JP2020058718A - 免震台ユニット - Google Patents

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Abstract

【課題】頑丈で取扱いやメインテナンスが容易となり、各要素の組み合わせの変更も自在で最適な摩擦係数の選択が容易にできる摺動式免震台ユニットを提供する。【解決手段】免震台ユニット1は、摺動シート54、64同士が対向した状態で着脱自在の結束バンド70で束ねられた一対の摺動部材50、60からなる。各摺動部材50、60は、第1の支承板51、61もしくは保護シートと第2の支承板53、63とでクッションシート52、62を中に挟んだサンドイッチ構造とし、第2の支承板53、63の外表面に摺動シート54、64が配置される。結束バンド70は、両クッションシート52、62間、もしくは第2の支承板53、63間を束ね、低粘着性粘着テープ65で支承板51、62をクッションシート52、62に固着することで各要素の分解、再組立てが容易とされる。【選択図】図3

Description

本発明は、地震発生時に地震力を低減し、家具、設備、商品棚やその中に置かれた商品など、屋内/屋外にある物品の倒壊、損壊、落下を防ぎ、地震による被害を軽減させるための免震台ユニットに関する。
地震は建物自身の倒壊、損壊を招くのみならず、建物が倒壊に至らない場合にあっても、一般家屋の室内/室外にある家具、什器、備品等、事務所や工場の建屋内外にある機械、設備、用具等、商店等であれば店内外にある棚、商品、在庫品等(本明細書では、これらを総称して「家具等」という。)が倒壊、損壊に至ることがよく見られる。これらへの対策として従来から伝統的に行われてきた方法は、棚類を壁に対して固定する、天井との間で倒壊防止用バーを設置する、設備を床面に固定するなど、主に対象となる家具等を物理的に固定することであった。しかしながら、地震力は未定形の周期、加速度、速度、変位からなる波形から構成されるため、そのような地震力に対してこれらの転倒防止策では必ずしも万全ではなかった。このため、地震に伴う揺れが家具等に直接伝達されることを防ぐ技術、すなわち、床面と家具等の間に介在させて地震の揺れを吸収するための免震装置が、従来技術においても開示されている。
その一環として本願発明者らは先に、家具等の倒壊や棚等からの物品の落下を防ぐ手段となる免震台の発明を開示していた(特許文献1参照。)。図5はその一実施例を示すもので、中央で切断して表示された免震台20は、第1の摺動シート12と第2の摺動シート13とを対向するよう配置し、各々の摺動シートをバックアップする第1のクッションシート11と第2のクッションシート14で挟んだ免震部材10を緩衝材23で囲んで枠体21内にセットしたものである。地震発生時には枠体21が床面(地面)と共に振動するが、上側に位置する第2の摺動シート及び第2のクッションシート14は両摺動シート12、13間に生ずる滑りによって振動が直接には伝達されず、地震力を低減することによってその上にある支承板22上に載置された家具類の倒壊や棚からの物品落下を防ぐものとしている。なお、図5では第1の摺動シート12と第2の摺動シート13とが区別し易いように便宜的に隙間を設けて表示されているが、実際には両摺動シート12、13は接触しており、地震時にはこの両者の間に生ずる滑りを利用して地震力を低減している。
図6は、同じく特許文献1に開示された他の免震台40の実施例を示している。図6(a)において、上述した第1のクッションシート11と第1の摺動シート12(以下、クッションシートと摺動シートに関する符号は、図5の符号に対応。)からなる第1の摺動部材41と、同じく第2の摺動シート13と第2のクッションシート14からなる第2の摺動部材42が対向配置されている。これら両摺動部材41、42は、第1および第2の摺動シート12、13が対向するよう重ね合され、周囲4箇所に両摺動部材41、42をつなぐよう弾性連結部材43a〜43dが固着されている。地震発生時には両摺動シート12、13の間の滑りによって両摺動部材41、42には相対的なずれが生じ、地震力を低減させるが、その際に図6(b)に示すように周囲の弾性連結部材43a〜43dに引張り力が生じ、地震後にこの引張り力が両摺動シート12、13の相対的ずれを解消するよう作用し、免震台40を原点位置に復帰させる。
図5、図6に示す特許文献1の免震台20、40の例では、第1のクッションシート11は直接又は間接(例えば、マット類などを介して)床面に接するよう敷設され、これによって床面の凹凸をクッションシート11の柔軟性で吸収している。具体的には1.5mm厚のゴム系防水シートがクッションシート11に使用されており、この他にもアスファルトシート、ゴムシート、ゴムマット(バラストマット)、プラスチックシートなど、床面の凹凸が吸収できる他の材料が使用されてもよいとされている。
同じく特許文献1では、第1と第2の摺動シートはできるだけ静摩擦係数の小さいものとして、0.075mm厚のフッ素樹脂シートが使用されており、この間の静摩擦係数は約0.2であるとしている。フッ素樹脂シートを構成するフッ素樹脂材料としては、テトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ化エチレンポリプロピレンコーポリマー(FEP)、テトラフルオロエチレン−エチレンポリマー(ETFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテルコーポリマー(PFA)などが挙げられており、他の代替シート材料として超高分子ポリエチレンシート(分子量100万以上が好ましい)の利用も考えられている。
次に第2のクッションシート14は、第1のクッションシート11と同様に、追ってその上に載置される家具等の平面の凹凸を吸収するとともに、荷重を分散させる柔軟性が要求されている。具体的には、例えば第1のクッションシート11と同様の板厚1.5mmのゴム系シートが使用されている。
特許文献1ではさらに、図6に示す弾性連結部材43a〜43dの材料として超低硬度ゴムの使用を挙げており、具体的には破断伸びが約1600%との高い数値を示すゲル状シートであるスチレン・ブタジエン系エラストマ(TPS)、ウレタン系エラストマ(TPU)、EPDM系加硫ゴムなどが挙げられている。弾性連結部材43の両端は、接着、融着などの適切な手段によって第1、第2の摺動部材41、42にそれぞれ接合されている。
特許第6132224号公報
特許文献1に開示された従来技術に係る免震台には未だ改善の余地があった。まず、図5に示す実施例では枠体21が必要となってサイズ的にも大掛かりとなり、また表裏が決まるため裏返しにすると構成要素が分離、脱落する恐れがある。図6に示す実施例では、両クッションシート11、14が床面や家具等の凹凸を吸収する柔軟性を備えたものとしているが、摺動シート12、13をバックアップする機能が要求されるクッションシート11、14にこの柔軟性があることによって、逆に摺動シート12、13の平坦度要求を必ずしも満たすことができない状況も考えられた。また摺動シート12、13に切れが生じたり、異物を咬んだりした場合、両摺動部材に固着された弾性連結部材43の存在がその取替えやメインテナンスの支障になっていた。そのたびに弾性連結部材43を切断し、メインテナンス後に新たな弾性連結部材43を貼り替えて再度これを固着する必要があった。したがって市場では、頑丈でありながら取扱いが容易でありできるだけハンディタイプの免震台ユニットが求められている。加えて、摺動シート12、13のフッ素樹脂シートの素材も、対向する両摺動シート間の静摩擦係数を最小化もしくは最適化するものが望まれている。
以上より、本願発明は、上述した特許文献1に示す免震台を改善して、摺動シートが具える低静摩擦係数を有効に引き出せる構成に改め、頑丈で取扱いやメインテナンスが容易であり、ユニットの各要素の組み合わせの変更も自在にでき、かつ静摩擦係数が用途に応じて最適となるような摺動シートの組み合わせの変更も容易となる免震台ユニットを提供することを目的としている。
本発明では、摺動作用を果たす少なくとも一対の対向した摺動シートの各々を剛性があって平坦度が維持可能な支承板に取り付け、また弾性連結材を取り外し可能に改善することで摺動部材の分解、メインテナンスを容易とした構造とすることにより上記課題を解決するもので、具体的には以下の内容を含む。
すなわち、本発明に係る1つの態様は、家具等の下に単数もしくは複数が配置され、摺動シート間の滑り作用によって地震発生時に地震力を低減させる免震台ユニットであって、該免震台ユニットが、摺動シート同士を対向させた状態で重ね合されて無端ベルト状の弾性材からなる結束バンドにより束ねられた一対の摺動部材から構成され、各々の摺動部材は、前記摺動シートを一方の表面に取り付けた硬質の剛性材からなる支承板と、前記支承板の他方の表面に配置されてこれをバックアップするクッションシートと、前記クッションシートの背後に接する保護シートもしくは硬質の剛性材からなる支承板のいずれかとから構成されていることを特徴とする免震台ユニットに関する。
本発明に係る他の態様は、前記一対の摺動部材の間に少なくとも1枚の第3の摺動部材がさらに配置され、当該第3の摺動部材が、クッションシートと、該クッションシートを両面からサンドイッチ状に挟む硬質の剛性材からなる一対の支承板と、該一対の支承板の前記クッションシートに接する表面とは反対側の表面にそれぞれ配置された一対の摺動シートとから構成されており、当該一対の摺動シートが、前記一対の摺動部材に配置されたそれぞれの摺動シート、もしくは少なくとも1枚追加配置された他の第3の摺動部材のいずれか一方の表面に配置された摺動シートと対向するよう配置されている免震台ユニットに関する。
前記結束バンドは、一対の摺動部材と少なくとも1枚の第3の摺動部材の内の隣接する摺動部材同士を束ねる複数の結束バンドから構成することができる。
前記摺動シートは、フッ素樹脂シートもしくは超高分子シートのいずれかから構成することができ、相互に対向するいずれか一方もしくは双方の摺動シートの表面にはエンボス処理や含侵処理による表面凹凸模様を施すことができる。
クッションシートと保護シートもしくは支承板とは、両者間の接合と分離とが容易となるよう、一方の面に粘着剤、他方の面に弱粘着剤を備えた両面テープにより接合されてもよい。
前記支承板は、金属、合板、パーチクルボード、硬質プラスチックのいずれかからなる硬質、高剛性の平坦な板材とすることができる。前記保護シートは、ゴム、軟質プラスチックからなる弾力性がある平坦な板材とすることができる。また前記クッションシートは、ゴムシート、アスファルトシート、バラストマット、プラスチックシートのいずれかから構成することができる。さらに前記結束バンドは、一対の帯状の超低硬度ゴムと一対の帯状の連結部材とを長手方向に交互につなぎ合わせて無端ベルト状とした結束バンドとすることができる。結束バンドは、家具等の摺動時の水平質量に応じて地震の卓越振動との共振を回避するよう諸元設定された拘束バンドとすることが好ましい。
本発明に係る免震台ユニットの実施により、従来技術のものに対して頑丈であり、摩擦抵抗をより小さくすることができ、構造が簡単、安価であり、設置、取扱い、管理も容易な摺動式の免震台ユニットを提供することができる。
本発明の実施の形態にかかる免震台ユニットの全体概要と改善された弾性連結材(結束バンド)を示す斜視図である。 図1(a)に示す実施の形態に係る免震台ユニットを示す側面断面図である。 図1(a)、図2に示す免震台ユニットの内部構造を示す一部分解斜視図である。 本発明の他の実施の形態に係る免震台ユニットの側面断面図である。 従来技術に係る免震台の例を示す斜視図である。 従来技術に係る他の免震台の例を示す斜視図である。
本発明の第1の実施の形態に係る免震台ユニットについて図面を参照して説明する。図1は、本実施の形態に係る免震台ユニット1の全体概要(a、b)と、改善された弾性連結部材である結束バンドの構造(c)を示している。まず図1(a)に示す形態では、第1の摺動部材50と、第2の摺動部材60とが重ね合され、これを無端ベルト状に改善されて着脱自在となった一対の結束バンド70で十字状に束ねている。ここで第1と第2の摺動部材50、60は、図6に示す従来技術の第1と第2の摺動部材41、42に対応したもので、すなわち両摺動部材50、60は従来技術と同様に双方の摺動シート同士が対向するよう重ね合されており、地震の際にはこの両摺動シート間の滑りによって地震力を低減するよう構成されている。なお、図1(a)において結束バンド70は各摺動部材50、60の端面部分のみ実線で他の主要部分が破線で示されているが、これは結束バンド70が内部構造のクッションシートを束ねていることによるもので、この詳細に関してはさらに後述する。
図1(b)は図1(a)の代替となる形態を示しており、第1と第2の摺動部材50、60は同様に重ね合される構成ながら、結束バンド70は十字状ではなく、矩形形状の摺動部材50、60の主平面で対向する一対の頂角をたすき掛け状に止めることにより両摺動部材50と60を束ねている。煩雑さを避けるため、図1(b)では便宜的に1つの結束バンド70のみを表示しているが、残りの2つの頂角を同様にたすき掛け状に止める結束バンド70を追加することで、方向性のない摺動部材の拘束が可能となる。端面を除いて主要部分が破線で示されているのは図1(a)で説明した通りである。なお、免震台ユニット1の平面形状は正方形、長方形に拘らず、多角形、円形、異形も可能であるが、その際の結束バンド70の配置はズレによる引張り力がズレ方向に関係なくなるべく均等となるよう配置することが好ましい。
結束バンド70は、結束する一対の摺動部材50、60の相対的摺動を許容するゴムバンドでよいが、本実施の形態では図1(c)に示すような改善された弾性連結部材である結束バンド70を使用している。当該結束バンド70は、一対の伸縮部71と一対の連結部72とを長手方向に交互に連結した無端ベルト状に形成されている。この内、伸縮部71にはゴムなどの弾性部材が使用され、なかでも従来技術の項で説明した超低硬度ゴムが使用されることが好ましい。他方の連結部72は、伸縮性のない、もしくは伸縮部72に対して伸縮率が僅かとなる例えば防水シート、ゴムシートやプラスチック材の使用が可能である。伸縮部71と連結部72とは接着により結合されており、この内伸縮部71が図1(a)、(b)の実線で示す摺動動部材50、60の端面に現れるよう配置することが好ましい。当該改善された結束バンド70の作用・効果に関してはさらに後述する。
図2は、図1(a)に示す免震台ユニット1の側面断面図を示している。以下の説明では図1(a)に示す免震台ユニット1を対象にして続けるが、図1(b)に示す形態、その他の形状となる免震台ユニットにおいても基本的に同様である。図2において、免震台ユニット1の下側に位置する第1の摺動部材50は、下から支承板51、クッションシート52、支承板53、摺動シート54を重ねて構成されている。その上方に配置された第2の摺動部材60の符号61〜64で示す各要素は、それぞれ第1の摺動部材50の要素51〜54に面対称の関係で対応しており、この両者が各々の摺動シート54、64を対向させた状態で重ね合され、結束バンド70によって束ねられている。
第1の摺動部材50と第2の摺動部材60の各構成要素51〜54と61〜64とが「対応する」としているが、これは各構成要素が基本的に同一であっても、例えば板厚なり後述する材質なりのスペックを異なったものとすることも可能であることを意味している。ただし、この両者を全く同一のスペックとすることでもよく、その場合には免震台ユニット1には表裏の関係がなくなり、いずれを上向きに置いても同一の構成となる。図示の例では、下側に位置する第1の摺動部材50が床面(地面)に置かれ、上側に位置する第2の摺動部材60の上に家具等が載置される。両摺動部材50、60はそれぞれの摺動シート54、64が対向して配置されているため、地震時には両摺動部材50、60間で相対的滑りが発生する。滑りの発生により地震後に摺動部材50、60の間にズレが生じている場合には、これによって伸ばされた状態にある結束バンド70の引張り力により幾分かのズレを解消し、原点位置に向けて引き戻す作用を及ぼす。なお、図2の断面図では煩雑さを避けて視認性を高めるため、クッションシート52、62と結束バンド70の断面ハッチングを便宜的に省略している。
図3は、図2に示す免震台ユニット1の内、上側に位置する第2の摺動部材60の各要素を分解し、その構成と内部構造が分かるように表示している。図3において、本実施の形態に係る摺動部材60は、最上層に支承板61が配置されている。支承板61は金属、合板、パーチクルボード、硬質プラスチックなどの硬くて剛性のある素材からなる平坦な板材で、その上面に載置される家具等の荷重を受けてそれを下に位置するクッションシート62に均等に分散させ、集中荷重を回避する役割を果たす。本実施の形態では、支承板61として塗装による防錆処理を施した0.8mm厚の鉄板(SPCC)を使用している。支承板61は、家具等の荷重を家具等の荷重を免震台ユニットに均一分散させる役割を担うものであるため、鉄板の厚みは0.8mmに限定されるものではない。
図3でその下に位置するクッションシート62は、地震による上下方向の衝撃を減衰する役割を果たすもので、柔軟性を備えた防振性のあるゴムシート、アスファルトシート、ゴムマット(バラストマット)、プラスチックシートなどが利用可能である。本実施の形態に係る免震台ユニット1では主に屋内での使用を想定し、火災時の備えから難燃ゴムシートとしており、その板厚は3mmとしている。これは目的に応じて防振性のある任意の材質、任意の厚さとすることができる。クッションシート62の図の上側の表面には溝62aが十字状に掘られており、この溝62aの中に、図3では伸ばされた状態で一部を省略して描いている一対の結束バンド70が縦横に嵌って重ね合された第1と第2の摺動部材50、60の両クッションシート52、62を束ねるものとなる。
ここで溝62aは、クッションシート62全体を一体で型成型する際に同時に設けてもよく、あるいはクッションシート62を、一枚物の平坦なクッション材を一段目とし、その上に二段目として溝62a部分を避けて4個に分割された小物クッション材を貼り付けた上下二段構造としてもよい。あるいは極端には、この内の一枚物のクッション材を廃止し、4個の小物クッション材のみから分割されたクッションシート62とし、これをその下に位置する支承板63に接着や両面テープなどで直接貼り付けてもよい。その際には隣接する当該小物クッション材の間に溝62aが形成されるものとなり、結束バンド70はクッション材52、62を介することなく、両支承板53、63を直接結束するものとなる。
クッションシート62の図の上側表面で溝62aを除いた4箇所の平坦部分には粘着テープ65が貼り付けられている。この粘着テープ65は、上から被さる支承板61をクッションシート62に固着して保持する役割を果たす。粘着テープ65は一種の両面テープではあるが、本実施の形態では支承板61の着脱が容易にできるよう、クッションシート62に対向する側の面(図の裏面)には粘着剤が塗られているが、支承板61に対向する側の面(図の表面)には弱粘着剤が塗られていて、支承板61を剥がす際には僅かな抵抗力しか示さない特殊な両面テープが使用されている。ただし、支承板61の主平面と平行な方向(地震時に滑りが生ずる方向)に加わる外力に対しては強い抵抗力を示す。この種のテープは「はがせる両面テープ」として知られ、例えば東京都品川区に本社を置く株式会社ニトムズから入手可能である。弱粘着剤の面を表裏逆にして支承板61の方に粘着テープ65を固着するようにしても良い。必要に応じ、粘着テープ65をクッションシート62の図の裏側の面にも貼り付け、支承板63とクッションシート62とを固着してもよい。
粘着テープ65としてこのような特殊なテープを使用することにより、支承板61の着脱が容易となり、例えば結束バンド70のメインテナンス(劣化、切れなどへの対応)、荷重に応じた所望の引張り力を具えた結束バンド70への取り換え、クッションシート62の取り換え、摺動部材60の構成要素の組み合わせの変更などが極めて容易に実施できるようになる。なお、図3に示すように結束バンド70は実際には第1と第2の摺動部材50、60の各クッションシート52、62間を束ねるようにしているが、粘着テープ65が支承板51、61をそれぞれクッションシート52、62に固着するため、実質的には結束バンド70が一対の摺動部材50、60を束ねて拘束しているものとなる。
次に、クッションシート62の下側には、支承板63と、その周囲に貼り付けられた摺動シート64のサブアセンブリが配置されている。支承板63のスペックは上述した支承板61と同様の構成とすることでもよい。摺動シート64は、下方に配置される第1の摺動部材50の上面に対向するよう、支承板63の下面(図面の裏側の表面)を全面的に覆うように取り付けられ、さらに支承板63の上面まで四方から回り込んで図示のように支承板63の上面で固着されている。固着は接着材が使用されてもよく、あるいは粘着テープを使用して摺動シート64の折り返し部分を支承板63に貼り付けるような対応も可能である。摺動シート64の取り換えやスペックの変更が行い易いように、この固着は比較的容易に着脱可能とすることが好ましい。
摺動シート64が剛性のある支承板63の一面を覆ってこのようにバックアップされることで摺動シート64自身の平坦度が確保され、同様に構成される他方の摺動部材50の摺動シート54との間の低摩擦係数が有効に引き出されることから、円滑で良好な摺動面を提供するものとなる。加えて、摺動部材60を、一対の支承板61、63でクッションシート62を挟んだサンドイッチ構造とすることにより、摺動部材60そのものの剛性、強度を高めることとなり、これは他方の摺動部材50も同様である。
摺動シート64の材質に関しては後の実施の形態で詳述するが、本実施の形態では0.1mm厚のフッ素樹脂シートとしている。図3では下側に位置する第1の摺動部材50は分解表示せずにアセンブリされたままの状態で示しているが、以上述べた第2の摺動部材60の構成に示す材質や板厚などのスペックの変更が加えられるとしても、基本的には第1の摺動部材50も同様である。この両者はそれぞれの摺動シート54、64を対向させた状態で結束バンド70により束ねられ、ユニット化された免震台ユニット1が形成される。
ここで、本実施の形態に係る改善された結束バンド70の作用・効果について説明する。まず結束バンド70は図1(c)に示すように無端ベルト状に形成され、重ね合された1対の摺動部材50、60に外部から周囲を束ねるようにはめてこれを拘束する。図6に示す従来技術に係る結束バンド43a〜dでは各摺動部材に接着して結合されるため、摺動シートの破れなどによる取り換えや異物の噛み込み等の際には弾性連結部材43a〜dを切断して対応せざるを得なかった。本実施の形態に係る結束バンド70では、これを引っ張って摺動部材50、60から取り外すだけでよく、メインテナンスが容易になるだけでなく、再組立ての際には外した結束バンド70の再利用が可能になるというメリットも得られる。
次に、結束バンド70を図1(c)に示すような構造とすることにより、結束バンド70の設計が容易となる。すなわち、地震時に摺動部材50、60間の相対ずれによって生じる結束バンド70の伸びは、一対の伸縮部71に集中することになる。例えば兵庫県南部地震を想定して地震の振幅を20cmと仮定し、これに対応した摺動部材50、60間の相対ずれによる伸縮部71の伸び率が100%となるような仕様とするには、各伸縮部71の実効長さ(接着箇所を除いた実際に伸びる部分の長さ)を20cmに設定すればよい。この際、伸縮部71の伸びによって生ずる摺動部材50、60間の相対ずれを原点位置方向に引き戻す力(引張り力)は100%モジュラス(Kg/cm)となる。なお、本実施の形態の結束バンド70は超低硬度のシリコンゴムを使用しており、伸びは750%まで許容できる。
ただし、結束バンド70の設計に当っての注意すべき点は、結束バンド70が存在することによって地震の揺れに伴って生じ得る共振を回避すること、すなわち、地震の振動数と結束バンド70により引張られる家具等の固有振動数が一致もしくは近接することを回避しなければならないことである。共振が発生した場合には家具等の揺れ量が大きくなり、家具との倒壊や破損を招く。家具等の固有振動数は以下の式により算出される。
上式において、frは固有振動数(Hz)、kは拘束バンド70のばね定数(kg/cm)、mは家具等の摺動時の水平質量(kg/g)となる。gは重力加速度である。
一般に地震の卓越振動数fは10Hz〜0.5Hz(卓越周期では0.1秒〜2秒)といわれ、共振を回避するにはこの両者の比振動数比N=f/frが√2(1.41)以上に設定することが望まれる。その結果振動倍率Tは共振領域を回避でき、1以下に設定できることになる。
結束バンド70はまた、地震時に両摺動部材50、60間に生じるズレ量を抑制する作用を及ぼす。すなわち、拘束バンド70が存在しない状態で地震時に両摺動部材50、60間の相対的ズレを制約するのは摺動シート54、64間の摩擦抵抗力(静摩擦抵抗力と動摩擦抵抗力の差)のみとなってズレが拡大し易い傾向にあるが、結束バンド70が存在することによってそのばね力が抵抗力として加わるため、ズレ量を抑制する効果を発揮する。この際のばね力は結束バンド70の伸び量が大きくなればなるほど強くなるため、家具等のズレ量が大きくなるほどこれを原点位置に向けて引き戻す効果が大となる。
なお、図1(c)に示す本実施の形態における結束バンド70では伸縮部71と連結部72とを交互に結んだ構成としているが、特に小型サイズの免震台ユニットを構成する場合には伸縮部71のみからなる結束バンド70とすることでもよく、その際の材質を超低硬度ゴムとすることができる。
これまでの説明において、図面では理解容易化のため各摺動部材50、60の厚さを厚めに描いているが、実際には2枚の支承板0.8mm×2、一枚のクッションシート3mm、一枚の摺動シート0.1mmの合計4.7mmと、合計5mmに満たず、免震台ユニット1全体としても10mmを越えない。したがって、取扱い、搬送も容易であり、家具等の下に敷いたとしてもそれによる違和感、影響度は僅かである。また免震台ユニット1の平面のサイズは任意であり、被害を回避したい機械装置や家具等の要求に応じて例えば約1m×約1mさらにはこれより大きなサイズのものとすることができ、逆に約20cm×約20cmさらにはこれより小さいサイズのものとすることも自在である。平面形状も図示の方形に限らず、円形、楕円形、多角形も可能であり、さらには家具等の形状に応じてL字状、T字状などとすることも任意である。この際の結束バンド70の配置は、地震時の摺動部材50、60間の相対ずれに対する抗力にできるだけ方向性が生じないよう適切に配置することが望まれる。
使用時における免震台ユニット1の設置は、工場内の機械類が対象であれば大きな免震台ユニット1の上に機械類をそのまま載置してもよく、あるいは3本や4本の脚が付いた家具等であれば複数の小型の免震台ユニット1を各脚に1つずつ配置してもよい。一定以上のサイズであれば免震台ユニット1を2セット積み重ねて使用すればより減震効果を高め、移動ストロークを大きく取ることもできる。
以上のように構成された本実施の形態に係る免震台ユニット1の動作は、基本的に特許文献1に示した従来技術の免震台と同様である。すなわち、地震発生時にまず床面(地面)に接している下側に位置する第1の摺動部材50に振動が伝わる。ここで両摺動部材50、60が接している双方の摺動シート54、64の間で滑りが発生し、地震の震動が減衰されて上側に位置する第2の摺動部材60には地震力が低減されて伝播される。この免震効果によって第2の摺動部材60の上に載置された家具等の振動が軽減され、家具等の倒壊、損壊を防ぎ、また物品の落下による被害を最小限に抑えるものとなる。
これまでの説明では、水平方向の震動に対する滑りによる免震効果に主体に述べてきたが、免震台ユニット1には計2層になるクッションシート52、62が設けられているため、地面に垂直な方向の震動に対しても振動吸収効果を生む。各クッションシートが一対の支承板によってサンドイッチ構造とされているため、上述したように荷重が支承板を介してクッションシートに均一に伝達されるので、垂直方向の震動吸収に関しても従来技術によるものよりも有利である。加えて、本実施の形態に係る免震台ユニット1にはオプションとして図2の破線で示す上下2層の吸振ゴム91、92のいずれか一方もしくは双方をさらに追加して重ねることができる。これらも同様に垂直方向の吸振効果を果たすが、さらに下側(地面側)に配置される吸振ゴム91はコンクリートや砂利などの凹凸がある場合にこれを吸収し、設置面に対する支承板51のガタツキを排除する効果を生む。また上側(家具等の側)に配置される吸振ゴム92は、その上に載置される家具等と支承板61との間の地震時の滑りを防ぐ効果をも奏する。
本実施の形態に掛かる免震台ユニット1の変形の態様として、上述した一対の支承板によりサンドイッチ構造とされた摺動部材50、60の代わりに、摺動シート54、64をバックアップして平坦度を確保するための一方の支承板53、63はそのまま残し、クッションシート52、62をバックアップする他方の側の支承板51、61を、例えばゴムシート、プラスチックシート、あるいは上記クッションシート52、62と同様な柔軟性のある材料からなる保護シートに代替することが考えられる。保護シートにした場合にはその上に載置される家具類の荷重をクッションシート52、62に均等に伝達する作用は減退するものの、他方の支承板53、63が残っていることから摺動シート54、64に対する均等荷重の負荷と平坦度の提供は確保することができる。保護シートをゴムシートやクッションシートとすることで上下方向の震動吸収能が向上するほか、載置される機械類や家具などとの滑りが回避され、また下側の摺動部材50では地面などの凹凸を吸収する役割を果たし得る。なお、支承板51、61もしくはこの保護シートをもいずれも取り除き、クッションシート52、62が上下表面に現れる状態で使用することも不可能ではない。
次に、本発明の第2の実施の形態に係る免震台ユニットについて図面を参照して説明する。図4は、図2に対応させた本実施の形態に係る免震台ユニット2の側面断面図を示している。本実施の形態に係る免震台ユニット2は、図2に示す免震台ユニット1の第1と第2の摺動部材50、60の中間に、第3の摺動部材80を挿入させた三層の摺動部材50、60、80から構成されていることを特徴とする。この内、第1と第2の摺動部材50、60の構成は、先の実施の形態で説明したものと同様のものでよい。これに対し、第3の摺動部材80は、上下に配置される第1と第2の摺動部材との間で摺動を可能とするため、上下両面に支承板と摺動シートが配置されている。
具体的に、図4において第3の摺動部材80は、下から摺動シート81、支承板82、クッションシート83、支承板84、そして最上面に位置する摺動シート85から構成されている。これら各構成要素のそれぞれ個別のスペック、材質、各要素間の固着手段等は基本的に第1と第2の摺動部材50、60の構成要素と同様でよい。この内、一方の摺動シート81は支承板82の外表面に取り付けられて第1の摺動部材50の摺動シート54(図2参照)に対向し、他方の摺動シート85は支承板84の外表面に取り付けられて第2の摺動部材60の摺動シート64(同)に対向している。すなわち、第3の摺動部材80の摺動シート81、85は、それぞれ平坦度が確保される剛性のある支承板82、84にバックアップされており、第1及び第2の摺動部材50、60との間で円滑な滑りが得られるよう構成されている。なお、図4においても視認性を高めるため支承板のみに断面ハッチングを付し、他の断面のハッチングは省略している。
3層の摺動部材50、60、80を束ねる結束バンド70は、先の実施の形態と同様に3層をまとめて一緒に束ねるものとしてもよいが、図4に示すように第1と第3の摺動部材50、80を一対の結束バンド70aで拘束し、第2と第3の摺動部材60、80を別の一対の結束バンド70bでそれぞれ別々に拘束するよう構成することが好ましい。3層の摺動部材を一括して束ねる代わりにこのように一対ずつを個別の結束バンドで束ねることによって、地震時の各摺動部材50、60、80相互間の滑り量を均等化し、地震後の原点位置方向への引き戻しをより円滑にする効果が得られる。
図4に示すように、平面矩形形状の摺動部材を3層とし、二層ずつを別々の結束バンドで十字状にクロスして配置する場合、組立ての都合上各摺動部材50、60、80のクッションシート52、62、83は、図3の符号62に示すような一体に成型されたものではなく、先に説明したような分割配置された4個の小物クッション材のみから構成されている。これにより、各小物クッション材間に溝62a(図3参照)が形成され、その溝62aに結束バンド70a、70bを嵌めることによって3層となっても免震台ユニット2の分解、組立てを可能にしている。
以上のように構成された本実施の形態に係る免震台ユニット2の動作も、基本的に先の実施の形態に係る免震台ユニット1と同様であるが、摺動箇所が2箇所となる点でより円滑な免震効果が得られ、全体での摩擦力を低減させるという特徴がある。摺動シート間の静摩擦係数を極小にしたとしても摩擦抵抗はいずれにせよ避けることはできず、その摩擦抵抗力を2つの摺動箇所に分散させることによって、一方の滑り面が摩擦抵抗で地震に追従できない場合でも他方の滑り面が滑ることにより有効に追従し、良好な免震効果を得ることができるようになる。また、3層の免震台ユニット2とすることで滑りによるずれ量を拡大することが可能となり、免震台ユニット1に比べ免震台ユニット2は摩擦係数が小さくなるため応答加速度を減少させる効果がある。例えば高層ビルの上層階で2次モード、3次モードによって揺れ幅が地震による地面の移動幅の数倍になる場合の適用に関してもより有効となる。なお、図4では摺動部材を3層としているが、中間層に配置される第3の摺動部材80を複数にしてさらに追加してこれ以上の層を積み上げることも勿論可能である。複数の摺動部材80同士の間においても各々の摺動シートが対向するよう配置される。その際の結束バンド70の配置も、図4に示すように隣接する摺動部材間で個別に拘束するよう構成することが好ましい。また先の実施の形態で示したオプションの吸振ゴム91、92(図2参照)も同様に追加することができる。
次に、本発明の第3の実施の形態にかかる免震台ユニットについて説明する。本実施の形態は、摺動シート54、64、81、85の材質に係るものであり、免震台ユニットの構造そのものは先の実施の形態に述べた図1〜図3に示す免震台ユニット1、図4に示す免震台ユニット2と同様である。本願発明者らは特許文献1において、摺動シート材として可能性のあるフッ素樹脂シートと超高分子ポリエチレンシートを例として挙げていた。これらを使用した場合の静摩擦係数は、フッ素樹脂シート同士の組み合わせで0.19〜0.25(荷重を変化させて測定)、超高分子ポリエチレンシート同士の組み合わせで0.41〜0.43(同)、両者間の組み合わせでは0.21〜0.25(同)との結果を示していた。
本願発明者らのその後の実験結果によれば、本発明にある剛性が高く円滑な摺動面が確保される免震台ユニットを使用することで静摩擦係数をより低減できることが分かったが、その一方において、極端に低い低摩擦係数では支障が出る場合も想定され得た。例えば屋内使用の場合はまだしも、商品の保管棚や型具置き場のパレットのように屋外で使用する場合には、静摩擦係数が低すぎると搬送の際や強風時に免震台ユニット1に滑りが発生して移動する事態も考えられた。さらにフッ素樹脂シートが高価であることを考慮すれば、最小の摩擦係数でなくても使用目的に応じた最適な摺動シートを選択することも必要と考えられた。
そこで本実施の形態では、本願発明者らが国内市場で入手可能なできるだけ多くの素材を組み合わせ、目的に応じた最適な摺動シートの組み合わせを見出したものである。テストに供した摺動シート材の候補を以下の表1に示す。以下、「*」マークは登録商標であることを示している。

上記計9種類の素材の全ての組み合わせである44通りにつき、荷重6.1kg、9.65kgの2通り(受圧面積60cm)、面圧では0.1017kg/cm(CASE1)、0.1608kg/cm(CASE2)の2通りの条件下で静摩擦係数、動摩擦係数の測定をした。その代表的な測定結果の一部を抜粋して以下の表2に示す。

以上の結果により、表面にガラスクロス含浸処理やエンボス処理が施されていないシート(以下「フラットシート」という。)同士の組合せによる動摩擦係数が0.1以上に対し、ガラス含浸処理、エンボス処理により表面凹凸模様を施したシート(以下「表面凹凸シート」という。)をフラットシートと組み合わせると0.1以下になることが分かった。また、アクリル変性塩ビ樹脂シートであっても、表面凹凸シートと組合わせることによって動摩擦係数を0.1以下にできることが分かった。上記表2から、44通りの組み合わせの中で静摩擦係数が最も小さいと見られるものはHGF−500−3(C−1)とxMSE(B−1)の組み合わせ(0.069〜0.071)、最も大きいと見られるものはタフビロン*(E−1)同士の組み合わせで(0.233〜0.235)、あとはこの中間でばらつくという結果が得られた。
xMSE(B−1)はフッ素樹脂エンボス付きとあるが、これはシートの表面に微細なツブツブ状の凹凸が形成されるエンボス加工が施されたもので、メーカ情報によればこれによって剥離力が改善されるとある。このことから密着した状態にある免震台ユニットがずれる際の良好な剥離効果が摺動シートの摩擦力を低く抑える結果につながっていることが推測される。またHGF−500−3(C−1)にあるガラスクロス含浸とは、布状に編み立てられたガラス繊維に特殊フッ素樹脂処理加工を施したもので、基礎となる布状の編み立て構造が表面に微細な凹凸を生み、エンボス加工と同様な効果を奏するものと考えられる。xMSE同士、HGF−500−3同士という同一素材の組み合わせでは必ずしも良好な摩擦係数が得られていないのは、表面に形成された凹凸状が対向する相手側の同一ピッチの凸と凹に嵌って僅かな抵抗が生じていることが原因の一つと想像される。実験結果では、凹凸が形成されていてもこのような現象が生じない異質のxMSEとHGF−500−3との組み合わせが最高の結果を示している。ただし、同質のシートの組み合わせであっても凹凸のピッチが異なっていればそれなりの低い数値が得られる可能性はあるとみられる。なお、本明細書ではこのエンボス加工やガラスクロス含浸のようにシート表面に凹凸を形成された状態をまとめて「表面凹凸模様」と呼ぶものとする。
以上の結果から、屋内用の免震台ユニット1に使用する摺動シート54、64の組み合わせとしては、最も小さい動摩擦係数を示した表面シボ処理を含むHGF−500−3とxMSEの組み合わせ(B−1×C−1)が最適であり、以下、UHPEとxMSEの組み合わせ(D−1×B−1、静摩擦係数:0.071〜0.074)、HGF−500−3(C−1)同士の組み合わせ(同:0.071〜0.074)、xMSE(B−1)同士の組み合わせ(同:0.074〜0.082)などがそれに続く。屋外用の免震台ユニット1に使用する摺動シート54、64の組み合わせとしては、これらよりやや静摩擦係数が大きくなるタフビロン*とxMSEの組み合わせ(E−1×B−1、同:0.082〜0.083)、HGF−500−3とヨドフロン*の組み合わせ(C−1×A−4、同:0.082〜0.086)、xMSEとヨドフロン*の組み合わせ(B−1×A−4、同:0.090)辺りが適当と考えられる。総括として、屋内用には少なくとも一方、好ましくは双方にシボ処理が施されたフッ素樹脂からなる摺動シート同士の組み合わせが推奨され、屋外用としては超高分子シート同士の組み合わせ、もしくは超高分子シートとシボ処理のないフッ素樹脂シートの組み合わせが推奨され、その他の組み合わせはこの中間に位置するものとなる。
なお、以上のテストに供した摺動シートでは、超高分子シートにシボ処理を施したものは含まれていないが、シボ処理を施すことによる摩擦力の低減に関してはフッ素樹脂シートと同様な効果が超高分子シートにおいても得られるものと推察される。
以上、本発明の各実施の形態に係る免震台ユニットを説明したが、まとめとして本発明に係る摺動作用を利用した免震台ユニットと従来技術による免震台とを比較した場合、以下のような顕著な有利点が見られる。
1)摺動シートを剛性の高い支承板に取り付け、これをクッションシートでバックアップした一対の摺動部材を結束バンドで束ねた構造とすることにより、静摩擦係数をさらに低減させた構造簡単で剛性の高い安定した免震台ユニットが得られ、かつ垂直方向の免震効果も得ることができる。
2)結束バンドを無端ベルト状にして着脱自在とすることで各構成要素の分解とその後の再組立て容易であり、設置、撤去、要求に応じた各要素の組合せが極めて容易である。
3)一般家庭の机などの小物から工場の設備に至るまで、幅広い対象物に利用することができる。
4)単純な摺動であるため、機械的な故障がなく、摺動シートの耐久性が高く、長い年月にわたって安定使用が可能である。
5)ゴム、空気ばねを利用して支えられる家具等は、地震の周波数によっては共振により振動が増幅する恐れがあるが、摺動作用のためそのような現象は現れ難い。また、結束バンドの材質として少なくとも一部に超低硬度ゴムを使用して伸びをそこへ集中させることにより一般ゴムを使用した場合に比べて共振防止効果を高めることができる。但し、結束バンドによる共振現象を防止するする方法は上述した通りであるが、家具等の質量を考慮したバンドの事前設計が重要である。
6)同じフッ素樹脂シートであっても表面凹凸模様が施された摺動シートを使用することで摩擦力が軽減されてより良好な免震効果が得られる。
本発明に係る免震台ユニットは、免震部材の開発、製造、販売、利用を図る各産業分野において広く利用することができる。
1、2.免震台ユニット、 50.第1の摺動部材、 51.支承板、 52.クッションシート、 53.支承板、 54.摺動シート、 60.第2の摺動部材、 61.支承板、 62.クッションシート、 62a.溝、 63.支承板、 64.摺動シート、 65.粘着テープ、 70、70a、70b.結束バンド、 71、伸縮部、 72、連結部、 80.第3の摺動部材、 81.摺動シート、 82.支承板、 83.クッションシート、 84.支承板、 85.摺動シート、 91、92.吸震ゴム。
結束バンド70はまた、地震時に両摺動部材50、60間に生じるズレ量を抑制する作用を及ぼす。すなわち、拘束バンド70が存在しない状態で地震時に両摺動部材50、60間の相対的ズレを制約するのは摺動シート54、64間の摩擦抵抗力(動摩擦抵抗力)のみとなってズレが拡大し易い傾向にあるが、結束バンド70が存在することによってそのばね力が抵抗力として加わるため、ズレ量を抑制する効果を発揮する。この際のばね力は結束バンド70の伸び量が大きくなればなるほど強くなるため、家具等のズレ量が大きくなるほどこれを原点位置に向けて引き戻す効果が大となる。

Claims (10)

  1. 家具等の下に単数もしくは複数が配置され、摺動シート間の滑り作用によって地震発生時に地震力を低減させる免震台ユニットにおいて、
    該免震台ユニットが、摺動シート同士を対向させた状態で重ね合されて無端ベルト状の弾性材からなる結束バンドにより束ねられた一対の摺動部材から構成され、
    前記各々の摺動部材が、前記摺動シートを一方の表面に取り付けた硬質の剛性材からなる支承板と、前記支承板の他方の表面に配置されてこれをバックアップするクッションシートと、前記クッションシートの背後に接する保護シートもしくは硬質の剛性材からなる支承板のいずれかと、から構成されていることを特徴とする免震台ユニット。
  2. 前記一対の摺動部材の間に少なくとも1枚の第3の摺動部材がさらに配置され、
    当該第3の摺動部材が、クッションシートと、該クッションシートを両面からサンドイッチ状に挟む硬質の剛性材からなる一対の支承板と、該一対の支承板の前記クッションシートに接する表面とは反対側の表面にそれぞれ配置された一対の摺動シートとから構成され、
    当該一対の摺動シートが、前記一対の摺動部材に配置されたそれぞれの摺動シート、もしくは少なくとも1枚追加配置された他の第3の摺動部材のいずれか一方の表面に配置された摺動シートと対向するよう配置されている、請求項1に記載の免震台ユニット。
  3. 前記結束バンドが、前記一対の摺動部材と前記少なくとも1枚の第3の摺動部材の内の隣接する摺動部材同士を束ねる複数の結束バンドから構成されている、請求項2に記載の免震台ユニット。
  4. 前記摺動シートが、フッ素樹脂シートもしくは超高分子ポリエチレンシート、アクリル変性高衝撃塩ビシートのいずれかからなり、相互に対向するいずれか一方もしくは双方の摺動シートに表面凹凸模様が施されている、請求項1または請求項2に記載の免震台ユニット。
  5. 前記クッションシートと前記保護シートもしくは前記支承板とは、両者間の接合と分離とが容易となるよう、一方の面に粘着剤、他方の面に弱粘着剤を備えた両面テープにより接合されている、請求項1または請求項2に記載の免震台ユニット。
  6. 前記支承板が、金属、合板、パーチクルボード、硬質プラスチックのいずれかからなる硬質、高剛性の平坦な板材である、請求項1または請求項2に記載の免震台ユニット。
  7. 前記保護シートが、ゴム、軟質プラスチックからなる弾力性がある平坦な板材である、請求項1または請求項2に記載の免震台ユニット。
  8. 前記クッションシートが、ゴムシート、アスファルトシート、バラストマット、プラスチックシートのいずれかからなる、請求項1または請求項2に記載の免震台ユニット。
  9. 前記結束バンドが、全体が帯状の超低硬度ゴム、もしくは一対の帯状の超低硬度ゴムと一対の帯状の連結部材とを長手方向に交互につなぎ合わせて無端ベルト状とした結束バンドである、請求項1から請求項3のいずれか一に記載の免震台ユニット。
  10. 前記拘束バンドが、家具等の摺動時の水平質量に応じて地震の卓越振動との共振を回避するよう諸元設定された拘束バンドである、請求項9に記載の免震台ユニット。
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