以下、本発明の実施形態に係る保護フィルム付き導電性フィルムおよびその製造方法について、図面を参照しながら説明する。図1は本実施形態に係る保護フィルム付き導電性フィルムの概略構成図であり、図2は図1に示される保護フィルム付き導電性フィルムの一部の拡大図であり、図3は連続折り畳み試験の様子を模式的に示した図である。図4〜6は本実施形態に係る保護フィルム付き導電性フィルムの製造工程を模式的に示した図である。
<<<保護フィルム付き導電性フィルム>>>
図1に示される保護フィルム付き導電性フィルム10は、導電性フィルム20と、導電性フィルム20の表面20Aに剥離可能に貼り付けられた保護フィルム30とを備えている。
<<導電性フィルム>>
導電性フィルム20は、光透過性基材21と、光透過性基材の21の第1の面21A側に設けられた樹脂層22と、光透過性基材21における第1の面21Aとは反対側の第2の面21Bに直接設けられた導電部23とを備えている。本明細書における「光透過性」とは、光を透過させる性質を意味する。また「光透過性」とは、必ずしも透明である必要はなく、半透明であってもよい。導電部23は、パターニングされる前の状態であり、層状となっている。本明細書における「導電部」とは、表面から導通可能な部分を意味し、層状の形態および層状以外の形態の両方を含む概念である。導電性フィルム20は、樹脂層22側に導電部を備えていないが、導電部を備えていてもよい。
導電性フィルム20の表面20Aは、導電部23の表面23Aから構成されており、導電性フィルム20の裏面20Bは、樹脂層22の表面22Aから構成されている。以下、導電性フィルム20の性質や物性値等について説明するが、導電性フィルム20の性質や物性値等は、保護フィルム30を剥離した導電性フィルム20単体の状態での性質や物性値である。
導電性フィルム20は、フレキシブル性を有していることが好ましい。導電性フィルム20は、フレキシブル性を有している場合、導電性フィルム20に対し樹脂層22が内側(導電部23が外側)となり、かつ導電性フィルム20の対向する辺部の間隔が4mmとなるように10万回繰り返し180°折り畳む連続折り畳み試験を行った場合であっても、連続折り畳み試験前後の導電性フィルム20の導電部23の後述する電気抵抗値比が3以下であることが好ましい。導電性フィルムに対し連続折り畳み試験を行った場合に、連続折り畳み試験前後の導電性フィルムの導電部の電気抵抗値比が3を超えていると、導電性フィルムに割れ等が生じているおそれがあるので、導電性フィルムのフレキシブル性が不充分となる。ここで、連続折り畳み試験によって、導電性フィルムに割れ等が発生すると、導電性が低下してしまうので、連続折り畳み試験後の導電性フィルムの導電部の電気抵抗値が連続折り畳み試験前の導電性フィルムの導電部の電気抵抗値よりも上昇してしまう。このため、連続折り畳み試験前後の導電性フィルムの導電部の電気抵抗値を求めることにより、導電性フィルムに割れ等が生じているか否かが判断できる。
上記連続折り畳み試験の折り畳み回数が20万回であっても、連続折り畳み試験前後の導電性フィルム20の導電部23の電気抵抗値比が3以下であることがより好ましい。また、上記連続折り畳み試験の折り畳み回数が100万回であっても、連続折り畳み試験前後の導電性フィルム20の導電部23の電気抵抗値比が3以下であることがさらに好ましい。
上記連続折り畳み試験の折り畳み回数が10万回、20万回、100万回のいずれの場合であっても、連続折り畳み試験前後の導電性フィルム20の導電部23の電気抵抗値比は、それぞれ1.5以下であることがより好ましい。
上記連続折り畳み試験は、樹脂層22が内側(導電部23が外側)となるように導電性フィルム20を折り畳んでいるが、導電部23が内側(樹脂層22が外側)となるように導電性フィルム20を折り畳んでもよい。この場合であっても、連続折り畳み試験前後の導電性フィルム20の導電部23の電気抵抗値比が3以下であることが好ましい。
導電性フィルム20の連続折り畳み試験は、導電性フィルム20から所定の大きさ(例えば、縦125mm×横50mmの長方形形状)に切り出したサンプルを用いて行うことができる。なお、縦125mm×50mmの大きさにサンプルを切り出せない場合には、例えば、縦110mm×横50mmの大きさにサンプルを切り出してもよい。具体的には、まず、連続折り畳み試験前の導電性フィルム20から所定の大きさのサンプルを切り出す。そして、切り出したサンプルの長手方向の導電部23の両端部(例えば、各縦10mm×横50mmの部分)および導電部23の両端部(例えば、各縦10mm×横50mmの部分)上に、電気抵抗値の測定距離が変動するのを防ぐために、銀ペースト(製品名「DW−520H−14」、東洋紡株式会社製)をそれぞれ塗布し、130℃で30分加熱して、サンプルの導電部上の両端部に硬化した銀ペーストを設け、その状態で、サンプルの導電部の電気抵抗値をテスター(製品名「Digital MΩ Hitester 3454-11」、日置電機株式会社製)を用いて、それぞれ測定する。導電部23の電気抵抗値の測定の際には、テスターのプローブ端子を、導電部23の両端部に設けられた硬化した銀ペーストのそれぞれに接触させる。連続折り畳み試験前のサンプルにおいて、導電部23の電気抵抗値を測定した後、サンプルに対し、連続折り畳み試験を行う。
連続折り畳み試験は、以下のようにして行われる。図3(A)に示すように連続折り畳み試験においては、まず、サンプルSの辺部S1と、辺部S1と対向する辺部S2とを、平行に配置された固定部40でそれぞれ固定する。また、図3(A)に示すように、固定部40は水平方向にスライド移動可能になっている。
次に、図3(B)に示すように、固定部40を互いに近接するように移動させることで、導電部23が内側となり、かつサンプルSの中央部S3で折り畳むように変形させ、更に、図3(C)に示すように、サンプルSの固定部40で固定された対向する2つの辺部S1、S2の間隔が4mmとなる位置まで固定部40を移動させた後、固定部40を逆方向に移動させてサンプルSの変形を解消させる。
図3(A)〜(C)に示すように固定部40を移動させることで、導電部23が内側となるようにサンプルSを中央部S3で180°折り畳むことができる。また、サンプルSの屈曲部S4が固定部40の下端からはみ出さないように連続折り畳み試験を行い、かつ固定部40が最も接近したときの間隔を4mmに制御することで、サンプルSの対向する2つの辺部S1、S2の間隔を4mmにできる。この場合、屈曲部S4の外径を6mmとみなす。なお、サンプルSの厚みは、固定部40の間隔(4mm)と比較して充分に小さな値であるため、サンプルSの連続折り畳み試験の結果は、サンプルSの厚みの違いによる影響は受けないとみなすことができる。
連続折り畳み試験を行った後、連続折り畳み試験後のサンプルにおいて、連続折り畳み試験前のサンプルと同様にして、導電部23の電気抵抗値を測定する。そして、連続折り畳み試験前のサンプルの導電部23の電気抵抗値に対する連続折り畳み試験後のサンプルSの導電部23の電気抵抗値の比(連続折り畳み試験後のサンプルSの導電部23の電気抵抗値/連続折り畳み試験前のサンプルSの導電部23の電気抵抗値)を求める。なお、電気抵抗値比は、3回測定して得られた値の算術平均値とする。
導電性フィルム20は、ヘイズ値(全ヘイズ値)が5%以下となっていることが好ましい。導電性フィルム20のヘイズ値が5%以下であれば、充分な光学的性能を得ることができる。ヘイズ値は、JIS K7136:2000に準拠して、ヘイズメーター(製品名「HM−150」、村上色彩技術研究所製)を用いて、測定することができる。ヘイズ値は、導電性フィルム全体で測定したときの値であり、また縦50mm×横100mmの大きさに切り出した後、カールや皺がなく、かつ指紋や埃等がない状態で設置し、導電性フィルム1枚に対して3回測定して得られた値の算術平均値とする。本明細書における「3回測定する」とは、同じ場所を3回測定するのではなく、異なる3箇所を測定することを意味するものとする。導電性フィルム20は、目視した表面20Aや裏面20Bは平坦であり、かつ導電部23等の積層する層も平坦であり、また厚みのばらつきも厚みの平均値の±10%の範囲内、好ましくは±5%の範囲内に収まる。したがって、切り出した導電性フィルムの異なる3箇所でヘイズ値を測定することで、おおよその導電性フィルムの面内全体のヘイズ値の平均値が得られると考えられる。なお、導電性フィルムを上記大きさに切り出せない場合には、例えば、HM−150は測定する際の入口開口が20mmφであるので、直径21mm以上となるような大きさのサンプルが必要になる。このため、22mm×22mm以上の大きさに導電性フィルムを適宜切り出してもよい。導電性フィルムの大きさが小さい場合は、光源スポットが外れない範囲で少しずつずらす、または角度を変えるなどして測定点を3箇所にする。導電性フィルム20のヘイズ値は、3%以下、2%以下、1.5%以下、1.2%以下、1.1%以下の順にさらに好ましい(数値が小さいほど好ましい)。得られるヘイズ値のばらつきは、測定対象が1m×3000mと長尺であっても、5インチのスマートフォン程度の大きさであっても、ヘイズ値の平均値の±30%以内であり、上記好ましい範囲になる場合には、低ヘイズおよび低抵抗値がより得られやすい。なお、導電性フィルム20の導電部23は、パターニングされていないが、ヘイズ値は、パターニングされた導電部を備える導電性フィルムであっても5%以下であり、また3%以下、2%以下、1.5%以下、1.2%以下、1.1%以下の順に好ましい(数値が小さいほど好ましい)。なお、導電性フィルムを搭載したタッチパネルセンサーなどの複数層が重なった積層体全体においても、上記と同じのヘイズ値であることが好ましい。
導電性フィルム20は、全光線透過率が80%以上であることが好ましい。導電性フィルムの全光線透過率が80%以上であれば、光学的性能が充分となる。全光線透過率は、JIS K7361−1:1997に準拠して、ヘイズメーター(製品名「HM−150」、村上色彩技術研究所製)を用いて、測定することができる。全光線透過率は、導電性フィルム全体で測定したときの値であり、また縦50mm×横100mmの大きさに切り出した後、カールや皺がなく、かつ指紋や埃等がない状態で設置し、導電性フィルム1枚に対して3回測定して得られた値の算術平均値とする。導電性フィルム20は、目視した表面20Aや裏面20Bは平坦であり、かつ導電部23等の積層する層も平坦であり、また厚みのばらつきも厚みの平均値の±10%の範囲内、好ましくは±5%の範囲内に収まる。したがって、切り出した導電性フィルムの異なる3箇所の全光線透過率を測定することで、おおよその導電性フィルムの面内全体の全光線透過率の平均値が得られると考えられる。なお、導電性フィルムを上記大きさに切り出せない場合には、例えば、HM−150は測定する際の入口開口が20mmφであるので、直径21mm以上となるような大きさのサンプルが必要になる。このため、22mm×22mm以上の大きさに導電性フィルムを適宜切り出してもよい。導電性フィルムの大きさが小さい場合は、光源スポットが外れない範囲で少しずつずらす、または角度を変えるなどして測定点を3箇所にする。導電性フィルム10の全光線透過率は、85%以上、88%以上、89%以上の順にさらに好ましい(数値が大きいほど好ましい)。なお、導電性フィルム20の導電部23は、パターニングされていないが、全光線透過率は、パターニングされた導電部を備える導電性フィルムであっても80%以上、85%以上、88%以上、89%以上の順に好ましい(数値が大きいほど好ましい)。得られる全光線透過率のばらつきは、測定対象が1m×3000mと長尺であっても、5インチのスマートフォン程度の大きさであっても、全光線透過率の平均値の±10%以内であり、上記好ましい範囲になる場合には、低ヘイズおよび低抵抗値がより得られやすい。なお、導電性フィルムを搭載したタッチパネルセンサーなどの複数層が重なった積層体全体においても、上記と同じの全光線透過率であることが好ましい。
導電性フィルム20の裏面20Bは、JIS K5600−5−4:1999で規定される鉛筆硬度試験でH以上の鉛筆硬度を有することが好ましい。導電性フィルム20の裏面20Bの鉛筆硬度がH以上であることにより、導電性フィルム20が硬いので、耐久性を向上させることができる。鉛筆硬度試験においては、導電性フィルム20を縦50mm×横100mmの大きさに切り出し、樹脂層22が上側になるようにガラス板上に折れやシワがないようニチバン株式会社製のセロテープ(登録商標)で固定し、鉛筆に750gの荷重を加えるとともに、ひっかき速度を1mm/秒とした状態で行う。導電性フィルム20の裏面20Bの鉛筆硬度は、鉛筆硬度試験において樹脂層22の表面22Aに傷が付かなかった最も高い硬度とした。なお、鉛筆硬度の測定の際には、硬度が異なる鉛筆を複数本用いて行うが、鉛筆1本につき5回鉛筆硬度試験を行い、5回のうち4回以上樹脂層22の表面22Aに傷が付かなかった場合には、この硬度の鉛筆においては樹脂層22の表面22Aに傷が付かなかったと判断する。上記傷は、鉛筆硬度試験を行った導電性フィルム20の表面を蛍光灯下で透過観察して視認されるものを指す。
導電性フィルム20は、イエローインデックス(YI)が15以下であることが好ましい。導電性フィルム20のYIが15以下であれば、導電性フィルム20の黄色味を抑制でき、透明性が求められる用途に適用できる。イエローインデックス(YI)は、分光光度計(製品名「UV−3100PC」、株式会社島津製作所製、光源:タングステンランプおよび重水素ランプ)内に50mm×100mmの大きさに切り出した導電性フィルムの導電層側が光源側となるように配置した状態で測定した導電性フィルムの波長300nm〜780nmの透過率からJIS Z8722:2009に記載された演算式に従って色度三刺激値X、Y、Zを計算し、三刺激値X、Y、ZからASTM D1925:1962に記載された演算式に従って算出された値である。導電性フィルム20のイエローインデックス(YI)の上限は、10以下、7以下、3以下であることがより好ましい(数値が小さいほど好ましい)。上記イエローインデックス(YI)は、導電性フィルム1枚に対して3回測定し、3回測定して得られた値の算術平均値とする。なお、UV−3100PCにおいては、イエローインデックスは、UV−3100PCに接続されたモニター上で、上記透過率の測定データを読み込み、計算項目にて「YI」の項目にチェックを入れることによって算出される。波長300nm〜780nmの透過率の測定は、以下の条件で、波長300nm〜780nmにおいてそれぞれ前後1nmの間で最低5ポイント分の透過率を測定し、その平均値を算出することによって求めるものとする。また、分光透過率のスペクトルにうねりが出るようであれば、デルタ5.0nmでスムージング処理を行ってもよい。なお、上記大きさが切り出せない場合は、3cm角以上であればよい。
(測定条件)
・波長域:300nm〜780nm
・スキャン速度:高速
・スリット幅:2.0
・サンプリング間隔:オート(0.5nm間隔)
・照明:C
・光源:D2およびWI
・視野:2°
・光源切替波長:360nm
・S/R切替:標準
・検出器:PM
・オートゼロ:ベースラインのスキャン後550nmにて実施
導電性フィルム20の厚みは、25μm以上500μm以下であることが好ましい。導電性フィルム20の厚みが、25μm以上であれば、ハンドリング性が良好となり、また100μm以下であれば、薄型化の観点から良好である。保護フィルム付き導電性フィルム10の厚みの下限は、40μm以上であることがより好ましく、上限は250μm以下、100μm以下、70μm以下であることがより好ましい(数値が小さいほど好ましい)。導電性フィルムの厚みは、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて撮影された導電性フィルムの断面写真からランダムに10箇所厚みを測定し、測定された厚みの平均値として求めるものとする。
導電性フィルム20の用途は、特に限定されず、例えば、透明導電膜が用いられる様々な用途(例えば、センサー用途)で用いてもよい。また、本発明の導電性フィルムは、画像表示装置(スマートフォン、タブレット端末、ウェアラブル端末、パーソナルコンピュータ、テレビジョン、デジタルサイネージ、パブリックインフォメーションディスプレイ(PID)、車載ディスプレイ等を含む)用途や車載(電車や車両建設用機械等、あらゆる車を含む)用途に適している。導電性フィルム20を車載用途のセンサーとして用いる場合、例えば、ハンドルやシートなど人が触れる部分に配置されるセンサーが挙げられる。また、導電性フィルム20は、フォールダブル、ローラブルといったフレキシブル性を必要とする用途にも好ましい。さらに、住宅や車(電車や車両建設用機械等、あらゆる車を含む)で用いられる電化製品や窓に用いてもよい。特に、本発明の導電性フィルムは、透明性を重視される部分に好適に用いることができる。また、本発明の導電性フィルムは、透明性等の技術的観点のみならず、意匠性やデザイン性が求められる電化製品にも好適に用いることができる。本発明の導電性フィルムの具体的な用途としては、例えば、デフロスター、アンテナ、太陽電池、オーディオシステム、スピーカー、扇風機、電子黒板や半導体用のキャリアフィルム等が挙げられる。なお、導電性フィルム20は、保護フィルム30を剥離した状態で用いられる。導電性フィルム20の使用時の形状は、用途に応じて適宜設計されるので、特に限定されないが、例えば、曲面状になっていてもよい。
導電性フィルムは、所望の大きさにカットされていてもよいが、ロール状であってもよい。本発明の導電性フィルムが所望の大きさにカットされている場合、導電性フィルムの大きさは、特に制限されず、画像表示装置の表示面の大きさに応じて適宜決定される。具体的には、導電性フィルムの大きさは、例えば、5インチ以上500インチ以下となっていてもよい。本明細書における「インチ」とは、導電性フィルムが四角形状である場合には対角線の長さを意味し、円形状である場合には直径を意味し、楕円形状である場合には、短径と長径の和の平均値を意味するものとする。ここで、導電性フィルムが四角形状である場合、上記インチを求める際の導電性フィルムの縦横比は、画像表示装置の表示画面として問題がなければ特に限定されない。例えば、縦:横=1:1、4:3、16:10、16:9、2:1等が挙げられる。ただし、特に、デザイン性に富む車載用途やデジタルサイネージにおいては、このような縦横比に限定されない。また、導電性フィルム10の大きさが大きい場合には、任意の位置からA4サイズ(210mm×297mm)やA5サイズ(148mm×210mm)など適宜扱いやすい大きさに切り出した後、各測定項目の大きさに切り出すものとする。
<<光透過性基材>>
光透過性基材21は、基材本体21Cと、基材本体21Cの樹脂層22側の面に形成された下地層21Dとを備えている。なお、光透過性基材21は、基材本体21Cの樹脂層22側の面に下地層21Dを備えているが、下地層21Dを備えていなくともよい。この場合、光透過性基材は、基材本体のみから構成される。また基材本体の樹脂層側の面のみならず導電部側の面の両方に下地層を備えていてもよい。ただし、導電性繊維および分散媒を含む導電性繊維含有組成物を用いて、下地層の表面に導電部を形成すると、分散系の種類によって程度は異なるが、分散媒が下地層に浸透することによって導電性繊維も下地層中に入り込んでしてしまい、表面抵抗値が上昇してしまうおそれがあるので、基材本体における導電部側には下地層を備えず、導電部は基材本体に直接設けられていることが好ましい。
光透過性基材21の厚みは、特に限定されないが、3μm以上500μm以下とすることが可能であり、光透過性基材21の厚みの下限はハンドリング性等の観点から10μm以上、20μm以上がより好ましい(数値が大きいほど好ましい)。光透過性基材21の厚みの上限は薄膜化の観点から250μm以下、100μm以下、80μm以下、60μm以下、40μm以下であることがより好ましい(数値が小さいほど好ましい)。光透過性基材の厚みは、後述する導電部の膜厚の測定方法と同様の方法により測定することができる。
<基材本体>
基材本体21Cとしては、光透過性を有する樹脂からなる基材が挙げられる。このような樹脂としては、光透過性を有すれば特に限定されないが、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアクリレート系樹脂、ポリエステル系樹脂、芳香族ポリエーテルケトン系樹脂、ポリエーテルサルフォン系樹脂、アセチルセルロース系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、またはこれらの樹脂を2種以上混合した混合物等が挙げられる。基材本体は、樹脂層等をコーティングする際にコーティング装置に触れるので、傷が付きやすいが、ポリエステル系樹脂からなる基材本体は、コーティング装置に触れても傷が付きにくいため、ヘイズ値の上昇を抑制できる点、および耐熱性、バリア性、耐水性についてもポリエステル系樹脂以外の光透過性樹脂からなる基材本体よりも優れている点から、これらの中でも、ポリエステル系樹脂が好ましい。
導電性フィルムとして、折り畳み可能な導電性フィルムを得る場合には、基材本体21Cを構成する樹脂としては、折り畳み性が良好であることから、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、またはこれらの混合物を用いることが好ましい。また、これらの中でも、優れた折り畳み性を有するだけでなく、優れた硬度及び透明性をも有し、また、耐熱性にも優れ、焼成することにより、更に優れた硬度及び透明性を付与することもできることから、ポリイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、またはこれらの混合物が好ましい。
ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ポリオレフィン基材等が挙げられる。環状ポリオレフィン系樹脂としては、例えばノルボルネン骨格を有するものが挙げられる。
ポリカーボネート系樹脂としては、例えば、ビスフェノール類(ビスフェノールA等)をベースとする芳香族ポリカーボネート、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート等の脂肪族ポリカーボネート等が挙げられる。
ポリアクリレート系樹脂としては、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸ブチル共重合体等が挙げられる。
ポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)の少なくとも1種が挙げられる。
芳香族ポリエーテルケトン系樹脂としては、例えば、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等が挙げられる。
アセチルセルロース系樹脂としては、例えば、トリアセチルセルロース(TAC)、ジアセチルセルロースが挙げられる。トリアセチルセルロースは、可視光域380〜780nmにおいて、平均光透過率を50%以上とすることが可能な樹脂である。トリアセチルセルロースの平均光透過率は70%以上、更に85%以上であることが好ましい。
なお、トリアセチルセルロースとしては、純粋なトリアセチルセルロース以外に、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートの如くセルロースとエステルを形成する脂肪酸として酢酸以外の成分も併用した物であってもよい。また、これらトリアセチルセルロース系樹脂には、必要に応じて、ジアセチルセルロース等の他のセルロース低級脂肪酸エステル、或いは可塑剤、紫外線吸收剤、易滑剤等の各種添加剤が添加されていてもよい。
ポリイミド系樹脂は、その一部にポリアミド構造を含んでいても良い。ポリアミド系樹脂は、脂肪族ポリアミドのみならず、芳香族ポリアミド(アラミド)を含む概念である。ポリイミド系樹脂からなる基材およびポリアミド系樹脂からなる基材は、市販のものを用いても良い。ポリイミド系樹脂からなる基材の市販品としては、例えば、三菱ガス化学株式会社製のネオプリム等が挙げられ、ポリアミド系樹脂からなる基材の市販品としては、例えば、東レ株式会社製のミクトロン等が挙げられる。
基材本体21Cの表面は、接着性向上のために、コロナ放電処理、酸化処理等の物理的な処理が表面に施されたものであってもよい。
<下地層>
下地層21Dは、他の層との接着性を向上させる機能、巻き取り時の貼り付きを防止する機能、および/または他の層を形成する塗布液のはじきを抑制する機能を有する層である。光透過性基材が下地層を有しているか否かは、走査型電子顕微鏡(SEM)、走査透過型電子顕微鏡(STEM)、または透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、1000〜50万倍、好ましくは2.5万倍〜5万倍にて光透過性基材と樹脂層の界面周辺および光透過性基材と導電部の界面周辺の断面を観察することにより確認することができる。なお、下地層には、巻き取り時の貼り付き防止のために易滑剤等の粒子を含むことがあるので、光透過性基材と樹脂層の間に粒子が存在することでも、この層が下地層であると判断できる。
下地層21Dの膜厚は、10nm以上1μm以下であることが好ましい。下地層21Dの膜厚が10nm以上であれば、下地層21Dとしての機能が充分に発揮され、また下地層21Dの膜厚が1μm以下であれば、光学的に影響を及ぼすおそれもない。下地層の膜厚は、走査型電子顕微鏡(SEM)、走査透過型電子顕微鏡(STEM)、または透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて1000〜50万倍、好ましくは2.5万倍〜5万倍にて撮影された下地層の断面写真からランダムに10箇所厚みを測定し、測定された10箇所の厚みの算術平均値とする。下地層21Dの膜厚の下限は、30nm以上であることがより好ましく、上限は150nm以下であることがより好ましい。下地層の膜厚は、導電部23の膜厚と同様の方法によっても測定することができる。
下地層21Dは、例えば、アンカー剤やプライマー剤を含んでいる。アンカー剤やプライマー剤としては、例えば、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、エチレンと酢酸ビニルまたはアクリル酸などとの共重合体、エチレンとスチレンおよび/またはブタジエンなどとの共重合体、オレフィン樹脂などの熱可塑性樹脂および/またはその変性樹脂、電離放射線重合性化合物の重合体、および熱重合性化合物の重合体等の少なくともいずれかを用いることが可能である。
下地層21Dは、上記したように巻き取り時の貼り付き防止のために、易滑剤等の粒子を含んでいてもよい。粒子としては、シリカ粒子等が挙げられる。
<<樹脂層>>
樹脂層22は、下地層21Dに隣接している。樹脂層22を下地層21Dに隣接させることにより、樹脂層22と光透過性基材21との密着性を向上させることができる。本明細書における「樹脂層」とは、少なくとも樹脂を含む層である。樹脂層22は、ハードコート層であることが好ましい。本明細書における「ハードコート層」とは、光透過性を有し、かつ光透過性基材よりも硬い層を意味するものとする。具体的には、樹脂層22がハードコート層である場合、樹脂層22のマルテンス硬度は、光透過性基材21のマルテンス硬度よりも高くなっている。樹脂層のマルテンス硬度は、微小硬さ試験機(製品名「ピコデンター(PICODENTOR) HM500」、フィッシャー・インスツルメント社製、ISO14577−1、ASTM E2546準拠)測定サンプルを用いて、測定する。具体的には、まず1mm×10mmに切り出した保護フィルム付き導電性フィルムを包埋樹脂によって包埋したブロックを作製し、このブロックから一般的な切片作製方法によって穴等がない均一な、厚さ70nm以上100nm以下の切片を切り出す。切片の作製には、「ウルトラミクロトーム EM UC7」(ライカ マイクロシステムズ株式会社)を用いる。そして、この穴等がない均一な切片が切り出された残りのブロックを測定用サンプルとする。そして、この測定用サンプルを除振台に平行に設置した微小硬さ試験機の測定ステージに固定する。測定用サンプルを微小硬さ試験機の測定ステージに固定した後、以下の測定条件で樹脂層の断面の押込み量100nm位置のマルテンス硬度を測定する。マルテンス硬度は、測定用サンプルの樹脂層の断面中央付近の任意の3点を測定し、得られた3点の硬度の算術平均値とする。なお、マルテンス硬度を算出する際には、ピコデンター HM500で測定したい硬度種類として「HM」(マルテンス硬度)を選択することで自動算出される。光透過性基材のマルテンス硬度も樹脂層のマルテンス硬度と同様の方法によって測定することができる。
(測定条件)
・圧子形状:ビッカース(四角錐ダイヤモンド圧子)(先端部分の対面角136°の正四角錐)
・荷重制御方式:最大荷重40mNまで
・荷重の増加時間:20秒
・クリープ時間:5秒
・荷重の除去時間:20秒
・押込み量:100nm
・測定時の温度:25℃
・測定時の湿度:50%
測定のプロファイルは、20秒かけて、0mNから40mNまで荷重を負荷し、5秒間40mNを保持し、その後20秒かけて40mNから0mNへ戻すものとする。
樹脂層22の膜厚は0.5μm以上15μm以下であることが好ましい。樹脂層22の膜厚が0.5μm以上であれば、所望の硬度を得ることができ、また樹脂層22の膜厚が15μm以下であれば、導電性フィルム20の薄型化を図ることができる。樹脂層22の膜厚は、光透過性基材21の厚みと同様の方法によって測定することができる。樹脂層22の膜厚の下限は、カールの発生を抑制する観点から、1μm以上、1.5μm以上、2μm以上の順にさらに好ましい(数値が大きいほど好ましい)。また、樹脂層22の膜厚の上限は、樹脂層22の割れを抑制する観点から、12μm以下、10μm以下、7μm以下、5μm以下の順にさらに好ましい(数値が小さいほど好ましい)。また、樹脂層22の薄膜化を図る一方で、カールの発生を抑制する観点から、樹脂層22の膜厚は0.5μm以上10μm以下であることがさらに好ましい。
樹脂層22は、少なくとも樹脂から構成することが可能である。なお、樹脂層22は、樹脂の他に、無機粒子、有機粒子およびレベリング剤を含んでいてもよい。
<樹脂>
樹脂層22を構成する樹脂としては、重合性化合物の重合体(硬化物、架橋物)を含むものが挙げられる。樹脂は、重合性化合物の重合体の他、溶剤乾燥型樹脂を含んでいてもよい。重合性化合物としては、電離放射線重合性化合物および/または熱重合性化合物が挙げられる。
電離放射線重合性化合物は、1分子中に電離放射線重合性官能基を少なくとも1つ有する化合物である。本明細書における「電離放射線重合性官能基」とは、電離放射線照射により重合反応し得る官能基である。電離放射線重合性官能基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基等のエチレン性不飽和基が挙げられる。なお、「(メタ)アクリロイル基」とは、「アクリロイル基」および「メタクリロイル基」の両方を含む意味である。また、電離放射線重合性化合物を重合する際に照射される電離放射線としては、可視光線、紫外線、X線、電子線、α線、β線、およびγ線が挙げられる。
電離放射線重合性化合物としては、電離放射線重合性モノマー、電離放射線重合性オリゴマー、または電離放射線重合性プレポリマーが挙げられ、これらを適宜調整して、用いることができる。電離放射線重合性化合物としては、電離放射線重合性モノマーと、電離放射線重合性オリゴマーまたは電離放射線重合性プレポリマーとの組み合わせが好ましい。
電離放射線重合性モノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等の水酸基を含むモノマーや、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類が挙げられる。
電離放射線重合性オリゴマーとしては、2官能以上の多官能オリゴマーが好ましく、電離放射線重合性官能基が3つ(3官能)以上の多官能オリゴマーが好ましい。上記多官能オリゴマーとしては、例えば、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル−ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリオール(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、イソシアヌレート(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
電離放射線重合性プレポリマーは、例えば、1万の重量平均分子量を有していてもよい。電離放射線重合性プレポリマーの重量平均分子量としては1万以上8万以下が好ましく、1万以上4万以下がより好ましい。重量平均分子量が8万を超える場合は、粘度が高いため塗工適性が低下してしまい、得られる樹脂層の外観が悪化するおそれがある。多官能プレポリマーとしては、ウレタン(メタ)アクリレート、イソシアヌレート(メタ)アクリレート、ポリエステル−ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
熱重合性化合物は、1分子中に熱重合性官能基を少なくとも1つ有するものである。本明細書における「熱重合性官能基」とは、加熱により同じ官能基同士または他の官能基との間で重合反応し得る官能基である。熱重合性官能基としては、水酸基、カルボキシル基、イソシアネート基、アミノ基、環状エーテル基、メルカプト基等が挙げられる。
熱重合性化合物としては、特に限定されず、例えば、エポキシ化合物、ポリオール化合物、イソシアネート化合物、メラミン化合物、ウレア化合物、フェノール化合物等が挙げられる。
溶剤乾燥型樹脂は、熱可塑性樹脂等、塗工時に固形分を調整するために添加した溶剤を乾燥させるだけで、被膜となるような樹脂である。溶剤乾燥型樹脂を添加した場合、樹脂層22を形成する際に、塗液の塗布面の被膜欠陥を有効に防止することができる。溶剤乾燥型樹脂としては特に限定されず、一般に、熱可塑性樹脂を使用することができる。
熱可塑性樹脂としては、例えば、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ビニルエーテル系樹脂、ハロゲン含有樹脂、脂環式オレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、セルロース誘導体、シリコーン系樹脂及びゴム又はエラストマー等を挙げることができる。
熱可塑性樹脂は、非結晶性で、かつ有機溶媒(特に複数のポリマーや硬化性化合物を溶解可能な共通溶媒)に可溶であることが好ましい。特に、透明性や耐候性という観点から、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、脂環式オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、セルロース誘導体(セルロースエステル類等)等が好ましい。
<無機粒子>
無機粒子は、樹脂層22の機械的強度や鉛筆強度を向上させるための成分であり、無機粒子としては、例えば、シリカ(SiO2)粒子、アルミナ粒子、チタニア粒子、酸化スズ粒子、アンチモンドープ酸化スズ(略称:ATO)粒子、酸化亜鉛粒子等の無機酸化物粒子が挙げられる。これらの中でも、硬度をより高める観点からシリカ粒子が好ましい。シリカ粒子としては、球形シリカ粒子や異形シリカ粒子が挙げられるが、これらの中でも、異形シリカ粒子が好ましい。本明細書における「球形粒子」とは、例えば、真球状、楕円球状等の粒子を意味し、「異形粒子」とは、ジャガイモ状のランダムな凹凸を表面に有する形状の粒子を意味する。上記異形粒子は、その表面積が球状粒子と比較して大きいため、このような異形粒子を含有することで、上記重合性化合物等との接触面積が大きくなり、樹脂層22の鉛筆硬度をより優れたものとすることができる。樹脂層22に含まれているシリカ粒子が異形シリカ粒子であるか否かは、樹脂層22の断面を透過型電子顕微鏡(TEM)または走査透過型電子顕微鏡(STEM)で観察することによって確認することができる。球形シリカ粒子を用いる場合、球形シリカ粒子の粒子径が小さいほど、樹脂層の硬度が高くなる。これに対し、異形シリカ粒子は、市販されている最も小さい粒子径の球形シリカ粒子ほど小さくなくとも、この球形シリカと同等の硬度を達成することができる。
異形シリカ粒子の平均一次粒子径は、1nm以上100nm以下であることが好ましい。異形シリカ粒子の平均一次粒子径がこの範囲であっても、平均一次粒子径が1nm以上45nm以下の球形シリカと同等の硬度を達成することができる。異形シリカ粒子の平均一次粒子径は、樹脂層の断面を透過型電子顕微鏡(TEM)または走査透過型電子顕微鏡(STEM)を用いて撮影した樹脂層の断面の画像から粒子の外周の2点間距離の最大値(長径)と最小値(短径)とを測定し、平均して粒子径を求め、20個の粒子の粒子径の算術平均値とする。また、球形シリカ粒子の平均粒子径は、透過型電子顕微鏡(TEM)または走査透過型電子顕微鏡(STEM)を用いて撮影した粒子の断面の画像から20個の粒子の粒子径を測定し、20個の粒子の粒子径の算術平均値とする。走査透過型電子顕微鏡(STEM)(製品名「S−4800(TYPE2)」、株式会社日立ハイテクノロジーズ製)を用いて、断面写真の撮影を行う際には、検出器(選択信号)を「TE」、加速電圧を「30kV」、エミッションを「10μA」にして観察を行う。その他のSTEMによる断面写真の撮影条件は、後述の条件を参照できる。なお、平均一次粒子径測定には、後述するような画像データを2値化処理して算出することもできる。
樹脂層22中の無機粒子の含有量は、20質量%以上70質量%以下であることが好ましい。無機粒子の含有量が20質量%以上であれば、十分な硬度を得ることができ、また無機粒子の含有量が70質量%以下であれば、充填率が上がりすぎず、無機粒子と樹脂成分との密着性が良好であるので、樹脂層の硬度を低下させることもない。
無機粒子としては、表面に電離放射線重合性官能基を有する無機粒子(反応性無機粒子)を用いることが好ましい。このような表面に電離放射線重合性官能基を有する無機粒子は、シランカップリング剤等によって無機粒子を表面処理することによって作成することができる。無機粒子の表面をシランカップリング剤で処理する方法としては、無機粒子にシランカップリング剤をスプレーする乾式法や、無機粒子を溶剤に分散させてからシランカップリング剤を加えて反応させる湿式法等が挙げられる。
<有機粒子>
有機粒子も、樹脂層22の機械的強度や鉛筆強度を向上させるための成分であり、有機粒子としては、例えば、プラスチックビーズを挙げることができる。プラスチックビーズとしては、具体例としては、ポリスチレンビーズ、メラミン樹脂ビーズ、アクリルビーズ、アクリル−スチレンビーズ、シリコーンビーズ、ベンゾグアナミンビーズ、ベンゾグアナミン・ホルムアルデヒド縮合ビーズ、ポリカーボネートビーズ、ポリエチレンビーズ等が挙げられる。
<<導電部>>
導電部23は、図2に示されるように、導電性繊維24を含んでいる。導電部23は、導電性繊維24の他、光透過性樹脂25を含んでいる。ただし、導電部は、導電性繊維を含んでいれば、光透過性樹脂を含んでいなくともよい。本明細書における「導電部」とは、走査透過型電子顕微鏡(STEM)または透過型電子顕微鏡(TEM)を用い、断面を観察したときに、導電性繊維を含む層を意味する。導電部の界面が確認しにくい場合には、導電部の表面にスパッタ法によりPt−PdやAu等の金属層を形成する等の電子顕微鏡観察で一般的に用いられる前処理を行うとよい。また、四酸化オスミウム、四酸化ルテニウム、リンタングステン酸など染色処理を施すと、有機層間の界面が見やすくなるので、導電性フィルム全体を樹脂にて包埋した後、染色処理を行ってもよい。
導電性繊維24は、光透過性樹脂25中に配置されている。本明細書における「導電性繊維」とは、導電性を有し、かつ長さが太さ(例えば直径)に比べて十分に長い形状を持つものであり、例えば、概ね長さが太さの5倍以上のものは導電性繊維に含まれるものとする。
導電部23の表面抵抗値は3Ω/□以上1000Ω/□以下となっていることが好ましい。導電部23の表面抵抗値が3Ω/□以上であれば、光学的性能が充分であり、また導電部23の表面抵抗値が1000Ω以下/□であれば、特にタッチパネル用途において、応答速度が遅くなる等の不具合の発生を抑制できる。導電部23の表面抵抗値は、JIS K7194:1994(導電性プラスチックの4深針法による抵抗率試験方法)に準拠した接触式の抵抗率計(製品名「ロレスタAX MCP−T370型」、株式会社三菱化学アナリテック製、端子形状:ASPプローブ)および非接触式(渦電流法)の抵抗率計(製品名「EC−80P」、ナプソン株式会社製、https://www.napson.co.jp/wp/wp-content/uploads/2016/08/Napson_EC80P_リーフレット_160614.pdf)のいずれを用いて測定できるが、導電部の膜厚に因らずに正確に測定できる点から、非破壊式の抵抗率計を用いて測定することが好ましい。非破壊式の抵抗率計のプローブは、サンプルに簡易接触させるだけで測定できるものであり、サンプルにダメージを与えず、任意の場所の測定が可能である。その意味で、非接触式と呼ぶ場合もある。非破壊式の抵抗率計による導電部の表面抵抗値の測定は、80mm×50mmの大きさに切り出した導電性フィルムを平らなガラス板上に導電部側が上面となるように配置して、プローブを導電部に接触させて行うものとする。EC−80Pを用いて表面抵抗値を測定する場合には、SW2を選択し、モードM−Hのシート抵抗測定Ω/□を選択する。また、測定レンジによってプローブタイプを容易に付け替えることができ、本実施形態においては測定レンジが10〜1000Ω/□レンジのプローブ、0.5〜10Ω/□レンジのプローブを用いる。なお、EC−80Pの代わりにEC−80P−PN(ナプソン株式会社製)でも同様に測定できるが、この機種の場合には、P/NはPを選択するとよい。また、接触式の抵抗率計による導電部の表面抵抗値の測定は、80mm×50mmの大きさに切り出した導電性フィルムを平らなガラス板上に導電部側が上面となるように配置して、ASPプローブを導電部の中心に配置し、全ての電極ピンを導電部に均一に押し当てることによって行うものとする。接触式の抵抗率計で表面抵抗値を測定する際には、シート抵抗を測定するモードであるΩ/□を選択する。その後は、スタートボタンを押し、ホールドすると、測定結果が表示される。表面抵抗値の測定は、抵抗率計の種類に関わらず、23℃および相対湿度55%の環境下で行うものとする。また、表面抵抗値を測定する際には、抵抗率計の種類に関わらず、水平な机の上に導電性フィルムを配置し、均一な平面状態で測定を行うが、導電性フィルムがカールする等平面状態を維持できない場合には、導電性フィルムをテープ等でガラス板に貼り付けた状態で行うものとする。測定箇所は、導電性フィルムの中心部の3箇所とし、表面抵抗値は、3箇所の表面抵抗値の算術平均値とする。ここで、JIS K7194:1994に全て従うと、測定点は1点、5点、または9点であるが、実際に80mm×50mmの大きさに導電性フィルムを切り出し、JIS K7194:1994の図5の通り測定すると、測定値が不安定になる場合がある。このため、測定点については、JIS K7194:1994とは異なり、導電部の中央部3箇所で測定するものとする。例えば、JIS K7194:1994の図5の1番の位置、1番および7番の間の位置(好ましくは1番に近い位置)、および1番と9番に間の位置(好ましくは1番に近い位置)で測定する。表面抵抗値をサンプルの中心付近で測定することが望ましいことは、井坂 大智、他1名、“四探針法による導電性薄膜の抵抗率測定” 平成20年度電子情報通信学会東京支部学生研究発表会(https://www.ieice.org/tokyo/gakusei/kenkyuu/14/pdf/120.pdf)でも報告されている。導電部23の表面抵抗値の下限は、1Ω/□以上、5Ω/□以上、10Ω/□以上の順に好ましく(数値が大きいほど好ましい)、また導電部23の表面抵抗値の上限は、200Ω/□以下、100Ω/□以下、70Ω/□以下、60Ω/□以下、50Ω/□以下の順にさらに好ましい(数値が小さいほど好ましい)。
導電部23の線抵抗値は、60Ω以上20000Ω以下となっていることが好ましい。導電部23の線抵抗値が60Ω以上であれば、光学的性能が充分であり、また導電部23の線抵抗値が20000Ω以下であれば、特にタッチパネル用途では、応答速度が遅くなる等の不具合が発生することを抑制できる。導電部23の線抵抗値は、導電性フィルムから幅5mm×長さ100mmの長方形形状に切り出したサンプルの長手方向の両端部にテスター(製品名「Digital MΩ Hitester 3454-11」、日置電機株式会社製)のプローブ端子を接触させることによって測定することができる。具体的には、Digital MΩ Hitester 3454−11は、2本のプローブ端子(赤色プローブ端子および黒色プローブ端子、両方ともピン形)を備えているので、赤色プローブ端子を導電部の一方の端部に接触させ、かつ黒色プローブ端子を導電部の他方の端部に接触させて導電部の線抵抗値を測定する。導電部23の線抵抗値の下限は、200Ω以上であることがより好ましく、また導電部23の線抵抗値の上限は2000Ω以下であることがより好ましい。
導電部23の厚みは、300nm未満とすることが好ましい。導電部の膜厚が300nm以上であると、その分、光透過性樹脂の膜厚が厚すぎることになるので、全ての導電性繊維が光透過性樹脂に埋もれてしまうことによって、一部の導電性繊維が導電部の表面に露出しなくなってしまい、導電部の表面から電気的な導通が得られないおそれがある。導電部の膜厚が大きくなればなるほど、導電性繊維同士が重なる部分が増えるために、1Ω/□以上10Ω/□以下の低表面抵抗値も達成することが可能であるが、導電性繊維が重なり過ぎると低ヘイズ値の維持が困難になる場合もある。このため、膜厚は300nm未満が好ましい。なお、低表面抵抗値が維持できる限り導電部は薄膜である方が光学特性、薄膜化の観点から好ましい。導電部23の膜厚の上限は、薄型化を図る観点および低ヘイズ値等良好な光学特性を得る観点から、145nm、140nm以下、120nm以下、110nm以下、80nm以下、50nm以下の順にさらに好ましい(数値が小さいほど好ましい)。また、導電部23の膜厚の下限は、10nm以上であることが好ましい。導電部の膜厚が10nm未満であると、その分、光透過性樹脂25の膜厚が薄すぎることになるので、導電部からの導電性繊維の脱離、導電部の耐久性の悪化、耐擦傷性の低下が生ずるおそれがある。また、導電性繊維が切れやすいなど不安定性がないようにするためには、導電性繊維の繊維径がある程度大きいことが好ましい。導電性繊維が安定して形態を維持できる繊維径としては、10nm以上または15nm以上であると考えられる。一方で、安定な電気的導通を得るためには、導電性繊維が2本以上重なって接触していることが望ましいため、導電部23の膜厚の下限は、20nm以上または30nm以上であることがより好ましい。
導電部23の膜厚は、走査透過型電子顕微鏡(STEM)、または透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて撮影された導電部の断面写真からランダムに10箇所膜厚を測定し、測定された10箇所の膜厚の算術平均値とする。具体的な断面写真の撮影方法を以下に記載する。まず、上記と同様の方法にて導電性フィルムから断面観察用のサンプルを作製する。なお、このサンプルにおいて導通が得られないとSTEMによる観察像が見えにくい場合があるため、Pt−Pdを20秒程度スパッタすることが好ましい。スパッタ時間は、適宜調整できるが、10秒では少なく、100秒では多すぎるためスパッタした金属が粒子状の異物像になるため注意する必要がある。その後、走査透過型電子顕微鏡(STEM)(製品名「S−4800(TYPE2)」、株式会社日立ハイテクノロジーズ製)を用いて、STEM用サンプルの断面写真を撮影する。この断面写真の撮影の際には、検出器(選択信号)を「TE」、加速電圧を「30kV」、エミッションを「10μA」にしてSTEM観察を行う。倍率については、フォーカスを調節しコントラストおよび明るさを各層が見分けられるか観察しながら5000倍〜20万倍で適宜調節する。好ましい倍率は、1万倍〜10万倍、更に好ましい倍率は1万倍〜5万倍であり、最も好ましい倍率2.5万倍〜5万倍である。なお、断面写真の撮影の際には、さらに、アパーチャーをビームモニタ絞り3、対物レンズ絞りを3にし、またW.D.を8mmにしてもよい。導電部の膜厚を測定する際には、断面観察した折に、導電部と他の層(樹脂層や包埋樹脂等)との界面コントラストが可能な限り明確に観察できることが重要となる。仮に、コントラスト不足でこの界面が見え難い場合には、導電部の表面にスパッタ法によりPt−Pd、PtやAu等の金属層を形成する等の電子顕微鏡観察で一般的に用いられる前処理を行ってもよい。また、四酸化オスミウム、四酸化ルテニウム、リンタングステン酸など染色処理を施すと、有機層間の界面が見やすくなるので、染色処理を行ってもよい。また、界面のコントラストは高倍率である方が分かりにくい場合がある。その場合には、低倍率も同時に観察する。例えば、2.5万倍と5万倍や、5万倍と10万倍など、高低の2つの倍率で観察し、両倍率で上記した算術平均値を求め、更にその平均値を導電部の膜厚の値とする。
導電部23は、表面23Aからの押込み量が10nm位置でのマルテンス硬度が、970N/mm2以上1050N/mm2以下であることが好ましい。また、導電部23は、表面23Aからの押込み量が100nm位置でのマルテンス硬度が、130N/mm2以上300N/mm2以下であることが好ましい。一般に、微小硬さ試験機で測定する場合、測定対象の膜厚の10%以内の押込み量が好ましい。すなわち、本実施形態においては10nm位置でのマルテンス硬度とは、導電部よりも下層の影響を受けにくく、導電部そのものの硬度を意味する。また、通常、製品の状態では導電部だけではなく、その下に基材など様々な層が積層されたフィルムになるが、100nm位置でのマルテンス硬度とは、製品となった場合に必要とされるフィルムとしての硬度を意味する。導電部下に、どのような層が配置されても上記のマルテンス硬度を満たせば、導電性フィルムの折れや割れが発生しにくい。
導電部23における上記押込み量が10nm位置でのマルテンス硬度が、970N/mm2未満であると、導電性フィルムの製造工程において容易に傷が付いてしまい、また1050N/mm2を越えると、導電部をパターニングする際のエッチングレートが遅くなり、また曲げに対して割れが発生するおそれがある。導電部23における上記押込み量が10nm位置でのマルテンス硬度の下限は、980N/mm2以上、1000N/mm2以上、1015N/mm2以上の順にさらに好ましく(数値が大きいほど好ましい)、上記押込み量が10nm位置でのマルテンス硬度の上限は、1040N/mm2以下、1030N/mm2以下、1020N/mm2以下の順にさらに好ましい(数値が小さいほど好ましい)。また、上記押込み量が100nm位置でのマルテンス硬度が、130N/mm2未満であると、導電性フィルムに折れが発生しやすくなり、また150N/mm2を越えると、曲げに対して割れが発生するおそれがある。導電部23における上記押込み量が100nm位置でのマルテンス硬度の下限は、140N/mm2以上、150N/mm2以上、170N/mm2以上の順にさらに好ましく(数値が大きいほど好ましい)、上記押込み量が100nm位置でのマルテンス硬度の上限は、280N/mm2以下、250N/mm2以下、200N/mm2以下の順にさらに好ましい(数値が小さいほど好ましい)。
本発明においては、上記押込み量が10nmまたは100nmのマルテンス硬度は、少なくとも片方を満たすことが好ましい。両方を満たすことで、上記したように折れや割れなどの物性的なバランスが良好になる。また、マルテンス硬度は、低すぎず、高すぎないことが重要である。例えば、導電性フィルムの製造過程において容易に傷ついてしまうことを防止するには、硬度がある程度以上必要となる。また、導電部のパターニングを行う場合には、エッチング処理を施す。この処理には、レーザーなどによるドライ系のエッチングと、汎用されているフォトリソグラフィ方法によるエッチング液に浸漬させるようなウェット系のエッチングがある。どちらのエッチングであっても、硬度が高すぎる場合にはエッチング速度が遅くなり、加工に時間を要するという課題が出てくる。そのためにも、上記マルテンス硬度には上限が必要なのである。
導電部における表面からの押込み量が10nmまたは100nmのマルテンス硬度は、以下の方法により測定するものとする。まず、20mm×20mmの大きさに切り出した保護フィルム付き導電性フィルムから、保護フィルムを全て剥がして、導電性フィルム単体とする。そして、マルテンス硬度を測定する導電部側が上面となるように市販のスライドガラスに、接着樹脂(製品名「アロンアルフア(登録商標)一般用」、東亜合成株式会社製)を介して固定する。具体的には、スライドガラス1(製品名「スライドガラス(切放タイプ) 1−9645−11」、アズワン株式会社製)の中央部に上記接着樹脂を滴下する。この際、接着樹脂を塗り広げず、また後述するように押し広げたときに接着樹脂が導電性フィルムからはみ出さないように滴下は1滴とする。その後、上記大きさに切り出した導電性フィルムを測定対象の導電部側が上面になり、かつ導電性フィルムの中央部に接着樹脂が位置するようにスライドガラスに接触させ、スライドガラス1と導電性フィルムの間で接着樹脂を押し広げ、仮接着する。そして、別の新しいスライドガラス2を導電性フィルムの上に載せ、スライトガラス1/接着樹脂/導電性フィルム/スライドガラス2の積層体を得る。次いで、スライドガラス2の上に30g以上50g以下の重りを置き、その状態で、12時間室温で放置する。その後、重りとスライドガラス2を取り外し、これを測定用サンプルとする。なお、接着樹脂で固定した導電性フィルムの4隅を、さらにテープ(製品名「セロテープ(登録商標)」、ニチバン株式会社製)で固定してもよい。そして、この測定用サンプルを除振台に平行に設置した微小硬さ試験機(製品名「ピコデンター(PICODENTOR) HM500」、フィッシャー・インスツルメント社製、ISO14577−1、ASTM E2546準拠)の測定ステージに固定する。この固定は、スライドガラス1の4辺をテープ(製品名「セロテープ(登録商標)、ニチバン株式会社製」などで固定するなど方法は任意であり、測定用サンプルが動かなければよい。また、微小硬さ試験機が空気吸引システムを有していれば、空気吸引システムによって固定してもよい。測定用サンプルを微小硬さ試験機の測定ステージに固定した後、以下の測定条件で導電部の表面の押込み量10nm位置および100nm位置のマルテンス硬度をそれぞれ測定する。マルテンス硬度は、測定用サンプルの導電部の表面中央付近(接着樹脂が存在する領域)の任意の5点を測定し、得られた5点の硬度の算術平均値とする。ただし、測定する任意の5点は、ピコデンター HM500付属の顕微鏡を用いて倍率50倍〜500倍で導電部を観察し、導電部のうち、導電性繊維が重なって極端な凸構造になっている部分、および逆に極端な凹部構造になっている部分は避け、可能な限り平坦性のある部分から選択するものとする。パターニングされた導電性フィルムの導電部でも、上記と同様に測定する任意の5点を選択する。また、マルテンス硬度を算出する際には、ピコデンター HM500で測定したい硬度種類として「HM」(マルテンス硬度)を選択することで自動算出される。
(測定条件)
・圧子形状:ビッカース(四角錐ダイヤモンド圧子)(先端部分の対面角136°の正四角錐)
・荷重制御方式:最大荷重40mNまで
・荷重の増加時間:20秒
・クリープ時間:5秒
・荷重の除去時間:20秒
・押込み量:10nm(押込み量10nm位置でのマルテンス硬度測定時)、100nm(押込み量100nm位置でのマルテンス硬度測定時)
・測定時の温度:25℃
・測定時の湿度:50%
測定のプロファイルは、20秒かけて、0mNから40mNまで荷重を負荷し、5秒間40mNを保持し、その後20秒かけて40mNから0mNへ戻すものとする。
<導電性繊維>
導電性繊維24は導電部23中に複数本存在していることが好ましい。導電性繊維24は、導電部23の表面22Aから電気的に導通可能となっているので、導電部23の厚み方向において導電性繊維24同士が接触している。
導電部23においては、導電性繊維24同士が接触することによって導電部23の平面方向(2次元方向)にネットワーク構造(網目構造)を形成していることが好ましい。導電性繊維24がネットワーク構造を形成することによって、導電経路を形成することができる。
一部の導電性繊維24は導電部23の表面23Aに露出していることが好ましい。なお、導電性繊維24が導電部23に固定される程度に導電性繊維24の一部が露出していればよく、導電性繊維24が導電部23の表面22Aから突出している場合も導電性繊維24が導電部23の表面23Aに露出している場合に含まれる。一部の導電性繊維が、導電部の表面に露出していないと、導電部の表面から電気的な導通が得られないおそれがあるので、導電部23の表面23Aから電気的な導通が得られれば、一部の導電性繊維24が、導電部23の表面23Aに露出していると判断できる。導電性繊維が、導電部の表面から電気的に導通可能であるか否かは、上記と同様の方法により導電部の表面抵抗値を測定することによって判断することが可能である。具体的には、導電部の表面抵抗値の算術平均値が1×106Ω/□未満であれば、導電部の表面から電気的な導通が得られていると判断できる。
導電性繊維24の平均繊維径は200nm以下であることが好ましい。導電性繊維24の平均繊維径が200nm以下であれば、導電性フィルム20のヘイズ値の上昇を抑制でき、また光透過性能が不充分となるおそれもない。導電性繊維24の平均繊維径の下限は、導電部23の導電性や断線防止の観点から5nm以上、7nm以上、10nm以上、15nm以上の順にさらに好ましく(断線防止の観点から数値が大きいほど好ましい)、導電性繊維24の平均繊維径の上限は180nm以下、30nm以下、28nm以下、25nm以下、20nm以下、15μm以下がより好ましい(ミルキネス防止の観点から数値が小さいほど好ましい)。ミルキネス防止と導電性、断線防止を考えると、例えば7nm以上15nm以下の平均繊維径を有する導電性繊維が好ましく用いられる。大量生産性の面からは、15nmより大きく25nm以下が好ましい。
導電性繊維24の繊維径は、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)(製品名「H−7650」、株式会社日立ハイテクノロジーズ製)を用い、10万倍〜20万倍にて50枚撮像し、TEM付属のソフトウェアにより撮像画面上で、100本の導電性繊維の繊維径を実測し、その算術平均値として求めるものとする。上記H−7650を用いて、繊維径を測定する際には、加速電圧を「100kV」、エミッション電流を「10μA」、集束レンズ絞りを「1」、対物レンズ絞りを「0」、観察モードを「HC」、Spotを「2」にする。また、走査透過型電子顕微鏡(STEM)(製品名「S−4800(TYPE2)」、株式会社日立ハイテクノロジーズ製)によっても導電性繊維の繊維径を測定することが可能である。STEMを用いる場合には、10万倍〜20万倍にて50枚撮像し、STEM付属のソフトウェアにより撮像画面上で、100本の導電性繊維の繊維径を実測し、その算術平均値として導電性繊維の繊維径を求めるものとする。上記S−4800(TYPE2)を用いて、繊維径を測定する際には、信号選択を「TE」、加速電圧を「30kV」、エミッション電流を「10μA」、プローブ電流を「Norm」、焦点モードを「UHR」、コンデンサレンズ1を「5.0」、W.D.を「8mm」、Tiltを「0°」にする。
導電性繊維24の繊維径を測定する際には、以下の方法によって作製された測定用サンプルを用いる。ここで、TEM測定は高倍率のため、導電性繊維ができる限り重ならないように導電性繊維含有組成物の濃度をできる限り低下させることが重要である。具体的には、導電性繊維含有組成物を、組成物の分散媒に合わせて水またはアルコールで導電性繊維の濃度を0.05質量%以下に希釈し、または固形分が0.2質量%以下に希釈することが好ましい。さらに、この希釈した導電性繊維含有組成物をTEMまたはSTEM観察用のカーボン支持膜付きグリッドメッシュ上に1滴滴下し、室温で乾燥させて、上記条件で観察し、観察画像データとする。これを元に算術平均値を求める。カーボン支持膜付きグリッドメッシュとしては、Cuグリッド型番「♯10-1012 エラスチックカーボンELS-C10 STEM Cu100Pグリッド仕様」が好ましく、また電子線照射量に強く、電子線透過率がプラスチック支持膜より良いため高倍率に適し、有機溶媒に強いものが好ましい。また、滴下の際には、グリッドメッシュだけであると微小すぎ滴下しにくいため、スライドガラス上にグリッドメッシュを載せて滴下するとよい。
上記繊維径は、写真を元に実測して求めることができ、また画像データを元に2値化処理して算出してもよい。実測する場合、写真を印刷し適宜拡大してもよい。その際、導電性繊維は他の成分よりも黒さの濃度が濃く写り込む。測定点は、輪郭外側を起点、終点として測定する。導電性繊維の濃度は、導電性繊維含有組成物の全質量に対する導電性繊維の質量の割合で求めるものとし、また固形分は、導電性繊維含有組成物の全質量に対する分散媒以外の成分(導電性繊維、樹脂成分、その他の添加剤)の質量の割合によって求めるものとする。
導電性繊維24の平均繊維長は1μm以上であることが好ましい。導電性繊維24の平均繊維長が1μm以上であれば、充分な導電性能を有する導電部を形成でき、ヘイズ値の上昇や光透過性能の低下を抑制できる。導電性繊維24の平均繊維長の上限は500μm以下、300μm以下、40μm以下、35μm以下、30μm以下、20μm以下、15μm以下としてもよく、また導電性繊維24の平均繊維長の下限は3μm以上、5μm以上、7μm以上、または10μm以上としてもよい。例えば、導電性繊維24としては、10μm以上30μm以下の平均繊維長を有する導電性繊維が好ましく用いることができる。
導電性繊維24の繊維径は、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)(製品名「S−4800(TYPE2)」、株式会社日立ハイテクノロジーズ製)のSEM機能を用い、500〜2000万倍にて10枚撮像し、付属のソフトウェアにより撮像画面上で、100本の導電性繊維の繊維長を測定し、その100本の導電性繊維の繊維長の算術平均値として求めるものとする。上記S−4800(TYPE2)を用いて、繊維長を測定する際には、45°傾斜の試料台を使用して、信号選択を「SE」、加速電圧を「3kV」、エミッション電流を「10μA〜20μA」、SE検出器を「混合」、プローブ電流を「Norm」、焦点モードを「UHR」、コンデンサレンズ1を「5.0」、W.D.を「8mm」、Tiltを「30°」にする。なお、SEM観察時には、TE検出器は使わないので、SEM観察前にTE検出器は必ず抜いておく。上記S−4800は、STEM機能とSEM機能を選択できるが、上記繊維長の測定する際には、SEM機能を用いるものとする。
導電性繊維24の繊維長を測定する際には、以下の方法によって作製された測定用サンプルを用いる。まず、導電性繊維含有組成物をB5サイズの厚み50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの未処理面に塗布量10mg/m2となるように塗布し、分散媒を乾燥させて、PETフィルム表面に導電性繊維を配置させて、導電性フィルムを作製する。この導電性フィルムの中央部から10mm×10mmの大きさに切り出す。そして、この切り出した導電性フィルムを、45°傾斜を有するSEM試料台(型番「728−45」、日新EM社株式会社製、傾斜型試料台45°、φ15mm×10mm M4アルミニウム製)に、銀ペーストを用いて台の面に対し平坦に貼り付ける。さらに、Pt−Pdを20秒〜30秒スパッタし、導通を得る。適度なスパッタ膜がないと像が見えにくい場合があるので、その場合は適宜調整する。
上記繊維長は、写真を元に実測して求めることができ、また画像データを元に2値化処理して算出してもよい。写真を元に実測する場合、上記と同様の方法によって行うものとする。
導電性繊維24としては、導電性炭素繊維、金属ナノワイヤ等の金属繊維、金属被覆有機繊維、金属被覆無機繊維、およびカーボンナノチューブからなる群より選択される少なくとも1種の繊維であることが好ましい。
上記導電性炭素繊維としては、例えば、気相成長法炭素繊維(VGCF)、カーボンナノチューブ、ワイヤーカップ、ワイヤーウォール等が挙げられる。これらの導電性炭素繊維は、1種又は2種以上を使用することができる。
上記金属繊維の金属元素の具体例としては、ステンレススチール、Ag、Cu、Au、Al、Rh、Ir、Co、Zn、Ni、In、Fe、Pd、Pt、Sn、Ti等を挙げることができる。このような金属繊維は、1種又は2種以上を使用することができる。金属繊維は、繊維径が200nm以下および繊維長が1μm以上の金属ナノワイヤであることが好ましい。
また金属繊維として、銀ナノワイヤーを用いる場合、銀ナノワイヤーは、ポリオール(例えば、エチレングリコール)およびポリ(ビニルピロリドン)の存在下で、銀塩(例えば、硝酸銀)の液相還元により合成可能である。均一サイズの銀ナノワイヤーの大量生産は、例えば、Xia,Y.et al.,Chem.Mater.(2002)、14、4736−4745およびXia,Y.et al.,Nanoletters(2003)3(7)、955−960に記載される方法に準じて得ることが可能である。
金属ナノワイヤの製造手段には特に制限はなく、例えば、液相法や気相法等の公知の手段を用いることができる。また、具体的な製造方法にも特に制限はなく、公知の製造方法を用いることができる。例えば、Agナノワイヤの製造方法としては、Adv.Mater.,2002,14,833〜837;Chem.Mater.,2002,14,4736〜4745等、Auナノワイヤの製造方法としては特開2006−233252号公報等、Cuナノワイヤの製造方法としては特開2002−266007号公報等、Coナノワイヤの製造方法としては特開2004−149871号公報等を参考にすることができる。
上記金属繊維は、例えば、ステンレススチール、鉄、金、銀、アルミニウム、ニッケル、チタン等を細く、長く伸ばす伸線法または切削法により得ることができる。
上記金属被覆有機繊維としては、例えば、アクリル繊維に金、銀、アルミニウム、ニッケル、チタン等をコーティングした繊維等が挙げられる。このような金属被覆合成繊維は、1種又は2種以上を使用することができる。
<光透過性樹脂>
光透過性樹脂25は、導電部23からの導電性繊維24の脱離を防ぎ、かつ導電部23の耐久性や耐擦傷性を向上させるために、導電性繊維24を覆うものであるが、導電部23の表面22Aから電気的な導通が得られる程度に導電性繊維24を覆うものである。具体的には、一部の導電性繊維が、導電部の表面に露出していないと、導電部の表面から電気的な導通が得られないおそれがあるので、光透過性樹脂25は、一部の導電性繊維24が導電部23の表面22Aから露出するように導電性繊維24を覆っていることが好ましい。一部の導電性繊維24が導電部23の表面22Aに露出するように導電性繊維24を光透過性樹脂25で覆うためには、例えば、光透過性樹脂25の厚みを調整すればよい。すなわち、光透過性樹脂の厚みが厚すぎると、全ての導電性繊維が光透過性樹脂に埋もれてしまうことによって、一部の導電性繊維が導電部の表面に露出しなくなってしまい、導電部の表面から電気的な導通が得られないおそれがある。また、光透過性樹脂の厚みが薄すぎると、導電部からの導電性繊維の脱離、導電部の耐久性の悪化、耐擦傷性の低下が生ずるおそれがある。このため、光透過性樹脂の厚みを適度な厚みに調節する必要がある。
上記の観点から、光透過性樹脂25の厚みは、300nm未満とすることが好ましい。光透過性樹脂25の厚みは、導電部23の膜厚の測定方法と同様の方法にて測定することができる。光透過性樹脂25の膜厚の上限は、145nm以下、140nm以下、120nm以下、110nm以下、80nm以下、50nm以下の順にさらに好ましい(数値が小さいほど好ましい)。また、光透過性樹脂25の厚みの下限は、10nm以上であることが好ましい。
光透過性樹脂25は、光透過性を有する樹脂であれば、特に限定されないが、光透過性樹脂としては、重合性化合物の重合体や熱可塑性樹脂等が挙げられる。重合性化合物としては、樹脂層22の欄で説明した重合性化合物と同様のものが挙げられるので、ここでは説明を省略するものとする。
<反応抑制剤>
反応抑制剤は、光透過性樹脂用組成物の塗布後に、導電性繊維24と雰囲気下の物質との反応による導電性低下を抑制するためのものである。反応抑制剤としては、例えば、ベンゾアゾール系化合物、トリアゾール系化合物、テトラゾール系化合物、イソシアヌル酸系化合物、アニリン系化合物等の窒素含有化合物等が挙げられる。反応抑制剤として用いられる窒素含有化合物としては、例えば、1−アミノベンゾアゾール、5−メチルベンゾトリアゾール、1,2,3−ベンゾトリアゾール、1−メチル−1H−テトラゾール−5−アミン、DL−α−トコフェロール、1−オクタデカンチオール、2−メルカプト−5−(トリフルオロメチル)ピリジン、イソシアヌル酸ジアリル、イソシアヌル酸ジアリルプロピル、6−アニリノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジチオール、チオシアヌル酸、3,5−ジメチル−1H−1,2,4−トリアゾール、4−(1,2,4−トリアゾール−1−イルメチル)アニリン、6−(ジブチルアミノ)−1,3,5−トリアジン−2,4−ジチオール、4−(1,2,4−トリアゾール−1−イル)アニリン、2−メチルチオ-ベンゾチアゾール、1−フェニル−5−メルカプト−1H−テトラゾール、5−メルカプト−1−メチルテトラゾール、5−(メチルチオ)−1H−テトラゾール、5−アミノ−1H−テトラゾール、1−(2−ジメチルアミノエチル)−5−メルカプトテトラゾール、1−(2−ジメチルアミノエチル)−5−メルカプトテトラゾール、1−(4−ヒドロキシフェニル)−5−メルカプト−1H−テトラゾール、3−アミノ−5−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、3,5−ジアミノ−1,2,4−トリアゾールが挙げられる。
導電部23中の反応抑制剤の含有量は、0.01質量%以上10質量%以下であることが好ましい。反応抑制剤の含有量が、0.01質量%未満であると、導電性繊維が雰囲気下の物質との反応してしまい、導電性が低下するおそれがある。また反応抑制剤は、導電性繊維の表面と反応することによって導電性繊維の表面を失活させて、導電性繊維が雰囲気下の物質と反応し難い状態を作り出すものであるが、反応抑制剤の含有量が、10質量%を超えると、導電性繊維における反応抑制剤との反応が導電性繊維の表面のみならず内部まで進行してしまい、導電性が低下するおそれがある。
<<保護フィルム>>
保護フィルム30は、導電部23の表面23Aに剥離可能に貼り付けられている。保護フィルム30は、導電性フィルム20を巻き取ったときのフィルム同士の貼り付きを抑制する機能および傷付き防止する機能を有する。
保護フィルム30の厚みは、25μm以上150μm以下であることが好ましい。保護フィルム30の厚みが25μm以上であれば、導電性フィルムを保護する機能を充分に発揮することができ、また保護フィルム30の厚みが150μm以上であれば、ロール径の肥大および搬送時の保護フィルム30の剥離を抑制できる。保護フィルム30の厚みは、光透過性基材21の厚みと同様の方法によって測定することができる。保護フィルム30の厚みの下限は、フィルム搬送時の折れを抑制できる観点から、50μm以上であることが好ましく、上限は125μm以下が好ましい。
保護フィルム30は、樹脂基材と樹脂基材の一方の面側に設けられた粘着層から構成することが可能である。保護フィルム30の樹脂基材を構成する樹脂としては、特に限定されないが、ポリエチレンテレフタレート樹脂等のポリステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂等が挙げられる。例えば、光透過性基材21がポリエステル系樹脂からなる基材である場合には、カールをより抑制する観点から、ポリエステル系樹脂から樹脂基材を構成することが好ましい。なお、保護フィルムとして、自己粘着型の樹脂フィルムを用いてもよい。
<<保護フィルム付き導電性フィルムの製造方法>>
保護フィルム付き導電性フィルム10は、例えば、以下のようにして作製することができる。まず、図4(A)に示されるように、光透過性基材21を除電する。なお、光透過性基材21の除電を行った方が、ひび割れ状の筋ムラがより抑制されるが、除電は必須ではない。また、除電は、樹脂層22の形成前に行っているが、樹脂層22の形成後に行ってもよい。ただし、樹脂層22の形成時に帯電量が大きくなることを抑制し、また除電の調整がしやすいことから、除電は、樹脂層22の形成前に行うことが好ましい。
除電を行うための除電器としては、電圧印加式除電器、自己放電式除電器、軟X線方式除電器、紫外線方式除電器を用いて除電する方法などが挙げられる。特に、発生するイオン量が多くかつ制御が可能であり、光透過性基材の長手方向の長い区間にわたって安定して光透過性基材の表面の帯電量を制御しやすい点から、電圧印加式除電器を用いて除電することが好ましい。
除電後の光透過性基材21の帯電量は、ひび割れ状の筋ムラを抑制する観点から、−1.5kV以上1.5kV以下であることが好ましい。除電後の光透過性基材21の帯電量は、表面電位計(製品名「KSD−1000」、春日電機株式会社製)を用いて測定することが可能である。
除電後、図4(B)に示されるように、光透過性基材21における下地層21Dの表面に樹脂層用組成物を塗布し、乾燥させて、樹脂層用組成物の塗膜26を形成する。
樹脂層用組成物は、重合性化合物を含むが、その他、必要に応じて、上記無機粒子、上記レベリング剤、溶剤、重合開始剤を添加してもよい。さらに、樹脂層用組成物には、樹脂層の硬度を高くする、硬化収縮を抑える、または屈折率を制御する等の目的に応じて、従来公知の分散剤、界面活性剤、シランカップリング剤、増粘剤、着色防止剤、着色剤(顔料、染料)、消泡剤、難燃剤、紫外線吸収剤、接着付与剤、重合禁止剤、酸化防止剤、表面改質剤、易滑剤等を添加していてもよい。
<溶剤>
溶剤としては、例えば、アルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、s−ブタノール、t−ブタノール、ベンジルアルコール、PGME、エチレングリコール等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、ジアセトンアルコール、シクロヘプタノン、ジエチルケトン等)、エーテル類(1,4−ジオキサン、ジオキソラン、ジイソプロピルエーテルジオキサン、テトラヒドロフラン等)、脂肪族炭化水素類(ヘキサン等)、脂環式炭化水素類(シクロヘキサン等)、芳香族炭化水素類(トルエン、キシレン等)、ハロゲン化炭素類(ジクロロメタン、ジクロロエタン等)、エステル類(蟻酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、乳酸エチル等)、セロソルブ類(メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等)、セロソルブアセテート類、スルホキシド類(ジメチルスルホキシド等)、アミド類(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等)、またはこれらの混合物が挙げられる。
<重合開始剤>
重合開始剤は、光または熱により分解されて、ラジカルやイオン種を発生させて重合性化合物の重合(架橋)を開始または進行させる成分である。樹脂層用組成物に用いられる重合開始剤は、光重合開始剤(例えば、光ラジカル重合開始剤、光カチオン重合開始剤、光アニオン重合開始剤)や熱重合開始剤(例えば、熱ラジカル重合開始剤、熱カチオン重合開始剤、熱アニオン重合開始剤)、またはこれらの混合物が挙げられる。
樹脂層用組成物における重合開始剤の含有量は、重合性化合物100質量部に対して、0.5質量部以上10.0質量部以下であることが好ましい。重合開始剤の含有量をこの範囲内にすることにより、ハードコート性能を充分に保つことができ、かつ硬化阻害を抑制できる。
樹脂層用組成物を塗布する方法としては、スピンコート、ディップ法、スプレー法、スライドコート法、バーコート法、ロールコート法、グラビアコート法、ダイコート法等の公知の塗布方法が挙げられる。
次いで、図4(C)に示されるように塗膜26に紫外線等の電離放射線を照射し、または加熱して、重合性化合物を重合(架橋)させることにより塗膜26を硬化させて、樹脂層22を形成する。
塗膜26を硬化させる際の電離放射線として、紫外線を用いる場合には、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、キセノンアーク、メタルハライドランプ等から発せられる紫外線等が利用できる。また、紫外線の波長としては、190〜380nmの波長域を使用することができる。電子線源の具体例としては、コッククロフトワルト型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、又は直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器が挙げられる。
樹脂層22を形成した後、光透過性基材21の下地層21Dが形成されていない面(未処理面)に、導電性繊維24および有機系分散媒を含む導電性繊維含有組成物を塗布し、乾燥させて、図5(A)に示されるように光透過性基材21の未処理面に複数の導電性繊維24を配置させる。有機系分散媒は、10質量%未満の水を含んでいてもよい。なお、導電性繊維含有組成物は、導電性繊維24および有機系分散媒の他、熱可塑性樹脂や重合性化合物からなる樹脂分を含ませてもよい。ただし、導電性繊維含有組成物中の樹脂分の含有量が多すぎると、導電性繊維間に樹脂分が入り込んでしまい、導電部の導通が悪化してしまうので、樹脂分の含有量を調節する必要がある。本明細書における「樹脂分」とは、樹脂(ただし、導電性繊維を覆う導電性繊維同士の自己溶着や雰囲気中の物質との反応から防ぐための等の、導電性繊維の合成時に導電性繊維周辺に形成された有機保護層を構成する樹脂(例えば、ポリビニルピロリドン等)は含まない)の他、重合性化合物のように重合して樹脂となり得る成分も含む概念である。また、導電性繊維含有組成物中の樹脂分は、導電部23を形成した後においては、光透過性樹脂25の一部を構成するものである。
有機系分散媒としては、特に限定されないが、親水性の有機系分散媒であることが好ましい。有機系分散媒としては、例えば、ヘキサン等の飽和炭化水素類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテル等のエーテル類;N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類;エチレンクロライド、クロルベンゼン等のハロゲン化炭化水素等が挙げられる。これらの中でも、導電性繊維含有組成物の安定性の観点から、アルコール類が好ましい。
導電性繊維含有組成物に含まれていてもよい熱可塑性樹脂としては、アクリル系樹脂;ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリスチレン、ポリビニルトルエン、ポリビニルキシレン、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド等の芳香族系樹脂;ポリウレタン系樹脂;エポキシ系樹脂;ポリオレフィン系樹脂;アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS);セルロース系樹脂;ポリ塩化ビニル系樹脂;ポリアセテート系樹脂;ポリノルボルネン系樹脂;合成ゴム;フッ素系樹脂等が挙げられる。
導電性繊維含有組成物に含まれていてもよい重合性化合物としては、樹脂層22の欄で説明した重合性化合物と同様のものが挙げられるので、ここでは説明を省略するものとする。
光透過性基材21の未処理面に複数の導電性繊維24を配置させた後、重合性化合物および溶媒を含む光透過性樹脂用組成物を塗布し、乾燥させて、図5(B)に示されるように光透過性樹脂用組成物の塗膜27を形成する。光透過性樹脂用組成物は、重合性化合物および溶剤を含むが、その他、必要に応じて、重合開始剤や上記反応抑制剤を添加してもよい。ここで、反応抑制剤を、導電性繊維含有組成物に添加することも可能であるが、導電性繊維含有組成物に反応抑制剤を添加すると、導電性繊維がネットワーク構造を形成する前に導電性繊維の表面が反応抑制剤によって被覆されてしまい、導電性が悪化するおそれがあるので反応性抑制剤を光透過性樹脂用組成物に添加することが好ましい。
次いで、図6(A)に示されるように、塗膜27に紫外線等の電離放射線を照射して、重合性化合物を重合(架橋)させることにより塗膜27を硬化させて、光透過性樹脂25を形成して、導電部23を形成する。
導電部23を形成した後、図6(B)に示されるように、導電部23の表面23Aに保護フィルム30を剥離可能に貼り付ける。これにより、保護フィルム付き導電性フィルム10が得られる。
導電部を導電性繊維から形成すると、ひび割れ状の筋ムラが発生するのは、以下の理由からであると考えられる。まず、樹脂層等を形成するためにロール状の光透過性基材を巻き出すが、その際に、光透過性基材は正に帯電してしまう。ここで、ロール状態において、同種の材料が接していた場合よりも、異種の材料が接していた場合の方が、光透過性基材を巻き出したときの帯電量は大きくなる傾向がある。すなわち、光透過性基材が片面のみに下地層を備える場合には、ロール状に巻かれた状態では、光透過性基材は異種の材料である下地層と接しているので、光透過性基材が下地層を備えない場合よりも、巻き出したときの帯電量は大きくなる。一方で、巻き出した光透過性基材の正電荷を除電装置で除電した場合には、光透過性基材の表面に存在する正電荷は除電されるが、内部に存在する正電荷までは除電されない。このため、樹脂層を形成する前に導電部を形成すると、光透過性基材の内部に残存する正電荷が導電部側に移動し、導電部が正電荷の影響を受けてしまい、この正電荷の影響により導電性繊維の分布が均一とはならず、導電性繊維が疎の部分と密の部分が形成されてしまう。そして、導電性繊維の疎の部分と密の部分の境界がひび割れ状の筋ムラとなって確認されるものと考えられる。これに対し、本実施形態においては、導電部23を形成する前に樹脂層22を光透過性基材21に形成しているので、光透過性基材21の内部に残存する正電荷は樹脂層22側に移動する。このため、導電部23を形成したとしても、正電荷の影響を受けにくくなり、導電部23の平面方向において導電性繊維24の分布のばらつきを抑制できるので、導電性繊維24の疎の部分と密の部分が形成されにくくなる。これにより、ひび割れ状の筋ムラを抑制することができる。
本実施形態によれば、導電部23の形成前、特に樹脂層22の形成前に光透過性基材21を除電しているので、光透過性基材21の第1の面21Aに存在する正電荷を除電することができ、これによりひび割れ状の筋ムラをより抑制することができる。
一般的に、保護フィルムの裏面(保護フィルムが貼り付けられる対象物側の面とは反対側の面)は、巻き取り性を考慮して、凹凸が大きくなっている。したがって、保護フィルム30の裏面(導電部23の表面23Aに貼り付けられる側の面とは反対側の面)も、導電部23の表面23Aより凹凸が大きくなっている。保護フィルムの凹凸の大きさは、例えば、算術平均粗さ(Ra)によって測定することができる。本実施形態によれば、導電性フィルム20における導電部23の表面23Aに保護フィルム30を剥離可能に貼り付けているので、保護フィルム付き導電性フィルム10を巻き取ったときのフィルム10同士の貼り付きを抑制できる。
また、導電性フィルム20の厚みは薄いが、導電性フィルム20の表面20Aに保護フィルム30が剥離可能に貼り付けられているので、保護フィルム30を貼り付けた状態で取り扱うことができ、これにより容易に取り扱うことができる。
光透過性基材の表面には微小な凹凸が存在しているので、外部ヘイズが高くなることがあるが、本実施形態によれば、光透過性基材21の第2の面21Bに樹脂層22を備えているので、樹脂層22により光透過性基材21の第2の面21Bに存在する微小な凹凸を埋めることができる。これより、外部ヘイズ値を低下させることができる。また、光透過性基材を加熱すると、光透過性基材からオリゴマー成分が析出し、外部ヘイズ値が上昇し、透明性が失われることがある。これに対し、本実施形態においては、光透過性基材21の第2の面21Bに樹脂層22を形成しているので、光透過性基材21からのオリゴマー成分の析出を抑制することができる。これにより、導電性フィルム20を加熱した場合であっても、導電性フィルム20のヘイズ値の上昇を抑制することができ、透明性を確保することができる。
本実施形態によれば、導電性繊維24を用いているので、ITOとは異なり、屈曲させたとしても割れ難い導電性フィルム20を提供することができる。このため、導電性フィルム20を折り畳み可能(フォールダブル)な画像表示装置にも組み込んで使用することも可能である。折り畳み可能な画像表示装置は、表示素子として有機発光ダイオード(OLED)を備えていてもよい。
本発明を詳細に説明するために、以下に実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの記載に限定されない。
<ハードコート層用組成物の調製>
まず、下記に示す組成となるように各成分を配合して、ハードコート層用組成物1を得た。
(ハードコート層用組成物1)
・ペンタエリスリトールトリアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物(製品名「KAYARAD−PET−30」、日本化薬株式会社製):30質量部
・重合開始剤(製品名「イルガキュア184」、BASFジャパン社製):1.5質量部
・メチルエチルケトン(MEK):50質量部
・シクロヘキサノン:18.5質量部
<銀ナノワイヤ含有組成物の調製>
(銀ナノワイヤ含有組成物1)
還元剤としてエチレングリコール(EG)を、有機保護剤としてポリビニルピロリドン(PVP:平均分子量130万、アルドリッチ社製)を使用し、下記に示した核形成工程と粒子成長工程とを分離して粒子形成を行い、銀ナノワイヤ含有組成物を調製した。
1.核形成工程
反応容器内で160℃に保持したEG液100mLを攪拌しながら、硝酸銀のEG溶液(硝酸銀濃度:1.0モル/L)2.0mLを、一定の流量で1分間かけて添加した。その後、160℃で10分間保持しながら銀イオンを還元して銀の核粒子を形成した。反応液は、ナノサイズの銀微粒子の表面プラズモン吸収に由来する黄色を呈しており、銀イオンが還元されて銀の微粒子(核粒子)が形成されたことを確認した。続いて、PVPのEG溶液(PVP濃度:3.0×10−1モル/L)10.0mLを一定の流量で10分間かけて添加した。
2.粒子成長工程
上記核形成工程を終了した後の核粒子を含む反応液を、攪拌しながら160℃に保持し、硝酸銀のEG溶液(硝酸銀濃度:1.0×10−1モル/L)100mLと、PVPのEG溶液(PVP濃度:3.0×10−1モル/L)100mLを、ダブルジェット法を用いて一定の流量で120分間かけて添加した。この粒子成長工程において、30分毎に反応液を採取して電子顕微鏡で確認したところ、核形成工程で形成された核粒子が時間経過に伴ってワイヤ状の形態に成長しており、粒子成長工程における新たな微粒子の生成は認められなかった。最終的に得られた銀ナノワイヤの繊維径および繊維長を測定したところ、銀ナノワイヤの繊維径は30nmであり、繊維長は15μmであった。
3.脱塩水洗工程
粒子成長工程を終了した反応液を室温まで冷却した後、分画分子量0.2μmの限外濾過膜を用いて脱塩水洗処理を施すとともに、溶媒をエタノールに置換した。最後に液量を100mLまで濃縮して、銀ナノワイヤ分散液を調製した。最後に、銀ナノワイヤ濃度が0.1質量%となるようにエタノールで希釈し、銀ナノワイヤ含有組成物1を得た。
銀ナノワイヤ含有組成物1中における銀ナノワイヤの繊維径および繊維長を測定したところ、銀ナノワイヤの繊維径は30nmであり、繊維長は15μmであった。銀ナノワイヤの繊維径は、透過型電子顕微鏡(TEM)(製品名「H−7650」、株式会社日立ハイテクノロジーズ製)を用い、10万倍〜20万倍にて50枚撮像し、TEM付属のソフトウェアにより撮像画面上で、100本の導電性繊維の繊維径を実測し、その算術平均値として求めた。上記繊維径の測定の際には、加速電圧を「100kV」、エミッション電流を「10μA」、集束レンズ絞りを「1」、対物レンズ絞りを「0」、観察モードを「HC」、Spotを「2」とした。また、銀ナノワイヤの繊維長は、走査型電子顕微鏡(SEM)(製品名「S−4800(TYPE2)」、株式会社日立ハイテクノロジーズ製)を用い、500〜2000万倍にて100本の銀ナノワイヤの繊維長を測定し、その100本の銀ナノワイヤの繊維長の算術平均値として求めた。上記繊維長の測定の際には、信号選択を「SE」、加速電圧を「3kV」、エミッション電流を「10μA」、SE検出器を「混合」とした。銀ナノワイヤの繊維長は、走査型電子顕微鏡(SEM)(製品名「S−4800(TYPE2)」、株式会社日立ハイテクノロジーズ製)のSEM機能を用い、500〜2000万倍にて10枚撮像し、付属のソフトウェアにより撮像画面上で、100本の銀ナノワイヤの繊維長を測定し、その100本の銀ナノワイヤの繊維長の算術平均値として求めた。上記繊維長の測定の際には、45°傾斜の試料台を使用して、信号選択を「SE」、加速電圧を「3kV」、エミッション電流を「10μA〜20μA」、SE検出器を「混合」、プローブ電流を「Norm」、焦点モードを「UHR」、コンデンサレンズ1を「5.0」、W.D.を「8mm」、Tiltを「30°」にした。なお、TE検出器は予め抜いておいた。銀ナノワイヤの繊維径を測定する際には、以下の方法によって作製された測定用サンプルを用いた。まず、銀ナノワイヤ含有組成物1を、組成物の分散媒に合わせてエタノールで銀ナノワイヤの濃度を0.05質量%以下に希釈した。さらに、この希釈した銀ナノワイヤ含有組成物1をTEMまたはSTEM観察用のカーボン支持膜付きグリッドメッシュ(Cuグリッド型番「♯10-1012 エラスチックカーボンELS-C10 STEM Cu100Pグリッド仕様」)上に1滴滴下し、室温で乾燥させ、上記条件で観察し、観察画像データとした。これを元に算術平均値を求めた。銀ナノワイヤの繊維長を測定する際には、以下の方法によって作製された測定用サンプルを用いた。まず、銀ナノワイヤ含有組成物1をB5サイズの厚み50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの未処理面に塗布量10mg/m2となるように塗布し、分散媒を乾燥させて、PETフィルム表面に導電性繊維を配置させて、導電性フィルムを作製した。この導電性フィルムの中央部から10mm×10mmの大きさに切り出した。そして、この切り出した導電性フィルムを、45°傾斜を有するSEM試料台(型番「728−45」、日新EM株式会社製、傾斜型試料台45°、φ15mm×10mm M4アルミニウム製)に、銀ペーストを用いて台の面に対し平坦に貼り付けた。さらに、Pt−Pdを20秒〜30秒スパッタして、導通を得た。なお、以下の銀ナノワイヤの繊維径および繊維長も同様にして求めた。
(銀ナノワイヤ含有組成物2)
銀ナノワイヤの濃度を0.2質量%にしたこと以外は、銀ナノワイヤ含有組成物1と同様にして、銀ナノワイヤ含有組成物2を得た。
<光透過性樹脂用組成物の調製>
下記に示す組成となるように各成分を配合して、光透過性樹脂用組成物1を得た。
(光透過性樹脂用組成物1)
・ペンタエリスリトールトリアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物(製品名「KAYARAD−PET−30」、日本化薬株式会社製):5質量部
・重合開始剤(製品名「イルガキュア184」、BASFジャパン社製):0.25質量部
・メチルエチルケトン(MEK):70質量部
・シクロヘキサノン:24.75質量部
<実施例1>
まず、光透過性基材としての片面のみに下地層を有する厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(製品名「コスモシャインA4100」、東洋紡株式会社製)を準備し、ポリエチレンテレフタレートフィルムの下地層の表面に、ハードコート層用組成物1を塗布し、塗膜を形成した。次いで、形成した塗膜に対して、0.5m/sの流速で50℃の乾燥空気を15秒間流通させた後、さらに10m/sの流速で70℃の乾燥空気を30秒間流通させて乾燥させることにより塗膜中の溶剤を蒸発させ、紫外線を積算光量が100mJ/cm2になるように照射して塗膜を硬化させることにより、膜厚2μmのハードコート層を形成した。
ハードコート層を形成した後、ポリエチレンテレフタレートフィルムにおける下地層側の面とは反対側の未処理面に、銀ナノワイヤ含有組成物1を塗布量10mg/m2となるように塗布した。次いで、塗布した銀ナノワイヤ含有組成物1に対して、0.5m/sの流速で50℃の乾燥空気を15秒間流通させた後、さらに10m/sの流速で70℃の乾燥空気を30秒間流通させて銀ナノワイヤ含有組成物1中の分散媒を蒸発させることにより、上記未処理面に、複数の銀ナノワイヤを配置させた。
次いで、銀ナノワイヤを覆うように上記光透過性樹脂用組成物1を塗布し、塗膜を形成した。そして、形成した塗膜に対して、0.5m/sの流速で50℃の乾燥空気を15秒間流通させた後、さらに10m/sの流速で70℃の乾燥空気を30秒間流通させて乾燥させることにより塗膜中の溶剤を蒸発させ、紫外線を積算光量が100mJ/cm2になるように照射して塗膜を硬化させることにより、膜厚100nmの光透過性樹脂を形成し、光透過性樹脂および光透過性樹脂中に配置された銀ナノワイヤからなる膜厚100nmの導電部を得た。
導電部を形成した後、導電部の表面に剥離可能に厚さ50μmのポリエチレンフィルム(製品名「PAC3−50THK」、株式会社サンエー化研製)である保護フィルムを貼り付けて、保護フィルム付き導電性フィルムを得た。
実施例1に係る導電部の膜厚は、走査透過型電子顕微鏡(STEM)を用いて撮影された導電部の断面写真からランダムに10箇所厚みを測定し、測定された10箇所の厚みの算術平均値とした。具体的な断面写真の撮影は、以下の方法によって行われた。まず、導電性フィルムから断面観察用のサンプルを作製した。詳細には、2mm×5mmに切り出した導電性フィルムをシリコーン系の包埋板に入れ、エポキシ系樹脂を流し込み、導電性フィルム全体を樹脂にて包埋した。その後、包埋樹脂を65℃で12時間以上放置して、硬化させた。その後、ウルトラミクロトーム(製品名「ウルトラミクロトーム EM UC7」、ライカ マイクロシステムズ社製)を用いて、送り出し厚み100nmに設定し、超薄切片を作製した。作製した超薄切片をコロジオン膜付メッシュ(150)にて採取し、STEM用サンプルとした。その後、走査透過型電子顕微鏡(STEM)(製品名「S−4800(TYPE2)」、株式会社日立ハイテクノロジーズ製)を用いて、STEM用サンプルの断面写真を撮影した。この断面写真の撮影の際には、検出器(選択信号)を「TE」、加速電圧を30kV、エミッションを「10μA」にした。倍率については、フォーカスを調節しコントラストおよび明るさを各層が見分けられるか観察しながら5000倍〜20万倍で適宜調節した。好ましい倍率は、1万倍〜5万倍、更に好ましくは2.5万倍〜4万倍である。倍率を上げすぎると層界面の画素が粗くなりわかりにくくなるため、膜厚測定においては倍率を上げすぎない方がよい。なお、断面写真の撮影の際には、さらに、アパーチャーをビームモニタ絞り3、対物レンズ絞りを3にし、またW.D.を8mmにした。実施例1のみならず、以降の実施例および比較例も全て、導電部の膜厚はこの方法によって測定された。
<実施例2>
銀ナノワイヤ含有組成物1の代わりに銀ナノワイヤ含有組成物2を用いて、導電部を形成したこと以外は、実施例1と同様にして、保護フィルム付き導電性フィルムを得た。
<実施例3>
実施例3においては、導電部の表面に、ポリエチレンフィルム(製品名「PAC3−50THK」、株式会社サンエー化研製)の代わりに、厚さ47μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(製品名「NSA33T」、株式会社サンエー化研製)である保護フィルムを剥離可能に貼り付けたこと以外は、実施例1と同様にして、保護フィルム付き導電性フィルムを得た。
<実施例4>
実施例4においては、ハードコート層を形成する前に、ポリエチレンテレフタレートフィルムを除電したこと以外は、実施例1と同様にして、保護フィルム付き導電性フィルムを得た。除電は、電圧印加式除電器(製品名「nano Type Static Eliminator」、ウエッジ株式会社製)を用いて行われた。除電器の設定は、ハードコート層形成後に設置した表面電位計(製品名「KSD−1000」、春日電機株式会社製)の値が±0kvになるように印加電圧を調整した。
<比較例1>
まず、片面のみに厚さ100nmの下地層を有する厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(製品名「コスモシャインA4100」、東洋紡株式会社製)を準備し、ポリエチレンテレフタレートフィルムにおける下地層側の面とは反対側の未処理面に、銀ナノワイヤ含有組成物1を塗布量10mg/m2となるように塗布した。次いで、塗布した銀ナノワイヤ含有組成物1に対して、0.5m/sの流速で50℃の乾燥空気を15秒間流通させた後、さらに10m/sの流速で70℃の乾燥空気を30秒間流通させて銀ナノワイヤ含有組成物1中の分散媒を蒸発させることにより、上記未処理面に、複数の銀ナノワイヤを配置させた。
次いで、銀ナノワイヤを覆うように上記光透過性樹脂用組成物1を塗布し、塗膜を形成した。そして、形成した塗膜に対して、0.5m/sの流速で50℃の乾燥空気を15秒間流通させた後、さらに10m/sの流速で70℃の乾燥空気を30秒間流通させて乾燥させることにより塗膜中の溶剤を蒸発させ、紫外線を積算光量が100mJ/cm2になるように照射して塗膜を硬化させることにより、膜厚100nmの光透過性樹脂を形成し、光透過性樹脂および光透過性樹脂中に配置された銀ナノワイヤからなる膜厚100nmの導電部を得た。
導電部を形成した後、光透過性基材の下地層の表面に、ハードコート層用組成物1を塗布し、塗膜を形成した。次いで、形成した塗膜に対して、0.5m/sの流速で50℃の乾燥空気を15秒間流通させた後、さらに10m/sの流速で70℃の乾燥空気を30秒間流通させて乾燥させることにより塗膜中の溶剤を蒸発させ、紫外線を積算光量が100mJ/cm2になるように照射して塗膜を硬化させることにより、膜厚2μmのハードコート層を形成して、導電性フィルムを得た。
<比較例2>
比較例2においては、銀ナノワイヤ含有組成物1の代わりに銀ナノワイヤ含有組成物2を用いて、導電部を形成したこと以外は、比較例1と同様にして、導電性フィルムを得た。
<比較例3>
比較例3においては、導電部を形成する前に、ポリエチレンテレフタレートフィルムを除電したこと以外は、比較例1と同様にして、保護フィルム付き導電性フィルムを得た。除電は、電圧印加式除電器(製品名「nano Type Static Eliminator」、ウエッジ株式会社製)を用いて行われた。
<外観評価>
実施例1〜4に係る保護フィルム付き導電性フィルムから、保護フィルムを剥離して、導電性フィルム単体とした状態で、導電部の表面を観察し、導電部にひび割れ状の筋ムラが存在しているか否か評価した。また、比較例1〜3に係る導電性フィルムにおいても、導電部の表面を観察し、上記同様に導電部にひび割れ状の筋ムラが存在しているか否か評価した。具体的には、まず1m×1mの大きさの導電性フィルムで目視観察を行い、ひび割れ状の筋ムラ等の欠陥が確認された場合には、導電性フィルムからこの欠陥を含む10cm×10cmの大きさのサンプルを切り出した。そして、このサンプルにおける導電部の表面を光学顕微鏡で観察した。評価基準は、以下の通りとした。
○:導電部にひび割れ状の筋ムラが観察されなかった、または若干観察されたが実用上問題がないレベルであった。
×:導電部にひび割れ状の筋ムラが明確に観察された。
<貼り付き防止性>
実施例1〜4に係る保護フィルム付き導電性フィルムおよび比較例1〜3に係る導電性フィルムにおける貼り付き防止性を評価した。具体的には、実施例1〜4に係る保護フィルム付き導電性フィルムにおいては、まず、縦20mm×横20mmの大きさに切り出した2枚の保護フィルム付き導電性フィルムを、ハードコート層と保護フィルムが接するように重ね合わせて、評価サンプルとした。また、比較例1〜3に係る導電性フィルムにおいては、縦20mm×横20mmの大きさに切り出した2枚の導電性フィルムを、ハードコート層と導電部が接するように重ね合わせて、評価サンプルとした。そして、評価サンプルを永久歪試験機(製品名「CO−201」、テスター産業株式会社製)を用いて、1500Nの荷重を加えた状態で、12時間放置した。その後、評価サンプルを上記永久歪試験機から取り外して、評価サンプルを構成するフィルム同士が貼り付いているか評価した。評価基準は、以下の通りとした。
○:フィルムの貼り付きが確認されなかった。
×:フィルムの貼り付きが確認された。
<表面抵抗値測定>
実施例1〜4に係る保護フィルム付き導電性フィルムから、保護フィルムを剥離して、導電性フィルム単体とした状態で、導電部の表面抵抗値を測定した。また、比較例1〜3に係る導電性フィルムにおいても、導電部の表面抵抗値を測定した。具体的には、導電性フィルムにおいて、JIS K7194:1994(導電性プラスチックの4探針法による抵抗率試験方法)に準拠した接触式の抵抗率計(製品名「ロレスタAX MCP−T370型」、株式会社三菱ケミカルアナリテック製、端子形状:ASPプローブ)を用いて、導電部の表面抵抗値を測定した。接触式の抵抗率計による表面抵抗値の測定は、縦80mm×横50mmの大きさに切り出した導電性フィルムを平らなガラス板上に導電部側が上面となり、かつ導電性フィルムが均一な平面状態となるように配置して、ASPプローブを導電部の中心に配置し、全ての電極ピンを導電部に均一に押し当てることによって行った。接触式の抵抗率計による測定の際には、シート抵抗を測定するモードであるΩ/□を選択した。その後は、スタートボタンを押し、ホールドして、測定結果を得た。表面抵抗値の測定箇所は、導電性フィルムの中心部の3箇所とし、表面抵抗値は、3箇所の表面抵抗値の算術平均値とした。表面抵抗値の測定は、23℃および相対湿度55%の環境下で行った。
<フレキシブル性>
実施例1〜4に係る保護フィルム付き導電性フィルムから、保護フィルムを剥離し、導電性フィルム単体とした状態で、連続折り畳み試験を行い、フレキシブル性を評価した。具体的には、連続折り畳み試験前の導電性フィルムから縦125mm×横50mmの長方形状のサンプルを切り出した。導電性フィルムからサンプルを切り出した後、それぞれのサンプルの長手方向の導電部の両端部のそれぞれ縦10mm×横50mmの部分に銀ペースト(製品名「DW−520H−14」、東洋紡株式会社製)を塗布し、130℃で30分加熱して、導電部の両端部に硬化した銀ペーストを形成した。なお、導電部の両端部間の距離は、それぞれ105mmで一定とした。そして、連続折り畳み試験前のサンプルの導電部の電気抵抗値をテスター(製品名「Digital MΩ Hitester 3454-11」、日置電機株式会社製)を用いて、測定した。具体的には、Digital MΩ Hitester 3454−11は、2本のプローブ端子(赤色プローブ端子および黒色プローブ端子、両方ともピン形)を備えているので、赤色プローブ端子を一方の端部に設けられた硬化した銀ペーストに接触させ、かつ黒色プローブ端子を他方の端部に設けられた硬化した銀ペーストに接触させて電気抵抗値を測定した。その後、耐久試験機(製品名「DLDMLH−FS」、ユアサシステム機器株式会社製)に、サンプルの短辺(50mm)側を固定部でそれぞれ固定し、図3(C)に示したように対向する2つの辺部の最小の間隔が4mm(屈曲部の外径4mm)となるようにして取り付け、ハードコート層側が内側(導電部が外側)となるようにサンプルを10万回繰り返し180°折り畳む連続折り畳み試験を行った。連続折り畳み試験を行った後、連続折り畳み試験後のサンプルにおいて、連続折り畳み試験前のサンプルと同様にして、導電部の電気抵抗値をそれぞれ測定した。そして、連続折り畳み試験前のサンプルの導電部の電気抵抗値に対する連続折り畳み試験後のサンプルの導電部の電気抵抗値の比である電気抵抗値比(連続折り畳み試験後のサンプルの導電部の電気抵抗値/連続折り畳み試験前のサンプルの導電部の電気抵抗値)を求めた。そして、連続折り畳み試験の結果をフレキシブル性として、以下の基準で評価した。なお、電気抵抗値比は、3回測定して得られた値の算術平均値とした。
◎:電気抵抗値比が1.5以下であった。
○:電気抵抗値比が1.5を超え3以下であった。
×:電気抵抗値比が3を超えていた。
<全光線透過率測定>
実施例1〜4に係る保護フィルム付き導電性フィルムから、保護フィルムを剥離し、導電性フィルム単体とした状態で、ヘイズメーター(製品名「HM−150」、村上色彩技術研究所製)を用いて、JIS K7361:1997に従って全光線透過率を測定した。全光線透過率は、導電性フィルム全体で測定したときの値であり、また50mm×100mmの大きさに切り出した後、カールや皺がなく、かつ指紋や埃等がない状態で導電部側が非光源側となるように設置し、また全光線透過率は3回測定して得られた値の算術平均値とした。
<ヘイズ測定>
実施例1〜4に係る保護フィルム付き導電性フィルムから、保護フィルムおよび保護フィルムを剥離し、導電性フィルム単体とした状態で、ヘイズメーター(製品名「HM−150」、村上色彩技術研究所製)を用いて、JIS K7136:2000に従って導電性フィルムのヘイズ値(全ヘイズ値)を測定した。ヘイズ値は、導電性フィルム全体で測定したときの値であり、また50mm×100mmの大きさに切り出した後、カールや皺がなく、かつ指紋や埃等がない状態で導電部側が非光源側となるように設置し、またヘイズ値は3回測定して得られた値の算術平均値とした。
比較例1〜3に係る導電性フィルムにおいては、導電部の形成後にハードコート層を形成したので、ひび割れ状の筋ムラが明確に観察された。また、比較例1〜3に係る導電性フィルムにおいては、保護フィルムを備えていなかったので、巻取性に劣っていた。これに対し、実施例1〜4に係る保護フィルム付き導電性フィルムにおいては、導電部の形成前にハードコート層を形成したので、ひび割れ状の筋ムラが観察されず、または若干観察されたが実用上問題がないレベルであった。また、実施例1〜4に係る保護フィルム付き導電性フィルムにおいては、保護フィルムを備えたので、巻取性に優れていた。
なお、実施例1〜4に係る導電性フィルムにおけるハードコート層と光透過性基材のマルテンス硬度を測定したところ、ハードコート層の方が光透過性基材よりもマルテンス硬度が高かった。ハードコート層のマルテンス硬度は、微小硬さ試験機(製品名「ピコデンター(PICODENTOR) HM500」、フィッシャー・インスツルメント社製、ISO14577−1、ASTM E2546準拠)測定サンプルを用いて、測定した。具体的には、まず1mm×10mmに切り出した導電性フィルムを包埋樹脂によって包埋したブロックを作製し、このブロックから一般的な切片作製方法によって穴等がない均一な、厚さ70nm以上100nm以下の切片を切り出した。切片の作製には、「ウルトラミクロトーム EM UC7」(ライカ マイクロシステムズ株式会社)を用いた。そして、この穴等がない均一な切片が切り出された残りのブロックを測定用サンプルとした。そして、この測定用サンプルを除振台に平行に設置した微小硬さ試験機の測定ステージに固定した。測定用サンプルを微小硬さ試験機の測定ステージに固定した後、以下の測定条件でハードコート層の断面の押込み量100nm位置のマルテンス硬度を測定した。マルテンス硬度は、測定用サンプルのハードコート層の断面中央付近の任意の3点を測定し、得られた3点の硬度の算術平均値とした。なお、マルテンス硬度を算出する際には、ピコデンター HM500で測定したい硬度種類として「HM」(マルテンス硬度)を選択することで自動算出された。光透過性基材のマルテンス硬度もハードコート層のマルテンス硬度と同様の方法によって測定した。
(測定条件)
・圧子形状:ビッカース(四角錐ダイヤモンド圧子)(先端部分の対面角136°の正四角錐)
・荷重制御方式:最大荷重40mNまで
・荷重の増加時間:20秒
・クリープ時間:5秒
・荷重の除去時間:20秒
・押込み量:100nm
・測定時の温度:25℃
・測定時の湿度:50%
測定のプロファイルは、20秒かけて、0mNから40mNまで荷重を負荷し、5秒間40mNを保持し、その後20秒かけて40mNから0mNへ戻した。