以下で説明する実施形態は、いずれも本開示の一実施形態を示すものである。以下の実施形態で示される構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などはあくまで一例であり、本発明を限定するものではない。また、以下の実施形態における構成要素のうち、本開示の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。また、図面において同じ符号が付いたものは、説明を省略する場合がある。
図1は、本発明の実施形態に係るトイレ空間の環境制御システムをブロック図で模式的に示した図である。
図1に示すように、トイレ空間の環境制御システム100は、照明装置200と、映像出力装置300と、制御装置400とを有する。さらに、混雑検知装置500と、報知装置600を有することが好ましい。
照明装置200は、トイレ空間内において大便器が備えられた個室空間に設置され、個室空間内の照度または色温度を変更可能な照明である。このために、照明装置200は、例えば、異なる照度または色温度に調光可能な単一のLEDや、異なる照度または色温度を有する複数のLEDなどの照明機器などを備える。また、照明装置200は、個室空間の上方側に設けられる電球形状の照明機器に限られず、個室空間の壁面に設けられるパネル形状の照明機器であってもよい。なお、照明装置200は、個室空間内への単数の配置であってもよいが、複数設置することにより視覚的効果を得ることができる。
映像出力装置300は、トイレ空間内において大便器が備えられた個室空間内に静止画または動画による映像を出力する装置である。このために、映像出力装置300は、例えば、個室空間内の壁面に取り付けられるLCD(液晶ディスプレイ)やOLED(有機ELディスプレイ)等の表示装置や、個室空間内に映像を投影するプロジェクタなどを備える。表示装置の表示面のサイズやプロジェクタにより投影する映像のサイズに制限はないが、使用者の視野全体に広がる大きなサイズとするとより視覚的効果を得ることができる。なお、映像出力装置300は出力する映像に関連する音を映像と共に出力してもよい。
制御装置400は、照明装置200の照度または色温度、及び映像出力装置300が出力する静止画または動画による映像の出力を制御する装置である。制御装置400は、自動操作または手動操作に基づいて制御指示を照明装置200及び映像出力装置300に送信する。このために、制御装置400は、例えば、自動操作のために予め制御指示が記憶されたメモリや、使用者による手動操作のための入力ボタン、そして制御指示を照明装置200及び映像出力装置300に制御指示を送信するための送信部などを備える。
混雑検知装置500は、トイレ空間内の混雑状況を検知する装置である。混雑検知装置500は、個室空間外である洗面台などが設けられた共有空間における使用者の有無や、他の個室空間内における使用者の有無などを検知したりする。混雑検知装置500によって検知された混雑状況に関する情報を利用することで、制御装置400によって実行される各制御にかかる期間をトイレ空間の混雑状況に応じて短縮することができる。
例えば、混雑検知装置500によってトイレ空間内が混んでいることが検知された場合、制御装置400は、使用者をリラックス状態または覚醒状態に導くための各制御の実行期間を短縮したり、各制御を実行することを禁止(=制御の実行期間をゼロに短縮)したりできるようになる。これによって、トイレ空間本来の使用目的である排泄を行いたい使用者による個室空間の利用に支障をきたすことを防止できる。このために、混雑検知装置500は、例えば、カメラやドアセンサ、人体検知センサ、着座検知センサなどを用いることができる。
ドアセンサとしては、例えば、個室空間のドアにマグネットセンサや変位センサ、振動センサなどの検出手段を用いることができる。これによって、他の個室空間におけるドアの開閉状態を検知し、使用者の有無から混雑状況を推測できる。
また、人体検知センサとしては、例えば、赤外線ラインセンサやマイクロ波センサなどの検出手段を用いることができる。これによって、個室空間の出入口付近に滞在している使用者の有無を検知し、個室空間を使用したい使用者の有無から混雑状況を検知できる。
また、着座検知センサとしては、例えば、歪みセンサや圧力センサ、赤外線センサなどの検知手段を用いることができる。これによって、他の個室空間における使用者の着座状態を検知し、使用者の有無から混雑状況を推測できる。
報知装置600は、使用者をリラックス状態または覚醒状態に導くための各制御が実行された際に、個室空間内の人に当該制御時間の残り時間を報知したり、個室空間の外の共有空間で個室空間の使用を待つ人に当該制御の実行状態を報知したりするものである。報知装置600にはLCD(液晶表示装置)やOLED(有機ELディスプレイ)等の表示装置や、光の色や配置、点滅周期等を変化させることができるLED等の照明装置を用いることができ、個室空間内や共有空間内の壁面などに配置される。当該制御が実行されると、制御装置400は報知装置600に当該制御にかかる情報を送信し、報知装置600はこれを表示させる。報知装置600には、例えば当該制御の実行の有無や当該制御の終了までの残り時間等があげられる。
図2は、本発明の実施形態に係るトイレ空間の環境制御システムにおいて、制御装置が実行する制御の概念図を模式的に示した図である。以下、図2を参照しつつ、本発明の制御装置が実行する3つの制御パターンについて説明する。
(第1の制御パターン:リラックス制御)
第1の制御パターンは、リラックス制御420である。リラックス制御420は、照明装置200による照明リラックス制御422と、映像出力装置300による映像リラックス制御424と、照明リラックス制御422及び映像リラックス制御424を実行する期間を重複させる複合リラックス制御426とを備える。
リラックス制御420は、使用者の疲労感を低下させることを目的とした制御であり、照明リラックス制御422、映像リラックス制御424または複合リラックス制御426を実行することで、使用者の生体を鎮静化させることが可能となる。
照明リラックス制御422は、照明装置200の照度を低照度に変更したり、色温度を暖色系などの低い色温度に変更したりすることで、個室空間内の照度または色温度を低下させ、個室空間内の使用者に与える視覚刺激を低下させる制御である。これによって、人の精神状態を副交感神経が優位なリラックス側へ導き生体を鎮静化させる。
映像リラックス制御424は、アルファ波減衰試験(Alpha Attenuation Test:AAT)を行った際に、アルファ波の出現量が少なく、アルファ波の減衰が顕著に表れなかった映像(第1の映像)を映像出力装置300に出力させる制御である。これによって、人の精神状態を副交感神経が優位なリラックス側へ推移させる。
なお、アルファ波減衰試験とは、閉眼安静時のアルファ波出現量と、開眼時のアルファ波の減衰が、生体の活性度に対応して変動する特性を利用し、安静状態で閉眼と開眼を反復することによって生じるアルファ波の出現量、及び、アルファ波の減衰から生体の活性度を数値指標化する評価手法である。
この試験を行った結果、映像リラックス制御424において出力する映像として適した映像とは、例えば、自然の森の映像のように、色温度が低く、動きが無い又は動きが殆ど無いことから視覚刺激の少ない映像や、平均的な人に安らぎや平穏といったものを想起させることで生体をリラックス側へ導く精神生理的反応を引き起こす映像であった。
複合リラックス制御426は、照明リラックス制御422及び映像リラックス制御424を実行する期間を重複させて行う制御である。これによって、照明装置200と映像出力装置300による複数の異なる視覚刺激が連動し、相乗効果を得ることが可能となる。そのため、複合リラックス制御426を実行することで、照明リラックス制御422または映像リラックス制御424を実行するときよりも短期間で使用者の生体を鎮静化させることが可能となる。
(第2の制御パターン:覚醒制御)
第2の制御パターンは、覚醒制御440である。覚醒制御440は、照明装置200による照明覚醒制御442と、映像出力装置300による映像覚醒制御444と、照明覚醒制御442及び映像覚醒制御444を実行する期間を重複させる複合覚醒制御446とを備える。
覚醒制御440は、使用者の集中力を高めることを目的とした制御であり、照明覚醒制御442、映像覚醒制御444または複合覚醒制御446を実行することで、使用者の生体を活性化させることが可能となる。
照明覚醒制御442は、照明装置200の照度を高照度に変更したり、色温度を寒色系などの高い色温度に変更したりすることで、個室空間内の照度または色温度を上昇させ、照明装置200の直接光による視覚刺激を上昇させる制御である。これによって、人の精神状態を交感神経が優位な覚醒側へ導き生体を活性化させる。例えば、所定期間任意の映像を見せた後にこの試験を実施して生体の活性度を判定することで、映像リラックス制御に適した映像を選定することができる。
映像覚醒制御444は、アルファ波減衰試験(Alpha Attenuation Test:AAT)を行った際に、アルファ波の出現量が多く、アルファ波の減衰が顕著に表れた映像(第2の映像)を映像出力装置300に出力させる制御である。これによって、人の精神状態を交感神経が優位な覚醒側へ推移させる。
この試験を行った結果、映像覚醒制御444において出力する映像として適した映像とは、例えば、自然の海の映像の様に、色温度が高く、映像に動きがあることから視覚刺激の多い映像や、平均的な人に緊張や不安、あるいは好奇心や探求心といったものを想起させることで生体を覚醒側へ導く精神生理的反応を引き起こす映像であった。
複合覚醒制御446は、照明覚醒制御442及び映像覚醒制御444を実行する期間を重複させて行う制御である。これによって、照明装置200と映像出力装置300による複数の異なる視覚刺激が連動し、相乗効果を得ることが可能となる。そのため、複合覚醒制御446を実行することで、照明覚醒制御442または映像覚醒制御444を実行するときよりも短時間で使用者の生体を活性化させることが可能となる。
(第3の制御パターン:リフレッシュ制御)
第3の制御パターンは、リフレッシュ制御460である。リフレッシュ制御460は、上述したリラックス制御420を実行した直後に、同じく上述した覚醒制御440を実行する制御である。
図3は、本発明の実施形態に係るトイレ空間の環境制御システムにおいて、制御装置が実行する制御の一例を示すフローチャートである。以下、図3を参照しつつ、本発明の実施形態にかかるトイレ空間の環境制御システムにおける制御フローを説明する。
ステップS301において、使用者による個室空間内への入室、または、使用者による個室空間内の大便器の着座部に着座を検知する。これによって個室空間内に使用者が存在することが検知されたとき、次のステップS302に移行する。なお、個室空間内への入室の有無は、ドアセンサや人体検知センサによって検知することができる。また、大便器の着座部への着座の有無は、着座検知センサによって検知することができる。
ステップS302において、混雑検知装置500によって個室空間外の混雑状況が検知された場合(ステップS302、Yes)、制御装置400は使用者をリラックス状態または覚醒状態に導くための制御モードを実行することを禁止する。このとき、報知装置600を用いて個室空間内の使用者に個室空間外が混雑していることを報知してもよい。
その一方で、ステップS302において、混雑検知装置500によって、個室空間外の混雑状況が検知されなかった場合(ステップS302、No)、次のステップS303に移行し、制御装置400は、使用者をリラックス状態または覚醒状態に導くための制御モードを選択することを許可する。なお、ステップS303における制御モードの選択は、使用者によって入力された制御を実行する手動操作であっても、着座検知などを起点に、予めプログラムされた制御を実行する自動操作であっても良い。あるいは時間帯等の所定条件に応じて対応する制御モードが自動的に決定されるものであっても良い。
制御装置400は、ステップS303において選択された制御に関する情報を送信し、報知装置600は、個室空間内部、及び個室空間外部に対して、選択された制御に関する情報を報知する(ステップS304)。
ステップS303において選択された制御がリラックス制御420であった場合、制御装置400はリラックス制御420を実行する(ステップS305〜ステップS311)。
なお、リラックス制御420において、制御装置420が照明装置200及び映像出力装置300を制御することで実行する、照明リラックス制御422および映像リラックス制御424の制御フローについては、図4で後述する。
また、ステップS303において選択された制御が覚醒制御440であった場合、制御装置400は覚醒制御440を実行する(ステップS312〜ステップS318)。
なお、覚醒制御440において、制御装置420が照明装置200及び映像出力装置300を制御することで実行する、照明覚醒制御442および映像覚醒制御444の制御フローについては、図5で後述する。
リラックス制御420または覚醒制御440を実行中に、混雑検知装置500によって、個室空間外の混雑状況が検知された場合(ステップS306またはステップS313、Yes)、制御装置400は、リラックス制御420または覚醒制御440の実行期間を短縮するよう制御する(ステップS307またはステップS314)。
また、リラックス制御420または覚醒制御440を実行中に、使用者による停止ボタンへの入力操作が検知された場合(ステップS308またはステップS315、Yes)、制御装置400は、リラックス制御420または覚醒制御440の実行を強制終了する(ステップS311またはステップS318)。
また、リラックス制御420または覚醒制御440を実行中に、着座部からの離座が所定時間検知された場合(ステップS309またはステップS316、Yes)、制御装置400は、リラックス制御420または覚醒制御440の実行を強制終了する(ステップS311またはステップS318)。着座検知センサを用いた使用者による着座部への検知は、使用者が姿勢を変えること等によって1秒程度の時間に亘って離座と検知されてしまうことがある。そのため、所定時間とは、例えば5秒程度の時間を設定することが好ましい。
リラックス制御420または覚醒制御440を実行してから所定時間経過していない場合、(ステップS310またはステップS317、No)、制御装置400は、リラックス制御420または覚醒制御440を実行し続ける。
ステップS303において選択された制御がリフレッシュ制御460であった場合、制御装置400はリフレッシュ制御460を実行する(ステップS319〜ステップS324)。リフレッシュ制御460は、前述したように、リラックス制御420を実行した後(ステップS321〜ステップS321)、覚醒制御440を実行する(ステップS322〜ステップS323)。
そして、制御装置400は、リラックス制御420、覚醒制御440またはリフレッシュ制御460の実行を終了すると同時に(ステップS311、ステップS318またはステップS324)、報知装置600による個室空間内、及び個室空間外部に対する報知を終了する。(ステップS325)。
なお、図3では図示しないが、使用者による停止ボタンの操作や誤作動等によって制御が強制終了された場合、再度制御モードの選択を行うようにステップS303に戻るように設定してもよい。この場合には、あらたに選択された制御に対応して個室内部または個室外部への報知が実行される(S304)。
最後に、使用者による個室空間からの退室が検知されることで、使用者による一回の個室空間の利用に伴う、制御装置400による制御が終了する(ステップS326)。
図4は、本発明の実施形態に係るトイレ空間の環境制御システムにおいて、制御装置が実行するリラックス制御の一例を示すフローチャートである。
図5は、本発明の実施形態に係るトイレ空間の環境制御システムにおいて、制御装置が実行する覚醒制御の一例を示すフローチャートである。
以下、図4および図5を参照しつつ、本発明の実施形態にかかるトイレ空間の環境制御システムにおけるリラックス制御および覚醒制御の制御フローを説明する。
入力操作または自動操作によって、リラックス制御420または覚醒制御440を実行することが選択されたとき(ステップS401またはステップS501)、制御装置400は、選択された制御に対応する制御指示を照明装置200に送信し、照明リラックス制御422または照明覚醒制御442を実行する(ステップS402またはステップS502)。
そして、照明装置200によって変更された個室空間内の照度または色温度が、選択された制御において予め規定された所定の照度または色温度に至った場合(ステップS403またはステップS503、Yes)、制御装置400は、ステップS401またはステップS501において選択された制御に対応する制御指示を映像出力装置300に送信し、映像リラックス制御424または映像覚醒制御444を実行する(ステップS404またはステップS504)。
その後、制御装置400は、所定期間に亘って、照明装置200と映像出力装置300とによる、照明リラックス制御422と映像リラックス制御424とを実行する期間を重複させる複合リラックス制御426、または、照明覚醒制御442と映像覚醒制御444とを実行する期間を重複させる複合覚醒制御446を実行する(ステップS405またはステップS505)。
そして、複合リラックス制御426または複合覚醒制御446を実行してから所定時間経過した場合(ステップS405またはステップS505、Yes)、制御装置400は、映像出力装置300に停止指示を送信し、映像リラックス制御422または映像覚醒制御442を停止する(ステップS406またはステップS506)。
さらに、制御装置400は、照明装置300にも停止指示を送信し、照明リラックス制御422または照明覚醒制御442を停止する(ステップS407またはステップS507)。これにより、制御装置400は、リラックス制御420または覚醒制御440を終了する(ステップS408またはステップS508)。
図6、図7、図8は、本発明の実施形態に係るトイレ空間の環境制御システムにおいて、制御装置が実行するリラックス制御、覚醒制御、リフレッシュ制御のタイムチャートの一例を示す図である。
以下、図6〜図8を参照しつつ、本発明の実施形態にかかるトイレ空間の空間制御システムにおけるリラックス制御、覚醒制御、リフレッシュ制御のタイムチャートを説明する。
始めに、図6を用いてリラックス制御420のタイムチャートについて説明する。
使用者によるトイレ空間への入室が検知されたとき、または、使用者がトイレ空間の照明をOFFからONにする入力操作を行ったとき、個室空間に設けられた照明装置200は平常時の照度及び色温度で点灯する(t0)。このときの平常時の個室空間内の照度及び色温度は、例えば、160Lx(ルクス)および色温度4000K(ケルビン)である。
次に、自動操作または手動操作に基づいてリラックス制御420の実行を開始するとき、制御装置400は、照明装置200の照度または色温度を制御し、個室空間内の照度または色温度を低下させる照明リラックス制御422の実行を開始する(t1)。このとき、照明装置200によって低下された個室空間内の照度及び色温度は、例えば、60Lxおよび色温度2700Kである。
そして、照明リラックス制御422の実行期間が予めプログラムされた所定期間を経過したとき、又は照明リラックス制御422によって低下された個室空間内の照度または色温度が予めプログラムされた照度または色温度に至ったとき、制御装置400は、映像出力装置300を制御し、暖色系などの低い色温度の映像や、人に安らぎや平穏といった精神生理的反応を引き起こす効果がある映像を出力する映像リラックス制御424を開始する(t2)。このとき、映像出力装置300が出力する映像は、例えば、森の映像などである。
その後、制御装置400は、予めプログラムされた所定期間にわたって、照明リラックス制御422及び映像リラックス制御424を実行する期間を重複させて行う複合リラックス制御426を実行する(t2〜t3)。この期間においては、照明装置200と映像出力装置300による複数の異なる視覚刺激が連動するため、相乗効果を得ることが可能となる。そのため、照明リラックス制御422または映像リラックス制御424を実行している期間よりも使用者の生体を効果的に鎮静化させることが可能となる。このとき、複合リラックス制御426は、例えば、5分間にわたって実行される。
なお、照明リラックス制御422が実行された直後(t1〜t2)は、制御装置400が照明装置200の照度または色温度を変更している期間中であるため、個室空間内の視覚刺激は一定に保たれていない。このとき、映像出力装置300を制御して映像リラックス制御424の実行を開始したとしても、使用者は照明装置200によって個室空間内の照度または色温度が変更されていることに気を取られてしまい、照明と映像による相乗効果を得ることができないおそれがある。そのため、複合リラックス制御426は、個室空間内の照度または色温度が一定に保たれている期間(t2〜t3)に実行することが好ましい。
そして、予めプログラムされた所定期間経過後、制御装置400は、照明装置200及び映像出力装置300に対して各制御の停止指示を送信する(t3)。その後、個室空間内の照度または色温度が、平常時の照度または色温度に至ることで、制御装置400によるリラックス制御420は終了する(t4)。
次に、図7を用いて覚醒制御440のタイムチャートについて説明する。なお、t0の制御はリラックス制御420と同様の制御内容であるため、説明を省略する。
自動操作または手動操作に基づいて覚醒制御440の実行を開始するとき、制御装置400は照明装置200の照度または色温度を制御し、個室空間内の照度または色温度を上昇させる照明覚醒制御442の実行を開始する(t1)。このとき、照明装置200によって上昇された個室空間内の照度および色温度は、例えば、400Lxおよび色温度4800Kである。
そして、照明覚醒制御442の実行期間が予めプログラムされた所定期間を経過したとき、又は照明覚醒制御442によって上昇された個室空間内の照度または色温度が予めプログラムされた照度または色温度に至ったとき、制御装置400は、映像出力装置300を制御し、寒色系などの高い色温度の映像や、人に緊張や不安、あるいは好奇心や探求心といった精神生理的反応を引き起こす効果がある映像を出力する映像覚醒制御444を開始する(t2)。このとき、映像出力装置300が出力する映像は、例えば、海の映像などである。
その後、制御装置400は、予めプログラムされた所定期間にわたって、照明覚醒制御442及び映像覚醒制御444を実行する期間を重複させて行う複合覚醒制御446を実行する(t2〜t3)。この期間においては、照明装置200と映像出力装置300による複数の異なる視覚刺激が連動するため、相乗効果を得ることが可能となる。そのため、照明覚醒制御442または映像覚醒制御444を実行している期間よりも使用者の生体を効果的に活性化させることが可能となる。このとき、複合覚醒制御446は、例えば、5分間にわたって実行される。
なお、照明覚醒制御442が実行された直後(t1〜t2)は、制御装置400が照明装置200の照度または色温度を変更している期間中であるため、個室空間内の視覚刺激は一定に保たれていない。このとき、映像出力装置300を制御して映像覚醒制御444の実行を開始したとしても、使用者は照明装置200によって個室空間内の照度または色温度が変更されていることに気を取られてしまい、照明と映像による相乗効果を得ることができないおそれがある。そのため、複合覚醒制御446は、照明装置200の照度または色温度が一定に保たれている期間(t2〜t3)に実行することが好ましい。
そして、予めプログラムされた所定期間経過後、制御装置400は、照明装置200及び映像出力装置300に対して各制御の停止指示を送信する(t3)。その後、個室空間内の照度または色温度が、平常時の照度または色温度に至ることで、制御装置400による覚醒制御440は終了する(t4)。
最後に、図8を用いてリフレッシュ制御460のタイムチャートについて説明する。なお、t0の制御はリラックス制御420および覚醒制御440と同様の制御内容であるため、説明を省略する。
自動操作または手動操作に基づいてリフレッシュ制御460の実行を開始するとき、制御装置400は照明装置200の照度または色温度を制御し、個室空間内の照度または色温度を低下させる照明リラックス制御422の実行を開始する(t1)。このとき、照明装置200によって低下された個室空間内の照度および色温度は、例えば、60Lxおよび色温度2700Kである。
なお、リフレッシュ制御460において、照明リラックス制御422を実行する場合、個室空間内の照度をゼロにまで低下させないことが好ましい。個室空間内の照度をゼロに近づけるほど視覚刺激が少なくなることにより生体を鎮静化させる効果を高めることができるが、その一方で使用者の睡眠欲求を高めてしまう。すると、リラックス制御420を実行した直後に覚醒制御440を実行したとしても、使用者を再び集中して作業を行うことが可能な覚醒状態にするまでに必要とする期間を短縮できないという課題が生じるためである。
そして、照明リラックス制御422の実行期間が予めプログラムされた所定期間を経過したとき、又は照明リラックス制御422によって低下された個室空間内の照度または色温度が予めプログラムされた照度または色温度に至ったとき、制御装置400は、映像出力装置300を制御し、暖色系などの低い色温度の映像や、人に安らぎや平穏といった精神生理的反応を引き起こす効果がある映像を出力する映像リラックス制御424を開始する(t2)。このとき、映像出力装置300が出力する映像は、例えば、森の映像などである。
その後、制御装置400は、予めプログラムされた所定期間にわたって、照明リラックス制御422及び映像リラックス制御424を実行する期間を重複させて行う複合リラックス制御426を実行する(t2〜t3)。このとき、複合リラックス制御426は、例えば、3.5分間にわたって実行される。
そして、複合リラックス制御426を実行してから所定期間経過後、制御装置400は、映像出力装置300に対して映像リラックス制御424の停止指示を送信する(t3)。同時に、制御装置400は照明装置200の照度または色温度を制御し、個室空間内の照度または色温度を上昇させる照明覚醒制御442の実行を開始する。
なお、リフレッシュ制御460において、照明リラックス制御422の実行期間中に、映像覚醒制御444を実行してしまうと、個室空間内の照度と映像出力装置300が出力する映像の照度との照度差が大きくなることにより、使用者が強すぎる視覚刺激を受けてしまうおそれがある。そのため、制御装置400は、照明リラックス制御422の実行期間中においては、映像覚醒制御444を実行しないように制御することが好ましい。
そして、照明覚醒制御442の実行期間が予めプログラムされた所定期間を経過したとき、又は照明覚醒制御442によって上昇された個室空間内の照度または色温度が予めプログラムされた照度または色温度に至ったとき、制御装置400は、映像出力装置300を制御し、寒色系などの高い色温度の映像や、人に緊張や不安、あるいは好奇心や探求心といった精神生理的反応を引き起こす効果がある映像を出力する映像覚醒制御444を開始する(t4)。このとき、照明装置200によって上昇された個室空間内の照度及び色温度は、例えば、400Lxおよび色温度4800Kであり、映像出力装置300が出力する映像は、例えば、海の映像などである。
なお、リフレッシュ制御460において、照明覚醒制御442を実行する場合、照明覚醒制御442を実行しているときの個室空間内の照度を、リフレッシュ制御460を実行する前の平常時の個室空間内の照度よりも大きくなるように制御することが好ましい。つまり、平常時の個室空間の照度<照明覚醒制御442時の個室空間の照度にすることが好ましい。これによって、一度鎮静化させた使用者の生体を活性化させ、短期間で再び集中して作業を行うことが可能な覚醒状態にすることができる。
さらに言えば、リフレッシュ制御460において、照明リラックス制御422と照明覚醒制御442を実行する場合、リフレッシュ制御460を実行する前の平常時の個室空間内の照度と照明リラックス制御422を実行しているときの個室空間内の照度との差である第1の照度差よりも、リフレッシュ制御460を実行する前の平常時の個室空間内の照度と照明覚醒制御444を実行しているときの個室空間内の照度との差である第2の照度差の方が大きくなるように制御することが好ましい。つまり、第1の照度差(平常時の個室空間の照度−照明リラックス制御422時の個室空間内の照度)<第2の照度差(照明覚醒制御442時の個室空間内の照度−平常時の個室空間内の照度)にすることが好ましい。これによって、一度鎮静化させた使用者の生体を活性化させ、短期間で再び集中して作業を行うことが可能な覚醒状態にすることができる。
その後、制御装置400は、予めプログラムされた所定期間にわたって、照明覚醒制御442及び映像覚醒制御444を実行する期間を重複させて行う複合覚醒制御446を実行する(t4〜t5)。このとき、複合覚醒制御446は、例えば、1.5分間にわたって実行される。
なお、リフレッシュ制御460における複合覚醒制御446の実行期間は、リフレッシュ制御460を実行する前の平常時の個室空間内の照度と照明リラックス制御422を実行しているときの個室空間内の照度との差である第1の照度差に、照明リラックス制御422を実行している期間を乗算した結果であるリラックス刺激値よりも、照明リラックス制御422を実行している時の個室空間内の照度と照明覚醒制御444を実行しているときの照度との差である第3の照度差に、照明覚醒制御442を実行している期間を乗算した結果である覚醒刺激値の方が大きくなるように制御することが好ましい。つまり、リラックス刺激値(第1の照度差×照明リラックス制御422の実行期間)<覚醒刺激値(第3の照度差×照明覚醒制御442の実行期間)にすることが好ましい。これによって、一度鎮静化させた使用者の生体を活性化させ、短期間で再び集中して作業を行うことが可能な覚醒状態にすることができる。
さらに言えば、リフレッシュ制御460において、複合覚醒制御446の実行期間の長さが、複合リラックス制御426の実行期間以下の長さになるように制御することが好ましい。つまり、複合リラックス制御446の実行期間≧複合覚醒制御の実行期間とすることが好ましい。
生体を活性化する効果のある覚醒制御440は、使用者に対する視覚刺激を大きくする制御であるため生体が即座に反応するのに対して、生体を鎮静化させる効果のあるリラックス制御420は生体が緩慢に反応する。そのため、比較的長い期間を必要とするリラックス制御420にかける期間を長くすることで、使用者の生体を短期間且つ効果的に鎮静化させた後、リラックス刺激値<覚醒刺激値となるように使用者に視覚刺激を与えることで、短期間で再び集中して作業を行うことが可能な覚醒状態にすることができる。
そして、予めプログラムされた所定期間経過後、制御装置400は、照明装置200及び映像出力装置300に対して各制御の停止指示を送信する(t5)。その後、個室空間内の照度または色温度が、平常時の照度または色温度に至ることで、制御装置400によるリフレッシュ制御460は終了する(t6)。
図9は、本発明に係るトイレ空間の環境制御システムの実証試験において、制御装置が実行する各制御に対する被験者の生理測定の結果を示した図である。以下、図9を参照しつつ、実証試験の結果を説明する。
本件発明者らは、上述したリラックス制御420や覚醒制御440、リフレッシュ制御460による効果を検証するために、脈波に基づく生理測定を行った。
本件発明者らは、実証試験の環境として、大便器と照明装置200を設置した個室を用意した。被験者には試験中、大便器に座った状態のまま、できるだけ身体を動かさないように指示した。そして、被験者の指先に、BRCバイオリサーチセンター株式会社製の脈波測定器具TN1012/STを付けることで脈波を計測した。
脈波に基づく生理測定は、計測した脈波を低周波成分(LF)と高周波成分(HF)に分け、LFの割合が高いほど交感神経優位で覚醒状態になっている、HFの割合が高いほど副交感神経優位でリラックス状態になっているとした。
個室空間内の照度および色温度は、大便器の着座部に着座したときの被験者の目の位置(着座部の中央の鉛直上方向であり、且つ、個室空間の床面より1100mmの高さ位置)、膝上の位置(着座部の先端部の鉛直上方向であり、且つ、個室空間の床面より500mmの高さ位置)、大便器の正面に設けられる個室空間の壁面(扉)の下方に存在する床面の角部の位置、及び映像出力装置300によって出力される映像の中央部の位置の4か所の平均値とした。
なお、照度および色温度はコニカミノルタ株式会社製の分光放射照度計CL−500Aを用いて計測した。
実証試験では、初めに、被験者にオフィスで働いている時と同様の精神状態を再現してもらうために、個室空間の外部にてオフィスを模した音声付きの動画を出力すると共に、所定数から二桁の数を引き続ける算術問題に5分間、口頭で回答することを課した。このとき、被験者には、扉を開けることで開空間とした個室空間の内部からその音声付きの動画を見てもらった。なお、このときの個室空間内の照度および色温度は、平常時の個室空間内の照度および色温度を模して160Lxおよび色温度3400Kとした。
次に、オフィスを模した音声付きの動画の出力を停止すると共に、扉を閉めることで個室空間を閉空間とした。なお、このときの個室空間内の照度および色温度は、160Lxおよび色温度3400Kのままとした。
その後に引き続き行う実証試験において、照明リラックス制御422を実行したことによる使用者の精神状態を再現するときは、照明装置200を制御し個室空間内の照度を60Lx、色温度を2700Kまで低下させた。そして、映像リラックス制御424を実行したことによる使用者の精神状態を再現するときは、映像出力装置300を制御し個室空間内に森の映像を出力した。
また、照明覚醒制御442を実行したことによる使用者の精神状態を再現する時は、照明装置200を制御し個室空間内の照度を400Lx、色温度を4800Kまで上昇させた。そして、映像覚醒制御444を実行したことによる使用者の精神状態を再現するときは、映像出力装置300を制御し個室空間内に海の映像を出力した。
各制御による実証実験の評価条件は3条件とし、全ての評価条件においてリラックス制御420及び覚醒制御440の実行期間を5分間とした。評価を行った3条件の詳細は以下の通りである。
評価条件1では、リラックス制御420において照明リラックス制御422のみを実行し、覚醒制御440において照明覚醒制御442のみを実行した。
評価条件2では、リラックス制御420において映像リラックス制御424のみを実行し、覚醒制御440において映像覚醒制御444のみを実行した。
評価条件3では、リラックス制御420において複合リラックス制御426を実行し、覚醒制御440において複合覚醒制御446を実行した。
図9に示した、初期条件の値は、リフレッシュ制御460を実行する直前2.5分間の測定値であり、実証試験後の値は、リラックス制御420及び覚醒制御440における後半2.5分間の測定値である。
評価条件1において、被験者は、初期条件からリラックス制御420間の変化はリラックス側へ推移したが、リラックス制御420から覚醒制御440間の変化は覚醒側へ微弱に推移していた。
つまり、被験者は、照明装置200のみによる照明リラックス制御422では、狙っている精神状態へと推移したが、照明装置200のみによる照明覚醒制御442では、狙っている精神状態への推移は微弱であることが確認された。
評価条件2において、被験者は、初期条件からリラックス制御420間の変化は覚醒側へ推移し、リラックス制御420から覚醒制御440間の変化は覚醒側へ推移していた。
つまり、被験者は、映像出力装置300のみによる映像リラックス制御424では、狙っている精神状態と相反する精神状態へと推移したが、映像出力装置300のみによる映像覚醒制御444では、狙っている精神状態へと推移することが確認された。
評価条件3において、被験者は、初期条件からリラックス制御420間の変化はリラックス側へ推移し、リラックス制御420から覚醒制御440間の変化は覚醒側へ推移していた。
つまり、被験者は、照明装置200及び映像出力装置300による複合リラックス制御426及び複合覚醒制御では、狙っている精神状態へと推移することが確認された。
以上の実証実験の結果から、本件発明者らは、照明装置200のみによる制御を実行するトイレ空間の環境制御システム、または映像出力装置300のみによる各制御を実行するトイレ空間内の環境制御システムでは、人の精神状態を狙い通りに推移させる効果が薄いことを確認できた。そして、照明装置200及び映像出力装置300による制御を同時に実行する複合リラックス制御426、複合覚醒制御446であれば、人の精神状態を狙い通りに推移させる効果が高まることを確認できた。