以下に、本願が開示する実施形態にかかる圧縮機について、図面を参照して説明する。なお、以下の記載により本開示の技術が限定されるものではない。また、以下の記載においては、同一の構成要素に同一の符号を付与し、重複する説明を省略する。
実施例の冷凍サイクル装置としては、空気調和装置を一例として、1台の室外機に1台の室内機が接続され、室内機が冷房運転または暖房運転を行うことが可能に構成されたものを説明する。図1は、実施例の冷凍サイクル装置全体を示す模式図である。
[冷媒]
まず、実施例の冷凍サイクル装置1で使用される冷媒について説明する。空気調和装置1は、「炭素原子間の結合として、単結合以外の炭素間結合を持つ冷媒」、「炭素の10倍を超える原子量のハロゲン族元素と炭素との単結合を持つ冷媒」、「エーテル結合を持つ冷媒」のうち、少なくとも一つを含む低GWP冷媒を20重量%以上含む混合冷媒を作動流体として用いる。炭素原子間に単結合以外の炭素間結合を持つ冷媒は、例えば、炭素原子間の二重結合を有するHFO冷媒や、炭素原子間の三重結合を有するトリフルオロプロピンがある。また、炭素の10倍を超える原子量のハロゲン族元素と炭素との単結合を持つ冷媒としては、ヨウ化トリフルオロメタンがあり、エーテル結合(HFE冷媒とも言う)を持つ冷媒としてはHFE−143m等が挙げられる。これらの冷媒は、冷凍サイクル装置の中での安定性が低い。また、これらの冷媒は、大気中での安定性も低く、GWPが比較的低い傾向がある。その代わり、当該冷媒は、圧力が比較的低い。圧力の低い冷媒は、空気調和装置の作動流体として用いると、冷媒性能の指標の一つである体積能力(単位はkJ/m3)が低くなる。そのため、空気調和装置の作動流体として用いる場合は、他の冷媒性能の高い冷媒(例えば、R32)と混合して用いることが考えられている。本実施例では、炭素原子間に単結合以外の炭素間結合を持つ冷媒の「GWPが低い」という、環境負荷が小さいという特性を十分に発揮するため、炭素原子間の結合として単結合以外の炭素間結合を持つ冷媒を少なくとも20重量%以上含む混合冷媒を作動流体として用いる。
炭素原子間の結合として、単結合を持つ冷媒のうち、空気調和装置で使用された実績があり、不燃性、低毒性、かつ、オゾン層破壊係数(ODP)=0の冷媒でGWPが一番低い単一冷媒はR134a(GWP:1430)である。本実施例の「低GWP冷媒」はR134aよりもGWPが低いものとする。
ハロゲン族元素と炭素との単結合を持つ冷媒は、塩素(原子量:35.5)と炭素との結合を有するR12を代表としたクロロフルオロカーボン、臭素(原子量:79.9)と炭素との結合を持つハロン1301、ヨウ素(原子量:126.9)と炭素との結合を持つトリフルオロヨードメタン(CF3I)がある。
塩素を含むR12は、GWPが10900である。臭素を含むハロン1301は、GWPが7140である。ヨウ素を含むヨウ化トリフルオロメタンは、GWPが1以下である。このことからわかるように、ハロゲン族元素と炭素との単結合を持つ冷媒は、ハロゲン族元素の原子量が少ない程、GWPが低い。なお、上記した各冷媒のGWPは、「フロン類の使用の合理化及び管理の適正化に関する法律施行規則第一条第三項及びフロン類算定漏えい量等の報告等に関する命令第二条第三号の規定に基づき、国際標準化機構の規格八一七等に基づき、環境大臣及び経済産業大臣が定める種類並びにフロン類の種類ごとに地球の温暖化をもたらす程度の二酸化炭素に係る当該程度に対する比を示す数値として国際的に認められた知見に基づき環境大臣及び経済産業大臣が定める係数(フロン類GWP告示)(平成28年経済産業省・環境省告示第2号)」において定められたものである。トリフルオロヨードメタンのGWPは、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、略称:NEDO(New Energy and Industrial Technology Development Organization)[平成30年8月13日検索]のインターネットサイト<URL:http://www.nedo.go.jp/hyoukabu/articles/201207f_tech/index.html>において定められたものである。
ハロゲン族元素の原子量と、当該ハロゲン族元素を含む代表的な冷媒のGWPの関係は、以下の式で示すことができる。
(原子量)=−4.0×10−8×(GWP)2−3.0×10−4×(GWP)+10.58
上記式から、GWPをR134a(GWP:1430)よりも低くするためには、炭素(原子量:12)の10倍を超える原子量のハロゲン族元素と炭素との単結合を持つ冷媒であることが必要だとわかる。
[冷凍サイクル装置の構成]
図1に示すように、実施例の冷凍サイクル装置1は、室外機2と、室外機2に液管8及びガス管9を介して接続された室内機5とを備える。液管8は、一端が室外機2の閉鎖弁25に接続され、他端が分岐して室内機5の各液管接続部53にそれぞれ接続される。ガス管9は、一端が室外機2の閉鎖弁26に接続され、他端が分岐して室内機5の各ガス管接続部54にそれぞれ接続される。
まずは、室外機2について説明する。室外機2は、圧縮機21と、四方弁22と、室外熱交換器23と、室外膨張弁24と、液管8の一端が接続された閉鎖弁25と、ガス管9の一端が接続された閉鎖弁26と、冷媒貯留器であるアキュムレータ28と、室外ファン27と、を備える。室外ファン27を除くこれら各部は、後述する各冷媒配管を介して相互に接続されており、冷媒回路100の一部をなす室外機冷媒回路20を構成する。
[圧縮機の構成]
図2は、圧縮機の縦断面図である。圧縮機21は、インバーターにより回転数が制御されるモータ(図示せず)によって駆動されることで、運転容量を可変できる能力可変型のロータリ圧縮機である。図2に示すように、圧縮機21は、密閉された縦置き円筒状の圧縮機筐体21a内に配置されたモータ部11と圧縮部12とを有する。圧縮部12は、モータ部11の下方に配置される。また、モータ部11は、シャフト15を介して圧縮部12を駆動する。さらに、圧縮機21は、圧縮機筐体21aの側部に固定された円筒状のアキュムレータ28を備える。
アキュムレータ28は、上吸入管105及びアキュムレータ上湾曲管31Tを介して上シリンダ121Tの上吸入室131T(図2参照)と接続し、下吸入管104及びアキュムレータ下湾曲管31Sを介して下シリンダ121Sの下吸入室131S(図2参照)と接続される。
圧縮部12は、圧縮機筐体10内のうちの下部に配置される。圧縮部12は、上端板カバー170Tと下端板カバー170Sと上端板160Tと下端板160Sと上シリンダ121Tと下シリンダ121Sと中間仕切板140と上ピストン125Tと下ピストン125Sと回転軸15とを備える。上端板カバー170Tは、上端板カバー吐出孔172Tが形成される。圧縮部12は、冷媒通路136がさらに形成されている。冷媒通路136は、上端板160Tと下端板160Sと上シリンダ121Tと下シリンダ121Sと中間仕切板140とをそれぞれ貫通する複数の冷媒通路孔から形成される。
モータ11は、外側に配置されたステータ111と、内側に配置されたロータ112とを備える。ステータ111は、圧縮機筐体10の内周面に焼嵌めにより固定される。シャフト15は、ロータ112に焼嵌めにより固定される。
シャフト15は、シャフト15に対して垂直の一方向に突出する円盤状の偏心部を2つ有する。シャフト15の下部に配置された副軸受部161S側の偏心部が下偏心部152Sであり、シャフト15の上部に配置された主軸受部161T側の偏心部が上偏心部152Tである。シャフト15は、下偏心部152Sの下方の副軸部151が下端板160Sに設けられた副軸受部161Sに回転自在に嵌合して支持される。さらに、シャフト15は、上偏心部152Tの上方の主軸部153が上端板160Tに設けられた主軸受部161Tに回転自在に嵌合して支持される。シャフト15には、上偏心部152T及び下偏心部152Sが、互いに180度の位相差をつけて設けられている。すなわち、上偏心部152Tと下偏心部152Sとは、シャフト15に対して互いに反対方向に突出する円盤である。そして、上偏心部152Tに上ピストン125Tが支持され、下偏心部152Sに下ピストン125Sが支持される。これにより、シャフト15は、固定された圧縮部12の中で回転できるように支持されるとともに、回転によって上ピストン125Tを上シリンダ121Tの内周面に沿って公転運動させ、下ピストン125Sを下シリンダ121Sの内周面に沿って公転運動させる。
圧縮機筐体21a内の下部には、圧縮部12内で摺動するシリンダ及びピストン等の摺動部分の潤滑性を確保すると共に、圧縮部12内をシール(封止)するための潤滑油としての冷凍機油10が、圧縮部12全体をほぼ浸漬する量だけ封入されている。圧縮機筐体21aの下部には、ロータリ圧縮機1全体を支持する複数の弾性支持部材(図示せず)を係止する取付脚310が固定される。
[圧縮部]
図3は、ロータリ圧縮機の圧縮部を示す上方分解斜視図である。図3に示すように、圧縮部12は、上からドーム状の膨出部を有する上端板カバー170T、上端板160T、上シリンダ121T、中間仕切板140、下シリンダ121S、下端板160S及び平板状の下端板カバー170Sを積層して形成される。圧縮部12は、上下から略同心円上に配置された複数の通しボルト174,175及び補助ボルト176によって固定される。
環状の上シリンダ121Tには、上吸入管105と嵌合する上吸入孔135Tが設けられる。環状の下シリンダ121Sには、下吸入管104と嵌合する下吸入孔135Sが設けられる。また、上シリンダ121Tの上シリンダ室130Tには、上ピストン125Tが配置される。下シリンダ121Sの下シリンダ室130Sには、下ピストン125Sが配置される。
上シリンダ121Tには、上シリンダ室130Tから放射状に外方へ延びる上ベーン溝128Tが設けられ、上ベーン溝128Tには上ベーン127Tが配置される。下シリンダ121Sには、下シリンダ室130Sから放射状に外方へ延びる下ベーン溝128Sが設けられ、下ベーン溝128Sには下ベーン127Sが配置される。
上シリンダ121Tには、外側面から上ベーン溝128Tと重なる位置に上シリンダ室130Tに貫通しない深さで上スプリング穴124Tが設けられ、上スプリング穴124Tには上スプリング126Tが配置される。下シリンダ121Sには、外側面から下ベーン溝128Sと重なる位置に下シリンダ室130Sに貫通しない深さで下スプリング穴124Sが設けられ、下スプリング穴124Sには下スプリング126Sが配置される。
上シリンダ室130Tは、上側を上端板160Tで、下側を中間仕切板140でそれぞれ閉塞される。下シリンダ室130Sは、上側を中間仕切板140で、下側を下端板160Sでそれぞれ閉塞される。
上シリンダ室130Tは、上ベーン127Tが上スプリング126Tに押圧されて上ピストン125Tの外周面に当接することによって、上吸入孔135Tが連結された上吸入室131Tと、上端板160Tに設けられた上吐出孔190Tが連結された上圧縮室133Tとに区画される。下シリンダ室130Sは、下ベーン127Sが下スプリング126Sに押圧されて下ピストン125Sの外周面に当接することによって、下吸入孔135Sが連結された下吸入室131Sと、下端板160Sに設けられた下吐出孔190Sが連結された下圧縮室133Sとに区画される。
上端板160Tには、上端板160Tを貫通して上シリンダ121Tの上圧縮室133Tと連通する上吐出孔190Tが設けられ、上吐出孔190Tの出口側には、上吐出孔190Tを囲む環状の上弁座(図示せず)が形成される。上端板160Tには、上吐出孔190Tの位置から上端板160Tの外周に向かって溝状に延びる上吐出弁収容凹部164Tが形成される。
上吐出弁収容凹部164Tには、リード弁型の上吐出弁200T及び上吐出弁押さえ201T全体が収容される。上吐出弁200Tは、後端部が上吐出弁収容凹部164T内に上リベット202Tにより固定され、後部が固定された状態で前部が上下することによって上吐出孔190Tを開閉する。上吐出弁押さえ201Tは、後端部が上吐出弁200Tに重ねられて上吐出弁収容凹部164T内に上リベット202Tにより固定され、前部が上吐出弁200Tが開く方向へ湾曲して(反って)いて上吐出弁200Tの開度を規制する。
下端板160Sには、下端板160Sを貫通して下シリンダ121Sの下圧縮室133Sと連通する下吐出孔190Sが設けられる。そして、下端板160Sの下吐出孔190Sの出口側には、下吐出孔190Sを囲む環状の下弁座が形成される。下端板160Sには、下吐出孔190Sの位置から下端板160Sの外周に向かって溝状に延びる下吐出弁収容凹部が形成される。
下吐出弁収容凹部164Sには、リード弁型の下吐出弁200S及び下吐出弁押さえ201Sの全部が収容される。下吐出弁200Sは、後端部が下吐出弁収容凹部164S内に下リベット202Sにより固定され、後部が固定された状態で前部が上下することによって前部が下吐出孔190Sを開閉する。下吐出弁押さえ201Sは、後端部が下吐出弁200Sに重ねられて下吐出弁収容凹部164S内に下リベット202Sにより固定され、前部が下吐出弁200Sが開く方向へ湾曲して(反って)いて下吐出弁200Sの開度を規制する。
互いに密着するように固定された上端板160Tとドーム状の膨出部を有する上端板カバー170Tとの間には、上端板カバー室180Tが形成される。互いに密着するように固定された下端板160Sと平板状の下端板カバー170Sとの間には、下端板カバー室180Sが形成される。下端板160S、下シリンダ121S、中間仕切板140、上端板160T及び上シリンダ121Tを貫通し下端板カバー室180Sと上端板カバー室180Tとを連通する冷媒通路孔136が設けられる。
[圧縮部の特徴的な構成]
次に、圧縮部12の特徴的な構成について説明する。冷凍サイクル装置1で用いられる混合冷媒は、上述したような低GWP冷媒を20重要%以上含む混合冷媒であり、高温環境下での安定性が低く、高温環境下で分解されるおそれがある。
そこで、本実施例における圧縮部12は以下のような構成を有する。圧縮部12は、各々の部品の面同士が互いにこすれ合い摩擦が発生する摺動部が存在する。例えば、摺動部は、上ピストン125Tと上ベーン127Tとが接触する部分や下ピストン125Sと下ベーン127Sとが接触する部分である。また、他の摺動部の例としては、上ピストン125Tの外周面と上シリンダ121Tの内周面とが接触する部分や、下ピストン125Sの外周面と下シリンダ121Sの内周面とが接触する部分である。
本実施例に係る圧縮部12は、圧縮部12が有する摺動部の摺動面のうち、比較的温度が高くなる部分において、接触する面の少なくとも一方に非金属の表面処理が施され、動摩擦係数が0.2以下となるように形成又は加工される。ここで、動摩擦係数測定は、以下の条件でピオンディスク試験機(ASTM G99−05準拠)を用いて測定した。
図4は、ピンオンディスク試験機の斜視図である。図4に示すように、ピンオンディスク試験機は、大気中かつ無潤滑状態でディスク形状の試料301の表面に相手材であるピン302を当接する。そして、ピン302に対して試料301へ向かう方向への加重Pを加えた状態で試料301を方向Rに回転摺動させて、試料301の動摩擦係数を測定する。
本実施例においては、相手材にはSUS440C(ビッカース硬度=750kg/mm2)を用いた。また、加重は2Nとした。摺動速度は104mm/secとした。また、大気中の状態として気圧が760Torrを用いた。
また、非金属の表面処理の例としては、以下のようなものが利用可能である。例えば、非金属コーディングとしては、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)、CrN(一窒化クロム)、SiN(窒化ケイ素)、CrCN(炭窒化クロム)、SiCN(炭窒化ケイ素)などがある。表面処理方式の例としては、N拡散、C拡散、NS拡散、リン酸マンガンなどがある。
例えば、図5は、表面処理の違いによる動摩擦係数の比較を表す図である。図5の縦軸は動摩擦係数を表す。また、図5の横軸は、各試料における表面処理の種類を表す。図5では、表面処理毎に、紙面に向かって左の棒グラフで大気中での動摩擦係数を表し、紙面に向かって右の棒グラフで真空中での動摩擦係数を表した。ただし、表面処理を施さない場合の真空中での動摩擦係数は測定しておらず、図5ではその場合のデータを表示していない。
この場合、試料をSKD(ダイス鋼)として、以下の条件でピンオンディスク試験により動摩擦係数を計測した。相手材は、ビッカース硬度が750kg/mm2であるSUS440Cを用いた。また、加重は2Nであり、摺動速度は104mm/secであり、ピン形状は直径が6mmである。また、気圧が780Torrの場合を大気中とし、5×10−5Torrの場合を真空中とした。
図5に示すように、大気中では、表面処理を施さない場合には、動摩擦係数が約0.6となり、TiN(窒化チタン)による表面処理を施した場合、動摩擦係数は約0.8となる。これに対して、DLCによる表面処理を施した場合、図5に示すように、大気中では0.2以下となる。
表面処理を施さない場合及びTiNによる表面処理を施した場合には、大気中の条件でピンオンディスク試験を行った際に焼き付きが発生した。これに対して、DLCによる表面処理を施した場合、大気中及び真空中のいずれの条件でピンオンディスク試験を行った際においても焼き付きは発生しなかったため、動摩擦係数は0.2以下と低い値になった。このように、DLCによる表面処理を施すことで、摺動面の動摩擦係数を0.2以下にすることが可能である。
ここで、摺動面のうちの比較的温度が高くなる部分とは、例えば、上ベーン127T及び下ベーン127Sの先端部分や側面である。他にも、摺動面のうちの比較的温度が高くなる部分には、主軸部153と主軸受部161Tとが摺動する各々の面や、副軸部151と副軸受部161Sとが摺動うる各々の面などがある。
図1に戻って説明を続ける。圧縮機21の冷媒吐出側は、圧縮機21から吐出された冷媒中から冷凍機油10を分離する油分離器37と吐出管41aを介して接続されている。また、油分離器37は、後述する四方弁22のポートaと冷媒配管41bを介して接続されており、冷凍機油10から分離された冷媒が四方弁22へ送られる。さらに、油分離器37は、アキュムレータ28の冷媒流入側と冷媒配管41cを介して接続されており、冷媒から分離された冷凍機油10がアキュムレータ28へ送られる。冷媒配管41cには、油分離器37からの冷凍機油10を減圧するためのキャピラリーチューブ40が設けられている。なお、冷媒配管41cには、キャピラリーチューブ40の代わりに減圧弁(図示せず)が設けられてもよい。上述のように油分離器37は、冷媒回路100において相対的に高圧の冷媒が流れる高圧回路部100Aに接続されている。また、圧縮機21の冷媒吸入側は、アキュムレータ28の冷媒流出側と吸入管42を介して接続されている。このように圧縮機21は、冷媒が充填された冷媒回路100に接続されている。
四方弁22は、冷媒の流れる方向を切り換えるための切換弁であり、4つのポートa、b、c、dを有している。ポートaは、上述したように圧縮機21の冷媒吐出側に吐出管41aで接続されている。ポートbは、室外熱交換器23の一方の冷媒出入口に冷媒配管43で接続されている。ポートcは、アキュムレータ28の冷媒流入側、すなわち冷媒配管41cの下流側に冷媒配管46を介して接続されている。そして、ポートdは、閉鎖弁26に室外機ガス管45で接続されている。
冷媒配管46には、冷媒中から水分または酸素の少なくとも一方を除去するための除去部38が設けられている。また、冷媒配管46には、除去部38を迂回して冷媒を流すバイパス配管47が、除去部38の上流側と下流側とを連結して設けられている。除去部38は、冷媒回路100において相対的に低圧の冷媒が流れる低圧回路部100Bに接続されており、アキュムレータ28の冷媒吸入側に配置されている。バイパス配管47と冷媒配管46との接続部分には、流路切換部材としての切換弁48が設けられている。切換弁48によって、四方弁22のポートcからの冷媒が、第2除去部38へ向かう流れと、除去部38を迂回しバイパス配管47へ向かう流れとの二方へ切り換えられる。切換弁48は、後述する制御部としての室外機制御回路200によって切換動作が制御される。
室外熱交換器23は、室外機2の内部に取り込まれた外気を、冷媒と後述する室外ファン27による送風によって熱交換させる。室外熱交換器23の一方の冷媒出入口は、上述のように四方弁22のポートbに冷媒配管43で接続されており、他方の冷媒出入口が室外機液管44を介して閉鎖弁25に接続されている。
室外膨張弁24は、室外機液管44に設けられている。室外膨張弁24は、電子膨張弁であり、その開度が調整されることにより、室外熱交換器23に流入する冷媒量、または、室外熱交換器23から流出する冷媒量を調整する。室外膨張弁24の開度は、冷凍サイクル装置1が冷房運転を行っている場合に全開とされる。また、冷凍サイクル装置1が暖房運転を行っている場合は、後述する吐出温度センサ33が検出した圧縮機21の吐出温度に応じて、室外膨張弁24の開度を制御することにより、冷媒の吐出温度が、圧縮機21の使用上の上限値を超えないように調整される。
室外ファン27は、樹脂材で形成されており、室外熱交換器23の近傍に配置されている。室外ファン27は、ファンモータ(図示せず)によって回転されることで、吸込口(図示せず)から室外機2の内部へ外気を取り込み、室外熱交換器23において冷媒と熱交換した外気を、吹出口(図示せず)から室外機2の外部へ放出する。
上述のように、アキュムレータ28の冷媒流入側は四方弁22のポートcに冷媒配管46を介して接続されるとともに、アキュムレータ28の冷媒流出側が圧縮機21の冷媒吸入側に吸入管42を介して接続されている。このように、アキュムレータ28は、冷媒回路100と圧縮機21とに接続されている。アキュムレータ28は、冷媒配管46からアキュムレータ28の内部に流入した冷媒をガス冷媒と液冷媒とに分離してガス冷媒を圧縮機21に吸入させる。また、アキュムレータ28は、圧縮機21から冷媒回路100を経て流入した冷凍機油10を、流出管30の油戻し穴30aを通して液冷媒と共に吸引し、ガス冷媒と共に液冷媒及び冷凍機油10を圧縮機21へ戻す。
また、室外機2は、上述した構成に加えて、各種のセンサを有している。図1に示すように、吐出管41には、圧縮機21から吐出される冷媒の圧力である吐出圧力を検出する吐出圧力センサ31と、圧縮機21から吐出される冷媒の温度を検出する吐出温度センサ33が設けられている。冷媒配管46におけるアキュムレータ28の冷媒流入口の近傍には、圧縮機21に吸入される冷媒の圧力を検出する吸入圧力センサ32と、圧縮機21に吸入される冷媒の温度を検出する吸入温度センサ34とが設けられている。
室外機液管44における室外熱交換器23と室外膨張弁24との間には、室外熱交換器23に流入する冷媒の温度、または室外熱交換器23から流出する冷媒の温度を検出するための熱交温度センサ35が設けられている。そして、室外機2の吸込口(図示せず)の近傍には、室外機2の内部に流入する外気の温度、すなわち外気温度を検出する外気温度センサ36が設けられている。
また、室外機2は、室外機制御回路200を備えている。室外機制御回路200は、室外機2の電装品箱(図示せず)に格納されている制御基板に搭載されている。室外機制御回路200は、室外機2の各種センサが検出した検出結果及び制御信号に基づいて、圧縮機21及び室外ファン27の駆動制御を行う。また、室外機制御回路200は、室外機2の各種センサが検出した検出結果及び制御信号に基づいて、四方弁22の切り換え制御を行うと共に、室外膨張弁24の開度を調整する。
次に、室内機5について説明する。室内機5は、室内熱交換器51、室内ファン55及び室内機制御部500を有する。室内ファン55は、室内熱交換器51の近傍に配置されており、ファンモータ(図示せず)によって回転されることで、室内機5の内部へ室内空気を取り込み、室内熱交換器51によって冷媒と熱交換した室内空気を室内へ放出する。室内熱交換器51は、冷媒配管44を介して四方弁22に、冷媒配管45を介して室外機2の絞り装置24とそれぞれ接続されている。室内熱交換器51は、冷凍サイクル装置1が冷房モードに切り替えられたときに蒸発器として機能し、冷凍サイクル装置1が暖房モードに切り替えられたときに凝縮器として機能する。すなわち、室内熱交換器51は、冷房モードの場合に、絞り装置24から供給された低温低圧となった二相冷媒と、室内機5の内部に取り込まれた室内空気とを熱交換させ、その熱交換された室内空気を室内へ放出し、その熱交換された冷媒を四方弁22に供給する。室内熱交換器51は、暖房モードの場合に、四方弁22から供給された冷媒と、室内機5の内部に取り込まれた室内空気とを熱交換させ、その熱交換された室内空気を室内へ放出し、その熱交換された冷媒を絞り装置24に供給する。
[冷凍サイクル装置の動作]
次に、本実施形態における冷凍サイクル装置1の空調運転時の冷媒回路100における冷媒の流れや各部の動作について、図1を用いて説明する。以下、室内機5が暖房運転を行う場合について説明し、冷房/除霜運転を行う場合については詳細な説明を省略する。また、図1における矢印は、暖房運転時の冷媒の流れを示している。
図1に示すように、室内機5が暖房運転を行う場合、室外機制御回路200は、四方弁22を図1中に実線で示す状態、すなわち、四方弁22のポートaとポートdを連通させ、ポートbとポートcを連通させるように切り換える。これにより、冷媒回路100が、室外熱交換器23が蒸発器として機能するとともに室内熱交換器51が凝縮器として機能する暖房サイクルとなる。
圧縮機21から吐出された高圧の冷媒は、吐出管41を流れて四方弁22に流入し、四方弁22から室外機ガス管45、閉鎖弁26、ガス管9、ガス管接続部54の順に流れて室内機5に流入する。室内機5に流入した冷媒は、室内機ガス管を流れて室内熱交換器51に流入し、室内ファン55の回転によって室内機5の内部に取り込まれた室内空気と熱交換を行って凝縮する。このように、室内熱交換器51が凝縮器として機能し、室内熱交換器51で冷媒と熱交換を行って加熱された室内空気が吹出口(図示せず)から室内に吹き出されることによって、室内機5が設置された室内の暖房が行われる。室内熱交換器51から流出した冷媒は、室内機液管を流れて液管接続部53を介して液管8に流入する。
液管8を流れる冷媒は、閉鎖弁25を介して室外機2に流入する。室外機2に流入した冷媒は、室外機液管44を流れ、圧縮機21の吐出温度に応じて開度が調整された室外膨張弁24を通過するときに減圧される。室外機液管44から室外熱交換器23に流入した冷媒は、室外ファン27の回転によって室外機2の内部に取り込まれた外気と熱交換を行って蒸発する。室外熱交換器23から流出した冷媒は、冷媒配管43、四方弁22、冷媒配管46、アキュムレータ28、吸入管42の順に流れ、圧縮機21に吸入されて再び圧縮される。
なお、室内機5が冷房/除霜運転を行う場合、CPU210は、四方弁22を図1中に破線で示す状態、すなわち、四方弁22のポートaとポートbとを連通させ、ポートcとポートdとを連通させるように切り換える。これにより、冷媒回路100は、室外熱交換器23が凝縮器として機能すると共に室内熱交換器51が蒸発器として機能する冷房サイクルとなる。
以上の説明では、ロータリ圧縮機1を例に説明したが、他の方式の圧縮機であっても、同様に、圧縮機の圧縮部における摺動部の摺動面のうち、比較的温度が高くなる部分が、大気中下かつ無潤滑状態での摺動係数が0.2以下となるように形成又は加工される。例えば、スクロール圧縮機であれば、摺動面のうちの比較的温度が高くなる部分は、例えば、オルダムリングが形成する摺動面、スラストプレートが形成する摺動面、軸と軸受とが形成する摺動面などであり、それらの箇所の摺動係数が0.2以下となるように形成又は加工される。また、レシプロ圧縮機であれば、摺動面のうちの比較的温度が高くなる部分とは、例えば、シリンダ内面とピストンリグとが形成する摺動面や、クランクシャフトとクランクピンとが形成する摺動面などであり、それらの箇所の摺動係数が0.2以下となるように形成又は加工される。
[摺動部係数と温度の関係]
上述したように、通常の動作範囲における摺動部の温度上昇の最も厳しい条件下で、圧縮機を動作させた場合、動摩擦係数が0.25〜0.8で軽度から重度の異常摩耗が発生し、圧縮機で焼き付きが発生する。すなわち、最も厳しい条件下では、動摩擦係数が0.25〜0.8の場合、圧縮機としての信頼性及び性能を担保することは困難であり、冷媒が分解する高温状態となる場合がある。そこで、異常摩耗の発生しない条件をピンオンディスク試験で摩擦係数を測定すると、動摩擦係数が0.2以下の場合であれば摺動部が高温状態とならない。そのため、熱安定性が低い冷媒であっても分解しないことが分かる。
図6を参照して、摺動部の材料と摺動部の温度との関係について説明する。図6は、摺動部の材料と摺動部の温度との関係を表す図である。ここでは、試験条件として、試験装置にFALEX Block−on−Ringを用いた。これは、円筒状のリング材の側面にブロック母材を押し付けて行う試験であり、ブロック母材の材料を変えて摺動部の温度の比較を行う。また、冷媒及び試験油としてR32/POE(Polyol ester)を用いた。また、試験温度はヒータで制御して100℃とした。また、試験圧力は1.5MPa_Gを用いた。また、試験時間は3時間とした。また、負荷加重は600Nとした。さらに、摺動部は半径6mmの円筒形の形状とした。さらに、リング材として鋳鉄(MoNiCr)を用いた。
図6に示すように、試験#1では、ブロック母材としてSKHを使用し、ブロックの表面処理を施さずに、摩擦係数が0.7の場合で上述した試験を行った。この場合、摺動部の温度は475℃となった。
また、試験#2では、ブロック母材としてSUSを使用し、ブロックの表面処理として窒化を施して、摩擦係数が0.8の場合で上述した試験を行った。この場合、摺動部の温度は475℃となった。
さらに、試験#3では、本実施例の条件に合わせて、ブロック母材としてSKHを使用し、ブロックの表面処理としてDLCによる皮膜処理を施して、摩擦係数が0.15の場合で上述した試験を行った。この場合、摺動部の温度は197℃となった。
すなわち、従来の圧縮機における条件下での試験である試験#1〜#2では、摺動部の温度が上がり過ぎ、熱安定性が低い冷媒では分解が発生してしまう。そのため、冷媒回路の金属部材の腐食が発生して、圧縮機の信頼性が低下するおそれがある。これに対して、本実施例に係る条件下での試験である試験#3では、摺動部の温度を低く抑えることができ、冷媒の分解が発生せず、圧縮機の信頼性を維持することができる。
以上に説明したように、本実施例に係る圧縮機は、摺動部のうち、比較的温度が高くなる部分の動摩擦係数が低く0.2以下となるように形成又は加工されている。これにより、摺動部の温度を抑えることで冷媒の分解を抑制して、冷媒回路の金属部材の腐食による圧縮機の信頼性低下を誘発させる酸の生成を抑制することができる。
また、本実施例に係る圧縮機は、摺動部のうち比較的温度が高くなる部分に非金属の表面処理が施されている。これにより、摺動部において金属同士の接触を防止することができる。したがって、万が一摺動部の温度が高温に達したとしても、摺動面の摩耗を軽減することができる。