以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、下記の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
図1は、光学機器の一例であるレンズユニット100の模式的断面図である。レンズユニット100は、鏡筒150に収容された複数のレンズ群により形成された光学系を備える。なお、以降の説明においては、図中左側を前側、図中右側を後側と記載する。また、図中の一点鎖線は、光学系の光軸Xを示す。
レンズユニット100の光学系は、図中左側の前側端から順に、光軸Xに沿って配置された第一レンズ群110、第二レンズ群120、第三レンズ群130および第四レンズ群140を備える。また、レンズユニット100の光学系は、絞りユニット160および振動補正ユニット400も備える。
第一レンズ群110は、保持枠112に保持される。第二レンズ群120は、保持枠122に保持される。これら第一レンズ群110および第二レンズ群120は、鏡筒150の一部をなす先筒158の先端近傍に配されて、先筒158と共に鏡筒150に対して光軸X方向に移動する。
第三レンズ群130は、保持枠132に保持され、鏡筒150の内部に収容された移動筒200の前側寄りに配される。第三レンズ群130は、保持枠132に保持される。更に、保持枠132は、ボイスコイルモータ300により駆動されて、光軸Xと平行な方向に、移動筒200に対して移動する。これにより、第三レンズ群130は、ボイスコイルモータ300に供給する駆動電力により、電気的な制御の下に移動させることができる移動レンズとなる。
第四レンズ群140は、移動筒200の後側寄りに固定され、移動筒200と共に一体的に、鏡筒150に対して光軸X方向に移動する。また、第四レンズ群140は、光学系において生じる像振れを補正する振動補正レンズ410を含む。このため、振動補正レンズ410を含む振動補正ユニット400も、移動筒200の内部に収容されて、移動筒200と共に光軸X方向に移動する。なお、移動筒200には、絞りユニット160も、振動補正ユニット400に隣接して収容される。
レンズユニット100において、鏡筒150は、固定筒152、ズーム環154、中継環156および先筒158を有する。固定筒152は、後側端にマウント部151を有する。これにより、レンズユニット100を、カメラボディ、接眼ユニット等に結合して使用することができる。また、固定筒152は、三脚座180を有する。これにより、望遠レンズとして使用する場合に三脚等に固定して、レンズユニット100を安定させることができる。
ズーム環154は、鏡筒150の外周面に配され、ユーザの操作により、固定筒152に対して、光軸Xを回転軸として回転させることができる。中継環156は、鏡筒150の内部に配され、ズーム環154の回転運動を、鏡筒150の内部に配されたカム筒等に伝達する。これにより、ユーザによるズーム環154の回転操作が、先筒158および移動筒200を移動させる駆動力に変換される。
ズーム環154が操作された場合、先筒158は、鏡筒150から前方に繰り出され、あるいは、鏡筒150に収容されて、レンズユニット100の全長を変化させる。また、ズーム環154が操作された場合、移動筒200は、鏡筒150内を光軸Xと平行に方向に移動する。これにより、第一レンズ群110、第二レンズ群120、第三レンズ群130、第四レンズ群140、絞りユニット160等が光軸X方向に移動して、例えば、レンズユニット100の倍率を変化させる。
なお、先筒158の前側端には、フード170が装着される。フード170は、バヨネットマウント等により先筒158に対して着脱できる。先筒158に取り付けられたフード170は、レンズユニット100の光学系に対する入射光路の周囲を包囲して、光軸Xに対して極端に傾いた入射光を遮断する。これにより、鏡筒150内の迷光が抑制され、レンズユニット100の光学系が形成する像に生じるフレア等が防止される。
また、移動筒200には、第三レンズ群130の保持枠132を駆動するボイスコイルモータ300が配される。ボイスコイルモータ300は、ボイスコイル310、マグネット320およびヨーク330を含む。
ボイスコイルモータ300において、ボイスコイル310は、第三レンズ群130の保持枠132に対して固定される。一方、マグネット320およびヨーク330は、移動筒200に対して固定される。
図2は、レンズユニット100における移動筒200を単独で取り出した様子を示す斜視図である。移動筒200は、全体として円筒状をなし、外周面に配された、直進キー210、駆動ピン220、回路基板230を有する。また、移動筒200は、光軸Xと平行に配された案内軸240を内部に有する。なお、図示の状態においては、移動筒200の内部に組み込まれた第三レンズ群130および保持枠132の一部が見えている。
直進キー210は、移動筒200の後側端近傍において、径方向に突出した台座の上に配される。直進キー210は、移動筒200の周方向について互いに離れて複数設けられ、光軸X方向に長い形状を有する。これら直進キー210は、固定筒152の内面に形成された直進溝と係合して、鏡筒150の内部における移動筒200の姿勢を安定させると共に、移動筒200の移動方向を光軸X方向に案内する。
駆動ピン220は、移動筒200の前側端および後側端の中間において、移動筒200から径方向外側に突出する。駆動ピン220は、カム筒等の外部のカム溝から駆動力を受けて、移動筒200を光軸Xと平行な方向に移動させる。駆動ピン220は、移動筒200の周方向に複数設けられているため、駆動力を受けたことにより移動筒200が光軸Xに対して傾くことを防止する。
回路基板230は、ボイスコイルモータ300の駆動回路の他、振動補正ユニット400の制御回路、第三レンズ群130の位置検出回路等を含む。また、回路基板230は、他の回路との通信回路を含む。ただし、これら全ての回路が回路基板230に集約されているとは限らず、これらの回路の一部が設けられている場合もある。また、更に他の回路が回路基板230に実装されている場合もある。
案内軸240は、移動筒200に対して固定され、移動筒200の内部において、保持枠132と嵌合または係合する。これにより、保持枠132は、移動筒200に対する移動方向を案内される。
図3は、移動筒200の断面図であり、光軸Xを含む断面の一部を示す。図2に示した状態の移動筒200において、ボイスコイルモータ300のマグネット320およびヨーク330は、移動筒200に対して固定される。ここで、矩形状のマグネット320は、フェライト磁石等の永久磁石であり、光軸Xと並行かつ保持枠132の移動範囲に延在するように配される。ヨーク330は、マグネット320の光軸Xと平行な面と光軸Xと直交する面とを包囲して、光軸X方向に延在するする。移動筒200において、マグネット320は3つ配置されており、各マグネット320を包囲するヨーク330も3つ配置されている(図4、5参照)。
保持枠132は、樹脂材料などにより黒色の略円環状に形成されている。保持枠132は、第三レンズ群130の外周を保持する保持部133を有する。保持枠132は、ヨーク330の一部、即ち、マグネット320の光軸Xと平行な内周側面を覆う部分を光軸X方向に貫通させる開口部134を有する。
保持枠132の背面には、第三レンズ群130の外周を周回するように配置されたボイスコイル310が固定されている。ボイスコイル310は、予め指定された筒型の外周に複数回巻きつけて筒状に形成しておいたものを型から取り外し、保持枠132の背面に固定して用いている。ボイスコイル310の保持枠132に対する位置決めは、保持枠132の背面に設けた位置決め用の突起部135と、ボイスコイル310の内周面とを接着剤などで固定している。
なお、ボイスコイル310と保持枠132との位置決めには、ボイスコイル310の内周面を用いることが好ましい。その理由は、上記のようにボイスコイル310は筒型に巻きつけて形成するので、ボイスコイル310の外周面よりも内周面の方が寸法および形状の精度が高いからである。
ボイスコイル310は、円形の断面を有するコイルを複数巻回して形成することにより、筒状の内周側にコイルの凹凸が形成される。よって、筒状のボイスコイル310の少なくとも内周面を黒色にすることにより、レンズユニット100の外側から視認困難になると共に、レンズユニット100の内側で発生するゴーストやフレアの原因となる不要な光線の反射防止部材としても機能する。
ボイスコイル310の一部は、図示の断面において環状をなすヨーク330の内側において、マグネット320の近傍に配される。ボイスコイル310に駆動電流が供給された場合は、マグネット320およびヨーク330により形成された磁界との相互作用により、光軸Xと平行な方向に作用する駆動力が生じる。よって、ボイスコイルモータ300は、ボイスコイル310に供給する駆動電流を変化させることにより、電気的な制御の下に第三レンズ群130を移動させることができる。
また、移動筒200の内部において、保持枠132は、一部に形成された係合部136において、案内軸240と係合する。案内軸240は、ステンレス鋼等により形成され、光軸Xと平行な直線をなし、平滑な表面を有する。
係合部136は、第三レンズ群130の保持枠132に、略径方向に延在する長穴またはスリットとして形成される。このような係合部136を案内軸240に係合させることにより、保持枠132は、光軸Xと平行な方向の移動を許容されつつ、周方向の変位を規制される。
図4は、移動筒200の断面図であり、光軸Xと直交するひとつの断面を示す。なお、図2および図3において9時の位置にあった案内軸240が、図4においては図中上側に位置していることから判るように、図4に示す移動筒200の断面は、図2および図3に示した移動筒を図中時計回りに約90°回した状態を示す。また、図4においては、第三レンズ群130および保持枠132は除かれている。
移動筒200は、ボイスコイルモータ300におけるマグネット320およびヨーク330を含む3組の組立体301、302、303を有する。また、移動筒200は、一対の案内軸240、250および位置検出用の磁気センサ260を有する。
図4に示す状態において、3組の組立体301、302、303は、第三レンズ群130の外周の接線方向に延在してそれぞれ配置される。また、3組の組立体301、302、303は、互いに離れて配され、3つの組立体301、302、303相互の間には3つの空間A、B、Cが形成される。
移動筒200において、一方の案内軸240は、図2および図3にも現れており、第三レンズ群130の保持枠132と係合部136において係合して副案内軸を形成する。図2および図3に現れていなかった他方の案内軸250は、移動筒200に対して光軸Xと平行に固定される。この案内軸250は、第三レンズ群130の保持枠132と嵌合して、保持枠132を光軸Xと平行な方向に案内する主案内軸を形成する。
一方の案内軸240は、組立体301、302により挟まれた空間Aに配される。他方の案内軸250は、組立体301、303により挟まれた空間Cに配される。これにより、案内軸240と案内軸250との間隔を広くすることができるので、保持枠132の傾きを効率よく抑制できる。
移動筒200において、磁気センサ260は、後述する位置検出用のマグネット139に対向するように、移動筒200に対して固定される。また、移動筒200の周方向について、磁気センサ260は、組立体301、303のいずれからも離れた空間Cに配される。
図5は、ボイスコイルモータ300の断面図であり、図4に示した移動筒200の断面に、第三レンズ群130、保持枠132およびボイスコイル310を加えた状態を示す。ただし、ボイスコイル310の引き回しを示す目的で、保持枠132は、断面の一部が現れる位置にある。
移動筒200において、保持枠132は、案内軸250に対して丸穴状の嵌合部138により嵌合する。既に説明した通り、保持枠132は、係合部136において案内軸240に係合する。これにより、保持枠132は、光軸X方向の移動可能な状態を維持しつつ、光軸Xに対して交差する方向について精度よく位置決めされる。
また、保持枠132は、嵌合部138の近傍に配された位置検出センサ用のマグネット139を有する。マグネット139は、長手方向を光軸Xと平行に、紙面に対して垂直に延在するように配置される。これにより、マグネット139と嵌合部138に嵌合する案内軸250とを近づけることができる。さらに、案内軸250は保持枠132を光軸方向に案内する主軸であるので、マグネット139は、保持枠132の光軸Xに対する傾きの影響を殆ど受けることなく、磁気センサ260を使用して、保持枠132の光軸X方向の位置を精度よく検出できる。
また、マグネット139は、組立体301、303のいずれからも離れた空間Cに配置されており、マグネット139の組立体301、303から受ける磁場の影響を小さくすることができる。さらに、マグネットが、位置検出用の磁場を生じさせるとともに位置検出用とは異なる用途(検出を安定させる等)に用いるための磁場を生じさせる場合、後者の磁場と外部磁場とが互いに打ち消しあわないように角度を考慮して配置するのが好ましい。本実施形態において、マグネット139は、位置検出用の磁場を光軸X方向に沿って生じさせるとともに、位置検出を安定させるための磁場をマグネット139の長手方向を軸中心とした軸回りに生じさせる。
したがって、マグネット139は、組立体301、303から離れた位置であって、組立体301、303から漏れる磁場が位置検出を安定させるための磁場と打ち消しあわないような角度に配置されるのが好ましい。このようなマグネット139を用いることにより、位置検出の精度をあげることができる。
更に、保持枠132は、ボイスコイル310を有する。ボイスコイル310は、光軸Xの周囲を周回して、3組の組立体301、302、303のヨーク330の内側を全て通過する単一の環を形成する。これにより、ボイスコイル310が発生した磁界は、3組の組立体301、302、303に共通に作用する。よって、ボイスコイル310の全周のうち、いずれの組立体301、302、303の磁気回路にも作用しない漏れ磁束が発生する割合が少なく、ボイスコイル310に投入した駆動電流を効率よく保持枠132の駆動力に変換できる。
また、保持枠132に対する駆動力は、第三レンズ群130の周方向について、組立体301、302、303の位置に対応する3箇所で発生するので、駆動力が大きく、かつ、保持枠132の光軸に対する傾きが安定する。よって、組立体301、302、303の数は3個に限定されず、4個以上であってもよいが、案内軸や位置検出センサも配置する場合、3個であることが好ましい。
なお、図示の例において、ボイスコイル310は、組立体301、302、303相互の間において直線をなし、全体として六角形の筒状である。これにより、ボイスコイル310の移動筒200の内側における実装効率も改善される。更に、ボイスコイル310を形成する場合に用いる線材の長さも節約できる。
ただし、ボイスコイル310の形状が六角形に限られるわけではなく、五角形、七角形、円形等の他の形状であってもよい。また、直線と曲線とを組み合わせた形状であってもよい。更に、移動筒200内の他の部品等を避ける目的で、より複雑に折れ曲がった部分を有してもよい。
また、上記の例では、一対の組立体302、303の間隔は、組立体301、302、303の他の間隔よりも狭い。これにより、移動筒200に保持枠132を組み付ける場合に向きを誤ることを防止できる。図示のボイスコイル310は、光軸Xを通過する水平線に対して対称な形状を有するが、非対称の形状のボイスコイル310を配置してもよい。一方、移動筒200の周方向について、複数の組立体301、302、303を等間隔に配置してもよい。
更に、上記の例では、複数の組立体301、302、303に対して単一のボイスコイル310を組み合わせてボイスコイルモータ300を形成した。しかしながら、複数の組立体301、302、303の各々に対して個別のボイスコイル310を組み合わせてもよい。また更に、レンズ交換式撮像装置に用いられるレンズユニット100を例にあげて説明したが、上記ボイスコイルモータ300の構造は、望遠鏡、測量器、顕微鏡、測距計等の他の光学機器にも適用できる。
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。