JP2013243954A - キシラナーゼおよびそれを用いた糖の製造方法 - Google Patents

キシラナーゼおよびそれを用いた糖の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】より効率的且つ経済的にバイオマスを糖化するキシラナーゼ、バイオマス糖化用酵素製剤およびそれを用いる方法の提供。
【解決手段】下記(a)〜(c)から選ばれるアミノ酸配列からなり、且つキシラナーゼ活性を有する、単離または精製されたタンパク質:(a)特定のアミノ酸配列;(b)特定のアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列;および、(c)特定のアミノ酸配列において、1〜複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列。
【選択図】なし

Description

本発明は、新規キシラナーゼおよび該キシラナーゼを用いた糖の製造方法に関する。
セルロースを含有するバイオマス材料(以下、「バイオマス」ということがある)中のセルロースから糖を製造し、それを発酵法などでエタノールや乳酸などへ変換する技術は以前より知られている。さらに近年、環境問題への取り組みの観点から、バイオマスを資源として効率よく利用する技術の開発が注目されている。
バイオマスは、セルロース繊維と、それを取り巻くキシランを主に含むヘミセルロースおよびリグニンから構成されている。バイオマスにおけるセルロースやヘミセルロースの糖化効率を高めるためには、セルロースやヘミセルロースを加水分解する酵素の開発が必要となる。また、当該バイオマスからリグニンを除去することが必要である。
バイオマスのセルラーゼによる糖化や、ヘミセルラーゼやリグニナーゼによるバイオマスの酵素分解は、従来から行われている。例えば、セルラーゼにTrichoderma reesei由来のキシラナーゼやアラビノフラノシダーゼなどのヘミセルラーゼが添加された酵素組成物が開発されている(特許文献1)。また、バガス堆肥に存在する微生物群由来のキシラナーゼ活性を有するタンパク質、および当該タンパク質とセルラーゼとをバイオマス資源に反応させることによる糖の製造方法が知られている(特許文献2)。さらに、ノボザイムズ社(Novozymes社)が製造販売しているキシラナーゼ製剤(Cellic(登録商標)HTecなど)も知られている。
特表2011−515089号公報 特開2012−029678号公報
しかしながら、従来のヘミセルラーゼやキシラナーゼを用いたバイオマスの糖化方法は、糖化効率や単糖の生産性、または酵素コストの面で未だ満足できるものではなかった。さらに、従来のキシラナーゼは、至適pH領域が比較的狭く、そのため適用用途が制限される場合があった。
本発明は、より効率的且つ経済的にバイオマスを糖化することができ、且つ広範囲のpHで作用でき汎用性に優れた新規キシラナーゼ、および該キシラナーゼを用いた糖の製造方法に関する。
本発明者らは、広いpH領域において高いキシラナーゼ活性を発揮し得る、Cellulomonas属細菌由来の新規キシラナーゼを見出し、また当該キシラナーゼを用いることによりバイオマスの糖化を効率よく行うことができることを見出したことによって、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、下記(a)〜(c)から選ばれるアミノ酸配列からなり、且つキシラナーゼ活性を有する、単離または精製されたタンパク質(以下、「本発明のキシラナーゼ」ということがある。)を提供する。
(a)配列番号2で示されるアミノ酸配列
(b)配列番号2で示されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列
(c)配列番号2で示されるアミノ酸配列において、1〜複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列
また、本発明は、上記本発明のキシラナーゼを含む、バイオマス糖化用酵素製剤(以下、「本発明の酵素製剤」ということがある。)を提供する。
さらに、本発明は、バイオマスを、上記本発明の酵素製剤で糖化する工程を含む糖の製造方法(以下、「本発明の糖の製造方法」ということがある。)を提供する。
本発明は、広いpH領域において高いキシラナーゼ活性を有するキシラナーゼを提供する。当該キシラナーゼを使用することによって、市販のキシラナーゼ製剤などの公知のキシラナーゼまたはそれを含む組成物を使用する場合と比べて、より効率のよいバイオマスの糖化を実現することができる。したがって、当該キシラナーゼを用いる本発明の酵素製剤および糖の製造方法によれば、バイオマスから効率的且つ安価に糖を製造することができる。
各種酵素製剤によるバイオマスからの生成糖量。
本明細書において、塩基配列およびアミノ酸配列の配列同一性は、Lipman−Pearson法(Science, 1985, 227:1435-1441)によって計算される。具体的には、遺伝情報処理ソフトウェアGenetyx−Winのホモロジー解析(Search homology)プログラムを用いて、Unit size to compare(ktup)を2として解析を行うことにより算出される。
また、本明細書において、「1〜複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加された配列」としては、1〜30個、好ましくは1〜20個、より好ましくは1〜10個、さらに好ましくは1〜5個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加された配列が挙げられる。
また本明細書において、「1〜複数個の塩基が欠失、置換若しくは付加された配列」としては、1〜90個、好ましくは1〜60個、より好ましくは1〜30個、さらに好ましくは1〜15個、さらにより好ましくは1〜10個の塩基が欠失、置換若しくは付加された配列が挙げられる。
本明細書において、「バイオマス」とは、植物や藻類が生産するヘミセルロース成分を含むセルロース系および/またはリグノセルロース系バイオマスをいう。バイオマスの具体例としては、カラマツやヌマスギ等の針葉樹や、アブラヤシ(幹部)、ヒノキ等の広葉樹などから得られる各種木材;ウッドチップなどの木材の加工物または粉砕物;木材から製造されるウッドパルプ、綿の種子の周囲の繊維から得られるコットンリンターパルプなどのパルプ類;新聞紙、ダンボール、雑誌、上質紙などの紙類;バガス(サトウキビの搾りかす)、パーム空果房(EFB)、稲わら、とうもろこし茎若しくは葉などの植物の茎、葉、果房など;籾殻、パーム殻、ココナッツ殻などの植物殻類、藻類などからなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。このうち、入手容易性および原料コストの観点から、木材、木材の加工物または粉砕物、植物の茎、葉、果房などが好ましく、バガス、EFB、アブラヤシ(幹部)がより好ましく、バガスがさらに好ましい。上記バイオマスは、単独でまたは2種以上を混合して使用してもよい。また上記のバイオマスは乾燥されていてもよい。
本明細書において、「キシラナーゼ活性」とは、キシラン中のキシロースβ−1,4−グリコシド結合を加水分解する活性をいう。タンパク質のキシラナーゼ活性は、例えば、キシランを基質として当該タンパク質と反応させ、キシラン分解産物の生成量を測定することによって決定することができる。キシラナーゼ活性の測定の具体的手順は、後述の実施例に詳述されている。
(1.キシラナーゼ)
本発明のキシラナーゼは、下記(a)〜(c):
(a)配列番号2で示されるアミノ酸配列;
(b)配列番号2で示されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列;
(c)配列番号2で示されるアミノ酸配列において、1〜複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列、
から選ばれるアミノ酸配列からなり、且つキシラナーゼ活性を有するタンパク質であり得る。
本発明のキシラナーゼは、pH安定性の向上および糖化効率向上の観点から、配列番号2で示されるアミノ酸配列と90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる。また、本発明のキシラナーゼとしては、pH安定性の向上および糖化効率向上の観点から、配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるCellulomonas属細菌(例えばCellulomonas fimi ATCC484)由来キシラナーゼが好ましい例として挙げられる。
配列番号2で示されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、且つキシラン分解活性を有するタンパク質の例としては、配列番号2で示されるアミノ酸配列において1〜複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、且つキシラナーゼ活性を有するタンパク質が挙げられ、例えば、上述した配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるCellulomonas属細菌由来キシラナーゼの天然または人工的に作製された変異体が挙げられる。当該変異体は、例えば、上記Cellulomonas属細菌由来キシラナーゼをコードする遺伝子に対して紫外線照射や部位特異的変異導入(Site-Directed Mutagenesis)のような公知の突然変異導入法により突然変異を導入し、当該突然変異を有する遺伝子を発現させ、所望のキシラン分解活性を有するタンパク質を選択することによって、作製することができる。このような変異体作製の手順は、当業者に周知である。
本発明のキシラナーゼは、従来単離または精製されているキシラナーゼと異なるアミノ酸配列を有する。例えば、配列番号2で示される配列と最も配列同一性の高いアミノ酸配列を有する既知のキシラナーゼは、Cellulomonas fimi由来のキシラナーゼ(J. Biol. Chem., 2005, 280(42):35126-35)であるが、配列番号2のキシラナーゼとの配列同一性は88%である。
好ましくは、本発明のキシラナーゼは、さらに以下の酵素学的性質を有する。
(i)最適反応pH
本明細書において、「キシラナーゼ活性における最適反応pH」とは、50℃においてキシランを分解したときの活性が最大となるpHを意味し、具体的には、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
本発明のキシラナーゼにおいて、キシラナーゼ活性の最適反応pHは、pH安定性の向上、他酵素とのカクテル化を容易にする観点から、pH5.5〜9.5の範囲であることが好ましく、より好ましくはpH6.0〜9.0、さらに好ましくはpH6.5〜8.5、なお好ましくはpH6.6〜8.0である。
(ii) 最大活性
本明細書において、キシラナーゼの「最大活性」とは、50℃における最適反応pHにおけるキシラナーゼ活性をいう。本発明のキシラナーゼの「最大活性」は、糖化効率向上の観点から、好ましくは350U/mgタンパク質以上、より好ましくは400U/mgタンパク質以上、さらに好ましくは420U/mgタンパク質以上である。
(iii)pH依存性
本発明のキシラナーゼのキシラナーゼ活性は、pH安定性の向上および他酵素とのカクテル化を容易にする観点から、反応温度50℃、pH6.0〜9.0の範囲において最大活性の70%以上であることが好ましく、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは85%以上、なお好ましくは90%以上である。ここで、「最大活性」とは、反応温度50℃での最適反応pHにおけるキシラナーゼ活性をいう。
(iv)最適反応温度
本明細書において、「キシラナーゼ活性における最適反応温度」とは、キシラナーゼ活性が最大となる温度を意味し、具体的には、後述の実施例に記載の方法により測定される。本発明のキシラナーゼにおいて、キシラナーゼ活性の最適反応温度は、好ましくは40℃以上70℃未満、より好ましくは45〜65℃、さらに好ましくは50〜65℃、なお好ましくは55〜65℃である。
(2.キシラナーゼの生産方法)
上記本発明のキシラナーゼは、例えば、本発明のキシラナーゼをコードする遺伝子を含むベクターを微生物に導入して得られた形質転換体により生産され得る。したがって、本発明は、本発明のキシラナーゼをコードする遺伝子を含むベクターを含有する形質転換体を培養する工程を含む、キシラナーゼの生産方法(以下、「本発明のキシラナーゼの生産方法」ということがある)を提供する。すなわち、当該形質転換体を適切な培地で培養すれば、形質転換体が含有するベクター上にコードされた遺伝子が発現して、本発明のキシラナーゼが産生される。産生されたキシラナーゼを該培養物から単離または精製することにより、本発明のキシラナーゼを取得することができる。
本発明のキシラナーゼをコードする遺伝子としては、例えば、配列番号1で示される塩基配列からなる遺伝子が挙げられる。あるいは、本発明のキシラナーゼをコードする遺伝子としては、例えば、配列番号1で示される塩基配列と90%以上、好ましくは95%以上、さらに好ましくは98%以上の配列同一性を有する塩基配列からなる遺伝子、ならびに配列番号1で示される塩基配列において1〜複数個の塩基が欠失、置換若しくは付加された塩基配列が挙げられる。
本発明のキシラナーゼをコードする遺伝子は、Cellulomonas属細菌、例えばCellulomonas fimi(ATCC484)などから、当該分野で用いられる任意の方法を用いて単離することができる。例えば、当該遺伝子は、Cellulomonas属細菌の全ゲノムDNAを抽出した後、配列番号1の塩基配列を元に設計したプライマーを用いたPCRにより標的遺伝子を選択的に増幅し、増幅した遺伝子を精製することで得ることができる。あるいは、当該遺伝子は、本発明のキシラナーゼのアミノ酸配列に基づいて、遺伝子工学的または化学的に合成することができる。
またあるいは、本発明のキシラナーゼをコードする遺伝子は、上記の手順で単離または合成された遺伝子の塩基配列に対して、上述した紫外線照射や部位特異的変異導入のような公知の突然変異導入法により突然変異を導入することによって、作製することができる。例えば、本発明のキシラナーゼをコードする遺伝子は、配列番号1で示される塩基配列に公知の方法で突然変異導入し、得られた塩基配列を発現させてキシラン分解活性を調べ、所望のキシラン分解活性を有するタンパク質をコードする遺伝子を選択することによって、得ることができる。
本発明のキシラナーゼをコードする遺伝子を導入すべきベクターの種類としては、特に限定されず、タンパク質産生に通常用いられるベクター、例えばプラスミド、コスミド、ファージ、ウイルス、YAC、BACなどが挙げられる。プラスミドベクターが好ましく、例えば、市販のタンパク質発現用プラスミドベクター、例えばシャトルベクターpHY300PLK、pUC19、pUC119、pBR322(いずれもタカラバイオ株式会社製)などを好適に用いることができる。
上記ベクターは、DNAの複製開始領域を含むDNA断片、および複製起点を含むDNA領域を含み得る。また上記ベクターにおいては、上記本発明のキシラナーゼをコードする遺伝子の上流に、当該遺伝子の転写を開始させるためのプロモーター領域、発現されたタンパクを細胞外へ分泌させるための分泌シグナル領域などの制御配列が作動可能に連結されていてもよい。あるいは、本発明のプラスミドが適切に導入された微生物を選択するための薬剤(アンピシリン、ネオマイシン、カナマイシン、クロラムフェニコールなど)耐性遺伝子がさらに組み込まれていてもよい。上記制御配列の例としては、S237eglプロモーターおよびシグナル配列(Biosci. Biotechnol. Biochem., 2000, 64(11):2281-9)、ならびにBacillus sp. KSM−S237株(FERM BP−7875)およびBacillus sp. KSM−64株(FERM BP−2886)由来のセルラーゼ遺伝子の転写開始制御領域、翻訳開始領域および分泌シグナルペプチド領域が挙げられる。あるいは、当該制御領域としては、配列番号3で示される塩基配列の塩基番号1〜662の塩基配列、配列番号4で示される塩基配列からなるセルラーゼ遺伝子の塩基番号1〜696の塩基配列、またはこれらの塩基配列に対して70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、さらにより好ましくは98%以上の配列同一性を有し且つ転写開始制御機能、翻訳開始制御機能および分泌シグナルペプチドとしての機能を有する塩基配列が挙げられる。キシラナーゼ遺伝子と上記制御配列、薬剤耐性遺伝子との連結は、SOE(splicing by overlap extension)−PCR法(Gene, 1989, 77:61-68)などの方法によって行うことができる。プラスミドベクターへの遺伝子の導入手順は、当該分野で周知である。
本明細書において、遺伝子と制御配列が「作動可能に連結されている」とは、当該制御領域による制御の下に発現し得るように当該遺伝子が配置されていることをいう。
次いで、構築された上記ベクターを微生物に導入し、形質転換体を得る。導入のための微生物としては、Staphylococcus属、Enterococcus属、Listeria属、Bacillus属に属する細菌などが挙げられるが、このうち、Bacillus属細菌、例えば枯草菌またはその変異株(例えば、特開2006−174707号公報に記載のプロテアーゼ9重欠損株KA8AXなど)が好ましい。導入の方法としては、プロトプラスト法、エレクトロポレーション法などの当該分野で通常使用される方法を用いることができる。導入が適切に行われた株を薬剤耐性などを指標に選択することで、目的の形質転換体を得ることができる。
斯くして得られた形質転換体を適切な培地で培養すれば、形質転換体が含有するベクター上にコードされた遺伝子が発現して、本発明のキシラナーゼが合成される。培養に使用する培地は、形質転換体の種類にあわせて当業者が適宜選択することができる。生成された目的のキシラナーゼを該培養物から通常の方法により単離または精製することにより、本発明のタンパク質を取得することができる。このとき、当該ベクター上でキシラナーゼ遺伝子と分泌シグナル配列が作動可能に連結されている場合、生成されたキシラナーゼは菌体外に分泌されるため、より容易に回収され得る。回収されたキシラナーゼは、さらに公知の手段で精製されてもよい。
(3.バイオマス糖化用酵素製剤)
上記本発明のキシラナーゼは、後述の実施例に示す通り、従来公知のキシラナーゼやキシラナーゼ製剤と比較して、バイオマスを糖化する活性が顕著に高い。したがって、本発明のキシラナーゼは、バイオマス糖化のために好適に使用することができる。
すなわち、本発明はまた、上記本発明のキシラナーゼを有効成分とするバイオマス糖化剤、および上記本発明のキシラナーゼを含むバイオマス糖化用酵素製剤を提供する。
本発明の酵素製剤は、上述の本発明のキシラナーゼを含む。また、糖化効率の向上の観点から、本発明の酵素製剤は、さらにセルラーゼを含むことが好ましい。ここで、セルラーゼとは、セルロースのβ−1,4−グルカンのグリコシド結合を加水分解する酵素を指し、エンドグルカナーゼ、エクソグルカナーゼまたはセロビオハイドロラーゼ、およびβ−グルコシダーゼなどと称される酵素の総称である。本発明に使用されるセルラーゼとしては、市販のセルラーゼ製剤や、動物、植物、微生物由来のセルラーゼが挙げられ得る。本発明において、これらのセルラーゼは、単独で使用されても2種以上の組み合わせで使用されてもよい。糖化効率の向上の観点から、セルラーゼは、エンドグルカナーゼを含むことが好ましい。
セルラーゼの具体例としては、トリコデルマ リーゼ(Trichoderma reesei)由来のセルラーゼ;トリコデルマ ビリデ(Trichoderma viride)由来のセルラーゼ;バチルス エスピー(Bacillus sp.)KSM−N145(FERM P−19727)、バチルス エスピー(Bacillus sp.)KSM−N252(FERM P−17474)、バチルス エスピー(Bacillus sp.)KSM−N115(FERM P−19726)、バチルス エスピー(Bacillus sp.)KSM−N440(FERM P−19728)、バチルス エスピー(Bacillus sp.)KSM−N659(FERM P−19730)などの各種バチルス株由来のセルラーゼ;パイロコッカス ホリコシ(Pyrococcus horikoshii)由来の耐熱性セルラーゼ;フミコーラ インソレンス(Humicola insolens)由来のセルラーゼ、などが挙げられる。これらの中で、糖化効率の向上の観点から、トリコデルマ リーゼ(Trichoderma reesei)、トリコデルマ ビリデ(Trichoderma viride)、またはフミコーラ インソレンス(Humicola insolens)由来のセルラーゼが好ましい。上記セルラーゼを含むセルラーゼ製剤の具体例としては、セルクラスト(登録商標)1.5L(ノボザイムズ社製)、TP−60(明治製菓株式会社製)、Cellic(登録商標)CTec2(ノボザイムズ社製)、AccelleraseTMDUET(ジェネンコア社製)、およびウルトラフロ(登録商標)L(ノボザイムズ社製)が挙げられる。このうち、糖化効率の向上の観点、製造コスト低減の観点、入手性の観点などから、Cellic(登録商標)CTec2、AccelleraseTMDUET(ジェネンコア社製)が好ましく、Cellic(登録商標)CTec2がより好ましい。
また、セルラーゼの1種であるβ−グルコシダーゼの具体例としては、アスペルギルス ニガー(Aspergillus niger)由来のβ−グルコシダーゼ(例えば、ノボザイムズ社製ノボザイム188やメガザイム社製β-グルコシダーゼ)、ならびにトリコデルマ リーゼ(Trichoderma reesei)またはペニシリウム エメルソニイ(Penicillium emersonii)由来のβ−グルコシダーゼなどが挙げられる。このうち、糖化効率向上の観点から、ノボザイム188、トリコデルマ リーゼ由来のβ−グルコシダーゼが好ましく、トリコデルマ リーゼ由来のβ−グルコシダーゼがより好ましい。
また、セルラーゼの1種であるエンドグルカナーゼの具体例としては、トリコデルマ リーゼ(Trichoderma reesei)、アクレモニウム セルロリティカス(Acremonium celluloriticus)、フミコーラ インソレンス(Humicola insolens)、クロストリジウム サーモセラム(Clostridium thermocellum)、バチルス(Bacillus)、サーモビフィダ(Thermobifida)、セルロモナス(Cellulomonas)由来の酵素などが挙げられる。このうち、糖化効率向上の観点から、トリコデルマ リーゼ、フミコーラ インソレンス、バチルス、セルロモナス由来のエンドグルカナーゼが好ましく、トリコデルマ リーゼ由来のエンドグルカナーゼがより好ましい。
また、本発明の酵素製剤は、上記本発明のキシラナーゼ以外のヘミセルラーゼを含有していてもよい。ここで、ヘミセルラーゼとは、へミセルロースを加水分解する酵素を指し、キシラナーゼ、キシロシダーゼ、ガラクタナーゼなどと称される酵素の総称である。本発明のキシラナーゼ以外のヘミセルラーゼの具体例としては、トリコデルマ リーゼ(Trichoderma reesei)由来のヘミセルラーゼ;バチルス エスピー(Bacillus sp.)KSM−N546(FERM P−19729)由来のキシナラーゼ;アスペルギルス ニガー(Aspergillus niger)、トリコデルマ ビリデ(Trichoderma viride)、フミコーラ インソレンス(Humicola insolens)、またはバチルス アルカロフィルス(Bacillus alcalophilus)由来のキシラナーゼ;サーモマイセス(Thermomyces)、オウレオバシジウム(Aureobasidium)、ストレプトマイセス(Streptomyces)、クロストリジウム(Clostridium)、サーモトガ(Thermotoga)、サーモアスクス(Thermoascus)、カルドセラム(Caldocellum)、またはサーモモノスポラ(Thermomonospora)属由来のキシラナーゼ、バチルス プミルス(Bacillus pumilus)由来のβ―キシロシダーゼ、セレノモナス ルミナンティウム(Selenomonas ruminantium)由来β―キシロシダーゼが挙げられる。このうち、糖化効率向上の観点から、本発明の酵素製剤は、バチルス エスピー、アスペルギルス ニガー、トリコデルマ ビリデもしくはストレプトマイセス由来のキシラナーゼ、またはセレノモナス ルミナンティウム由来のβ−キシロシダーゼを含有することが好ましく、バチルス エスピーもしくはトリコデルマ ビリデ由来のキシナラーゼ、またはセレノモナス ルミナンティウム由来のβ−キシロシダーゼを含有することがより好ましい。
本発明の酵素製剤の総タンパク質量中における、上記本発明のキシラナーゼの含有量は、糖化効率向上の観点から、好ましくは0.5〜70質量%、より好ましくは1〜50質量%さらに好ましくは2〜40質量%、さらにより好ましくは2〜30質量%である。
また、本発明の酵素製剤の総タンパク質量中における、上記セルラーゼの含有量は、糖化効率向上の観点から、好ましくは10〜99質量%、より好ましくは30〜95質量%、さらに好ましくは50〜95質量%である。
また、本発明の酵素製剤の総タンパク質量中における、上記エンドグルカナーゼの含有量は、糖化効率向上の観点から、好ましくは1〜70質量%、より好ましくは5〜50質量%、さらに好ましくは10〜40質量%である。また、本発明の酵素製剤の総タンパク質量中における、上記本発明のキシラナーゼ以外のヘミセルラーゼの含有量としては、糖化効率向上の観点から、好ましくは0.01〜30質量%、より好ましくは0.1〜20質量%、さらに好ましくは0.5〜20質量%である。
本発明の酵素製剤における、本発明のキシラナーゼと上記セルラーゼのタンパク質量比(本発明のキシラナーゼ/セルラーゼ)は、糖化効率向上の観点から、好ましくは0.01〜100、より好ましくは0.05〜5、さらに好ましくは0.05〜1、よりさらに好ましくは0.05〜0.5である。
本発明の酵素製剤における、本発明のキシラナーゼと上記エンドグルカナーゼのタンパク質量比(本発明のキシラナーゼ/エンドグルカナーゼ)は、糖化効率向上の観点から、好ましくは0.05〜10、より好ましくは0.1〜5、さらに好ましくは0.1〜2、よりさらに好ましくは0.2〜1である。
本発明のキシラナーゼおよび酵素製剤は、バイオマス糖化用として、後述する本発明の糖の製造方法に好適に用いられる。バイオマスについては、前述したとおりである。本発明のキシラナーゼおよび酵素製剤の糖化効果をより効果的に発現させる観点から、バイオマスは、木材、木材の加工物または粉砕物、植物の茎、葉、果房などが好ましく、バガス、EFB、アブラヤシ(幹部)がより好ましく、バガスがさらに好ましい。上記バイオマスは、単独でまたは2種以上を混合して使用してもよい。また上記バイオマスは乾燥されていてもよい。
(4.糖の製造方法)
本発明の糖の製造方法は、バイオマスを、上記本発明のキシラナーゼまたは酵素製剤で糖化する工程を含む。本発明の糖の製造方法により、バイオマスの糖化効率が顕著に向上する。糖化効率が向上する理由は明らかではないが、本発明のキシラナーゼまたは酵素製剤を用いることにより、バイオマス中のヘミセルロースが効率的に分解されて、酵素がセルロースに接触しやすい状態となり、全体として糖化効率が向上するためであると推測される。
本発明の糖の製造方法におけるバイオマスについては、前述したとおりである。入手容易性および原料コストの観点、糖化効率向上の観点から、バイオマスは、木材、木材の加工物または粉砕物、植物の茎、葉、果房などが好ましく、バガス、EFB、アブラヤシ(幹部)がより好ましく、バガスがさらに好ましい。上記のバイオマスは、単独でまたは2種以上を混合して使用してもよい。また上記バイオマスは乾燥されていてもよい。
本発明の糖の製造方法は、粉砕効率向上、糖化効率向上、および生産効率向上(生産時間の短縮)の観点から、バイオマスを本発明のキシラナーゼまたは酵素製剤で糖化する工程の前に、当該バイオマスを前処理する工程をさらに含むことが好ましい。
前処理としては、例えば、アルカリ処理、粉砕処理および水熱処理からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。本発明のキシラナーゼはアルカリ領域においても高い酵素活性を有するため、当該前処理としては、糖化効率向上の観点から、アルカリ処理が好ましく、糖化効率をさらに向上させる観点から、アルカリ処理と粉砕処理を行うことが好ましく、アルカリ処理と粉砕処理を同時に行うことがより好ましい。
本発明の糖の製造方法において、アルカリ処理とは、バイオマスを、後述する塩基性化合物と反応させることをいう。アルカリ処理の方法としては、バイオマスを、後述する塩基性化合物を含むアルカリ溶液に浸漬する方法(以下、「浸漬処理」ということがある)や、バイオマスと塩基性化合物とを混合して、後述する粉砕処理にかける方法(以下、「アルカリ混合粉砕処理」ということがある)などが挙げられる。
アルカリ処理に用いられる塩基性化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどのアルカリ金属水酸化物、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムなどのアルカリ土類金属水酸化物、酸化ナトリウム、酸化カリウムなどのアルカリ金属酸化物、酸化マグネシウム、酸化カルシウムなどのアルカリ土類金属酸化物、硫化ナトリウム、硫化カリウムなどのアルカリ金属硫化物、硫化マグネシウム、硫化カルシウムなどのアルカリ土類金属硫化物などが挙げられる。これらのうち、製造コストの低減、糖化効率向上の観点から、アルカリ金属水酸化物またはアルカリ土類金属水酸化物を用いることが好ましく、アルカリ金属水酸化物を用いることがより好ましく、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムを用いることがさらに好ましい。これらの塩基性化合物は、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
浸漬処理におけるアルカリ溶液中の塩基性化合物の濃度は、糖化効率を高める観点、およびグルコースの生成量を高める観点から、好ましくは0.1〜60質量%、より好ましくは0.1〜50質量%、さらに好ましくは0.1〜40質量%である。浸漬処理におけるアルカリ溶液の使用量は、バイオマスの乾燥重量に対して、好ましくは50〜99質量%、より好ましくは60〜99質量%、さらに好ましくは80〜99質量%である。浸漬処理の処理時間としては、好ましくは0.5〜50時間、より好ましくは1〜24時間、さらに好ましくは1.5〜10時間である。
本発明の糖の製造方法において、粉砕処理とは、バイオマスを機械的に粉砕して小粒子化することをいう。バイオマスを小粒子化することにより、糖化効率がより向上する。また、粉砕処理により、バイオマスに含まれるセルロースの結晶構造が破壊されると、糖化効率がなお向上する。粉砕処理は公知の粉砕機を用いて行うことができる。用いられる粉砕機に特に制限はなく、バイオマスを小粒子化することができる装置であればよい。
粉砕機の具体例としては、高圧圧縮ロールミルや、ロール回転ミルなどのロールミル;リングローラーミル、ローラーレースミルまたはボールレースミルなどの竪型ローラーミル;転動ボールミル、振動ボールミル、振動ロッドミル、振動チューブミル、遊星ボールミルまたは遠心流動化ミルなどの容器駆動式媒体ミル;塔式粉砕機、攪拌槽式ミル、流通槽式ミルまたはアニュラー式ミルなどの媒体攪拌式ミル;高速遠心ローラーミルやオングミルなどの圧密せん断ミル;乳鉢;石臼;マスコロイダー;フレットミル;エッジランナーミル;ナイフミル;ピンミル;カッターミル、などが挙げられる。これらの中では、バイオマスの粉砕効率向上、セルロースの結晶化度低減および生産性の観点から、容器駆動式媒体ミルまたは媒体攪拌式ミルが好ましく、容器駆動式媒体ミルがより好ましく、振動ボールミル、振動ロッドミルまたは振動チューブミルなどの振動ミルがさらに好ましく、振動ロッドミルがさらにより好ましい。粉砕方法としては、バッチ式および連続式のどちらでもよい。
粉砕時間は、粉砕後のバイオマスが所望のサイズにサイズ低減されるよう適宜調整すればよい。粉砕時間は、用いる粉砕機や使用するエネルギー量などによって変わり得るが、通常1分〜12時間であり、バイオマスの粒子径の低下の観点、セルロースの結晶化度低減の観点、およびエネルギーコストの観点から、2分間〜6時間が好ましく、5分間〜3時間がより好ましく、5分間〜2時間がさらに好ましい。
粉砕処理は、上述した塩基性化合物によるアルカリ処理と組み合わせてもよい。粉砕処理は、アルカリ処理の前または後に行ってもよく、あるいは、粉砕処理と並行してアルカリ処理を行ってもよい。例えば、上述したアルカリ溶液に浸漬したバイオマスを粉砕処理にかけてもよく(湿式粉砕)、または固体のアルカリとバイオマスとを一緒に粉砕処理にかけてもよいが(乾式粉砕)、このうち、乾式粉砕が好ましい。粉砕処理において塩基性化合物を用いる場合、その量は、糖化効率を向上する観点、セルロースの結晶化度を低減する観点、およびバイオマス中のリグニンを除去する観点から、バイオマス中のホロセルロースをすべてセルロースとして仮定した場合に、該セルロースを構成するアンヒドログルコース単位(以下「AGU」と称する場合がある)1モルあたり0.01〜10倍モルであることが好ましく、0.05〜8倍モルであることがより好ましく、0.1〜5倍モルであることがさらに好ましく、0.1〜1.5倍モルであることがなお好ましい。
粉砕処理後に得られるバイオマスの平均粒子径は、糖化効率向上、およびセルロースの結晶化度低減の観点から、好ましくは1〜150μm、より好ましくは5〜100μmである。ここで、バイオマスの平均粒子径は、実施例に記載の方法により測定することができる。
本発明の糖の製造方法において、水熱処理とは、バイオマスを、水分の存在下で加熱処理することをいう。水熱処理は、公知の反応装置を用いて行うことができ、用いられる反応装置に特に制限はない。好ましくは、水熱処理では、バイオマスの粗粉砕物を、水に分散した水スラリーの状態とし、これを加熱処理する。水スラリー中のバイオマスの含有量は、スラリーの流動性向上の観点から、好ましくは1〜500g/L、より好ましくは5〜400g/L、さらに好ましくは8〜300g/Lである。
水熱処理は、生産効率の向上および糖化効率の向上の観点から、酸性条件下で行うことが好ましい。pH条件は、生産効率の向上、糖化効率の向上およびリグニンの変性抑制の観点から、pH3〜7が好ましく、pH4〜6がより好ましい。pH条件は、塩酸、硫酸、リン酸などの無機酸、酢酸、クエン酸などの有機酸を用いることにより適宜調整することができる。水熱処理の条件としては、温度100〜400℃および圧力0.1〜4MPaが好ましく、温度140〜200℃および圧力0.5〜1MPaがより好ましい。処理時間は、0.1〜3時間が好ましい。水熱処理方法としては、バッチ式および連続式のどちらでもよい。なお、水熱処理で得られたバイオマスは、湿潤状態のものでもよく、またはさらに乾燥処理にかけられてもよいが、糖化効率向上の観点から、湿潤状態のものが好ましい。
本発明の糖の製造方法は、バイオマス、好ましくは上記前処理されたバイオマスを、本発明のキシラナーゼまたは酵素製剤で糖化する工程(以下、「糖化処理」ということがある)を含む。糖化処理に用いるキシラナーゼまたは酵素製剤については、前述したとおりである。
糖化処理の条件は、本発明のキシラナーゼおよび同時に添加するその他酵素が失活しない条件であれば特に限定されない。適切な条件は、バイオマスの種類や前処理工程の手順、使用する酵素の種類により当業者が決定できる。
糖化処理においては、上記バイオマスを含む懸濁液に上記キシラナーゼまたは酵素製剤を添加することが好ましい。懸濁液中のバイオマスの含有量は、糖化効率向上および生産性(生産時間の短縮)の観点から、好ましくは0.5〜20質量%、より好ましくは3〜15質量%、さらに好ましくは5〜10質量%である。
上記懸濁液に対するキシラナーゼまたは酵素製剤の使用量は、前処理条件、配合される酵素の種類および性質により適宜決定されるが、バイオマス質量に対して、好ましくは0.04〜600質量%、より好ましくは、より好ましくは0.1〜100質量%、さらに好ましくは0.1〜50質量%である。
糖化処理時の反応pHとしては、糖化効率の向上、生産性(生産時間の短縮)向上、および生産コスト低減の観点から、好ましくはpH4〜9、より好ましくはpH5〜8、さらに好ましくはpH5〜7である。
糖化処理時の反応温度は、糖化効率の向上、生産性(生産時間の短縮)向上、および生産コスト低減の観点から、20〜90℃が好ましく、より好ましくは25〜85℃、さらに好ましくは30〜80℃、さらにより好ましくは40〜75℃、なお好ましくは45〜65℃、さらになお好ましくは50〜65℃、よりさらになお好ましくは50〜60℃である。糖化処理の反応時間は、バイオマスの種類若しくは量、酵素量などに合わせて適宜設定することができるが、糖化効率の向上、生産性(生産時間の短縮)向上、および生産コスト低減の観点から、好ましくは1〜5日間、より好ましくは1〜4日間、さらに好ましくは1〜3日間である。
本発明の例示的実施形態として、以下の組成物、製造方法、用途、あるいは方法をさらに本明細書に開示する。但し、本発明はこれらの実施形態に限定されない。
<1>下記(a)〜(c)から選ばれるアミノ酸配列からなり、且つキシラナーゼ活性を有する、単離または精製されたタンパク質:
(a)配列番号2で示されるアミノ酸配列;
(b)配列番号2で示されるアミノ酸配列と90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列;および、
(c)配列番号2で示されるアミノ酸配列において、1〜複数個、好ましくは1〜30個、より好ましくは1〜20個、さらに好ましくは1〜10個、さらにより好ましくは1〜5個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列。
<2>pH6.0〜9.0の範囲における上記キシラナーゼ活性が、最大活性の70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上である、上記<1>記載のタンパク質。
<3>最適反応pHが、pH5.5〜9.5の範囲、より好ましくはpH6.0〜9.0の範囲、さらに好ましくはpH6.5〜8.5の範囲、なお好ましくはpH6.6〜8.0の範囲である、上記<1>または<2>記載のタンパク質。
<4>下記(d)〜(f)から選ばれる遺伝子にコードされる、上記<1>〜<3>のいずれか1項記載のタンパク質:
(d)配列番号1で示される塩基配列からなる遺伝子;
(e)配列番号1で示される塩基配列と90%以上、好ましくは95%以上、さらに好ましくは98%以上の配列同一性を有する塩基配列からなる遺伝子;および、
(f)配列番号1で示される塩基配列において1〜複数個、好ましくは1〜90個、より好ましくは1〜60個、さらに好ましくは1〜30個、さらにより好ましくは1〜15個、なお好ましくは1〜10個の塩基が欠失、置換若しくは付加された塩基配列からなる遺伝子。
<5>上記遺伝子がCellulomonas属由来の遺伝子である、上記<4>記載のタンパク質。
<6>上記遺伝子を含むベクターを微生物に導入して得られた形質転換体により生産される、上記<4>または<5>記載のタンパク質。
<7>上記<1>〜<6>のいずれか1に記載のタンパク質を含む、バイオマス糖化用酵素製剤。
<8>上記酵素製剤の総タンパク質量中における、上記<1>〜<6>のいずれか1に記載のタンパク質の含有量は、好ましくは0.5〜70質量%、より好ましくは1〜50質量%さらに好ましくは2〜40質量%、さらにより好ましくは2〜30質量%である、上記<7>記載のバイオマス糖化用酵素製剤。
<9>セルラーゼをさらに含む、上記<7>または<8>記載のバイオマス糖化用酵素製剤。
<10>上記セルラーゼがエンドグルカナーゼを含む、上記<9>記載のバイオマス糖化用酵素製剤。
<11>上記酵素製剤の総タンパク質量中における、上記エンドグルカナーゼの含有量が、1〜70質量%、好ましくは5〜50質量%、より好ましくは10〜40質量%である、上記<10>記載のバイオマス糖化用酵素製剤。
<12>上記<1>〜<6>のいずれか1に記載のタンパク質と上記セルラーゼのタンパク質量比(該タンパク質/該セルラーゼ)が、0.01〜100、好ましくは0.05〜5、より好ましくは0.05〜1、さらに好ましくは0.05〜0.5である、上記<9>〜<11>のいずれか1に記載のバイオマス糖化用酵素製剤。
<13>上記<1>〜<6>のいずれか1に記載のタンパク質と上記エンドグルカナーゼのタンパク質量比(該タンパク質/該エンドグルカナーゼ)が、0.05〜10、好ましくは0.1〜5、より好ましくは0.1〜2、さらに好ましくは0.2〜1である、上記<10>〜<12>のいずれか1に記載のバイオマス糖化用酵素製剤。
<14>上記バイオマスが、木材の加工物または粉砕物、パルプ類、紙類、バガス、稲わら、とうもろこし茎若しくは葉、パーム空果房(EFB)、植物殻類、および藻類からなる群より選ばれる1種以上、好ましくは木材、木材の加工物または粉砕物、植物の茎、葉、および果房からなる群より選ばれる1種以上、より好ましくは、バガス、EFB、アブラヤシ(幹部)からなる群より選ばれる1種以上、さらに好ましくはバガスである、上記<7>〜<13>のいずれか1に記載のバイオマス糖化用酵素製剤。
<15>バイオマスを、上記<7>〜<14>のいずれか1に記載の酵素製剤で糖化処理する工程を含む、糖の製造方法。
<16>上記バイオマスを前処理する工程をさらに含み、該前処理がアルカリ処理、粉砕処理および水熱処理からなる群より選ばれる1種以上、好ましくは、アルカリ処理、および粉砕処理からなる群より選ばれる1種以上、より好ましくは、アルカリ処理および粉砕処理、さらに好ましくは、アルカリ処理と粉砕処理を同時に行う処理である、上記<15>記載の方法。
<17>上記アルカリ処理に用いられる塩基性化合物が、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ金属硫化物、およびアルカリ土類金属硫化物からなる群より選ばれる1種以上、好ましくはアルカリ金属水酸化物またはアルカリ土類金属水酸化物、さらに好ましくはアルカリ金属水酸化物、さらに好ましくは水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムである、上記<16>記載の方法。
<18>上記粉砕処理における粉砕時間が、1分〜12時間、好ましくは2分間〜6時間、より好ましくは5分間〜3時間、さらに好ましくは5分間〜2時間である、上記<16>または<17>記載の方法。
<19>上記粉砕処理後に得られるバイオマスの平均粒子径が、1〜150μm、好ましくは5〜100μmである、上記<16>〜<18>のいずれか1に記載の方法。
<20>上記糖化処理において、上記バイオマスを含む懸濁液に上記<1>〜<6>のいずれか1に記載のタンパク質または上記<7>〜<14>のいずれか1に記載の酵素製剤を添加する、上記<15>〜<19>のいずれか1に記載の方法。
<21>上記懸濁液中の上記バイオマスの含有量が、0.5〜20質量%、好ましくは3〜15質量%、好ましくは5〜10質量%である、上記<20>記載の方法。
<22>上記懸濁液に対する上記<1>〜<6>のいずれか1に記載のタンパク質または上記<7>〜<14>のいずれか1に記載の酵素製剤の使用量が、上記バイオマスの質量に対して、好ましくは0.04〜600質量%、より好ましくは0.1〜100質量%、さらに好ましくは0.1〜50質量%である、上記<20>または<21>に記載の方法。
<23>上記糖化処理時の反応pHが、pH4〜9、好ましくはpH5〜8、より好ましくはpH5〜7である、上記<15>〜<22のいずれか1に記載の方法。
<24>上記糖化処理時の反応温度が、20〜90℃、好ましくは25〜85℃、より好ましくは30〜80℃、さらに好ましくは40〜75℃、さらにより好ましくは45〜65℃、なお好ましくは50〜65℃、さらになお好ましくは50〜60℃である、上記<15>〜<23>のいずれか1に記載の方法。
<25>上記バイオマスが、木材の加工物または粉砕物、パルプ類、紙類、バガス、稲わら、とうもろこし茎若しくは葉、パーム空果房(EFB)、植物殻類、および藻類からなる群より選ばれる1種以上、好ましくは木材、木材の加工物または粉砕物、植物の茎、葉、および果房からなる群より選ばれる1種以上、より好ましくは、バガス、EFB、アブラヤシ(幹部)からなる群より選ばれる1種以上、さらに好ましくはバガスである、上記<15>〜<24>のいずれか1に記載の方法。
<26>バイオマス糖化剤の製造のための上記<1>〜<6>のいずれか1に記載のタンパク質の使用。
<27>バイオマス糖化用酵素製剤の製造のための上記<1>〜<6>のいずれか1に記載のタンパク質の使用。
<28>バイオマス糖化のための上記<1>〜<6>のいずれか1に記載のタンパク質の使用。
<29>上記バイオマスが、木材の加工物または粉砕物、パルプ類、紙類、バガス、稲わら、とうもろこし茎若しくは葉、パーム空果房(EFB)、植物殻類、および藻類からなる群より選ばれる1種以上、好ましくは木材、木材の加工物または粉砕物、植物の茎、葉、および果房からなる群より選ばれる1種以上、より好ましくは、バガス、EFB、アブラヤシ(幹部)からなる群より選ばれる1種以上、さらに好ましくはバガスである、上記<26>〜<28>のいずれか1に記載の使用。
以下の実施例において、「%」は特に断りのない場合、「質量%」を意味する。
<参考例1> PCR反応
以下の実施例におけるDNA断片増幅のためのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)においては、Applied Biosystems 2720サーマルサイクラー(アプライドバイオシステムズ)を使用し、PrimeSTAR Max Premix(タカラバイオ)と付属の試薬類を用いてDNA増幅を行った。PCRの反応液組成は、適宜希釈した鋳型DNAを1μL、センスプライマーおよびアンチセンスプライマーを各々20pmol、およびPrimeSTAR Max Premixを25μL添加して、反応液総量を50μLとした。PCRの反応条件は、98℃で10秒間、57℃で30秒間および72℃で10〜50秒間(目的増幅産物に応じて調整。目安は1kbあたり10秒)の3段階の温度変化を30回繰り返すことにより行った。
<参考例2> タンパク質の定量
タンパク質の定量には、特に断りのない場合、プロテインアッセイキット(BioRad社製)を使用し、ウシ血清アルブミンを標準タンパク質とした検量線をもとに計算した。
<参考例3> キシラナーゼ活性の測定
(1)最適反応pH
2.0%(w/v)キシラン(キシラン from beechwood、Sigma−Aldrich社製)50μLと、250mM酢酸バッファー(pH4.4、5.0、もしくは5.6)、250mMリン酸バッファー(pH6.2、6.6、7.0、もしくは7.4)、250mMトリス塩酸バッファー(pH7.8、8.2、8.6、もしくは9.0)、または250mMグリシンバッファー(pH9.4、9.8、もしくは10.0)40μLとを混合して、pHの異なる基質溶液90μLを調整した。適当な濃度に希釈したキシラナーゼ溶液を基質溶液に添加し、50℃で10分間反応させた。
反応後、反応液にDNS溶液(水酸化ナトリウム(和光純薬工業)1.6%(w/v)、ジニトロサリチル酸(和光純薬工業)0.5%(w/v)、酒石酸ナトリウムカリウム(和光純薬工業)30.0%(w/v))を100μL添加して、100℃にて5分間反応させ酵素反応を停止させた。基質溶液90μLにDNS溶液を100μL添加後、上述のキシラナーゼ溶液10μLを加えて同様の操作を行ったものをブランクとした。反応液を冷却後、540nmの吸光度を吸光マイクロプレートリーダーVersaMax(モレキュラーデバイスジャパン)で測定した。
(2)最適反応温度
2.0%(w/v)キシラン(キシラン from beechwood、Sigma−Aldrich社製)50μLと、pH6.0の250mMリン酸−クエン酸バッファー40μLとを混合して基質溶液90μLを調整した。基質溶液に適当な濃度に希釈したキシラナーゼ溶液(10μL)を添加し、Veritiサーマルサイクラー(アプライドバイオシステムズ社製)を用いて45〜70℃(5℃刻み)で10分間反応させた。その後、DNS溶液を100μL添加し、100℃にて5分間反応させて酵素反応を停止させた。反応液を冷却後、540nmの吸光度を吸光マイクロプレートリーダーにて測定した。なお、既知濃度のキシロース溶液で作成した検量線をもとに反応液中のキシロオリゴ糖量を算出した。
<参考例4> セルロース含有原料の調製
(1)セルロース含有原料中のホロセルロース含有量の算出
粉砕したセルロース含有原料を、エタノール−ジクロロエタン混合溶剤(1:1)で6時間ソックスレー抽出を行い、抽出後のサンプルを60℃で真空乾燥した。得られた試料2.5gに水150mL、亜塩素酸ナトリウム1.0gおよび酢酸0.2mLを添加し、70〜80℃で1時間加温した。引き続き亜塩素酸ナトリウムおよび酢酸を添加して加温する操作を、試料が白く脱色するまで3〜4回繰り返し行った。白色の残渣をグラスフィルター(1G−3)でろ過し、冷水およびアセトンで洗浄した後、105℃で恒量になるまで乾燥し、残渣質量を求めた。下記式によりホロセルロース含有量を算出し、これをセルロース含有量とした。
セルロース含有量(質量%)=[残渣質量(g)/セルロース含有原料の採取量(g:塩基性化合物を除いた乾燥原料換算)]×100
(2)アンヒドログルコース単位(AGU)モル数の算出
AGUモル数は、セルロース含有原料中のホロセルロースをすべてセルロースと仮定して、以下の式に基づき算出した。
AGUモル数=ホロセルロース質量(g)/162
(3)セルロース含有原料の水分量の測定
セルロース含有原料の水分量の測定には、赤外線水分計(株式会社ケット科学研究所製、製品名「FD−610」)を使用した。150℃にて測定を行い、30秒間の質量変化率が0.1%以下となる点を測定の終点とした。測定された水分量の値を、セルロース含有原料の乾燥質量に対する質量%に換算した。
(4)粉砕処理物の平均粒子径の測定
粉砕処理物の平均粒子径は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置「LA−950」(株式会社堀場製作所製)を用いて測定した。測定試料として粉砕処理物0.1gを5mLの水に加え、超音波で1分間処理した試料分散液を用いた。体積基準のメジアン径を、温度25℃にて測定し、これを平均粒子径とした。
<実施例1> キシラナーゼの調製
(ゲノムDNAの抽出)
Cellulomonas fimi ATCC484株をGrowth medium(1.0% Polypeptone、0.2% Yeast extract、0.1% MgSO4・7H2O、pH7.0)に植菌し、30℃にて1日間培養した。培養して得られた菌体から、UltraCleanTM Microbial DNA Isolation Kit(Mo Bio Laboratories, Inc.製)を用いてゲノムDNAを取得した。
(ベクターの作製)
得られたゲノムDNAを鋳型として、表2に示したフォワードプライマー1(配列番号5)とリバースプライマー1(配列番号6)を用いて、ゲノム上のキシラナーゼ遺伝子領域(配列番号1)約1.4kbp断片(A)を増幅した。
シャトルベクターpHY300PLK(タカラバイオ)のBamHI制限酵素切断点に、バチルス属細菌KSM−S237株(FERM BP−7875)由来のS237アルカリセルラーゼ遺伝子(特開2000−210081号公報参照)(配列番号3)をコードするDNA断片が挿入された組換えプラスミドpHY−S237を鋳型とし、表1に示したフォワードプライマー2(配列番号7)とリバースプライマー2(配列番号8)を用いてS237アルカリセルラーゼ構造遺伝子を除く約5.6kbp断片(B)を増幅した。増幅した遺伝子断片をHigh Pure PCR Product Purification kit(Roche製)にて精製した。
精製されたDNA断片(A)1μLとDNA断片(B)1μL、In−Fusion HD Cloning Kit(タカラバイオ)に含まれる5×In−Fusion HD Enzyme Premi×2μL、DNaseフリーの水6μLを混合し、50℃で15分反応させ、キシラナーゼ遺伝子の断片をベクターにクローニングした。その後、反応液2μLを用いて、コンピテントセルE.coli HB101(タカラバイオ)20μLを形質転換した。形質転換体の再生培地には、50ppmアンピシリンナトリウム(和光純薬工業)、2.0%アガー(和光純薬工業)を含むLB寒天培地を用いた。アンピシリン耐性株として得られた形質転換体の中から、コロニーPCRにより目的の遺伝子が挿入されたプラスミドを保持する菌株を選別した。選別した形質転換体は同様のLB寒天培地を用いて培養後(37℃、1日間)、得られた菌体からプラスミドをHigh Pure Plasmid Isolation kit(Roche)を用いて回収、精製した。
(形質転換体の作製)
プラスミドの宿主菌への導入はプロトプラスト形質転換法(Mol. Gen. Genet., 1979, 168:111-115)に従って行った。この際、宿主菌にはBacillus subtilis 168株プロテアーゼ9重欠損株(KA8AX)(特開2006−174707号公報)を用いた。形質転換体の再生培地には、テトラサイクリン含有DM3再生寒天培地(キシラン from beechwood(Sigma−Aldrich)1.0%(w/v)、バクトカザミノ酸(Difco)0.5%(w/v)、酵母エキス(Difco)0.5%(w/v)、L−トリプトファン(和光純薬工業)0.01%(w/v)、コハク酸二ナトリウム六水和物(和光純薬工業)8.1%(w/v)、リン酸一水素二カリウム(和光純薬工業)0.35%(w/v)、リン酸二水素一カリウム(和光純薬工業)0.15%(w/v)、グルコース(和光純薬工業)0.5%(w/v)、塩化マグネシウム(和光純薬工業)20mM、牛血清アルブミン(和光純薬工業)0.01%(w/v)、トリパンブルー0.01%(w/v)(ACROS ORGANICS)、テトラサイクリン塩酸塩(和光純薬工業)0.005%(w/v)、寒天1.0%(w/v))を用いた。
(キシラナーゼ生産)
DM3再生寒天培地上に生育した形質転換体15ppmテトラサイクリン含有LB培地5mLを用いてシード培養後(30℃、250rpm、16時間)、シード培養液0.6mLを2×L Mal培地20mL(バクトトリプトン2%(w/v)、酵母エキス1.0%(w/v)、塩化ナトリウム1.0%(w/v)、硫酸マンガン五水和物(和光純薬工業)75ppm、マルトース一水和物(和光純薬工業)7.5%(w/v)、テトラサイクリン塩酸塩15ppm)に添加し、メイン培養を行った(30℃、230rpm、3日間)。培養後、遠心分離(11,000rpm、15分間、4℃)により培養上清を得た。培養上清3mLを脱塩カラムEcono−Pac 10DG(BioRad)を用いて20mM Tris−HCl pH7.5へとバッファー交換を行うことで、組換えキシラナーゼ粗酵素液を調製した。
<試験例1>
(キシラン分解活性および至適pH)
適当な濃度に希釈した実施例1で調製したキシラナーゼ溶液(10μL)または対照キシラナーゼCellic(登録商標)HTec(Novozymes A/S)を基質溶液に添加し、前述の参考例3(1)の測定条件でキシラナーゼ活性を測定した。
既知濃度のキシロース溶液で作成した検量線をもとに、反応液中のキシロオリゴ糖量を算出し、その値から、基質液由来のバックグラウンドの値(ブランク)を差し引いた値を、酵素反応での生成糖量とした。その後、生成糖量から各希釈酵素溶液のキシラナーゼ活性(unit)を計算した。1unit(U)は、1分間に1μmolのD−キシロース相当の還元糖を遊離する酵素の活性とした。結果を表2に示す。表中、最大活性に対する相対活性(%)とは、最大活性を得たpH(pH7.0)での活性を100%としたときの相対活性を示し、Cellic(登録商標)HTecに対する相対活性(%)とは、各pHにおけるCellic(登録商標)HTecの比活性を100%としたときの相対活性を示す。
実施例1で調製した本発明のキシラナーゼは、pH7.0で最大活性を示し、その際の比活性は約485U/mgであった。当該キシラナーゼはまた、pH5.6〜9.0の間で350U/mg以上の比活性を有し、最大活性の70%以上の活性を維持していた。これらの結果より、当該キシラナーゼが広い範囲のpHで高いキシラナーゼ活性を有し、特にアルカリ領域においても高い活性を有することが示された。
<試験例2>
(最適反応温度)
基質溶液に適当な濃度に希釈した実施例1で調製したキシラナーゼ溶液(10μL)を添加し、前述の参考例3(2)の測定条件でキシラナーゼ活性を測定した。既知濃度のキシロース溶液で作成した検量線をもとに反応液中のキシロオリゴ糖量を算出した。算出した値からブランクの値を差し引いて、酵素反応で生成されたキシロオリゴ糖量を算出した。最大の生成糖量を示したサンプルを100%とした際の各温度での生成糖量を相対活性として求めた。結果を表3に示す。本発明のキシラナーゼは、60℃付近で最もキシラン分解活性が高く、45〜65℃の範囲で60℃での活性の60%以上の活性を示した。
<実施例2> キシラナーゼによるバイオマスの糖化
(バイオマスの調製)
基質として使用するバガス粉砕物は以下のように調製した。
バガス(サトウキビの搾りかす、ホロセルロース含有量71.3質量%、結晶化度29%、水分量7.0質量%)を減圧乾燥機VO−320(アドバンテック東洋)中に入れ、窒素流通下の条件で2時間減圧乾燥し、ホロセルロース含有量71.3wt%、結晶化度29%、水分量2.0wt%の乾燥バガスを得た。
(混合粉砕処理)
得られた乾燥バガス100gと粒径0.7mmの粒状の水酸化ナトリウム「トーソーパール」(東ソー社製)8.8g(ホロセルロースを構成するAGU1モルに対し0.5モル相当量)を、バッチ式振動ミルMB−1(中央化工機:容器全容積3.5L、媒体としてφ30mm、長さ218mm、断面形状が円形のSUS304製ロッドを13本使用、ロッド充填率57%)に投入し、2時間粉砕処理することでバガス粉砕物(平均粒子径約16.6μm)を得た。
(糖化処理)
2mL容マイクロチューブに、調製したバガス粉砕物50mgと0.4mLの水を添加し、1N−HClにて粉砕に使用した水酸化ナトリウムを中和した。中和された溶液に0.4mLの250mM酢酸ナトリウムバッファー(pH4.0もしくは5.0)、250mMリン酸バッファー(pH6.0もしくは7.0)、または250mMトリス塩酸バッファー(pH8.0もしくは9.0)を添加して基質溶液を調製した。基質溶液は、実施例1で調製したキシラナーゼ溶液または対照のキシラナーゼ溶液を1サンプルあたり50μg−タンパク質となるように添加後、水を加えて全量を1mLとした。その後、50℃、150rpmで往復振とうしながら1日間糖化反応を行った。対照のキシラナーゼとしては、Cellic(登録商標)HTec(Novozymes A/S)またはThermomyces lanuginosus由来キシラナーゼ(Sigma−Aldorich)を用いた。Thermomyces lanuginosus由来キシラナーゼは、pH5.0の基質溶液のみに添加した。
反応終了後、遠心分離(15000rpm、5min、4℃)にて上清を回収し、DX500クロマトグラフィーシステム(日本ダイオネクス社製)にて上清中のキシロース、キシロビオースおよびキシロトリオースの濃度を測定した。これら3つの遊離糖量の和をバガス由来の生成糖量とした。結果を表4に示す。表中の相対生成糖量は、各pHにおけるCellic(登録商標)HTecの生成糖量を100%とした場合の相対値である。
表4に示したように、本発明のキシラナーゼは、pH5〜9の範囲においてCellic(登録商標)HTecの至適pHであるpH5での糖化活性よりも高い活性を示し、特に中性付近からアルカリ性領域(pH6〜9)でも安定して高い糖化活性を維持していた。なお、市販のThermomyces lanuginosus由来キシラナーゼは、pH5においてCellic(登録商標)HTecと同程度の糖化活性(相対生成糖量101%)であった。本発明のキシラナーゼは、酸性からアルカリ性までの広範なpHにて高活性を有する。
<実施例3> 酵素製剤によるバイオマス原料の糖化
(バイオマス原料の調製)
実施例2で調製したバガス粉砕物(平均粒子径約16.6μm)を用いた。
(セルラーゼの調製)
Trichoderma reesei QM6a株由来エンドグルカナーゼI(配列番号10、以下TrEGIと略す)の調製は以下のように行った。
TrEGIをコードするDNA配列(配列番号9)をPCRにより増幅して、Aspergillus oryzae用発現ベクターであるpPTR I DNA(タカラバイオ)へとプロモーターと連結後導入した。その後、A. oryzae RIB40株へと作製したベクターを導入し、形質転換体を取得した。得られた形質転換体を培養することで培養液中へとTrEGIを分泌生産させた。発現させたTrichoderma reesei QM6a株由来エンドグルカナーゼI(以下TrEGI)のタンパク質量は、精製TrEGIのCMC分解活性とDCプロテインアッセイキット(BioRad社製)によるタンパク質量から比活性(211.5U/mg-タンパク質)を計算し、培養上清中のCMC分解活性から上清中のタンパク質量を逆算して求めた。
(糖化処理)
2mL容マイクロチューブに、調製したバガス粉砕物50mgと0.4mLの水を添加し、1N−HClにて粉砕に使用した水酸化ナトリウムを中和した。中和された溶液に0.4mLの250mM酢酸ナトリウムバッファー(pH5.5)を添加して基質溶液を調製した。基質溶液には、本発明のキシラナーゼを含む酵素製剤(試験品)を1サンプルあたり100μg−タンパク質となるように添加後、水を加えて全量を1mLとした。対象としては、Cellic(登録商標)CTec2を1サンプルあたり50μg、100μgまたは150μg−タンパク質添加後、同様に水を加えて全量を1mLとした。その後、50℃、150rpmで往復振とうしながら3日間糖化反応を行った。本発明のキシラナーゼを含む酵素製剤には、本発明のキシラナーゼ:TrEGI:exo-1,4-β-D-Xylosidase(メガザイム社):Cellic(登録商標)CTec2=10:20:1:31(タンパク質量比)で混合したものを用いた(タンパク質100μg中、Cellic(登録商標)CTec2を50μg含有)。なお、上記酵素製剤中の各タンパク質量及び比率計算には、DCプロテインアッセイキットにて測定したタンパク質量を使用した。
反応終了後、遠心分離(15000rpm、5min、4℃)にて上清を回収し、DX500クロマトグラフィーシステム(日本ダイオネクス社製)にて上清中のグルコース、セロビオース、キシロース、キシロビオースおよびキシロトリオースの濃度を測定した。これら5つの遊離糖量の和をバガス由来の生成糖量とした。結果を図1に示す。図中の相対糖化率は、Cellic(登録商標)CTec2を1サンプルあたり50μg−タンパク質添加した際の生成糖量を100%とした場合の相対値である。
図1に示したように、本発明のキシラナーゼを含む酵素製剤でバイオマスを糖化した場合、効率よく糖が生成する。

Claims (13)

  1. 下記(a)〜(c)から選ばれるアミノ酸配列からなり、且つキシラナーゼ活性を有する、単離または精製されたタンパク質:
    (a)配列番号2で示されるアミノ酸配列;
    (b)配列番号2で示されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列;および、
    (c)配列番号2で示されるアミノ酸配列において、1〜複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列。
  2. pH6.0〜9.0の範囲における前記キシラナーゼ活性が、最大活性の70%以上である、請求項1記載のタンパク質。
  3. 最適反応pHが6.6〜8.0である、請求項1または2記載のタンパク質。
  4. 下記(d)〜(f)から選ばれる遺伝子にコードされる、請求項1〜3のいずれか1項記載のタンパク質:
    (d)配列番号1で示される塩基配列からなる遺伝子;
    (e)配列番号1で示される塩基配列と90%以上の配列同一性を有する塩基配列からなる遺伝子;および、
    (f)配列番号1で示される塩基配列において1〜複数個の塩基が欠失、置換若しくは付加された塩基配列からなる遺伝子。
  5. 前記遺伝子がCellulomonas属由来の遺伝子である、請求項4記載のタンパク質。
  6. 前記遺伝子を含むベクターを微生物に導入して得られた形質転換体により生産される、請求項4または5記載のタンパク質。
  7. 請求項1〜6いずれか1項記載のタンパク質を含む、バイオマス糖化用酵素製剤。
  8. セルラーゼをさらに含む、請求項7記載のバイオマス糖化用酵素製剤。
  9. 前記セルラーゼがエンドグルカナーゼを含む、請求項8記載のバイオマス糖化用酵素製剤。
  10. 前記バイオマスが、木材の加工物または粉砕物、パルプ類、紙類、バガス、稲わら、とうもろこし茎若しくは葉、パーム空果房(EFB)、植物殻類、および藻類からなる群より選ばれる1種以上である、請求項7〜9のいずれか1項記載のバイオマス糖化用酵素製剤。
  11. バイオマスを、請求項7〜10いずれか1項記載の酵素製剤で糖化処理する工程を含む、糖の製造方法。
  12. 前記バイオマスを前処理する工程をさらに含み、該前処理がアルカリ処理、粉砕処理および水熱処理からなる群より選ばれる1種以上である、請求項11記載の方法。
  13. 前記バイオマスが、木材の加工物または粉砕物、パルプ類、紙類、バガス、稲わら、とうもろこし茎若しくは葉、パーム空果房(EFB)、植物殻類、および藻類からなる群より選ばれる1種以上である、請求項11または12記載の方法。
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