具体的には、「差別的切開取り付け部(DDA)」が開示される。用語「差別的」は、差別的切開取り付け部が硬組織の破壊を回避しながら軟組織を破壊することができるため使用される。差別的切開部材(DDM)と称される差別的切開取り付け部のエフェクタ端部は、硬組織及び軟組織の双方からなる組織に対して押圧されることができ、軟組織は、硬組織よりもはるかに容易に破壊される。それゆえに、DDMを有するDDAを備えた差別的切開器具(DDI)が複合組織に押圧されると、差別的切開器具は軟組織を破壊し、それにより、硬組織が露出する。この差別的動作は、自動であって、装置設計の機能である。注意は、ブラントジセクションのための伝統的な方法よりも手術者にとっての注意力は少なくてすみ、組織に対する偶発的な損傷の危険性は、大幅に低減される。
本特許出願の目的のために、「軟組織」は、ブラントジセクション中に分離され、引き裂かれ、除去され又は別の形で一般的に破壊される様々な軟らかい組織として定義される。「ターゲット組織」は、ブラントジセクション中に血管、胆嚢、尿道又は神経束など、単離されてその完全性が保存される組織として定義される。「強固組織」は、機械的に強く、通常、堅く詰まったコラーゲン又は他の細胞外繊維性基質の1つ以上の層を含む組織として定義される。強固組織の例は、血管壁、神経繊維の鞘、筋膜、腱、靭帯、胆嚢、心膜及び他の多くを含む。「複合組織」は、軟組織及び強固組織の双方から構成される組織であり、ターゲット組織を含むことができる。
本願明細書に開示される実施形態は、硬組織を破壊せずに軟組織を差別的に分離するブラントジセクション用の方法及び装置を含む。我々は、複合組織の安全なブラントジセクションのための外科用機械への取り付けに手を使用するための差別的切開器具用の駆動機構及び関連する要素を開示している。差別的切開駆動機構は、第1に、第1の基端が外科用機械(例えば、ハンドヘルド腹腔鏡器具又は外科用ロボット)に取り付けるのに適した取り付けベースに関連付けられた、第1の基端及び第2の先端を有する細長部材(ハウジングとすることができる)と、第2に、回転を発生させる回転駆動系と、第3に、その回転を伝達する駆動輪と、第4に、その回転を振動に変換するモーションフィルタ、最後に、その振動を複合組織の切開に変換するための差別的切開部材を大まかに備えることができる。モーションフィルタは、1つのステップにおいて平面振動への駆動輪の回転運動をさらに改善することができ、それにより、差別的切開取り付け部の設計及び製造を大幅に単純化することができる。
図3A乃至図3J−2を参照すると、我々は、DDMの振動を駆動するための代替駆動機構100の1つの実施形態を開示している。この駆動機構100は、ハンドル若しくは外科術用ロボット又は他の外科用機械に取り付けられることができる。図3Aは、カバー385内に収容された駆動機構100を開示しており、駆動機構100は、さらに、複合組織(図示しない)に実質的に向けられた回転駆動系304の先端396と、取り付けベース375に実質的に向けられ且つ取り付けベース375に関連付けられた回転駆動系304の基端397とを有する、中央の長手軸398まわりの回転運動390を供給する回転駆動系304と、回転駆動系304の中央の長手軸398と一致する軸を有し且つ駆動系304の遠位に配置された駆動輪150とを備え、駆動輪の回転391は、回転駆動系304によって供給され、駆動輪150は、さらに、駆動輪150が回転する軸でもある長手軸398から離れた非ゼロ半径に配置された駆動点155を備える。差別的切開部材110は、差別的切開部材110が回転駆動系304の中央長手軸398に対して略横方向である部材回転振動の軸112のまわりに回転可能でありながら、駆動輪150から遠位に位置決めされる。差別的切開部材110は、さらに、くさび状本体111と、部材回転振動の軸112と略一致して同心とすることができる軸113と、装置100における最先端に配置され且つ複合組織(図示しない)に実質的に向けられた少なくとも1つの組織係合面120と、差別的切開部材110の部材回転振動の略横軸112に対して近位に配置された配置されたトルク点130であって、トルク点130が駆動輪の回転391によって中央の長手軸398まわりに回転可能に移動するように駆動点155に動作可能に関連付けられたトルク点130と、差別的切開部材110の本体111及びトルク点130に動作可能に接続する略平坦なモーションフィルタ140であって、差別的回転振動のその略横軸112まわりに面内回転振動で差別的切開部材110を作動させるようにトルク点130の回転運動入力391の面成分出力運動392のみを駆動点155を介して駆動輪150から伝達するモーションフィルタ140とを備える。それゆえに、回転駆動系304が駆動輪150を連続的に回転させると、駆動輪150における駆動点155もまた連続的に回転し、トルク点130を連続的に回転させる。トルク点130は、この実施形態においては面内変形に抵抗する(そのため、その平面内の動きを伝達する)が容易な面外変形を許容する(そのため、その平面内の動きを伝達しない)弾性平板状部材から形成されるモーションフィルタ140によって差別的切開部材110の本体111に取り付けられ、それゆえに差別的切開部材110の本体111に振動平面運動392のみを伝え、それゆえに部材回転振動の略横軸112まわりに振動し、ここでは振動平面運動392で組織係合面120を複合組織に対して少なくとも1つの方向392に移動させ、それにより、この実施形態は、差別的切開部材110の振動を複合組織の切開に変換し、複合組織における硬組織の破壊を回避しながら複合組織における少なくとも1つの軟組織を破壊する。
少なくとも図3A、図3F−0乃至図3F−4、図3G−1乃至図3G−4、図3J−1及び図3J−2及び図4Aを参照すると、回転駆動系304の1回の完全な回転が複合組織に対して差別的切開部材110の組織係合面120の平面運動に沿った2つの経路(一方が他方に対して反対方向)を駆動する旨を容易に理解することができる。それゆえに、100Hzで動作する(すなわち、回転する)モータ310は、毎秒200経路で切開される組織を通過して組織係合面120を駆動する。駆動輪150の駆動輪回転391を参照すると、回転391が位置Aで始まる場合、差別的切開部材110の組織係合面120は、位置A’を指すように機械的に拘束される。それゆえに、駆動輪150が位置Bまで回転すると、ここでは平坦な板バネとして示されているモーションフィルタ140は、それ自体の平面から容易に逸脱し、それゆえに、部材回転振動の略横軸112まわりの(駆動輪回転391の)平面成分392のみを差別的切開部材110に伝達し、それゆえに、位置A’と同じ平面内の位置B’まで組織係合面120を回転させる。駆動輪150が位置Cまで回転391を継続すると、差別的切開部材110の組織係合面120は、位置C’まで回転し、平面運動392を継続する。駆動輪150が位置Dまで進むと、組織係合面120は、点D’
(位置B’と同一)まで移動する。最後に、駆動輪150が位置Aまで戻ると、差別的切開部材110の組織係合面120もまた、位置A’まで戻り、差別的切開部材110の平面運動392の振動サイクルを完了し、そのため、切開されるべき複合組織に対する組織係合面120の平面振動サイクルを完了する。
少なくとも図3Aを参照し続けると、回転駆動系304は、さらに、直流ブラシ付き電気モータ、ブラシレス電気モータ、空気圧モータなどから構成されることができる。回転駆動系304は、さらに、例えば駆動輪150における高トルクと引き換えに回転運動391の速度を低減させ、したがって組織係合面120における確実さを向上させ、必要に応じてより強力な切開を可能とするように、モータ310のトルク及び回転速度を変化させるための変速機311を備えることができる。実施形態が電気的である場合には、実施形態が電気的である場合には、電力は、ワイヤ399によってモータ310に供給されることができる。モーションフィルタ140は、例えば金属又は硬質ポリマーから構成される例えば板バネなどの弾性シートから形成されることができる。
これらのニーズに対処する複数モータ回転駆動系304の他の実施形態において、回転駆動系304は、少なくとも1つの民生品の一体化された小径電気モータ310及び変速機311から構成され、コンパクトな装置を実現する。そのようなモータ−変速機の組み合わせの1つの市販の例は、Maxon USA社からの4ミリメートル径、26ミリメートル長のEC4ブラシレスモータである。これ又は同様のモータを使用する回転駆動系によって構成される差別的切開取り付け部は、それゆえに、低侵襲手術のために定期的に使用される器具の最先端に取り付けるのに十分にコンパクトである。
モーションフィルタ140は、例えば金属又は硬質ポリマーから構成される例えば板バネなどの弾性シートから形成されることができる。モーションフィルタ140の材料は、差別的切開部材110のものとは異なることができ、この場合、モーションフィルタ140をその内部に保持するためのモーションフィルタクランプ142を設けることが有利であり得る。部材回転振動の略横軸112は、軸を受け入れるための孔又は空洞114から構成されることができ、必要に応じて、それらの間の摩擦を低減するためにブッシュ又はころ軸受をさらに装着した孔114とすることができる。
図3B乃至図3F−5は、モーションフィルタ140を有する振動する差別的切開部材110のいくつかの図を示している。最初に図3A及び図3Bを参照すると、振動する差別的切開部材110は、略横軸112に回転可能関連付けられた本体111を有する。本体111は、軸113 ブッシュ又はころ軸受115(図3A及び図4A)をさらに受け入れるために軸受空洞114を有することができる。軸受空洞114はまた、低摩擦ジョイントが本体材料と軸112を形成する材料との間に得られることを条件として、振動する差別的切開部材110のくさび状本体111の材料から直接形成されることができる。図3Aにおいて、軸112は、軸113と一致し且つ軸113によって画定される。ここに示された実施形態において、組織係合面120は、それが組織に飛び込んで組織を安全に切開することから最先端である。組織係合面120の反対側は、振動する差別的切開部材110の最基端部、すなわち、駆動輪150の駆動点155に動作可能に関連付けられ且つそれから回転運動を受け入れるトルク点130である(図3Aを参照)。トルク点130は、駆動点155を介して供給される回転入力と係合して受け入れるように多くの形態をとることができる。(図示された)1つの実施形態において、駆動点155(図3Aを参照)は、ソケットとすることができる一方で、トルク点130は、切頂玉の形態をとることができる。
振動する差別的切開部材110の本体111にモーションフィルタ140を取り付けるために、図示された実施形態は、モーションフィルタクランプ142を特徴としている。モーションフィルタクランプ142は、モーションフィルタ140の最先端をしっかりと把持する。モーションフィルタ140は、それ自体の平面を通って可撓性があるがそれ自体の平面内でせん断に抵抗する任意の平面状物品とすることができる。図示された実施形態において、モーションフィルタ140は、バネ鋼から形成される。それゆえに、駆動点155からの回転入力は、駆動機構100の長軸398まわりの円運動においてトルク点130を駆動に続く。バネ鋼のモーションフィルタ140の柔軟な湾曲に起因して、また、回転軸112まわりの差別的切開部材110の一定の回転に起因して(ここで図3F−0も参照すると)、駆動輪150の円運動391の垂直成分126は、モーションフィルタ140の平面に対して垂直に移動することから伝達しない:差別的切開部材110の平面運動392を何らもたらさない。モーションフィルタ140の平面に平行に移動する回転運動391の水平成分124は、しかしながら、バネ鋼がその平面内で非常に剛性であり且つ差別的切開部材110がその回転軸112まわりに自由に回転することから、差別的切開部材110に伝達する。
それゆえに、駆動輪150の安定した回転運動391及びモーションフィルタ140による動き成分124及び126のフィルタリングが与えられると、差別的切開部材110は、図3Bにおける矢印136及び138によって示されるように正弦波状に振動する。より詳細には、その関連するモーションフィルタ140を有する振動する差別的切開部材110は、全体として、略平坦なモーションフィルタ140によって画定される平面内で剛性である。トルク点130が矢印132によって示される方向に駆動されると、差別的切開部材110の組織係合面120は、矢印136の方向に移動し、トルク点130が矢印134によって示される方向に駆動されると、差別的切開部材110の組織係合面120は、矢印138の方向に移動する。それゆえに、回転駆動系304からの安定した一定の回転入力391(図3Aを参照)は、組織係合面120において双方向の正弦波運動392を生成する。
図3Cは、モーションフィルタ140を有する振動する差別的切開部材110(明確化のために単独で示されている)の平面図を示している。この図においてはページ面に対して平行であるトルク点130の回転運動391の(図3F−0の断面図において124として示される)水平成分132及び134は、モーションフィルタクランプ142を介して振動する差別的切開部材110の本体111に伝達され、矢印136及び138によって示されるように組織係合面120を駆動する。しかしながら、この図においてはページ面を通過するトルク点130の回転運動の垂直成分(図3F−0の断面座右における要素126)は伝わらない。また、三角ビームとして略平坦なモーションフィルタ140を製造することが有利であり得ることにも留意されたい。モーションフィルタ140は、本質的に、エンドロードされた片持ち梁である。三角形の形態は、応力が梁の長さに沿って一定であることを確実にし、手術中に負荷が変化するもとで、駆動機構100が毎秒数百サイクルで動作しているときの応力集中に起因する損傷を防止する。また、モーションフィルタ140の三角形の形態は、部材回転振動の略横軸112に最も近い塊に集中し、差別的切開部材110を振動させるのに必要なエネルギを低減する。
図3Dを参照すると、これは、モーションフィルタ140を有する振動する差別的切開部材110の実施形態の側面図を示している。示された図(図3D)における振動する差別的切開部材110の入力された動き(図3B及び図3Cにおける矢印136及び138)は、ここではページ面内及びページ面外である。垂直成分126に沿ったモーションフィルタ140のトルク点130の柔軟な湾曲は、図3Dに示されるように左右である。モーションフィルタクランプ142の形状は、この図においてより明確に示されている。振動する差別的切開部材110の本体111は、さらに、モーションフィルタ140の移動に衝突するプロファイルカム144を形成する。プロファイルカム144の形状は、モーションフィルタ140の負荷を制御するのに役立つ;この実施形態においてはバネ鋼が湾曲することから、それは、モーションフィルタプロファイルカム144の形状に適合する。プロファイルカム144の形状は任意であり、反動を防止して駆動機構100の動きを滑らかに保持するためにモーションフィルタ140のバネ鋼をプレロードするのに役立つことができる。図3Eは、モーションフィルタ140を有する振動する差別的切開部材110の端面図を示している。トルク点130の回転移動は、図3F−1乃至図3F−4においてより明確に示されているように、実質的にページ面内に位置する。
明確化するために、図3F−0は、差別的切開部材110及びモーションフィルタ140に対する駆動輪150及び駆動点155の回転運動391(図3Aも参照)の成分を遠位にみた断面図で示している。駆動輪150の回転運動391は、垂直成分126及び水平成分124の2つの成分から構成される。例えば鋼の板バネなどの弾性平板であるモーションフィルタ140は、その平面から容易に湾曲し、回転運動391の垂直成分126に容易に適応する;部材回転振動の略横軸112(図3Aを参照)は垂直成分126に抵抗することから、軸112まわりの動きは、何ら発生し得ない。モーションフィルタ140は、それ自体の平面内でかなりの剛性を有する弾性平板であり、部材回転振動の略横軸112は、同じ平面内での容易な回転運動を明確に許容することから、回転運動391の水平成分124の全て(及びそれのみ)は、差別的切開部材110に対して回転駆動系304から伝達され(図3Aを参照)、それゆえにその平面内で振動を誘発し、そのため、切開されるべき複合組織を横切って双方向に(水平成分124に平行に)組織係合面120を掃引する(図3Aを参照)。
図3F−1乃至図3F−4は、さらに、回転駆動系304(図3Aを参照)のこの部分の一連(ここでは、反時計回り)の動きの駆動輪150を通る断面図を示している。駆動輪150は、トルク点130に係合し、したがってトルク点130を駆動する駆動点155を駆動し、それ自体が振動する差別的切開部材110のモーションフィルタ140を駆動する。図3F−1において、駆動輪150は、駆動点155が観察者の左(9時の位置)となるように回転される。駆動点155に係合されるトルク点130は、駆動点155にしたがい、モーションフィルタ140を左に押しやり、部材回転振動(図3Aを参照)の軸112まわりに回転するように差別的切開部材110を順次押しやる。これは、必ず遠位の組織係合面120(この図においてみえない;それは、差別的切開部材110の反対側の端部にある)を右に押しやる。
図3F−2において、駆動輪150は、トルク点130が移動の下方(6時の位置)となるように反時計回りに回転している;そのとき、振動する差別的切開部材110の全体は中央に戻っている。トルク点130の回転運動391の(この図においては)垂直成分126(図3C及び図3Dを参照)を除去した、モーションフィルタ140の下向き湾曲状態に留意されたい。図3F−3において、駆動輪150(したがって、駆動点155及びトルク点130)は、観察者の右(3時の位置)へと反時計回りに循環しており、観察者の左に組織係合面120を駆動する。図3F−4は、観察者の「上」位置(12時)まで反時計回りに回転する駆動点155及びトルク点130により、サイクルを継続する。時計回りに回転運動391を継続すると、駆動輪150を、したがって駆動点155を、したがってトルク点130を9時位置にもたらし、サイクルを完了する。非回転トルク点130を駆動する駆動輪150の連続回転391は、駆動点155における摩擦損失が駆動機構100の効率を削減することができることを意味する。図3F−5は、駆動輪150がころ軸受によって形成された駆動点155’を介してトルク点130に動作可能に接続し、駆動輪150とトルク点130との間の相対回転に起因して摩擦損失を大幅に低減する駆動機構100の実施形態を示している。
ここで図3G−1乃至図3G−4を参照すると、側面図から同じ過程がみえる;振動する差別的切開部材110の一連の動きは、モーションフィルタ140を介した駆動系304(ここでは部分的に示され、図3Aにおいて完全に示される)との係合に起因して振動する。図3G−1乃至図3G−4において、さらに、ここでは切頂玉として示されたトルク点130がここではソケットとして示された駆動点155の内部に大幅に傾いていることがわかる。図3G−1(図3F−1に示された装置の側面図)を参照すると、モータ310は、駆動軸156を介して、駆動点155が観察者から最も遠いように駆動輪150を回転している。駆動点155に係合されたトルク点130は、必ず駆動点155にしたがい、モーションフィルタ140(この実施形態においては板バネ)を観察者から離れて回転するように押しやり、それゆえに、差別的切開部材110を部材回転振動の軸112まわりに回転するように押しやり、したがって、観察者に向かって遠位の組織係合面120を必ず押しやる。振動サイクルのこの段階において、弾性平板状のモーションフィルタ140が湾曲していないことがわかる。また、モーションフィルタクランプ140が差別的切開部材110の本体111に形成され(図3Aを参照)、モーションフィルタ140を保持することもわかる。この時点で、プロファイルカム144は係合しない。
図3G−2において、モータ310が(駆動軸156を介して)トルク点130がその回転運動391(図3Aを参照)の下方にここであるように反時計回り駆動輪150を回転させる、図3F−2に示された段階の側面図がみえる。振動する差別的切開部材110は、中央に戻り、この時点で組織係合面120が直接遠位、この図においては観察者の右(図3Aにおける位置B’及びD’に相当)に向いている。しかしながら、差別的切開部材110がページ面内での回転を示さないように、弾性平板状のモーションフィルタ140の下向き湾曲状態は、トルク点130の回転運動391(図3Aを参照)の垂直成分126(図3F−0を参照)を(この図においては)除去していることに留意されたい。また、プロファイルカム144の滑らかな円形形状がここで係合され、モーションフィルタ140の先端部を徐々に支持しており、それゆえにここでは鋼の板バネであるモーションフィルタ140のローディングを制御することにも留意されたい。
次の図(図3G−3、図3F−3に示された振動サイクルの一部の側面図)において、モータ310は、軸156を介して、観察者に向かって駆動輪150(したがって駆動点155、したがってトルク点130)を反時計回りに回転している。この場合も図3G−1におけるのと同様に、モーションフィルタ140は湾曲していない。この図において、モーションフィルタ140は、観察者から離れて反時計回りに循環しており、観察者から離れて組織係合面120を駆動する。この場合も同様に、差別的切開部材110の本体111に形成され、モーションフィルタ140をしっかりと保持するモーションフィルタクランプ142をみることができ、プロファイルカム144が係合していないことがわかる。
上記図3F−4と相補的な図3G−4を参照すると、観察者の「上」位置まで反時計回りに回転した駆動点155及びトルク点130による完全なサイクルをここでみることができる。モーションフィルタ140は、明らかに垂直成分126に沿って上方に湾曲している(モーションフィルタ140に起因して、差別的切開部材110の振動運動に何ら寄与しない)。モーションフィルタ140の湾曲は、図3G−1乃至図3G−4におけるページ面内でトルク点130を回転させることがわかる。このため、トルク点130の好ましい形態は、球、玉又はその一部とすることができることを示している。
示された実施形態は、高速で実行することができる;非回転トルク点130を駆動する駆動輪150の連続的な回転運動391は、上述した傾斜した玉とともに、駆動点155における摩擦損失が駆動機構100の効率を削減することができることを意味する。それゆえに、駆動点155として機能する(例えば、図3F−5に示されるように)ころ軸受において捕捉される球状トルク点130を使用することは、これらの損失を最小限に削減することができる。ここに挙げた例は限定されるものではない;トルク点130が駆動点155内で自由に回転及び傾斜する又はモーションフィルタ140が駆動点155における駆動輪150のその取り付け部において自由に傾斜する限り(例えば、フレキシブルジョイント、ヒンジ又はピボット)、任意数の機構がトルク点130と駆動点155を係合するのに役立つ。
図3H−1は、一体型モーションフィルタ141を有する振動する差別的切開部材110の代替実施形態の斜視図を示している。この実施形態において、振動DDM110の本体111は、一体型モーションフィルタ141として機能する平坦弾性平板を含むように一体的に成形され、振動する差別的切開部材110の全体をモノリシックに形成し、おそらく製造を簡略化することができる。
図3H−2、図3H−3及び図3H−4は、それぞれ、一体型モーションフィルタ141を有する振動する差別的切開部材110の代替実施形態の平面図、側面図及び端部図を示している。この実施例は、弾性率が供給される回転運動391の面外垂直成分126を除去しながら回転運動391の面内水平成分124の伝達中に面外座屈を防止するのに十分に高い限り、単一材料(例えば、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン))から成形されることができる。一体的に成形されたモーションフィルタ141の特徴は、駆動機構100に組み込むための部品の製造に関与する複雑さ及び時間の低減を除き、図3B乃至図3Eに示されたものと同様である。
図3J−1及び図3J−2は、部材回転振動の略横軸112まわりに回転可能であり、軸受空洞114をさらに備え、ヒンジ149を介して差別的切開部材110に取り付けられた剛性平板143から構成される代替モーションフィルタ143を備えている振動する差別的切開部材110の他の実施形態の平面図及び側面図を示している。この実施形態は、全く弾性平板又はその把持部を必要としない;ヒンジは、よく理解された機械的な特徴である。このモーションフィルタ143の動作は、上記開示されたものと同じであり、トルク点130は、回転駆動系304によって回転運動391において駆動される駆動輪150の駆動点155に係合する(図3A,図3F−1から図3F−4及び図3G−1から図3G−4を参照)。このヒンジ結合されたモーションフィルタ143は、垂直成分126なしで回転運動391の水平成分124を伝達する。この点で、その動作は、図3Bから図3E及び図3H−1から図3H−4に開示されたものと同様であり、矢印132の方向におけるトルク点130の動きは、矢印136の方向に組織係合面120を駆動し、矢印134に沿ったトルク点130の動きは、矢印138の方向における組織係合面120の掃引をもたらす。弾性反動が要求される場合、ヒンジバネ148は、上記開示された利点のいくつかを達成するために容易に追加される。
組織係合面の平面振動出力を許容する、モーションフィルタを介して駆動される差別的切開部材の精神を維持しながら、多数の置き換えが行われることができることが当業者によって理解されるであろう。上記開示された実施形態のいずれも、ケースを限定するように意図するものではない。
図4Aを参照すると、タイトな範囲での差別的切開を可能とする非常に細長いコンパクトな駆動系400が開示されている。現代の低侵襲手術は、アクセスポート、トロカール及び自然開口を介して挿入される腹腔鏡、内視鏡、胸腔鏡及びロボット処置のための細長くて狭い専用ツールを要求する、必要とされる手術器具の低減した直径を有する(急成長している肥満が長さを増加させている)。例えば、8.5、さらには3ミリメートル程度に小さいトロカールの内径はありふれている。最良の利用可能なモータのいずれかを使用してこれらの径の器具軸において十分なトルクを提供することは困難であり得る。さらに、器具のスポーツ関節軸が新しいほど、タイトな空間での操縦がより良好となるが、内部空間の残りのものの多くを使用する機構を必要とする。関節軸を介したフィッティング機構は、剛性の困難さを提起する。おそらくこれらの障害のために、低侵襲外科手術ブランドジセクションは、同じ原始的な鉗子、プローブ及び綿棒などのこれらの器具の端部になおも使用する。共通軸を共有する列において同軸にエンドツーエンドで置かれ、モータ駆動軸に隣接して機械的な直列を形成する1つのモータ駆動軸の先端を他の基端と関連付けるカップリングをさらに備える、両端から出る駆動軸を有する複数の小型電気モータから構成されるコンパクトな回転駆動系が本願明細書において開示されている。モータ電源リードの検知を適切に一致させることによって回転の旋進性を一致させて設けられ、そのような機械的な一連のモータ構成のトルク出力は、列内のモータの数に比例する。このように、いかなる必要なトルクも、非常に狭い手術器具に追加されることができる。この機械的な一連のモータは、他の低侵襲外科器具について標準であるように、狭径の細長い剛性鋼管内にさらに設けることができる。これらが低侵襲手術のねじれに良好に適した関節接合器具軸を形成することができる方法が本願明細書に開示されている。
図4Aは、ハンドル又は外科用ロボットを取り付けるための差別的切開器具の先端部を備える非常に細長くてコンパクトな駆動系400の要素の斜視図を示している。非常にコンパクトな駆動系400は、以下に開示される区別される特徴を除き、図3Aに示された装置に一部同様である。非常に細長くてコンパクトな駆動系400は、ハンドヘルド外科器具又は外科用ロボットへの取り付けを容易とする取り付けベース375に関連付けられることができる第1の基端397と、切開されるべき複合組織に向けられ且つ振動する差別的切開部材110に関連付けられた第2の先端396とを有する長手軸398を備える。非常に細長くてコンパクトな駆動系400の2つの端部は、ハウジング385によって(明確化のために透明に示される)外部に接続されており、複数モータ回転駆動系305及び先端396に近い振動駆動機構303によって内部において大幅に占有されている。複数のモータの回転駆動系305は、複数の二重軸モータ310(各モータ310は、ハウジング385に固定されており、各モータ310は、さらに、モータ310の両端から出る駆動軸314を有する)から構成されている。隣接する各モータ310の駆動軸314の隣接する端部は、複数モータ回転駆動系の全体が機械的に直列に接続されるように、同軸に接続されており、ねじり剛性の可撓性ジョイント313によって互いに回転可能にロックされる。さらに、駆動軸は、全て、一体として回転し、全てのモータが同じ方向360において同じ速度で回転するように、全てのモータ310が回転可能に他に対して位相ロックされる。
この実施形態において、差別的切開部材110は、本体111を有し、非常に細長いコンパクトな駆動系400の先端396において(軸113から構成されることができる)部材回転振動の略横軸112まわりに回転可能に配置される。差別的切開部材110はまた、振動駆動機構303に動作可能に接続する。振動駆動機構303は、複数モータ回転駆動系305の最先端396に動作可能に関連付けられ且つ最先端396によって回転される(基端方向から始まる)駆動輪150からそれ自体構成されており、駆動輪は、さらに、(駆動輪150が回転する軸でもある)長手軸398から非ゼロ半径に配置された駆動点155を備える。駆動点155は、長軸398まわりの回転391において、この実施形態においてはモーションフィルタ140の最基端範囲を形成するトルク点130と係合し、捕捉し、駆動する。モーションフィルタ140は、モーションフィルタクランプ142によって差別的切開部材110の本体111に固定されている。差別的切開部材110は、(切開されるべき複合組織に向けられた)少なくとも1つの組織係合面120を有する。
モータ310の一連の全体は、使用されるモータの種類に応じて電源ケーブル399によって適切に接続され、複合組織を切開するための電力を提供している。示された実施形態はまた、複数モータ回転駆動系305の先端396及び振動駆動機構303の最基端部に動作可能に関連付けられ且つそれによって回転される変速機311を含む。これは、強化されたトルク390(及び、したがって強力なブラントジセクション中の装置の高まった確実さ)によって振動駆動機構303が低回転周波数で循環することができながら、複数モータ回転駆動系305が高い回転周波数で実行されるのを可能とする。
図4Aを引き続き参照すると、複数モータ回転駆動系305の回転は、駆動点155を順次回転させる駆動輪150に回転運動391を与える振動駆動機構303の回転を駆動する。駆動点155は捕捉し、したがって、モーションフィルタ140の最基端部を備えるトルク点130も回転させる。
図3A及び図3F−0に示された代替駆動機構100とともに上記開示されたように、モーションフィルタ140は、同一平面成分、すなわち、差別的切開部材110の本体111に対してトルク点130の回転運動391の水平成分124のみを伝達する。上記装置の他の実施形態によるケースであったように、位置Aにおける駆動輪150の駆動輪回転391で始まる場合、差別的切開部材110の組織係合面120は、位置A’を指す。駆動輪150が位置Bまで回転駆動されるとき、モーションフィルタ140は、独自の平面から湾曲し、駆動輪回転391の水平成分124のみを差別的切開部材110に対して伝達する。部材回転振動の略横軸112まわりのみの回転に制限すると、それゆえに、差別的切開部材110は、中央において位置B’を指すように組織係合面120を押しやり、直接遠位に指し、長手軸398と並べられる。駆動輪150が位置Cまで回転するとき、差別的切開部材110の組織係合面120は、位置C’を指すように掃引し、平面運動392を継続する。駆動輪150がさらに位置Dまで進むと、組織係合面120は、ここで(位置B’と同一で、非常に細長くてコンパクトな駆動系400の長手軸398と再度並べられる)位置D’まで移動する。最後に、駆動輪150がその回転391を継続するのにともない、差別的切開部材110の組織係合面120がまた位置A’まで戻るように、それは循環して位置Aまで戻って、差別的切開部材110の平面運動392の振動のサイクルを完了する。
このように、切開されるべき複合組織に対する双方向の組織係合面120の平面振動のサイクルが進み、複合組織における硬組織の破壊を回避しながら、複合組織における少なくとも1つの軟組織を破壊する。このように、非常に細長くてコンパクトな駆動系400は、改善された手術結果を可能とするために、そうでない場合は扱いにくい腹腔鏡器具又は外科用ロボットアームによって入力電力を複合組織の安全且つ迅速な切開に変換する。
図4B乃至図4Gをみると、図4Bには、この図においては特に(例えば、進行中に静かになる傾向がある弾性チューブ、ブロック又はロッドから構成された)合理的にねじり剛性の可撓性ジョイント313によって接続されたそれらの隣接する駆動軸314及び314’を有する2つの隣接するモータ310及び310’の配置に焦点をあてた、同軸の複数の回転モータ310によって形成された露出した複数モータ回転駆動系308の側面図が示されている。非常に低電圧で又は起動時に、(マブチモーター社のような製造業者からの大量生産DCブラシ付きモータなどの)非常に安価なモータは、静止摩擦及びコギング、当業者にとって周知の困難に一部起因して故障することがある。しかしながら、この構成により、いかなるモータ310も、したがってモータ310’もそのようにふるまう。本特許出願の発明者らは、(モータ310は、可撓性又は柔軟なジョイントによってモータ310’に接続される)この構成が、おそらくコギングを防止する隣接するモータのロータ間の回転位置合わせ不良に起因して、又は、滑らかでより信頼性が高い開始を確実にすることを兼ね備える隣接するモータの起動の不規則性に起因して、コギング及び静止摩擦を解消すると思われることを発見している。この図に示されたモータの全ては直線で任意に配置され、全ては積極的にトルクを供給する。したがって、これらのモータの全ては、単一の回転速度で回転しており、これは、複数モータ回転駆動系305の単純な実施形態である。
図4Cは、図4Bにおいて上記開示された同じ積極的に回転する複数モータ回転駆動系308の側面図を示しているが、この図において、駆動軸314が接触するジョイント313においてモータはなおも同軸であるものの、複数のモータ310は、直線配列から意図的に偏向されている。ねじり剛性の可撓性ジョイント313によってなおも接続されたモータ310及び310’の駆動軸314及び314’により、この構成が例えば振動駆動機構303に対して下流にトルクをなおも積極的に供給しながら、直線からの複数モータ回転駆動系305の合理的な偏向(及びずれ)を許容する方法をみることができる。モータが互いに相対回転するのが防止される限り、そのような構成におけるモータの全ては、回転可能に位相ロックされたままであり、1つの複数モータ回転駆動系305として一体に回転する(図3Aを参照)。
図4Dは、若干似ている複数モータ回転駆動系306の側面図を示している。この実施形態において、複数のモータ310は、ユニバーサルジョイント315によって接続されたそれらの駆動軸314を有し、図4Cに示された状況と同様に、一体としてトルクを供給しながら、直線からの偏向を示している。ユニバーサルジョイント315は、通常、図4B及び図4Cに示された弾性ジョイント313よりもはるかにねじり剛性である;開示された実施形態は、いずれかを有効に使用することができる。限定されるものではないが、摺動するドッグボーンジョイント、インターレーススパイダージョイント、ベローズジョイントなどを含む、湾曲しながらねじりを伝達する他の手段が当該技術分野において知られている。複数モータ回転駆動系306におけるユニバーサルジョイント315の使用の利点は、上記複数モータ回転駆動系308における可撓性ジョイントが構成される材料を変形させる精力的な損失が、ユニバーサルジョイント315が低摩擦鋼軸受によって構成されることができるということである。ユニバーサルジョイント315のさらなる利点は、許容される偏向の程度が可撓性弾性ジョイント313についてのものよりも大きくすることができ、それらが通常はより大きなトルクに耐えるということである。
図4Eは、ここでは駆動軸ユニバーサルジョイント315によって隣接する駆動軸に接続されたそれらの駆動軸314をそれぞれ有する複数のモータ310を備える図4Dに開示されたものと同様の複数モータ回転駆動系307の実施形態の側断面図を示している。この実施形態における各モータ310は、しかしながら、各モータ310が内部に固定される独自の関連するハウジングセグメント377によってさらに被覆されている。各ハウジング377はまた、ハウジングジョイント317によって両端において関節接合され、関連する駆動軸ユニバーサルジョイント315を囲み、それにより、隣接するハウジングセグメント377に各ハウジングセグメント377を及び隣接する駆動軸314に各駆動軸314を接続する。それゆえに、複数モータ回転駆動系307のこの実施形態は、各モータ310がその関連するハウジングセグメント377の内部に固定されることを除き、上記同様の実施形態ができるように整列状態から偏向することができ、モータ310がその駆動軸314を活性化して回転するときに生成された反力トルクと競うための構造を提供する。そのため、複数モータ回転駆動系307が示されるように1つの面内で湾曲するとき、構成モータ310は、ハウジングセグメント377によって提供される安定性に起因して組み合わせた最大トルクを供給する。さらに、ハウジングセグメント377は、外科用ロボット又は腹腔鏡器具に取り付けるための便利な表面を提供し、それゆえに、代替の取り付けベース375として機能する(図3A及び図4A)。
これをさらに図示すると、図4F−1及び図4F−2は、独自のハウジングセグメント477によってそれぞれが被覆されて支持され且つ多面同心ユニバーサルジョイント418によって互いに接続された図4Eにおけるものと同様の複数のモータ410を有する複数モータ回転駆動系407(及びその要素)を示している。複数モータ回転駆動系407は、ここでは、ねじれと折り合いをつけるのに適切な3次元の可撓性を実証して患者内で回転する1度に2つの平面内での偏向が示されている。また、隣接するモータ410の隣接する駆動軸414を接続しているユニバーサルジョイント415と同様の2つの軸ハウジングセグメントジョイント417とを組み合わせた多面同心ユニバーサルジョイント419が開示されている。当業者によく知られているように、ユニバーサルジョイントは、通常、幾何学的中心で交差する互いに直角に配向された2つの軸から構成されており、双方の軸は、通常、それらが関連付けられた駆動軸に対して直角に配向されており、関連する駆動軸の回転軸は、その同一の幾何学的中心と整列している。これは、駆動軸ユニバーサルジョイント415と同様である。
さらに、この実施形態407のハウジングセグメントジョイント417は、互いに双方に対して且つ駆動軸414の回転軸に対して直角に配向され且つ幾何学的回転中心419において全て交差する2つの軸(軸によって定義される)420及び421から同様に構成されている。多面同心ユニバーサルジョイント418を本装置に有用にするのは、ユニバーサルジョイント415及びハウジングセグメントジョイント417が共通の幾何学的回転中心に配置されるからである。これは、関節接合された剛性ハウジングセグメント477に固定され且つそれによって囲まれるにもかかわらず、モータ410の駆動軸415がトルクを供給しながら自由に偏向することを意味する。繰り返すために、各駆動軸ユニバーサルジョイント415及び関連するハウジングセグメントジョイント417は、全ての平面内で単一の幾何学的回転中心419を共有する。この構成の他の結果は、これらの回転中心419の間の長さが通常は鋼製の駆動軸414の剛性性質のために不変であるということである。それゆえに、複数モータ回転駆動系407の長さは、湾曲するにもかかわらず変わらない。これは、例えばそのように形成された空洞から外科用器具を引き出すために、切開されるべき組織に対して力を発現するように並びに引張負荷を発現するように大抵の場合に必要とされるように、ブラントジセクションを行う外科医が閉じ込められた通路に双方の下向きの圧縮負荷を加えるのを可能とする。
図4F−1を再度みると、この図においては、実質的にページ面の内外の回転を許容する垂直配向されたピンジョイント421及び実質的にページ面内の回転を許容する水平配向されたピンジョイント420を支持するリングをそれぞれ備える少なくとも1つのハウジングセグメントジョイント417が示されている。垂直配向されたピンジョイント421及び水平配向されたピンジョイント420の軸は、単一の幾何学的回転中心419において正確に交差し、その幾何学的回転中心419は、駆動軸ユニバーサルジョイント415によっても使用される。これは、複数モータ回転駆動系407の全体が3次元的に偏向するときに全てのモータ410の駆動軸414の同時位相ロックされた回転を許容する構成であり、外科医が複合組織の安全なブラントジセクションを行うために患者の身体の任意の所望の内部空間により容易にアクセスするのを可能とする。
図4F−2は、複数モータ回転駆動系407の1つのハウジングセグメントジョイント417と、単一の回転中心419と、どのように垂直配向されたピンジョイント421、水平配向されたピンジョイント420と及びユニバーサルジョイント415の軸の収束によって形成されるのかを概略形態で示している。この構成は、それらがハウジングセグメント477の内部に固定されたときにモータ410の自由な偏向を許容し、複数モータ回転駆動系407の全体の位相ロックされた回転を同時に維持することが同様にわかる。
最終的な詳細を図示するために、図4Gは、互いに接続され且つユニバーサルジョイント416によって位相ロックされたそれらの駆動軸414を有する複数の同軸モータ410から構成される複数モータ回転駆動系409の斜視図を示している。さらに、この実施形態409は、複数のモータ410を被覆する(ここでは透明形態で示される)可撓性柔軟なシース444をさらに備える。柔軟なシース444は、先の実施形態からの剛性ハウジングセグメント477の代替物である。柔軟なシース444がモータ410のいくつかの回転偏向を含む偏向の全ての方法を許容する一方で、それは、それらの回転偏向をさらに制限し、モータ410が例えば振動駆動機構303(図3A及び図4Aを参照)などの下流に供給するために有用なトルクを発現して供給するのを可能とする。この図は、1度に2つの平面内でのモータ410の直線からの偏向を示し、また、全てが前のように位相ロックされてトルクを供給しながら個々のモータ410の回転偏向も示している。このような構成は有用であり得る。柔軟なシース444のようなソフトカバーは、いくつかの低侵襲手術において好ましくあり得る。より多くの剛性ハウジングセグメント477の完全な確実さをさらに保持しながら、より滑らかな外観のためにハウジングセグメント477と柔軟なシース444を組み合わせることができる。柔軟なシース444及びハウジングセグメント477はまた、モータカバー方式が複数モータ回転駆動系409の全長を支配しない場合に不規則な態様で効果的に組み合わせることができる。
より多くの手術が低侵襲外科的方法を介して行われるのにともない、複雑な操作によるこれまで以上に複雑な処置における作業は、重要な構造のまわりの強化されたアクセス能力、特に複雑で安全なブラントジセクション及びトンネリングを必要とする。図5A乃至図5E−3を参照すると、ハンドヘルド腹腔鏡器具又は外科用ロボットなどの外科用機械について、任意の所望の方向において複合組織のブラントジセクションを行うことができる差別的切開器具及びその要素の実施形態が開示されている。すなわち、外科医は、アクセスポイント(例えば、切開、ポート又は自然開口)からでもリモートでも、意図的に差別的切開の経路を進めることができ、複合組織内、複合組織の周囲又は複合組織を通る任意の所望の形状のトンネル、ポケット及び貫通路を安全に形成する。リモート又は直接に操作される、任意の所望の方向における複合組織の差別的切開のための操縦可能な差別的切開装置が本願明細書に開示されている。
図5A−1は、任意の所望の方向における差別的切開を可能とする操縦可能な差別的切開アセンブリ500の1つの実施形態(及び基本動作)を示している。また、部材回転振動の略横軸112まわりに振動可能な差別的切開部材110と、部材回転振動の略横軸112まわりに振動して差別的切開部材110を駆動する駆動手段160と、操縦可能な差別的切開アセンブリ500の最先端部を形成する組織係合面120とを備える操縦可能な差別的切開アセンブリ500が開示されている。差別的切開部材110は、差別的切開部材110の振動振幅538と、駆動手段160の移動の大きさ536と、差別的切開部材110の左方向スイング537’と、左方向スイング537’を駆動する左方向駆動入力537と、差別的切開部材110の右方向スイング539’と、右方向スイング539’を駆動する右方向駆動入力539と、左方向スイング537’と右方向スイング539’との間の略中間である差別的切開部材110の振動中心538’と、差別的切開部材110の振動中心538’と略一致する切開方向121とを有する。
動作中において、操縦可能な差別的切開アセンブリ500は、図6A−1におけるようにケーブル駆動160又は図3A及び図4Aに示されたような振動駆動系とすることができる駆動手段160を介して差別的切開部材110を振動する。差別的切開部材110の振動振幅538は、駆動手段160の移動の大きさ536によって制御され、左方向駆動入力537及び右方向駆動入力539は、それぞれ、左方向スイング537’及び右方向スイング539’を制御する。
さらに図5A−1を参照すると、差別的切開部材110は、通常、ケーブルループ160によって駆動される部材回転振動の略横軸112まわりに振動中心538の両側に対して左右に振動し、切開されるべき複合組織に対して先端に組織係合面120を提示する。この図において、部材回転振動の略横軸112まわりの差別的切開部材110の回転方向(したがって複合組織に対する組織係合面120の動き)は、ケーブルループ160の端部に加えられる張力のバランスに依存する。複合組織に対する組織係合面120の動きの確実さ(すなわち、組織を切開するために必要な力に対する組織係合面の力の余剰)は、ケーブルループ160の全体に加えられる張力の大きさに依存する。振動中心538’まわりの振動振幅538は、ケーブルループ160が移動する移動の大きさ536に依存する。それゆえに、差別的切開部材110の全体の動きは、右方向駆動入力539(中実黒の太い矢印)が差別的切開部材110の右方向スイング539’をもたらす一方で、左方向駆動入力537(半陰の太い矢印)が差別的切開部材110の左方向スイング537’をもたらすように、ケーブルループ160の動きの関数である。
図5A−1を継続すると、差別的切開部材110は、差別的切開器具の長手軸398と一致し且つ切開されるべき組織に向けられた先端を正確に指す振動中心538’の両側において定常的に、対称的に、正弦波状に45度振動して示されている。この場合における切開方向121は、複合組織が差別的切開取り付け部の前方において直接切開されるので前方を指す。
図5A−1の差別的切開部材110の規則的な正弦波運動の概略が図5A−2に開示されている。時間570はx軸を形成し、y軸には、差別的切開部材110のオメガ[ω]として回転速度574が右側に示されているとともに、y軸には、振動中心538’から離れた角度でシータ[θ]として差別的切開部材110の角度位置572が左側に示されている。差別的切開部材110の回転速度574は、その角度位置572が45度の極限に到達したときにゼロまで降下し、角度位置572がゼロ度と交差したときに差別的切開部材110の回転速度574がその最大に到達する。この差別的切開部材110の動きの例、すなわち、切開方向121が正確に遠位であるように、差別的切開取り付け部100の長手軸398と一致する振動中心538’まわりの規則的な正弦波振動は、差別的切開取り付け部の通常の状態と考えることができる。とは言っても、角速度574、角度位置572又はその双方を動的に変化させることによって得られるものが多いことから、決して限定した場合ではない。
図5B−1及び図5B−2を参照すると、1つの方法は、この例においては振動中心538’を(ここでは、観察者の左に対して−22.5度だけ)オフセットすることにより、振動振幅538を変化させることなく切開方向121を変化させることができる;これは、左側におけるケーブル基端を右におけるより遠位にシフトすることによって行われる。差別的切開部材110がここで左を効果的に指すことを考えると、振動中心538’まわりの振動は、上に及び左に切開を駆動する。差別的切開装置500が前方に推進されるとき、そこで組織が崩壊することから切開されるべき組織からの抵抗が低減され、したがって、差別的切開装置500は左に進む。切開方向121は、この実施形態においてはケーブルループ160である駆動手段160の動きを制御することによって意図的に変化させることができる。
図5B−1及び図5B−2を参照すると、これらの図は、差別的切開器具の長手軸から非ゼロ角度(ここでは、観察者の左に対して22.5度)を指すオフセット振動中心538’まわりに定常的に、対称的に、正弦波状に振動するケーブル駆動型の制御可能な差別的切開部材110を示している。それゆえに、差別的切開部材110がその左方向、したがって切開方向121に傾いたオフセット振動中心538’まわりに振動することから、切開方向121は左を指す。それゆえに、切開されるべき組織は、左において優先的に崩壊し、切開の抵抗は左において減少し、操縦可能な差別的切開アセンブリ500は、左にトンネリングする。このように、操縦可能な差別的切開アセンブリ500は、オフセットを制御することによって任意の所望の方向にトンネリングするように向けられることができる。
図5C−1及び図5C−2は、対称的に振動するが、差別的切開器具の長手軸398まわりに正確に前方を指す振動中心538’まわりにおいて、変化する角速度プロファイルを有するケーブル駆動型の制御可能な差別的切開部材を示している。変化する角速度プロファイルは、切開されるべき組織に対して軸外の力を発生させ、それゆえに、軸外の切開方向121に駆動し、操縦可能な差別的切開アセンブリ500は、その方向において優先的に切開する。図5D−1及び図5D−2は、定常的に、対称的に、正弦波状に振動するが、差別的切開器具の長手軸398から非ゼロ角度を指す振動中心538’まわりにおいて、変化する角速度プロファイルを有するケーブル駆動型の制御可能な差別的切開部材110を示している。組み合わせはまた、非対称の切開を発生させ、切開方向121の方向における変化を駆動し、操縦可能な差別的切開アセンブリ500が外科医によって選択された方向に切開するのを可能とする。
図5E−1乃至図5E−3は、振動中心501まわりに振動し、切開方向を形成し、その方向に切開する内視鏡の先端に配置された制御可能な差別的切開装置500を示しており、それゆえに複合組織内の任意の方向におけるトンネリングを許容する切開方向の任意の制御を示している。図5E−1は、可撓性器具軸555の最先端部511を振動するように固定された差別的切開部材510を備える操舵可能な差別的切開アセンブリ500を示しており、振動が振動中心501と、第1の振動の程度502及び第2の振動の程度503と、第1の振動の程度502と第2の振動の程度503との間の角度によって画定される振動振幅514とを有する。操縦可能な差別的切開アセンブリ500は、さらに、長手軸518及び切開方向516を備える。差別的切開部材510は、この文書において開示された他のものと同様であり、組織係合面、部材回転振動の略横軸などを有する。ここで関心のあるものは、差別的切開部材510の振動の特性、主に振動中心501のオフセットを変調することによる、及び、第2には差別的切開部材510の回転速度を変化させることによる切開方向516の制御である。切開方向516は、複合組織がそこで保存された硬い又は編成された組織と崩壊された軟らかいあまりよく編成されていない組織とに分化するように、十分な差別的切開効果を経験する組織の狭い領域の中心として画定される。
通常の動作中において、切開方向516は、振動中心501と一致する。差別的切開部材510が振動するのにともない、それは、通常、通常は第1の振動の程度502と第2の振動の程度503との間の中間である中心まわりに正弦波状に振動する;振動中心501としてその中間点を定義する。差別的切開部材510の振動は、図3A及び図5A−1から図5D−2に開示されたようなケーブル駆動装置において経時的な張力(したがって、位置)の変化の大きさによって決定される;図3A、図4Aに開示されたような振動駆動系は、モータの速度を変化させることができる。それゆえに、切開方向121(又は516)は、外科医の裁量によって制御可能である。
図6A−1乃至図6B−5を参照すると、差別的切開器具についての改善された性能及び安全性を確実にするために、以下及び最初は図6A−1において、差別的切開部材110の他の実施形態600を開示する。この差別的切開部材110は、差別的切開部材110の本体111を通り且つ駆動機構に対して近位に離れた一連の穿孔(通路)を通過する繊細なワイヤロープ又はケーブルの連続的な回りくどいループ160によって捕捉され且つそれによって振動するように駆動される。連続的な回りくどいループ160は、繊細なワイヤロープ又はケーブルの部分160A−160Gから構成される。差別的切開部材110の本体111を通り且つその周囲のループの回りくどい経路は、差別的切開部材110を捕捉する位相的に拘束された経路である「ひばり結び・ヒバリの頭(lark‘s head)又は「ひばり結び(cow−hitch)」を形成し、その損失を防止する。
この実施形態の要素を詳細に記載すると、差別的切開部材110は、ハンドル又は外科用ロボット内の又はそれに関連付けられた駆動機構に実質的に向けられた第1の基端397と、切開されるべき組織に向かって遠位に実質的に向けられた第2の先端396とを有する長手軸398を有する。差別的切開部材110は、長手軸398に対して垂直であり且つ長手軸398の第2の先端396の近くに位置する部材回転振動の略横軸112まわりに回転可能である。差別的切開部材110は、さらに、長手軸398と実質的に整列された略くさび状本体111と、切開されるべき組織に向かって遠位に実質的に向けられ且つくさび状体の若干薄い先端部を形成する組織係合面120とを有する。本体は、さらに、くさび状本体111の第1の表面691と、くさび状本体111の第2の裏面692とを有する。
差別的切開部材110の本体111は、さらに、外科用器具の残りに対して差別的切開部材110を保持する繊細なワイヤロープ又はケーブルの連続ループの通路を受け入れ、それを捕捉し、可能とするように構成された一連の短くて浅い表面トラフ及び貫通本体孔(通路)を備える。第1に、表面691は、口状トラフ166並びに2つの眼状トラフ162及び164を有する。第2の裏面692は、2つの耳状トラフ162’及び164’を有する。口状トラフ166は、さらに、差別的切開部材110の本体111を完全に通過する2つの通路161C及び161Dを備える。眼状トラフ162は、差別的切開部材110の第2の裏面を通過する通路161Bと、差別的切開部材110の下部から移動する長手方向配向通路161Aとを有する。眼状トラフ164は、差別的切開部材110の第2の裏面を通過する通路161Eと、差別的切開部材110の下部から移動する長手方向配向通路161Fとを有する。図6B−1(差別的切開部材110の第1の表面691の直接の図)及び図6B−2(差別的切開部材110の第2の裏面692の直接の図)もまたみると、そこにおいて第2の裏面692が以下の2つ以上のトラフであることがわかる:通路161E及び通路161Dをさらに備える耳状トラフ164’並びに通路161B及び通路161Cをさらに備える耳状トラフ162’。
図6A−1、図6B−1及び図6B−2をさらに参照すると、図6A−2に明確に示されたケーブルループ160の回りくどい経路をここで確認できる。通路まわりのケーブルループ160に続いて、ケーブルループ部160Aは、差別的切開部材110の第1の表面691において眼状トラフ164の下部へと通路161Fを遠位方向に最初に通過することがわかる。そして、ケーブルループ160は、ループ部160Bとして眼状トラフ164を通ってそこから遠位方向に移動し、第1の表面691から通路161Eを通過し、差別的切開部材110の第2の裏面692において耳状トラフ164’へとループ部160B’として出現する。そして、ケーブルループ160は、トラフ164’を介して近位下方向に回転して移動し、ループ部160C’として通路161Dを通過し、差別的切開部材110の第1の表面において口状トラフ166へとループ部160Cとして出現する。そして、ループは、口状トラフ166内をループ部166Dとして通過し、第1の表面691を移動する。
本特許出願において開示される主題の発明者らは、ケーブルループ160を「噛む」又は「つまむ」ように口状トラフ166をさらに設計することが有利であると見出した。この特徴は、差別的切開部材110の実施形態600の外形図である図6B−5において最も明確に観察される。口状トラフ166を有する差別的切開部材110の本体111を提供することにより、ケーブルループ160の端部に近い厳しい周期的な負荷から最も遠く、それゆえに、差別的切開部材110は、繊細なケーブル又はワイヤループ160をつまむことができ、口状トラフ166内にクリート状にそれを固定し、その場合、それを移動させる傾向があるであろう応力が最小である。これは、ケーブルループ160の全体が差別的切開部材110の本体に形成された一連の通路及びトラフによって形成された回りくどい経路を介して滑るように進む(すなわち、摺動)ことができないことを確実にするのに役立つ。この図において、切開されるべき複合組織を分割してプレテンションするのに役立つ差別的切開部材110の本体111の略直線のくさび状形態を明確に観察することができる。また、この図において、眼状トラフ164から移動する通路161Dの長さが第1の表面691内に深く設定され、耳状トラフ164’を介して、差別的切開部材110の本体111の第2の裏面692内に設定されることをみることができる。この好ましい実施形態600を備える差別的切開部材110の本体111の第1の表面691における口状トラフ166及び第2の裏面692に設定された耳状トラフ164’を接続する通路161Dをさらにみることができる。差別的切開部材110の本体111は、さらに、部材回転振動の略横軸112と一致する軸上に差別的切開部材110を固定するのに役立つスタビライザ999を備え、スタビライザ999は、さらに、ケーブルループ部160A用の鋭利な許容間隙を有する。
回りくどいループを継続すると(及び図6A−1、図6B−1及び図6B−2を再度参照すると)、回りくどいループの経路は、残りの通路を介して略対称にトレースされることができる。ケーブルループ160は、口状トラフ166における第1の表面691のその移動を完了した後、耳状トラフ162’の最基端へとループ部161E’として第2の裏面692に出現するように通路161Cを介して第1の表面691から離れるようにループ部160Eとして通過する。そこから、ケーブルループ160は、それがループ部160F’として通路161Bに到達するまで、耳状トラフ162’に沿って遠位方向に循環し、その場合、眼状トラフ162においてループ部160Fとして第1の表面691に出現するように通過する。そして、ケーブルループ160は、最後の時間に第1の表面691を出て近位下方向に降下し、それが通路161A内に入って通過するまで眼状トラフ162に続き、ループ部160Gとして出現するまで、長手軸398の第1の基端397に向かって近位方向に向かう。
再度図6A−1を参照すると、この差別的切開部材110の実施形態600は、さらに、それぞれ、ケーブルループ部160G及び160Aにおいて対向する引張力137及び139の発現を含むことに留意されたい。引張力137が引張力139よりも大きい場合、不均衡が存在することにさらに留意されたい。この力の不均衡は、差別的切開部材110が矢印136の方向に部材回転振動の略横軸112まわりに回転するように駆動する。逆に、引張力139が引張力137よりも大きくなる場合、差別的切開部材110は、矢印138の方向に軸112まわりに回転する。ケーブルループの160の端部160G及び160Aにおける引張力は、この差別的切開部材100の実施形態600の近位に位置する駆動機構によってリモートで提供される。効果的な差別的切開のための有用なケーブル振動周波数は、10Hzから1KHzの間、好ましくは50Hzから500Hzの間の範囲である。
ここでもう一度だけ図6A−2を確認すると、ケーブルループ160がそれ自体とどこにも接触していない(差別的切開部材110がケーブルループ160の完全な回りくどい経路を露出するように透明である)この図において、ケーブルループ160がねじれるのに十分に小さい半径で湾曲せず、ケーブルループ160が負荷下でそれ自体を損傷する可能性を低減することがわかる。ケーブルループ160は、差別的切開部材110の本体111における6つの孔を完全に通過し、差別的切開部材110の完全な捕捉の残りを大幅に増加し、手術中にその損失を防止するのに役立つ。5つのトラフは、差別的切開部材110の外面に深く(好ましくは下方に)入り込むように、ケーブルが差別的切開部材110の本体111の周囲を及びそれを通って包むのを可能とするように設計されている。
図6B−1、図6B−2、図6B−4及び図6B−5を参照すると、この差別的切開部材110の実施形態600の設計のさらなる特徴は、円筒状軸ウェル199である。円筒軸ウェル199は、好ましくは、直接近位方向に面しており、部材回転振動の横軸112によって形成された軸受空洞114(図3Bを参照)と同心の横長軸を有する。軸を受け入れるように設計すると、この差別的切開部材110の実施形態600が軸上に位置したままとするために近位方向に向かう引張力137及び139を必要とすることが軸ウェル199は、図6B−1及び図6B−2においてわかる。さらに、差別的切開部材110の設計は、さらに、近くにスタビライザ999を組み込み、差別的切開器具の先端396の上からの差別的切開部材110の脱落を防止するためにより良好であることがわかる。スタビライザ999の形状は、さらに、スタビライザ999がケーブルループ160の滑らかな動作に干渉することができないように、引張下にあるときにケーブルループ160による大きな角度での掃引を認める。
最後に、通路の短い長さは、実施形態600を近位方向に後方に向かってみた平面図を示す図6B−3において明確にみることができる。差別的切開部材110は、本体111と、部材回転振動の略横軸112と、組織係合面120(この図において、観察者に向いている)と、第1の表面691と、第2の裏面692と、差別的切開部材110の本体111に形成された複数のトラフ及び通路とを有する。通路161Dが第2の裏面692に耳状トラフ164’を通って入り、第1の表面691において口状トラフ166に出現することがわかる。通路161Eは、第2の裏面692に耳状トラフ164’を通って入り、第1の表面691において眼状トラフ164に出現する。通路161Bは、第2の裏面692に耳状トラフ162’を通って入り、第1の表面691において眼状トラフ162に出現する。通路161Cは、第2の裏面692に耳状トラフ162’を通って入り、第1の表面691において口状トラフ166に出現する。通路は、ケーブルループ160(図6A−2を参照)を決してそれ自体に巻きつくことを必要とせず、したがって、ケーブルの磨耗や損傷の可能性を低減する。
直線状に直接前方に切開することができるようにすることが大抵の場合に有用である。図6A−1乃至図6B−5に再度示された実施形態600において、複合組織を切開するための略直線状本体の差別的切開部材110が開示されている。差別的切開部材110は、第1の基端397及び第2の先端396を有する長手軸398を有する本体111を備える。長手軸398は、部材110が平面運動392に沿ったその移動掃引においてセンタリングされたときに差別的切開部材110と並べられる。差別的切開部材110の本体111のくさび形状は、差別的切開を可能とするように取り付けられる差別的切開ハンドヘルド開口外科用器具、差別的切開腹腔鏡器具又は差別的切開外科用ロボットアームの前方において直接切開するように設計されている。したがって、同様に、この実施形態600において、差別的切開部材110の本体111の塊は、長手軸398に沿って略直線状に配置され、差別的切開効果は、差別的切開部材110の軸に略直接沿った領域において発生し、すなわち、組織は、装置の先端に対して直接遠位の領域における組織係合面120によって分離される。直線器具は、ほとんどの時間多くの処置にとって十分に機能する。
しかしながら、外科医は、大抵の場合、損傷してはならない他の繊細で重要な構造の背後に隠されたターゲット構造にアクセスする必要がある。この種の手術は、全ての関係者にとって退屈で苦労が多い。外科医はまた、大抵の場合、直線器具が単に収まらないタイトな空間において発見された重要な構造に到達するか又は露出することが求められる。上記開示したものに関連する実施形態において、ここでさらに、湾曲した振動する差別的切開部材を教示する。図6C−1乃至図6C−3は、湾曲した外形を有するケーブル保持された差別的切開部材610の他の実施形態650の斜視図、側面図及び端面図を示している。湾曲した差別的切開部材610は、第1の端部及び第2の端部を有するとともに第1の端部から第2の端部までの中心軸398を有する本体611を備える。しかしながら、この実施形態において、それらが湾曲した差別的切開部材の振動中に決して交差しないように組織係合面620を備える少なくとも1つの谷及び少なくとも1つの突起の交互系列が振動平面392の一方の側に全体的に配列されるように、差別的切開部材610の組織係合面620は、部材610の振動392の平面から、長手軸398の一方側から離れるように及び一方側まで略湾曲状に配置されている。これは、差別的切開効果を実質的に装置の軸の一方の側における領域において生じさせ、閉塞組織の周囲及び背後において外科医がブラントジセクションを行うのを可能とする。
差別的切開装置の先の実施形態は、開示された差別的切開部材の部材回転振動の略横軸を形成して支持するために、軸、ブッシュ、ころ軸受などにほとんど依拠していた。軸及びころ軸受は、詰まり、ジャム、又は、百万サイクル以上について厳しく変化する負荷下で数百ヘルツで振動する差別的切開部材と干渉することがある問題を起こすことがある。さらにまた、安全性を高め且つコストを削減するために、装置内の部品の数及び複雑さを低減することが望ましい。また、部品が残るものの間の相対運動を低減することは、磨耗や損傷を低減することができ、放射ノイズを低減することができ、装置の性能を高めることができる。
これらの条件下で差別的切開部材710を支持する代替手段が図7に開示されている。図7は、軸790の最先端及びその近くに配置された差別的切開部材710に取り付けられたケーブル780が通過する細長軸790を備えるケーブル駆動型差別的切開アセンブリの実施形態700の斜視図を示している。差別的切開部材710はまた、本体711と、組織係合面720と、部材回転振動の略横軸712と、部材回転振動の略横軸712に対して略垂直に配向された振動運動792の所望の平面とを有する。差別的切開部材710は、さらに、駆動ケーブル780の少なくとも一部を受け入れ捕捉する内部空洞760を備える。この実施形態700はまた、細長軸790に略平行に配向され且つ差別的切開部材710の振動運動792の所望の平面に対して略垂直に配向された平面形態を有する弾性平板状部材775を備える。弾性平板状部材775は、それ自体の平面内で剛性であるが、面外負荷を受けたときに面外に偏向する(すなわち、湾曲する)任意の適切な材料から構成されることができる。細長軸790はまた、弾性平板状部材775の一部を受け入れて固定するように設計された取り付け手段777を有することができる。差別的切開部材710の内部空洞760はまた、弾性平板状部材775の最先端部を受け入れ、結合し、保持することができ、それにより、弾性平板状部材775の最先端部に配置されることができる。それゆえに、差別的切開部材710は、それ自体が細長軸790の最先端部に存在する弾性平板状部材775上に存在する。
この実施形態700において、部材回転振動の略横軸712は、弾性平板状部材775に平行であり且つ弾性平板状部材775によって画定される平面と一致していることに留意することが重要である;すなわち、部材回転振動の略横軸712は、理想的には、弾性平板状部材775の厚さの中央を通過する。それ自体が振動運動792の所望の平面内での回転を可能とする軸、ころ軸受、又は他の車輪状の特徴はない。また、示されたケーブルが弾性平板状部材775の両側を通過することを図7から観察することが重要である。
動作中において、図6A−1において少なくとも上記開示されたような振動ケーブル張力の不均衡を提供することにより、弾性平板状部材775上に存在する差別的切開部材710がより大きな張力を受ける弾性平板状部材775のその側に対して(振動運動792の所望の平面内で)偏向するように、弾性平板状部材775上に存在する差別的切開部材710は面外負荷を受ける。それゆえに、ケーブル780が所定の周波数において振動張力の不均衡を受ける場合、差別的切開部材710及び弾性平板状部材775は、同じ周波数において振動運動792の所望の平面内で振動する。片持ち梁の振動の固有周波数が梁の質量で除算した梁の曲げ剛性の平方根に比例することを考慮し、また、梁を振動するのに必要とされるエネルギがその梁の振動の固有周波数において最小化される(及び振幅が最大化される)ことを考慮すると、差別的切開を安全に行うために好ましい所望の周波数において動作するように、差別的切開部材710及び弾性平板状部材775の曲げ剛性、質量、長さ及び他の特性を設計することが望ましい。それゆえに、差別的切開装置の実施形態700は、特定の外科的処置についての適応及び要件を含む、振動運動792の所望の平面内又はその組み合わせでの差別的切開部材710の振動振幅を最大化するために、装置を動作させるために必要とされるエネルギを最小化するように調整されることができる。
当業者は、本願明細書における装置及び要素の多くの変形例及び組み合わせが本発明の精神に違反することなく可能であることを理解するであろう。