施の形態1〜7の任意の構成要素を適宜変更または省略することが可能である。