JP2020060375A - クリアランス金属の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
ただし、特に放射性金属廃棄物に関しては、通常、金属自体が放射化しているのではなく、放射性物質が付着して汚染されているため、ブラストや薬剤洗浄等の物理・化学的な除染技術を適用し、かつ、高度に制御した溶融技術を適用すれば、ほぼ完全に金属と放射性成分の分離(クリアランス)が可能で、分離された金属は市中のスクラップ業者を経て電気炉製鉄業者で型鋼や線材の原料として使用可能(フリーリリース)である。
ブラストによってクリアランス化する点については、例えば特許文献2に開示されている。
また、インゴット形成後に放射線測定した結果、クリアランスレベルを満足しない場合、インゴット形成されたものを再溶融するとすれば、溶融に大きなエネルギーを要すると言う問題もある。
さらに、インゴット形成のものでは放射線測定や保管等の取り扱いが難しいという問題もある。
溶融時にスラグやダストに移行しやすい放射性核種が主成分の放射性物質で汚染された放射性金属廃棄物を溶融炉に投入する放射性金属廃棄物投入工程と、
必要に応じて前記溶融炉にスラグの原料となるスラグ原料を投入するスラグ原料投入工程と、
投入物を溶融炉で溶融することにより、前記放射性物質を前記放射性金属廃棄物から分離してスラグ及びダストに移行させる放射性物質移行工程と、
前記ダストを回収して処理するダスト処理工程と、
前記溶融炉で溶融された溶融物から溶融金属を分離して、分離された溶融金属を粒状のクリアランス金属とする粒状金属生成工程を備えたことを特徴とするものである。
回収された溶融残渣の再利用の可否を溶融残渣の放射能濃度に基づいて判断する再溶融可否判断工程と、
該再溶融可否判断工程で再利用できると判断したときには、回収された溶融残渣を溶融炉に投入する溶融残渣投入工程と、
前記再溶融可否判断工程で再利用できないと判断したときには、前記溶融残渣を放射性廃棄物として処分する溶融残渣処分工程を備えたことを特徴とするものである。
また、粒状金属生成工程において、溶融金属を粒状にしたものの放射能レベルを測定する放射能レベル測定工程と、該放射能レベル測定工程でクリアランスレベルを満足しない粒状金属を前記溶融炉に投入する粒状金属投入工程を備えることにより、測定対象が粒状であることで放射能レベルの測定が容易であると共に、粒状であるため溶融炉に投入して再溶融する際の取り扱いや、再溶融のエネルギーが少なくてよいという効果も奏する。
さらに、クリアランス金属の製造に伴い発生する、放射性物質で汚染された溶融残渣の減容化も実現できる。
なお、図1に示した各工程は必ずしも図1に示した順番に進行するものではなく、例えば放射性物質移行工程とダスト処理工程については、各工程における処理が同時に進行する場合もある。
以下、各工程に使用している用語の意味について説明し、その後、各工程の詳細及び各工程に付随する処理について説明する。
[放射性金属廃棄物]
「放射性金属廃棄物」とは、主として金属からなる放射性廃棄物をいう。原子力発電所で発生する放射性金属廃棄物は、たとえば、施設内に設置等されていたものであって、その施設の廃止、修理、変更、事故等に伴って廃棄されたものである。使用形態としては、タンク、配管、歩廊、ダクト、支柱やポンプ、モーター等があり、これらには、放射性セシウムや放射性ストロンチウム等の放射性核種が付着している。
「クリアランス金属」とは、この放射能濃度がクリアランスレベル以下の金属をいう。ここで、クリアランスレベルとは、金属やコンクリート等がどのように再利用または廃棄物として埋め立てられたとしても人体への影響は無視できると国際原子力機関(IAEA)が認めているレベルで、たとえば放射性セシウムについては0.1Bq/g以下、放射性ストロンチウムについては1Bq/g以下である。
L1:余裕深度処分低レベル放射性廃棄物
L2:浅地中ピット処分対象物低レベル放射性廃棄物
L3:浅地中トレンチ処分対象物低レベル放射性廃棄物
CL:クリアランス対象物
NR:放射性廃棄物でない廃棄物
放射性金属廃棄物投入工程は、放射性セシウムや放射性ストロンチウムなど溶融時にダストやスラグに移行しやすい放射性核種が主成分の放射性物質で汚染された放射性金属廃棄物を溶融炉に投入する工程である。
放射性金属廃棄物投入工程の前に、放射性金属廃棄物の分別、前処理を行うのが好ましい。
廃炉処理する原子力発電施設等から発生する放射性金属廃棄物は、炭素鋼が9割以上を占めると想定されるが、炭素鋼の他にも銅やクロム等が混在している。鉄以外の成分の割合にもよるが、これらを混合した状態で溶融処理しても、クリアランス金属を製造することは可能である。また、その様なクリアランス金属でも、カウンターウエイト等として用いることができる。
分別方法としては、磁力選別及び手選別を組み合わせるのが好ましい。
ステンレス鋼は混合溶融しても溶融処理は可能であるが、溶融処理後の金属の再利用に際しては、クロム等の合金成分に組成制限があるため、分別によって溶融対象外とするのが好ましい。
さらに、作業の安全上及びクリアランス金属の製造効率上、線量率測定を行い高線量の金属廃棄物は除外するのが好ましい。
放射性金属廃棄物は、精密に制御された円滑な溶融を行うために、溶融炉に入れる前に細断し、細断したものを固縛したりバケットに入れて溶融炉に投入することが望ましい。
溶融炉処理規模及び投入方式並びに溶融方式(溶融炉構造)により炉投入の開口寸法は制約があり、これに基づき最大投入寸法が規定される。例えば、タンク類や金属くずの中の大型の物は、切断等の前処理により投入寸法までダウンサイジングする必要がある。
また、固縛物やバケットを投入する場合であっても、炉の入口やホッパー等に引っ掛かって、一部がこぼれ落ちて蓋や扉の開閉を阻害する場合があるのでこの点にも留意する必要がある。
放射性金属廃棄物の受入工程では、車両搬入口の線量検知装置(ゲートモニタ等)で、対象外の高線量物を検知した上で排除し、搬出するようにすることが望ましい。
選別工程では、放射線モニタ等を用いて、線量又は材質・形状による選別を行う。線量選別では、放射線モニタ等で高線量と評価したものを隔離して高線量物を仮置きした後で構内の保管施設へ移動する等の対策を取ることで、前処理作業員の被ばく低減及び処理物への汚染防止を実現できる。
切断工程は、処理対象物のダウンサイジングを行う工程であるが、原則として機械切断を行い、補助的に手切断を行うようにすればよい。
《溶融炉》
本発明における溶融炉で行う機能としては、(i)放射性元素と金属との分離、(ii)分離の促進(分離促進のためのスラグの添加)、(iii)用途に応じた成分調整、(iv)用途に応じた成型加工のための液状化などが挙げられる。
また、密閉性が高く、炉からのダストやガスの漏れ出しが少ない構造のものを適用するのが望ましい。また、溶融熱源は、容易に高温が得られ操作性が良く放射性金属廃棄物の溶融に適した電気式が望ましい。すなわち、低周波、中周波および高周波誘導炉、プラズマ炉、アーク炉である。
誘導炉は、炉側壁に配置した加熱コイルにより間接的に溶融処理物を加熱するため間口(炉径)が狭く、浴深が深い。また、間口(炉径)が狭いため投入物サイズは小さくなる。
溶融炉への投入方式としては、密閉投入及び開放投入があるが、それぞれの構造及び特徴を説明する。
図2は、密閉投入を説明する説明図であり、図2において、1は炉体、3は炉蓋、5は炉側壁に具備された投入供給装置を示している。炉体1と炉蓋3の間は密封されている。投入供給装置5は、放射性金属廃棄物を受け入れるホッパー7と、投入シュート8と、投入シュート8に設けられたダブルダンパ9と、プッシャー11を有している。
密閉投入が適用されるものとしては、プラズマ炉、アーク炉である。
開放投入の特徴として連続投入が不可であるためバッチ(間欠)投入となり、炉蓋開放時にガスが飛散しオフガス密閉が不可であるため二重筺体(炉体1を囲い、環境集塵)が必要となる。ただし、投入物サイズは炉径以外に制約を受けないため、投入物サイズを大きくすることが容易である。
開放投入が適用されるものとしては、プラズマ炉、アーク炉、誘導炉である。
図4は、プラズマ炉のプッシャー式の密閉投入方式の説明図である。図4において、図2と同一部分には同一の符号を付してある。図中、12はトーチであり、13は投入時以外において炉体1とプッシャー11の間を遮断する密閉式の投入ゲートである。
なお、供給口は、1炉当たり2基設置し放射性金属廃棄物を連続的に炉内へ供給することができる。図4においては、1基のみを図示している。
下段のダンパ9bを閉じ、投入ゲート13を開いてプッシャー11を作動させて投入物15を炉内に投入する(図4(d))。
吊下げ式の投入はバッチ投入となるが、最大投入サイズは、プッシャー式に比べて大きくできる。
スラグ原料投入工程は、溶融によってスラグとなるスラグ原料(石灰、ケイ砂等)を溶融炉に投入する工程である。
したがって、必要なスラグ量が少ない誘導炉の場合は、あえてスラグ原料を投入しなくても処理可能な場合もある。ただし、放射性金属廃棄物の放射能濃度が高い場合など、スラグとメタルの分離をより精密に行うことが必要なときは、スラグ原料を投入することが望ましい。
一方、プラズマ炉やアーク炉の場合は、炉体維持や溶融エネルギー効率維持のためにある程度の量のスラグが必要である。スラグ原料を多く投入すればメタルの放射能濃度の低下が促進されるが、生成スラグ量が多くなり、操業が大変になり、操業に必要なエネルギーも多くなるので、適切な量を投入することが好ましい。
放射性物質移行工程は、投入物15を溶融炉で溶融することにより、放射性物質を放射性金属廃棄物から分離してスラグ及びダストに移行させる工程である。
放射性金属廃棄物に付着した放射性物質(主としてストロンチウムとセシウム)は、放射性金属廃棄物を溶融することで、金属から分離してスラグ及びダストに移行させることができる。
また、カリウムに性質が似ているセシウムは、スラグの塩基度(CaO/SiO2)を小さくするとスラグに捕捉される割合が大きくなることが知られている。
さらに、セシウムについては、放射性物質移行工程で揮発してスラグと飛灰に分離されるが、他の揮発成分やダストとして随伴する成分が少ないと、集塵機での放射能濃度が高くなり、メンテナンス等で人力作業が制限されて不都合が生じる場合がある。
以上のように、放射性物質移行工程においては、スラグの量や塩基度などを適切に調整し、放射性物質の放射性金属廃棄物からスラグ及びダストへの移行を促進させることが望ましい。
製鉄工程では銑鉄と鋼鉄があるが、これらの違いは主に炭素濃度にあり、炭素濃度が3%の銑鉄の溶融温度は1300℃程度であるのに対し、炭素濃度が0.5%の鋼鉄は約1490℃とその差は非常に大きい。一方、粘性は溶融鉄温度の上昇と共に低下し、炭素濃度の増加と共に低下する傾向にある。
スラグ33の分離可能時間は、出湯から鋳込み終了までの時間から、出湯時間、移送時間及び鋳造時間を差し引いた値となる。いずれの場合も、スラグ分離時間を4分以上確保することが可能であり、スラグ33と溶融金属31を分離することが可能であることが分かる。
ダスト処理工程は、放射性物質移行工程における溶融炉から発生するダストを回収して処理する工程である。
放射性物質移行工程では、上述したように放射性物質のうち、特にセシウムはダストに移行する割合が多い。
溶融炉から発生するダストを集塵機で捕捉して、ダストを放射性廃棄物として処理する。
粒状金属生成工程は、溶融炉で溶融された溶融物から金属を分離して、分離された溶融金属を粒状のクリアランス金属とする工程である。
粒状金属生成工程は、大きく分けて溶融物から金属を分離する分離工程と、分離された溶融金属を粒状にする粒状化工程の2つの工程があるので、以下工程ごとに説明する。
分離工程の具体的な態様としては、レードルやタンディッシュ装置を用いる態様が挙げられる。
レードルを用いる態様の具体的な方法を図7に示す。図7においては、図6と同一部分には同一の符号を付してある。なお、レードルの代わりにタンディッシュ装置を用いても、同様の方法となる。
移し替え工程においては、図7に示すように、溶融炉26を傾動させて溶融金属31とスラグ33をレードル27に移し替える。
そこで、深いレードルに受け、再度、分離のために静置時間をとって、高い分離精度を確保することが望ましい。
両側傾動式溶融炉26を図中右側が低くなるように油圧シリンダ等を用いて傾動させて一方の排出口から溶融物の上層(主にスラグ33)を炉外に排出し、その後、図中左側が低くなるように油圧シリンダ等を用いて傾動させて他方の排出口から残ったスラグ33と溶融金属31をレードル27に移し替える。これによって、レードル27に流入するスラグ33が少なくなるので、後述する静置分離工程における分離時間を短くでき、分離精度が高くなるといった効果がある。
静置分離工程は、移し替え工程でレードル27に溶融物を移した後、レードル27を静置してレードル27内の溶融物を溶融金属層とスラグ層に静置分離する工程である。
前述したように、スラグ33と溶融金属31は、密度がそれぞれ、2.7t/m3、7t/m3と大きく異なるため、レードル27内で密度差により上側にはスラグ層、下側には溶融金属層の二層に分離できる。
前述したように、レードル27内で静置分離する時間は4分程度必要である。なお、レードルは、静置分離に用いられる以外に、溶融金属を成型加工する際にも利用することができる。
溶融金属抜出し工程は、図7に示すように、レードル27から溶融金属層31をスラグ層33が混ざらない様に抜き出してクリアランス金属とする工程である。
静置分離後に、レードル27の底部の開口部を開けると、溶融金属31が重力で落下する。一般的に、開口当初は、溶融金属31のみが落下するが、時間が経過して、溶融金属31の深さが浅くなるとあるタイミングで表面のスラグ33が直接開口部に引き込まれる渦流が生成する。
スラグ層に放射性物質が移行しているので、抜き出す溶融金属31にスラグ33を巻きこまないようにする必要がある。
逆に、レードル27の底部に設ける開口が小さくなると、溶融金属31の抜出しの速度は遅くなり効率は悪くなるが、その一方で界面が低い位置まで渦流が生成されないので、1回での抜出し量が多くなり、溶融残渣として再溶融する量は少なくなる。このように、レードル27の底部に設ける開口は粒状金属生成工程の効率に影響するので、実際に操業する各種の条件に基づいて最適値に設定するのが好ましい。
粒状化工程の具体的な態様としては、分離された溶融金属に多量の圧力水を噴射することで溶融金属を粒状にする水砕や、溶融金属に空気等の気体を噴射して急冷することで粒状にする風砕が挙げられる。
なお、溶融金属を棒状や線状あるいは板状に成型したものを切断や破砕して粒状に加工するようにしてもよい。
また、粒状クリアランス金属を充填して使用する場合は、充填する容器のサイズや充填しやすさを考慮して決めればよい。
もっとも、粒状金属は、放射能測定時に容器に充填したり、市中に供給されて充填して使用されたりすることを考慮すると、手作業で無理なく動かすことができることが望ましい。この点で、道路の路盤材の場合、用いる骨材のサイズは53mm以下の規定があり、道路舗装時には作業者がスコップで均し作業等を行っている。この場合、粒子の重量が作業性に影響すると考えられる。この視点から、作業性を考慮した場合の1個あたりの重量は、最大サイズの53mmで比重2.8の路盤材の重量417g以下となる。ちなみに、これを比重7.8の鉄の立方体に換算すると、サイズは38mm以下となる。実際の形状は立方体とは異なり、ばらつきもあるため、望ましい形状の選択が難しい。一方、重量は作業性に直結するため、規定することに意味がある。
なお、比重や形状の調整に関しては、コーティング材に加えて、砂、砂利、ガラス等との併用も考えられる。
粒状金属放射能濃度測定工程は、粒状のクリアランス金属の放射能濃度を測定する工程である。日本におけるクリアランスレベルの検認は、(i)事業者による測定・評価方法の設定を、(ii)原子力規制委員会が認可し、(iii)事業者が測定・評価方法を実施し、さらに(iv)原子力規制委員会が測定・評価の結果確認、というプロセスで行われる。成型品の出荷までの間と出荷後の腐食防止のために、成型・加工後に防錆剤の塗布等の防食対策を行う必要がある。
もっとも、クリアランス金属として出荷することを目的とした放射能濃度測定ではなく、レードルやタンディッシュから抜き出された金属を再び溶融炉に戻す必要があるかどうかを判定することを目的とした予備的な測定であれば、放射能濃度が基準値(たとえば、クリアランスレベルに相当する数値や、それに安全率を見込んで0.8を掛けた数値とするなど任意に設定してよい)以下かどうかを確認するだけの簡易な測定とすることもできる。
測定でクリアランスレベルに到達していることが確認され、国の確認が与えられれば、法的制約の無い条件で保管し、出荷することができる。
クリアランス未達金属投入工程は、放射能濃度測定工程で基準値を超えていると判定された金属を放射性物質移行工程における溶融炉に戻して再溶融する工程である。
処理対象と考えている放射性金属廃棄物中の放射性ストロンチウム(Sr90)の表面線量率の最大値が概ね1mSv/hで、全体の加重平均を0.1mSv/hとする。この加重平均値は放射能濃度160Bq/gに相当するものとする。スラグの発生量は高周波炉を想定して、スラグ装入量(スクラップからのスラグ成分を含む)を2%、溶融時のスラグ化率を70%、放射性ストロンチウム(Sr90)のスラグへの捕捉率を100%とする。
本実施の形態に基づいて、処理された金属がクリアランスレベル(1Bq/g以下)を満足できない場合の主な原因は、操業ミス(定常作業を逸脱した作業を行った場合など)や装置の不具合などによって、スラグ分がメタルに混入することである。このスラグ混入量の最大値は経験的に約700g/tである。このスラグ混入量の最大値700g/tのときの放射能濃度は、前述の仮定値から計算すると8Bq/g(※1)となる。これが、クリアランス未達金属の最大放射能濃度と考えられるが、これは、放射性金属廃棄物中の放射性ストロンチウム(Sr90)の加重平均放射能濃度である160Bq/gと比較して十分に低く、再投入する価値は十分にある。
※1.{(160×1000×1000×1)/(0.02×1000×1000×0.7)}×700/1000000
スラグ混入量の最大値700g/tのときの放射能濃度は、前述と同様の計算から4.4Bq/g(※2)となる。これが、クリアランス未達金属の最大の最大放射能濃度と考えられるが、これは、放射性金属廃棄物中の放射性セシウム(Cs137)の加重平均放射能濃度である145Bq/gと比較して十分に低く、再投入する価値は十分にある。
※2.(160×1000×1000×1)/(0.02×1000×1000×0.7)}×700/1000000
クリアランス未達金属を溶融炉に戻すタイミングや方法は、クリアランス未達金属の発生量や放射性金属廃棄物の処理必要量を考慮し、発生時に無作為に戻す方法や、ある程度の量を貯留しておいて、放射性金属廃棄物の放射能濃度の測定結果や経験則に基づいて戻す量やタイミングを決めるなど、任意の方法で行うことができる。
さらに、金属を粒状にすることにより、溶融炉26への投入が容易となり、また溶融に必要なエネルギーも小さくすることができる。
また、粒状化した後、クリアランスレベルに達していなかったとしても、再溶融することが容易である。
スラグを再利用する場合、粒状金属生成工程の後、あるいは粒状金属生成工程と平行して、図9に示すように、溶融残渣生成工程と、再溶融可否判断工程と、溶融残渣投入工程と、溶融残渣処分工程を行うようにすればよい。
以下、各工程について詳細に説明する。
溶融残渣生成工程は、粒状金属生成工程において溶融金属が分離された後の溶融物を溶融残渣とする工程である。
溶融残渣の具体的な生成方法としては、レードル27を用いる態様の場合、粒状金属生成工程での溶融金属抜出し工程において溶融金属を抜き出した後の溶融物(スラグ主体で溶融金属も含まれている)を、レードル27を傾動させたりしてスラグパンなどに排出すればよい。タンディッシュ装置を用いる態様の場合も同様である。
再溶融可否判断工程は、溶融残渣の再溶融可否を溶融残渣の放射線量に基づいて判断する工程である。
放射性金属廃棄物を溶融すると放射性物質はスラグに移行する。そして、放射性物質が移行したスラグを溶融残渣として回収して再度放射性金属廃棄物と共に溶融することを繰り返すと、スラグに放射性物質が次第に濃縮されて、そのスラグが含まれる溶融残渣の放射能濃度も高くなる。
他方、放射能レベルがL2とL3の場合には浅地での比較的簡易な処分となる。
具体的には、放射能レベルがL3の場合には、トレンチ処分が要求される。トレンチ処分とは、容器に固型化しない放射性廃棄物を、人工バリアを設置しない廃棄物埋設地に浅地中処分することをいう。
また、放射能レベルがL2の場合には、ピット処分とする。ピット処分とは、容器に封入又は固化した処理対象物を、人工バリアを設置した廃棄物埋設地に浅地中処分することをいう。
そこで、放射能レベルがL2でL2の上限値までに余裕がなく、当該溶融残渣を再溶融すると、次回の再溶融可否判断工程のレベル測定でL1レベルに到達する場合には、再溶融不可と判断する。上述のように、L1レベルになると手間と費用が増大するためである。
なお、溶融残渣の放射線量は、クリアランス金属の様に厳密に測定する必要はなく、たとえば放射能レベルがL2の上限値までに余裕があるかどうかが判断できる程度に測定すればよい。
溶融残渣投入工程は、再溶融可否判断工程で再利用できると判断したときに、溶融残渣を放射性金属廃棄物と共に溶融炉に投入する工程である。
溶融残渣を溶融炉に投入して、放射性物質移行工程から溶融残渣生成工程までの処理を行い、再び再溶融可否判断工程で再溶融の可否を判断して、再度、再溶融できると判断したときには、溶融残渣を放射性金属廃棄物と共に溶融炉に投入する。このように、溶融残渣投入工程から再溶融可否判断工程まで処理を繰り返し、繰り返し数が多くなるほど、溶融残渣におけるスラグの放射能濃度が増加する。
なお、再溶融できると判断された溶融残渣は、直ちに溶融炉に戻し続いて行われる処理プロセスに用いてもよく、他のスラグ原料を用いて処理プロセスが何回か実行された後で、溶融炉に戻してもよい。また、溶融炉が複数系列設置されている場合は、同じ系列の溶融炉に戻す必要はなく、他の系列の溶融炉に戻してもよい。
溶融残渣処分工程は、再溶融可否判断工程で再溶融できないと判断したときには、溶融残渣を放射能レベルに基づいて所定の処分をする工程である。
前述したように、本実施の形態では溶融残渣の放射能レベルはL2以下になるので、上述したピット処分を行えばよい。
3 炉蓋
5 投入供給装置
7 ホッパー
8 投入シュート
9 ダブルダンパ
9a 上段のダンパ
9b 下段のダンパ
11 プッシャー
13 投入ゲート
12 トーチ
15 投入物
17 吊下げシュート
19 吊下げ装置
21 移動台車
23 投入ゲート
24 ゲート駆動部
25 容器
26 溶融炉
27 レードル
29 鋳型
31 溶融金属
33 スラグ
Claims (6)
- 放射性金属廃棄物からクリアランス金属を製造する方法であって、
溶融時にスラグやダストに移行しやすい放射性核種が主成分の放射性物質で汚染された放射性金属廃棄物を溶融炉に投入する放射性金属廃棄物投入工程と、
必要に応じて前記溶融炉にスラグの原料となるスラグ原料を投入するスラグ原料投入工程と、
投入物を溶融炉で溶融することにより、前記放射性物質を前記放射性金属廃棄物から分離してスラグ及びダストに移行させる放射性物質移行工程と、
前記ダストを回収して処理するダスト処理工程と、
前記溶融炉で溶融された溶融物から溶融金属を分離して、分離された溶融金属を粒状のクリアランス金属とする粒状金属生成工程を備えたことを特徴とするクリアランス金属の製造方法。 - 前記粒状金属生成工程は、粒状にした溶融金属の放射能濃度を測定する粒状金属放射能濃度測定工程と、該放射能濃度測定工程で測定値が基準値を超えた粒状金属を前記溶融炉に投入するクリアランス未達金属投入工程を備えたことを特徴とする請求項1記載のクリアランス金属の製造方法。
- 前記粒状金属生成工程は、分離された溶融金属を水砕又は風砕によって粒状にすることを特徴とする請求項1又は2に記載のクリアランス金属の製造方法。
- 前記粒状金属生成工程は、分離された溶融金属を棒状、線状又は板状に成型したものを切断又は破砕することによって粒状にすることを特徴とする請求項1又は2に記載のクリアランス金属の製造方法。
- 前記溶融炉で溶融された溶融物から溶融残渣の全部又は一部を回収する溶融残渣生成工程と、
回収された溶融残渣の再利用の可否を溶融残渣の放射能濃度に基づいて判断する再溶融可否判断工程と、
該再溶融可否判断工程で再利用できると判断したときには、回収された溶融残渣を溶融炉に投入する溶融残渣投入工程と、
前記再溶融可否判断工程で再利用できないと判断したときには、前記溶融残渣を放射性廃棄物として処分する溶融残渣処分工程を備えたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のクリアランス金属の製造方法。 - 前記再溶融可否判断工程は、前記溶融残渣の放射能濃度を測定して測定値に基づいて判断することを特徴とする請求項5に記載のクリアランス金属の製造方法。
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2018
- 2018-10-05 JP JP2018189830A patent/JP7143029B2/ja active Active
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JP7143029B2 (ja) | 2022-09-28 |
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