JP2020059258A - 易開封性シーラントフィルムおよび包装体 - Google Patents
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Abstract
Description
例えば、市販品としては、シール層にポリプロピレン樹脂を主成分とし低密度ポリエチレン樹脂を配合したフィルム(例えば、特許文献1、特許文献2)や、シール層にエチレン・酢酸ビニル重合体とポリエチレン系樹脂と粘着性付与剤とを配合したフィルム(例えば、特許文献3)が提供されている。しかしながら、それらは何れも透明性が不十分であり、前者は、約160℃以上でのヒートシールが必要であったり、剥離機構がシール層内の凝集破壊であるため包装体の開封面に樹脂残りがあったりする不具合があった。また後者は、フィルムのブロッキングが起きやすいという不具合があった。
特許文献2 特開2006−256637号公報
特許文献3 特開2001−131302号公報
特許文献4 特開平1−157847号公報
特許文献5 特開平6−328639号公報
また、界面剥離タイプである上、剥離した面に樹脂残りが起き難く、更にフィルムの透明性が高いためフィルムの美観が良好であり、また、耐ブロッキング性が良好であるので、フィルム製造時におけるフィルム同士のブロッキングを防止でき、製造効率を向上させることができる。
易開封性の指標として用いる剥離強度は、シール強度と同義であり、開封性および密封シール性の尺度となり、また開封強度と呼称する場合がある。
数値範囲を「〜」で示した場合は、以上以下を意味する。
また、「ポリプロピレン系樹脂容器用」とは、特に形状は限定されないポリプロピレン系樹脂からなる容器の開口部周辺部、例えば、フランジ部にヒートシールすることで、本開示の易開封性シーラントフィルムを該容器の蓋材として用いることを意味する。
本開示の易開封性シーラントフィルム(以下、本開示のフィルム、本フィルムと称する場合がある)のシール層は、シングルサイト触媒を用いて製造されたポリエチレン系樹脂(A)とポリプロピレン系樹脂(B)を含有する。
本フィルムのシール層を構成するポリエチレン系樹脂(A)は、シングルサイト触媒を用いて製造される。シングルサイト触媒を用いて製造されるポリエチレン系樹脂は、分子量分布や組成分布が狭く、引張強度、衝撃強度が高く、低温シール性に優れる特徴を有する。分子量分布、つまり、数平均分子量に対する重量平均分子量の比(Mw/Mn)は、例えば、4.0以下が好ましく、3.5以下がより好ましい。組成分布は、例えば、短鎖分岐度(SCB)40以下が好ましく、30以下がより好ましく、20以下が更に好ましい。シングルサイト触媒の種類は特に限定されないが、代表的な例としてメタロセン触媒が挙げられる。以下、便宜的にシングルサイト触媒を用いて製造されたポリエチレン系樹脂を「M−PE」と記すことがある。
更に、ポリエチレン系樹脂(A)は、線状低密度ポリエチレンであることがポリプロピレン系樹脂容器との熱接着性(相溶性、融着性、密着性)が安定している点で好ましい。以下、便宜的にシングルサイト触媒を用いて製造された線状低密度ポリエチレン系樹脂を「M−LL」と記すことがある。
少なくとも2種類の樹脂(A)としては、例えば、メルトフローレート(MFR)10g/10分以上40g/10分未満の樹脂(A1)と、メルトフローレート(MFR)2.0g/10分以上10g/10分未満の樹脂(A2)の少なくとも両者を用いることが好ましい。
また、樹脂(A1)の(A2)に対するメルトフローレート比が5.0以上10.0以下であることが好ましい。樹脂(A1)のMFRの下限は、15g/10分以上が好ましく、20g/10分以上がより好ましく、また樹脂(A2)のMFRの上限は、8.0g/10分以下が好ましく、5.0g/10分以下がより好ましい。
本フィルムのシール層を構成するポリプロピレン系樹脂(B)は、特に限定されないが、例えば、プロピレン単独重合体、プロピレンとα−オレフィンとのランダム、ブロック、グラフトの各種共重合体、およびこれらの混合物が挙げられる。中でも、プロピレン−エチレンランダム共重合体が、ポリエチレン系樹脂(A)との混和性、低温シール性の点から好ましい。
ポリプロピレン系樹脂(B)のメルトフローレート(MFR)は、ポリエチレン系樹脂(A)のMFRと同等程度が好ましく、2.0〜40g/10分が好ましい。下限は5.0g/10分以上がより好ましく、上限は25g/10分以下がより好ましく、15g/10分以下が更に好ましい。2.0g/10分より低いとシール性(剥離強度)が強くなり過ぎてしまう。
ポリプロピレン系樹脂(B)の密度は、特に限定されないが、一般に920kg/m3以下が好ましく、910kg/m3以下がより好ましい。下限は特に限定されないが、一般に880kg/m3以上が好ましく、890kg/m3以上がより好ましい。
シール層を構成するポリエチレン系樹脂(A)とポリプロピレン系樹脂(B)との組成比は、両者の合計を100質量%とした場合に、樹脂(A)が100〜60質量%と、樹脂(B)が0〜40質量%とすることが好ましく、樹脂(A)が100〜80質量%と、樹脂(B)が0〜20質量%とすることがより好ましく、樹脂(A)が95〜85質量%と、樹脂(B)が5〜15質量%とすることが更に好ましい。
樹脂(A)を60質量%以上、樹脂(B)を40質量%以下とすると、耐ブロッキング性と、被着体であるポリプロピレン系樹脂に対して融着する接着点の確保の点で好ましく、また、中でも、樹脂(A)を100質量%、樹脂(B)を0質量%の場合は、低温シール性が得易い点で好ましい。樹脂(A)が60質量%未満で、樹脂(B)が40質量%超の場合は、低温シール性が得難い。
本フィルムの基材層は、ポリオレフィン樹脂で構成される。例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂が経済性の点で好ましい。
ポリエチレン系樹脂としては、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンが挙げられる。また、ポリプロピレン系樹脂としては、ホモポリプロピレン、プロピレンとα−オレフィンとのコポリマーが挙げられる。
本フィルムは、少なくとも基材層とシール層を有する共押出フィルムであればよく、他の層を1層以上有してもよい。例えば、他の層/基材層/シール層、他の層/他の層/基材層/シール層、基材層/他の層/シール層、などの構成が挙げられる。他の層を構成する樹脂としては、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、エチレン−ビニルアルコール共重合体などが挙げられる。
なお、本フィルムのシール層を構成する樹脂の100〜60質量%がポリエチレン系樹脂(A)であり、また特に930kg/m3以下の低密度ポリエチレン系樹脂であると、ポリプロピレン系樹脂を主成分とする場合に比べ、界面活性剤からなる防曇剤をシール層に混合した場合に防曇剤のシール層表面へのブリードアウトが起きやすく、フィルムへの防曇性の付与に好適である。
本フィルムは、シール層をポリプロピレン系樹脂からなる被着体と対向させてヒートシールし、剥離させる際の強度、すなわち剥離強度が5.0〜20.0N/15mm幅であることが好ましい。内容物を十分に密封するシール性としては、5.0N/15mm幅以上が好ましく、8.0N/15mm幅以上がより好ましい。一方、軽い力で開封できる易開封性としては20.0N/15mm幅以下が好ましく、18.0N/15mm幅以下がより好ましく、15.0N/15mm幅以下が更に好ましい。
本フィルムは耐ブロッキング性が良好であり、例えば、インフレーションフィルム成形において、チューブ状(円筒状)フィルムのシール層同士を内向きに対向させて折り畳んだ状態から両端を切り開いてフィルムを巻き取る工程での口開き(開口性)が良い。またインフレーションフィルム成形やT−ダイフィルム成形で巻き取ったロールが固着し難く、フィルムを巻き出し易い。
本フィルムは透明性が良好であり、例えば、ヘーズは20%以下が好ましく、15%以下がより好ましく、12%以下がさらに好ましく、10%以下が特に好ましい。ヘーズが小さく透明性が高いことでフィルムの美観が良く、また蓋材として積層体に印刷を施す場合に色合いに影響を及ぼし難い。
また、本フィルムのグロスは90%以上が好ましく、93%以上がより好ましく、95%以上が更に好ましい。グロス値が高いほど、フィルムの光沢性が良く望ましい。
本フィルムは、少なくとも基材層とシール層を有し、公知の共押出法で製造できる。すなわち、基材層、シール層を構成する各樹脂組成物をTダイ法やインフレーション法の共押出機でフィルム製膜するとよい。なお、各樹脂や添加剤は、所定の組成比率で各層押出機に入れて樹脂組成物としてもよいし、予め各樹脂や添加剤を溶融混練して樹脂組成物を作製してから各層押出機に入れてもよい。
なお、本フィルムのシール層の樹脂組成において、MFRの高いポリエチレン系樹脂(A1)の組成比率が高い場合は、樹脂の溶融押出工程での樹脂圧が低めになる場合があり、その場合は押出温度をより低温に設定する、MFRの低い樹脂を配合する等してフィルム製膜するとよい。
本フィルムを単独で、または本フィルムと他のフィルムとを積層して蓋材として用い、ポリプロピレン系樹脂容器の開口部周縁部(フランジ部)とヒートシールし、包装体を作製することができる。ポリプロピレン系樹脂容器の形状や製法は限定されないが、例えば、カップ、トレー、深絞り成形体などが挙げられ、公知の方法で製造できる。また、本フィルムを用いた蓋材とのヒートシールは公知の方法、条件でシールすることが可能であり、ヒートシール後のシール箇所が皺や糸引きなどの外観不良が発生しない条件を選択し、できるだけ低温、短時間でヒートシールすることが生産効率の点で望ましい。
上述の各種樹脂およびフィルムの物性測定は、以下の方法で行う。
メルトフローレート(MFR)は、JIS K7210−1;2014に準拠して測定する。その試験条件は、JIS K6922−1、JIS K6921−1に準ずる。試験温度はポリエチレン190℃、ポリプロピレン系樹脂230℃、試験荷重はポリエチレン樹脂、ポリプロピレン系樹脂ともに2.16kgである。
密度の測定は、JIS K7112:1999に準拠して測定する。
融点の測定は、JIS K7121:2012に準拠して測定する。
剥離強度の測定は、実施例に示す方法で行う。
・PE1:メタロセン触媒を用いて製造した線状ポリエチレン系樹脂、密度925kg/m3、融点121℃、MFR1.9g/10分。
<シール層を構成する樹脂>
・PE2(A1):メタロセン触媒を用いて製造した線状ポリエチレン樹脂、密度880kg/m3、融点58℃、MFR30g/10分。
・PE3(A2):メタロセン触媒を用いて製造した線状ポリエチレン樹脂、密度898kg/m3、融点90℃、MFR3.5g/10分。
・PP1(B):メタロセン触媒を用いて製造したプロピレン−エチレンランダム共重合体、密度900kg/m3、融点125℃、MFR7.0g/10分。
基材層としてPE1を用い、シール層にPE2、PE3、PP1を表1に示す樹脂組成として、表1に示す基材層およびシール層の層厚とした2種2層押出フィルム(総厚30μm)を、空冷インフレーション共押出フィルム製膜機を用いて作製した。下記評価を行い、結果を表2に示す。なお、表中「−」は未測定を意味する。
作製した共押出フィルムのシール層に、被着体(ポリプロピレン系樹脂成形体)として300μm厚のプロピレン単独重合体からなる無延伸シートを対向させ、表2に示した110〜180℃の所定のシール温度で、シール圧0.2MPa、シール時間1秒、シール幅5mmの条件でテスター産業(株)製ヒートシールテスターを用いてヒートシールし、室温下で保管した。その後、(株)オリエンテック製引張試験機テンシロンを用い、剥離角度180°、引張速度300mm/分の条件で剥離試験を行った。また、剥離後の剥離面について、被着体側の剥離面に剥離痕があるか否か、フィルム側の剥離面が白化しているか否かの観点で目視観察し、界面剥離状態として、被着体側に剥離痕が無く且つフィルム側が白化していない場合を「接着不十分:×」、被着体側に剥離痕が無く且つフィルム側が白化している場合を「良:○」、被着体側に剥離痕がある場合を「不良:△」と判断した。
ヘーズ(曇り度)は、日本電色工業(株)製ヘーズメーターを用い、JIS K7136に準じて測定した。
グロス(光沢度)は、(株)村上色彩技術研究所製光沢計を用い、フィルムのシール層面を受光角60度の条件で測定した。
ブロッキング性は、インフレーションフィルムの製膜工程において、チューブ状態から切り開いてフィルムに巻き取る際のチューブの開口のし易さ(開口性)の良し悪し(〇、×)を判断した。
低温シール性について、実施例1〜5は何れもシール温度130℃以上から5.0N/15mm幅以上の剥離強度(すなわちシール強度)を得ることができた。更には実施例1では120℃において、実施例5では110℃、120℃において5.0N/15mm幅以上を得ることができた。また、実施例1〜5は何れも140℃において8.0N/15mm幅以上の剥離強度を得ることができ、十分な低温シール性を有した。他方、比較例3は140℃において8.0N/15mm幅未満であり、低温シール性が不十分であった。
また、界面剥離タイプである上、剥離した面に樹脂残りが起き難く、更にフィルムの透明性が高いためフィルムの美観が良好であり、また、耐ブロッキング性が良好であるので、フィルム製造時におけるフィルム同士のブロッキングを防止でき、製造効率を向上することができる。
このような有用性の高いフィルムを提供できる。
Claims (7)
- 少なくとも基材層とシール層とを有する共押出フィルムにおいて、
前記基材層は、ポリオレフィン樹脂で構成され、
前記シール層は、シングルサイト触媒を用いて製造された密度930kg/m3以下の線状ポリエチレン系樹脂(A)100〜60質量%と、ポリプロピレン系樹脂(B)0〜40質量%の樹脂組成物で構成され、前記樹脂(A)は少なくとも2種類からなることを特徴とするポリプロピレン系樹脂容器用の易開封性シーラントフィルム。 - 前記ポリエチレン系樹脂(A)は、少なくとも、
メルトフローレート10g/10分以上40g/10分以下の樹脂(A1)と、
メルトフローレート2.0g/10分以上10g/10分未満の樹脂(A2)とを含み、
樹脂(A1)の樹脂(A2)に対するメルトフローレート比が5.0以上10.0以下である請求項1に記載の易開封性シーラントフィルム。 - 前記樹脂(A1)と前記樹脂(A2)の合計を100質量%としたとき、樹脂(A1)が70〜30質量%、樹脂(A2)が30〜70質量%である請求項1または2に記載の易開封性シーラントフィルム。
- 前記ポリプロピレン系樹脂(B)が、シングルサイト触媒を用いて製造されたポリプロピレン系樹脂である請求項1〜3の何れかに記載の易開封性シーラントフィルム。
- 易開封性シーラントフィルムの前記シール層側をポリプロピレン系樹脂成形体とヒートシールし剥離させた場合に、剥離強度5.0〜20.0N/15mm幅でシール層と前記ポリプロピレン系樹脂成形体の表面との界面で剥離する請求項1〜4の何れかに記載の易開封性シーラントフィルム。
- ヘーズが20.0%以下である請求項1〜5の何れかに記載の易開封性シーラントフィルム。
- 請求項1〜6の何れかの易開封性シーラントフィルムを用いた包装体。
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