JP2020065514A - 新規アラビノフラノシダーゼ - Google Patents

新規アラビノフラノシダーゼ Download PDF

Info

Publication number
JP2020065514A
JP2020065514A JP2018202165A JP2018202165A JP2020065514A JP 2020065514 A JP2020065514 A JP 2020065514A JP 2018202165 A JP2018202165 A JP 2018202165A JP 2018202165 A JP2018202165 A JP 2018202165A JP 2020065514 A JP2020065514 A JP 2020065514A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
arabinofuranosidase
amino acid
biomass
acid sequence
seq
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2018202165A
Other languages
English (en)
Other versions
JP7208762B2 (ja
Inventor
武子 児玉
Takeko Kodama
武子 児玉
望 柴田
Nozomi Shibata
望 柴田
真梨 末次
Mari Suetsugu
真梨 末次
俊陽 新井
Toshiharu Arai
俊陽 新井
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Kao Corp
Original Assignee
Kao Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Kao Corp filed Critical Kao Corp
Priority to JP2018202165A priority Critical patent/JP7208762B2/ja
Publication of JP2020065514A publication Critical patent/JP2020065514A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP7208762B2 publication Critical patent/JP7208762B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Classifications

    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02EREDUCTION OF GREENHOUSE GAS [GHG] EMISSIONS, RELATED TO ENERGY GENERATION, TRANSMISSION OR DISTRIBUTION
    • Y02E50/00Technologies for the production of fuel of non-fossil origin
    • Y02E50/10Biofuels, e.g. bio-diesel

Abstract

【課題】効率的にバイオマスを糖化することができる、新規アラビノフラノシダーゼの提供。【解決手段】下記(a)〜(d)から選ばれるアミノ酸配列からなり、且つアラビノフラノシダーゼ活性を有するタンパク質:(a)特定のアミノ酸配列;(b)上記の(a)の1番から301番で示されるアミノ酸配列;(c)(a)又は(b)で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列;(d)(a)又は(b)で示されるアミノ酸配列において、1又は複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列。【選択図】なし

Description

本発明は、新規なアラビノフラノシダーゼに関する。
近年、作物や木材の収穫後の残渣等、農業生産の副産物として生じるセルロース系バイオマスの利用に対する研究開発が注目されている。セルロース系バイオマス(以下バイオマスと記載)は,セルロース,ヘミセルロース及びリグニンから構成されており、これら3成分は強固に絡み合っている。これら3成分のうち、セルロース及びヘミセルロースの分解産物である糖はエタノールや化成品の原料となる。
セルロースはグルコースがβ−1,4結合でつながった多糖であり、ヘミセルロースはグルコース以外のヘテロ多糖であり,ヘミセルロースの中に最も豊富に存在するアラビノキシランは,主にキシロースがβ−1,4結合でつながったキシラン骨格に側鎖としてアラビノースやガラクトース,グルクロン酸,フェルラ酸等が結合している。セルロース及びヘミセルロースを分解する酵素はセルラーゼ及びヘミセルラーゼであり、バイオマス糖化酵素と総称されている。
バイオマスは複雑に絡み合った構造をとっているため、分解されにくい。セルロースやヘミセルロースを効率よく分解するにはセルラーゼ及びヘミセルラーゼが共に必須であり、酵素の種類や組成が大きく影響するため、糖化酵素の開発は重要課題である。
バイオマスの分解を向上するため、セルラーゼにTrichoderma reesei由来のキシラナーゼやアラビノフラノシダーゼ等のヘミセルラーゼが添加された酵素組成物が開発されている(特許文献1)。またPenicillium sp.の高いキシラナーゼ活性を有するキシラナーゼが添加された酵素粗組成が開発されている(特許文献2)。
糖質加水分解酵素(glycoside hydrolase;GH)であるα−L−アラビノフラノシダーゼは、α−1,2又はα−1,3又はα−1,5結合したアラビノース側鎖を非還元末端側から加水分解でき、そしてEC3.2.1.55に分類される。また、アミノ酸配列の相同性に基づく分類では、GH43,51,54,62に分類されている。
例えば、非特許文献1には、ペニシリウムカプスラタム(Penicillium copsulatum)から64.5kDa及び62.7kDaのα−L−アラビノフラノシダーゼについてその特性が開示され、また、特許文献3には、Aspergillus niger由来のα−L−アラビノフラノシダーゼ及びそのアミノ酸配列が開示されている。
しかしながら、従来のアラビノフラノシダーゼは、バイオマスを糖化し得る、糖化酵素としては満足できるものではなかった。
特表2011−515089号公報 特開2017−12006号公報 国際公開第2006/125438号
Appl. Environ. Microbiol.,1996,62,168−173
本発明は、効率的にバイオマスを糖化することができる、新規アラビノフラノシダーゼを提供することに関する。
本発明者らは、優れたアラビノフラノシダーゼ活性を有すると共に、アラビノキシラン分解活性が高い新規アラビノフラノシダーゼを見出し、当該アラビノフラノシダーゼを用いることによりバイオマスの糖化を効率よく行うことができることを見出した。
すなわち、本発明は、下記1)〜7)に係るものである。
1)下記(a)〜(d)から選ばれるアミノ酸配列からなり、且つアラビノフラノシダーゼ活性を有するタンパク質:
(a)配列番号2で示されるアミノ酸配列;
(b)配列番号2の1番から301番で示されるアミノ酸配列;
(c)(a)又は(b)で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列;
(d)(a)又は(b)で示されるアミノ酸配列において、1又は複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列。
2)1)のアラビノフラノシダーゼ活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
3)2)のポリヌクレオチドを含むベクター。
4)2)のポリヌクレオチド、又は3)のベクターを宿主に導入することを含む、形質転換体の製造方法。
5)2)のポリヌクレオチド、又は3)のベクターを導入された形質転換体。
6)1)のアラビノフラノシダーゼ活性を有するタンパク質を含有するバイオマス糖化剤。
7)1)のアラビノフラノシダーゼ活性を有するタンパク質、又は6)のバイオマス糖化剤を用いる、バイオマスからの糖の製造方法。
本発明は、優れたアラビノフラノシダーゼ活性を有すると共に、アラビノキシラン分解活性が高く、バイオマスの糖化率が高いアラビノフラノシダーゼを提供する。当該のアラビノフラノシダーゼを使用することによって、市販のアラビノフラノシダーゼ又はそれを含む組成物を使用する場合と比べて、より効率のよいバイオマスの糖化を実現することができる。したがって、本発明によれば、バイオマスから効率的且つ安価に糖を製造することができる。
p−ニトロフェニル−α−Lアラビノフラノシド及び小麦アラビノキシランの構造。 各種α−L−アラビノフラノシダーゼ添加による小麦ふすまの糖化性。 F81ABFを発現した糖化酵素による小麦ふすまの糖化性。 GH62のα−L−アラビノフラノシダーゼのマルチプルアライメント。 GH62のα−L−アラビノフラノシダーゼの分子系統樹。
本明細書において、塩基配列及びアミノ酸配列の配列同一性は、Lipman−Pearson法(Science, 1985, 227:1435-1441)によって計算される。具体的には、遺伝情報処理ソフトウェアGenetyx−Winのホモロジー解析(Search homology)プログラムを用いて、Unit size to compare(ktup)を2として解析を行うことにより算出される。
本明細書において、アミノ酸配列又はヌクレオチド配列に関する「少なくとも90%の同一性」とは、90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは97%以上、より好ましくは98%以上、より好ましくは99%以上の同一性をいう。
本明細書において、「1又は複数個のアミノ酸が欠失、挿入、置換若しくは付加されたアミノ酸配列」としては、1個以上30個以下、好ましくは20個以下、より好ましくは10個以下、さらに好ましくは5個以下のアミノ酸が欠失、挿入、置換若しくは付加されたアミノ酸配列が挙げられる。また本明細書において、「1又は複数個のヌクレオチドが欠失、挿入、置換若しくは付加されたヌクレオチド配列」としては、1個以上90個以下、好ましくは60個以下、より好ましくは30個以下、より好ましくは15個以下、より好ましくは10個以下のヌクレオチドが欠失、挿入、置換若しくは付加されたヌクレオチド配列が挙げられる。
本明細書において、「バイオマス」とは、植物や藻類が生産するヘミセルロース成分を含むセルロース系及び/又はリグノセルロース系バイオマスをいう。バイオマスの具体例としては、カラマツやヌマスギ等の針葉樹や、アブラヤシ(幹部)、ヒノキ等の広葉樹等から得られる各種木材;ウッドチップ等の木材の加工物又は粉砕物;木材から製造されるウッドパルプ、綿の種子の周囲の繊維から得られるコットンリンターパルプ等のパルプ類;新聞紙、ダンボール、雑誌、上質紙等の紙類;バガス(サトウキビの搾りかす)、パーム空果房(EFB)、稲わら、とうもろこし茎若しくは葉等の植物の茎、葉、果房等;籾殻、パーム殻、ココナッツ殻等の植物殻類、藻類等からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。このうち、入手容易性及び原料コストの観点から、木材、木材の加工物又は粉砕物、植物の茎、葉、果房等が好ましく、バガス、EFB、アブラヤシ(幹部)がより好ましく、バガスがさらに好ましい。上記バイオマスは、単独で又は2種以上を混合して使用してもよい。また上記バイオマスは乾燥されていてもよい。
本明細書において、「アラビノフラノシダーゼ活性」とは、アラビノース含有多糖中のα−1,2若しくはα−1,3結合した側鎖、又はα−1,2及びα−1,3結合した側鎖を切断し、α−L−アラビノース残基を加水分解する活性をいう。
タンパク質のアラビノフラノシダーゼ活性は、例えば、p−ニトロフェニル−α−Lアラビノフラノシドを基質として当該タンパク質と反応させ、遊離するp-ニトロフェノールを測定することによって決定することができる。アラビノフラノシダーゼ活性の測定の具体的手順は、後述の実施例に詳述されている。
(1.アラビノフラノシダーゼ)
本発明のアラビノフラノシダーゼは、下記(a)〜(d)から選ばれるアミノ酸配列からなり、且つアラビノフラノシダーゼ活性を有するタンパク質である。
(a)配列番号2で示されるアミノ酸配列;
(b)配列番号2の1番から301番で示されるアミノ酸配列;
(c)(a)又は(b)で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列;
(d)(a)又は(b)で示されるアミノ酸配列において、1又は複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列。
ここで、上記(b)のタンパク質は、配列表に記載のとおり、(a)のタンパク質のアミノ酸配列から菌体外分泌シグナルペプチドを除いた成熟タンパク質である。
すなわち、本発明のアラビノフラノシダーゼは、一実施形態において、配列番号2で示されるアミノ酸配列(a)又は配列番号2の1番から301番で示されるアミノ酸配列(b)、からなるタンパク質である。当該アラビノフラノシダーゼとしては、糸状菌Penicillium sp.由来のアラビノフラノシダーゼF81ABF(以下、「F81ABF」とも称する)が好ましい例として挙げられる。F81ABFは、そのアミノ酸配列からGH62に分類されるアラビノフラノシダーゼである。
別の態様において、本発明のアラビノフラノシダーゼは、配列番号2で示されるアミノ酸配列(a)又は配列番号2の1番から301番で示されるアミノ酸配列(b)と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列(c)からなり、且つアラビノフラノシダーゼ活性を有するタンパク質である。また別の態様において、本発明のアラビノフラノシダーゼは、配列番号2で示されるアミノ酸配列(a)又は配列番号2の1番から301番で示されるアミノ酸配列(b)において、1又は複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列(d)からなり、且つアラビノフラノシダーゼ活性を有するタンパク質である。
該タンパク質は、例えば、上述した配列番号2で示されるアミノ酸配列又は配列番号2の1番から301番で示されるアミノ酸配列からなるF81ABFの天然又は人工的に作製された変異体が挙げられる。当該変異体は、例えば、上記F81ABFをコードする遺伝子に対して紫外線照射や部位特異的変異導入(Site-Directed Mutagenesis)のような公知の突然変異導入法により突然変異を導入し、当該突然変異を有する遺伝子を発現させ、所望のアラビノフラノシダーゼ活性を有するタンパク質を選択することによって、作製することができる。このような変異体作製の手順は、当業者に周知である。
本発明のアラビノフラノシダーゼは、従来単離又は精製されているアラビノフラノシダーゼとは異なるアミノ酸配列を有する。例えば、F81ABFと、市販酵素ABFUM及びABFANに相当するEAK85771.1、EAA59562.1、並びに前記特許文献3に記載のCAM07245.1についてそれぞれアミノ酸配列の相同性解析の結果、EAK85771.1、EAA59562.1及びCAM07245.1は、F81AFBとそれぞれ66%、72%及び82%の配列同一性を示す(図4)。
また、CAZY(http://www.cazy.org/)に登録されている真核生物由来のGH62のα−L−アラビノフラノシダーゼ67タンパク質のアミノ酸配列についてマルチプルアライメントを行い、近隣結合法により分子系統樹を作成すると大きく2つのグループに分類されるが、これによると、F81ABFは、EAK85771.1及びCAM07245.1とは同一のグループに属し、EAA59562.1とは別のグループに属する(図5)。
(2.アラビノフラノシダーゼの生産方法)
本発明のアラビノフラノシダーゼは、例えば、上記本発明のアラビノフラノシダーゼをコードするポリヌクレオチドを発現させることにより生産することができる。好ましくは、本発明のアラビノフラノシダーゼは、本発明のアラビノフラノシダーゼをコードするポリヌクレオチドを導入した形質転換体から生産することができる。例えば、本発明のアラビノフラノシダーゼをコードするポリヌクレオチド、又はそれを含むベクターを宿主に導入して形質転換体を得た後、該形質転換体を適切な培地で培養すれば、該形質転換体に導入した本発明のアラビノフラノシダーゼをコードするポリヌクレオチドから本発明のアラビノフラノシダーゼが生産される。生産されたアラビノフラノシダーゼを該培養物から単離又は精製することにより、本発明のアラビノフラノシダーゼを取得することができる。
本発明のアラビノフラノシダーゼをコードするポリヌクレオチドは、上記(a)〜(d)から選ばれるアミノ酸配列からなり、且つアラビノフラノシダーゼ活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドであり得る。また本発明のアラビノフラノシダーゼをコードするポリヌクレオチドは、一本鎖若しくは二本鎖DNA、RNA、又は人工核酸の形態であり得、あるいはcDNA、又はイントロンを含まない化学合成DNAであり得る。
本発明のアラビノフラノシダーゼをコードするポリヌクレオチドの好ましい例としては、下記(e)〜(h)から選ばれるヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドが挙げられる。
(e)配列番号1で示されるヌクレオチド配列;
(f)配列番号1の73番から975番で示されるヌクレオチド配列;
(g)(e)又は(f)で示されるヌクレオチド配列と少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列;
(h)(e)又は(f)で示されるヌクレオチド配列において、1又は複数個のヌクレオチドが欠失、挿入、置換若しくは付加されたヌクレオチド配列。
ここで、上記(f)のポリヌクレオチドは、配列表に記載のとおり、(e)のポリヌクレオチドのヌクレオチド配列から菌体外分泌シグナルペプチドをコードするポリヌクレオチドを除いた成熟タンパク質をコードするポリヌクレオチドである。
本発明のアラビノフラノシダーゼをコードするポリヌクレオチドは、糸状菌Penicillium sp.等から、当該分野で用いられる任意の方法を用いて単離することができる。例えば、当該ポリヌクレオチドは、Penicillium sp.の全ゲノムDNAを抽出した後、配列番号1の塩基配列を元に設計したプライマーを用いたPCRにより標的遺伝子を選択的に増幅し、増幅した遺伝子を精製することで得ることができる。あるいは、本発明のアラビノフラノシダーゼをコードするポリヌクレオチドは、該アラビノフラノシダーゼのアミノ酸配列に基づいて、化学的又は遺伝子工学的に合成することができる。例えば、該ポリヌクレオチドは、上述した本発明のアラビノフラノシダーゼのアミノ酸配列に基づいて、化学的に合成することができる。ポリヌクレオチドの化学合成には、核酸合成受託サービス(例えば、株式会社 医学生物学研究所、Genscript社等より提供されている)を利用することができる。さらに、合成したポリヌクレオチドをPCR、クローニング等により増幅することもできる。
またあるいは、本発明のアラビノフラノシダーゼをコードするポリヌクレオチドは、上記の手順で合成されたポリヌクレオチドに対して、上述した紫外線照射や部位特異的変異導入のような公知の突然変異導入法により突然変異を導入することによって、作製することができる。例えば、本発明のアラビノフラノシダーゼをコードするポリヌクレオチドは、配列番号1のポリヌクレオチドに公知の方法で突然変異導入し、得られたポリヌクレオチドを発現させてアラビノフラノシダーゼ活性を調べ、所望のアラビノフラノシダーゼ活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドを選択することによって、得ることができる。
ポリヌクレオチドへの部位特異的変異導入は、例えば、インバースPCR法やアニーリング法など(村松ら編、「改訂第4版 新遺伝子工学ハンドブック」、羊土社、p.82−88)の任意の手法により行うことができる。必要に応じてStratagene社のQuickChange II Site−Directed Mutagenesis Kitや、QuickChange Multi Site−Directed Mutagenesis Kit等の各種の市販の部位特異的変異導入用キットを使用することもできる。
本発明のアラビノフラノシダーゼをコードするポリヌクレオチドを含むベクターの種類としては、特に限定されず、遺伝子のクローニングに通常用いられるベクター、例えばプラスミド、コスミド、ファージ、ウイルス、YAC、BAC等が挙げられる。プラスミドベクターが好ましく、例えば、市販のタンパク質発現用プラスミドベクター、例えばシャトルベクターpHY300PLK、pUC19、pUC119、pBR322(いずれもタカラバイオ株式会社製)等を好適に用いることができる。
上記ベクターは、DNAの複製開始領域又は複製起点を含むDNA領域を含み得る。あるいは、上記ベクターにおいては、本発明のアラビノフラノシダーゼをコードするポリヌクレオチド(すなわち本発明のアラビノフラノシダーゼ遺伝子)の上流に、該遺伝子の転写を開始させるためのプロモーター領域、ターミネーター領域、又は発現されたタンパク質を細胞外へ分泌させるための分泌シグナル領域などの制御配列が作動可能に連結されていてもよい。本明細書において、遺伝子と制御配列が「作動可能に連結されている」とは、遺伝子と制御領域とが、該遺伝子が該制御領域による制御の下に発現し得るように配置されていることをいう。
上記プロモーター領域、ターミネーター、分泌シグナル領域等の制御配列の種類は、特に限定されず、導入する宿主に応じて、通常使用されるプロモーターや分泌シグナル配列を適宜選択して用いることができる。例えば、本発明のベクターに組み込むことができる制御配列の好適な例としては、Trichoderma reesei由来cbh1プロモーター配列(Curr,Genet,1995,28(1):71−79)が挙げられる。あるいは、その他のセロビオハイドロラーゼ、エンドグルカナーゼ、βグルコシダーゼ、キシラナーゼ、βキシロシダーゼなどの糖化酵素を発現するプロモーターを使用してもよい。あるいは、ピルビン酸デカルボキシラーゼ、アルコールデヒドロゲナーゼ、ピルビン酸キナーゼなどの代謝経路の酵素のプロモーターを使用してもよい。
あるいは、上記本発明のベクターには、該ベクターが適切に導入された宿主を選択するためのマーカー遺伝子(例えば、アンピシリン、ネオマイシン、カナマイシン、クロラムフェニコールなどの薬剤の耐性遺伝子)がさらに組み込まれていてもよい。あるいは、宿主に栄養要求性株を使用する場合、要求される栄養の合成酵素をコードする遺伝子をマーカー遺伝子としてベクターに組み込んでもよい。またあるいは、生育のために特定の代謝を必須とする選択培地を用いる場合、該代謝の関連遺伝子をマーカー遺伝子としてベクターに組み込んでもよい。このような代謝関連遺伝子の例としては、アセトアミドを窒素源として利用するためのアセトアミダーゼ遺伝子が挙げられる。
上記本発明のアラビノフラノシダーゼをコードするポリヌクレオチドと、制御配列及びマーカー遺伝子との連結は、SOE(splicing by overlap extension)−PCR法(Gene,1989,77:61−68)などの当該分野で公知の方法によって行うことができる。連結した断片のベクターへの導入手順は、当該分野で周知である。
上記ベクターを導入する形質転換体の宿主の例としては、細菌、糸状菌などの微生物が挙げられる。細菌の例としては、大腸菌(Escherichia coli)、スタフィロコッカス属(Staphylococcus)、エンテロコッカス属(Enterococcus)、リステリア属(Listeria)、バチルス属(Bacillus)に属する細菌などが挙げられ、このうち、大腸菌及びバチルス属細菌(例えば、枯草菌又はその変異株)が好ましい。枯草菌変異株の例としては、J.Biosci.Bioeng.,2007,104(2):135−143に記載のプロテアーゼ9重欠損株KA8AX、ならびにBiotechnol.Lett.,2011,33(9):1847−1852に記載の、プロテアーゼ8重欠損株にタンパク質のフォールディング効率を向上させたD8PA株を挙げることができる。糸状菌の例としては、トリコデルマ属(Trichoderma)、アスペルギルス属(Aspergillus)、リゾプス属(Rizhopus)などが挙げられ、このうち、酵素生産性の観点からはトリコデルマ属が好ましい。
宿主へのベクターの導入の方法としては、プロトプラスト法、エレクトロポレーション法などの当該分野で通常使用される方法を用いることができる。導入が適切に行われた株をマーカー遺伝子の発現、栄養要求性などを指標に選択することで、ベクターが導入された目的の形質転換体を得ることができる。
あるいは、本発明のアラビノフラノシダーゼをコードするポリヌクレオチド、制御配列及びマーカー遺伝子を連結した断片を、宿主のゲノムに直接導入することもできる。例えば、SOE−PCR法などにより、上記連結断片の両端に宿主のゲノムと相補的な配列を付加したDNA断片を構築し、これを宿主に導入して、宿主ゲノムと該DNA断片との間に相同組換えを起こさせることによって、本発明のアラビノフラノシダーゼをコードするポリヌクレオチドが宿主のゲノムに導入される。
斯くして得られた、本発明のアラビノフラノシダーゼをコードするポリヌクレオチド又はそれを含むベクターが導入された形質転換体を適切な培地で培養すれば、該ベクター上のアラビノフラノシダーゼ遺伝子が発現して本発明のアラビノフラノシダーゼが生成される。当該形質転換体の培養に使用する培地は、当該形質転換体の微生物の種類にあわせて、当業者が適宜選択することができる。
あるいは、本発明のアラビノフラノシダーゼは、無細胞翻訳系を使用して本発明のアラビノフラノシダーゼをコードするポリヌクレオチド又はその転写産物から発現させてもよい。「無細胞翻訳系」とは、宿主となる細胞を機械的に破壊して得た懸濁液にタンパク質の翻訳に必要なアミノ酸等の試薬を加えて、in vitro転写翻訳系又はin vitro翻訳系を構成したものである。
上記培養物又は無細胞翻訳系にて生成された本発明のアラビノフラノシダーゼは、タンパク質精製に用いられる一般的な方法、例えば、遠心分離、硫酸アンモニウム沈殿、ゲルクロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー等を単独で又は適宜組み合わせて用いることにより、単離又は精製することができる。このとき、形質転換体内のベクター上で本発明のアラビノフラノシダーゼをコードするポリヌクレオチドと分泌シグナル配列が作動可能に連結されている場合、生成されたアラビノフラノシダーゼは細胞外に分泌されるため、より容易に培養物から回収され得る。培養物から回収されたアラビノフラノシダーゼは、公知の手段でさらに精製されてもよい。
(3.バイオマス糖化剤)
上記本発明のアラビノフラノシダーゼは、後述の実施例に示す通り、従来公知のアラビノフラノシダーゼと比較して、バイオマスを糖化する活性が顕著に高い。したがって、本発明のアラビノフラノシダーゼは、バイオマス糖化のために、バイオマス糖化剤に含有して使用することができる。
本発明のバイオマス糖化剤は、上記本発明のアラビノフラノシダーゼを含有する。該バイオマス糖化剤は、好ましくはバイオマス糖化用の酵素組成物である。本発明のバイオマス糖化剤は、本発明のアラビノフラノシダーゼを含み、また糖化効率の向上の観点から、好ましくはさらにセルラーゼを含む。ここで、セルラーゼとは、セルロースのβ−1,4−グルカンのグリコシド結合を加水分解する酵素を指し、エンドグルカナーゼ、エクソグルカナーゼ又はセロビオハイドロラーゼ、及びβ−グルコシダーゼなどと称される酵素の総称である。当該セルラーゼの例としては、市販のセルラーゼ製剤や、動物、植物、微生物由来のセルラーゼが挙げられ得る。これらのセルラーゼは、単独で使用されても2種以上の組合せで使用されてもよい。糖化効率の向上の観点から、セルラーゼは、セロビオハイドロラーゼ及びエンドグルカナーゼからなる群より選ばれる1種以上を含むことが好ましい。
本発明のバイオマス糖化剤において、本発明のアラビノフラノシダーゼと併用され得るセルラーゼの具体例としては、これらに限定されるものではないが、トリコデルマ・リーゼ(Trichoderma reesei)由来のセルラーゼ;トリコデルマ・ビリデ(Trichoderma viride)由来のセルラーゼ;バチルス・エスピー(Bacillus sp.)KSM−N145(FERM P−19727)、バチルス・エスピー(Bacillus sp.)KSM−N252(FERM P−17474)、バチルス・エスピー(Bacillus sp.)KSM−N115(FERM P−19726)、バチルス・エスピー(Bacillus sp.)KSM−N440(FERM P−19728)、バチルス・エスピー(Bacillus sp.)KSM−N659(FERM P−19730)などの各種バチルス株由来のセルラーゼ;パイロコッカス・ホリコシ(Pyrococcus horikoshii)由来の耐熱性セルラーゼ;フミコーラ・インソレンス(Humicola insolens)由来のセルラーゼ、などが挙げられる。これらの中で、糖化効率の向上の観点から、トリコデルマ・リーゼ(Trichoderma reesei)、トリコデルマ・ビリデ(Trichoderma viride)、又はフミコーラ・インソレンス(Humicola insolens)由来のセルラーゼが好ましい。また、上記の微生物に対して外来性に導入したセルラーゼ遺伝子を発現させて得られた組換えセルラーゼを用いてもよい。具体例としては、トリコデルマ・リーゼ(Trichoderma reesei)に対してアスペルギルス・アクリータス(Aspergillus aculeatus)由来のβ−グルコシダーゼ遺伝子を導入して得られたX3AB1株(J.Ind.Microbiol.Biotechnol.(2012)1741−9)が生産するセルラーゼJN11が挙げられる。上記セルラーゼを含むセルラーゼ製剤の具体例としては、セルクラスト(登録商標)1.5L(ノボザイムズ社製)、TP−60(明治製菓株式会社製)、Cellic(登録商標)CTec2(ノボザイムズ社製)、AccelleraseTMDUET(ジェネンコア社製)、及びウルトラフロ(登録商標)L(ノボザイムズ社製)が挙げられ、これらのセルラーゼ製剤を本発明のアラビノフラノシダーゼと併用してもよい。
また、セルラーゼの1種であるβ−グルコシダーゼの具体例としては、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)由来のβ−グルコシダーゼ(例えば、ノボザイムズ社製ノボザイム188及びメガザイム社製β−グルコシダーゼ)、ならびにトリコデルマ・リーゼ(Trichoderma reesei)又はペニシリウム・エメルソニイ(Penicillium emersonii)由来のβ−グルコシダーゼなどが挙げられる。このうち、糖化効率向上の観点から、ノボザイム188、トリコデルマ・リーゼ由来のβ−グルコシダーゼが好ましく、トリコデルマ・リーゼ由来のβ−グルコシダーゼがより好ましい。
また、セルラーゼの1種であるエンドグルカナーゼの具体例としては、トリコデルマ・リーゼ(Trichoderma reesei)、アクレモニウム・セルロリティカス(Acremonium celluloriticus)、フミコーラ・インソレンス(Humicola insolens)、クロストリジウム・サーモセラム(Clostridium thermocellum)、バチルス(Bacillus)、サーモビフィダ(Thermobifida)、セルロモナス(Cellulomonas)由来の酵素などが挙げられる。このうち、糖化効率向上の観点から、トリコデルマ・リーゼ、フミコーラ・インソレンス、バチルス、セルロモナス由来のエンドグルカナーゼが好ましく、トリコデルマ・リーゼ由来のエンドグルカナーゼがより好ましい。
本発明のバイオマス糖化剤は、上記本発明のアラビノフラノシダーゼ以外のヘミセルラーゼを含有していてもよい。ここで、ヘミセルラーゼとは、へミセルロースを加水分解する酵素を指し、キシラナーゼ、キシロシダーゼ、ガラクタナーゼなどと称される酵素の総称である。本発明のアラビノフラノシダーゼ以外のヘミセルラーゼの具体例としては、トリコデルマ・リーゼ(Trichoderma reesei)由来のヘミセルラーゼ;バチルス・エスピー(Bacillus sp.)KSM−N546(FERM P−19729)由来のキシナラーゼ;アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、トリコデルマ・ビリデ(Trichoderma viride)、フミコーラ・インソレンス(Humicola insolens)、又はバチルス・アルカロフィルス(Bacillus alcalophilus)由来のキシラナーゼ;サーモマイセス(Thermomyces)、オウレオバシジウム(Aureobasidium)、ストレプトマイセス(Streptomyces)、クロストリジウム(Clostridium)、サーモトガ(Thermotoga)、サーモアスクス(Thermoascus)、カルドセラム(Caldocellum)、又はサーモモノスポラ(Thermomonospora)属由来のキシラナーゼ;バチルス・プミルス(Bacillus pumilus)由来のβ−キシロシダーゼ;セレノモナス・ルミナンティウム(Selenomonas ruminantium)由来β―キシロシダーゼ、などが挙げられる。このうち、糖化効率向上の観点から、本発明の酵素組成物は、バチルス・エスピー、アスペルギルス・ニガー、トリコデルマ・ビリデ若しくはストレプトマイセス由来のキシラナーゼ、又はセレノモナス・ルミナンティウム由来のβ−キシロシダーゼを含有することが好ましく、バチルス・エスピー若しくはトリコデルマ・ビリデ由来のキシナラーゼ、又はセレノモナス・ルミナンティウム由来のβ−キシロシダーゼを含有することがより好ましい。
本発明のバイオマス糖化剤の総タンパク質量中における、本発明のアラビノフラノシダーゼの含有量は、0.1質量%以上70質量%以下の範囲であればよい。本発明の酵素組成物の総タンパク質量中における、上記セルラーゼの含有量は、10質量%以上99質量%以下の範囲であればよい。また、本発明のバイオマス糖化剤の総タンパク質量中における、本発明のアラビノフラノシダーゼ以外のヘミセルラーゼの含有量は、0.01質量%以上30質量%以下の範囲であればよい。本発明のバイオマス糖化剤における、本発明のアラビノフラノシダーゼと上記セルラーゼとのタンパク質量比(本発明のアラビノフラノシダーゼ/セルラーゼ)は、0.001以上100以下の範囲であればよい。
(4.糖の製造方法)
本発明のアラビノフラノシダーゼ又はこれを含有するバイオマス糖化剤は、バイオマスから糖を製造するために用いられる。すなわち、本発明の糖の製造方法は、バイオマスを、上記本発明のアラビノフラノシダーゼ又はこれを含有するバイオマス糖化剤で糖化処理する工程が含まれる。
バイオマスは、前述したとおりであるが、入手容易性、原料コスト、及び糖化効率向上の観点からは、該バイオマスとしては、木材、木材の加工物又は粉砕物、植物の茎、葉又は果房などが好ましく、バガス、EFB、アブラヤシ(幹部)、エリアンサスがより好ましく、バガスがさらに好ましい。該バイオマスは、単独で又は2種以上を混合して使用してもよい。また該バイオマスは乾燥されていてもよい。
バイオマスを糖化処理する際には、粉砕効率向上、糖化効率向上、及び生産効率向上(すなわち糖生産時間の短縮)の観点から、糖化処理する工程の前に、当該バイオマスを前処理する工程をさらに含むことが好ましい。
上記前処理としては、例えば、アルカリ処理、粉砕処理及び水熱処理からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。糖化効率向上の観点からは、該前処理としてはアルカリ処理が好ましい。
上記アルカリ処理とは、バイオマスを、後述する塩基性化合物と反応させることをいう。該アルカリ処理の方法としては、バイオマスを、後述する塩基性化合物を含むアルカリ溶液に浸漬する方法(以下、「浸漬処理」ということがある)や、バイオマスと塩基性化合物とを混合して、後述する粉砕処理にかける方法(以下、「アルカリ混合粉砕処理」ということがある)などが挙げられる。
上記粉砕処理とは、バイオマスを機械的に粉砕して小粒子化することをいう。バイオマスを小粒子化することにより、糖化効率がより向上する。また、該粉砕処理により、バイオマスに含まれるセルロースの結晶構造が破壊されると、糖化効率がなお向上する。該粉砕処理は公知の粉砕機を用いて行うことができる。用いられる粉砕機に特に制限はなく、バイオマスを小粒子化することができる装置であればよい。該粉砕処理は、上述した塩基性化合物によるアルカリ処理と組み合わせてもよい。該粉砕処理は、アルカリ処理の前又は後に行ってもよく、あるいは、粉砕処理と並行してアルカリ処理、例えば上述したアルカリ混合粉砕処理を行ってもよい。アルカリ混合粉砕処理では、例えば、アルカリ溶液に浸漬したバイオマスを粉砕処理にかけてもよく(湿式粉砕)、又は固体のアルカリとバイオマスとを一緒に粉砕処理にかけてもよいが(乾式粉砕)、このうち、乾式粉砕が好ましい。
上記水熱処理とは、バイオマスを、水分の存在下で加熱処理することをいう。該水熱処理は、公知の反応装置を用いて行うことができ、用いられる反応装置に特に制限はない。
バイオマスの糖化処理の条件は、本発明のアラビノフラノシダーゼ又はこれを含有するバイオマス糖化剤及び併用するその他酵素が失活しない条件であれば特に限定されない。適切な条件は、バイオマスの種類や前処理工程の手順、使用する酵素の種類により当業者が適宜決定することができる。
上記糖化処理においては、バイオマスを含む懸濁液に、本発明のアラビノフラノシダーゼ又はこれを含有するバイオマス糖化剤を添加することが好ましい。懸濁液中のバイオマスの含有量は、糖化効率又は糖生産効率向上(すなわち糖生産時間の短縮)の観点から、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上であり、そして好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下である。
上記懸濁液に対する本発明のアラビノフラノシダーゼ又はこれを含有するバイオマス糖化剤の使用量は、上記前処理条件、ならびに併用する酵素の種類及び性質により適宜決定されるが、バイオマス質量に対して、本発明のアラビノフラノシダーゼの質量に換算して、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.002質量%以上、さらに好ましく0.005質量%以上であり、そして100質量%以下、より好ましくは50質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下である。
上記糖化処理の反応pHとしては、糖化効率又は糖生産効率向上(すなわち糖生産時間の短縮)、及び生産コスト低減の観点から、好ましくはpH3.5以上、さらに好ましくはpH4.0以上であり、そして好ましくはpH6.0以下、より好ましくはpH5.5以下である。
上記糖化処理の反応温度は、糖化効率の向上、糖化効率又は糖生産効率向上(すなわち糖生産時間の短縮)、生産コスト低減、及び同時に使用するセルラーゼの至適温度の観点から、50〜80℃が好ましい。該糖化処理の反応時間は、バイオマスの種類若しくは量、酵素量などに合わせて適宜設定することができるが、糖化効率又は糖生産効率向上(すなわち糖生産時間の短縮)、及び生産コスト低減の観点から、好ましくは1〜5日間、より好ましくは1〜4日間、さらに好ましくは1〜3日間である。
上述した実施形態に関し、本発明においてはさらに以下の態様が開示される。
<1>下記(a)〜(d)から選ばれるアミノ酸配列からなり、且つアラビノフラノシダーゼ活性を有するタンパク質:
(a)配列番号2で示されるアミノ酸配列;
(b)配列番号2の1番から301番で示されるアミノ酸配列;
(c)(a)又は(b)で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列;
(d)(a)又は(b)で示されるアミノ酸配列において、1又は複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列。
<2><1>のアラビノフラノシダーゼ活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
<3>下記(e)〜(h)から選ばれるヌクレオチド配列からなる、<2>のポリヌクレオチド:
(e)配列番号1で示されるヌクレオチド配列;
(f)配列番号1の73番から975番で示されるヌクレオチド配列;
(g)(e)又は(f)で示されるヌクレオチド配列と少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列;
(h)(e)又は(f)で示されるヌクレオチド配列において、1又は複数個のヌクレオチドが欠失、挿入、置換若しくは付加されたヌクレオチド配列。
<4><2>又は<3>のポリヌクレオチドを含むベクター。
<5><2>又は<3>のポリヌクレオチド、又は<4>のベクターを宿主に導入することを含む、形質転換体の製造方法。
<6><2>又は<3>のポリヌクレオチド、又は<4>のベクターが導入された形質転換体。
<7><1>のアラビノフラノシダーゼ活性を有するタンパク質を含有する、バイオマス糖化剤。
<8><1>のアラビノフラノシダーゼ活性を有するタンパク質、又は<7>のバイオマス糖化剤を用いる、バイオマスからの糖の製造方法。
<9><5>における宿主がトリコデルマ属の糸状菌である、<5>の製造方法又は<6>の形質転換体。
<10>バイオマス糖化剤の総タンパク質量中における、アラビノフラノシダーゼ活性を有するタンパク質の含有量が0.1質量%以上70質量%以下である、<7>のバイオマス糖化剤。
<実施例1>アラビノフラノシダーゼの製造
Penicillium sp.由来アラビノフラノシダーゼF81ABFを製造した。
(1)アラビノフラノシダーゼRNAの単離及びcDNAの合成
土壌より単離された糸状菌Penicillium sp.をキシランによる誘導条件下で培養した。培養4日後、Miracloth(メルクミリポア)を用いてろ過することにより菌糸及び培養上清を得た。得られた菌糸は、液体窒素中にて速やかに凍結後、マルチビーズショッカー(安井器械)を用いて破砕した。得られた破砕細胞から、RNeasy Mini Kit(キアゲン)を用いてRNA溶液を得た。RNA溶液から、SuperScript II Reverse Transcriptase(ライフテクノロジーズ)を用いてcDNAを合成した。
(2)F81ABF発現用ベクターの作製
特開2017−12006号公報にて構築されたpUC−cbh1−amdSを鋳型として、表1に示したフォワードプライマー1(配列番号6)とリバースプライマー1(配列番号7)を用いてPCRすることで、amdS(Aspergillus nidurans由来アセトアミダーゼ)をほぼ除いた約7.2kbp断片(A)を増幅した。また、Trichoderma reesei由来のpyr4(配列番号3)を鋳型として、表1に示したフォワードプライマー2(配列番号8)とリバースプライマー2(配列番号9)を用いてPCRすることで、約2.7kbp断片(B)を増幅した。得られたDNA断片(A)及び(B)は、In−Fusion HD Cloning Kit(タカラバイオ)のプロトコルに従って処理し、コンピテントセルE.coli HB101(タカラバイオ)へと形質転換した。アンピシリン耐性株として得られた形質転換体の中から、コロニーPCRにより目的の遺伝子が挿入されたプラスミドを保持する菌株を選別した。選別した形質転換体をLB寒天培地を用いて培養し(37℃、1日間)、得られた細胞からHigh Pure Plasmid Isolation kit(Roche)を用いてプラスミドを回収、精製した。得られたベクターを、pUC−cbh1−pyr4と名付けた。
上記pUC−cbh1−pyr4を鋳型とし、表1に示したフォワードプライマー3(配列番号10)とリバースプライマー3(配列番号11)を用いてPCRすることで約10kbp断片(C)を増幅した。次いで上記(1)にて得られたcDNAを鋳型として、表1に示したフォワードプライマー4(配列番号12)とリバースプライマー4(配列番号13)を用いてPCRすることで、推定シグナル配列を含むF81ABFプレタンパク質(配列番号2)の遺伝子領域(配列番号1)約1.0kbp断片(D)を増幅した。得られたDNA断片(C)及び(D)を上記と同様の手法でベクターに組み込み、F81ABF遺伝子を含む発現ベクターpUC−Pcbh1−F81ABF−pyr4を作製した。
(3)形質転換体の作製
T.reeseiJN11株(J.Ind.Microbiol.Biotechnol.(2012)1741−9に示されるX3AB1株)に対して上記(2)で構築したベクターの形質転換を行った。導入はプロトプラストPEG法で行った。形質転換体は選択培地(2% グルコース、1.1M ソルビトール、2% アガー、0.2% KH2PO(pH5.5)、0.06% CaCl2・2H2O、0.06% CsCl2、0.06% MgSO・7H2O、0.06% (NH4)2SO、0.1% Trace element1;%はいずれもw/v%)にて選抜した。Trace element1の組成は以下のとおりである:0.5g FeSO・7H2O、0.2g CoCl2、0.16g MnSO・H2O、0.14g ZnSO・7H2Oを蒸留水にて100mLにメスアップ。選抜した形質転換体を植え継ぎにより安定化した後、コロニーPCRにより目的の遺伝子が安定に保持された菌株をさらに選別した。
(4)形質転換体の培養
胞子を2×10個/mLになるように50mLのシード培地(500mL容三角フラスコ)に接種し、28℃で往復振とう220rpmにて2日間振盪培養(PRECi:PRXYg−98−R型)を行った。本培養:250mlジャーファーメンター(Biott製)にて行った。100mLの本培養液に対して10mLの前培養液を植菌し、28℃、pH4.5、通気量0.5vvm、DO3ppm制御により約5日間培養した。なおpH制御には5%アンモニア水を使用した。培養液は遠心分離によって沈殿画分と培養液上清に分離後、フィルターろ過した。使用した培地組成は下記のとおりである。
シード培地組成(三角フラスコ培養)
(NHSO 0.14%
KHPO 0.2%
CaCl・2HO 0.03%
MgSO・7HO 0.03%
ハイポリペプトンN 0.1%
Bact yeast extract 0.05%
Tween 80 0.1%
Trace element 0.1%
Tartrate buffer(pH4.0)** 10%
グルコース 1%
Trace element stock solution(100ml)
・HBO 6mg
・(NH) 6Mo24・4HO 6mg
・FeCl・6HO 100mg
・CuSO・5HO 40mg
・MnCl・4HO 8mg
・ZnCl 200mg
Tartrate buffer(pH4.0)酒石酸緩衝液 1L
A:0.5M CNa・2HO 92.032g/800ml
B:0.5M C 15.009g/200ml
A:B=4:1でpH4に調整
本培養培地 (1000 ml)
(NHSO 0.42%
KHPO 0.2%
CaCl・2HO 0.03%
MgSO・7HO 0.03%
ハイポリペプトンN 0.1%
Bact yeast extract 0.05%
Tween 80 0.1%
Trace element 0.1%
Antifoam PE−L 0.2%
Trace element** 0.1%
FD−101 10%
(5)F81ABFの精製
上記(4)で得た培養上清を用い、下記の条件にて精製を行った。
装置:HPLC分取システムPLC−561(GLサイエンス)
カラム:TSKgel G2000SW 21.5x300mm(東ソー)
溶離液:20mM 酢酸バッファー(pH5)、
流速:4mL/min、
モニター波長:280nm
28分前後に溶出するピークにF81ABFが含まれることが確認されたことから、27分〜28分までのフラクションを分取した。さらに下記条件にてゲルろ過による精製を行った。
装置:HPLC分取システムPLC−561(GLサイエンス)
カラム:POROS HS 20μmカラム 4.6×100mm
(ライフテクノロジーズ)
溶離液A:20mM Tris−HCl バッファー(pH8)
溶離液B:20mM Tris−HCl バッファー(pH8)1M NaCl
流速:1mL/min
モニター波長:280nm
リニアグラジエント:5min A:B=100:0、
15min A:B=20:80
9分前後に溶出するピークに大部分の純粋なF81ABFが含まれることが確認されたことから、7分〜11分までのフラクションを分取し、濃縮・脱塩したサンプルをF81ABF粗酵素液とした。
(6)タンパク質濃度測定
精製したF81ABFは、アラビノフラノシダーゼプレタンパク質のアミノ酸配列(配列番号2)から推定シグナル配列(1−24位)を除いた成熟アラビノフラノシダーゼ(配列番号2の25−325位で示されるアミノ酸配列)である。なお、シグナル配列の予測にはsignalP(Bendtsenら,J.Mol.Biol.340:783−795,2004)を用いた。タンパク質の濃度は、bradford法にて測定した。bradford法では、Quick Startプロテインアッセイ(BioRad)を使用し、ウシγグロブリンを標準タンパク質とした検量線をもとにタンパク質量を計算した。
<実施例2>F81ABFのα−L−アラビノフラノシダーゼ活性
F81ABFと市販品α−L−アラビノフラノシダーゼ活性の比較を行った。カビ等の真核微生物由来のα−L−アラビノフラノシダーゼは,GH43,51,54及び62に分類されている。F81ABFはGH62に属する。市販品は表2に示したMegazyme社のAFAM2(GH43)、AFASE(GH51)、ABFAN(GH62)、ABFUM(GH62)を用いた。基質はp−ニトロフェニル−α−Lアラビノフラノシド(図1A)及び小麦アラビノキシランを用い(図1B)、α−L−アラビノフラノシダーゼ活性を測定した。
(1)p−ニトロフェニル−α−Lアラビノフラノシド分解活性
20μLの2.5 mM p−ニトロフェニル−α−Lアラビノフラノシド(pNP-Ara、Sigma)、20μLの250 mM 酢酸ナトリウム緩衝液(pH 5)、40μLのイオン交換水を混合した80μLの基質溶液に対して、適宜希釈した酵素溶液を20μLずつ添加し、50℃で10分間反応した。100μLの0.4M 炭酸ナトリウム溶液を添加し、反応を停止させると同時に反応液をアルカリ性にすることで、酵素分解により遊離したp−ニトロフェニルを黄色に発色させた。反応溶液を吸光度420nmにて測定した。1unit(U)は1分間に1μmolのp-ニトロフェノールを遊離する酵素量とした。
結果を表3に示す。F81ABFのpNP−Ara分解活性(pNPA)は0.46U/mgと低いもののABFANと同等の活性を示した。
(2)小麦アラビノキシラン分解活性
50μLの1.0%(w/v)小麦アラビノキシラン、低粘性(Megazyme)、20μLの50mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH 5)、20μLのイオン交換水を混合した。90μLの基質溶液に対し、適宜希釈した酵素溶液を10μL添加し、50℃で10分間反応した。100μLのDNS溶液(1.6%水酸化ナトリウム、0.5%3,5−ジニトロサリチル酸、30%酒石酸ナトリウムカリウム)を添加し反応を停止させた後、99.9℃にて10分間加熱処理した。冷却後、反応溶液を吸光度540nmにて測定した。対照は、90μLの基質溶液に100μLのDNS溶液を添加し、混和した後に10μLの酵素溶液を加えたものを使用した。1unit(U)は1分間に1μmolのL−アラビノース相当の還元糖を遊離する酵素量とした。結果を前記表3に併せて示す。F81ABFの小麦アラビノキシラン分解活性(WAX)は121.3U/mgであり、市販酵素と比較して最も高い値を示した。
<実施例3>バイオマス糖化におけるF81ABFの利用性
実施例2よりF81ABFはアラビノキシラン分解活性が市販酵素と比較して高いことから、バイオマスの糖化性に効果を示すことが期待された。そこでバイオマスとしてアラビノキシランを多く含む小麦ふすまの糖化に対するF81ABFの効果を調べた。
(1)セルラーゼの調製
セルラーゼとしてJN11を使用した。JN11は、J.Ind.Microbiol.Biotechnol.(2012)1741−9に示されるX3AB1株であり、実施例1(4)と同様の手順で培養することで調製した。
(2)糖化反応
蓋つきスクリュー管(株式会社マルエム製、No.3、φ21×45mm)に、基質として小麦ふすまを乾燥原料換算で50mgと、0.1mLの0.5M酢酸ナトリウムバッファー(pH5)を添加し、ここに上記(1)で調製したJN11(酵素タンパク量として6mg/g−基質)、及び実施例1(5)で調製したF81ABF酵素液(酵素タンパク量として0.1mg/g−基質)を添加後、基質濃度が5wt%になるように水を添加して反応液を調製した。比較のため、Megazyme社のAFAM2(GH43)、AFASE(GH51)、ABFAN(GH62)及びABFUM(GH62)、(いずれも0.1mg/g−基質)を添加した反応液を調製した。対照としては、酵素としてJN11のみを添加した反応液を調製した。各反応液は、50℃、150rpmで往復振とうしながら2日間糖化反応させた。なお、各酵素の量はbradford法にて測定したタンパク質量を基準にした。反応終了後、遠心分離(15000rpm、5min、4℃)にて上清を回収し、DX500クロマトグラフィーシステム(日本ダイオネクス社製)にて上清中のグルコース、キシロース、アラビノースの濃度を測定した。JN11を用いた際に得られるグルコース、キシロース、アラビノース糖量を100%とし、各種α−L−アラビノフラノシダーゼを添加することにより得られた糖量を相対値として算出した。
結果を図2に示す。F81ABFを0.1 mg/g添加することでアラビノース生成量は大幅に増加し、123%を示した。またグルコース及びキシロース生成量が106%及び105%増量した。グルコース、キシロース及びアラビノースの3種類の糖の生成量が向上したのはF81ABF添加時のみであり、各種市販酵素では見られなかった。この結果から、F81ABFは小麦ふすまのヘミセルロースの分解を介してセルロースの分解を促進する、バイオマスの糖化に適した酵素であることが示された。
<実施例4>バイオマス糖化におけるF81ABF発現糖化酵素の利用
実施例3より小麦ふすまの糖化にF81ABFが有効であることが示されたことから、T.reeseiにF81ABFの遺伝子を導入し、F81ABFを発現した糖化酵素を調製し、小麦ふすまの糖化性を調べた。
(1)発現用ベクターの作製
pUC118を鋳型として、表1に示したフォワードプライマー5(配列番号14)とリバースプライマー5(配列番号15)を用いてPCRすることで約3.2kbp断片(A)を増幅した。また、Trichoderma reesei由来のcre1の上流から下流領域(配列番号4)を鋳型として、表1に示したフォワードプライマー6(配列番号16)とリバースプライマー6(配列番号17)を用いてPCRすることで、約2.9kbp断片(B)を増幅した。得られたDNA断片(A)及び(B)は、実施例1の(2)と同様の手法でベクターに組み込み、pUC−cre1を作製した。
上記pUC−cre1を鋳型とし、表1に示したフォワードプライマー7(配列番号18)とリバースプライマー7(配列番号19)を用いてPCRすることでcre1遺伝子領域を除いた約6.3kbp断片(C)を増幅した。また配列番号4を鋳型として、表1に示したフォワードプライマー8(配列番号20)とリバースプライマー8(配列番号21)を用いてPCRすることで、cre1遺伝子下流の約500bp断片(D)を増幅した。さらにTrichoderma reesei由来のpyr4(配列番号3)を鋳型として、表1に示したフォワードプライマー9(配列番号22)とリバースプライマー9(配列番号23)を用いてPCRすることで、約2.7kbp断片(E)を増幅した。得られたDNA断片(D)及び(E)をIn−Fusion HD Cloning Kit(タカラバイオ)のプロトコルに従って処理し、(D)−(E)の順に連結したDNA断片(F)を調製した。得られたDNA断片(C)及び(F)を実施例1の(2)と同様の手法でベクターに組み込み、pUC−cre1−pyr4を作製した。
上記pUC−cre11−pyr4を鋳型とし、表1に示したフォワードプライマー10(配列番号24)とリバースプライマー10(配列番号25)を用いてPCRすることで約9.5kbp断片(G)を増幅した。またeg1遺伝子のプロモーター領域(配列番号5)を鋳型として、表1に示したフォワードプライマー11(配列番号26)とリバースプライマー11(配列番号27)を用いてPCRすることで、約1.5kbp断片(H)を増幅した。実施例1(1)にて得られたcDNAを鋳型として、表1に示したフォワードプライマー12(配列番号28)とリバースプライマー12(配列番号29)を用いてPCRすることで、推定シグナル配列を含むF81ABFプレタンパク質(配列番号2)の遺伝子領域(配列番号1)約1.0kbp断片(I)を増幅した。さらに特開2017−12006号公報にて構築されたpUC−cbh1−amdSを鋳型として、表1に示したフォワードプライマー13(配列番号30)とリバースプライマー13(配列番号31)を用いてPCRすることで、cbh1のターミネーター領域として約0.6kbp断片(J)を増幅した。得られたDNA断片(H)、(I)及び(J)をIn−Fusion HD Cloning Kit(タカラバイオ)のプロトコルに従って処理し、(H)−(I)−(J)の順に連結したDNA断片(K)を調製した。得られたDNA断片(G)及び(K)を実施例1の(2)と同様の手法でベクターに組み込み、pUC−Peg1−F81ABF−Δcre1−pyr4を作製した。
(2)形質転換体の作製
トリコデルマ・リーゼ JN11株(J.Ind.Microbiol.Biotechnol.(2012)1741−9に示されるX3AB1株)に対して上記(1)で構築したベクターの形質転換を行った。導入は実施例1の(3)に記載の通り行い、得られた形質転換体をTK16とした。
(3)糖化酵素TK16の調製
(2)にて得られた菌株を用い、実施例1(4)と同様の手順で培養することで調製した。
(4)糖化反応
(3)にて得られたTK16糖化酵素を用い、実施例3(2)と同様の手順で小麦ふすまの糖化を行った。結果を図3に示す。小麦ふすまをTK16で糖化することで、グルコース、キシロース及びアラビノースの生成糖量はそれぞれ103%、106%及び127%向上した。この結果から、F81ABFを導入したTK16はバイオマス糖化酵素として有用であることが示された。
<実施例5>GH62のα−L−アラビノフラノシダーゼ相同性比較
(1)アライメント解析
F81ABFと市販酵素ABFUM及びABFANに相当するEAK85771.1及びEAA59562.1、前記特許文献3のCAM07245.1の成熟ペプチドについてそれぞれアミノ酸配列の相同性解析を行った。解析は遺伝情報処理ソフトウェアであるGenetyx Ver.12(株式会社ゼネティクス)のfastpプログラムを用いた。結果、EAK85771.1、EAA59562.1及びCAM07245.1は、F81AFBとそれぞれ66、72及び82%同一性を示した。これら4種類のα−L−アラビノフラノシダーゼのマルチプルアライメントを図4に示す。
(2)分子系統樹解析
CAZY (http://www.cazy.org/)に登録されている真核生物由来のGH62のα−L−アラビノフラノシダーゼ67タンパク質のアミノ酸配列についてclustalXにてマルチプルアライメントを行い、近隣結合法(Neighbor−Joining method:NJ法)により分子系統樹を作成した。Genetyx Ver.12にて67タンパク質の中に市販酵素ABFUM及びABFANに相当するEAK85771.1及びEAA59562.1、WO2006125438号のCAM07245.1が含まれている。結果を図5に示す。GH62のα−L−アラビノフラノシダーゼは大きく2つのグループに分類され、F81ABFはグループ1に属した。実施例5(1)において最も高い相同性を示したCAM07245.1が同じグループ1であることが示された。一方で、またEAK85771.1が最も相同性が低かったが、分子系統樹解析から同じグループ1であることが示された。一方で、EAA59562.1はEAK85771.1より相同性が高いものの、グループ2に属した。

Claims (8)

  1. 下記(a)〜(d)から選ばれるアミノ酸配列からなり、且つアラビノフラノシダーゼ活性を有するタンパク質:
    (a)配列番号2で示されるアミノ酸配列;
    (b)配列番号2の1番から301番で示されるアミノ酸配列;
    (c)(a)又は(b)で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列;
    (d)(a)又は(b)で示されるアミノ酸配列において、1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列。
  2. 請求項1記載のアラビノフラノシダーゼ活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
  3. 下記(e)〜(h)から選ばれるヌクレオチド配列からなる、請求項2記載のポリヌクレオチド:
    (e)配列番号1で示されるヌクレオチド配列;
    (f)配列番号1の73番から975番で示されるヌクレオチド配列;
    (g)(e)又は(f)で示されるヌクレオチド配列と少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列;
    (h)(e)又は(f)で示されるヌクレオチド配列において、1又は複数個のヌクレオチドが欠失、挿入、置換若しくは付加されたヌクレオチド配列。
  4. 請求項2又は3記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
  5. 請求項2又は3記載のポリヌクレオチド、又は請求項4記載のベクターを宿主に導入することを含む、形質転換体の製造方法。
  6. 請求項2又は3記載のポリヌクレオチド、又は請求項4記載のベクターが導入された形質転換体。
  7. 請求項1記載のアラビノフラノシダーゼ活性を有するタンパク質を含有する、バイオマス糖化剤。
  8. 請求項1記載のアラビノフラノシダーゼ活性を有するタンパク質、又は請求項7記載のバイオマス糖化剤を用いる、バイオマスからの糖の製造方法。
JP2018202165A 2018-10-26 2018-10-26 新規アラビノフラノシダーゼ Active JP7208762B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2018202165A JP7208762B2 (ja) 2018-10-26 2018-10-26 新規アラビノフラノシダーゼ

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2018202165A JP7208762B2 (ja) 2018-10-26 2018-10-26 新規アラビノフラノシダーゼ

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2020065514A true JP2020065514A (ja) 2020-04-30
JP7208762B2 JP7208762B2 (ja) 2023-01-19

Family

ID=70388623

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2018202165A Active JP7208762B2 (ja) 2018-10-26 2018-10-26 新規アラビノフラノシダーゼ

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP7208762B2 (ja)

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
EP3888846A1 (en) 2020-04-01 2021-10-06 Novel Crystal Technology, Inc. Semiconductor substrate and method for manufacturing same
WO2023225459A2 (en) 2022-05-14 2023-11-23 Novozymes A/S Compositions and methods for preventing, treating, supressing and/or eliminating phytopathogenic infestations and infections

Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2016095856A1 (en) * 2014-12-19 2016-06-23 Novozymes A/S Compositions comprising polypeptides having xylanase activity and polypeptides having arabinofuranosidase activity

Patent Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2016095856A1 (en) * 2014-12-19 2016-06-23 Novozymes A/S Compositions comprising polypeptides having xylanase activity and polypeptides having arabinofuranosidase activity

Non-Patent Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Title
BISCHOFF, K. M. ET AL.: "Purification and characterization of arabinofuranosidase from the corn endophyte Acremonium zeae.", BIOTECHNOLOGY LETTERS, vol. 33, JPN6022032162, 2011, pages 2013 - 2018, ISSN: 0004839377 *
WILKENS, C. ET AL.: "An efficient arabinoxylan-debranching α-L-arabinofuranosidase of family GH62 from Aspergillus nidul", APPLIED MICROBIOLOGY AND BIOTECHNOLOGY, vol. 100, JPN6022032163, 2016, pages 6265 - 6277, ISSN: 0004839378 *
WILKENS, C. ET AL.: "GH62 arabinofuranosidases: Structure, function and applications.", BIOTECHNOLOGY ADVANCES, vol. 35, JPN6022032165, 2017, pages 792 - 804, XP085179341, ISSN: 0004839379, DOI: 10.1016/j.biotechadv.2017.06.005 *

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
EP3888846A1 (en) 2020-04-01 2021-10-06 Novel Crystal Technology, Inc. Semiconductor substrate and method for manufacturing same
WO2023225459A2 (en) 2022-05-14 2023-11-23 Novozymes A/S Compositions and methods for preventing, treating, supressing and/or eliminating phytopathogenic infestations and infections

Also Published As

Publication number Publication date
JP7208762B2 (ja) 2023-01-19

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US20110047656A1 (en) Construction of highly efficient cellulase compositions for enzymatic hydrolysis of cellulose
US8790894B2 (en) Mutant cellobiohydrolase
US20130280764A1 (en) Method of improving the activity of cellulase enzyme mixtures in the saccharification (ligno)cellulosic material
US10550376B2 (en) Xylanase
KR20150079676A (ko) 마그나포르테 그리세아로부터의 베타-글루코시다제
Kim et al. Production of cellulases by Penicillium sp. in a solid-state fermentation of oil palm empty fruit bunch
Singh et al. Overview of the process of enzymatic transformation of biomass
JP7208762B2 (ja) 新規アラビノフラノシダーゼ
US10266814B2 (en) Systems and methods for production and use of fungal glycosyl hydrolases
JP7051491B2 (ja) 変異β-グルコシダーゼ
WO2015137334A1 (ja) 変異キシラナーゼ
WO2013176205A1 (ja) キシラナーゼおよびそれを用いた糖の製造方法
JP7051492B2 (ja) 変異β-グルコシダーゼ
JP6849749B2 (ja) 新規キシラナーゼ
JP6470967B2 (ja) 変異キシラナーゼ
JP2023145205A (ja) バイオマス糖化のための酵素組成物
WO2015076260A1 (ja) 耐熱性キシラナーゼ
JP2023145206A (ja) バイオマス糖化のための酵素組成物
JP2013243954A (ja) キシラナーゼおよびそれを用いた糖の製造方法
JP2013243953A (ja) キシラナーゼおよびそれを用いた糖の製造方法
US8129140B2 (en) Thermophilic endo-glucanase and uses thereof
BR112017028171B1 (pt) Polinucleotídeo que codifica uma proteína tendo atividade de xilanase, vetor compreendendo o dito polinucleotídeo, método para fabricação de um transformante, transformante transformado com o dito vetor, agente de sacarificação de biomassa compreendendo proteína com atividade de xilanase e método para fabricação de açúcar a partir de biomassa

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20210915

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20220714

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20220802

A601 Written request for extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A601

Effective date: 20221003

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20221130

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20230104

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20230106

R151 Written notification of patent or utility model registration

Ref document number: 7208762

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151