JP2020066549A - 造形用セメント組成物 - Google Patents
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Abstract
Description
そして、最近では樹脂のほかに、セメントや石膏等の水硬性材料と付加製造装置を用いて造形物を造形する方法が提案されている。例えば、特許文献1には、セメント質混錬物と付加製造装置を用いて、繊細かつ多様なデザインを有する造形物を製造できる付加製造方法として、(A)造形用セメント組成物と水を混錬してセメント質混錬物を得るための混錬工程と、(B)該セメント質混錬物を押し出して硬化させて造形物を得るための押し出し工程を、少なくとも含む、付加製造方法が記載されている。
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[5]を提供するものである。
[1] セメント、カルシウムアルミネート類、無水石膏、尿素、及び凝結遅延剤を含む造形用セメント組成物であって、上記セメント100質量部に対して、上記カルシウムアルミネート類の量が50〜80質量部であり、上記無水石膏の量が7〜28質量部であり、上記尿素の量が5〜23質量部であり、上記凝結遅延剤の量が0.1〜5質量部であることを特徴とする造形用セメント組成物。
[2] 上記カルシウムアルミネート類が、アルミナセメント、及びカルシウムサルフォアルミネートを含む前記[1]に記載の造形用セメント組成物。
[3] 凝結促進剤を含み、かつ、上記セメント100質量部に対して、上記凝結促進剤の量が5質量部以下である前記[1]又は[2]に記載の造形用セメント組成物。
[4] 細骨材を含む前記[1]〜[3]のいずれかに記載の造形用セメント組成物。
[5] 前記[1]〜[4]のいずれかに記載の造形用セメント組成物を用いた、造形物の製造方法であって、上記造形用セメント組成物を構成する各材料、及び、水を混合して、造形物製造用組成物を調製する工程、及び、上記造形物製造用組成物を用いた付加製造技術によって、上記造形物を作製する工程、を含む造形物の製造方法。
また、付加製造技術においてノズル等を用いて造形を行う際に、造形物製造用組成物が適度な流動性を有する(すなわち、過剰な流動性を有さない)ため、造形直後の造形物製造用組成物の形状が崩れず、かつ、造形物製造用組成物が速硬性に優れるため、造形物製造用組成物を積層しても、造形物の形状(特に、積層された造形物の下部分)が崩れず、更には、寸法安定性に優れた造形物(硬化体)を得ることができる。
セメントの例としては、白色ポルトランドセメント、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント等の各種ポルトランドセメントや、高炉セメント、フライアッシュセメント等の混合セメントや、エコセメント等を挙げることができる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
中でも、着色を自由に行うことができ、意匠性に優れる観点から、白色ポルトランドセメントが好ましい。
中でも、造形物製造用組成物の流動性をより長時間保持することができる観点から、アルミナセメントおよびカルシウムサルフォアルミネートを含むものが好ましい。
セメント100質量部に対する無水石膏の量は、7〜28質量部、好ましくは9〜26質量部、より好ましくは10〜25質量部である。該量が7質量部未満であると、造形物製造用組成物の凝結が終結するまでの時間が長くなる。該量が28質量部を超えると、造形物の寸法安定性が低下する。
セメント100質量部に対する尿素の量は、5〜23質量部、好ましくは6〜22質量部、より好ましくは7〜20質量部、特に好ましくは9〜19質量部である。該量が5質量部未満であると、調製直後の造形物製造用組成物の保形性が低下するため、付加製造技術においてノズル等を用いて造形を行う際に、造形直後の形状を維持できずに崩れ、造形が困難になる。該量が23質量部を超えると、造形物製造用組成物の凝結が終結するまでの時間が長くなる。また、造形物の寸法安定性が低下する。
中でも、造形物製造用組成物の流動性をより長時間保持することができる観点から、クエン酸が好ましい。
セメント100質量部に対する凝結遅延剤の量は、0.1〜5質量部、好ましくは0.5〜3質量部、より好ましくは0.8〜2質量部、特に好ましくは1.0〜1.5質量部である。該量が0.1質量部未満であると、造形物製造用組成物の流動性を長時間(例えば、2時間)保持することができず、可使時間が短くなる。該量が5質量部を超えると、造形物製造用組成物の凝結が終結するまでの時間が過度に長くなる。
凝結促進剤の例としては、硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、乳酸カルシウム、炭酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸アルミニウム、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄、硝酸マグネシウム、硝酸カルシウム、亜硝酸カリウム、炭酸ナトリウム等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
中でも、入手の容易性等の観点から、硫酸ナトリウムが好ましい。
セメント100質量部に対する凝結促進剤の量は、好ましくは5質量部以下、より好ましくは0.1〜4質量部、さらに好ましくは0.5〜3質量部、特に好ましくは0.8〜2.5質量部である。造形用セメント組成物が凝結促進剤を5質量部以下の量で含むことで、造形物製造用組成物の凝結が開始するまでの時間を短くすることができ、作業性を向上することができる。
細骨材の例としては、石灰石粉末、川砂、山砂、陸砂、海砂、砕砂、珪砂、スラグ細骨材、及び軽量細骨材等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
中でも、着色を自由に行うことができ、意匠性に優れる観点から、石灰石粉末を使用することが好ましい。
セメント100質量部に対する細骨材の量は、好ましくは100〜700質量部、より好ましくは120〜500質量部、特に好ましくは150〜400質量部である。
なお、本発明において、造形用セメント組成物とは、ペースト、モルタルまたはコンクリートを調製するための水は含まれないものとする。
水としては、特に限定されず、水道水、スラッジ水等を使用することができる。
水と造形用セメント組成物の質量比(水/造形用セメント組成物)は、好ましくは0.10〜0.60、より好ましくは0.12〜0.40、特に好ましくは0.15〜0.30である。該比が0.10以上であれば、付加製造技術によって造形物を作製するのに必要な流動性を確保することができる。該比が0.60以下であれば、造形物の強度をより向上することができる。
具体的には、縦型ミキサ、横型ミキサ、ナウターミキサ、傾胴ミキサ、強制ミキサ、二軸ミキサ等が挙げられる。縦型ミキサとしては、例えば、ホバート社製の「ホバートミキサ」、ヘンシェル社製の「ヘンシェルミキサ」等が挙げられる。横型ミキサとしては、例えば、レディゲ社製の「レディゲミキサ」等が挙げられる。
付加製造技術によって造形物を作製する方法の例としては、造形物製造用組成物を、ノ
ズル等から押し出して堆積させる方法等が挙げられる。造形物の作成手段としては、市販されている付加製造装置(3Dプリンタ)を用いることができる。
[使用材料]
(1)セメント;白色ポルトランドセメント、太平洋セメント社製
(2)カルシウムアルミネート類A;アルミナセメント、ケルネオス社製
(3)カルシウムアルミネート類B;カルシウムサルフォアルミネート、試作品(石膏、生石灰及びアルミナ粉末を、焼成後にカルシウムサルフォアルミネートが得られるような配合で混合し、次いで、得られた混合物をロータリーキルンで1330℃の焼成温度で焼成して焼成物を得た後、該焼成物を、ブレーン比表面積が3,900cm2/gとなるように粉砕したもの)
(4)無水石膏;旭硝子社製
(5)尿素;一級試薬(純度:98質量%以上)、林純薬工業社製
(6)細骨材;石灰石砂、最大粒径0.3mm
(7)減水剤;粉末状のポリカルボン酸系減水剤、太平洋マテリアル社製、商品名:NF−200
(8)凝結促進剤;硫酸ナトリウム、試薬
(9)凝結遅延剤;クエン酸、試薬
(10)水;上水道水
表1に示す配合量の上記各材料と、水と造形用セメント組成物(表1に示す各材料の合計)の質量比(水/造形用セメント組成物)が0.165となる量の水を、ホバートミキサに投入して、2分間混合して、造形物製造用組成物を調製した。
得られた造形物製造用組成物について、以下の方法に従って、モルタルフロー値、終結時間、長さ変化率を得た。結果を表1に示す。
調製直後の造形物製造用組成物(造形用セメント組成物と水を混合してなるモルタル)のモルタルフロー値(0打)を、「JIS R 5201:2015(セメントの物理試験方法)」に記載の方法に準拠して、15回の落下運動を行わずに測定した。上記モルタルフロー値(0打)が120mm未満のものは、調製直後の流動性が適切であるとして「〇」と評価し、上記モルタルフロー値(0打)が120mm以上のものは「×」と評価した。
また、調製直後から、30分間経過毎に低速で10秒間の攪拌を行いながら、120分間経過後、造形物製造用組成物のモルタルフロー値(15打)を、「JIS R 5201:2015(セメントの物理試験方法)」に準拠して、15回の落下運動を行って測定した。上記モルタルフロー値(15打)が120mm以上のものは、造形物製造用組成物の流動性を長時間保持することができ、可使時間が長いものであるとして「〇」と評価し、上記モルタルフロー値(15打)が120mm未満のものは「×」と評価した。
「JIS A 1147:2007(コンクリートの凝結時間試験方法)」に記載の方法に準拠して、造形用製造用組成物の凝結の終結時間を測定した。上記終結時間が4時間未満であるものは、速硬性に優れるものであるとして「〇」と評価し、上記終結時間が4時間以上である物は「×」と評価した。
[長さ変化率]
「JIS A 1129−3:2010(モルタル及びコンクリートの長さ変化測定方法−第3部:ダイヤルゲージ方法)」に記載の方法に準拠して、造形用製造用組成物の長さ変化率を測定した。該長さ変化率は、成形後24時間後に脱型した供試体の基長を測定し、次いで、該供試体を20℃の水中において保管した後、材齢28日における供試体の長さを測定し、これらの測定値を用いて算出した。
上記長さ変化率が1,000×10−6未満であるものは、寸法安定性に優れるものとして「〇」と評価し、上記長さ変化率が1,000×10−6以上であるものは「×」と評価した。
また、本発明の造形用セメント組成物を用いた造形物製造用組成物(実施例1〜5)の終結時間が、2時間15分〜3時間20分であることから、実施例1〜5の造形物製造用組成物は、速硬性に優れたものであることがわかる。
さらに、本発明の造形用セメント組成物を用いた造形物製造用組成物(実施例1〜5)の長さ変化率が、425〜856×10−6であることから、実施例1〜5の造形物製造用組成物は、寸法安定性に優れたものであることがわかる。
また、セメント100質量部に対するカルシウムアルミネート類の量が90質量部である比較例2のモルタルフロー(15打)が測定不可であることから、比較例2の造形物製造用組成物は、流動性を2時間維持できず、可使時間の短いものであることがわかる。
また、セメント100質量部に対する無水石膏の量が30質量部である比較例4の長さ変化率が1822×10−6であることから、比較例4の造形物製造用組成物は、寸法安定性に劣ることがわかる。
また、セメント100質量部に対する尿素の量が25質量部である比較例6について、終結時間が4時間15分であり、長さ変化率が1275×10−6であることから、比較例6の造形物製造用組成物は、速硬性および寸法安定性に劣ることがわかる。
Claims (5)
- セメント、カルシウムアルミネート類、無水石膏、尿素、及び凝結遅延剤を含む造形用セメント組成物であって、上記セメント100質量部に対して、上記カルシウムアルミネート類の量が50〜80質量部であり、上記無水石膏の量が7〜28質量部であり、上記尿素の量が5〜23質量部であり、上記凝結遅延剤の量が0.1〜5質量部であることを特徴とする造形用セメント組成物。
- 上記カルシウムアルミネート類が、アルミナセメント、及びカルシウムサルフォアルミネートを含む請求項1に記載の造形用セメント組成物。
- 凝結促進剤を含み、かつ、上記セメント100質量部に対して、上記凝結促進剤の量が5質量部以下である請求項1又は2に記載の造形用セメント組成物。
- 細骨材を含む請求項1〜3のいずれか1項に記載の造形用セメント組成物。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の造形用セメント組成物を用いた、造形物の製造方法であって、
上記造形用セメント組成物を構成する各材料、及び、水を混合して、造形物製造用組成物を調製する工程、及び、
上記造形物製造用組成物を用いた付加製造技術によって、上記造形物を作製する工程、
を含む造形物の製造方法。
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