JP2020070220A - セリアナノ粒子の製造方法、およびセリアナノ粒子、研磨剤、研磨方法 - Google Patents
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前記一対のセリウム電極に、パルス状の電圧を周期的に印加して、パルスプラズマを繰り返し発生させるパルス放電工程とを有し、
前記一対のセリウム電極からセリアナノ粒子を合成することを特徴とするセリアナノ粒子の製造方法。
<2> 前記パルス放電工程において、周期的に印加されるパルス状の電圧が、1V以上500V以下の電圧であり、電極間に流れる電流が0.1μs以上50μs以下の立ち上がり期間、1μs以上500μs以下のパルス幅の条件である前記<1>記載の製造方法。
<3> 前記溶媒は、水または過酸化水素水である、前記<1>または<2>に記載の方法。
<5> 平均一次粒子径が10nm以下であるセリアナノ粒子を含有する研磨剤。
<6> 平均一次粒子径が10nm以下であるセリアナノ粒子を含有する研磨剤を用いる研磨方法。
本発明のセリアナノ粒子の製造方法は、溶媒中に一対のセリウム電極を浸漬させる浸漬工程と、前記一対のセリウム電極に、パルス状の電圧を周期的に印加して、パルスプラズマを繰り返し発生させるパルス放電工程とを有し、前記一対のセリウム電極からセリアナノ粒子を合成することを特徴とする。
図1は、本発明の製造方法を実施するために用いるナノ粒子製造装置10の概略構成の一例を示す説明図である。ナノ粒子製造装置10は、例えば、電源装置30、一対の炭素電極101,102、反応容器201、および振動装置40を備えている。反応容器201には、水等の溶媒202が収容されている。なお、振動装置40については、省略することも可能である。
一対のセリウム電極101,102は、いずれもセリウムの電極である。それぞれのセリウム電極の形状は、例えば、棒状の電極を用いることができる。
溶媒202は、一対のセリウム電極101,102を浸漬させ、また、酸素を供給するものであり、溶媒202を構成する元素として酸素を含む液体である。例えば水(H2O)である。また、溶媒202内で、一対のセリウム電極101,102間に液中パルス放電を行う。また、液中パルス放電により合成されるセリアナノ粒子を一時的に貯蔵する。
本発明では、液体中でセリウム電極101,102間に火花放電やパルス放電させることにより、セリアナノ粒子を合成する。これらの放電のために、セリウム電極101,102に接続した電源装置30により所定の電圧を印加する。
一対のセリウム電極に、定期的又は間欠的に振動を与えてもよい。振動を与えると、電極間に析出するセリアが滞留しにくくなり、放電が効率的に行われるため好ましい。
振動装置40は、一対のセリウム電極101,102に振動を与えるものである。電極101,102に振動を与えることで、電極101,102表面に生成される析出物が電極101,102表面で滞留することを防止し、放電を効率的に行うことができる。振動装置40は、セリウム電極102に定期的に振動を与えてもよいし、連続的または間欠的に振動を与えてもよい。
また、反応が進行して一対のセリウム電極101,102付近の溶媒202の濃度及び温度が変化することを防止し、一対の電極101,102表面の冷却を効率的に行うために、ナノ粒子製造装置10は、撹拌装置など、溶媒202を流動させる機構を備えていてもよい。
溶媒202内でパルスプラズマを繰り返し作用させることで、セリウム電極101,102の表面はその都度冷却される。また、振動装置40により電極101,102に与えられる振動によって、セリアのセリウム電極101,102の表面からの脱落を促進して溶媒202中に拡散させることができる。
本発明の製造方法では、一対のセリウム電極間に、溶媒中でパルスプラズマを、繰り返し発生させる。このパルスプラズマは、火花放電や瞬間的なアーク放電とすることができる。これにより、材料となるセリウム電極と周りの水などの元素として酸素(O)を含む溶媒が瞬間的に蒸発し、Ce4+やCe3+、O2-、(OH)-などのイオン化(プラズマ)状態になると考えられる。また、放電を終え冷却する際に、電極のセリウムイオンと、溶媒からイオン化した酸素が最終的に化合すると考えられ、製造時の雰囲気は常温のままでもセリアナノ粒子が得られる。すなわち、常温程度の液中でセリアナノ粒子が合成される。その際、短時間の局所的な高温状態でセリアは合成されており周りの溶媒の冷却作用によりセリアナノ粒子は結晶成長しにくいため、非常に小さなナノ粒子が得られる。また、合成されたナノ粒子は溶媒となる液中に分散するので、セリアナノ粒子の大きな二次粒子化等の凝集を防ぐことができる。または、沈殿して一時的に二次粒子化しても、再度分散させやすい粒子となる。
また、消費する電気エネルギーも少なく、高真空や高圧電源の設備等を必要としないため、製造設備等も入手しやすく、製造コストも低廉なものとすることができる。
本発明のセリアナノ粒子の製造方法は、溶媒中に一対のセリウム電極を浸漬させる浸漬工程を有する。
溶媒中に浸漬させる電極は、いずれもセリウムの電極である。それぞれのセリウム電極の形状に制限はなく、例えば、棒状、針金状、板状など所望の形状及び大きさの電極を用いることができる。また、電極は、緻密なものでもよいし、バルク状のように空隙があってもよい。また、電極の大きさに関して制限されるものはなく、製造設備や製造量等を考慮して適したものを使用することができる。電極に使用する材料の種類は、セリアナノ粒子を合成することができる範囲で任意のものを用いることができる。添加物を入れたい場合や高純度が必要でない場合は、添加物を含んだセリウムや、純度や原料を変えたものを用いてもよい。純度が高いセリアを得る場合、高純度のセリウム(Ce)電極を用いることが望ましい。
電極を浸漬させる溶媒は、反応の場となる溶媒中にパルスプラズマを放電することで酸素を供給することができるように、元素として酸素(O)原子を含む任意の溶媒を用いることができる。例えば、水や、過酸化水素水、アルコール類などがあげられる。溶媒としては、セリウムと反応して酸化物を選択的に合成しやすく、冷却効果にも優れたものが好ましい。このような観点から、水(H2O)や過酸化水素水(H2O2)を含むものが好ましく用いられる。具体的な溶媒としては、水や過酸化水素水などを用いることができる。より好ましくは、他の元素が少なく副生成物等の不純物が発生しにくい水を用いることが好ましい。水は、水道水等でもよいが、精製水や超純水を用いることが好ましい。
本発明の製造方法は、一対のセリウム電極に、パルス状に電圧を周期的に印加して、パルスプラズマを繰り返し発生させるパルス放電工程を有する。このパルスプラズマは、火花放電によるパルスプラズマや、アーク放電プラズマなどを用いることができる。
火花放電(フラッシオーバ、絶縁破壊あるいは全路破壊)は、電圧がある限界をこえると、電極間に火花が観察される現象で、不連続な過渡的現象である。電極間に印加する電圧を上げると、電極間に存在する気体分子が高電圧によって加速された電子と衝突して電離し(α作用と呼ぶ)、また、電離によって生成された正イオンが負極に衝突する際に起こる二次電子放出により負極より電子が電極間の空間に供給される(γ作用と呼ぶ)ようになる。これらの二つの作用により生成される荷電粒子の量が、両電極あるいは周囲の空間へと失われる量よりも多いと、電極間に流れる荷電粒子の量はなだれ的に増加し、電極間には大電流が流れるようになることで起こる。図2は、このような火花放電によるパルス放電の一例を示すものである。
アーク放電プラズマは、粒子密度が高く、イオンや中性粒子の温度が電子温度とほぼ等しい局所熱平衡状態にある熱プラズマである。このアーク放電を短い時間で生じさせてパルスプラズマを発生させるものとしてもよい。
電源装置は、一対のセリア電極間にパルス状の放電プラズマを発生させるために、例えば、1V以上500V以下程度の範囲の電圧をパルス状に周期的に出力可能であればよく、特に制限されるものではない。安全性や、特殊な装置の必要性を考慮して、電源装置は、選択される。電圧の下限は、10V以上や、20V以上、30V以上の範囲で使用してもよい。電圧の上限は、400V以下や300V以下の範囲で使用してもよい。なお、この電圧は電源電圧の定格としての電圧であり、電極にかかる電圧はこれより低下する。
エネルギー効率を考慮して、電源装置は、例えば、パルス放電している時間あたりの平均で、0.1A以上10A以下の範囲の電流を目安として使用することができる。電流は、電極間に流れる実績値を測定して確認することが好ましい。電流ピーク値、パルス幅、立ち上がり期間は、ロゴスキーコイルにより測定することができる。このときの電流ピーク値は、数A以上数100A以下の範囲に出現し、例えば、1A以上500A以下に出現する。電流ピーク値の上限は、350A以下や、200A以下、100A以下の範囲に出現するものとしてもよい。電流ピーク値の下限は、2A以上や、5A以上、10A以上の範囲に出現するものとしてもよい。
パルス幅は、例えば、1μs以上500μs以下の範囲として使用することができる。パルス幅の上限は、200μs以下や、100μs以下、50μs以下の範囲としてもよい。パルス幅の下限は、5μs以上や10μs以上の範囲としてもよい。パルス幅が好適範囲から外れる場合、セリア粒子が大型化しすぎて微細なものを得られなかったり、電極周辺に集積して拡散しにくかったり、電流が流れにくくなり十分な量のセリアが形成されない場合がある。
パルス電流の立ち上がり期間は、例えば、0.1μs以上50μs以下の範囲としても使用することができる。パルス電流の立ち上がり期間の上限は、30μs以下や、20μs以下としてもよい。パルス電流の立ち上がり期間の下限は、0.5μs以上や、1μs以上としてもよい。
なお、パルス間隔は、限定されるものではないが、例えば0.1ms以上20ms以下とすることができる。
本発明のセリアナノ粒子は、平均一次粒子径が10nm以下である。このような大きさのセリアナノ粒子は、本発明の製造方法により製造することができる。本願において、本発明の製造方法や本発明のセリアナノ粒子、研磨剤、研磨方法等について互いに対応する構成は援用して発明を把握し実施することができる。
本発明のセリアナノ粒子の平均一次粒子径の上限は8nm以下や、5nm以下、4nm以下としてもよい。また、その下限は、そのセリアナノ粒子の用途に適した範囲で特に限定しないでもよいが、例えば研磨に用いるときの研磨性を発揮させやすいように、1nm以上や、1.5nm以上の下限を設けてもよい。
平均一次粒子径は、透過型電子顕微鏡(TEM)により得られた酸化セリウム粒子の画像を、画像解析ソフト(例えば「Image J」等)を用いて解析して求める。粒子の画像を円と近似して解析を行い、画像内の粒子50個以上の粒子径を測定し、個数平均により得られた値を平均一次粒子径Dとする。測定する粒子の個数は、より正確な平均とするため、例えば100個や、120個としてもよい。
本発明の製造方法により得られるセリアナノ粒子や、本発明のセリアナノ粒子は研磨剤の成分として非常に優れている。これから、本発明の研磨剤は、平均一次粒子径が10nm以下であるセリアナノ粒子を含有するものとすることができる。
本発明の製造方法により得られるセリアナノ粒子や、本発明のセリアナノ粒子は、これらを研磨剤として用いる研磨方法に適している。本発明の研磨方法は、平均一次粒子径が10nm以下であるセリアナノ粒子を含有する研磨剤を用いるものとすることができる。この研磨方法は、ガラス研磨等に用いられる種々の研磨手段を用いることができ、研磨パッドを備える回転テーブルに本発明の研磨剤を適宜添加し、これに研磨対象となる試料の研磨面を当接させて回転テーブルを回転させることで研磨するなどの手法が例示される。
図1に示す製造装置に準じる構成で製造を行った。水を入れた200mLビーカーに、円柱状のセリウム電極(純度99.9%、Φ=6mm)2本を電極の先端間距離が0.5mmとなる配置で浸漬して、電極に振動を与えながら、セリウム電極間に火花放電のパルスプラズマを繰り返し発生させ、セリアナノ粒子を合成した。
パルスプラズマは、電圧をパルス状に周期的に印加したものであり、電圧(電源):60V、平均電流:1.5Aである。また、電極間に流れるパルスプラズマの実測値は、立ち上がり期間:4〜6μs以下、パルス幅:10〜20μs、パルス間隔:10〜50msであった。
得られたセリアナノ粒子を、セリアナノ粒子(1)とする。製造を1時間行うことでセリアナノ粒子は、乾燥重量で約1g得られる。以下の形状測定等については1時間程度で作製したものを用いた。研磨試験については、約100時間弱程度で作製したものを用いた。
セリアナノ粒子(1)のX線回折結果を図3に示す。2θ=28.5,33.1,47.5,56.3,59.1,69.4,76.7,79.1,88.4,95.4,107.3,114.7,117.3の(111),(200),(220),(311),(222),(400),(331),(420),(422),(333),(440),(531),(600)のセリアの回折線が得られており、リードベルト解析より、立方晶の格子定数はa=5.41137(52)Åで、レアメタリック社販売の純度の高い径6〜10ミクロンのセリアの格子定数a=5.41021(4)Åより大きい。表1にX線回折結果をまとめて示す。
図4に実施例1において電圧を印加し終えたのちに、水中に浮遊したセリアナノ粒子の浮遊試料のHR−TEM(High Resolution Transmission Electron Microscopy (HRTEM), Philips Tecnai F20)による観察結果等を示す。図4において、各図は以下のものである。
(a)低倍率での高分解能透過型電子顕微鏡(HRTEM)画像を用いて、セリアナノ粒子の浮遊試料の形態的特徴付け
(b)前記(a)と同じ位置の高角散乱環状暗視野走査透過顕微鏡(HADDF-STEM)像は同じく単分散セリアナノ粒子
(c)該当する電子回折パターン(1, 0.332 nm(111); 2, 0.289 nm(200); 3, 0.202 nm(220); 4, 0.169 nm(311))
(d)サイズが小さいため、粒度分布の狭いセリアナノ粒子のHRTEM画像
(e)一個のセリアナノ粒子のHRTEM画像とその高速フーリエ変換(FFT)パターン
(f)前記(e)と同じ方向のセリアのボールモデル
図6に実施例1において、電圧を印加し終えたのちに、ビーカー底部に沈殿したセリアナノ粒子の沈殿試料のHR−TEM(High Resolution Transmission Electron Microscopy (HRTEM), Philips Tecnai F20)による観察結果等を示す。図6において、各図は以下のものである。
(a)低倍率での高分解能透過型電子顕微鏡(HRTEM)画像を用いて、セリアナノ粒子の沈殿試料の形態的特徴付け
(b)前記(a)と同じ位置の高角散乱環状暗視野走査透過顕微鏡(HADDF-STEM)像は同じく単分散セリアナノ粒子
(c)該当する電子回折パターン(1, 0.332 nm(111); 2, 0.289 nm(200); 3, 0.202 nm(220); 4, 0.169 nm(311))
(d)サイズが小さいため、粒度分布の狭いセリアナノ粒子のHRTEM画像
(e)一個のセリアナノ粒子のHRTEM画像とその高速フーリエ変換(FFT)パターン
(f)前記(e)と同じ方向のセリアのボールモデル
実施例1のセリアナノ粒子(1)の光触媒活性を評価した。比較のために三井金属鉱山製の研磨用のサブミクロン径のセリア、レアメタリック社販売のセリアも測定した。図9に光触媒活性の測定結果を示す。
図9は、実施例1で合成したセリアナノ粒子(1)40mgを塩酸1g入りの20mLのメチルオレンジ溶液に入れ、UV光を0,5,10,15,20,25,30分当てたメチルオレンジの分解反応の結果である。縦軸のC/C0は、試験開始時の濃度相当をC0とし、測定時の濃度相当をCとして、その比を示すものであり、この値が小さくなるほど、測定時にメチルオレンジが分解したものと判断される。ここで、メチルオレンジ溶液は1Lの水に15mgのメチルオレンジを入れて調製した。
セリアを入れないメチルオレンジ溶液(MO only)、三井金属鉱山製セリアを入れたメチルオレンジ溶液(Mo with commercial ceria for grind)、レアメタリック社販売セリアを入れたメチルオレンジ溶液(Mo with commercial ceria (4N))に比べて、実施例1のセリアナノ粒子(1)を入れたメチルオレンジ溶液(Mo with ceria by PPL method)では分解量が非常に多いことがわかった。
以下の前処理、仕上げ研磨により、研磨特性を調べた。図10に研磨装置の概念図を示す。使用した基板は、合成石英であり、サイズは径50mmである。
・前処理研磨
前処理研磨は、以下の条件で行った。仕上げ研磨を行う前に、あらかじめ0.25ミクロンサイズのダイヤモンド砥粒で40分間前処理研磨を行った。
・仕上げ研磨
その後、以下の研磨条件で仕上げ研磨を行った。
研磨粒子として、市販の酸化セリウム(ミレーク:三井金属鉱山製)((1)M−CeO2)と、レアメタリック社製CeO2・セリア4N((2)R−CeO2)、実施例1のセリアナノ粒子(1)((3)P−CeO2)の3種類を用いた。研磨剤は、純水1kgに対して、酸化セリウム5gを混入し、0.5質量%のスラリーとして用いた。
研磨時の荷重は600gとし、研磨パッド(ポリウレタンパッド(540N−D200))への滴下速度を5mL/min、加工時間を0.5時間で実験を行った。サンプルと定盤の回転数は、ともに60rpmに設定した。
101、102 セリウム電極
201 反応容器
202 溶媒
30 電源装置
40 振動装置
Claims (6)
- 溶媒中に一対のセリウム電極を浸漬させる浸漬工程と、
前記一対のセリウム電極に、パルス状の電圧を周期的に印加して、パルスプラズマを繰り返し発生させるパルス放電工程とを有し、
前記一対のセリウム電極からセリアナノ粒子を合成することを特徴とするセリアナノ粒子の製造方法。 - 前記パルス放電工程において、周期的に印加されるパルス状の電圧が、1V以上500V以下の電圧であり、電極間に流れる電流が0.1μs以上50μs以下の立ち上がり期間、1μs以上500μs以下のパルス幅の条件である請求項1記載の製造方法。
- 前記溶媒は、水または過酸化水素水である、請求項1または2のいずれかに記載の製造方法。
- 平均一次粒子径が10nm以下であるセリアナノ粒子。
- 平均一次粒子径が10nm以下であるセリアナノ粒子を含有する研磨剤。
- 平均一次粒子径が10nm以下であるセリアナノ粒子を含有する研磨剤を用いる研磨方法。
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