以下、発明を実施するための形態(以下、実施形態という)につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記の実施形態により本発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、下記実施形態で開示した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
図1は、実施形態に係る角度検出対象である回転体及びセンサの配置概念を説明する図である。図1に示す例では、回転軸Xを中心に回転する回転体100を角度検出対象としている。
図1に示すように、回転体100は、N極及びS極の2つの磁極からなる磁極対が同心円上に等間隔に並び構成される。具体的に、回転体100は、例えば図に網がけしてある部分がN極、網がけのない部分がS極といったように、周方向に異なる磁極が交互に等配されている。図1では、N極及びS極をそれぞれ4極有する構成を例示している。これにより、回転体の1周期を均等に4分割した4周期の電気角が得られる。
回転体100の各磁極は、必要な磁束密度に応じて、例えば、ネオジム磁石、フェライト磁石、サマリウムコバルト磁石等から構成することが可能である。
また、図1では、回転体100の回転に応じた検出信号を出力する複数のセンサH1,H2,H3,・・・,Hnを設けた例を示している。検出信号の位相は、センサH1,H2,H3,・・・,Hnごとに異なっている。本実施形態において、センサH1,H2,H3,・・・,Hnは、各磁極により生じる磁界を検出する構成である。センサH1,H2,H3,・・・,Hnとしては、例えばホール素子を用いることができる。
具体的に、センサH1は、図中に示すA点を基準点として、電気角でωt+θ1の位置に配置されている。また、センサH2は、図中に示すA点を基準点として、電気角でωt+θ2の位置に配置されている。また、センサH3は、図中に示すA点を基準点として、電気角でωt+θ3の位置に配置されている。また、センサHnは、図中に示すA点を基準点として、電気角でωt+θnの位置に配置されている。以下、センサH1,H2,H3,・・・,Hnの数をhとし、各センサH1,H2,H3,・・・,Hnを個別に称する場合を除き、「センサHh」と称する。また、各センサHhの位置を示す位相θ1,θ2,θ3,・・・,θnについても、同様に「位相θh」と称する。
時刻tにおける検出信号fh(t)をフーリエ級数展開すると、下記の式(1)が得られる。
式(1)において、「alhsin{l(ωt+θh+blh)}」は、検出信号fh(t)に含まれる周波数成分のうち、基本波に対するl倍波成分であることを示している。また、式(1)において、alhは検出信号fh(t)のl倍波成分の振幅を示し、blhは位相θhに対するl倍波成分の相対位相を示している。また、式(1)では、説明を簡略にするため、lは1以上の整数である場合について例示している。lが1であるときの1倍波成分は、検出信号fh(t)の基本波成分を示している。
本実施形態では、後述するように、センサHhごとに個別に設定された第1係数を検出信号fh(t)に乗じて互いに加算した第1合成信号、及び、センサHhごとに個別に設定された第2係数を検出信号fh(t)に乗じて互いに加算した第2合成信号に基づき、回転体100の角度を求める。このときの第1合成信号及び第2合成信号を示す合成信号f(t)は、上述したセンサHhごとの第1係数及び第2係数をkhとすると、下記の式(2)となる。
三角関数の加法定理を用いて式(2)を変形することにより、下記の式(3)、式(4)、及び式(5)が得られる。
式(4)式及び式(5)は、式(3)において回転体100の回転に依存しない値である。三角関数の合成公式を用いて式(3)を変形することにより、下記の式(6)、式(7)、及び式(8)が得られる。
式(6)の合成信号f(t)において、l倍波成分の振幅g(l)は、以下の式(9)で示される。
式(4)及び式(5)から、下記の式(10)及び式(11)が導出できる。
上記の式(10)及び式(11)において、行列Aは、下記の式(12)を満たすn次正方行列である。
上記の式(10)及び式(11)において、検出信号fh(t)の基本波成分の振幅をa1h、検出信号fh(t)のx倍波成分の振幅をaxh、検出信号fh(t)の位相θhに対する検出信号fh(t)の基本波成分の相対位相をb1h、検出信号fh(t)の位相θhに対する検出信号fh(t)のx倍波成分の相対位相をbxh、x倍波成分の乗数をx1,・・・,xqとする。なお、式(10)に示す行列Aの各項は、時刻tにおける検出信号fh(t)をフーリエ級数展開した式(1)により得られる。
式(10)及び式(11)において、合成信号f(t)の基本波成分の振幅を略1とするためには、式(9)のlに1を代入した振幅g(l)が1となる下記の式(13)を満たす必要がある。
また、式(10)及び式(11)において、合成信号f(t)のx倍波成分の振幅を略0とするためには、式(9)のlにx倍波成分の乗数x(x1,・・・,xp)を代入した振幅g(x)が0となる下記の式(14)を満たす必要がある。
式(12)に示すように、式(10)に示す行列Aの次数nは、本実施形態において少なくとも必要なセンサHhの数に相当する。例えば、合成信号f(t)の基本波成分の振幅を略1とし、合成信号f(t)のx1倍波成分の振幅を略0とするためには、少なくともC1,S1,Cx1,Sx1に関する連立一次方程式が必要となる。すなわち、式(10)に示す行列Aの次数nは4となり、少なくとも4つのセンサHhが必要となる。
さらに、合成信号f(t)のxp倍波成分の振幅を略0とするためには、少なくともC1,S1,Cx1,Sx1,Cxp,Sxpに関する連立一次方程式が必要となる。すなわち、式(10)に示す行列Aの次数nは6となり、少なくとも6つのセンサHhが必要となる。
このように、式(10)に示す行列Aの次数nは、基本波成分と振幅を略0とするx倍波成分との合計数を2倍した値となる。
次に、上記の式(1)において、各センサHhから出力される検出信号fh(t)のl倍波成分の振幅alh及び相対位相blhが略等しい例について説明する。この場合、時刻tにおける検出信号fh(t)をフーリエ級数展開すると、下記の式(15)が得られる。
また、合成信号f(t)は、下記の式(16)となる。
三角関数の加法定理を用いて式(16)を変形することにより、下記の式(17)、式(18)、及び式(19)が得られる。
式(18)式及び式(19)は、式(17)において回転体100の回転に依存しない値である。三角関数の合成公式を用いて式(17)を変形することにより、下記の式(20)、式(21)、及び式(22)が得られる。
式(20)の合成信号f(t)において、l倍波成分の振幅g(l)は、以下の式(23)で示される。
式(18)及び式(19)から、下記の式(24)及び式(25)が導出できる。
上記の式(24)及び式(25)において、行列Aは、下記の式(26)を満たすn次正方行列である。
上記の式(24)及び式(25)において、x倍波成分の乗数をx1,・・・,xqとする。なお、式(24)式に示す行列Aの各項は、時刻tにおける検出信号fh(t)をフーリエ級数展開した式(15)により得られる。
式(24)及び式(25)において、合成信号f(t)の基本波成分の振幅を略1とするためには、式(23)のlに1を代入した振幅g(1)が最大となる下記の式(27)を満たす必要がある。
また、式(24)及び式(25)において、合成信号f(t)のx倍波成分の振幅を略0とするためには、式(23)のlにx倍波成分の乗数x(x1,・・・,xp)を代入した振幅g(x)が0となる下記の式(28)を満たす必要がある。
式(26)に示すように、式(24)に示す行列Aの次数nは、本実施形態において少なくとも必要なセンサHhの数に相当する。例えば、合成信号f(t)の基本波成分の振幅を略1とし、合成信号f(t)のx1倍波成分の振幅を略0とするためには、少なくともC1,S1,Cx1,Sx1に関する連立一次方程式が必要となる。すなわち、式(24)に示す行列Aの次数nは4となり、少なくとも4つのセンサHhが必要となる。
さらに、合成信号f(t)のxp倍波成分の振幅を略0とするためには、少なくともC1,S1,Cx1,Sx1,Cxp,Sxpに関する連立一次方程式が必要となる。すなわち、式(24)に示す行列Aの次数nは6となり、少なくとも6つのセンサHhが必要となる。
次に、実施形態の具体例について説明する。図2Aは、磁極対に対するセンサの具体的な配置例を示す第1図である。図2Bは、磁極対に対するセンサの具体的な配置例を示す第2図である。
ここでは、4つのセンサH1,H2,H3,H4を用いて、合成信号f(t)の基本波成分(l=x=1)の振幅を略1とし、3倍波成分(l=x=3)の振幅を略0とする例について説明する。このときの行列式は、下記の式(29)で示される。式(29)では、説明を簡潔にするため、4つのセンサH1,H2,H3,H4の基本波成分及び3倍波成分の振幅及び位相が略等しい場合の式(24)を変形した例を示している。
図2A及び図2Bでは、センサH1,H2,H3,H4からの検出信号fh(t)の位相が電気角で40deg(θ=2π/9)ずつ均等にずれて出力されるように、センサH1,H2,H3,H4が配置された例を示している。センサH1,H2,H3,H4は、センサH1,H2,H3,H4からの検出信号fh(t)の位相が電気角で40deg(θ=2π/9)ずつ均等にずれて出力されるように配置されていれば良く、例えば、図2Aに示す態様であっても良いし、図2Bに示す態様であっても良い。
図2A及び図2Bに示す例において、第1合成信号f(t)1を生成する際の第1係数をそれぞれk11,k21,k31,k41とすると、下記の式(30)が得られる。
また、図2A及び図2Bに示す例において、第2合成信号f(t)2を生成する際の第2係数をそれぞれk12,k22,k32,k42とすると、下記の式(31)が得られる。
式(30)において、C1をcos(π/3)とし、S1をsin(π/3)としている。また、式(31)において、C1をcos(−π/6)とし、S1をsin(−π/6)としている。
また、式(30)及び式(31)における行列Aの各項目は、センサHhから出力される検出信号fh(t)をフーリエ級数展開することにより得られる。具体的に、第1列の項目は、センサH1から出力される検出信号f1(t)をフーリエ級数展開することにより得られる。第2列の項目は、センサH2から出力される検出信号f2(t)をフーリエ級数展開することにより得られる。第3列の項目は、センサH3から出力される検出信号f3(t)をフーリエ級数展開することにより得られる。第4列の項目は、センサH4から出力される検出信号f4(t)をフーリエ級数展開することにより得られる。
式(30)に用いるC1,C3,S1,S3,θの各パラメータと、式(30)により算出された第1係数kh1及び第2係数kh2の算出値の一例を表1に示す。なお、表1に示す例では、行列Aの各項目を式(30)及び式(31)に示す値として算出した例を示している。
式(30)により算出された第1係数k11,k21,k31,k41を用いて、第1合成信号f(t)1を生成する。第1合成信号f(t)1の算出式を下記の式(32)に示す。これにより、基本波成分の振幅が正規化され、3倍波成分の振幅が抑制された第1合成信号f(t)1が得られる。
式(31)により算出された第2係数k12,k22,k32,k42を用いて、第2合成信号f(t)2を生成する。第2合成信号f(t)2の算出式を下記の式(33)に示す。これにより、基本波成分の振幅が正規化され、3倍波成分の振幅が抑制された第2合成信号f(t)2が得られる。
このようにして得られた第1合成信号f(t)1及び第2合成信号f(t)2は、それぞれ電気角位相が90deg異なっている。これら第1合成信号f(t)1及び第2合成信号f(t)2を用いて、例えば、下記の式(34)により角度(電気角)θEを求めることができる。
なお、ここでは、3倍波成分の振幅が抑制された第1合成信号f(t)1及び第2合成信号f(t)2を求める例を示したが、複数のx(x1,・・・,xp)倍波成分の振幅が抑制された第1合成信号f(t)1及び第2合成信号f(t)2を求めることが可能である。この場合には、上述した式(10)、式(11)、式(12)、式(13)、及び式(15)、又は、上述した式(24)、式(25)、式(26)、式(27)、及び式(28)を用いて、第1係数及び第2係数を求め、下記の式(35)及び式(36)を用いて、第1合成信号f(t)1及び第2合成信号f(t)2を得ることができる。
このように、所定倍波成分を抑制した第1合成信号f(t)1及び第2合成信号f(t)2が得られることで、回転体100の回転角度の検出精度を高めることができる。
次に、実施形態に係る角度検出装置の具体的な構成について説明する。
図3は、実施形態に係る角度検出装置の一構成例を示すブロック図である。図4は、実施形態に係る角度検出装置のセンサをモータに設けた例を示す図である。
図3に示すように、本実施形態に係る角度検出装置1は、複数のセンサH1,H2,H3,・・・,Hnと、位相差信号算出部2と、角度演算部3と、記憶部4と、を備える。記憶部4には、上述した第1係数kh1及び第2係数kh2が格納されている。
位相差信号算出部2は、各センサHhからの検出信号fh(t)が入力される。位相差信号算出部2は、上述した式(35)を用いて、第1合成信号f(t)1を算出し、上述した式(36)を用いて、第2合成信号f(t)2を算出する。これにより、所定倍波成分を抑制した第1合成信号f(t)1及び第2合成信号f(t)2が得られる。
角度演算部3は、上述した式(34)を用いて、角度(電気角)θEを演算する。これにより、モータ200(回転体100)の回転角度の検出精度を高めることができる。
図4に示す例では、モータ200を実施形態に係る角度検出装置1の角度検出対象としている。モータ200は、ステータ10と、ステータ10に対して回転可能なロータ20とを有する。ロータ20は、回転軸Xを中心に回転する。本実施形態において、モータ200は、アウターロータ型のSPMモータ(Surface Permanent Magnet Motor)である。ロータ20は、ステータ10の回転軸Xを中心とする径方向外側に配置される。以下、回転軸Xを中心とする径方向を、単に「径方向」ともいう。
ステータ10は、回転軸Xを中心とする周方向に等間隔で複数配置されるティース12と、このティース12間に設けられたスロット11とを有する。以下、回転軸Xを中心とする周方向を、単に「周方向」ともいう。ティースには、コイル(不図示)が巻回されて支持されている。
ロータ20は、円環状のロータハウジング22の内周面に、周方向に等間隔で複数配置された永久磁石21を含む。ステータ10とロータ20とは、間隙を介して対向する。
上述した構成のモータ200において、センサHh(H1,・・・,H9)は、ティース12間のスロット11の中央に設けられている。本実施形態では、上述したように、検出信号fh(t)の位相は、センサHhごとに異なっている。図4に示すモータ200において、上記を満たす位置に配置可能なセンサHhの最小数αは、スロット数s、磁極数p、係数βを用いて、下記の(37)式で示される。
係数βは、センサHhの最小数αを得るための係数(自然数)である。図4に示すモータ200は、スロット数sが18個、磁極数pが10個であることから、式(37)により、センサHhの最小数αは9個である。モータ200のスロット数sは18個であるので、最大で18個のセンサHhを設けることができるが、この場合には、電気角における検出信号fh(t)の位相が同一のセンサがそれぞれ2個ずつ存在することとなるため、検出信号fh(t)の位相が異なるセンサHhの数は9個となる。
図4に示すモータ200において、各センサHhは、モータ200の1回転中に、電気角において10周期分の検出信号fh(t)を出力する。
図5は、センサによって検出される検出信号の周波数分布の一例を示す図である。
図5に示すように、検出信号fh(t)には、基本波成分(l=1)に加えて、基本波の所定倍波のノイズ成分を含まれている。基本波の所定倍波のノイズ成分としては、図5に示すように、基本波の奇数倍波成分(l=3,5,7,・・・)が顕著である。特に、図4に示すモータ200のように、磁極間(隣り合う永久磁石21の間)の隙間が大きい場合には、検出信号fh(t)に含まれるノイズ成分が多い。
以下、図3及び図4に示す構成において、第1合成信号f(t)1及び第2合成信号f(t)2の基本波成分の振幅を略1とし、基本波の3倍波成分、5倍波成分、及び7倍波成分の振幅を略0とするための第1係数kh1及び第2係数kh2を算出する例について説明する。
本実施形態では、位相差信号算出部2が第1係数kh1及び第2係数kh2を算出する例について説明する。なお、第1係数kh1及び第2係数kh2を算出する構成部については、位相差信号算出部2に限るものではなく、例えば、位相差信号算出部2以外に第1係数kh1及び第2係数kh2を算出する構成部を具備した構成であっても良い。また、第1係数kh1及び第2係数kh2を算出する構成部を具備せず、図示しない他の装置によって第1係数kh1及び第2係数kh2を算出して記憶部4に格納する態様であっても良い。
本実施形態において、位相差信号算出部2は、モータ200の実運用前、すなわち、例えばモータ200の出荷時において、第1係数kh1及び第2係数kh2を算出し、記憶部4に格納する。
図4に示す構成では、各センサHhからの検出信号fh(t)の位相が電気角で200deg(θ=10π/9)ずつ均等にずれて出力されるように、各センサHhが配置されている。
図3及び図4に示す構成において、第1合成信号f(t)1の基本波成分の振幅を略1とし、基本波の3倍波成分、5倍波成分、及び7倍波成分の振幅を略0とする場合の行列式は、第1合成信号f(t)1を生成する際の第1係数をそれぞれk11,k21,k31,k41,k51,k61,k71,k81とすると、下記の式(38)で示される。また、図3及び図4に示す構成において、第2合成信号f(t)2の基本波成分の振幅を略1とし、基本波の3倍波成分、5倍波成分、及び7倍波成分の振幅を略0とする場合の行列式は、第2合成信号f(t)2を生成する際の第2係数をそれぞれk12,k22,k32,k42,k52,k62,k72,k82とすると、下記の式(39)で示される。式(38)及び式(39)では、説明を簡潔にするため、各センサHhから出力される検出信号fh(t)のl倍波成分の振幅alh及び相対位相blhが略等しい場合の式(24)を変形した例を示している。
式(38)及び式(39)に示すように、第1合成信号f(t)1及び第2合成信号f(t)2の基本波成分の振幅を略1とし、基本波の3倍波成分、5倍波成分、及び7倍波成分の振幅を略0とする場合の行列の次数は8となる。この場合には、8個のセンサHhが必要となる。つまり、図4に示す9個のセンサH1,H2,H3,H4,H5,H6,H7,H8,H9のうちの1つは不要となる。ここでは、センサH9以外のセンサH1,H2,H3,H4,H5,H6,H7,H8を用いている。
式(38)において、C1をcos(7π/18)とし、S1をsin(7π/18)としている。また、式(39)において、C1をcos(−2π/18)とし、S1をsin(−2π/18)としている。
また、式(38)及び式(39)における行列Aの各項目は、各センサHhから出力される検出信号fh(t)をフーリエ級数展開することにより得られる。具体的に、位相差信号算出部2は、センサH1から検出信号f1(t)を取得し、取得した検出信号f1(t)をフーリエ級数展開することにより、式(38)及び式(39)における行列Aの第1列の項目を得る。また、位相差信号算出部2は、センサH2から検出信号f2(t)を取得し、取得した検出信号f2(t)をフーリエ級数展開することにより、式(38)及び式(39)における行列Aの第2列の項目を得る。また、位相差信号算出部2は、センサH3から検出信号f3(t)を取得し、取得した検出信号f3(t)をフーリエ級数展開することにより、式(38)及び式(39)における行列Aの第3列の項目を得る。また、位相差信号算出部2は、センサH4から検出信号f4(t)を取得し、取得した検出信号f4(t)をフーリエ級数展開することにより、式(38)及び式(39)における行列Aの第4列の項目を得る。また、位相差信号算出部2は、センサH5から検出信号f5(t)を取得し、取得した検出信号f5(t)をフーリエ級数展開することにより、式(38)及び式(39)における行列Aの第5列の項目を得る。また、位相差信号算出部2は、センサH6から検出信号f6(t)を取得し、取得した検出信号f6(t)をフーリエ級数展開することにより、式(38)及び式(39)における行列Aの第6列の項目を得る。また、位相差信号算出部2は、センサH7から検出信号f7(t)を取得し、取得した検出信号f7(t)をフーリエ級数展開することにより、式(38)及び式(39)における行列Aの第7列の項目を得る。また、位相差信号算出部2は、センサH8から検出信号f8(t)を取得し、取得した検出信号f8(t)をフーリエ級数展開することにより、式(38)及び式(39)における行列Aの第8列の項目を得る。
式(38)に用いるC1,C3,C5,C7,S1,S3,S5,S7,θの各パラメータと、式(39)により算出された第1係数kh1及び第2係数kh2の算出値の一例を表2に示す。なお、表2に示す例では、行列Aの各項目を式(38)及び式(39)に示す値として算出した例を示している。
本実施形態において、位相差信号算出部2は、モータ200の出荷後、すなわち、モータ200の実運用時において、式(38)により算出された第1係数k11,k21,k31,k41,k51,k61,k71,k81を用いて、上記の式(35)により算出した第1合成信号f(t)1を生成する。これにより、基本波成分の振幅が正規化され、3倍波成分、5倍波成分、及び7倍波成分の振幅が抑制された第1合成信号f(t)1が得られる。
また、位相差信号算出部2は、式(39)により算出された第2係数k12,k22,k32,k42,k52,k62,k72,k82を用いて、上記の式(36)により算出した第2合成信号f(t)2を生成する。これにより、基本波成分の振幅が正規化され、3倍波成分、5倍波成分、及び7倍波成分の振幅が抑制された第2合成信号f(t)2が得られる。
このようにして得られた第1合成信号f(t)1及び第2合成信号f(t)2は、それぞれ電気角位相が90deg異なっている。角度演算部3は、それぞれ電気角位相が90deg異なる第1合成信号f(t)1及び第2合成信号f(t)2を用いて、上述した式(34)により角度(電気角)θEを演算する。これにより、モータ200(回転体100)の回転角度の検出精度を高めることができる。
図6は、検出信号波形の一例を示す図である。図6では、検出信号fh(t)が基本波の3倍波成分、5倍波成分、及び1/10倍波成分を含んでいる例を示している。図6に示す点線は、センサH1の検出値である検出信号f1(t)を示し、図6に示す破線は、センサH2の検出値である検出信号f2(t)を示し、図6に示す一点鎖線は、センサH9の検出値である検出信号f9(t)を示している。
例えば、図4に示すような多極対モータにおいて、偏心や着磁ムラ等の影響により、図6に示すように、検出信号fh(t)の基本波成分よりも低い周波数のノイズ成分が含まれる場合がある。
本実施形態に係る角度検出装置1では、第1合成信号f(t)1及び第2合成信号f(t)2の基本波成分よりも低い周波数のノイズ成分の振幅を略0とすることも可能である。以下、図3及び図4に示す構成において、第1合成信号f(t)1及び第2合成信号f(t)2の基本波成分の振幅を略1とし、基本波の3倍波成分、5倍波成分、及び1/10倍波成分の振幅を略0とするための第1係数kh1及び第2係数kh2を算出する例について説明する。
図3及び図4に示す構成において、第1合成信号f(t)1の基本波成分の振幅を略1とし、基本波の3倍波成分、5倍波成分、及び1/10倍波成分の振幅を略0とする場合の行列式は、第1合成信号f(t)1を生成する際の第1係数をそれぞれk11,k21,k31,k41,k51,k61,k71,k81とすると、下記の式(40)で示される。また、図3及び図4に示す構成において、第2合成信号f(t)2の基本波成分の振幅を略1とし、基本波の3倍波成分、5倍波成分、及び1/10倍波成分の振幅を略0とする場合の行列式は、第2合成信号f(t)2を生成する際の第2係数をそれぞれk12,k22,k32,k42,k52,k62,k72,k82とすると、下記の式(41)で示される。式(40)及び式(41)では、説明を簡潔にするため、各センサHhのl倍波成分の振幅alh及び相対位相blhが略等しい場合の式(24)を変形した例を示している。
式(40)に用いるC1,C3,C5,C0.1,S1,S3,S5,S0.1,θの各パラメータと、式(41)により算出された第1係数kh1及び第2係数kh2の算出値の一例を表3に示す。なお、表3に示す例では、行列Aの各項目を式(40)及び式(41)に示す値として算出した例を示している。
本実施形態において、位相差信号算出部2は、モータ200の出荷後、すなわち、モータ200の実運用時において、式(40)により算出された第1係数k11,k21,k31,k41,k51,k61,k71,k81を用いて、上記の式(35)により算出した第1合成信号f(t)1を生成する。これにより、基本波成分の振幅が正規化され、3倍波成分、5倍波成分、及び1/10倍波成分の振幅が抑制された第1合成信号f(t)1が得られる。
また、位相差信号算出部2は、式(41)により算出された第2係数k12,k22,k32,k42,k52,k62,k72,k82を用いて、上記の式(36)により算出した第2合成信号f(t)2を生成する。これにより、基本波成分の振幅が正規化され、3倍波成分、5倍波成分、及び1/10倍波成分の振幅が抑制された第2合成信号f(t)2が得られる。
このようにして得られた第1合成信号f(t)1及び第2合成信号f(t)2は、それぞれ電気角位相が90deg異なっている。角度演算部3は、それぞれ電気角位相が90deg異なる第1合成信号f(t)1及び第2合成信号f(t)2を用いて、上述した式(34)により角度(電気角)θEを演算する。これにより、モータ200(回転体100)の回転角度の検出精度を高めることができる。
図7は、第1合成信号波形及び第2合成信号波形の一例を示す図である。
図7に示すように、本実施形態において、位相差信号算出部2は、基本波成分よりも低い周波数を含む所定倍波成分を抑制した第1合成信号f(t)1及び第2合成信号f(t)2を生成することができる。
このように、実施形態に係る角度検出装置1は、基本波成分よりも低い周波数を含む所定倍波成分を抑制した第1合成信号f(t)1及び第2合成信号f(t)2を得ることにより、モータ200(回転体100)の回転角度の検出精度を高めることができる。
以上説明したように、実施形態に係る角度検出装置1は、回転体100(モータ200)の回転に応じた検出信号fh(t)を出力する複数のセンサHhと、センサHhごとに個別に設定された第1係数kh1を検出信号fh(t)に乗じて互いに加算した第1合成信号f(t)1、及び、センサHhごとに個別に設定された第2係数kh2を検出信号fh(t)に乗じて互いに加算した第2合成信号f(t)2を生成する位相差信号算出部2と、第1合成信号f(t)1及び前記第2合成信号f(t)2に基づき、回転体100の角度θEを演算する角度演算部3と、を備える。センサHhごとに検出信号fh(t)の位相が異なる。第1合成信号f(t)1の位相と第2合成信号f(t)2の位相とが互いに90deg異なっている。第1合成信号f(t)1の基本波成分の振幅が略1となり、第1合成信号f(t)1のx倍波成分(xは1を除く正の値)の振幅が略0となるように、第1係数kh1が設定されている。第2合成信号f(t)2の基本波成分の振幅が略1となり、第2合成信号f(t)2のx倍波成分の振幅が略0となるように、第2係数kh2が設定されている。
上記構成により、角度検出装置1は、互いに位相が90deg異なる第1合成信号f(t)1及び第2合成信号f(t)2の所定倍波成分を抑制することができる。これにより、回転体100(モータ200)の回転角度の検出精度を高めることができる。