JP2020045253A - セラミックス接合体 - Google Patents
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Abstract
【課題】接合部の第1の方向に略垂直な方向における強度を向上させる。【解決手段】セラミックス接合体は、第1のセラミックス部材と、第2のセラミックス部材と、両者を接合し、セラミックスとガラスとの少なくとも一方を主成分として含み、熱膨張率が第1のセラミックス部材等の少なくとも一方の形成材料の熱膨張率とは異なる材料により形成されている接合部と、を備える。第1の方向に略垂直な少なくとも1つの特定断面に、複数のセラミックス粒子と、セラミックス粒子同士の間に介在する接合部の形成材料と、を含む特定領域であって、複数のセラミックス粒子の総数に対して、円磨度が0.4以上である特定セラミックス粒子の数の割合が50%以上である特定領域、が存在している。【選択図】図5
Description
本明細書に開示される技術は、セラミックス接合体に関する。
対象物(例えば、半導体ウェハ)を保持しつつ所定の処理温度(例えば、400〜650℃程度)に加熱する加熱装置(「サセプタ」とも呼ばれる)が知られている。加熱装置は、例えば、成膜装置(CVD成膜装置やスパッタリング成膜装置等)やエッチング装置(プラズマエッチング装置等)といった半導体製造装置の一部として使用される。
一般に、加熱装置は、所定の方向(以下、「第1の方向」という)に略直交する保持面および裏面を有し、セラミックスにより形成された板状の保持体と、第1の方向に延びる柱状であり、保持体の裏面に接合され、セラミックスにより形成された柱状支持体と、保持体と柱状支持体とを接合する接合部と、を備える。保持体の内部には、抵抗発熱体が配置されており、保持体の裏面側には、抵抗発熱体に電気的に接続された複数の受電電極(電極パッド)が配置されている。また、柱状支持体内には、各受電電極に接合された電極端子が収容されている。電極端子および受電電極を介して抵抗発熱体に電圧が印加されると、抵抗発熱体が発熱し、保持体の保持面上に保持された対象物(例えば、半導体ウェハ)が例えば400〜650℃程度に加熱される。
従来から、保持体や柱状支持部材等のセラミックス部材同士を接合する接合部の接合強度を向上させるため、セラミックス部材の各接合面の中心線平均粗さ(Ra)を0.2μm以下とする技術が知られている(下記特許文献1参照)。
上述した従来の加熱装置では、セラミックス部材と接合部との間の接合強度を十分に確保できないことがあり、更なる改良の余地があった。
なお、このような課題は、加熱装置に限らず、第1のセラミックス部材と第2のセラミックス部材とが接合部によって接合されたセラミックス接合体に共通の課題である。
本明細書では、上述した課題の少なくとも一部を解決することが可能な技術を開示する。
本明細書に開示される技術は、以下の形態として実現することが可能である。
(1)本明細書に開示されるセラミックス接合体は、第1のセラミックス部材と、第2のセラミックス部材と、第1の方向において前記第1のセラミックス部材と前記第2のセラミックス部材との間に配置され、前記第1のセラミックス部材と前記第2のセラミックス部材とを接合し、セラミックスとガラスとの少なくとも一方を主成分として含み、熱膨張率が前記第1のセラミックス部材および前記第2のセラミックス部材の少なくとも一方の形成材料の熱膨張率と異なる材料により形成されている接合部と、を備えるセラミックス接合体において、前記第1の方向に略垂直な少なくとも1つの特定断面に、前記第1のセラミックス部材または前記第2のセラミックス部材を形成する複数のセラミックス粒子と、前記セラミックス粒子同士の間に介在する前記接合部の形成材料と、を含む特定領域であって、前記複数のセラミックス粒子の総数に対して、以下の式(1)で定義される円磨度が0.4以上である特定セラミックス粒子の数の割合が50%以上である特定領域、が存在している。
円磨度=Σri/(R・n)・・・(1)
ただし、
ri:前記セラミックス粒子の角部に内接する円の半径
R:前記セラミックス粒子に内接する最大円の半径
n:前記セラミックス粒子が有する角部の数
Σ:前記セラミックス粒子の角部に対する和
本セラミックス接合体によれば、第1の方向に略垂直な少なくとも1つの特定断面に、第1のセラミックス部材または第2のセラミックス部材を形成する複数のセラミックス粒子と、セラミックス粒子同士の間に介在する接合部の形成材料と、を含み、かつ、円磨度が0.4以上である特定セラミックス粒子の数の割合が50%以上である特定領域が存在する。これにより、第1の方向に略垂直ないずれの断面にも上記特定領域が存在しない構成に比べて、セラミックス部材(第1のセラミックス部材および第2のセラミックス部材の少なくとも一方)と接合部との密着性を向上させることができ、さらに、接合部の第1の方向に略垂直な方向における強度を向上させることができる。
円磨度=Σri/(R・n)・・・(1)
ただし、
ri:前記セラミックス粒子の角部に内接する円の半径
R:前記セラミックス粒子に内接する最大円の半径
n:前記セラミックス粒子が有する角部の数
Σ:前記セラミックス粒子の角部に対する和
本セラミックス接合体によれば、第1の方向に略垂直な少なくとも1つの特定断面に、第1のセラミックス部材または第2のセラミックス部材を形成する複数のセラミックス粒子と、セラミックス粒子同士の間に介在する接合部の形成材料と、を含み、かつ、円磨度が0.4以上である特定セラミックス粒子の数の割合が50%以上である特定領域が存在する。これにより、第1の方向に略垂直ないずれの断面にも上記特定領域が存在しない構成に比べて、セラミックス部材(第1のセラミックス部材および第2のセラミックス部材の少なくとも一方)と接合部との密着性を向上させることができ、さらに、接合部の第1の方向に略垂直な方向における強度を向上させることができる。
(2)上記セラミックス接合体において、前記特定領域において、前記接合部は、前記セラミックス粒子を囲みつつ複数の前記セラミックス粒子にわたって連続的に網目状に繋がっている網目状部分を含んでいる構成としてもよい。本セラミックス接合体では、特定領域において、接合部が網目状部分を含んでいるため、セラミックス部材(第1のセラミックス部材および第2のセラミックス部材の少なくとも一方)と接合部との密着性が、さらに向上し、接合部が網目状部分を含まない構成に比べて、接合部の第1の方向に略垂直な方向における強度が高くなる。また、セラミックス部材(第1のセラミックス部材、第2のセラミックス部材)と接合部との熱膨張差に起因する残留応力が緩和される。これにより、本セラミックス接合体によれば、熱膨張差に起因する接合強度の低下を抑制することができる。
(3)上記セラミックス接合体において、前記第1のセラミックス部材は、ヒータ電極を備えており、前記第2のセラミックス部材は、ヒータ電極を備えておらず、前記第1のセラミックス部材と前記接合部との境界付近における前記特定セラミックス粒子の密度は、前記第2のセラミックス部材と前記接合部との境界付近における前記特定セラミックス粒子の密度より高い構成としてもよい。本セラミックス接合体によれば、ヒータの発熱により熱膨張量が多い第1のセラミックス部材側において、熱膨張差に起因する接合強度の低下を抑制することができる。
なお、本明細書に開示される技術は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば静電チャック、真空チャック等の保持装置、サセプタ等の加熱装置、シャワーヘッド等の半導体製造装置用部品、さらには、第1のセラミックス部材と第2のセラミックス部材とが接合部によって接合されたセラミックス接合体、それらの製造方法等の形態で実現することが可能である。
A.本実施形態:
A−1.加熱装置100の構成:
図1は、本実施形態における加熱装置100の外観構成を概略的に示す斜視図であり、図2は、本実施形態における加熱装置100のXZ断面構成を概略的に示す説明図である。各図には、方向を特定するための互いに直交するXYZ軸が示されている。本明細書では、便宜的に、Z軸正方向を上方向といい、Z軸負方向を下方向というものとするが、加熱装置100は実際にはそのような向きとは異なる向きで設置されてもよい。
A−1.加熱装置100の構成:
図1は、本実施形態における加熱装置100の外観構成を概略的に示す斜視図であり、図2は、本実施形態における加熱装置100のXZ断面構成を概略的に示す説明図である。各図には、方向を特定するための互いに直交するXYZ軸が示されている。本明細書では、便宜的に、Z軸正方向を上方向といい、Z軸負方向を下方向というものとするが、加熱装置100は実際にはそのような向きとは異なる向きで設置されてもよい。
加熱装置100は、対象物(例えば、半導体ウェハW)を保持しつつ所定の処理温度(例えば、400〜650℃程度)に加熱する装置であり、サセプタとも呼ばれる。加熱装置100は、例えば、成膜装置(CVD成膜装置やスパッタリング成膜装置等)やエッチング装置(プラズマエッチング装置等)といった半導体製造装置の一部として使用される。
図1および図2に示すように、加熱装置100は、保持体10と柱状支持体20とを備える。
(保持体10)
保持体10は、所定の方向(本実施形態では上下方向)に略直交する保持面S1および裏面S2を有する略円板状の部材である。保持体10は、例えば、AlN(窒化アルミニウム)を主成分とするセラミックスにより形成されている。なお、ここでいう主成分とは、含有割合(重量割合)の最も多い成分を意味する。保持体10の直径は、例えば100mm以上、500mm以下程度であり、保持体10の厚さ(上下方向における長さ)は、例えば3mm以上、20mm以下程度である。
保持体10は、所定の方向(本実施形態では上下方向)に略直交する保持面S1および裏面S2を有する略円板状の部材である。保持体10は、例えば、AlN(窒化アルミニウム)を主成分とするセラミックスにより形成されている。なお、ここでいう主成分とは、含有割合(重量割合)の最も多い成分を意味する。保持体10の直径は、例えば100mm以上、500mm以下程度であり、保持体10の厚さ(上下方向における長さ)は、例えば3mm以上、20mm以下程度である。
図2に示すように、保持体10の内部には、保持体10を加熱する抵抗発熱体により構成されたヒータ電極50が配置されている。ヒータ電極50は、例えば、タングステンやモリブデン等の導電性材料により形成されている。ヒータ電極50の一対の端部は、保持体10の周縁側に配置されている。また、保持体10の内部には、一対の周縁側ビア導体51と、一対の導電路53と、ビア群52とが設けられている。各周縁側ビア導体51は、上下方向に延びる線状の導電体であり、保持体10の周縁側に位置している。各周縁側ビア導体51の上端は、ヒータ電極50の各端部に接続されている。各導電路53は、保持体10の径方向に延びる線状の導電体であり、各導電路53の上記径方向外側の端部に、各周縁側ビア導体51の下端が接続されている。ビア群52は、上下方向に延びる線状の導電体である複数(本実施形態では、2つ)のビア52Aを含む。各ビア52Aの上端は、各導電路53の上記径方向内側の端部に接続されている。また、保持体10の裏面S2の中央部付近には、一対の凹部12が形成されており、各凹部12内には受電電極(電極パッド)54が配置されている。各受電電極54は、保持体10の裏面S2に露出するように配置されており、受電電極54の露出部分はろう付け部56に覆われている。各ビア52Aの下端は各受電電極54に接続されている。これにより、ヒータ電極50と各受電電極54とが電気的に接続されている。
(柱状支持体20)
柱状支持体20は、上記所定の方向(上下方向)に延びる略円柱状部材である。柱状支持体20は、保持体10と同様に、例えばAlNを主成分とするセラミックスにより形成されている。柱状支持体20の外径は、例えば30mm以上、90mm以下程度であり、柱状支持体20の高さ(上下方向における長さ)は、例えば100mm以上、300mm以下程度である。
柱状支持体20は、上記所定の方向(上下方向)に延びる略円柱状部材である。柱状支持体20は、保持体10と同様に、例えばAlNを主成分とするセラミックスにより形成されている。柱状支持体20の外径は、例えば30mm以上、90mm以下程度であり、柱状支持体20の高さ(上下方向における長さ)は、例えば100mm以上、300mm以下程度である。
(接合部30)
保持体10と柱状支持体20とは、保持体10の裏面S2と柱状支持体20の上面S3とが上下方向に対向するように配置されている。柱状支持体20は、保持体10の裏面S2の中心部付近に、後述の接合材料により形成された接合部30を介して接合されている。
保持体10と柱状支持体20とは、保持体10の裏面S2と柱状支持体20の上面S3とが上下方向に対向するように配置されている。柱状支持体20は、保持体10の裏面S2の中心部付近に、後述の接合材料により形成された接合部30を介して接合されている。
図2に示すように、柱状支持体20には、保持体10の裏面S2側に開口する貫通孔22が形成されている。貫通孔22は、上下方向と略同一方向に延び、延伸方向にわたって略一定の内径を有する断面略円形の孔である。貫通孔22には、複数(本実施形態では2つ)の電極端子70が収容されている。各電極端子70の上端部は、金属ろう材(例えば金ろう材)を含む、ろう付け部56を介して受電電極54に接合されている。図示しない電源から各電極端子70、各受電電極54、ビア群52(ビア52A)を介してヒータ電極50に電圧が印加されると、ヒータ電極50が発熱し、保持体10の保持面S1上に保持された対象物(例えば、半導体ウェハW)が所定の温度(例えば、400〜650℃程度)に加熱される。
A−2.接合部30付近の詳細構成:
接合部30は、セラミックスとガラスとの少なくとも一方を主成分として含み、かつ、熱膨張率が保持体10および柱状支持体20の形成材料の熱膨張率と異なる材料により形成されている。なお、接合部30と保持体10と柱状支持体20とのそれぞれの形成材料の熱膨張率の算出方法は、次の通りである。
接合部30は、セラミックスとガラスとの少なくとも一方を主成分として含み、かつ、熱膨張率が保持体10および柱状支持体20の形成材料の熱膨張率と異なる材料により形成されている。なお、接合部30と保持体10と柱状支持体20とのそれぞれの形成材料の熱膨張率の算出方法は、次の通りである。
また、加熱装置100は、次の条件1を満たしている。
条件1:加熱装置100の上下方向(Z軸方向)に略垂直な、少なくとも1つの特定断面に、特定領域が存在している。
特定領域は、保持体10または柱状支持体20を形成する複数のセラミックス(結晶)粒子(本実施形態では、AlN粒子)と、該セラミックス粒子同士の間に介在する接合部30の形成材料と、を含む。また、特定領域では、複数のセラミックス粒子の総数に対して、以下の式(1)で定義される円磨度が0.4以上である特定セラミックス粒子の数の割合が50%以上である。
円磨度=Σri/(R・n)・・・(1)
ただし、
ri:各セラミックス粒子の角部に内接する円の半径
R:各セラミックス粒子に内接する最大円の半径
n:各セラミックス粒子が有する角部の数
Σ:各セラミックス粒子の角部に対する和
なお、特定断面は、保持体10と接合部30との境界付近、および、柱状支持体20と接合部30との境界付近の少なくとも一方に位置している。
条件1:加熱装置100の上下方向(Z軸方向)に略垂直な、少なくとも1つの特定断面に、特定領域が存在している。
特定領域は、保持体10または柱状支持体20を形成する複数のセラミックス(結晶)粒子(本実施形態では、AlN粒子)と、該セラミックス粒子同士の間に介在する接合部30の形成材料と、を含む。また、特定領域では、複数のセラミックス粒子の総数に対して、以下の式(1)で定義される円磨度が0.4以上である特定セラミックス粒子の数の割合が50%以上である。
円磨度=Σri/(R・n)・・・(1)
ただし、
ri:各セラミックス粒子の角部に内接する円の半径
R:各セラミックス粒子に内接する最大円の半径
n:各セラミックス粒子が有する角部の数
Σ:各セラミックス粒子の角部に対する和
なお、特定断面は、保持体10と接合部30との境界付近、および、柱状支持体20と接合部30との境界付近の少なくとも一方に位置している。
また、加熱装置100は、次の条件2を満たしていることが好ましい。
条件2:特定領域において、接合部30は、セラミックス粒子を囲みつつ複数のセラミックス粒子にわたって連続的に網目状に繋がっている網目状部分を含んでいる。
条件2:特定領域において、接合部30は、セラミックス粒子を囲みつつ複数のセラミックス粒子にわたって連続的に網目状に繋がっている網目状部分を含んでいる。
また、加熱装置100は、次の条件3を満たしていることが好ましい。
条件3:保持体10と接合部30との境界付近における特定セラミックス粒子の密度は、柱状支持体20と接合部30との境界付近における特定セラミックス粒子の密度より高い。
条件3:保持体10と接合部30との境界付近における特定セラミックス粒子の密度は、柱状支持体20と接合部30との境界付近における特定セラミックス粒子の密度より高い。
なお、加熱装置100は、特許請求の範囲におけるセラミックス接合体に相当し、保持体10は、特許請求の範囲における第1のセラミックス部材に相当し、柱状支持体20は、特許請求の範囲における第2のセラミックス部材に相当し、上下方向(Z軸方向)は、特許請求の範囲における第1の方向に相当する。
A−3.加熱装置100の製造方法:
加熱装置100の製造方法は、例えば以下の通りである。初めに、保持体10と柱状支持体20とを作製する。
加熱装置100の製造方法は、例えば以下の通りである。初めに、保持体10と柱状支持体20とを作製する。
保持体10の作製方法は、例えば以下の通りである。まず、窒化アルミニウム粉末100重量部に、酸化イットリウム(Y2O3)粉末1重量部と、アクリル系バインダ20重量部と、適量の分散剤および可塑剤とを加えた混合物に、トルエン等の有機溶剤を加え、ボールミルにて混合し、グリーンシート用スラリーを作製する。このグリーンシート用スラリーをキャスティング装置でシート状に成形した後に乾燥させ、グリーンシートを複数枚作製する。
また、窒化アルミニウム粉末、アクリル系バインダ、テルピネオール等の有機溶剤の混合物に、タングステンやモリブデン等の導電性粉末を添加して混練することにより、メタライズペーストを作製する。このメタライズペーストを例えばスクリーン印刷装置を用いて印刷することにより、特定のグリーンシートに、後にヒータ電極50や受電電極54等となる未焼結導体層を形成する。また、グリーンシートにあらかじめビア孔を設けた状態で印刷することにより、後にビア群52(ビア52A)となる未焼結導体部を形成する。
次に、これらのグリーンシートを複数枚(例えば20枚)熱圧着し、必要に応じて外周を切断して、グリーンシート積層体を作製する。このグリーンシート積層体をマシニングによって切削加工して円板状の成形体を作製し、この成形体を脱脂し、さらにこの脱脂体を焼成して焼成体を作製する。この焼成体の表面を研磨加工する。以上の工程により、保持体10が作製される。
また、柱状支持体20の作製方法は、例えば以下の通りである。まず、窒化アルミニウム粉末100重量部に、酸化イットリウム粉末1重量部と、PVAバインダ3重量部と、適量の分散剤および可塑剤とを加えた混合物に、メタノール等の有機溶剤を加え、ボールミルにて混合し、スラリーを得る。このスラリーをスプレードライヤーにて顆粒化し、原料粉末を作製する。次に、貫通孔22に対応する中子が配置されたゴム型に原料粉末を充填し、冷間静水圧プレスして成形体を得る。得られた成形体を脱脂し、さらにこの脱脂体を焼成する。以上の工程により、柱状支持体20が作製される。
次に、保持体10と柱状支持体20とを接合する。保持体10の裏面S2および柱状支持体20の上面S3に対して必要によりラッピング加工を行った後、保持体10の裏面S2と柱状支持体20の上面S3との少なくとも一方に、例えば希土類や有機溶剤等を混合してペースト状にした接合剤を均一に塗布した後、脱脂処理する。次いで、保持体10の裏面S2と柱状支持体20の上面S3とを重ね合わせ、ホットプレス焼成を行うことにより、保持体10と柱状支持体20とを接合する。なお、接合部30(接合剤)は、例えば、希土類とAlの複合酸化物とを含んでいることが好ましい。
ここで、保持体10と接合部30との境界付近や、柱状支持体20と接合部30との境界付近におけるセラミックス粒子の円磨度は、次のようにして調整することができる。すなわち、保持体10と柱状支持体20との接合時において、接合部30(接合剤)への加熱温度を高くするほど、また、加熱時間を長くするほど、セラミックス粒子の円磨度は高くなる。したがって、接合時の加熱温度および加熱時間の少なくとも一方を変更することにより、セラミックス粒子の円磨度の高低を調整することができる。なお、加熱温度は、1650℃以上であることが好ましく、1800℃以下であることが好ましく、加熱時間は、10分以上であることが好ましく、90分以下であることが好ましい。
保持体10と柱状支持体20との接合の後、各電極端子70を各貫通孔22内に挿入し、各電極端子70の上端部を各受電電極54に例えば金ろう材によりろう付けすることにより、ろう付け部56を形成した。以上の製造方法により、上述した構成の加熱装置100が製造される。
A−4.本実施形態の効果:
例えば、加熱装置100の上下方向(Z軸方向)に略平行なXZ断面において、保持体10や柱状支持体20を構成するセラミックス粒子と接合部の形成材料とが接して密着性が高くなると、保持体10または柱状支持体20のセラミックス粒子と接合部30の形成材料との接合強度が高くなる。しかし、これだけでは、セラミックス粒子と接合部30の形成材料との接合強度を十分に確保できないことがある。セラミックス粒子と接合部30の形成材料との上下方向に略平行な方向の接合強度が向上しても、セラミックス粒子と接合部30の形成材料との上下方向に略垂直なXY面方向における接合強度が十分に確保されないことがあるからである。従来、XY面方向におけるセラミックス粒子と接合部の形成材料との密着性に関しては考慮されていなかった。
例えば、加熱装置100の上下方向(Z軸方向)に略平行なXZ断面において、保持体10や柱状支持体20を構成するセラミックス粒子と接合部の形成材料とが接して密着性が高くなると、保持体10または柱状支持体20のセラミックス粒子と接合部30の形成材料との接合強度が高くなる。しかし、これだけでは、セラミックス粒子と接合部30の形成材料との接合強度を十分に確保できないことがある。セラミックス粒子と接合部30の形成材料との上下方向に略平行な方向の接合強度が向上しても、セラミックス粒子と接合部30の形成材料との上下方向に略垂直なXY面方向における接合強度が十分に確保されないことがあるからである。従来、XY面方向におけるセラミックス粒子と接合部の形成材料との密着性に関しては考慮されていなかった。
これに対して、以上説明したように、本実施形態の加熱装置100によれば、上下方向(Z軸方向)に略垂直な少なくとも1つの特定断面に、特定領域が存在する。特定領域は、保持体10または柱状支持体20を形成する複数のセラミックス粒子と、セラミックス粒子同士の間に介在する接合部30の形成材料と、を含む。また、特定領域は、円磨度が0.4以上である特定セラミックス粒子の数の割合が50%以上である(上記条件1)。これにより、上下方向に略垂直ないずれの断面にも上記特定領域が存在しない構成に比べて、セラミックス部材(保持体10および柱状支持体20の少なくとも一方)と接合部30との密着性を向上させることができ、さらに、接合部30の上下方向に略垂直な方向における強度を向上させることができる。
また、本実施形態では、特定領域において、接合部30は、セラミックス粒子(例えばセラミックス粒子1つずつ)を囲みつつ複数のセラミックス粒子にわたって連続的に網目状に繋がっている網目状部分を含んでいることが好ましい(上記条件2)。特定領域において、接合部30が網目状部分を含んでいるため、セラミックス部材(保持体10、柱状支持体20)と接合部30との密着性が、さらに向上し、接合部30が網目状部分を含まない構成に比べて、接合部30の上下方向(Z軸方向)に略垂直な方向における強度が高なる。また、セラミックス部材(保持体10、柱状支持体20)と接合部30との熱膨張差に起因する残留応力が緩和される。これにより、本実施形態によれば、熱膨張差に起因する接合強度の低下を抑制することができる。
また、本実施形態では、保持体10は、ヒータ電極50を備えており、柱状支持体20は、ヒータ電極50を備えていない。そして、加熱装置100は、保持体10と接合部30との境界付近における特定セラミックス粒子の密度は、柱状支持体20と接合部30との境界付近における特定セラミックス粒子の密度より高いことが好ましい(上記条件3)。これにより、本実施形態によれば、ヒータ電極50の発熱により熱膨張量が多い保持体10側において、熱膨張差に起因する接合強度の低下を抑制することができる。
以下、円磨度の算出方法等について具体的に説明する。図3は、本実施形態における加熱装置100の接合部30の周辺部分のXZ断面構成を示す模式図である。図4は、本実施形態における加熱装置100の接合部30の周辺部分のXY断面構成を示す模式図であり、図5は、図4におけるX1部分のXY断面構成を拡大して示す模式図である。また、図6は、図5における各セラミックス粒子11の円磨度に関する測定結果を示す説明図である。
条件1における上記特定断面は、例えば、次の方法により取得することができる。加熱装置100に対して、図3に示すように、接合部30のうち、上下方向(Z軸方向)に略垂直な所定の方向(例えばX方向)の中央部を通過し、かつ、上下方向に若干傾斜した平面Lで切断して得られた断面を、特定断面とする。この特定断面では、少なくとも上記所定の方向における中央部に、保持体10または柱状支持体20を形成する複数のセラミックス粒子11と、該セラミックス粒子11同士の間に介在する接合部30の形成材料31とが共存する領域が存在する。図4には、加熱装置100の特定断面の中央部が示されている。
特定断面に、上述の特定領域が存在するか否かは、特定断面において、10個以上のセラミックス粒子を含む領域を対象領域とし、該対象領域について、上記条件1を満たす場合に、該対象領域が特定領域であると判断する。例えば、図5に示す対象領域(X1部分)に含まれる各セラミックス粒子11について、該セラミックス粒子11が上述した特定セラミックス粒子であるか否かを判断する。但し、特定セラミックス粒子であるか否かの判断は、対象領域に含まれるセラミックス粒子11のうち、対象領域に全体が含まれているセラミックス粒子11(図5で数字が付されたもの)を対象とし、一部が欠けているセラミックス粒子11(図5で数字が付されていないもの)は対象外とする。
図6には、対象領域(X1部分)に含まれる18個のセラミックス粒子について、各半径の測定結果と円磨度の算出結果とが示されている。例えば、第1のセラミックス粒子11(図5中の「1」が付されたセラミックス粒子)について、角部の数(n)は、5個である。1つ目の角部に内接する円m1の半径r1は、2.9μmであり、2つ目の角部に内接する円m2の半径r2は、3.6μmであり、3つ目の角部に内接する円m3の半径r3は、3.6μmであり、4つ目の角部に内接する円m4の半径r4は、2.0μmであり、5つ目の角部に内接する円m5の半径r5は、2.3μmであった。また、第1のセラミックス粒子11に内接する最大円Mの半径Rは、9.6μmであった。この場合、第1のセラミックス粒子11の円磨度Aは、0.30であるため、第1のセラミックス粒子11は、特定セラミックス粒子に該当しない。同様に、第2のセラミックス粒子11から第18のセラミックス粒子11のそれぞれについて円磨度Aを算出した結果、第2のセラミックス粒子11から第18のセラミックス粒子11の全てが、特定セラミックス粒子に該当した。
このように、円磨度Aが高い特定セラミックス粒子は、円味を帯びる程度が高いため、特定セラミックス粒子と接合部30の形成材料31とは、互いに隙間無く接触し、その接触面積が増加するため、互いに密着性が高くなる。そして、加熱装置100の上下方向(Z軸方向)に略垂直な特定断面(XY平面)において、特定セラミックス粒子を多く含む特定領域が存在すると、接合部30の上下方向に略垂直な方向における強度が向上する。また、図4および図5に示すように、接合部30の形成材料31が、セラミックス粒子11を1つずつ囲みつつ複数のセラミックス粒子11にわたって連続的に網目状に繋がっている。このため、各セラミックス粒子11が接合部30の形成材料31から抜けにくくなるとともに、接合部30の上下方向に略垂直な方向における強度がさらに向上し、また、熱膨張差に起因する接合強度の低下を抑制できる。
B.変形例:
本明細書で開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
本明細書で開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
また、上記実施形態における加熱装置100を構成する各部材の形成材料は、あくまで例示であり、各部材が他の材料により形成されてもよい。例えば、上記実施形態における加熱装置100では、保持体10と柱状支持体20との主成分(セラミックス粒子)は、AlNであったが、例えばAl2O3(アルミナ)など、他のセラミックスであってもよい。また、保持体10の主成分と柱状支持体20の主成分とは、互いに異なる材料であってもよい。また、接合部30は、希土類とAlの複合酸化物とを含むものに限らず、要するに、樹脂ではなく、セラミックスとガラスとの少なくとも一方を主成分として含み、熱膨張率が保持体10および柱状支持体20の少なくとも一方の形成材料の熱膨張率とは異なる材料により形成されていればよい。なお、接合部30の熱膨張率が、保持体10および柱状支持体20の熱膨張率と異なるか否かは、例えば次の工程(a)〜(c)を行うことによって判定することができる。
(a)接合部30の断面のSEM観察およびEPMA(Electron Probe Micro Analyzer)、微小X線結晶構造解析(XRD)を行い、接合部30を構成する化合物の同定および構成比を調べる。
(b)接合部30を構成する化合物の熱膨張率を文献等によって調べる(文献等でも分からない場合には、サンプルを作製して、そのサンプルの熱膨張率を測定する)
(c)求めた接合部30の熱膨張率を、保持体10および柱状支持体20の熱膨張率と比較する。
(a)接合部30の断面のSEM観察およびEPMA(Electron Probe Micro Analyzer)、微小X線結晶構造解析(XRD)を行い、接合部30を構成する化合物の同定および構成比を調べる。
(b)接合部30を構成する化合物の熱膨張率を文献等によって調べる(文献等でも分からない場合には、サンプルを作製して、そのサンプルの熱膨張率を測定する)
(c)求めた接合部30の熱膨張率を、保持体10および柱状支持体20の熱膨張率と比較する。
また、上記実施形態において、加熱装置100は、上述の条件2および条件3の少なくとも一方を満たさない構成であってもよい。
また、上記実施形態における加熱装置100の構成は、あくまで例示であり、種々変形可能である。例えば、上記実施形態では、保持体10および柱状支持体20のZ軸方向視の外形が略円形であるとしているが、他の形状であってもよい。また、柱状支持体20に形成された貫通孔22に収容される電極端子は、ヒータ電極50に電気的に接続された端子に限らず、例えば、プラズマを発生させる高周波(RF)電極に電気的に接続された端子や、静電吸着のための吸着電極に電気的に接続された端子でもよい。また、上記実施形態では、受電電極54は、保持体10の裏面S2に形成された凹部12内に配置されているが、保持体10の裏面S2上に配置されているとしてもよい。要するに、受電電極は、保持体の第2の表面側に配置されていればよい。
また、上記実施形態において、ビア群52は、1つのビア52Aを含むとしてもよいし、3つ以上のビア52Aを含むとしてもよい。
上記実施形態における加熱装置100の製造方法はあくまで一例であり、種々変形可能である。
本発明は、加熱装置に限らず、静電チャック、真空チャック等の保持装置、サセプタ等の加熱装置、シャワーヘッド等の半導体製造装置用部品の製造方法にも適用可能である。要するに、本発明は、第1のセラミックス部材と第2のセラミックス部材とが接合部によって接合されたセラミックス接合体に適用可能である。
10:保持体 11:セラミックス粒子 12:凹部 20:柱状支持体 22:貫通孔 30:接合部 31:形成材料 50:ヒータ電極 51:周縁側ビア導体 52:ビア群 52A:ビア 53:導電路 54:受電電極 56:ろう付け部 70:電極端子 100:加熱装置 L:平面 M:最大円 R:半径 S1:保持面 S2:裏面 S3:上面 W:半導体ウェハ m1〜m5:円 r1〜r5:半径
Claims (3)
- 第1のセラミックス部材と、
第2のセラミックス部材と、
第1の方向において前記第1のセラミックス部材と前記第2のセラミックス部材との間に配置され、前記第1のセラミックス部材と前記第2のセラミックス部材とを接合し、セラミックスとガラスとの少なくとも一方を主成分として含み、熱膨張率が前記第1のセラミックス部材および前記第2のセラミックス部材の少なくとも一方の形成材料の熱膨張率とは異なる材料により形成されている接合部と、
を備えるセラミックス接合体において、
前記第1の方向に略垂直な少なくとも1つの特定断面に、
前記第1のセラミックス部材または前記第2のセラミックス部材を形成する複数のセラミックス粒子と、前記セラミックス粒子同士の間に介在する前記接合部の形成材料と、を含む特定領域であって、前記複数のセラミックス粒子の総数に対して、以下の式(1)で定義される円磨度が0.4以上である特定セラミックス粒子の数の割合が50%以上である特定領域、が存在している、
ことを特徴とするセラミックス接合体。
円磨度=Σri/(R・n)・・・(1)
ただし、
ri:前記セラミックス粒子の角部に内接する円の半径
R:前記セラミックス粒子に内接する最大円の半径
n:前記セラミックス粒子が有する角部の数
Σ:前記セラミックス粒子の角部に対する和 - 請求項1に記載のセラミックス接合体において、
前記特定領域において、前記接合部は、前記セラミックス粒子を囲みつつ複数の前記セラミックス粒子にわたって連続的に網目状に繋がっている網目状部分を含んでいる、
ことを特徴とするセラミックス接合体。 - 請求項1または請求項2に記載のセラミックス接合体において、
前記第1のセラミックス部材は、ヒータ電極を備えており、前記第2のセラミックス部材は、ヒータ電極を備えておらず、
前記第1のセラミックス部材と前記接合部との境界付近における前記特定セラミックス粒子の密度は、前記第2のセラミックス部材と前記接合部との境界付近における前記特定セラミックス粒子の密度より高い、
ことを特徴とするセラミックス接合体。
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