図面を参照しながら、複数の実施形態を説明する。複数の実施形態において、機能的におよび/または構造的に対応する部分および/または関連付けられる部分には同一の参照符号、または百以上の位が異なる参照符号が付される場合がある。対応する部分および/または関連付けられる部分については、他の実施形態の説明を参照することができる。
第1実施形態
図1において、車両用空調装置1は、車両に搭載されている。車両は、例えばガソリン駆動のエンジンを搭載した自動車である。ただし、車両としては、走行用モータを搭載した電気自動車や、エンジンとモータの両方を搭載したハイブリッド自動車なども採用可能である。車両用空調装置1は、取り込まれた空気の温度を調整して車室内に吹き出す装置である。言い換えると、車両用空調装置1は、車室内の暖房運転や冷房運転や除湿運転などの空調運転を行う装置である。
車両用空調装置1は、内部に空気が流れる空気経路が形成されている空調ケース2を備えている。空調ケース2は、空調運転に用いる各種装置を内部に収納している。車両用空調装置1は、車両のフロントウィンドウに空調風を吹き出すデフロスタ吹き出し口25を備えている。車両用空調装置1は、前席の上部に空調風を吹き出すフェイス吹き出し口35を備えている。車両用空調装置1は、前席の下部に空調風を吹き出すフット吹き出し口45を備えている。
車両用空調装置1は、送風機7と蒸発器9とヒータコア10とを備えている。送風機7は、空調ケース2内に空気を流すための装置である。蒸発器9は、内部に冷媒が流れており、冷媒が液体から気体に気化する際の気化熱を周囲の空気から奪うことで空気を冷却する熱交換器である。ヒータコア10は、内部に高温のエンジン冷却水が流れており、エンジン冷却水の熱を用いて周囲の空気を加熱する熱交換器である。ただし、ヒータコア10に代えて、電力を消費して空気を加熱する電気ヒータなどを用いてもよく、ヒータコア10と電気ヒータとの両方のヒータを併用してもよい。
蒸発器9には、蒸発器9に接触した状態で蒸発器温度センサ19が設けられている。蒸発器温度センサ19は、蒸発器9のフィン表面などの空気との熱交換を行う部分の表面温度を測定するセンサである。蒸発器温度センサ19は、蒸発器9の下流側に設けられている。このため、蒸発器温度センサ19は、蒸発器9と空気とが熱交換した後の蒸発器9表面の温度を測定することとなる。また、蒸発器温度センサ19は、蒸発器9の下流側において最も温度が下がりやすい部分に設けられている。言い換えると、蒸発器温度センサ19は、蒸発器9のうち最も結露が発生しやすい部分に設けられている。
空調ケース2には、内気導入口3と外気導入口4との2つの空気の取り込み口が形成されている。車両用空調装置1は、内気導入口3と外気導入口4とを開閉する内外気切り替えドア5を備えている。内外気切り替えドア5は、内気導入口3を開いて外気導入口4を閉じることで空調風を車内で循環させる内気モードを実現する。内外気切り替えドア5は、内気導入口3を閉じて外気導入口4を開くことで空調風を車外から取り込む外気モードを実現する。ただし、外気モードにおいて、内気導入口3を完全に閉じなくてもよい。例えば、内気導入口3をわずかに開いておくことで、外気よりも少ない割合で内気を取り込んで空気を循環させてもよい。
空調ケース2には、フロントウィンドウに向けて空調風を吹き出すためのデフロスタ吹き出し口25が設けられている。空調ケース2は、蒸発器9やヒータコア10を通過して温度が変化した空調風をデフロスタ吹き出し口25に導くデフロスタダクト22を備えている。デフロスタダクト22の入口付近には、デフロスタダクト22の開閉を行うデフロスタドア21が設けられている。デフロスタドア21は、デフロスタ吹き出し口25からの空調風の吹き出しの有無や吹き出し量を調整する装置である。
空調ケース2には、前席に着座している乗員の上半身に向けて空調風を吹き出すためのフェイス吹き出し口35が設けられている。空調ケース2は、蒸発器9やヒータコア10を通過して温度が変化した空調風をフェイス吹き出し口35に導くフェイスダクト32を備えている。フェイスダクト32の入口付近には、フェイスダクト32の開閉を行うフェイスドア31が設けられている。フェイスドア31は、フェイス吹き出し口35からの空調風の吹き出しの有無や吹き出し量を調整する装置である。
空調ケース2には、前席に着座している乗員の足元に向けて空調風を吹き出すためのフット吹き出し口45が設けられている。空調ケース2は、蒸発器9やヒータコア10を通過して温度が変化した空調風をフット吹き出し口45に導くフットダクト42を備えている。フットダクト42の入口付近には、フットダクト42の開閉を行うフットドア41が設けられている。フットドア41は、フット吹き出し口45からの空調風の吹き出しの有無や吹き出し量を調整する装置である。
フット吹き出し口45は、車両の左右方向に離れた位置に2つ設けられている。すなわち、運転席側にフット吹き出し口45Rを備え、助手席側にフット吹き出し口45Lを備えている。フットダクト42は、二股に分かれて車両の左右方向に離れた2つのフット吹き出し口45のそれぞれに空調風の流路を提供している。
車両用空調装置1は、吹き出し口モードとしてデフロスタモード、フェイスモード、フットモード、バイレベル(B/L)モード、フットデフロスタ(F/D)モードの5つのモードを備えている。ただし、吹き出し口モードの種類は上述のモードに限られない。
デフロスタモードは、デフロスタ吹き出し口25から空調風を吹き出すモードである。デフロスタモードにおいては、デフロスタドア21が開状態となり、フェイスドア31とフットドア41とは閉状態となる。デフロスタモードは、フロントウィンドウの曇りを解消する場合に用いられる。デフロスタモードは、デフロスタ運転の一例を提供する。
フェイスモードは、フェイス吹き出し口35から空調風を吹き出すモードである。フェイスモードにおいては、フェイスドア31が開状態となり、デフロスタドア21とフットドア41とは閉状態となる。フェイスモードは、冷房運転時によく用いられる。
フットモードは、主にフット吹き出し口45から空調風を吹き出すモードである。フットモードにおいては、フットドア41が開状態となり、フェイスドア31は閉状態となり、デフロスタドア21は、わずかに開いた小開状態となる。フットモードは、暖房運転時によく用いられる。
バイレベル(B/L)モードは、フェイス吹き出し口35とフット吹き出し口45の両方の吹き出し口から略等しい量の空調風を吹き出すモードである。バイレベル(B/L)モードにおいては、フェイスドア31とフットドア41とが開状態となり、デフロスタドア21は閉状態となる。バイレベル(B/L)モードは、冷房と暖房との中間温度の空調運転時によく用いられる。
フットデフロスタ(F/D)モードは、フット吹き出し口45とデフロスタ吹き出し口25との両方の吹き出し口から略等しい量の空調風を吹き出すモードである。フットデフロスタ(F/D)モードにおいては、フットドア41とデフロスタドア21とが開状態となり、フェイスドア31は閉状態となる。フットデフロスタ(F/D)モードは、フットモードでの暖房運転中にフロントウィンドウが曇ってしまう場合によく用いられる。フットデフロスタ(F/D)モードは、デフロスタ運転の一例を提供する。すなわち、デフロスタ運転とは、少なくともデフロスタ吹き出し口25から空調風が吹き出すモードでの空調運転のことである。
図2は、制御システムを示す。空調制御部80を構成する制御装置(ECU)は、電子制御装置(Electronic Control Unit)である。制御装置は、コンピュータまたはマイクロコンピュータとも呼ばれる。制御装置は、制御対象を制御するための制御システムを提供する。この明細書における少なくとも1つの機能は、その機能を提供するように構成された少なくとも1つの制御装置によって提供される。「機能を提供するように構成された少なくとも1つの制御装置」の語は、(1)記憶媒体に記録されたソフトウェアおよびそれを実行するハードウェア、(2)ソフトウェアのみ、あるいは(3)ハードウェアのみによって提供することができる。制御装置は、if−then−else形式と呼ばれるロジック、または機械学習によってチューニングされた学習済みモデル、例えばニューラルネットワークによって提供される。
制御装置の一例は、少なくともプログラムを格納したメモリと、このプログラムを実行する少なくとも1つのプロセッサとを備えるコンピュータである。この場合、プロセッサは、CPU:Central Processing Unit、またはGPU:Graphics Processing Unitなどと呼ばれる。メモリは、記憶媒体とも呼ばれる。メモリは、プロセッサによって読み取り可能な「プログラムおよび/またはデータ」を非一時的に格納する非遷移的かつ実体的な記憶媒体である。記憶媒体は、半導体メモリ、磁気ディスク、または光学ディスクなどによって提供される。プログラムは、複数のコンピュータインストラクションを含む。プログラムは、プロセッサによって実行されることによって、プロセッサをこの明細書に記載される装置として機能させ、この明細書に記載される方法を実行するようにプロセッサを機能させる。プログラムは、それ単体で、またはプログラムが格納された記憶媒体として流通する場合がある。
制御装置の一例は、多数の論理ユニットを含むデジタル回路、またはアナログ回路を含むプロセッサを備えるコンピュータである。この場合、プロセッサは、PGA:Programmable Gate Array、FPGA:Field Programmable Gate Array、CPLD:Complex Programmable Logic Deviceなどと呼ばれる。プロセッサは、「プログラムおよび/またはデータ」を格納したメモリを備える場合がある。
この明細書における少なくとも1つの機能は、その機能を提供するように構成された少なくとも1つのプロセッサによって提供される。「機能を提供するように構成された少なくとも1つのプロセッサ」の語は、データ通信装置によってリンクされた複数のプロセッサを含む場合がある。「機能を提供するように構成された少なくとも1つのプロセッサ」の語は、(1)ソフトウェアにより上記機能を達成する場合と、(2)ハードウェアによって上記機能を達成する場合と、(3)ソフトウェアとハードウェアとの両方により上記機能を達成する場合とを含む。
制御装置と信号源と制御対象物とは、多様な要素を提供する。それらの要素の少なくとも一部は、機能を実行するためのブロックと呼ぶことができる。別の観点では、それらの要素の少なくとも一部は、構成として解釈されるモジュール、またはセクションと呼ぶことができる。さらに、制御システムに含まれる要素は、意図的な場合にのみ、その機能を実現する手段とも呼ぶことができる。
図2において、車両用空調装置1を制御する空調制御部80は、蒸発器温度センサ19と内気温センサ61と日射量センサ62と外気温センサ71と空調用スイッチ72と接続されている。蒸発器温度センサ19は、蒸発器9の温度を測定するセンサである。蒸発器温度センサ19は、蒸発器9の温度を示す信号を空調制御部80に向けて出力する。
内気温センサ61は、車室内の温度を測定するセンサである。内気温センサ61は、車室内の温度を示す信号を空調制御部80に向けて出力する。内気温センサ61は、例えばインストルメントパネルの下部に設けることができる。日射量センサ62は、車両が受けている日射量を測定するセンサである。日射量センサ62は、車両が受けている日射量を示す信号を空調制御部80に向けて出力する。日射量センサ62は、例えばインストルメントパネルの上部であって、フロントウィンドウの近くに設けることができる。外気温センサ71は、車外の温度を測定するセンサである。外気温センサ71は、車室外の温度を示す信号を空調制御部80に向けて出力する。外気温センサ71は、例えばフロントバンパー裏やフロントグリルの内側などに設けることができる。空調制御部80は、各種センサから空調に用いる各種の情報を取得する。
空調用スイッチ72は、乗員によって操作されるスイッチである。空調用スイッチ72は、空調運転のオンオフの切り替えスイッチや、設定温度の切り替えスイッチや、内気モードと外気モードとの切り替えを行うスイッチや、蒸発器9に冷媒を循環するための圧縮機8のオンオフの切り替えを行うスイッチなどが含まれる。空調用スイッチ72には、フェイスモードなどの5つの吹き出しモードのうち、どのモードで空調運転を行うかを選択するスイッチが含まれている。ただし、オートモードで空調運転を行う場合には、乗員による操作で吹き出しモードなどを切り替えるのではなく、自動で切り替えが行われる。空調制御部80は、空調用スイッチ72を用いて乗員が設定した空調設定に基づいて空調運転を行う。
空調制御部80には、内外気切り替えドア5と送風機7と圧縮機8とエアミックスドア11とデフロスタドア21とフェイスドア31とフットドア41とが接続されている。空調制御部80は、内外気切り替えドア5の開閉を切り替えることで、内気モードと外気モードとの切り替えを行う。空調制御部80は、送風機7のオンオフや回転数を制御することで空調運転における風量を調整する。空調制御部80は、圧縮機8のオンオフや周波数を制御することで蒸発器9に流れる冷媒流量を調整する。空調制御部80は、エアミックスドア11の開度を制御することで空調風の温度を調整する。
空調制御部80は、デフロスタドア21を切り替えることで、デフロスタ吹き出し口25から吹き出す空調風の量を調整している。空調制御部80は、フェイスドア31を切り替えることで、フェイス吹き出し口35から吹き出す空調風の量を調整している。空調制御部80は、フットドア41を切り替えることで、フット吹き出し口45から吹き出す空調風の量を調整している。各種ドア装置は、サーボモータを備えており、空調制御部80は、サーボモータの駆動制御によって各種ドア装置の開閉制御を行っている。ただし、各種ドア装置は開状態と閉状態との2つの状態だけでなく開状態と閉状態との中間の開度である小開状態も設定可能である。すなわち、各種ドア装置は吹き出し口などの開口における開度を任意に絞ることができる装置である。
車両用空調装置1のデフロスタモードにおける制御について以下に説明する。図3において、デフロスタモードやフットデフロスタモードなどのデフロスタ運転を行うモードの運転要求であるデフロスタ要求があると、ステップS101でデフロスタドア21を開く。この時、デフロスタモードであれば、フェイスドア31とフットドア41とを閉状態とする。フットデフロスタモードであれば、フェイスドア31を閉状態とし、フットドア41を開状態とする。すなわち、吹き出し口モードの要求に合わせてドア装置の開閉を適切に切り替える。その後、ステップS102に進む。
ステップS102では、圧縮機8を駆動して蒸発器9に冷媒を循環させる。ここで、圧縮機8が電動圧縮機であるなど周波数を可変制御できる場合には、圧縮機8の周波数を高くして冷媒の循環量を多く確保することが好ましい。これによると、蒸発器9を素早く所定の温度まで冷やすことができる。圧縮機8の駆動後、ステップS103に進む。
ステップS103では、送風機7を駆動して、空調ケース2内に空気を流す。ここで、すでに送風機7が駆動済みである場合には、送風機7の回転数を高くして風量を増やすなどしてもよい。これによると、デフロスタ吹き出し口25から吹き出される空調風の量を多く確保できる。したがって、速やかにフロントウィンドウの窓曇りを解消しやすい。送風機7の駆動後、ステップS111に進む。
ステップS111では、内気モードの要求があるか否かを判定する。内気モードの要求がある場合としては、内気モードと外気モードとの切り替えを行うスイッチが乗員によって操作され、内気モードが選択された場合や、デフロスタを開始した時点で、内気モードで空調運転が行われている場合などがあげられる。内気モードの要求がある場合には、ステップS112に進む。一方、内気モードの要求がない場合には、外気モードでの運転要求があると判断してステップS141に進む。
ステップS112では、蒸発器9の温度を測定する。すなわち、蒸発器温度センサ19を用いて、蒸発器9の表面温度を測定する。冷媒が循環されてから十分な時間が経過している場合には、蒸発器9の温度は内気温よりも低い温度となりやすい。一方、冷媒が循環されてから十分な時間が経過していない場合には、蒸発器9の温度は内気温と同程度の温度となりやすい。蒸発器9の温度を測定した後、ステップS113に進む。
ステップS113では、外気温を測定する。すなわち外気温センサ71を用いて、車両の外における温度を測定する。外気温の測定後、ステップS121に進む。
ステップS121では、蒸発器9の温度が外気温以下であるか否かを判定する。蒸発器9の温度が外気温以下の温度である場合には、蒸発器9による除湿が可能であると判断してステップS131に進む。一方、蒸発器9の温度が外気温よりも高い温度である場合には、蒸発器9による除湿が適切に行われないと判断してステップS141に進む。外気温は、除湿温度の一例を提供する。ここで、除湿温度とは、フロントウィンドウに窓曇りが発生している場合においては、除湿が可能な温度である。すなわち、除湿温度は、露点温度に等しい温度となる。一方、フロントウィンドウに窓曇りが発生していない場合においては、蒸発器9においてフロントウィンドウと同時に露が発生し始める温度である。すなわち、除湿温度は、空調風にさらされるフロントウィンドウの内側表面の温度に等しい温度となる。言い換えると、除湿温度とは、除湿による窓曇り対策が可能な温度のことである。
蒸発器9の温度が外気温以下である場合に、蒸発器9による内気の除湿が可能であると判断できる理由について以下に説明する。窓曇りは、フロントウィンドウにおける外側と内側との温度差に起因して発生する現象である。すなわち、外気にさらされることで冷やされたフロントウィンドウに対して、車室内の暖かく湿った空気が接触することによって、暖かく湿った空気が急激に冷やされる。空気は、温度が低下することで飽和水蒸気量が低下する。ここで、飽和水蒸気量を超える水分は、フロンウィンドウの内側表面に露として発生する。この露によってフロントウィンドウの表面が曇った状態となる。
フロントウィンドウは、フロントウィンドウの外側に吹き付けられる外気により冷やされるとともに、フロントウィンドウの内側に触れる車室内の暖かい空気によって加熱される。このため、フロントウィンドウは、外気温よりも高い温度となりやすい。仮に、暖房運転を行っていないなど、車室内の空気が外気温と同じ温度であった場合にも、フロントウィンドウの温度は外気温よりも低い温度とはならず、最低でも外気温と等しい温度となる。
上述の通り、蒸発器9の温度が外気温以下である場合、蒸発器9の温度はフロントウィンドウの温度以下の温度となる。このため、フロントウィンドウがすでに曇っている場合には、蒸発器9でも空気中の水分が蒸発器9の表面で凝縮されて空気が除湿されていることとなる。一方、フロントウィンドウがまだ曇っていない場合には、フロントウィンドウ以下の温度である蒸発器9の方が空気中の水分が凝縮されて除湿されやすいため、フロントウィンドウでの窓曇りよりも早く除湿が開始されやすい。したがって、蒸発器9が外気温以下の温度である場合には、窓曇りを解消するために適切に除湿がなされている、あるいは、窓曇りを防ぐために適切に除湿がなされる準備が整っている状態である。よって、蒸発器9の温度が外気温以下である場合に、蒸発器9による除湿が可能であると判断できる。
ステップS131では、内外気切り替えドア5を内気モードにする。すなわち、内外気切り替えドア5がすでに内気モードの状態であれば内気モードを維持する。一方、内外気切り替えドア5が外気モードの状態であれば内気モードに切り替える。この状態は、内気を循環しながら蒸発器9による空気の除湿作用によって窓曇りへの対策を行っている状態である。内外気切り替えドア5を内気モードとした後、ステップS151に進む。
ステップS141では、内外気切り替えドア5を外気モードにする。すなわち、内外気切り替えドア5がすでに外気モードの状態であれば外気モードを維持する。一方、内外気切り替えドア5が内気モードの状態であれば外気モードに切り替える。この状態は、外気を流しながら内気温と外気温との温度差を低減することによって、窓曇りへの対策を行っている状態である。また、外気を導入せずに内気を循環していると、乗員の呼気に含まれる水分により外気に比べて湿度が高くなりやすい。内外気切り替えドア5を外気モードにすることで、内気を車室外に排出するとともに湿度の低い外気を車室内に導入できる。すなわち、フロントウィンドウの内側に接触する空気の湿度を低くすることによっても、窓曇りへの対策を行っている状態である。内外気切り替えドア5を外気モードとした後、ステップS151に進む。
ステップS151では、デフロスタ要求があるか否かを判定する。デフロスタ要求がある場合には、窓曇りへの対策を継続する必要があると判断して、ステップS111に戻って一連の制御を繰り返す。一連の制御を繰り返す過程で、蒸発器9の温度が外気温よりも高い温度から外気温以下の温度まで低下すれば、外気モードから内気モードへの切り替えが許可され、内気モードでの空調運転が実行される。あるいは、内気モードでの空調運転中であっても、圧縮機8が不具合により冷媒の循環が停止してしまうなど蒸発器9の温度が上昇して外気温よりも高い温度となれば、内気モードが禁止され、外気モードに切り替えられて空調運転が維持されることとなる。デフロスタ要求がない場合には、窓曇りの対策を継続する必要がないと判断して、デフロスタ運転を終了する。
上述した実施形態によると、空調制御部80は、蒸発器温度センサ19で測定した蒸発器9の温度が除湿温度以下であって、内気モードとする要求がある場合には、デフロスタ運転を内気モードの状態で行う。言い換えると、蒸発器9の温度が除湿温度以下である場合には、デフロスタ運転中に内気モードとすることを許可する。このため、蒸発器9の除湿作用による窓曇り対策が可能な場合には、内気モードでのデフロスタ運転が許可される。したがって、デフロスタ運転中において常に強制的に外気モードに切り替えられる場合に比べて、内気モードでデフロスタ運転を実施可能な時間を長く確保できる。よって、デフロスタ運転中に車室外の不快な臭いが車室内に導入されてしまうことを抑制しやすい。また、蒸発器9の除湿作用による窓曇り対策が適切に行われない場合には、デフロスタ運転が強制的に外気モードの状態で実施される。したがって、デフロスタ運転中において乗員の操作による内気モードや外気モードを維持する場合に比べて、安定して素早く窓曇りを解消しやすい。すなわち、車両用空調装置1において、安定した防曇性能と乗員の快適性を両立できる。
空調制御部80は、蒸発器温度センサ19で測定した蒸発器9の温度が外気温センサ71で測定した外気温以下であって、内気モードとする要求がある場合には、内気モードでデフロスタ運転を行う。言い換えると、蒸発器9の温度が外気温センサ71で測定した外気温以下である場合には、デフロスタ運転中に内気モードとすることを許可する。このため、蒸発器9の温度と外気温との2つの温度を比較することで、デフロスタ運転における内気モードを許可するか否かの制御を実現できる。また、従来の空調運転に使用する目的で多くの車両に標準的に搭載されているセンサである外気温センサ71を用いている。このため、デフロスタ運転における内気モードを許可するか否かの判断をする目的で専用の特別なセンサを新たに設ける必要がない。したがって、簡単な構成でデフロスタ運転中に内気モードを許可するか否かを判断できる。
蒸発器温度センサ19で測定した蒸発器9の温度と、外気温センサ71で測定した外気温とを直接比較しなくてもよい。例えば、外気温センサ71で測定した温度に一定の補正を加えた値を外気温とみなしてもよい。
外気温センサ71を設ける位置はフロントバンパー裏に限られない。例えば、フロントウィンドウの車室外側に貼り付けるなどして、フロントウィンドウの車室外側の温度を外気温と判定してもよい。
ステップS121で蒸発器温度が外気温度以下であるか否かを確認する前に、ステップS111で、内気モードの要求があるか否かを確認している。このため、内気モードの要求がない場合には、素早くステップS141に進むことで、窓曇りへの対策を素早く実施して良好な視界を確保しやすい。
第2実施形態
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。この実施形態では、デフロスタ温度センサ226とデフロスタ湿度センサ227とを備え、温度と湿度から算出した露点温度と蒸発器9の温度とを比較してデフロスタ運転における内気モードを許可するか否かを判断している。
図4において、車両用空調装置1は、デフロスタ温度センサ226を備えている。デフロスタ温度センサ226は、デフロスタ吹き出し口25に接触して設けられている。デフロスタ温度センサ226は、デフロスタ吹き出し口25から吹き出される空調風の温度を測定するセンサである。デフロスタ温度センサ226は、内気温センサの一例を提供する。
車両用空調装置1は、デフロスタ湿度センサ227を備えている。デフロスタ湿度センサ227は、デフロスタ吹き出し口25に接触して設けられている。デフロスタ湿度センサ227は、デフロスタ吹き出し口25から吹き出される空調風の湿度を測定するセンサである。デフロスタ温度センサ226とデフロスタ湿度センサ227とは、互いに近接した状態で、デフロスタ吹き出し口25から吹き出される空調風に直接さらされる位置に設けられている。デフロスタ湿度センサ227は、湿度センサの一例を提供する。
車両用空調装置1の制御のうち、上述した実施形態とは異なる制御を行う部分について以下に説明する。図5において、ステップS112で蒸発器9の温度を測定した後、ステップS213でデフロスタ吹き出し口25近傍の温度を測定する。すなわち、デフロスタ温度センサ226を用いて、デフロスタ吹き出し口25から吹き出される空調風の温度を測定する。デフロスタ吹き出し口25から吹き出される空調風の温度の測定後、ステップS214に進む。
ステップS214では、デフロスタ吹き出し口25近傍の湿度を測定する。すなわち、デフロスタ湿度センサ227を用いて、デフロスタ吹き出し口25から吹き出される空調風の湿度を測定する。デフロスタ吹き出し口25から吹き出される空調風の湿度の測定後、ステップS215に進む。
ステップS215では、デフロスタ温度センサ226で測定した温度とデフロスタ湿度センサ227で測定した湿度との情報からデフロスタ吹き出し口25から吹き出される空調風の露点温度を算出する。露点温度とは、その空気を冷却していった場合に水蒸気が凝結して結露する温度である。すなわち、算出した露点温度よりも低い温度の部材によって空調風が冷やされると、部材の表面に露が発生することとなる。露点温度の算出後、ステップS221に進む。
ステップS221では、蒸発器9の温度が露点温度以下であるか否かを判定する。蒸発器9の温度が露点温度以下の温度である場合には、蒸発器9による除湿が可能であると判断してステップS131に進んで内気モードでデフロスタ運転を行う。一方、蒸発器9の温度が露点温度よりも高い温度である場合には、蒸発器9による除湿が適切に行われないと判断してステップS141に進んで外気モードでデフロスタ運転を行う。露点温度は、除湿温度の一例を提供する。
上述した実施形態によると、空調制御部80は、デフロスタ温度センサ226で測定した温度とデフロスタ湿度センサ227で測定した湿度との測定結果の情報から露点温度を算出している。さらに、空調制御部80は、蒸発器温度センサ19で測定した蒸発器9の温度が算出した露点温度以下である場合には、デフロスタ運転中に内気モードとすることを許可する。このため、確実に蒸発器9による除湿が可能である条件下において、デフロスタ運転中には内気モードとすることができる。したがって、外気温よりも露点温度が高い場合に、露点温度以下の温度範囲であれば、外気温よりも高い温度であってもデフロスタ運転中に内気モードとすることが許可される。よって、外気温と蒸発器9の温度とを比較する場合に比べて、内気モードが許可される温度範囲を広くしやすい。すなわち、デフロスタ運転中に車室外の不快な臭いが車室内に導入されることを抑制しやすい。
デフロスタ温度センサ226とデフロスタ湿度センサ227とは、デフロスタ吹き出し口25に設けられている。このため、フロントウィンドウに吹き付けられる空調風における露点温度を算出することができる。したがって、窓曇りの直接的な原因となるフロントウィンドウの内側表面に接触する空調風の露点温度と蒸発器9の温度とを比較できる。よって、車両用空調装置1において、フロントウィンドウから離れた位置の情報に基づいて露点温度を算出する場合に比べて、精度よく窓曇りへの対策を行うとともに乗員の快適性を確保することができる。
露点温度は、デフロスタ温度センサ226で測定した温度とデフロスタ湿度センサ227で測定した湿度との情報から算出する場合に限られない。例えば、ルームミラーの裏側に湿度センサを備え、内気温センサ61で計測した温度と湿度センサで計測した湿度から露点温度を算出するようにしてもよい。
第3実施形態
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。この実施形態では、蒸発器9の着霜抑制温度と蒸発器9の温度とを比較してデフロスタ運転における内気モードを許可するか否かを判断している。
車両用空調装置1の制御のうち、上述した実施形態とは異なる制御を行う部分について以下に説明する。図6において、ステップS112で蒸発器9の温度を測定した後、ステップS313で着霜抑制温度を取得する。ここで、着霜抑制温度とは、蒸発器9の外表面に着霜が引き起こされることを抑制する温度のことである。言い換えると、着霜抑制温度とは、蒸発器9が冷え過ぎて着霜が引き起こされることを抑制するために、蒸発器9への冷媒の供給を停止する温度である。着霜抑制温度は、フロストカット温度とも呼ばれる。着霜抑制温度は、圧縮機停止温度とも呼ばれる。
蒸発器9の表面に霜が発生すると、霜によって空調風が流れるべき流路が閉ざされてしまうなどして空調運転を適切に行えなくなる可能性がある。よって、蒸発器9の温度が着霜抑制温度を下回ることがないように圧縮機8の運転を制御する必要がある。着霜抑制温度は、着霜を抑制可能な範囲で任意に設定可能な温度である。着霜抑制温度は、例えば水の凝固点である0℃よりもわずかに高い1℃に設定可能である。着霜抑制温度は、蒸発器9が適正に冷却性能を発揮可能な下限温度である。着霜抑制温度は、蒸発器9の形状や使用態様などによって所定の値を適宜設定可能である。着霜抑制温度の取得後、ステップS321に進む。
ステップS321では、蒸発器9の温度が着霜抑制温度に到達したか否かを判定する。蒸発器9の温度が着霜抑制温度に到達している場合には、蒸発器9が適正に使用される範囲内で最も冷えた状態にある。このため、蒸発器9による除湿が可能であると判断してステップS131に進んで内気モードでデフロスタ運転を行う。蒸発器9の温度が着霜抑制温度に到達していない場合には、蒸発器9が少なくとも適正に使用される範囲内で最も冷えた状態にはない。このため、蒸発器9による除湿の準備が整っていないと判断してステップS141に進んで外気モードでデフロスタ運転を行う。着霜抑制温度は、除湿温度の一例を提供する。
上述した実施形態によると、空調制御部80は、蒸発器温度センサ19で測定した蒸発器9の温度が取得した着霜抑制温度に到達している場合には、デフロスタ運転中に内気モードとすることを許可する。このため、蒸発器9が最も冷えた状態にあることから、蒸発器9による除湿が可能であるとみなして、デフロスタ運転中に内気モードとすることができる。したがって、蒸発器9の温度のみの情報からデフロスタ運転中に内気モードを許可するか否かを判断できる。よって、簡単な構成で安定した防曇性能と乗員の快適性を両立した車両用空調装置1を提供できる。
他の実施形態
空調制御部80は、上述した制御フローを複数備えていてもよい。例えば、外気温センサ71が正常に機能している場合には、第1実施形態に示す制御フローに基づいてデフロスタ運転中に内気モードを許可するか否かを判断する。一方、外気温センサ71が故障している場合には、第3実施形態に示す制御フローに基づいて外気温センサ71を用いることなくデフロスタ運転中に内気モードを許可するか否かを判断する。これによると、各種センサのいずれかに異常があった場合であっても、正常に機能しているセンサからの情報を用いてデフロスタ運転中に内気モードを許可するか否かの判断を行うことができる。
この明細書および図面等における開示は、例示された実施形態に制限されない。開示は、例示された実施形態と、それらに基づく当業者による変形態様を包含する。例えば、開示は、実施形態において示された部品および/または要素の組み合わせに限定されない。開示は、多様な組み合わせによって実施可能である。開示は、実施形態に追加可能な追加的な部分をもつことができる。開示は、実施形態の部品および/または要素が省略されたものを包含する。開示は、1つの実施形態と他の実施形態との間における部品および/または要素の置き換え、または組み合わせを包含する。開示される技術的範囲は、実施形態の記載に限定されない。開示されるいくつかの技術的範囲は、請求の範囲の記載によって示され、さらに請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内での全ての変更を含むものと解されるべきである。