JP2020056154A - 雄ねじ部の不完全ねじ部を活用した継手 - Google Patents
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Abstract
【課題】耐引張力および耐圧縮力上の両方の要件を充足でき、かつ汎用性を高めることができ、また部品点数を低減してコスト低減を図ることができる雄ねじ部の不完全ねじ部を活用した継手を提供する。【解決手段】継手は、一対の鉄筋1,1が両鉄筋の端部に設けられた雄ねじ部1cに螺合する筒状のカプラー2で接続された継手である。一対の鉄筋1,1におけるいずれか一方の鉄筋1は、鉄筋1の雄ねじ部1cの基端における不完全ねじ部1caのねじ溝に、カプラー2の雌ねじ部2aのねじ山が、少なくとも弾性変形状態に食い込むまで深く螺合することで、雄ねじ部1cとカプラー2との間に緩み止めトルクが発生したものである。一般的には使用しない不完全ねじ部1caを利用して雄ねじ部1cとカプラー2との間に緩み止めトルクを発生させるため、少なくともいずれか一方の鉄筋1の雄ねじ部1cに、ロックナット等を螺合する長さ分を確保する必要がない。【選択図】図1
Description
この発明は、例えば、鉄筋コンクリートに用いられる雄ねじ部の不完全ねじ部を活用した継手に関する。
鉄筋コンクリートにおいて、主筋には一般に異形鉄筋が用いられ、帯筋やあばら筋には異形鉄筋または丸鋼が用いられる。長尺の柱や、梁、布基礎等において、限られた長さの鉄筋を現場において連続な鉄筋とするために、各種の鉄筋継手が用いられる。各種の鉄筋継手のうち、短い工期で済むねじ式継手が提案されている。図15に示すように、従来のねじ式継手として、ねじ筒からなるカプラー50の両側にそれぞれワッシャー51を介してロックナット52を使用することが記載されている(例えば、特許文献1)。
鉄筋継手には、引っ張り荷重の他に、所定の圧縮荷重にも耐えることが、建築の基準として定められている。ねじ式鉄筋継手では、鉄筋の雄ねじ部とねじ筒の雌ねじ部との噛み合い部分の遊びが、圧縮荷重の要件を充足するについて問題となる。すなわち、ねじの噛み合い部分ではねじ込み作業が可能なように規定の遊び、いわゆるガタが設けられている。そのため、引っ張り荷重の負荷状態から圧縮荷重の負荷状態に変わったとき、雄ねじ部のねじ山の片方の面に押し付けられていた雌ねじ部のねじ山が、遊び分だけ移動して、雄ねじ部の隣のねじ山の反対側の面に押し付けられることになる。この遊び内でのねじ山の移動は自由な移動となるため、滑り量の規定を満たす上で問題となる。鉄筋径が大きくなると、前記遊びも大きくなるため、上記の課題がより大きくなる。
この遊びの課題は、ロックナットを用いると解消できる。しかし、従来のロックナットを用いたねじ式鉄筋継手は、いずれも雄ねじ部の長さを、接続作業のためにカプラーおよびロックナットを逃がしておくための範囲に渡って設けている。そのため、雄ねじ部の長さが長くなる。
鉄筋の雄ねじ部の長さが長くなると、次のような種々の課題が生じる。資材の共用化のため、ねじ式鉄筋継手を構成する異形鉄筋を、ねじ式鉄筋継手として使用せずに、一般の異形鉄筋と同様にコンクリートに埋め込む場合がある。この場合、雄ねじ部の長さ範囲では、特に異形鉄筋の場合、その特徴である節部を有しないため、コンクリートに対する定着力が弱い。そのため、上記雄ねじ部を設けた鉄筋を異形鉄筋として使用することが難しい。建築基準における異形鉄筋の規定では、鉄筋径に対する所定倍数の鉄筋長さの範囲内に、節部を幾つ必要であるかが定められている。この規定を、ロックナットの逃がし可能な長い雄ねじ部を持つ異形鉄筋で充足させようとすると、雄ねじ部以外の部分の節部の間隔が短くなり、コスト増に繋がる。雄ねじ部付きの異形鉄筋を一般の異形鉄筋として扱えない場合、管理上および現場での鉄筋の保管、取り扱い上で煩雑さが生じる。
また、前記雄ねじ部におけるカプラーおよびロックナット等を逃がしておくための範囲は、カプラーまたはロックナットのねじ戻しによって露出するが、この雄ねじ部の露出部分には節部がないため、定着力が弱いという問題が生じる。
しかも、雄ねじ部の長さが長いと、それだけねじ加工における工具、例えば転造ではダイス、切削加工ではバイトの摩耗が多くなり、この工具の摩耗による寿命の低下は、ねじ式鉄筋継手のコスト増の大きな要因の一つとなっている。また従来のロックナット付きのねじ式鉄筋継手では、図15に示すように、カプラー50の両側にそれぞれワッシャー51を介してロックナット52を設けているため、部品点数が多くコスト増となる。このようなねじ加工による寿命の低下、ワッシャーによる部品点数の増加という課題は鉄筋が丸鋼からなる場合も同じである。
この発明の目的は、耐引張力および耐圧縮力上の両方の要件を充足でき、かつ汎用性を高めることができ、また部品点数を低減してコスト低減を図ることができる雄ねじ部の不完全ねじ部を活用した継手を提供することである。
この発明の雄ねじ部の不完全ねじ部を活用した継手は、一対の鉄筋が両鉄筋の端部に設けられた雄ねじ部に螺合する筒状のカプラーで接続された継手であって、前記一対の鉄筋におけるいずれか一方または両方の鉄筋は、前記鉄筋の前記雄ねじ部の基端における不完全ねじ部のねじ溝に、前記カプラーの前記雌ねじ部のねじ山が、少なくとも弾性変形状態に食い込むまで深く螺合することで、前記雄ねじ部と前記カプラーとの間に緩み止めトルクが発生したものである。
鉄筋の端部に雄ねじ部を形成する際、雄ねじ部を加工する工具の面取り部または食い付き部等によって、円筒部と完全ねじ部との境界部およびねじ先端部にねじ溝が次第に浅くなる、いわゆる不完全ねじ部が生じる。一般的なねじ式鉄筋継手では、雄ねじ部の基端における不完全ねじ部が、ねじ筒、ロックナットの各雌ねじ部と噛み合わないように、雄ねじ部の長さを長く確保する。
この発明の構成によると、いずれか一方の鉄筋の雄ねじ部の基端における不完全ねじ部のねじ溝に、カプラーの前記雌ねじ部のねじ山が、少なくとも弾性変形状態に食い込むまで深く螺合することで、雄ねじ部とカプラーとの間に緩み止めトルクが発生する。雄ねじ部の基端における不完全ねじ部のねじ溝に、カプラーの雌ねじ部のねじ山が、少なくとも弾性変形状態に食い込むまで深く螺合することで、この鉄筋継手に対する引張力の作用時と圧縮力の作用時とで、雄ねじ部と雌ねじ部のねじ山同士の接触する面が変わらず、雄ねじ部と雌ねじ部間の遊びは微小であり、遊びが大きくなる課題が解消される。なお前記不完全ねじ部のねじ溝に、カプラーの雌ねじ部のねじ山の一部が塑性変形するまで螺合してもよい。鉄筋に緩み止めトルクを与えることにより、両側の鉄筋に引張力が作用したとき、互いに接触するねじ山同士が接触を維持してガタ(遊び)を生じず、引張力は、一方の鉄筋→カプラー→他方の鉄筋に伝わる。両側の鉄筋に圧縮力が作用したときは、鉄筋の不完全ねじ部のねじ溝から、このねじ溝に弾性変形状態に食い込むカプラーの雌ねじ部のねじ山に圧縮力が伝達される。したがって、耐引張力および耐圧縮力の両方の要件を充足できる。
このように、不完全ねじ部が製造上で生じてしまうが、ねじ締めには一般的には使用しない不完全ねじ部を利用して雄ねじ部とカプラーとの間に緩み止めトルクを発生させる。このため、少なくともいずれか一方の鉄筋の雄ねじ部に、ロックナット等を螺合する長さ分を確保する必要がない。換言すれば、前記鉄筋の雄ねじ部には、カプラーの雌ねじ部に螺合する長さ分があれば足りる。よって、ロックナットと同様の緩み止め機能を得ながら、従来のロックナット付きのねじ式鉄筋継手よりも雄ねじ部の長さ、およびカプラーの軸方向長さを短くすることができるため、雄ねじ部以外の部分の例えば節部の間隔等を短くする必要がなくなるうえカプラーの材料費も低減できるため、コスト低減を図れる。雄ねじ部付きの異形鉄筋を一般の異形鉄筋として扱うことができ汎用性を高め得る。また従来のねじ式鉄筋継手に対し、ロックナット等を低減することができるため、従来構造よりも部品点数を低減しコスト低減を図れる。
前記カプラー内における互いに対向する雄ねじ部の先端部同士が互いに接触するように両鉄筋が設けられてもよい。この場合、両側の鉄筋に圧縮力が作用したとき、鉄筋の不完全ねじ部のねじ溝から、このねじ溝に少なくとも弾性変形状態に食い込むカプラーの雌ねじ部のねじ山に圧縮力が伝達されると共に、雄ねじ部の先端部を介して他方の鉄筋に伝わる。このように耐圧縮力の要件を充足することができる。
前記一対の鉄筋におけるいずれか一方の鉄筋につき、前記不完全ねじ部のねじ溝に、前記カプラーの前記ねじ山が少なくとも弾性変形状態に食い込み、いずれか他方の鉄筋の雄ねじ部にロックナットが螺合されたものであってもよい。
この発明では、鉄筋に緩み止めトルクを導入して性能を確保しているが、場合によっては作業が完了した他の鉄筋継手へ悪影響を及ぼすことが懸念される。そこで、この構成によると、鉄筋の片側にロックナットを設けることで、作業が完了した他の鉄筋継手へ悪影響が及ぶことを未然に防止し得る。一対の鉄筋につき、雄ねじ部の長さが異なるものを準備しておき、雄ねじ部の長さが短い一方の鉄筋につき、雄ねじ部の基端における不完全ねじ部のねじ溝に、カプラーの雌ねじ部のねじ山が、少なくとも弾性変形状態に食い込むまで深く螺合することで、雄ねじ部とカプラーとの間に定められた緩み止めトルクを得る。前記定められた緩み止めトルクは、設計等によって任意に定めるトルクであって、例えば、試験およびシミュレーションのいずれか一方または両方等により適切なトルクを求めて定められる。その後、雄ねじ部が長い他方の鉄筋に螺合したロックナットに所定の締付けトルクを与える。このように鉄筋の片側にロックナットを設けることで、作業が完了した他の鉄筋継手へ悪影響が及ぶことを未然に防止し得る。
前記カプラーに、前記一対の鉄筋が前記カプラー内に所定の締結最小長さまでねじ込まれていることを確認する締結長さ確認孔が形成されたものであってもよい。前記確認孔は1個であっても複数設けられていてもよい。また、締結長さ確認孔を設ける位置は、カプラーに両側の鉄筋が前記締結最小長さまでねじ込まれていることが、締結長さ確認孔を用いて確認できる位置にあればよく、必ずしもカプラーの長さ方向の中央でなくてもよい。前記所定の締結最小長さは、適宜設計される。前記確認孔が設けられていると、前記確認孔を覗くことで、または前記確認孔にピン状の治具を差し込み、または光を通すことで、鉄筋が締結最小長さまでねじ込まれか否かを容易に確認することができる。
この発明において、前記一対の鉄筋のうちの一方または両方の鉄筋は、丸軸状の鉄筋本体の外周に、長手方向に間隔を開けて複数の節部を有し、かつ長手方向に延びる突条を有する異形鉄筋であってもよい。この構成によれば、耐引張力および耐圧縮力上の両方の要件を充足でき、かつ汎用性を高めることができる。
この発明において、さらに、前記一対の鉄筋のうちの一方または両方の鉄筋は、丸鋼であってもよい。この場合、丸鋼はリブがなくなるので断面欠損も発生しない。また、この丸鋼はコイル状で生産・供給されており、安価で取扱いやすく、ロスを生じるおそれが低いうえ、鋼種も豊富であることから、メリットが大きい。
この発明の雄ねじ部の不完全ねじ部を活用した継手は、一対の鉄筋が両鉄筋の端部に設けられた雄ねじ部に螺合する筒状のカプラーで接続された継手であって、前記一対の鉄筋におけるいずれか一方または両方の鉄筋は、前記鉄筋の前記雄ねじ部の基端における不完全ねじ部のねじ溝に、前記カプラーの前記雌ねじ部のねじ山が、少なくとも弾性変形状態に食い込むまで深く螺合することで、前記雄ねじ部と前記カプラーとの間に緩み止めトルクが発生したものであるため、耐引張力および耐圧縮力上の両方の要件を充足でき、かつ汎用性を高めることができ、また部品点数を低減してコスト低減を図ることができる。
[第1実施形態]
この発明の第1実施形態を図1ないし図6と共に説明する。図1(A)に示すように、この雄ねじ部の不完全ねじ部を活用した継手は、異形鉄筋のねじ式鉄筋継手であり、一対の鉄筋1,1と、両鉄筋1,1の端部に設けられた雄ねじ部1cに螺合する筒状のカプラー2とを備えている。
この発明の第1実施形態を図1ないし図6と共に説明する。図1(A)に示すように、この雄ねじ部の不完全ねじ部を活用した継手は、異形鉄筋のねじ式鉄筋継手であり、一対の鉄筋1,1と、両鉄筋1,1の端部に設けられた雄ねじ部1cに螺合する筒状のカプラー2とを備えている。
<鉄筋1について>
各鉄筋1は、丸軸状の鉄筋本体1aの外周面に突条1bを有する異形鉄筋である。突条1bは、円周方向に延びる節部1baと、長手方向に延びるリブ1bbとを有する。リブ1bbは、2本が鉄筋本体1aの180°離れた位置に設けられている。各節部1baは、この例ではリブ1bbを境に交互に半周ずつ設けられている。なお、節部1baは、全周に続く形状であってもよい。
各鉄筋1は、丸軸状の鉄筋本体1aの外周面に突条1bを有する異形鉄筋である。突条1bは、円周方向に延びる節部1baと、長手方向に延びるリブ1bbとを有する。リブ1bbは、2本が鉄筋本体1aの180°離れた位置に設けられている。各節部1baは、この例ではリブ1bbを境に交互に半周ずつ設けられている。なお、節部1baは、全周に続く形状であってもよい。
各鉄筋1の雄ねじ部は、例えば、転造ねじであり、加工硬化(塑性硬化とも呼ばれる)によって、鉄筋1の他の部分よりも少なくとも表層部の硬さが硬くなっている。雄ねじ部1cは、図2(A),(B)に示すように、節部1baとリブ1bbにねじ加工の精度の向上のために、節部1baおよびリブ1bbの基端が残る程度の真円加工を行ったうえで図2(C)に示すようにねじ加工を施すため、節部1baのある箇所とない箇所でねじ山の寸法が異なっている。なお、リブ1bbのある箇所は、節部1baのある箇所と外径寸法が同じであるため、全周で考えると節部1baのある軸方向幅部分と節部1baのない軸方向幅部分とで雄ねじ部1cのねじ山の寸法は同じである。つまりリブ1bbのある箇所には、節部1baのある軸方向幅部分に形成された雄ねじ部1cのねじ山と同一寸法のねじ山が形成されている。雄ねじ部1cと鉄筋本体1aとの境界部、およびねじ先端部には、ねじ溝が次第に浅くなった、いわゆる不完全ねじ部1ca,1cbが生じている。ねじ先端部の不完全ねじ部1cbには、面取りが施されている。
図1(A)に示すように、左右の雄ねじ部1cのねじ長さは異なり、一方(図1左側)の鉄筋1では、締結ねじ長さに相当する長さ(L1)が転造加工されている。この左側のねじ長さ(L1)は、鉄筋径毎に設定されている。他方(図1右側)の鉄筋1の雄ねじ部1cは、カプラー長さに加え、鉄筋継手の規格上でA級継手の性能値を満足でき、且つ鉄筋1のコンクリート付着に影響を与えない範囲でねじ長さ(L2)が設定されている。このねじ長さ(L2)は、例えば、プレキャスト工法等における鉄筋締結作業時にカプラー2全体を逃がせる長さに設定されている。具体的に、ねじ長さ(L2)は、例えばカプラー長に「3」を乗じた長さであり、前記カプラー長は、ねじ長さ(L1)×2+(5〜10mm)に設定される。前記(5〜10mm)につき、鉄筋1が細径のとき5mm、大径のとき10mmが採用される。
<カプラー2について>
図1(A),(B)に示すように、カプラー2は、内周の全体が雌ねじ部2aとされ外周面が六角形状のねじ筒であり、鉄筋1の雄ねじ部1cに対して、鉄筋継手として要求される引張耐力が確保できるだけの締結長さが必要である。なおカプラー2の外周面は、六角形状に限定されるものではなく、例えば、円筒形状の軸方向の一部または全体に六角形状または多角形状等の非円形部が部分的に形成されたものであってもよい。図1(B)に示すように、カプラー2の中央には、円形の貫通孔である締結長さ確認孔2bが形成されている。この締結長さ確認孔2bは、一対の鉄筋1,1がカプラー2内に所定の締結最小長さまでねじ込まれていることを目視で確認し得る孔である。締結長さ確認孔2bは、円形に限定されるものではなく、また複数設けられていてもよい。
図1(A),(B)に示すように、カプラー2は、内周の全体が雌ねじ部2aとされ外周面が六角形状のねじ筒であり、鉄筋1の雄ねじ部1cに対して、鉄筋継手として要求される引張耐力が確保できるだけの締結長さが必要である。なおカプラー2の外周面は、六角形状に限定されるものではなく、例えば、円筒形状の軸方向の一部または全体に六角形状または多角形状等の非円形部が部分的に形成されたものであってもよい。図1(B)に示すように、カプラー2の中央には、円形の貫通孔である締結長さ確認孔2bが形成されている。この締結長さ確認孔2bは、一対の鉄筋1,1がカプラー2内に所定の締結最小長さまでねじ込まれていることを目視で確認し得る孔である。締結長さ確認孔2bは、円形に限定されるものではなく、また複数設けられていてもよい。
確認孔2bはなくてもよい。特に小さい外径のカプラー2では、目視可能な大きさの確認孔2bを設けると、カプラー2の強度に大きく影響する場合があるので、確認孔2bは省略される。その場合でも、両鉄筋1,1の雄ねじ部1cのねじ長さL1,L2が予め分かっているので、左側の雄ねじ部1cのカプラー2へのねじ込み量はL1となり、右側の雄ねじ部1cのねじ込み量は、雄ねじ部1cのカプラー2からの露出長さL0を測ることにより、ねじ込み量=L2−L0を知ることができる。
一方(図1(A)左側)の鉄筋1における雄ねじ部1cのねじ長さ(L1)は、製造時点で締結長さと同じ長さに加工されているうえ、この一方の鉄筋1の先端部に他方(図1(A)右側)の鉄筋1の先端部が接触するように配置するため、双方とも一つの確認孔2bから所定の締結最小長さまでねじ込まれていることを確認し得る。なお図示しないが、カプラー2の軸方向両端の内周縁部には、鉄筋1の雄ねじ部1cへの螺合を円滑にする、つまり施工上の向上を図るため、面取りが設けられてもよい。
図3(A),(D)に示すように、一方(図1(A)左側)の鉄筋1は、この鉄筋1の雄ねじ部1cの基端における不完全ねじ部1caのねじ溝に、カプラー2の雌ねじ部2aのねじ山2aaが、少なくとも弾性変形状態に食い込むまで深く螺合している。これにより、前記雄ねじ部1cとカプラー2との間に緩み止めトルクが発生している。カプラー2を鉄筋1に螺合させた状態で回転させることにより、雄ねじ部1cの基端における不完全ねじ部1caのフランク両面が、雌ねじ部2aのねじ山2aaにそれぞれ接触する。さらにカプラー2を回転させることで鉄筋1に緩み止めトルクが発生し雄ねじ部1cと雌ねじ部2a間のガタがなくなる。
図3(A)〜(D)に示すように、カプラー2の雌ねじ2aは、軸方向全体に渡って完全なねじとなっている。雄ねじ部1cは、図3(B)に示すカプラー2の中央付近における完全ねじ(ねじ山の頂部が一部欠損するものも含む噛合可能なねじ)から、図3(C)に示すように、雄ねじ部1cの基端付近にて次第に谷が浅くなり、図3(D)に示すように、雄ねじ部1cの基端において不完全ねじ部1caのフランク両面が、雌ねじ部2aのねじ山2aaにそれぞれ接触している。同図3(D)に示すように、不完全ねじ部1caで雄ねじ部1cと雌ねじ2aのセンターが完全に一致することにより、図3(B)に示す完全ねじ部での雄ねじ部1cと雌ねじ2a間の軸方向隙間δが微小となる。この軸方向隙間δを明確に算定することができる。なお、図3(B)〜(D)では、雌ねじ2aと雄ねじ部1cとの関係を判り易くするため、台形ねじとしているが、第1実施形態では三角ねじが適用されている。図1(A)に示すように、他方の鉄筋1は、この雄ねじ部1cがカプラー2に螺合した状態で両鉄筋1,1の雄ねじ部1cの先端部同士が接触するように配置され、この他方の鉄筋1に締付けトルクを与えることで締結作業は完了する。なお両鉄筋1,1の雄ねじ部1cの先端部が互いに離れていてもよい。
<締結作業の具体例>
図4(a)に示すように、一方(図4左側)の鉄筋1は、この雄ねじ部1cが締結長さ確認孔2bから目視で視認可能なねじ長さ、換言すれば確認孔2bとラップするねじ長さ、に加工されている。先ず、他方(図4右側)の鉄筋1の雄ねじ部1cにカプラー2を螺合させた状態で、両鉄筋1,1の雄ねじ部1cの先端部同士を接触させる。次にカプラー2を回転させ他方の鉄筋側から一方の鉄筋側へ移動させ、両雄ねじ部1c,1cにカプラー2が螺合した状態でこのカプラー2が止まる。
図4(a)に示すように、一方(図4左側)の鉄筋1は、この雄ねじ部1cが締結長さ確認孔2bから目視で視認可能なねじ長さ、換言すれば確認孔2bとラップするねじ長さ、に加工されている。先ず、他方(図4右側)の鉄筋1の雄ねじ部1cにカプラー2を螺合させた状態で、両鉄筋1,1の雄ねじ部1cの先端部同士を接触させる。次にカプラー2を回転させ他方の鉄筋側から一方の鉄筋側へ移動させ、両雄ねじ部1c,1cにカプラー2が螺合した状態でこのカプラー2が止まる。
図4(b)に示すように、一方(図4左側)の鉄筋1とカプラー2とに渡って軸方向に繋がる第1のマークM1を施した後、カプラー2にトルクを掛ける。図4(c)に示すように、前記カプラー2にトルクを与えることにより、一方(図4左側)の鉄筋1とカプラー2間には円周方向のずれδ1が生じる。この鉄筋1の雄ねじ部1cの基端における不完全ねじ部1ca(図3(D)参照)のねじ溝に、カプラー2の雌ねじ部2aのねじ山2aa(図3(D)参照)が、少なくとも弾性変形状態に食い込むまで深く螺合する。ここで、一方(図4左側)の鉄筋1とカプラー2とに渡って軸方向に繋がる第2のマークM2をさらに施す。
図4(d)に示すように、次に、他方(図4右側)の鉄筋1をさらに回転させ、両鉄筋の雄ねじ部1cの先端部同士が接触した段階で、他方(図4右側)の鉄筋1とカプラー2とに渡って軸方向に繋がる第3のマークM3を施す。さらに他方(図4右側)の鉄筋1にトルクを与えた後、この鉄筋1とカプラー2とに渡って軸方向に繋がる第4のマークM4をさらに施す。
この締結作業の例では一対の鉄筋1,1とカプラー2間でトルクが導入され、必然的に締結長さ確認孔2bより、両鉄筋1,1が所定の締結最小長さまでねじ込まれていることを目視で確認できる。連続する他の継手の締結作業時に過度の力が加わり、トルクが抜けた場合、第2,第4のマークM2,M4の二つ共がずれを起こしていれば、再トルクが必要であることが判明できる。
鉄筋1に緩み止めトルクを与えることにより、両側の鉄筋1,1に引張力(図1(B))に実線の矢印で示す)が生じた際、微小な隙間は直ちに接触し、スムースな力の伝達を行う。図3(D)のロックされている周方向の長さは、全ねじ周長(雄ねじ部1cの軸方向先端から基端まで螺旋に繋がる全ての雄ねじ部1cの周方向長さ)と比較して数パーセントにも達しておらずこの様な挙動を起こす。図3(D)に示すように、鉄筋1の雄ねじ部1cのねじ山における、カプラー2に接する面1caから、カプラー2の雌ねじ部2aのねじ山2aaに引張力が伝達される。したがって、図1(B)に示すように、引張力は、一方の鉄筋1→カプラー2→他方の鉄筋1に伝わる。両側の鉄筋1,1に圧縮力(同図1(B)に破線の矢印で示す)が作用したときは、鉄筋1の不完全ねじ部1caのねじ溝から、このねじ溝に少なくとも弾性変形状態に食い込むカプラー2の雌ねじ部2aのねじ山2aa(図3(D))に圧縮力が伝達されると共に、大部分は雄ねじ部1cの先端部を介して他方の鉄筋1に伝わる。なお、鉄筋継手に要求される耐圧縮力は、降伏点強度に比べて半分程度で足りる。
<鉄筋1の製造方法>
図2(A)に示すように、素材となる異形鉄筋である鉄筋1を、建設現場または工場等で、必要とされる任意の長さに切断する。図2(B)に示すように、この切断された鉄筋1の端部における、雄ねじ部1cを形成する長さ範囲の部分に、真円加工を施す。この真円加工は、鉄筋1の節部1baおよびリブ1bbを有する突条1bの基端が残る程度、または前記基端が略無くなる程度の外径D5に真円に切削を行う加工であり、節部1baは、低い突出高さの部分1ba´となる。前記外径D5は、鉄筋本体1aの外径D1よりも僅かに大きい。ねじ加工に伴う若干の径の変化があるため、外径D5は、雄ねじ部1c(図2(C))のねじ山径と異なっている。なお、前記外径D5は、鉄筋本体1aの外径D1と同じかまたは僅かに小さくてもよい。
図2(A)に示すように、素材となる異形鉄筋である鉄筋1を、建設現場または工場等で、必要とされる任意の長さに切断する。図2(B)に示すように、この切断された鉄筋1の端部における、雄ねじ部1cを形成する長さ範囲の部分に、真円加工を施す。この真円加工は、鉄筋1の節部1baおよびリブ1bbを有する突条1bの基端が残る程度、または前記基端が略無くなる程度の外径D5に真円に切削を行う加工であり、節部1baは、低い突出高さの部分1ba´となる。前記外径D5は、鉄筋本体1aの外径D1よりも僅かに大きい。ねじ加工に伴う若干の径の変化があるため、外径D5は、雄ねじ部1c(図2(C))のねじ山径と異なっている。なお、前記外径D5は、鉄筋本体1aの外径D1と同じかまたは僅かに小さくてもよい。
図2(C)に示すように、このように鉄筋1の真円加工が施された部分に、雄ねじ部1cを転造により形成する。前記真円加工が施された部分に、図5のように一対の転造用ロール13,13の間で、雄ねじ部1c(図2(C))を転造により加工し、端部に雄ねじ部1c(図2(C))を有する鉄筋とする。一対の転造用ロール13,13は、互いに離れて配置されていて、前記真円加工が施された部分が転造用ロール13,13間に位置決めされた後に、両転造用ロール13,13を矢印のように径方向に移動させて回転させながら前記真円加工が施された部分に押し付け雄ねじ部1c(図2(C))を加工する。雄ねじ部1cの加工は転造加工に限定されるものではなく、切削加工でもよい。
<定着盤等について>
図11に示すように、鉄筋継手の全体システムとして、ねじ方式の定着盤61を採用する。全体システムにおいて、短いねじ長さ(L1)の雄ねじ部と、長いねじ長さ(L2)の雄ねじ部とがカプラー2に螺合された継手パターンAと、長いねじ長さ(L2)の雄ねじ部同士がカプラー2に螺合された継手パターンBとが組み合わせられている。この定着盤61が設けられる全体システムの両最外端部には、例えば、短いねじ長さ(L1)(図1(A))の雄ねじ部1cを配置する。
図11に示すように、鉄筋継手の全体システムとして、ねじ方式の定着盤61を採用する。全体システムにおいて、短いねじ長さ(L1)の雄ねじ部と、長いねじ長さ(L2)の雄ねじ部とがカプラー2に螺合された継手パターンAと、長いねじ長さ(L2)の雄ねじ部同士がカプラー2に螺合された継手パターンBとが組み合わせられている。この定着盤61が設けられる全体システムの両最外端部には、例えば、短いねじ長さ(L1)(図1(A))の雄ねじ部1cを配置する。
図6(a)に示すように、定着盤61は、ねじ穴61hを有する定着力付与用の板状で、矩形部61aと円形部61bとが軸方向に一体成形された部品から成る。矩形部61aは例えば外周が六角形状から成り工具等により定着盤61を雄ねじ部1cに螺合可能である。円形部61bのうち、矩形部61aに繋がる一側面は、外径側に向かうに従って軸方向一端側に傾斜するテーパ形状に形成されている。
図6(b)に示すように、定着盤61Aは、ねじ穴61hを有する筒状部61Aaと、この筒状部61Aaに嵌め込まれるリング状の円環部61Abとを有するものであってもよい。筒状部61Aaは、例えば外周が六角形状から成る矩形部分62と、この矩形部分62の一側面に一体に繋がるテーパ部63とを有する。テーパ部63は、先端から基端に向かうに従って拡径するテーパ形状である。円環部61Abには、テーパ部63に嵌め込まれるテーパ形状の円筒孔64が形成されている。
一般的に、鉄筋の端部は、例えば梁となるコンクリート部分の鉄筋を柱となるコンクリート部分内に埋め込むような場合に、柱内で定着力を確保するために、U字状またはL字状に屈曲させて埋め込む場合が多い。しかし、このような鉄筋の屈曲部分が多数あると柱内の配筋が煩雑となる。そこで、鉄筋の端部に拡径した拡径頭部を形成し、U字状またはL字状の屈曲部分の代わりとして定着力を確保することが行われているが、前記従来の拡径頭部は、鉄筋の端部を高周波誘導等により熱間で塑性変形させて製造することから、製造過程に設備および手間が必要となる。このような課題に対して、図6の定着盤61または定着盤61Aをねじ結合して鉄筋1の端部に拡径した拡径頭部を形成する場合、特別な設備が不要で、手間も掛けずに簡単に拡径頭部を形成し得る。
<作用効果について>
鉄筋1の端部に雄ねじ部1cを形成する際、雄ねじ部1cを加工する工具の面取り部または食い付き部等によって、円筒部と完全ねじ部との境界部(雄ねじ部1cの基端)およびねじ先端部に、ねじ溝が次第に浅くなるいわゆる不完全ねじ部が生じる。一般的なねじ式鉄筋継手では、雄ねじ部の基端における不完全ねじ部が、ねじ筒、ロックナットの各雌ねじ部と噛み合わないように、雄ねじ部の長さを長く確保する。
鉄筋1の端部に雄ねじ部1cを形成する際、雄ねじ部1cを加工する工具の面取り部または食い付き部等によって、円筒部と完全ねじ部との境界部(雄ねじ部1cの基端)およびねじ先端部に、ねじ溝が次第に浅くなるいわゆる不完全ねじ部が生じる。一般的なねじ式鉄筋継手では、雄ねじ部の基端における不完全ねじ部が、ねじ筒、ロックナットの各雌ねじ部と噛み合わないように、雄ねじ部の長さを長く確保する。
この実施形態の雄ねじ部の不完全ねじ部を活用した継手によると、いずれか一方の鉄筋1の雄ねじ部1cの基端における不完全ねじ部1caのねじ溝に、カプラー2の雌ねじ部2aのねじ山2aaが、少なくとも弾性変形状態に食い込むまで深く螺合することで、雄ねじ部1cとカプラー2との間に緩み止めトルクが発生する。雄ねじ部1cの基端における不完全ねじ部1caのねじ溝に、カプラー2の雌ねじ部2aのねじ山2aaが、少なくとも弾性変形状態に食い込むまで深く螺合することで、この鉄筋継手に対する引張力の作用時と圧縮力の作用時とで、雄ねじ部1cと雌ねじ部2aのねじ山同士の接触する面が変わらず、雄ねじ部1cと雌ねじ部2a間の遊びの課題が解消される。鉄筋1に緩み止めトルクを与えることにより、両側の鉄筋1,1に引張力が生じた際、微小な隙間は直ちに接触し、スムースな力の伝達を行う。図3(D)のロックされている長さは全ねじ周長と比較して数パーセントにも達しておらずこの様な挙動を起こす。引張力は、一方の鉄筋1→カプラー2→他方の鉄筋2に伝わる。両側の鉄筋1,1に圧縮力が作用したときは、少なくとも鉄筋1の不完全ねじ部1caのねじ溝から、このねじ溝に少なくとも弾性変形状態に食い込むカプラー2の雌ねじ部2aのねじ山2aaに圧縮力が伝達されると共に、大部分は雄ねじ部1cの先端部を介して他方の鉄筋1に伝わる。したがって、耐引張力および耐圧縮力の両方の要件を充足できる。
このように、製造上で生じてしまうがねじ締めには一般的には使用しない不完全ねじ部1caを利用して雄ねじ部1cとカプラー2との間に緩み止めトルクを発生させる。このため、少なくともいずれか一方の鉄筋1の雄ねじ部1cに、ロックナット等を螺合する長さ分を確保する必要がない。換言すれば、前記鉄筋1の雄ねじ部1cには、カプラー2の雌ねじ部2aに螺合する長さ分があれば足りる。よって、従来のねじ式鉄筋継手よりも雄ねじ部1cの長さ、およびカプラー2の軸方向長さを短くすることができるため、雄ねじ部以外の部分の例えば節部1baの間隔等を短くする必要がなくなるうえカプラー2の材料費も低減できるため、コスト低減を図れる。雄ねじ部付きの異形鉄筋を一般の異形鉄筋として扱うことができ汎用性を高め得る。また従来のロックナット付きのねじ式鉄筋継手に対し、ロックナット等を低減することができるため、従来構造よりも部品点数を低減しコスト低減を図れる。
[他の実施形態について]
以下の説明においては、各実施の形態で先行して説明している事項に対応している部分には同一の参照符号を付し、重複する説明を省略する。構成の一部のみを説明している場合、構成の他の部分は、特に記載のない限り先行して説明している形態と同様とする。同一の構成から同一の作用効果を奏する。実施の各形態で具体的に説明している部分の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、実施の形態同士を部分的に組合せることも可能である。
以下の説明においては、各実施の形態で先行して説明している事項に対応している部分には同一の参照符号を付し、重複する説明を省略する。構成の一部のみを説明している場合、構成の他の部分は、特に記載のない限り先行して説明している形態と同様とする。同一の構成から同一の作用効果を奏する。実施の各形態で具体的に説明している部分の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、実施の形態同士を部分的に組合せることも可能である。
[左右のねじ長さを同じにした例]
図7に示す第2実施形態のように、左右の鉄筋1,1の雄ねじ部1cのねじ長さを同一にし、各雄ねじ部1cの基端における不完全ねじ部1caのねじ溝に、それぞれカプラー2の雌ねじ部2aのねじ山が少なくとも弾性変形状態に食い込むまで深く螺合してもよい。両鉄筋1,1は、雄ねじ部1cの先端部同士は接触せず所定間隔を空けてカプラー2に螺合される。この場合、各鉄筋1に対し通常のトルク値と同等程度のトルクを与え、鉄筋継手の規格上でA級継手以上とする。両鉄筋1,1は、工場出荷前または現場においてカプラー2に締結される。この構成によると、両鉄筋1,1の雄ねじ部1cの長さを短くでき、ロックナット等の部品点数をさらに低減しコスト低減を図れる。その他前述の実施形態と同様の作用効果を奏する。
図7に示す第2実施形態のように、左右の鉄筋1,1の雄ねじ部1cのねじ長さを同一にし、各雄ねじ部1cの基端における不完全ねじ部1caのねじ溝に、それぞれカプラー2の雌ねじ部2aのねじ山が少なくとも弾性変形状態に食い込むまで深く螺合してもよい。両鉄筋1,1は、雄ねじ部1cの先端部同士は接触せず所定間隔を空けてカプラー2に螺合される。この場合、各鉄筋1に対し通常のトルク値と同等程度のトルクを与え、鉄筋継手の規格上でA級継手以上とする。両鉄筋1,1は、工場出荷前または現場においてカプラー2に締結される。この構成によると、両鉄筋1,1の雄ねじ部1cの長さを短くでき、ロックナット等の部品点数をさらに低減しコスト低減を図れる。その他前述の実施形態と同様の作用効果を奏する。
[左右のねじ長さを変更した例]
図8に示す第3実施形態のように、一方(図8左側)の鉄筋1における不完全ねじ部1caのねじ溝に、カプラー2のねじ山が少なくとも弾性変形状態に食い込み、他方(図8右側)の鉄筋1における雄ねじ部1cに、ワッシャー14を介してロックナット15が螺合されたものであってもよい。但し、ワッシャー14はなくてもよい。鉄筋に緩み止めトルクを導入して性能を確保する場合、場合によっては作業が完了した他の鉄筋継手へ悪影響を及ぼすことが懸念される
図8に示す第3実施形態のように、一方(図8左側)の鉄筋1における不完全ねじ部1caのねじ溝に、カプラー2のねじ山が少なくとも弾性変形状態に食い込み、他方(図8右側)の鉄筋1における雄ねじ部1cに、ワッシャー14を介してロックナット15が螺合されたものであってもよい。但し、ワッシャー14はなくてもよい。鉄筋に緩み止めトルクを導入して性能を確保する場合、場合によっては作業が完了した他の鉄筋継手へ悪影響を及ぼすことが懸念される
そこで、この図8の構成によると、鉄筋1の片側にロックナット15を設けることで、作業が完了した他の鉄筋継手へ悪影響が及ぶことを未然に防止し得る。一対の鉄筋1,1につき、雄ねじ部1cの長さが異なるものを準備しておく。雄ねじ部1cが長い他方(図8右側)の鉄筋1のねじ長さは、カプラー2、ロックナット15、ワッシャー14(突起を含む。ワッシャー14がない場合、同ワッシャー14の厚み分短くなる。)の軸方向長さを足した長さが最小あればよいが、この例では、前記長さの1.7倍を確保している。0.7倍分は作業的にも不必要であるが、長さ調整用として考えており高速カッターまたは丸刃シャー切断により作業を行う。
雄ねじ部1cの長さが短い一方(図8左側)の鉄筋1につき、雄ねじ部1cの基端における不完全ねじ部1caのねじ溝に、カプラー2の雌ねじ部2aのねじ山が、少なくとも弾性変形状態に食い込むまで深く螺合することで、雄ねじ部1cとカプラー2との間に定められた緩み止めトルクを得る。その後、雄ねじ部1cが長い他方(図8右側)の鉄筋1に螺合したロックナット15に所定の締付けトルクを与える。このように鉄筋1,1の片側にロックナット15を設けることで、作業が完了した他の鉄筋継手へ悪影響が及ぶことを未然に防止し得る。
[打継用継手]
図9に示す第4実施形態のように、両鉄筋1,1の先端部同士を接触させトルクを与えた鉄筋継手を、コンクリート16に埋め込み、露出する片側の鉄筋1の雄ねじ部1cにロックナット15を螺合したものであってもよい。この場合、カプラー2に締結長さ確認孔を設ける必要がないため、加工コストの低減を図れる。
図9に示す第4実施形態のように、両鉄筋1,1の先端部同士を接触させトルクを与えた鉄筋継手を、コンクリート16に埋め込み、露出する片側の鉄筋1の雄ねじ部1cにロックナット15を螺合したものであってもよい。この場合、カプラー2に締結長さ確認孔を設ける必要がないため、加工コストの低減を図れる。
[長さ調整を含む継手]
図10に示す第5実施形態のように、同図右側の鉄筋1における雄ねじ部1cに、ロックナット15が螺合されたもので、この雄ねじ部1cのねじ長さLが、標準ねじ長さの2倍程度を確保して、この部分を現場等で切断して長さを調整したものであってもよい。前記標準ねじ長さLとは、カプラー長およびロックナット高さの和である。なお右側の鉄筋1における雄ねじ部1cに、ワッシャー(図示せず)を介してロックナット15が螺合されたものであってもよい。この場合のワッシャーはトルク確認用として主に機能する。
図10に示す第5実施形態のように、同図右側の鉄筋1における雄ねじ部1cに、ロックナット15が螺合されたもので、この雄ねじ部1cのねじ長さLが、標準ねじ長さの2倍程度を確保して、この部分を現場等で切断して長さを調整したものであってもよい。前記標準ねじ長さLとは、カプラー長およびロックナット高さの和である。なお右側の鉄筋1における雄ねじ部1cに、ワッシャー(図示せず)を介してロックナット15が螺合されたものであってもよい。この場合のワッシャーはトルク確認用として主に機能する。
[異形鉄筋に代えて丸鋼を用いた例]
図12に示す第6実施形態のように、図1に示す第1実施形態で使用した鉄筋(この場合、異形鉄筋)に代えて、丸鋼を用いてもよい。図12の部分拡大図である図13に示すように、一方(図12の左側部分)の鉄筋1は、図3(A)〜(D)で示したものと同様の状態、つまり、この鉄筋1の雄ねじ部1cの基端における不完全ねじ部1caのねじ溝に、カプラー2の雌ねじ部2aのねじ山2aaが、少なくとも弾性変形状態に食い込むまで深く螺合している。こうすることによって、前記雄ねじ部1cとカプラー2との間に緩み止めトルクが発生している。なお、一対の鉄筋のうちの一方は異形鉄筋であってもよい。
図12に示す第6実施形態のように、図1に示す第1実施形態で使用した鉄筋(この場合、異形鉄筋)に代えて、丸鋼を用いてもよい。図12の部分拡大図である図13に示すように、一方(図12の左側部分)の鉄筋1は、図3(A)〜(D)で示したものと同様の状態、つまり、この鉄筋1の雄ねじ部1cの基端における不完全ねじ部1caのねじ溝に、カプラー2の雌ねじ部2aのねじ山2aaが、少なくとも弾性変形状態に食い込むまで深く螺合している。こうすることによって、前記雄ねじ部1cとカプラー2との間に緩み止めトルクが発生している。なお、一対の鉄筋のうちの一方は異形鉄筋であってもよい。
図14に示す第7実施形態では、丸鋼の2本の鉄筋1,1の雄ねじ部1c、1cを互いに逆ねじとしている。これら鉄筋1,1をカプラー2で連結したのち、カプラー2を回転させると、2つの雄ねじ部1c、1cが互いに逆ねじなので、カプラー2内の鉄筋1,1間の隙間αが変化する。そこで、この隙間αを調整しながらカプラー2を左側の丸鋼1の不完全ねじ部1caの近傍まで進出させ、適切な隙間αとなったことを確認したのち、さらに大きいトルクで不完全ねじ部1caに食い込ませる。この逆ねじを利用する場合、丸鋼に代えて異形鉄筋を用いてもよい。
このように、異形鉄筋に代えて丸鋼を用いた場合、リブがなくなるので断面欠損も発生しない。また、丸鋼はコイル状で生産・供給されており、安価で取扱いやすく。ロスを生じるおそれが低いうえ、鋼種も豊富であることから、メリットが大きい。
図16は、この発明の雄ねじ部の不完全ねじ部を活用した継手と組合わせて使用される鉄筋継手の参考提案例を示す。一本に接続する多数の鉄筋間のうちの何か所かの鉄筋継手にいずれかの実施形態に係る鉄筋継手を用い、残りの何か所かに図16に示す参考提案例の鉄筋継手を用いてもよい。図16では、両鉄筋1,1の先端部同士を接触させると共に、一方の鉄筋1における雄ねじ部1cの不完全ねじ部回避ナット15Aが螺合されている。この場合、不完全ねじ部回避ナット15Aに当たることでカプラー2が不完全ねじ部に螺合することが回避される。これにより、カプラー2は、全体が完全ねじ部に螺合することになり、剛性が向上する。なお、不完全ねじ部回避ナット15Aは鋼鉄製に限らず例えば樹脂製であってもよい。
また、図7〜図10に示す第2〜第5実施形態は、いずれの場合においても異形鉄筋に代えて丸鋼を同様に使用可能である。
以上、実施形態に基づいてこの発明を実施するための形態を説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。この発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1…鉄筋(異形鉄筋または丸鋼)
1ba…節部
1bb…突条
1c…雄ねじ部
1ca…不完全ねじ部
2…カプラー
2a…雌ねじ部
2aa…ねじ山
2b…締結長さ確認孔
15…ロックナット
1ba…節部
1bb…突条
1c…雄ねじ部
1ca…不完全ねじ部
2…カプラー
2a…雌ねじ部
2aa…ねじ山
2b…締結長さ確認孔
15…ロックナット
Claims (6)
- 一対の鉄筋が両鉄筋の端部に設けられた雄ねじ部に螺合する筒状のカプラーで接続された継手であって、
前記一対の鉄筋におけるいずれか一方または両方の鉄筋は、前記鉄筋の前記雄ねじ部の基端における不完全ねじ部のねじ溝に、前記カプラーの前記雌ねじ部のねじ山が、少なくとも弾性変形状態に食い込むまで深く螺合することで、前記雄ねじ部と前記カプラーとの間に緩み止めトルクが発生した、雄ねじ部の不完全ねじ部を活用した継手。 - 請求項1に記載の雄ねじ部の不完全ねじ部を活用した継手において、前記カプラー内における互いに対向する雄ねじ部の先端部同士が互いに接触するように両鉄筋が設けられた雄ねじ部の不完全ねじ部を活用した継手。
- 請求項1または請求項2に記載の雄ねじ部の不完全ねじ部を活用した継手において、前記一対の鉄筋におけるいずれか一方の鉄筋につき、前記不完全ねじ部のねじ溝に、前記カプラーの前記ねじ山が少なくとも弾性変形状態に食い込み、いずれか他方の鉄筋の雄ねじ部にロックナットが螺合された雄ねじ部の不完全ねじ部を活用した継手。
- 請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の雄ねじ部の不完全ねじ部を活用した継手において、前記カプラーに、前記一対の鉄筋が前記カプラー内に所定の締結最小長さまでねじ込まれていることを確認する締結長さ確認孔が形成された雄ねじ部の不完全ねじ部を活用した継手。
- 請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の雄ねじ部の不完全ねじ部を活用した継手において、前記一対の鉄筋のうちの一方または両方の鉄筋は、丸軸状の鉄筋本体の外周に、長手方向に間隔を開けて複数の節部を有し、かつ長手方向に延びる突条を有する異形鉄筋である継手。
- 請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の雄ねじ部の不完全ねじ部を活用した継手において、前記一対の鉄筋のうちの一方または両方の鉄筋は、丸鋼である継手。
Priority Applications (3)
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JP2018184967A JP2020056154A (ja) | 2018-09-28 | 2018-09-28 | 雄ねじ部の不完全ねじ部を活用した継手 |
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JP2018184967A JP2020056154A (ja) | 2018-09-28 | 2018-09-28 | 雄ねじ部の不完全ねじ部を活用した継手 |
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JP2018184967A Pending JP2020056154A (ja) | 2018-04-06 | 2018-09-28 | 雄ねじ部の不完全ねじ部を活用した継手 |
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JP (1) | JP2020056154A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
KR102641976B1 (ko) * | 2023-06-22 | 2024-02-28 | 주식회사 동인산업 | 철근 연결용 커넥터 및 그 제조방법 |
-
2018
- 2018-09-28 JP JP2018184967A patent/JP2020056154A/ja active Pending
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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KR102641976B1 (ko) * | 2023-06-22 | 2024-02-28 | 주식회사 동인산업 | 철근 연결용 커넥터 및 그 제조방법 |
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