JP2020044834A - 立体造形物およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】少数生産や試作に好適で容易に製造することのできる、シート状の樹脂を所望の形状に成形された立体造形物を提供する。【解決手段】熱可塑性樹脂からなるシート状の基材1が稜線で屈曲して変形してなる立体造形物であって、平板状の基材1上に基材1の熱変形温度以上に加熱されると膨張する熱膨張層2が形成され、その表面に黒色インクで線5を印刷して、近赤外線光を照射すると、発熱した光熱変換部材5の直下で熱膨張層2が両外側へ押し出すように膨張することによって、基材1が塑性変形して線5の両側で折れ曲がって屈曲して製造される。【選択図】図8D

Description

本発明は、シート状の樹脂を成形した立体造形物、およびその製造方法に関する。
ポリ塩化ビニル(PVC)やポリエチレンテレフタレート(PET)等の熱可塑性樹脂は、平面のシート、フィルム状に成形された部材を、プレス成形法や真空成形法等によって伸長させたり折り曲げたりして、所望の立体形状の容器等に製造される(例えば、特許文献1,2参照)。また、その透明性や質感等から、箱状に成形されて包装容器等として使用される(例えば、特許文献3参照)。
特許第6166304号公報 特開2016−198969号公報 特許第5963930号公報
シートの成形には成形後の形状に合わせた金型を使用するため、試作や少数生産では数量に対して製造コストが高額となる。また、金型を製造する期間も含めると、設計後から完成まで時間を要するので、試作で仕様変更等を繰り返すと時間も費用も増大することになる。折り曲げ加工については、定規等を用いた手作業でも可能であるが、いったん折り曲げると折り目がシートに残るのでやり直すことができず、正確性を要する。また、シートの端まで折らずに所望の箇所で折り目を止めることや、曲線状の折り線を付けることが困難である。さらに、ある程度厚い等、剛性の高いシートでは、折り曲げたときにクラックを生じ易く、また、1回の折り曲げは可能でも、山折りの線を谷折りに折り直したりすると、折り目で破断する場合がある。
本発明の課題は、少数生産や試作に好適で容易に製造することのできる、シート状の樹脂を所望の形状に成形された立体造形物、およびその製造方法を提供することである。
上記課題を解決するため、本発明に係る立体造形物は、熱可塑性樹脂からなるシート状の基材が稜線で屈曲して変形してなる立体造形物であって、少なくとも前記稜線における、前記基材の屈曲して外側となっている面上に、前記熱可塑性樹脂の熱変形温度以上に加熱されると膨張する熱膨張層が被覆し、前記熱膨張層が前記稜線において膨張している構成とする。
本発明に係る立体造形物製造方法は、熱可塑性樹脂からなるシート状の基材が、稜線で屈曲して変形してなる立体造形物を製造する方法である。前記立体造形物製造方法は、所定の温度域に加熱されると膨張する熱膨張層を、熱変形温度が前記所定の温度域以下である熱可塑性樹脂からなるシート状の基材上に形成する熱膨張層形成工程と、吸収した光を熱に変換して放出する光熱変換成分を含有する印刷材料で、少なくとも一方の表面に、線を描画する印刷工程と、前記線を描画した側に、前記光熱変換成分により熱に変換される光を照射する光照射工程と、を行い、前記光照射工程が、前記線の直下における前記熱膨張層を膨張させると共に、前記基材を、膨張した前記熱膨張層を外側にして前記線で屈曲させる構成とする。または、本発明に係る立体造形物製造方法は、前記基材がさらに光を透過するものであって、前記印刷材料で線を描画する印刷工程と、前記基材の一面上に熱膨張層を形成する熱膨張層形成工程と、前記基材側に前記光を照射する光照射工程と、を行い、前記印刷工程は、前記線を、前記基材の前記一面上にまたは前記熱膨張層の前記基材側となる面上に描画する構成とする。
本発明に係る立体造形物によれば、所望の形状の包装容器等を熱可塑性樹脂シートから容易に得られる。本発明に係る立体造形物の製造方法によれば、熱可塑性樹脂シートを、金型を用意することなく容易に所望の立体形状に成形することができる。
本発明に係る立体造形物の外観図である。 図1Aに示す立体造形物の展開図であり、立体造形物の製造方法の切断工 程における平面図である。 本発明に係る立体造形物の外観図である。 図2Aに示す立体造形物の展開図であり、立体造形物の製造方法の切断工 程における平面図である。 本発明の第1の実施形態に係る立体造形物の構成を模式的に示す部分断面図 である。 本発明の第1の実施形態に係る立体造形物の材料である熱膨張層被覆樹脂シ ートの構成を模式的に示す断面図である。 立体造形物の製造に使用する光照射装置の概要を説明する断面図である。 立体造形物の製造に使用する光照射装置の概要を説明する断面図である。 本発明の第1の実施形態に係る立体造形物製造方法の流れを示すフローチャ ートである。 本発明の第1の実施形態に係る立体造形物製造方法を説明する模式図であ り、熱膨張層形成工程における断面図を示す。 本発明の第1の実施形態に係る立体造形物製造方法を説明する模式図であ り、インク受容層形成工程における断面図を示す。 本発明の第1の実施形態に係る立体造形物製造方法を説明する模式図であ り、印刷工程における断面図を示す。 本発明の第1の実施形態に係る立体造形物製造方法を説明する模式図であ り、光照射工程における断面図を示す。 本発明の第1の実施形態の変形例に係る立体造形物製造方法を説明する模式 図であり、切断工程における平面図を示す。 本発明の第1の実施形態の変形例に係る立体造形物の構成を模式的に示す 部分断面図である。 本発明の第1の実施形態の変形例に係る立体造形物の材料である熱膨張層 被覆樹脂シートの構成を模式的に示す断面図である。 本発明の第1の実施形態の変形例に係る立体造形物の材料である熱膨張層 被覆樹脂シートの構成を模式的に示す断面図である。 本発明の第1の実施形態の変形例に係る立体造形物製造方法を説明する 模式図であり、印刷工程における断面図を示す。 本発明の第1の実施形態の変形例に係る立体造形物製造方法を説明する 模式図であり、光照射工程における断面図を示す。 本発明の第2の実施形態に係る立体造形物製造方法の流れを示すフローチ ャートである。 本発明の第2の実施形態に係る立体造形物製造方法を説明する模式図で あり、熱膨張層形成工程における断面図を示す。 本発明の第2の実施形態に係る立体造形物製造方法を説明する模式図で あり、印刷工程における断面図を示す。 本発明の第2の実施形態に係る立体造形物製造方法を説明する模式図で あり、貼合工程における断面図を示す。 本発明の第2の実施形態に係る立体造形物製造方法を説明する模式図で あり、光照射工程における断面図を示す。 本発明に係る立体造形物の外観図である。 図16Aに示す立体造形物の展開図である。 本発明の第3の実施形態に係る立体造形物の構成を模式的に示す部分断面 図である。 本発明の第3の実施形態に係る立体造形物の材料である熱膨張層被覆樹脂 シートの構成を模式的に示す断面図である。 立体造形物の製造に使用する光照射装置の概要を説明する断面図である。 本発明の第3の実施形態に係る立体造形物製造方法を説明する模式図で あり、印刷工程における断面図を示す。 本発明の第3の実施形態に係る立体造形物製造方法を説明する模式図で あり、光照射工程における断面図を示す。 本発明の第3の実施形態の変形例に係る立体造形物製造方法を説明する模 式図であり、印刷工程における断面図を示す。 本発明の第4の実施形態に係る立体造形物製造方法を説明する模式図で あり、印刷工程における断面図を示す。 本発明の第4の実施形態に係る立体造形物製造方法を説明する模式図で あり、光照射工程における断面図を示す。 本発明の第4の実施形態の変形例に係る立体造形物の材料である熱膨張層 被覆樹脂シートの構成を模式的に示す断面図である。 本発明の第4の実施形態の変形例に係る立体造形物の構成を模式的に示す 部分断面図である。 本発明の第4の実施形態の変形例に係る立体造形物の材料である熱膨張層 被覆樹脂シートの構成を模式的に示す断面図である。 本発明の第4の実施形態の変形例に係る立体造形物製造方法を説明する 模式図であり、印刷工程における断面図を示す。 本発明の第4の実施形態の変形例に係る立体造形物製造方法を説明する 模式図であり、光照射工程における断面図を示す。 立体造形物の製造に使用する光照射装置の概要を説明する外観図である。 本発明の第5の実施形態に係る立体造形物製造方法を説明する模式図であ り、切断工程における平面図を示す。 本発明の第5の実施形態に係る立体造形物製造方法を説明する模式図であ り、切断工程における平面図を示す。
以下、本発明を実施するための形態を、各図を参照して詳細に説明する。ただし、以下に示す形態は、本実施形態の技術思想を具現化するための配線板等を例示するものであって、以下に限定するものではない。図面に示す部材は、説明を明確にするために、大きさや位置関係等を誇張していることがあり、また、形状を単純化していることがある。また、以下の説明において、同一のまたは同質の部材や工程については、同一の符号を付し、説明を適宜省略する。
本発明に係る立体造形物の構成について、図1A,1B、図2A,2B、および図3を参照して説明する。図1Aおよび図2Aは本発明に係る立体造形物の外観図であり、図1Bおよび図2Bはそれぞれの立体造形物の展開図である。図3は、本発明の第1の実施形態に係る立体造形物の構成を模式的に示す部分断面図である。
〔シート成形品〕
図1Aに示すように、シート成形品(立体造形物)11は、外形が高さの低い正四角柱の箱体であり、図1Bに示す平面視形状に切り出された平板状のシートを、同図の実線(光熱変換部材5)を折り線として折り曲げ、組み立てられてなる。なお、本明細書において、シート成形品とは、一様な厚さの平板状のシートを折り曲げたり湾曲させたりして立体的な外形とした物品を指す。前記シートは、剛性とある程度の可撓性を有し、すべての折り線で山折り(または谷折り)の折り目が付いている。シート成形品11は、図1Bにおける中央の正方形が底面で、その4辺にそれぞれ連続する長方形が側面であり、各側面の底面と対向する側に連続する略三角形が4面で天面(蓋)を構成する。さらに、各側面の他の1辺に連続した小さな四角形がフラップを構成し、隣の側面との間に間隙を生じないように、その内面側へ折り込まれる。シート成形品11は、各折り線で直角に折り曲げて、蓋を構成する4面の略三角形の頂点に連続した略円形の突起部を互いにかみ合わせることで、箱体に固定される。
図2Aに示すように、シート成形品(立体造形物)12は、ピロー型と称される4面の曲面(柱面)で構成された箱体であり、図2Bに示す平面視形状に切り出された平板状のシートを、シート成形品11と同様に、同図の実線(光熱変換部材5)を折り線として折り曲げ、組み立てられてなる。シート成形品12は、外側へ膨らむように湾曲した対向する2面の凸面(底面および天面)と、内側へ凹むように湾曲した対向する2面の凹面(側面)と、からなる。図2Bに示すように、底面および天面は、平行に対向する直線状の2辺と内側に突出した円弧状の2辺とからなり、直線状の1辺で連続している。天面の直線状の他の1辺には重ね代(マージン)1mが連続し、前記1辺の中央に切込み1cが形成されている。一方、底面の直線状の他の1辺の中央には、切込み1cの長さに合わせたツメが連続する。側面は、円弧状の2辺からなる木の葉型(凸レンズ型)であり、底面と天面の両方に円弧状の2辺でそれぞれ連続し、底面側の側面には指かけとして半円状の切欠けが形成されている。シート成形品12は、重ね代1mを内側に折り込んで切込み1cに外側からツメを差し込み、底面と天面の直線状の辺同士を接続して筒状に固定する。このとき、底面側の側面の外側に天面側の側面を重ね合わせる。シート成形品11,12は、稜線に折り癖が付いていて、また、糊付け等によらずに立体形状に固定されるので、手作業で簡易に組み立てられてギフトボックス等の包装容器とすることができる。
〔第1の実施形態〕
本発明の第1の実施形態に係るシート成形品11,12(適宜まとめて、シート成形品11)は、図3に示すように、基材1と、その稜線の外側の面に積層された熱膨張層2とからなり、稜線上において熱膨張層2が膨れている。本実施形態に係るシート成形品11は、図4に示す熱膨張層被覆樹脂シート10から製造される。
〔熱膨張層被覆樹脂シート〕
シート成形品11の成形前である熱膨張層被覆樹脂シート10の構成について、図4を参照して以下に説明する。図4は、本発明の第1の実施形態に係る立体造形物の材料である熱膨張層被覆樹脂シートの構成を模式的に示す断面図である。熱膨張層被覆樹脂シート10は、一様な厚さの平板状の部材であり、それぞれ均一な厚さの基材1、熱膨張層2、剥離層31、インク受容層4を順に積層してなる。熱膨張層被覆樹脂シート10は、表側の面すなわちインク受容層4に光熱変換部材5を構成する黒色インクを印刷されるための被印刷物である。したがって、熱膨張層被覆樹脂シート10は、シート成形品11を製造する際に光熱変換部材5を形成するための印刷機に対応した寸法(定形サイズ)とし、シート成形品11(12)の展開形状(図1B、図2B参照)以上の寸法であればよく、例えばA3用紙サイズである。
(基材)
基材1は、シート成形品11の主たる要素であり、シート成形品11を箱体としてその形状を保持するための剛性を有し、かつ可撓性を有するシート状の部材である。基材1は、シート成形品11の成形前(熱膨張層被覆樹脂シート10)においては平板状であり、シート成形品11においては、すべての稜線で山折り(または谷折り)の折り癖が付けられている。基材1は、熱可塑性樹脂からなり、具体的には、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)等が挙げられ、無延伸フィルムや二軸延伸フィルムに形成される。基材1はさらに、顔料等の着色剤を含有して、所望の色に着色されていてもよい。基材1は、前記の剛性を有する厚さとし、一方で、厚いほど屈曲させることが困難となり、また、可撓性が低くなって曲面に形成し難くなる。基材1は、適度な剛性と可撓性を有するように、材料に応じて、成形前の厚さが0.2〜0.5mmであることが好ましい。
(熱膨張層)
熱膨張層2は、所定の温度域(膨張温度域)に加熱されると膨張する部材であり、後記するように、シート成形品11の製造過程で線状に局所的に膨張することによって、基材1に荷重をかけて塑性変形により屈曲させる。このような熱膨張層2は、公知の熱膨張性シートに適用される、熱膨張性のマイクロカプセルを含有し、熱可塑性樹脂をバインダとして、シート成形品11の成形前(熱膨張層被覆樹脂シート10)において均一な厚さt0に形成された膜である。熱膨張層2はさらに、酸化チタン等の白色顔料や、黒色以外の(カーボンブラックを含有しない)顔料を含有して、所望の色に着色されていてもよい。マイクロカプセルは、熱可塑性樹脂で殻が形成され、揮発性溶媒を内包し、加熱されて膨張温度域に到達すると、加熱温度、さらには加熱時間に応じた大きさに膨張する。熱膨張層2は、マイクロカプセルの配合等によっては、最大で膨張前の体積の10倍程度に膨張する。熱膨張層2は、熱可塑性樹脂やマイクロカプセル内の揮発性溶媒の選択によって、膨張温度域の下限値(膨張開始温度TEs)を約70℃の低温から300℃近い高温まで適宜設計することができる。
本発明においては、基材1を構成する熱可塑性樹脂の熱変形温度TDが、熱膨張層2の膨張温度域内またはそれよりも低い温度となるように設計され、本実施形態においては、熱膨張層2の膨張開始温度TEs以下であることが好ましく、膨張開始温度TEs未満であることがさらに好ましい。なお、熱可塑性樹脂の熱変形温度TDは、低荷重における温度が好ましい。ただし、熱膨張層2の膨張開始温度TEsが基材1の熱変形温度TDに対して高過ぎると、基材1が、熱膨張層2と共にその膨張温度域に加熱された際に、過剰に軟化して、薄肉化し、さらには溶融して孔が開いたり破れたり、装置に溶着したりする。また、加熱が完了して自然冷却等によって熱膨張層2の膨張の進行が停止した後に、基材1が、自重等によって意図しない塑性変形を生じる虞がある。具体的には、熱膨張層2の膨張温度域内に設定した加熱温度(最高温度)、好ましくはマイクロカプセルの膨張率が最大となる温度(最大膨張温度TEmax)において、基材1が結晶性樹脂からなるのであれば融点未満であり、シート(膜)形状を維持しつつ塑性変形容易な状態である。すなわち、後記製造方法で説明するように、同程度の温度に加熱されたとき、熱膨張層2が膨張、変形する荷重によって基材1が屈曲させられる。そのために、基材1を構成する熱可塑性樹脂の熱的性質に応じて、熱膨張層2について、膨張温度域を設定して材料を調製することが好ましい。
熱膨張層2は、成形前の厚さ(初期厚さ)t0が厚いほど、膨張による体積の増加量(膨張量)が大きいので変形によって基材1に作用する荷重が高く、基材1を屈曲させ易い。一方で、熱膨張層2は、初期厚さt0が厚いと、膨張量が大きいので、シート成形品11において稜線上の膨らみが大きく、稜線が浮き上がって目立つことになり、また、シート成形品11の製造過程で、熱が基材1に伝播し難くなる。具体的には、熱膨張層2の初期厚さt0は、50〜200μmであることが好ましく、さらに、基材1の厚さ等に応じて設計することが好ましい。
熱膨張層2の局所的な膨張は、熱膨張層2への局所的な加熱によるものであり、後記製造方法で説明するように、熱膨張層被覆樹脂シート10の表面に付着させた黒色インクからなる光熱変換部材5が、照射された光を変換して熱を放出することによって行われる。
(剥離層)
剥離層31は、シート成形品11の製造過程で、熱膨張層被覆樹脂シート10の表面に線状に印刷された黒色インクからなる光熱変換部材5を、最上層のインク受容層4と共に除去するために、必要に応じて設けられ、すなわちその下地である熱膨張層2から剥離可能な構成とする。また、剥離層31は、形成時に、熱膨張層2を溶解させる有機溶媒等を含有せず、熱膨張層2の膨張開始温度TEs以上の加熱を要しない材料からなる。剥離層31は、シート成形品11の製造過程で、熱膨張層被覆樹脂シート10への光照射が完了するまで表面にインク受容層4を固定していればよく、例えば、弾性が低く、光照射の完了後に、熱膨張層2の上面(剥離層31との界面)が伸長、変形する際に、破断したり、剥離したりしてもよい。また、剥離層31は、所定温度以上に加熱されることによって粘着強度が低下する熱剥離性の接着剤を適用してもよい。前記所定温度は、熱膨張層2の膨張開始温度TEs未満であり、熱膨張層被覆樹脂シート10への光照射による、光熱変換部材5の付着してない領域における加熱温度である。剥離層31は、例えば塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体等の、公知の易剥離性の接着剤を適用することができ、厚さが約1μm〜数μmに形成されることが好ましい。また、剥離層31は、これらの接着剤に樹脂フィルムを積層した構造でもよい。すなわち、熱膨張層2の表面に接着剤を塗布して、樹脂フィルムを貼り付ける。このような構造とすることにより、シート成形品11の製造過程でインク受容層4を効率的に除去することができる。樹脂フィルムは、厚さが10〜数十μm程度のものが好ましく、食品包装用等に市販されている公知のフィルムを適用することができる。
(インク受容層)
インク受容層4は、熱膨張層2が一般に疎水性で膨張前においてインクを付着させ難いことから、光熱変換部材5を構成する黒色インクを付着させるために、熱膨張層被覆樹脂シート10の最表面に設けられる。インク受容層4は、一般的なインクジェットプリンタ印刷用紙に使用されるものが適用され、空隙にインクを吸収させる多孔質のシリカ、アルミナ(空隙型)や、膨潤してインクを吸収する高吸水性ポリマー(膨潤型)等からなり、材料等に応じて10〜数十μm程度の厚さに形成される。
〔シート成形品の製造方法〕
(製造装置)
本発明に係るシート成形品の製造に使用する装置について簡潔に説明する。シート成形品11の材料である熱膨張層被覆樹脂シート10の製造には、基材1上に、膨張前の熱膨張層2、剥離層31、およびインク受容層4を形成するそれぞれの塗布装置、さらに必要に応じて、熱膨張層被覆樹脂シート10を定形サイズに加工するために、紙等を断裁する公知の断裁機が使用される(図示省略)。シート成形品11の製造には、熱膨張層被覆樹脂シート10の表面に黒色インクで光熱変換部材5を印刷する印刷機(図示省略)と、熱膨張層被覆樹脂シート10をシート成形品11の展開形状に切り出す加工具(図示省略)と、熱膨張層被覆樹脂シート10に近赤外線を照射することにより光熱変換部材5を加熱して熱膨張層2を膨張させる光照射装置7(図5参照)と、が使用される。
塗布装置は、塗料をシート状の部材に塗布して均一な厚さの塗膜を形成する装置であり、バーコーター、ローラー、スプレー等の方式による公知の装置を適用することができ、熱膨張層2を形成する装置は特に、均一な厚塗りに好適なバーコーター方式のものが好ましい。
印刷機は、光熱変換部材5を黒色インクで印刷する印刷機であり、オフセット、インクジェット等の公知の装置から印刷品質等に対応したものを選択することができ、特に、少量生産に好適なインクジェット式が好ましい。また、印刷機は、被印刷物である熱膨張層被覆樹脂シート10の寸法および厚さに対応可能な仕様とし、さらに、被印刷物が熱膨張層2の膨張開始温度TEs以上に加熱されない方式とする。
加工具は、熱膨張層被覆樹脂シート10を、シート成形品11の展開形状(図1B参照)に切断する工具である。具体的には、鋏やカッターナイフのような刃物または打抜き機、あるいは電動糸鋸等、熱膨張層被覆樹脂シート10の剛性や厚さ等に対応し、さらに非加工材が熱膨張層2の膨張開始温度TEs以上に加熱されないような公知の工具を使用する。
光照射装置7は、熱膨張層被覆樹脂シート10の光熱変換部材5を形成した側の面(印刷面)に光を照射して、熱膨張層2を加熱させる装置である。以下、光照射装置について、図5および図6を参照して簡潔に説明する。図5および図6は、シート成形品の製造に使用する光照射装置の概要を説明する断面図である。
図5に示すように、光照射装置7は、光照射部71、冷却器72、防護板73、および搬送機構8を備える。光照射部71は、被処理物(切り出された熱膨張層被覆樹脂シート10)に光を照射する光照射装置7における主要部であり、光源7aおよび反射板7bで構成される。光照射装置7においては、光照射部71は、被処理物の上面に光を照射するように、被処理物を搬送する搬送機構8の上方に設けられ、光照射装置7で対応し得る被処理物の搬送幅方向(図5の紙面垂直方向)の全長(全幅)にわたって光を照射する構造とする。光源7aは、光熱変換部材5によって熱に変換される近赤外線を含む光を放射し、例えばハロゲンランプが適用される。反射板7bは、光源7aから被処理物へ光を効率的に照射するために、略半円柱の柱面形状の曲面に形成されて内側に鏡面を有し、光源7aの被処理物と対向する側の反対側、すなわち上側を覆う。このような光照射部71は、熱膨張層2を厚口の紙等に積層してなる熱膨張性シートから表面に凹凸を有する立体造形物を形成するための公知の装置の部品を適用することができる。冷却器72は、空冷方式のファンや水冷方式のラジエータ等であり、反射板7bの近傍に設けられる。防護板73は、光照射部71の直下全体に水平に配置された平板材であり、被処理物が搬送経路から浮き上がった場合に反射板7bや光源7aに接触することを防止するために、また、被処理物が光源7aに近付くことで過剰に発熱することを防止するために、必要に応じて設けられる。防護板73は、光照射部71からの光を遮らないように、光(近赤外線)の透過率の高い、例えばガラス板が適用される。
搬送機構8は、被処理物を一定速度で水平な一方向に搬送し、被処理物の全体(搬送方向長)を、少なくとも光照射部71から光を照射される領域(光照射領域)、すなわち光照射部71の直下を完全に通過させる距離だけ移動させる。搬送機構8は、例えばベルトコンベアであり、ベルト81、ヘッドプーリ(ドライブプーリ)82、テールプーリ83、およびヘッドプーリ82を回転駆動させるモータ(図示省略)等で構成される。被処理物を上に載置するベルト81は、被処理物である熱膨張層被覆樹脂シート10において熱を面方向に伝播させないように、熱伝導率の低いゴム等からなる。
また、光照射装置7は、光照射部71を上下反転させて、被処理物(熱膨張層被覆樹脂シート10)の下面に光を照射することもできる。この場合には、光照射部71は、搬送機構8の下、または上側のベルト81の下に配置されるので、ベルト81は、光照射部71からの光を遮らないように透光性部材を適用する。このような光を透過するベルトは、例えば、高耐熱性の樹脂を含浸させたガラスクロスで形成され、製品の外観検査等に使用されるベルトコンベアのものを適用することができる。
搬送機構8は、ベルトコンベアに限られず、例えばローラコンベアと、被処理物を載置する稼働型のステージを備えてもよい(後記第3の実施形態参照)。または、搬送機構8は、ラックとピニオンギアによる方式やボールねじ方式のような公知の直動機構でもよく、光照射領域を避けて配置され、ステージの縁に接続する。また、搬送機構8は、被処理物ではなく、光照射部71を一方向に移動させる直動機構とすることもできる。また、光照射装置7は、搬送機構8を備えず、光照射部71が、多数の光源7aを配列して備えて面状に光を照射する構成とし、被処理物の上面または下面の全体に同時に光を照射することもできる。
あるいは、図6に示すように、光照射装置7Aは、光照射部71、冷却器72、ステージ74、搬入案内板75、押さえローラ76、搬送機構8Aおよび搬送機構8Bを備える。光照射部71および冷却器72は、光照射部71が上方へ光を照射するために、上下を反転させて配置されていること以外は、光照射装置7と同様の構造である。ステージ74は、被処理物を載置する平板状の部材であり、光照射部71の直上全体およびその後方にわたって水平に配置される。ステージ74は、光照射による被処理物の変形を妨げないように、光照射領域の前端まで設けられる。ステージ74は、下側の光照射部71からの光が被処理物の下面に照射されるように、光の透過率が高く、また、光照射装置7のベルト81と同様に熱伝導率の低い材料からなり、例えばガラス板が適用される。搬入案内板75は、供給された被処理物を支持する水平な平板状の部材であり、搬送機構8Aによってステージ74上に案内するために、ステージ74の後側に設けられる。押さえローラ76は、被処理物の上側、光照射領域の前端近傍に配置され、被処理物がステージ74から浮き上がって光照射部71から遠ざかることのないように上から押さえるために、必要に応じて設けられる。押さえローラ76は、被処理物が接触してもその搬送を妨げないように、搬送幅方向の軸で回転自在に支持されている。
搬送機構8Aは、被処理物を一定速度で水平な一方向に搬送して、光照射領域を通過させる。搬送機構8Aは、印刷機等の搬送機構に適用されるシートローダであり、主搬送ローラ84、搬送ローラ85,85、およびこれらを回転駆動させるモータ(図示省略)等で構成される。主搬送ローラ84は、ステージ74の上側に配置され、被処理物を上からステージ74に押さえ付けて摺動させながら搬送する。主搬送ローラ84は、被処理物の光照射による変形を妨げないように、光照射領域における搬送方向中心またはその後方寄りに配置されることが好ましい。搬送ローラ85,85は、上下一組で被処理物を両面から挟持して、搬入案内板75上からステージ74上に搬送する。主搬送ローラ84および搬送ローラ85,85は、被処理物の平面視形状、すなわちシート成形品11の展開形状にかかわらず、一方向に搬送するように、搬送幅方向全体(全幅)にわたって設けられている。
搬送機構8Bは、処理(光照射)の完了した被処理物を円滑に光照射領域から搬出するために、必要に応じて設けられ、ステージ74の前側近傍の、ステージ74よりも下方に配置される。搬送機構8Bは、例えば、光照射装置7(図5参照)の搬送機構8と同様のベルトコンベアである。
(シート成形品の製造方法)
第1の実施形態に係るシート成形品の製造方法について、図7、図8A〜8D、ならびに適宜図1〜3を参照して説明する。図7は、本発明の第1の実施形態に係る立体造形物製造方法の流れを示すフローチャートである。図8A〜8Dは、本発明の第1の実施形態に係る立体造形物製造方法を説明する模式図であり、図8Aは熱膨張層形成工程、図8Bはインク受容層形成工程、図8Cは印刷工程、図8Dは光照射工程、のそれぞれにおける断面図を示す。図7に示すように、本実施形態に係るシート成形品の製造方法は、熱膨張層被覆樹脂シート10を製造する熱膨張層被覆樹脂シート製造工程S10と、印刷工程S21と、切断工程S23と、光照射工程S24と、インク除去工程S25と、を順に行う。また、熱膨張層被覆樹脂シート製造工程S10は、熱膨張層形成工程S11と、剥離層形成工程S12と、インク受容層形成工程S13と、を順に行い、さらにその後に必要に応じて、断裁工程S14を行う。
熱膨張層形成工程S11において、図8Aに示すように、基材1の一面上(表側)に熱膨張層2を形成する。基材1は、断裁前であり、塗布装置に対応した大きさの、例えば長尺のロール状である。熱膨張性のマイクロカプセル、白色顔料、および熱可塑性樹脂溶液を混合してスラリーを調製し、塗布装置でスラリーを基材1に塗布し、乾燥させ、さらに必要に応じて重ね塗りを行って、一定の厚さt0の熱膨張層2を形成する。なお、図8A〜8D、および後記のその他の立体造形物製造方法を説明する断面図においては、熱膨張層2を、マイクロカプセルを模したドットパターンで表し、膨張の程度をドット(円)径の大小で表す。
剥離層形成工程S12において、熱膨張層2上に剥離層31を形成する(図8B参照)。そして、インク受容層形成工程S13において、図8Bに示すように、剥離層31上にインク受容層4を形成する。これらの工程S12,S13は、剥離層31、インク受容層4のそれぞれの材料を塗布装置で塗布し、乾燥させて、所定の厚さに形成する。
断裁工程S14において、基材1およびその上の熱膨張層2、剥離層31、インク受容層4を切断して、後続の印刷工程S21で使用する印刷機に対応した寸法の熱膨張層被覆樹脂シート10(図4参照)を得る。
印刷工程S21において、図8C、および図1Bまたは図2Bに示すように、熱膨張層被覆樹脂シート10の表面のインク受容層4上に黒色インクで線を印刷して光熱変換部材5を形成する。なお、図8C,8D、および後記の断面図は、線(光熱変換部材5)に垂直な断面を示す。ここで、光熱変換部材について説明する。
光熱変換部材5は、熱膨張層被覆樹脂シート10の表面に線状に形成される黒色パターンであり、この線で基材1を内側にして屈曲してシート成形品11が形成される。本実施形態では、光熱変換部材5は、基材1に対して熱膨張層2の側の表面に形成されるので、山折り線に該当する。光熱変換部材5は、特定の波長域の光、例えば近赤外線(波長780nm〜2.5μm)を吸収して、熱に変換して放出する部材であり、具体的にはカーボンブラックを含有する一般的な印刷用の黒色(K)インクからなる。光熱変換部材5は、光を照射されると熱を放出して、熱膨張層2および基材1を加熱し、熱膨張層2を膨張させ、また、基材1を塑性変形可能にする。また、印刷工程S21においては、光熱変換部材5を、山折り線だけでなく、後続の切断工程S23のための切取り線となる輪郭線(図1B、図2Bの太線)を印刷してもよい。なお、本明細書において、「光」とは、別途記載のない限り、光熱変換部材5のカーボンブラックによって熱に変換される近赤外線(近赤外光)とする。また、熱に変換されるのであれば光に限られず、電波等を含めた電磁波を適用し得る。
光熱変換部材5は、カーボンブラックの濃度が高いほど、すなわち色が濃い(黒っぽい)ほど光を照射されたときの発熱温度が上昇するので、後続の光照射工程S24で熱膨張層2および基材1を適切な温度に加熱するような濃度(黒色濃度)に調整される。また、光熱変換部材5は、線幅(図における横方向長)が太いほど、熱膨張層2が膨張する領域が広いので膨張量(体積の増分)が大きく、熱膨張層2が基材1に作用する荷重を高くしてより大きな角度で屈曲させることができる。光熱変換部材5は、線幅が十分に太ければ、黒色濃度がある程度淡くても、基材1を屈曲させることができる。ただし、光熱変換部材5の線幅が過剰に太いとシート成形品11の稜線が低い曲率となって丸みを帯びて、さらには稜線が二重線となる。反対に、光熱変換部材5の線幅が細過ぎると、熱膨張層2の膨張量が不足し、また、基材1の加熱される領域が狭く、基材1を屈曲させることができず、さらには、黒色濃度が高くてもカーボンブラックの絶対量が不足して、熱膨張層2が膨張しない。基材1が厚いほど、作用する荷重が高くなるように、また、厚さ方向全体に熱が光熱変換部材5から伝播するように、光熱変換部材5の黒色濃度を高く、線幅を太く設計する。また、後続の光照射工程S24において、光の出力が高く、また、照射時間が長いと、熱膨張層2の膨張量が増大する。したがって、光熱変換部材5は、基材1の厚さや光の照射条件等に応じて、黒色濃度と併せて線幅を設定されることが好ましい。さらに、求める屈曲角に応じて、線幅や黒色濃度を変化させてもよい。なお、前記の輪郭線を印刷する場合には、視認可能な範囲で、熱膨張層2が膨張開始温度TEs以上に加熱されない黒色濃度(灰色)や線幅に印刷する、または、切断工程S23で輪郭線の内側で切断して除去する。
切断工程S23において、光熱変換部材5を形成した熱膨張層被覆樹脂シート10を、図1B(または図2B)に太線で示す輪郭線で切断して、シート成形品11の展開形状に切り出す。
光照射工程S24において、切断した熱膨張層被覆樹脂シート10を、光照射装置7(7A)で、光熱変換部材5を印刷した側の面(表面)に光を照射する。熱膨張層被覆樹脂シート10が搬送機構8(8A)によって搬送されて光熱変換部材5を印刷された部分が光照射領域に進入し、光が光熱変換部材5に入射、吸収されると熱に変換されて光熱変換部材5が発熱し、熱膨張層2が加熱され、さらに熱が熱膨張層2の表面から厚さ方向に伝播して基材1が加熱される。熱膨張層2は、膨張開始温度TEs以上に到達した部分が発泡し、線状の光熱変換部材5の直下から線を中心に四方へ膨張しようとし、図8Dに白抜き矢印で示すように主に障壁のない表面へ膨張し、さらに熱膨張層2内で線幅方向に外側へ押し出すように膨張する。このとき、基材1が熱変形温度TD以上に到達していると、同図に白抜き矢印で示すように、熱膨張層2の外側へ押し出そうとする力が基材1に作用し、基材1が塑性変形することによって熱膨張層被覆樹脂シート10が線(光熱変換部材5)の両側で基材1の側へ折れ曲がって屈曲する。熱膨張層被覆樹脂シート10の光熱変換部材5を印刷された部分が光照射領域から退出し、この部分への光の照射が停止して一定時間(短時間)経過すると、光熱変換部材5によって加熱されていた基材1が熱変形温度TD未満に冷却されることによって、この光熱変換部材5を印刷された部分における熱膨張層被覆樹脂シート10の変形が完了する。熱膨張層被覆樹脂シート10は、基材1が熱変形温度TD以上であり、かつ熱膨張層2の膨張が進行しているときに、次第に折れ曲がって屈曲角が漸増する。したがって、熱膨張層2の膨張が飽和しない限り、光の照射時間が長いほど、稜線の屈曲角が大きくなる。光の照射時間は、光照射装置7の搬送速度によって調整することができる。
なお、本実施形態において、上から光を照射する光照射装置7を使用した場合、熱膨張層被覆樹脂シート10は表面を上に向けて処理され、図5に示すように、稜線が山折りとなって浮き上がる。一方、下から光を照射する光照射装置7Aを使用した場合、熱膨張層被覆樹脂シート10は表面を下に向けて処理され、図6に示すように、稜線が谷折りとなって端が浮き上がる。
熱膨張層2が膨張開始温度TEsに到達した時点で、基材1が熱変形温度TD以上に到達していることが好ましい。熱膨張層2は、膨張する際に基材1が熱変形温度TD未満であると、表面側へ偏って膨張するので、線幅方向への膨張分が少なくなり、その後に基材1が熱変形温度TDに到達しても、基材1に作用する荷重が低くなって、屈曲角が小さくなる。本実施形態においては、発熱した光熱変換部材5によって、基材1よりも先に熱膨張層2が昇温するので、前記したように、熱膨張層2の膨張開始温度TEsが基材1の熱変形温度TDよりも高いことが好ましい。また、熱膨張層2の加熱温度(最高温度)は、最大膨張温度TEmax(TEs+30〜50℃程度)近傍、具体的には(TEmax+5℃)以下とすることが好ましい。そのために、光熱変換部材5は、TEs以上かつTD以上に発熱するように黒色濃度を設計され、好ましくは、TEmax近傍に発熱する黒色濃度を設計される。
また、熱膨張層被覆樹脂シート10が光照射領域で屈曲すると、熱膨張層被覆樹脂シート10表面の光熱変換部材5と光源7aとの距離が変化するために、設計した温度に加熱されない場合がある。一方、光を照射されて光熱変換部材5が発熱してから、熱が熱膨張層2および基材1に伝播して、膨張、屈曲を開始するまでにある程度時間がかかる。そこで、光照射工程S24においては、熱膨張層被覆樹脂シート10が光照射装置7(7A)の光照射領域を通過した以後に屈曲し始めることが好ましい。光熱変換部材5が必要な温度にまで発熱するように光を十分な時間照射しつつ、前記したタイミングで熱膨張層被覆樹脂シート10が屈曲するように、光照射装置7の光源7aの出力や搬送速度等を設定する。また、熱膨張層被覆樹脂シート10の搬送方向は、切断した熱膨張層被覆樹脂シート10(シート成形品11の展開形状)が光照射装置7(7A)の搬送幅内に収まれば特に規定されないが、シート成形品11の1辺の稜線を形成するための光熱変換部材5の搬送方向長が小さいことが好ましい。そのため、シート成形品11については、図1Bにおける左右方向または上下方向に搬送されることが好ましい。
さらに、光照射装置7を使用する場合には、熱膨張層被覆樹脂シート10(シート成形品11の展開形状)の全体が光照射領域を通過した以後に屈曲し始めることが好ましい。光照射装置7でまだ光照射が完了していない領域が残存した状態で、先に光を照射された領域が屈曲すると、シート成形品11の形状によっては、熱膨張層被覆樹脂シート10が、光照射領域内で所定の搬送経路であるベルト81上から浮き上がって、設計した温度に加熱されない場合がある。一方、光照射装置7Aを使用すると、熱膨張層被覆樹脂シート10が、搬送ローラ85,85、および主搬送ローラ84とステージ74の2箇所においてそれぞれ搬送幅方向全体で挟持され、ステージ74に接触した状態で搬送されるので、光照射部71の光源7aと被処理物との距離が一定に保持される。したがって、熱膨張層被覆樹脂シート10の全体が光照射領域を通過する前に屈曲し始めても光が均質に照射されるので、シート成形品11の展開形状の寸法が大きなものでもよい。
インク除去工程S25において、屈曲した熱膨張層被覆樹脂シート10の表面から、インク受容層4を剥離層31で剥がし取る。これにより、稜線上の黒色の線である光熱変換部材5が除去され、図3に示すシート成形品11が得られる。
シート成形品11は、さらに、図1Aに示すように箱体に組み立てられて完成される。その際、光照射工程S24で形成された折り線を、必要に応じて、手作業等によるある程度の外力で、屈曲角を大きくするようにさらに深く折り曲げ、または屈曲角を小さくするように広げる。折り線自体は光照射工程S24で形成されて折り癖が付いているので、折り線(稜線)の位置がずれたり基材1にクラックを生じたりするようなことがない。また、シート成形品12は、円弧状の折り線によって、天面や底面から側面が立ち上がって各面が湾曲した状態となっているので、天面−底面間等の直線状の折り線を必要に応じて深く折り曲げ、前記したように、ツメを切込み1cに差し込んで完成される(図2A,2B参照)。または、シート成形品12は、重ね代1m(図2B参照)を糊代にして、その表面(熱膨張層2)と底面の端の裏面(基材1)とを接着剤で接着されてもよく、もしくは熱圧着されてもよい。熱圧着は、基材1が熱膨張層2の膨張開始温度TEs未満で熱圧着可能な樹脂材料からなる場合に行う。これらの場合には、ツメおよび切込み1cは形成しない。
(変形例)
切断工程S23において、熱膨張層被覆樹脂シート10は輪郭線をすべて切断されなくてもよく、光照射工程S24での屈曲が妨げられない形状であればよい。この場合には、光照射工程S24よりも後に、屈曲した熱膨張層被覆樹脂シート10を、鋏等を使用して、残りの輪郭線で切断して不要な部分を切り落とす。
また、光照射工程S24で光照射装置7Aを使用する場合、熱膨張層被覆樹脂シート10は、後端が主搬送ローラ84を通過した後には挟持されない状態となって、後端近傍への光照射が制御されないことになる。そのため、例えば、展開形状の端近傍に稜線を有するシート成形品12(図2B参照)については、切断工程S23において、図9に示すように、一端に把持部10tが連結した状態とすることが好ましい。ここでは、シート成形品12の組立てによって内側に折り込まれる重ね代1mに、把持部10tが連結している。このような熱膨張層被覆樹脂シート10は、把持部10tが後端になるように、光照射装置7Aに供給される。なお、図9に、白抜き矢印で熱膨張層被覆樹脂シート10の搬送方向を表す。把持部10tは、その端から光熱変換部材5までの最短の搬送方向長が、光照射装置7Aにおける主搬送ローラ84との接触位置から光照射領域の前端までの距離以上とする。また、把持部10tは、搬送幅方向長が、主搬送ローラ84とステージ74とで十分に強固に把持されて、熱膨張層被覆樹脂シート10が搬送幅方向に傾いて搬送されることのない長さとする。光照射工程S24において、このような把持部10tを残存させることで、熱膨張層被覆樹脂シート10は、光照射装置7Aを使用して、すべての光熱変換部材5に均質に光を照射することができる。
光熱変換部材5は、印刷機を使用せずに形成することもできる。印刷工程S21において、例えば、黒色インクのフェルトペン、墨汁と筆、鉛筆等の筆記具で、手描きによって熱膨張層被覆樹脂シート10の表面に山折り線を形成する。筆記具は、一定の黒色濃度でかつ一定の線幅に描画し易く、また、熱膨張層2が軟質であるので筆圧の高くないものが好ましく、具体的にはフェルトペンが好ましい。
シート成形品11は、試作等、用途によってはインク除去工程S25を行わず、表面に稜線に沿って光熱変換部材5が付着したままであってもよい。この場合、熱膨張層被覆樹脂シート10は剥離層31を備えていなくてよく、したがって、剥離層形成工程S12を行わない。
屈曲させた熱膨張層被覆樹脂シート10は、インク除去工程S25においてインク受容層4を除去する際に、その下の熱膨張層2ごと剥がし取って、図10に示すように、屈曲した基材1のみで構成されたシート成形品11Aとすることもできる。シート成形品11Aは、熱膨張層2がないので稜線が浮き上がって目立つことがなく、また、質感が基材1のものとなり、さらに基材1の材料によっては透明感を有するものとなる。シート成形品11Aは、図11に示す熱膨張層被覆樹脂シート10Bから製造される。図11は、本発明の第1の実施形態の変形例に係る立体造形物の材料である熱膨張層被覆樹脂シートの構成を模式的に示す断面図である。
熱膨張層被覆樹脂シート10Bは、熱膨張層2を基材1から剥離可能とするために、熱膨張層被覆樹脂シート10の剥離層31に代えて、図11に示すように、基材1と熱膨張層2の間に剥離層31Aを積層して備える。基材1、熱膨張層2、およびインク受容層4の各構成は、前記実施形態で説明した通りである。
(剥離層)
剥離層31Aは、シート成形品11Aの製造過程で、屈曲させた基材1(シート成形品11A)から稜線上で膨張した熱膨張層2を除去するために設けられる。剥離層31Aは、シート成形品11Aの製造過程で、熱膨張層2を膨張させる際の加熱温度に対する少なくとも一時的な耐熱性を有し、熱膨張層2の膨張および基材1の屈曲の際に剥離することのない接着強度を有し、また、基材1の屈曲等を妨げないように柔軟性を有する塗膜を形成するものとする。剥離層31Aは、例えば、基材1が溶融しない程度の温度で硬化させることのできる熱硬化型接着剤や、紫外線硬化型接着剤を適用することができ、厚さが約1μm〜数μmに形成されることが好ましい。また、剥離層31Aは、これらの接着剤に柔軟性を有する樹脂フィルムを積層した構造でもよい。樹脂フィルムは、熱膨張層2から基材1への熱の伝播を阻害しないように、厚さが1〜20μm程度のものが好ましく、食品包装用等に市販されている公知のフィルムを適用することができる。樹脂フィルムとしては、例えばエチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)樹脂フィルムが挙げられる。さらに剥離層31Aは、樹脂フィルム単独で構成されてもよく、基材1に熱圧着(ラミネート)して形成することができる。この熱圧着は、基材1、または剥離層31Aを構成する樹脂フィルムの、いずれのヒートシール(熱溶着)性によるものであってよい。
(シート成形品の製造方法)
本変形例に係るシート成形品の製造方法は、図7に示すように、熱膨張層被覆樹脂シート10Bを製造する熱膨張層被覆樹脂シート製造工程S10と、印刷工程S21と、切断工程S23と、光照射工程S24と、インク除去工程S25(熱膨張層除去工程)と、を順に行う。また、熱膨張層被覆樹脂シート製造工程S10は、前記実施形態における同工程S10の剥離層形成工程S12とインク受容層形成工程S13の順を入れ替えて行う。すなわち、基材1上の剥離層31Aの表面に熱膨張層2を形成する。また、インク除去工程S25では、屈曲させた熱膨張層被覆樹脂シート10Bから熱膨張層2を剥がし取ってシート成形品11Aとする。また、シート成形品12(図2A,2B参照)のように糊代(重ね代1m)を有する場合には、基材1同士を熱圧着で接着することができる。
樹脂フィルムからなる剥離層31A上に熱膨張層2を形成した後に、剥離層31Aと基材1とを熱膨張層2の膨張開始温度TEs未満で熱圧着してもよい。また、本変形例において、剥離層31Aを設けずに、熱膨張層2と基材1とを剥離可能な構成にすることもでき、そのために、基材1は、熱膨張層2の膨張開始温度TEs未満で熱圧着可能な樹脂からなる。詳しくは、剥離紙等に熱膨張層2を形成し、その表面と基材1とを熱圧着し、剥離紙を剥がし取ってインク受容層4を形成する。あるいは、剥離紙等にインク受容層4を形成し、その上に熱膨張層2を形成してもよい。
シート成形品11は、熱膨張層被覆樹脂シートの基材1の側の表面(裏面)に黒色の線を印刷して、この面に光照射して製造することもできる。このようなシート成形品11は、箱体に組み立てられると内面に線が印刷されているので視認され難く、インク除去工程S25を行わなくてよい。このようなシート成形品11は、図12に示す熱膨張層被覆樹脂シート10Cから製造される。図12は、本発明の第1の実施形態の変形例に係る立体造形物の材料である熱膨張層被覆樹脂シートの構成を模式的に示す断面図である。
熱膨張層被覆樹脂シート10Cは、裏面への印刷を可能とするために、図12に示すように、基材1の裏面にインク受容層4を被覆して備え、すなわち、インク受容層4、基材1、熱膨張層2、インク受容層4を順に積層してなる。熱膨張層被覆樹脂シート10Cのそれぞれの要素は、前記実施形態で説明した通りである。ただし、本変形例においては、基材1は、着色される場合には黒色以外の(カーボンブラックを含有しない)顔料を適用する。また、基材1の熱変形温度TDが、熱膨張層2の膨張温度域内であれば膨張開始温度TEsよりも高くてもよい。
(シート成形品の製造方法)
本変形例に係るシート成形品の製造方法について、図13A,13B、および適宜図7を参照して説明する。図13A,13Bは、本発明の第1の実施形態の変形例に係る立体造形物製造方法を説明する模式図であり、図13Aは印刷工程、図13Bは光照射工程、のそれぞれにおける断面図を示す。本変形例に係るシート成形品の製造方法は、熱膨張層被覆樹脂シート10Cを製造する熱膨張層被覆樹脂シート製造工程S10と、印刷工程S21と、切断工程S23と、光照射工程S24と、を順に行う(図7参照)。また、熱膨張層被覆樹脂シート製造工程S10は、前記実施形態における同工程S10の剥離層形成工程S12を行わず、また、インク受容層形成工程S13を両面に行う。あるいは、基材1の裏面にインク受容層4を形成した後に、基材1の表面に熱膨張層2を形成してもよい。さらに、前記実施形態と異なる工程について、詳細に説明する。
印刷工程S21において、図13Aに示すように、熱膨張層被覆樹脂シート10Cの裏面のインク受容層4上に黒色インクで線を印刷して光熱変換部材5Aを形成する。光熱変換部材5Aは、熱膨張層被覆樹脂シート10Cの裏面に線状に形成される黒色パターンであり、後続の光照射工程S24で熱膨張層被覆樹脂シート10Cが前記実施形態と同様に表面を外側にして屈曲するので、光熱変換部材5Aは谷折り線に該当する。光熱変換部材5Aのその他の構成は、前記実施形態における光熱変換部材5と概ね同様であり、また、切断工程S23のための切取り線となる輪郭線を印刷してもよい。ただし、光照射工程S24で、熱膨張層2が、光熱変換部材5Aの直上に対して線幅方向にある程度広がった領域で膨張するので、基材1の加熱される領域が確保される範囲で、光熱変換部材5Aの線幅を細く設計することが好ましい。
光照射工程S24において、切断工程S23で切断した熱膨張層被覆樹脂シート10Cを、光照射装置7(7A)で、光熱変換部材5Aを印刷した側の面(裏面)に光を照射する。すると、光熱変換部材5Aが発熱して、基材1が加熱され、さらに熱が基材1を厚さ方向に伝播して熱膨張層2が加熱される。これにより、図13Bに示すように、前記実施形態と同様、光熱変換部材5Aの直上およびその近傍で熱膨張層2が膨張して、基材1が塑性変形して熱膨張層被覆樹脂シート10Cが線(光熱変換部材5A)の両側で基材1の側へ折れ曲がって屈曲する。本変形例においては、熱源となる光熱変換部材5Aが基材1寄りに設けられているので、基材1が熱膨張層2よりも先に加熱される。したがって、熱膨張層2が膨張開始温度TEsに到達するまでに、基材1が熱変形温度TDに到達し易く、特に基材1が厚くても、その厚さ方向全体が熱変形温度TD以上に加熱されて塑性変形し易い。一方で、前記実施形態と比較して、熱膨張層2が膨張開始温度TEs以上である時間、すなわち膨張が進行している時間が光照射時間の割に短く、基材1が厚いほどその傾向が強い。したがって、熱膨張層2が十分に膨張するために、光熱変換部材5Aが短時間で高温に発熱するように、光熱変換部材5Aの黒色濃度や線幅、または光照射装置7の出力を設定することが好ましい。
本変形例においては、光照射装置7を使用した場合、熱膨張層被覆樹脂シート10Cは裏面(印刷面)を上に向けて処理され、稜線が谷折りとなって端が浮き上がる。一方、光照射装置7Aを使用した場合、熱膨張層被覆樹脂シート10Cは裏面を下に向けて処理され、稜線が山折りとなって浮き上がる。
熱膨張層被覆樹脂シート10Cは、表面(熱膨張層2上)にもインク受容層4を被覆して備えているので、前記実施形態と同様に表面に光熱変換部材5を印刷してもよい。熱膨張層被覆樹脂シート10Cでシート成形品11を製造することによって、外面、内面の任意の一面に黒色の線を付着させる、言い換えると所望の側の面に線を付着させないことができる。あるいは、熱膨張層被覆樹脂シート10Cは、裏面印刷専用として、裏面のみにインク受容層4を被覆してもよく、さらにインク受容層4と基材1との間に剥離層31を設けて(図4参照)、光照射工程S24の後にインク除去工程S25を行って、内面に黒色の線が付着していないシート成形品11を製造することもできる。本変形例における剥離層31は、例えば樹脂フィルムを基材1に熱圧着して形成することができる。
〔第2の実施形態〕
第1の実施形態に係る立体造形物は、熱膨張層被覆樹脂シートの一方の表面に印刷した線状の光熱変換部材で熱膨張層と基材の2層を加熱するので、熱膨張層被覆樹脂シートを屈曲させるために、これら2層を線(光熱変換部材)上の領域に限定してそれぞれの適温に適切なタイミングで到達するように加熱する必要がある。そのため、各層、特に基材を厚くすることが困難である。そこで、光を透過する部材を基材に適用することで、容易に各層を適切に加熱することができる構成とする。以下、本発明の第2の実施形態に係る立体造形物について、その製造方法と共に、図14および図15A〜15D、ならびに適宜図1A,1B、図2A,2B、および図10を参照して説明する。図14は、本発明の第2の実施形態に係る立体造形物製造方法の流れを示すフローチャートである。図15A〜15Dは、本発明の第2の実施形態に係る立体造形物製造方法を説明する模式図であり、図15Aは熱膨張層形成工程、図15Bは印刷工程、図15Cは貼合工程、図15Dは光照射工程、のそれぞれにおける断面図を示す。前記実施形態(図1〜11参照)と同一の要素については同じ符号を付し、説明を省略する。
本発明の第2の実施形態に係るシート成形品(立体造形物)11Aは、第1の実施形態に係るシート成形品11またはシート成形品12と同様に、図1Aまたは図2Aに示す箱体であって、第1の実施形態の変形例と同様、図10に示すように、屈曲した基材1Aのみからなる。このようなシート成形品11Aは、図15A,15Bに示す熱膨張フィルム20および樹脂シート10Aから製造される。
樹脂シート10Aは、光熱変換部材5を構成する黒色インクを印刷されるための被印刷物であり、図15Bに示すように、基材1Aを印刷可能とするように表面(上面)にインク受容層4を被覆し、さらにインク受容層4と基材1Aの間に剥離層31Aを備える。樹脂シート10Aは、第1の実施形態の熱膨張層被覆樹脂シート10と同様、シート成形品11Aの展開形状(図1B、図2B参照)以上の寸法であればよく、シート成形品11Aを製造する際に光熱変換部材5を形成するための印刷機に対応した寸法とする。熱膨張フィルム20は、シート成形品11Aを製造する際に、基材1A(樹脂シート10A)に熱膨張層2を容易に積層することができるようにしたフィルム状の部材であり、熱膨張層2と接着層32とを積層してなり、さらに接着層32の側が剥離紙33に貼り合わされて支持されている。熱膨張フィルム20は、シート成形品11Aの展開形状以上の寸法であればよく、樹脂シート10Aと同一形状かそれよりも小さな寸法とする。
基材1Aは、第1の実施形態の基材1と概ね同様の構成であるが、光を十分に透過する構造とし、着色される場合には厚さ等と併せて顔料の含有量を抑制することが好ましく、また、黒色の顔料は含有しない。剥離層31Aは、シート成形品11Aの製造過程で、屈曲させた基材1A(シート成形品11A)からインク受容層4およびその上に貼り合わされた熱膨張層2を除去するために設けられ、第1の実施形態の変形例(図11参照)と同様の構成である。熱膨張層2およびインク受容層4の各構成は、第1の実施形態で説明した通りである。接着層32は、樹脂シート10Aの表面のインク受容層4と熱膨張層2とを貼り合わせる接着剤であり、公知の接着剤から選択される。そのために、接着層32は、インク受容層4および熱膨張層2との密着性がよく、少なくとも剥離層31A−基材1A間の密着性よりも高く、また、基材1A、熱膨張層2を塑性変形、膨張させるための加熱温度においても、前記密着性を維持することができ、さらに基材1Aの屈曲等を妨げないように柔軟性を有する接着剤を適用する。接着層32は、光熱変換部材5から熱膨張層2への熱の伝播を阻害しないように、厚さが約1〜20μmに形成されることが好ましく、10μm未満がより好ましい。剥離紙33は、熱膨張フィルム20の裏面に設けられて接着層32を被覆すると共に、軟質な熱膨張層2を支持する。剥離紙33は、シート成形品11Aの製造過程で除去されるため、接着層32から剥離可能なフィルム状の部材であり、一般的な両面テープの剥離紙を適用することができる。すなわち、接着層32と剥離紙33は併せて、両面テープを適用することができる。
(シート成形品の製造方法)
本実施形態に係るシート成形品の製造方法は、図14に示すように、熱膨張フィルム20を製造する熱膨張層形成工程S11Aと、樹脂シート10Aを製造する工程S12A,S13,S14および印刷工程S21と、を個別に行った後に、樹脂シート10Aと熱膨張フィルム20を貼り合わせる貼合工程S22と、切断工程S23と、光照射工程S24Aと、熱膨張層除去工程S25Aと、を順に行う。また、熱膨張層形成工程S11Aよりも後かつ貼合工程S22よりも前に、必要に応じて、熱膨張フィルム20を切断する切断工程S15を行う。本実施形態に係るシート成形品の製造では、第1の実施形態に係るシート成形品の製造に使用する装置を使用することができる。
熱膨張層形成工程S11Aにおいて、図15Aに示すように、剥離紙33に塗布された接着層32上にスラリーを塗布して熱膨張層2を形成し、熱膨張フィルム20を得る。形成する土台が異なること以外は、第1の実施形態の熱膨張層形成工程S11と同様である。または、別の剥離紙等に熱膨張層2を形成して、その上に接着層32を塗布して、剥離紙33に貼り合わせてもよい。得られた熱膨張フィルム20を、切断工程S15において、樹脂シート10Aまたはシート成形品11Aの展開形状に合わせた形状に切り出す。
剥離層形成工程S12Aにおいて、基材1A上に剥離層31Aを形成する(図15B参照)。例えば、剥離層31Aを構成する樹脂フィルムと基材1Aを重ねて熱圧着する。そして、インク受容層形成工程S13において、剥離層31A上にインク受容層4を形成する(図15B参照)。断裁工程S14において、剥離層31Aおよびインク受容層4を形成した基材1Aを、所定の寸法に断裁して、樹脂シート10Aを得る。
印刷工程S21において、図15Bに示すように、樹脂シート10Aの表面のインク受容層4上に黒色インクで線を印刷して光熱変換部材5を形成する。光熱変換部材5の構成は、第1の実施形態で説明した通りであり、後続の光照射工程S24Aで樹脂シート10Aは印刷面を外側にして屈曲するので、光熱変換部材5は山折り線に該当する。また、切断工程S23のための切取り線となる輪郭線を印刷してもよい。
貼合工程S22において、図15Cに示すように、熱膨張フィルム20から剥離紙33を剥がし取って、接着層32で樹脂シート10Aの表面(印刷面)に貼り合わせて密着させる。このとき、熱膨張フィルム20が、樹脂シート10Aにおいてシート成形品11Aを構成する領域を完全に被覆するように貼り合わせる。そして、貼り合わされた樹脂シート10Aおよび熱膨張フィルム20(積層体)を、切断工程S23において、シート成形品11Aの展開形状に切り出す。
光照射工程S24Aにおいて、切断した樹脂シート10Aと熱膨張フィルム20の積層体を、光照射装置7(7A)で、樹脂シート10Aの側の面(基材1Aの裏面)に光を照射する。光が基材1Aを透過して光熱変換部材5に入射すると、光熱変換部材5が発熱し、その上下の熱膨張層2と基材1Aがそれぞれ加熱され、図15Dに示すように、積層体が線(光熱変換部材5)の両側で基材1Aの側へ折れ曲がって屈曲する。本実施形態においては、熱源となる光熱変換部材5が熱膨張層2と基材1Aの間に設けられているので、上下両方向に熱が伝播して熱的効率がよく、熱膨張層2と基材1Aが並行して加熱される。したがって、熱膨張層2が膨張開始温度TEsに到達するまでに、基材1Aが熱変形温度TDに到達し易く、特に基材1Aが厚くても、その厚さ方向全体が熱変形温度TD以上に加熱されて塑性変形し易い。さらに、熱の厚さ方向の伝播距離が短いので、熱膨張層2と基材1Aの加熱される領域が光熱変換部材5から線幅方向へ広がり難く、特に熱膨張層2の膨張する領域が制御され易く、基材1Aの稜線の丸みが抑制される。
本実施形態においては、光照射装置7を使用した場合、樹脂シート10Aの側の面(基材1Aの裏面)を上に向けて処理され、稜線が谷折りとなって端が浮き上がる。一方、光照射装置7Aを使用した場合、樹脂シート10Aの側の面を下に向けて処理され、稜線が山折りとなって浮き上がる。
熱膨張層除去工程S25Aにおいて、屈曲した樹脂シート10Aから、表面に貼り合わされた熱膨張フィルム20を剥がし取る。熱膨張フィルム20の接着層32によって、樹脂シート10Aのインク受容層4および剥離層31Aが共に除去されて、屈曲した基材1Aのみからなるシート成形品11Aが得られる。
(変形例)
本実施形態においては、熱膨張フィルム20に接着層32を備えず、貼合工程S22において接着剤(接着層32)を塗布して熱膨張フィルム20と樹脂シート10Aを貼り合わせることもできる。
本実施形態においては、熱膨張フィルム20の方に光熱変換部材5を印刷してもよい。そのために、熱膨張層形成工程S11Aにおいて、熱膨張層2を剥離紙等に塗布して形成し、この熱膨張層2上にインク受容層4を形成し、その後、印刷機に対応した寸法に断裁して熱膨張フィルム20とする。この熱膨張フィルム20のインク受容層4上に光熱変換部材5を形成する。そして、熱膨張フィルム20の印刷面に基材1Aを貼り合わせ(貼合工程S22)、剥離紙を剥がし取って熱膨張層2を表面に露出させる。このとき、接着剤等の剥離層31Aで貼り合わせてもよいし、熱膨張層2の膨張開始温度TEs未満で基材1Aによる熱圧着によって貼り合わせてもよい。以降は、前記実施形態と同様に、切断工程S23、光照射工程S24A、熱膨張層除去工程S25Aを順に行う。
本実施形態においては、外面が熱膨張層2で被覆されたシート成形品11(図3参照)を製造することもできる。すなわち熱膨張層除去工程S25Aを行わず、また、剥離層31Aも不要であるので、剥離層形成工程S12Aを行わず、基材1Aに直接に(または熱膨張フィルム20に)インク受容層4を形成する。このような変形例に係るシート成形品11は、熱膨張層2の厚さや光熱変換部材5の黒色濃度および線幅にもよるが、黒色の線(光熱変換部材5)上が膨張した熱膨張層2で被覆されているので、外観上、稜線に黒色の線が視認され難い。また、基材1Aの着色によっては内面においても黒色の線が視認され難いものとなる。
本実施形態に係るシート成形品11Aは、製造過程において、熱膨張層2すなわち熱膨張フィルム20が全面に設けられていなくてもよく、少なくとも光熱変換部材5を被覆していればよく、好ましくは、光熱変換部材5に対してその線幅方向両外側に基材1Aの厚さ以上(かつ熱膨張層2の初期厚さt0以上)まで被覆する。また、熱膨張フィルム20は、樹脂シート10Aとの密着性を確保するために、ある程度以上の幅を有することが好ましい。そのために、切断工程S15において、熱膨張フィルム20は帯状に切り出され、貼合工程S22において、帯状の熱膨張フィルム20を樹脂シート10Aに印刷した黒色の線(光熱変換部材5)に沿って貼り付ける。または、熱膨張フィルム20に光熱変換部材5を印刷し、この光熱変換部材5が中心線になるように熱膨張フィルム20を帯状に切り出して、熱膨張フィルム20の印刷面を基材1Aの屈曲させる箇所に貼り付けてもよい。
〔第3の実施形態〕
第1、第2の実施形態およびそれらの変形例に係る立体造形物は、基材の熱膨張層で被覆した側の面を外側にして屈曲させてなるので、山折りのみ(または谷折りのみ)で構成された立体形状となる。そこで、基材の両面を熱膨張層で被覆することで、山折りと谷折りが混在した形状とする。以下、本発明の第3の実施形態に係る立体造形物について、図16A,16B、および図17を参照して説明する。図16Aは本発明に係る立体造形物の外観図であり、図16Bは前記立体造形物の展開図である。図17は、本発明の第3の実施形態に係る立体造形物の構成を模式的に示す部分断面図である。前記実施形態(図1〜13参照)と同一の要素については同じ符号を付し、説明を省略する。
(シート成形品)
図16Aに示すように、シート成形品(立体造形物)13は、対角線を鉛直方向に向けた6面の正方形が頂点で連結して水平方向に環状に並び、その上下が蛇腹状に折り曲げられた筒体の上下端を窄ませた形状であり、例えばランプシェードのような装飾品とすることができる。このようなシート成形品13は、図16Bに示す矩形の平板状のシートを、同図の実線(光熱変換部材51)を山折り線、破線(光熱変換部材52)を谷折り線として折り曲げ、重ね代1mを糊代にして左右の辺同士を接続して筒状にして組み立てられてなる。
本発明の第3の実施形態に係るシート成形品13は、図17に示すように、基材1と、その両面にそれぞれ積層された熱膨張層21,22とからなり、稜線上においてその外側の面を被覆する熱膨張層21または熱膨張層22が膨れている。本実施形態に係るシート成形品13は、図18に示す熱膨張層被覆樹脂シート10Dから製造される。
(熱膨張層被覆樹脂シート)
シート成形品13の成形前である熱膨張層被覆樹脂シート10Dの構成について、図18を参照して以下に説明する。図18は、本発明の第3の実施形態に係る立体造形物の材料である熱膨張層被覆樹脂シートの構成を模式的に示す断面図である。熱膨張層被覆樹脂シート10Dは、一様な厚さの平板状の部材であり、基材1の一面上に第1熱膨張層21、他面上に第2熱膨張層22をそれぞれ積層し、さらにその両側表面に剥離層31、インク受容層4を順に積層してなる。熱膨張層被覆樹脂シート10Dは、両面すなわちインク受容層4,4に光熱変換部材51,52を構成する黒色インクを印刷されるための被印刷物である。したがって、熱膨張層被覆樹脂シート10Dは、第1の実施形態の熱膨張層被覆樹脂シート10と同様、シート成形品13を製造する際に光熱変換部材51,52を形成するための印刷機に対応した寸法(定形サイズ)とし、シート成形品13の展開形状(図16B参照)以上の寸法であればよく、例えばA3用紙サイズである。
基材1、剥離層31、およびインク受容層4の各構成は、第1の実施形態で説明した通りである。第1熱膨張層21および第2熱膨張層22(適宜まとめて、熱膨張層21,22)は、それぞれ第1の実施形態の熱膨張層2と同様の構成である。また、第1熱膨張層21と第2熱膨張層22とは、材料および初期厚さt1,t2が同じとする(t1=t2)。また、基材1を構成する熱可塑性樹脂の熱変形温度TDが膨張開始温度TEs以下であることが好ましく、膨張開始温度TEs未満であることがさらに好ましい。熱膨張層21,22の初期厚さt1,t2が厚いと、第1の実施形態で説明したように、シート成形品13の製造過程で、膨張によって基材1に作用する荷重が高くなる。しかし一方で、熱膨張層被覆樹脂シート10Dが屈曲する際に内側となる熱膨張層22(21)がきつく(高い曲率で)折り曲げられることになり、その弾性によって大きく屈曲し難く、基材1の塑性変形を阻害する。具体的には、熱膨張層21,22の初期厚さt1,t2は、50〜100μmであることが好ましい。さらに、外側の熱膨張層21(22)の膨張による荷重と、内側の無膨張の厚さt2(t1)の熱膨張層22(21)による支障とを併せて、適切なものとなるように初期厚さt1,t2を設計することが好ましい。
(製造装置)
本実施形態に係るシート成形品の製造に使用する装置について簡潔に説明する。シート成形品13の材料である熱膨張層被覆樹脂シート10Dの製造には、第1の実施形態の熱膨張層被覆樹脂シート10の製造と同様に、塗布装置および断裁機が使用される(図示省略)。シート成形品13の製造には、熱膨張層被覆樹脂シート10Dの両面に黒色インクで光熱変換部材51,52を印刷する印刷機、熱膨張層被覆樹脂シート10Dをシート成形品13の展開形状に切り出す加工具が使用され(図示省略)、これらは第1の実施形態で説明した通りである。本実施形態においてはさらに、熱膨張層被覆樹脂シート10Dの両面に同時に近赤外線を照射する光照射装置7B(図19参照)が使用される。以下、光照射装置について、図19を参照して簡潔に説明する。図19は、立体造形物の製造に使用する光照射装置の概要を説明する断面図である。
図19に示すように、光照射装置7Bは、光照射部71および冷却器72を2ずつ備え、さらに防護板73、ステージ77、および搬送機構8Cを備えるものである。光照射部71、冷却器72、および防護板73は、第1、第2の実施形態で使用される光照射装置7(図5参照)のものと同様の構成である。光照射装置7Bは、被処理物の上面に光を照射する光照射装置7に、光照射装置7A(図6参照)のように上下反転させた光照射部71および冷却器72、ならびにステージ77を追加し、さらに搬送機構8に代えて搬送機構8Cを備える。ステージ77は、被処理物を載置する平板状の部材であり、被処理物と共に搬送機構8Cによって搬送される。ステージ77は、下側の光照射部71からの光が被処理物の下面に照射されるように、光の透過率が高く、また、光照射装置7のベルト81と同様に熱伝導率の低い材料からなり、例えばガラス板が適用される。光照射装置7Bは、2台の光照射部71,71を光照射領域が一致するように対向させて配置し、また、防護板73またはステージ77を透過して被処理物の上面と下面にそれぞれ入射する光の光量が同等であるように構成されていることが好ましい。
搬送機構8Cは、ステージ77をその上の被処理物と共に一定速度で水平な一方向に搬送し、下側の光照射部71からの光を遮らない構成とする。搬送機構8Cは、例えばローラコンベアであり、搬送方向に複数のキャリアローラ86,86,…を並べて備え、さらに、これらのキャリアローラ86を同じ回転速度(周速度)で回転駆動させるためのモータおよびベルトやチェーンのような伝動機構(図示省略)等で構成される。なお、キャリアローラ86は、光照射領域(下側の光照射部71の直上)を避けて配置される。または、搬送機構8Cは、光照射装置7の搬送機構8と同様にベルトコンベアで構成することができる。ただし、光照射部71からの光を遮らないように、2本のベルトを搬送幅方向の両端(両縁)に設けて、ベルト間にステージ77を架け渡す。もしくは、第1の実施形態で説明したように、搬送機構8のベルト81(図5参照)を透光性部材として、ステージ77を使用せずに被処理物を直接に載置することもできる。または、搬送機構8Cは、ラックとピニオンギアによる方式やボールねじ方式のような公知の直動機構でもよく、光照射領域を避けて配置され、ステージ77に縁等で接続する。
また、光照射装置7Bは、第1の実施形態の光照射装置7A(図6参照)のように、シートローダで構成された搬送機構8Aを備えることもできる。光照射装置7Bにおいては、主搬送ローラ84が光照射領域の後側近傍に配置される。
(シート成形品の製造方法)
第3の実施形態に係るシート成形品の製造方法について、図7、図20A,20B、ならびに適宜図16〜19を参照して説明する。図20A,20Bは、本発明の第3の実施形態に係る立体造形物製造方法を説明する模式図であり、図20Aは印刷工程、図20Bは光照射工程、のそれぞれにおける断面図を示す。図7に示すように、本実施形態に係るシート成形品の製造方法は、熱膨張層被覆樹脂シート10Dを製造する熱膨張層被覆樹脂シート製造工程S10と、印刷工程S21と、切断工程S23と、光照射工程S24と、インク除去工程S25と、を順に行う。また、熱膨張層被覆樹脂シート製造工程S10は、第1の実施形態と同様に、熱膨張層形成工程S11と、剥離層形成工程S12と、インク受容層形成工程S13と、を順に行うが、それぞれ基材の両面に対して行い、さらにその後に必要に応じて断裁工程S14を行う。
熱膨張層形成工程S11において、基材1の一面上(上側)に第1熱膨張層21を、他面上(下側)に第2熱膨張層22を、それぞれ厚さt1,t2(t1=t2)に形成する。熱膨張層21,22のそれぞれの形成方法は、第1の実施形態の熱膨張層形成工程S11と同様である。そして、剥離層形成工程S12において、熱膨張層21,22のそれぞれの上に剥離層31を形成し、さらにインク受容層形成工程S13において、両面の剥離層31,31のそれぞれの上にインク受容層4を形成する。なお、例えば、基材1の一面上に第1熱膨張層21、剥離層31、インク受容層4を順次形成した後に、基材1の他面上に第2熱膨張層22、剥離層31、インク受容層4を順次形成してもよい。断裁工程S14において、第1の実施形態と同様に、熱膨張層21,22等を形成した基材1を切断して、後続の印刷工程S21で使用する印刷機に対応した寸法の熱膨張層被覆樹脂シート10D(図18参照)を得る。
印刷工程S21において、図20Aおよび図16Bに示すように、熱膨張層被覆樹脂シート10Dの両面のインク受容層4,4上に黒色インクで線を印刷して光熱変換部材51,52を形成する。光熱変換部材51,52は、それぞれの印刷面において、山折り線とする箇所に形成される。熱膨張層被覆樹脂シート10Dの一面側の光熱変換部材51および他面側の光熱変換部材52は、それぞれ第1の実施形態の光熱変換部材5と同様の構成である。光熱変換部材51と光熱変換部材52は、後続の光照射工程S24で同じ温度に発熱するように、光照射装置7Bによって両面に照射される光量が同等である場合には同じ黒色濃度で印刷される。なお、山折り線と谷折り線(光熱変換部材51と光熱変換部材52)が交差または接する箇所は、光熱変換部材51または光熱変換部材52を形成しないことが好ましい。平面視で同一領域に光熱変換部材51,52の両方が形成されていると、後続の光照射工程S24で熱膨張層被覆樹脂シート10Dが過剰に高温に加熱されて、熱膨張層21,22が過膨張したり、基材1に孔が開いたりする等の虞がある。また、第1の実施形態と同様に、切断工程S23のための切取り線となる輪郭線(図16Bの太線)を、光熱変換部材51または光熱変換部材52と同時に印刷してもよい。
切断工程S23において、光熱変換部材51,52を形成した熱膨張層被覆樹脂シート10Dを、図16Bに太線で示す輪郭線で切断して、シート成形品13の展開形状に切り出す。
光照射工程S24において、切断した熱膨張層被覆樹脂シート10Dを、光照射装置7Bで両面に光を照射する。上からの光によって光熱変換部材51が発熱して、第1熱膨張層21が加熱され、さらに熱が第1熱膨張層21の表面から厚さ方向(下向き)に伝播して基材1が加熱される。また、下からの光によって光熱変換部材52が発熱して、第2熱膨張層22が加熱され、さらに熱が第2熱膨張層22の表面から厚さ方向(上向き)に伝播して基材1が加熱される。これにより、図20Bに示すように、第1の実施形態(図8D参照)と同様、光熱変換部材51の直下で第1熱膨張層21が膨張して、基材1が塑性変形し、熱膨張層被覆樹脂シート10Dが線(光熱変換部材51)の両側で第2熱膨張層22の側へ折れ曲がって屈曲する。また、光熱変換部材52の直上で第2熱膨張層22が膨張して、基材1が塑性変形し、熱膨張層被覆樹脂シート10Dが線(光熱変換部材52)の両側で第1熱膨張層21の側へ折れ曲がって屈曲する。熱膨張層被覆樹脂シート10Dへの光の照射の停止後、基材1が熱変形温度TD未満に冷却されることによって、熱膨張層被覆樹脂シート10Dの変形が完了する。
ここで、光熱変換部材51の直下において、光熱変換部材51からの熱は、第1熱膨張層21、基材1を順次伝播し、さらに第2熱膨張層22に伝播する。この光熱変換部材51の直下における第2熱膨張層22は、加熱されて膨張しても、膨張量が第1熱膨張層21よりも小さく抑えられるように、加熱温度(最高温度)が第1熱膨張層21よりも低温である。理想的には、第2熱膨張層22が膨張しない、すなわち熱膨張層21,22の膨張開始温度TEs以上に到達しないことが好ましい。一方で、第1熱膨張層21の膨張量がより多いことが好ましく、そのために、第1の実施形態で説明したように、第1熱膨張層21の加熱温度は、熱膨張層21,22の最大膨張温度TEmax近傍とすることが好ましい。同様に、光熱変換部材52の直上において、第1熱膨張層21は、膨張量が第2熱膨張層22よりも少ないものとなるようにし、また、第2熱膨張層22の膨張量がより多いことが好ましい。これらのことから、光熱変換部材51,52は、第1の実施形態の光熱変換部材5と同様に、最大膨張温度TEmax近傍に発熱するように黒色濃度を設計されることが好ましい。また、光照射工程S24において、光熱変換部材51,52さらにその直近の第1熱膨張層21または第2熱膨張層22が最高温度に到達した後は、速やかに光の照射を停止して自然冷却されることが好ましく、基材1を介して遅れて昇温する第2熱膨張層22または第1熱膨張層21が、膨張開始温度TEsに到達することなく冷却されることが最も好ましい。そのために、加熱速度(光熱変換部材51,52の昇温速度)が高速であることが好ましく、このような温度推移となるように、光照射装置7Bの光源7aの出力や搬送速度等を設定する。また、このような条件で、基材1が熱変形温度TD以上に加熱されるように、基材1および熱膨張層21,22の材料等が選択される。
インク除去工程S25において、屈曲した熱膨張層被覆樹脂シート10Dの両面のそれぞれから、第1の実施形態と同様に、インク受容層4を剥離層31で剥がし取って、図17に示すシート成形品13が得られる。シート成形品13は、重ね代1m(図16B参照)を糊代にして、その表面(第1熱膨張層21)と重ね代1mに対向する端の裏面(第2熱膨張層22)とを接着剤で接着されて筒体となり、図16Aに示すように形状を整えられて完成される。
(変形例)
シート成形品13は、試作等、用途によっては、両面または片面に、稜線に沿って光熱変換部材51,52が付着したままであってもよい。この場合、熱膨張層被覆樹脂シート10Dは剥離層31を両面共にまたは片面に備えていなくてよい。
シート成形品13は、インク除去工程S25においてインク受容層4を除去する際に、その下の熱膨張層21,22ごと剥がし取って、第1の実施形態の変形例に係るシート成形品11A(図10参照)のように、屈曲した基材1のみで構成されてもよい。そのために、熱膨張層被覆樹脂シート10Dは、剥離層31に代えて、剥離層31Aを、基材1と熱膨張層21,22とのそれぞれの間に備える。このようなシート成形品13は、第1の実施形態の変形例の熱膨張層被覆樹脂シート10B(図11参照)およびシート成形品11Aと同様に製造することができる。また、例えば剥離層31Aを第2熱膨張層22と基材1との間にのみ備えて、一面に第1熱膨張層21を備え、他面に基材1が露出したシート成形品13を製造することもできる(図示せず)。
基材1が軟質である、または厚さが薄い等、剛性が低く、屈曲された折り線を外力で伸ばして平坦に戻したり再び折り曲げたりしても破断等の虞がない場合には、光照射工程S24において、光照射装置7A(図6参照)を使用して、熱膨張層被覆樹脂シート10Dに片面ずつ光を照射してシート成形品13を製造することができる。すなわち、1回目の光照射の後、屈曲した熱膨張層被覆樹脂シート10Dを平坦に戻して、2回目の光照射を行う。
印刷工程S21において、図21に示すように、光熱変換部材51,52の平面視で同一領域の反対側の面に、黒色濃度の低い(淡い)線(以下、灰色の線)52l,51lを印刷してもよい。すなわち、熱膨張層被覆樹脂シート10Dの同一領域の両面に、黒色濃度の高い線(光熱変換部材51,52)と灰色の線52l,51lがそれぞれ形成される。灰色の線52l,51lは、光照射工程S24で、直近の第1熱膨張層21または第2熱膨張層22が膨張開始温度TEsよりも低い温度に加熱される黒色濃度に設定する。このような熱膨張層被覆樹脂シート10Dが、光照射工程S24で両面から光を照射されると、光熱変換部材51,52からだけでなく、それぞれの反対側の灰色の線からもある程度加熱されるため、基材1が効率的に熱変形温度TD以上に加熱され、特に基材1が厚い場合に有効である。
(第1の実施形態の変形例)
前記変形例のような光照射装置7Bを使用した、両面に印刷した黒色の線や灰色の線からの加熱は、第1の実施形態およびその変形例に係るシート成形品11,11Aの製造に適用することもできる。すなわち、熱膨張層被覆樹脂シート10C(図12参照)のように両面に印刷可能とするようにインク受容層4を備え、印刷工程S21において、平面視で同一領域に、表面に光熱変換部材5を、裏面に光熱変換部材5Aを、それぞれ形成する。光熱変換部材5,5Aのそれぞれの黒色濃度は、熱膨張層2および基材1のそれぞれの熱的性質に応じて設定することが好ましい。これにより、光照射工程S24で両面から光を照射されると、熱膨張層2が直上の光熱変換部材5から熱を伝播され、基材1が主に直下の光熱変換部材5Aから、また直上の光熱変換部材5からも熱膨張層2を経由して熱を伝播されるので、熱膨張層2、基材1が共にそれぞれの適温(最大膨張温度TEmax、熱変形温度TD以上)に加熱され易い。その結果、好適に熱膨張層被覆樹脂シート10(10B)を屈曲させることができ、特に、基材1が厚い場合や熱変形温度TDが比較的高温である場合に有効である。
〔第4の実施形態〕
第3の実施形態およびその変形例に係る立体造形物は、山折りと谷折りが混在した形状に形成するために、基材の両面を熱膨張層で被覆し、両面に光を照射して製造されるが、片面のみに光を照射して製造することもできる。以下、本発明の第4の実施形態に係る立体造形物製造方法について説明する。前記実施形態(図1〜20参照)と同一の要素については同じ符号を付し、説明を省略する。
本実施形態に係る立体造形物製造方法において、得られるシート成形品(立体造形物)13は、第3の実施形態と同様、図16A,16Bおよび図17に示す形状、構造を有する。一方、本実施形態では、シート成形品13は、第3の実施形態と同様に熱膨張層被覆樹脂シート10D(図18参照)から製造してもよいが、製造過程で片面のみに光熱変換部材を形成して光を照射するので、片側表面にインク受容層4を備える熱膨張層被覆樹脂シート10E(図22A参照)から製造することができる。詳しくは、熱膨張層被覆樹脂シート10Eは、第1熱膨張層21側のみに剥離層31およびインク受容層4を積層して備え、すなわち、熱膨張層被覆樹脂シート10Dから第2熱膨張層22側の剥離層31およびインク受容層4を除いた構成であり、それぞれの要素は第3の実施形態で説明した通りである。
(シート成形品の製造方法)
本実施形態に係るシート成形品の製造方法について、図7、図22A,22B、および適宜図16A,16Bを参照して説明する。図22A,22Bは、本発明の第4の実施形態に係る立体造形物製造方法を説明する模式図であり、図22Aは印刷工程、図22Bは光照射工程、のそれぞれにおける断面図を示す。図7に示すように、本実施形態に係るシート成形品の製造方法は、熱膨張層被覆樹脂シート10Eを製造する熱膨張層被覆樹脂シート製造工程S10と、印刷工程S21と、切断工程S23と、光照射工程S24と、インク除去工程S25と、を順に行う。また、熱膨張層被覆樹脂シート製造工程S10は、第1の実施形態と同様に、熱膨張層形成工程S11と、剥離層形成工程S12と、インク受容層形成工程S13と、を順に行い、さらにその後に必要に応じて、断裁工程S14を行うが、熱膨張層形成工程S11は基材の両面に対して行う。なお、本実施形態に係るシート成形品の製造では、第1の実施形態に係るシート成形品の製造に使用する装置を使用することができる。
熱膨張層形成工程S11において、第3の実施形態と同様に、基材1の一面(上面)に第1熱膨張層21を、他面(下面)に第2熱膨張層22を、それぞれ厚さt1,t2に形成する(t1=t2)。そして、剥離層形成工程S12において、第1熱膨張層21の上に剥離層31を形成し、さらにインク受容層形成工程S13において、剥離層31の上にインク受容層4を形成する。断裁工程S14において、第1の実施形態と同様に、熱膨張層21,22等を形成した基材1を切断して、後続の印刷工程S21で使用する印刷機に対応した寸法の熱膨張層被覆樹脂シート10E(図22A参照)を得る。
印刷工程S21において、図22Aおよび図16Bに示すように、熱膨張層被覆樹脂シート10Eの一面側のインク受容層4上に黒色インクで線を印刷して光熱変換部材51A,52A(図16Bでは、光熱変換部材51,52)を形成する。熱膨張層被覆樹脂シート10Eの印刷面(一面側)において、光熱変換部材51Aは山折り線、光熱変換部材52Aは谷折り線である。光熱変換部材51A,52Aは、それぞれ第1の実施形態の光熱変換部材5と同様の構成であるが、光熱変換部材51Aが、光熱変換部材52Aよりも黒色濃度が低く(淡く)形成される。これは、後続の光照射工程S24で、光熱変換部材52Aの方を高温に発熱させるためである。詳しくは光照射工程S24で説明するように、光熱変換部材51Aは、発熱することによって、直下において、直近の第1熱膨張層21を膨張させるために膨張開始温度TEs以上、好ましくは最大膨張温度TEmax近傍に加熱し、かつ、基材1を熱変形温度TD以上に加熱する。一方、光熱変換部材52Aは、発熱することによって、直下において、直近の第1熱膨張層21を最大膨張温度TEmaxを超える高温に加熱し、基材1を熱変形温度TD以上に加熱し、さらに、第2熱膨張層22を膨張開始温度TEs以上に加熱して膨張させる。光熱変換部材51A,52Aは、光照射工程S24で同じ光量を照射されてこのような温度に発熱するように、それぞれの黒色濃度を設定される。さらに、第2熱膨張層22は、光熱変換部材52Aの直下に対して線幅方向にある程度広がった領域で膨張するので、光熱変換部材52Aについて、第1の実施形態の変形例の光熱変換部材5Aと同様に、基材1の加熱される領域が確保される範囲で線幅を細く設計することが好ましい。また、第1の実施形態と同様に、光熱変換部材51A,52Aと共に、後続の切断工程S23のための切取り線となる輪郭線(図16Bの太線)を印刷してもよい。
切断工程S23において、第3の実施形態と同様に、光熱変換部材51A,52Aを形成した熱膨張層被覆樹脂シート10Eを、図16Bに太線で示す輪郭線で切断して、シート成形品13の展開形状に切り出す。
光照射工程S24において、切断した熱膨張層被覆樹脂シート10Eを、光照射装置7(7A)で、光熱変換部材51A,52Aを印刷した側の面(一面)に光を照射する。すると、光熱変換部材51A,52Aが、それぞれの黒色濃度に対応した温度に発熱し、その熱が第1熱膨張層21、基材1、第2熱膨張層22を順次伝播する。図22Bに示すように、光熱変換部材51Aの直下においては、第3の実施形態(図20B参照)での光熱変換部材51の直下と同様、第1熱膨張層21が膨張して、基材1が塑性変形し、熱膨張層被覆樹脂シート10Eが線(光熱変換部材51A)の両側で第2熱膨張層22の側へ折れ曲がって屈曲する。また、第2熱膨張層22は、第1熱膨張層21よりも最高温度が低いので膨張量が少なく、理想的には膨張開始温度TEsに到達せず、膨張しない。一方で、第1熱膨張層21をより大きく膨張させるために、光熱変換部材51Aは、最大膨張温度TEmax近傍に発熱するように黒色濃度を設計されることが好ましい。
また、光熱変換部材52Aの直下において、基材1が熱変形温度TD以上に到達し、第2熱膨張層22が膨張開始温度TEs以上に到達して膨張する。一方、光熱変換部材52Aに直近の第1熱膨張層21は、より高温に加熱されて最大膨張温度TEmaxを超える。マイクロカプセルは、一般に、最大膨張温度TEmaxを超える高温に加熱されると、内包する揮発性溶媒が殻を高速で透過して拡散するので、膨張率が低下し、また、既に膨張していた場合には収縮する。したがって、光熱変換部材52Aの直下において、第1熱膨張層21は、膨張率が最大膨張率未満であり、さらには第2熱膨張層22よりも低膨張率となる。その結果、第2熱膨張層22は、第1熱膨張層21よりも膨張量が多いので基材1に作用する荷重が高く、図22Bに示すように、熱膨張層被覆樹脂シート10Eが線(光熱変換部材52A)の両側で第1熱膨張層21の側へ折れ曲がって屈曲する。なお、光熱変換部材52Aの直下においても、直近である第1熱膨張層21の方が先に加熱されて膨張開始温度TEsに到達する。しかし、高速で加熱されることによって、第1熱膨張層21が膨張して基材1を塑性変形させる前に、さらに最大膨張温度TEmaxを大きく超える高温に到達して膨張率が低下する、または、第2熱膨張層22が第1熱膨張層21を超える膨張率となる温度に到達する。
このように、光熱変換部材52Aの直下において、直近の第1熱膨張層21は、熱膨張層21,22の最大膨張温度TEmaxよりも高温の、膨張率が十分に低下する温度(TEs+50〜80℃程度以上)に到達することが好ましい。そのために、光熱変換部材52Aは、最大膨張温度TEmax超の前記高温に発熱するように黒色濃度を設計されることが好ましい。そして、第2熱膨張層22は、膨張量がより多くなるように、最大膨張温度TEmax近傍に到達し、かつ、それ以上に昇温することなく、具体的には(TEmax+5℃)以下であることが好ましく、TEmax以下であることがさらに好ましい。また、基材1は、光熱変換部材52Aの直下の方が、光熱変換部材51Aの直下よりも高温に加熱されているので、より低い荷重で塑性変形可能であり、第1熱膨張層21がある程度膨張して、第2熱膨張層22との膨張量の差が小さくても、光熱変換部材51Aの直下と同等に屈曲させることができる。
光熱変換部材51A,52Aのそれぞれの直下で第1熱膨張層21と第2熱膨張層22が前記温度勾配を示すように、第3の実施形態と同様に、加熱速度(光熱変換部材51A,52Aの昇温速度)が高速であることが好ましく、かつ光熱変換部材51A,52Aが最高温度に到達した後は速やかに冷却されることが好ましい。
インク除去工程S25において、屈曲した熱膨張層被覆樹脂シート10Eの表面から、第1の実施形態と同様に、インク受容層4を剥離層31で剥がし取って、図17に示すシート成形品13が得られる。シート成形品13は、第3の実施形態と同様に、図16Aに示すように組み立てられて完成される。
(変形例)
シート成形品13は、第3の実施形態と同様、試作等、用途によっては、稜線に沿って光熱変換部材51A,52Aが付着したままであってもよく、この場合には、熱膨張層被覆樹脂シート10Eは剥離層31を備えていなくてよい。また、シート成形品13は、インク除去工程S25においてインク受容層4を除去する際に、その下の第1熱膨張層21ごと剥がし取って、屈曲した基材1とその片面を被覆する第2熱膨張層22で構成されてもよい。あるいはさらに第2熱膨張層22も剥がし取って、第1の実施形態の変形例に係るシート成形品11A(図10参照)のように、基材1のみで構成されてもよい(図示せず)。そのために、熱膨張層被覆樹脂シート10Eは、剥離層31に代えて、剥離層31Aを、基材1と第1熱膨張層21との間に備え、あるいはさらに基材1と第2熱膨張層22との間に備える。このようなシート成形品13は、第1の実施形態の変形例の熱膨張層被覆樹脂シート10B(図11参照)およびシート成形品11Aと同様に製造することができる。
本実施形態では、第1熱膨張層21と第2熱膨張層22とで膨張率が異なることによって膨張量を異なるものとしているが、膨張量の差をより大きくして基材1を屈曲させ易くするために、図23に示すように、初期厚さt1,t2が異なる熱膨張層21A,22Aを備える熱膨張層被覆樹脂シート10Fから製造することもできる。詳しくは、熱膨張層被覆樹脂シート10Fの印刷面(インク受容層4)からの距離の大きい第2熱膨張層22Aの初期厚さt2を厚く備える(t1<t2)。したがって、得られるシート成形品(立体造形物)13Aは、図24に断面図で示すように、稜線上以外において、熱膨張層21Aよりも熱膨張層22Aが厚く形成されている。
熱膨張層被覆樹脂シート10Fからシート成形品13Aを製造する方法は、第4の実施形態と同様である(図22A,22B参照)。すなわち、熱膨張層被覆樹脂シート10Fは、光熱変換部材51Aの直下においては、第1熱膨張層21Aの膨張によって第2熱膨張層22Aの側へ折れ曲がって屈曲する。一方、光熱変換部材52Aの直下においては、第2熱膨張層22Aが高膨張率、好ましくは最大膨張率で膨張する。このとき、第1熱膨張層21Aが第2熱膨張層22Aと同程度の膨張率で膨張していても、初期厚さの厚い第2熱膨張層22Aの方が膨張量(絶対量)が多いので、第1熱膨張層21Aの側へ折れ曲がって屈曲する。したがって、熱膨張層21A,22Aが、最大膨張温度TEmaxを超える高温下で膨張率があまり低下しない構造(マイクロカプセル等)を有していても、片面のみに光を照射して、山折り、谷折りの混在したシート成形品13Aを製造することができる。
熱膨張層被覆樹脂シート10Fにおいて、第1熱膨張層21Aと第2熱膨張層22Aとは、同じ膨張率で膨張量(絶対量)が異なる構成であればよく、初期厚さt1,t2の違いに限られず、例えばマイクロカプセルの配合等を変えることによって、それぞれの最大膨張率において第2熱膨張層22Aの方が膨張量が大きくなるように調整されてもよい。
第4の実施形態に係るシート成形品の製造方法は、基材1を両面から挟む熱膨張層21,22について、一面上の光熱変換部材51A,52Aからの距離が異なることで生じる温度勾配を利用して、所望の側を相対的に高い膨張率で膨張させて、山折り、谷折りを自在に製造されるが、それぞれの膨張温度域が異なる構造とすることによって、膨張率を同様に制御することもできる。以下、第4の実施形態の変形例に係るシート成形品の製造方法について説明する。
本変形例では、シート成形品13は、図25に示す熱膨張層被覆樹脂シート10Gから製造される。図25は、本発明の第4の実施形態の変形例に係る立体造形物の材料である熱膨張層被覆樹脂シートの構成を模式的に示す断面図である。熱膨張層被覆樹脂シート10Gは、一様な厚さの平板状の部材であり、基材1の一面上に第1熱膨張層21B、他面上に第2熱膨張層22Bをそれぞれ積層し、第2熱膨張層22B上にさらに剥離層31、インク受容層4を順に積層してなる。熱膨張層被覆樹脂シート10Gは、前記実施形態の熱膨張層被覆樹脂シート10E等と同様、インク受容層4に光熱変換部材51B,52Bを構成する黒色インクを印刷されるための被印刷物であり、本変形例では、インク受容層4が形成された他面側の表面が印刷面である。
基材1、剥離層31、およびインク受容層4の各構成は、第1、第3の実施形態で説明した通りである。第1熱膨張層21Bおよび第2熱膨張層22B(適宜まとめて、熱膨張層21B,22B)は、それぞれ第3、第4の実施形態の熱膨張層21,22と同様の構成で、初期厚さt1,t2が同じとする(t1=t2)。ただし、第1熱膨張層21Bと第2熱膨張層22Bとは、膨張開始温度T1Es,T2Esが異なるように配合され、第2熱膨張層22Bの膨張開始温度T2Esが、第1熱膨張層21Bの膨張開始温度T1Esよりも高温である(T1Es<T2Es)。また、第1熱膨張層21Bの最大膨張温度T1Emaxが、第2熱膨張層22Bの最大膨張温度T2Emaxよりも低温である(T1Emax<T2Emax)ことが好ましく、第2熱膨張層22Bの膨張開始温度T2Esよりも低温である(T1Emax<T2Es)ことがさらに好ましい。また、基材1を構成する熱可塑性樹脂の熱変形温度TDは、第2熱膨張層22Bの膨張開始温度T2Es未満である(TD<T2Es)ことが好ましい。本変形例における基材1および熱膨張層21B,22Bの熱的性質については、後記製造方法で詳細に説明する。
(シート成形品の製造方法)
本変形例に係るシート成形品の製造方法について、図26A,26B、および適宜図7を参照して説明する。図26A,26Bは、本発明の第4の実施形態の変形例に係る立体造形物製造方法を説明する模式図であり、図26Aは印刷工程、図26Bは光照射工程、のそれぞれにおける断面図を示す。図7に示すように、本変形例に係るシート成形品の製造方法は、熱膨張層被覆樹脂シート10Gを製造する熱膨張層被覆樹脂シート製造工程S10と、印刷工程S21と、切断工程S23と、光照射工程S24と、インク除去工程S25と、を順に行う。また、熱膨張層被覆樹脂シート製造工程S10は、前記実施形態と同様に、熱膨張層形成工程S11と、剥離層形成工程S12と、インク受容層形成工程S13と、を順に行い、さらにその後に必要に応じて、断裁工程S14を行う。
熱膨張層形成工程S11において、基材1の一面(上面)に第1熱膨張層21Bを、他面(下面)に第2熱膨張層22Bを、それぞれ厚さt1,t2に形成する(t1=t2)。熱膨張層21B,22Bのそれぞれの形成方法は、第1の実施形態の熱膨張層形成工程S11と同様である。本変形例においては、第1熱膨張層21Bと第2熱膨張層22Bは材料が異なるため、それぞれについてスラリーを調製する。そして、剥離層形成工程S12において、第2熱膨張層22Bの上に剥離層31を形成し、さらにインク受容層形成工程S13において、剥離層31の上にインク受容層4を形成する。断裁工程S14において、第1の実施形態と同様に、熱膨張層21B,22B等を形成した基材1を切断して、後続の印刷工程S21で使用する印刷機に対応した寸法の熱膨張層被覆樹脂シート10G(図25参照)を得る。
印刷工程S21において、図26Aおよび図16Bに示すように、熱膨張層被覆樹脂シート10Gの他面側のインク受容層4上に黒色インクで線を印刷して光熱変換部材51B,52B(図16Bでは、光熱変換部材51,52)を形成する。なお、図26A,26Bにおいては、印刷面を上側に向けて表す。熱膨張層被覆樹脂シート10Gの印刷面(他面側)において、光熱変換部材51Bは谷折り線、光熱変換部材52Bは山折り線である。光熱変換部材51B,52Bは、それぞれ前記実施形態の光熱変換部材51A,52Aと同様に、光熱変換部材51Bが、光熱変換部材52Bよりも黒色濃度が低く(淡く)形成される。詳しくは光照射工程S24で説明するように、光熱変換部材51Bは、発熱することによって、直下において、基材1を熱変形温度TD以上に加熱し、かつ、熱膨張層21B,22Bのうち、膨張開始温度の低い第1熱膨張層21Bを膨張させるために膨張開始温度T1Es以上、好ましくは最大膨張温度T1Emax近傍に加熱する。一方、光熱変換部材52Bは、発熱することによって、直下において、第2熱膨張層22Bを膨張させるために膨張開始温度T2Es以上、好ましくは最大膨張温度T2Emax近傍に加熱し、基材1を熱変形温度TD以上に加熱し、さらに第1熱膨張層21Bを最大膨張温度T1Emaxを超える高温に加熱する。光熱変換部材51B,52Bは、光照射工程S24で同じ光量を照射されてこのような温度に発熱するように、それぞれの黒色濃度を設定される。さらに、第1熱膨張層21Bは、光熱変換部材51B,52Bのそれぞれの直下に対して線幅方向にある程度広がった領域で膨張するので、光熱変換部材51Bについて、第1の実施形態の変形例の光熱変換部材5Aと同様に、基材1の加熱される領域が確保される範囲で線幅を細く設計することが好ましい。また、第1の実施形態と同様に、光熱変換部材51B,52Bと共に、後続の切断工程S23のための切取り線となる輪郭線(図16Bの太線)を印刷してもよい。
切断工程S23において、前記実施形態と同様に、光熱変換部材51B,52Bを形成した熱膨張層被覆樹脂シート10Gを、図16Bに太線で示す輪郭線で切断して、シート成形品13の展開形状に切り出す。
光照射工程S24において、切断した熱膨張層被覆樹脂シート10Gを、光照射装置7(7A)で、光熱変換部材51B,52Bを印刷した側の面(他面)に光を照射する。すると、光熱変換部材51B,52Bが、それぞれの黒色濃度に対応した温度に発熱し、その熱が第2熱膨張層22B、基材1、第1熱膨張層21Bを順次伝播する。光熱変換部材51Bの直下においては、基材1が熱変形温度TD以上に到達し、第1熱膨張層21Bが膨張開始温度T1Es以上に到達して膨張する。その結果、図26Bに示すように、熱膨張層被覆樹脂シート10Gが線(光熱変換部材51B)の両側で第2熱膨張層22Bの側へ折れ曲がって屈曲する。また、光熱変換部材51Bの直近の第2熱膨張層22Bは、膨張温度域に対して低温で、膨張量が第1熱膨張層21Bよりも少なく、理想的には膨張開始温度T2Esに到達せず、膨張しない。一方で、第1熱膨張層21は、より大きく膨張させるために、最大膨張温度T1Emax近傍に到達することが好ましい。そのために、光熱変換部材51Bは、T1Es以上かつTD以上であってT2Emaxよりも十分に低い温度に発熱するように黒色濃度を設計され、好ましくはT2Es未満、さらに好ましくはT1Emax近傍に発熱する黒色濃度を設計される。
また、光熱変換部材52Bの直下において、第2熱膨張層22Bが膨張開始温度T2Es以上に到達して膨張し、基材1が熱変形温度TD以上に到達する。一方、第1熱膨張層21Bは、最大膨張温度TE1maxを超える高温に到達して、第2熱膨張層22Bよりも低膨張率となる。したがって、図26Bに示すように、熱膨張層被覆樹脂シート10Gが線(光熱変換部材52B)の両側で第1熱膨張層21Bの側へ折れ曲がって屈曲する。第2熱膨張層22Bは、膨張量がより多くなるように最大膨張温度T2Emax近傍に到達することが好ましく、第1熱膨張層21Bは、膨張率が十分に低下する温度(T1Es+50〜80℃程度以上)に到達することが好ましい。そのために、光熱変換部材52Bは、T2Es以上(かつTD以上)、T1Emax超に発熱するように黒色濃度を設計され、好ましくは、T1Emaxよりも十分に高い温度、かつT2Emax近傍に発熱する黒色濃度を設計される。
光熱変換部材52Bの直下においては、第1熱膨張層21Bの膨張による基材1の塑性変形を阻止するために、基材1が熱変形温度TDに到達し、かつ第1熱膨張層21Bが膨張開始温度T1Esに到達して膨張によって基材1を塑性変形させる前に、第4の実施形態と同様に、第1熱膨張層21Bが膨張率が十分に低下する温度(最高温度)に到達することが好ましい。あるいは、第2熱膨張層22Bが膨張開始温度T2Esに到達して膨張を開始することが好ましい。そのために、加熱速度(光熱変換部材51B,52Bの昇温速度)が高速であることが好ましい。なお、第4の実施形態と同様、基材1は、光熱変換部材52Bの直下の方が、光熱変換部材51Bの直下よりも高温に加熱されているので、より低い荷重で塑性変形可能である。また、本変形例は、基材1の厚さが薄い等、熱膨張層21B,22B間に十分な温度勾配が生じ難い場合でも有効である。
インク除去工程S25において、屈曲した熱膨張層被覆樹脂シート10Gの表面から、前記実施形態と同様に、インク受容層4を剥離層31で剥がし取って、図22に示すシート成形品13が得られる。シート成形品13は、第3の実施形態と同様に、図16Aに示すように組み立てられて完成される。
本変形例においても、第3、第4の実施形態と同様、シート成形品13は、用途によっては、稜線に沿って光熱変換部材51B,52Bが付着したままであってもよく、この場合には、熱膨張層被覆樹脂シート10Gは剥離層31を備えていなくてよい。また、前記実施形態で説明したように、インク除去工程S25においてインク受容層4を除去する際に、その下の第2熱膨張層22Bごと剥がし取ってもよく、さらに第1熱膨張層21Bも剥がし取ってもよい。
本変形例においても、第4の実施形態と同様に膨張量の差をより大きくして基材1を屈曲させ易くするために、熱膨張層被覆樹脂シート10F(図23参照)のように、熱膨張層21B,22Bの初期厚さt1,t2が異なる構造としてもよい。詳しくは、膨張開始温度の高い第2熱膨張層22Bの初期厚さt2を厚く備える(t1<t2)。第1熱膨張層21Bが、最大膨張温度TE1maxを超える高温下で膨張率が低下し難い構造であっても、光熱変換部材52Bの直下で、第2熱膨張層22Bの方が膨張量(絶対量)が多いので、熱膨張層被覆樹脂シート10Gが第1熱膨張層21Bの側へ折れ曲がって屈曲する。あるいは、マイクロカプセルの配合等によって、それぞれの最大膨張率において第2熱膨張層22Bの方が膨張量が大きくなるように調整されてもよい。
〔第5の実施形態〕
本発明に係る立体造形物は、その製造過程で光を照射されると屈曲して製造されるので、照射前の展開形状での寸法が大きい場合、光照射装置でまだ光を照射されていない領域が残存した状態で、先に光を照射された領域が屈曲することになる。この場合、第1の実施形態の変形例で説明したように、シートローダで挟持して搬送することによって適切に光を照射することが可能であるが、形状によっては搬送が困難になる。また、立体造形物は、光照射されている時には、装置に非接触であることが理想的である。そこで、光を照射される領域で非接触としつつ限定的に立体造形物の位置が固定されるように、光照射装置を構成する。以下、本発明の第5の実施形態に係る立体造形物製造方法について、図27および図28を参照して説明する。図27は、立体造形物の製造に使用する光照射装置の概要を説明する外観図である。図28は、本発明の第5の実施形態に係る立体造形物製造方法を説明する模式図であり、切断工程における平面図を示す。前記実施形態(図1〜26参照)と同一の要素については同じ符号を付し、説明を省略する。
(光照射装置)
本実施形態においては、光照射工程S24で、図27に示す光照射装置7Cを使用する。光照射装置7Cは、光照射部71、冷却器72(図示省略)、防護板73、搬送機構8D、および切断機構9を備える。光照射装置7Cは、第1、第2、第4の実施形態で使用される光照射装置7(図5参照)と同様、被処理物の上面に光を照射し、光照射部71、冷却器72、および防護板73は光照射装置7と同様の構造である。
搬送機構8Dは、被処理物を一定速度で水平な一方向に搬送して、光照射領域を通過させる。搬送機構8Dは、定形サイズの被処理物を、搬送幅方向両端(両縁)近傍で挟持して搬送するために、両縁のそれぞれに配置され、さらに少なくとも光照射領域で挟持されるように、被処理物の上下に設けられた計4組のベルトコンベアからなる。したがって、搬送機構8Dは、ベルト81A、ヘッドプーリ(ドライブプーリ)82、およびテールプーリ83を4ずつ備え、さらに上側2組のベルトコンベアにアイドルプーリ87を備え、4個のヘッドプーリ82を回転駆動させるモータ(図示省略)等で構成される。また、搬送機構8Dの後方に、光照射装置7Aの搬入案内板75および搬送ローラ85を備えてもよい。
切断機構9は、搬送幅方向における搬送機構8Dの内側の所定の位置で、被処理物を搬送方向に沿って連続的に切断するスリッターであり、光照射領域の前方、両縁近傍に、被処理物を上下から挟むように、上刃91と下刃92を備える。刃91,92は、搬送方向における位置が、光照射領域よりも前、かつ被処理物(熱膨張層被覆樹脂シート10)が屈曲し始める位置以後とする。刃91,92は、搬送幅方向、あるいはさらに搬送方向に位置を調整することができるように設けられていることが好ましい。
光照射装置7Cによれば、被処理物が、光照射領域において、搬送経路から外れることがないので安定して光を照射され、また、光照射装置7Cの部品等に非接触であるので、熱の伝播状態が均一で、熱膨張層の膨張が妨げられない。一方、被処理物が、光照射領域を通過した部分で切断機構9によって搬送機構8Dに挟持された両縁を切り離されるため、屈曲、変形を妨げられない。また、光照射装置7Cは、光照射部71、冷却器72、および防護板73を上下反転して配置して、被処理物の下面に光を照射する構成としてもよいし、光照射部71、冷却器72、および防護板73を2ずつ備えて、被処理物の両面に同時に光を照射する光照射装置とすることもできる。
光照射装置7Cで光を照射されるために、熱膨張層被覆樹脂シート10は、切断工程S23において、図28に示すように、周縁に枠状のフレーム10fを残し、輪郭線の一部を切断せずにタイバー10bでフレーム10fと連結する。フレーム10fは、光照射装置7Cの搬送機構8Dに挟持されるための部分である。タイバー10bは、熱膨張層被覆樹脂シート10(シート成形品11の屈曲前)をフレーム10fに連結するために設けられ、光照射装置7Cの切断機構9によって切断される。そのために、タイバー10bは、フレーム10fの搬送幅方向両端(両縁)に接続するように形成され、輪郭線から搬送方向に非平行に延びて、好ましくは搬送幅方向に延びて形成される。搬送方向におけるタイバー10b,10bの間隔(ピッチ)は、切断機構9でタイバー10bが切断された時に、その後方のタイバー10bが光照射領域を通過しているように形成される。さらに、タイバー10bは、組立て後のシート成形品11において、表側に露出しない箇所に接続することが好ましい。
光照射工程S24において、前記の通り切断された熱膨張層被覆樹脂シート10は、光照射装置7Cで光を照射されると、光照射領域を通過した部分が切断機構9によってタイバー10bを切断され、光熱変換部材5に沿って屈曲を開始することができる。そして、光照射工程S24の後、屈曲した熱膨張層被覆樹脂シート10から、鋏等を使用して、残存するタイバー10bを輪郭線で切断して切り落とす。
(変形例)
前記実施形態では、光照射装置に切断機構を備えて、機械的に両縁を切り離しているが、被処理物が熱可塑性樹脂を主体としてなることから、切断機構によらずに両縁を切り離すこともできる。以下、第5の実施形態の変形例に係る立体造形物製造方法について、図29を参照して説明する。図29は、本発明の第5の実施形態の変形例に係る立体造形物製造方法を説明する模式図であり、切断工程における平面図を示す。前記実施形態(図1〜28参照)と同一の要素については同じ符号を付し、説明を省略する。
本変形例においては、前記実施形態で使用する光照射装置7C(図27参照)を使用することができ、ただし、切断機構9は不要である。
熱膨張層被覆樹脂シート10は、切断工程S23において、図29に示すように、前記実施形態と同様に、周縁に枠状のフレーム10fを残し、輪郭線の一部を切断せずにタイバー10bでフレーム10fと連結する。本変形例においては、タイバー10bの延びる方向は特に規定されず、フレーム10fの搬送方向両端にも接続してよい。また、タイバー10bは、連結を保持することのできる程度に細いことが好ましい。また、印刷工程S21において、光熱変換部材5と共に、タイバー10bをそれぞれ横切る線5dを黒色インクで印刷する。この線5dは、光照射装置7Cで光を照射されたときに発熱して、熱膨張層被覆樹脂シート10(基材1および熱膨張層2)を溶融させることによってタイバー10bを切断する。そのために、線5dは、黒色濃度を十分に高くし、かつ線幅を太く形成する。線5dのタイバー10bにおける位置は特に形成されず、輪郭線上でもよい。
光照射工程S24において、前記の通り切断された熱膨張層被覆樹脂シート10は、光照射装置7Cで光を照射されると、光照射領域を通過した部分で光熱変換部材5に沿って屈曲を開始すると共に、線5dの直下で溶融し、屈曲しようとする負荷によってタイバー10bが切断される。光照射工程S24の後、屈曲した熱膨張層被覆樹脂シート10から、鋏等を使用して、残存するタイバー10bを輪郭線で切断して切り落とす。
本発明の第1〜第4実施形態に係る立体造形物は、平面を折り曲げて形成される立体形状や湾曲させた可展面で構成される立体形状である。しかし、基材を構成する熱可塑性樹脂は熱変形するので、光熱変換部材を形成した線状の領域を骨格とした、球面等の三次元曲面に近い面を有するシート成形品(図示省略)を製造することもできる。熱膨張層被覆樹脂シート10は、光熱変換部材5,5間の狭い領域では、光熱変換部材5のそれぞれで屈曲するので全体で大きく湾曲し、広い領域では緩やかに湾曲するので、光熱変換部材5のパターンによって任意の面形状に変形させ、あるいはさらに、光熱変換部材5の黒色濃度や線幅によって屈曲角を調整することができる。特に、光熱変換部材5の直下およびその近傍において基材1が熱変形温度TD以上に加熱されて変形し易いので、光熱変換部材5,5間を狭く形成することによって、より滑らかな曲面に変形させることができる。
以上のように、本発明によれば、金型等を使用せずに、樹脂シートを折り曲げたり湾曲させたりした、所望の立体形状とすることができる。
本発明は、上記実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更実施が可能である。
以下、本発明の実施例として、第1の実施形態の変形例(図12、図13Aおよび図13B参照)に係るシート成形品を模擬したサンプルを、条件を変えて試作して、その効果を確認した。本実施例においては、基材の側にのみインク受容層を設けた熱膨張層被覆樹脂シート(熱膨張層/基材/インク受容層)が作製された。基材は、厚さ180μmの非晶性ポリエチレンテレフタレート(A−PET、熱変形温度70〜80℃)フィルムを適用した。この基材の一面(裏面)にインク受容層を形成し、他面(表面)にマイクロカプセルを含有したエチレン・酢酸ビニル共重合(EVA)樹脂を塗布して60〜80μmの範囲の厚さの熱膨張層を形成して、合計厚さ250μmの熱膨張層被覆樹脂シートが作製された。熱膨張層のマイクロカプセルは、松本油脂製薬株式会社製マツモトマイクロスフェアー(登録商標)F−36LVを適用し、平均粒子径13〜19μm、発泡開始温度75〜85℃、最大膨張温度110〜120℃である。また、一部の熱膨張層被覆樹脂シート(表2参照)について、基材の表面に、剥離層(図11参照)としてEVOH樹脂フィルム(エバール、株式会社クラレ製)を貼り合わされてから、その上に熱膨張層を形成して、合計厚さ272μmとした(熱膨張層/剥離層/基材/インク受容層)。
作製された熱膨張層被覆樹脂シートは、インクジェットプリンタを用いられて、黒色インク(光熱変換部材)で表1および表2に示す黒色濃度および線幅の直線を裏面(インク受容層)に印刷されて、15mm×30mmの長方形に切断された。切断された熱膨張層被覆樹脂シートにおいては、印刷した直線が、長手方向の一端から10mmの位置で、短辺方向となる。熱膨張層被覆樹脂シートは、裏面(印刷面)を上に向け、角材の上面に、前記一端側の長手方向2/3程度が張り出すように、残部(長手方向1/3程度)を両面テープで貼り付けられ、さらに上からセロハンテープで固定された。固定された熱膨張層被覆樹脂シートは、角材から張り出した部分を含めて水平に保持され、この張り出した部分における下面(熱膨張層)を非接触とされた。最後に、熱膨張層被覆樹脂シートは、20mm上方から近赤外線ヒータで光を照射された。このとき、近赤外線ヒータは、表1および表2に示す移動速度で、熱膨張層被覆樹脂シートの角材に固定した側から印刷した直線を横切るように(熱膨張層被覆樹脂シートの長手方向に)水平移動した。なお、移動速度650,700,750pps(パルス/秒)は、それぞれ線速度27.1,29.2,31.2mm/sに相当する。近赤外線ヒータは、1000Wの直管型ハロゲンランプを光源とし、パラボラ(拡散)タイプで約45mm幅の反射鏡を備えるものであり、幅方向に移動可能となるように直動機構に取り付けられた。光を照射した熱膨張層被覆樹脂シート(サンプル)について、目視で屈曲角を測定し、表1および表2に示す。
Figure 2020044834
Figure 2020044834
熱膨張層被覆樹脂シートは、光を照射されると、印刷された直線を凹稜線として、下に向けた表面(熱膨張層)を外側にして屈曲し、角材に固定されていない長手方向の一端が立ち上がって変形した。表1および表2に示すように、直線の黒色濃度が高いほど、また、線幅が太いほど、屈曲角が大きく、最大で180°、すなわち完全に二つ折りになった。ただし、黒色濃度が一定以下の淡い直線や、黒色濃度が最大(100%)でも線幅が一定以下の細い直線を印刷したサンプルについては、屈曲角0°、すなわち屈曲せず、平らなままであった。また、ハロゲンランプの移動速度が遅い、すなわち光照射時間の長いサンプルは、屈曲角が大きく、また、淡い直線や細い直線も屈曲させることができた。また、剥離層を設けた熱膨張層被覆樹脂シートは、剥離層のないものよりも、屈曲角が小さかった。
このように、光熱変換部材の黒色濃度および線幅をそれぞれ一定以上とすることで、光熱変換部材を印刷した領域において、熱膨張層が膨張開始温度以上に加熱されて膨張し、その結果、熱膨張層被覆樹脂シートを屈曲させることができる。さらに、黒色濃度を高く、また線幅を太く印刷することによって、熱膨張層が大きく膨張し、また、基材が加熱されて軟化し、その結果、屈曲角を大きくすることができる。また、光の照射時間を長くすることによって、光熱変換部材、さらに熱膨張層の温度が上昇するので、光熱変換部材の黒色濃度が低く、または線幅が細くても、熱膨張層が膨張し、熱膨張層被覆樹脂シートを屈曲させることができ、さらに屈曲角を大きくすることができる。また、熱膨張層被覆樹脂シートは、基材の厚さ、またはさらに剥離層との合計の厚さが大きいほど、屈曲し難い。したがって、基材等の厚さおよび必要とする屈曲角に応じて、黒色濃度および線幅、あるいはさらに光の照射時間を設定することが好ましいといえる。特に、本実施例のように、熱膨張層と反対側の面を印刷面とする熱膨張層被覆樹脂シートは、基材等で隔てられているので、基材等が厚いほど光熱変換部材から熱膨張層に熱が伝播するまでに時間がかかり、光照射時間が短いと屈曲し難いと推測される。
以下に、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲に記載した発明を付記する。付記に記載した請求項の項番は、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲の通りである。
〔付記〕
《請求項1》
熱可塑性樹脂からなるシート状の基材が、稜線で屈曲して変形してなる立体造形物であって、
少なくとも前記稜線における、前記基材の屈曲して外側となっている面上に、前記熱可塑性樹脂の熱変形温度以上に加熱されると膨張する熱膨張層が被覆し、
前記熱膨張層が前記稜線において膨張していることを特徴とする立体造形物。
《請求項2》
前記熱膨張層が前記基材の両面上を被覆し、
前記稜線において、前記基材の屈曲した外側の前記熱膨張層が、内側の前記熱膨張層よりも膨張量が大きいことを特徴とする請求項1に記載の立体造形物。
《請求項3》
前記稜線以外において、前記熱膨張層は、前記基材の一面上の方が他面上よりも厚いことを特徴とする請求項2に記載の立体造形物。
《請求項4》
前記稜線において、少なくとも一方の表面に、吸収した光を熱に変換して放出する光熱変換成分が付着していることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の立体造形物。
《請求項5》
前記基材が光を透過し、
前記稜線において、前記熱膨張層と基材の間の面に、吸収した光を熱に変換して放出する光熱変換成分が付着していることを特徴とする請求項1に記載の立体造形物。
《請求項6》
前記光熱変換成分が付着している面に、インク受容層が形成されていることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の立体造形物。
《請求項7》
所定の温度域に加熱されると膨張する熱膨張層を、熱変形温度が前記所定の温度域以下である熱可塑性樹脂からなるシート状の基材上に形成する熱膨張層形成工程と、
吸収した光を熱に変換して放出する光熱変換成分を含有する印刷材料で、少なくとも一方の表面に、線を描画する印刷工程と、
前記線を描画した側に、前記光熱変換成分により熱に変換される光を照射する光照射工程と、を行い、
前記光照射工程は、前記線の直下における前記熱膨張層を膨張させると共に、前記基材を、膨張した前記熱膨張層を外側にして前記線で屈曲させることを特徴とする立体造形物製造方法。
《請求項8》
前記熱膨張層形成工程は、前記基材の両面上に前記熱膨張層を形成し、
前記光照射工程は、前記線の直下における両面の前記熱膨張層を、膨張量が互いに異なるように膨張させて、膨張量の大きい方の前記熱膨張層を外側にして前記線で屈曲させることを特徴とする請求項7に記載の立体造形物製造方法。
《請求項9》
前記熱膨張層形成工程は、前記熱膨張層を、前記基材の一面上に他面上よりも厚く形成することを特徴とする請求項8に記載の立体造形物製造方法。
《請求項10》
吸収した光を熱に変換して放出する光熱変換成分を含有する印刷材料で線を描画する印刷工程と、
所定の温度域に加熱されると膨張する熱膨張層を、熱変形温度が前記所定の温度域以下である熱可塑性樹脂からなり前記光を透過するシート状の基材の一面上に形成する熱膨張層形成工程と、
前記基材側に、前記光熱変換成分により熱に変換される光を照射する光照射工程と、を行い、
前記印刷工程は、前記線を、前記基材の前記一面上にまたは前記熱膨張層の前記基材側となる面上に描画し、
前記光照射工程は、前記線の直下における前記熱膨張層を膨張させると共に、前記基材を、前記一面を外側にして前記線で屈曲させることを特徴とする立体造形物製造方法。
《請求項11》
前記印刷工程よりも前に、前記印刷材料の受容層を形成するインク受容層形成工程を行い、
前記印刷工程は、前記線を前記受容層の表面に描画することを特徴とする請求項7ないし請求項10のいずれか一項に記載の立体造形物製造方法。
《請求項12》
前記インク受容層形成工程よりも前に、剥離層を形成する剥離層形成工程を行い、
前記インク受容層形成工程は、前記受容層を前記剥離層上に形成し、
前記光照射工程よりも後に、前記受容層を前記剥離層で剥離して除去するインク除去工程を行うことを特徴とする請求項11に記載の立体造形物製造方法。
《請求項13》
前記熱膨張層形成工程よりも前に、前記基材と前記熱膨張層の間の剥離層を形成する剥離層形成工程を行い、
前記光照射工程よりも後に、前記熱膨張層を前記剥離層で前記基材から剥離して除去する熱膨張層除去工程を行うことを特徴とする請求項7ないし請求項11のいずれか一項に記載の立体造形物製造方法。
《請求項14》
前記光照射工程よりも前に、前記基材を切断して所望の平面視形状に加工する切断工程を行う請求項7ないし請求項13のいずれか一項に記載の立体造形物製造方法。
《請求項15》
前記切断工程は、前記基材を前記平面視形状の輪郭線の一部を残して切断すると共に、前記基材が、前記輪郭線の前記一部から当該切断工程前における周縁部に連結する連結部を1本以上有するように切断し、
前記光照射工程の後または同時に、前記基材の前記連結部を前記輪郭線で切断することを特徴とする請求項14に記載の立体造形物製造方法。
《請求項16》
前記印刷工程は、さらに前記連結部を横切る線を前記印刷材料で描画し、
前記光照射工程において、前記基材の前記連結部が、当該連結部を横切る前記線で溶融することによって切断されることを特徴とする請求項15に記載の立体造形物製造方法。
10,10B,10C,10D,10E,10F,10G 熱膨張層被覆樹脂シート
10b タイバー(連結部)
10f フレーム(周縁部)
11,12 シート成形品(立体造形物)
13,13A シート成形品(立体造形物)
1,1A 基材
2 熱膨張層
21,21A,21B 第1熱膨張層
22,22A,22B 第2熱膨張層
31,31A 剥離層
4 インク受容層
5,5A 光熱変換部材
51,51A,51B 光熱変換部材
52,52A,52B 光熱変換部材
7,7A,7B,7C 光照射装置
71 光照射部
8,8A,8B,8C,8D 搬送機構
9 切断機構
S10 熱膨張層被覆樹脂シート製造工程
S11 熱膨張層形成工程
S12 剥離層形成工程
S13 インク受容層形成工程
S21 印刷工程
S22 貼合工程
S23 切断工程
S24,S24A 光照射工程
S25 インク除去工程
S25A 熱膨張層除去工程

Claims (16)

  1. 熱可塑性樹脂からなるシート状の基材が、稜線で屈曲して変形してなる立体造形物であって、
    少なくとも前記稜線における、前記基材の屈曲して外側となっている面上に、前記熱可塑性樹脂の熱変形温度以上に加熱されると膨張する熱膨張層が被覆し、
    前記熱膨張層が前記稜線において膨張していることを特徴とする立体造形物。
  2. 前記熱膨張層が前記基材の両面上を被覆し、
    前記稜線において、前記基材の屈曲した外側の前記熱膨張層が、内側の前記熱膨張層よりも膨張量が大きいことを特徴とする請求項1に記載の立体造形物。
  3. 前記稜線以外において、前記熱膨張層は、前記基材の一面上の方が他面上よりも厚いことを特徴とする請求項2に記載の立体造形物。
  4. 前記稜線において、少なくとも一方の表面に、吸収した光を熱に変換して放出する光熱変換成分が付着していることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の立体造形物。
  5. 前記基材が光を透過し、
    前記稜線において、前記熱膨張層と基材の間の面に、吸収した光を熱に変換して放出する光熱変換成分が付着していることを特徴とする請求項1に記載の立体造形物。
  6. 前記光熱変換成分が付着している面に、インク受容層が形成されていることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の立体造形物。
  7. 所定の温度域に加熱されると膨張する熱膨張層を、熱変形温度が前記所定の温度域以下である熱可塑性樹脂からなるシート状の基材上に形成する熱膨張層形成工程と、
    吸収した光を熱に変換して放出する光熱変換成分を含有する印刷材料で、少なくとも一方の表面に、線を描画する印刷工程と、
    前記線を描画した側に、前記光熱変換成分により熱に変換される光を照射する光照射工程と、を行い、
    前記光照射工程は、前記線の直下における前記熱膨張層を膨張させると共に、前記基材を、膨張した前記熱膨張層を外側にして前記線で屈曲させることを特徴とする立体造形物製造方法。
  8. 前記熱膨張層形成工程は、前記基材の両面上に前記熱膨張層を形成し、
    前記光照射工程は、前記線の直下における両面の前記熱膨張層を、膨張量が互いに異なるように膨張させて、膨張量の大きい方の前記熱膨張層を外側にして前記線で屈曲させることを特徴とする請求項7に記載の立体造形物製造方法。
  9. 前記熱膨張層形成工程は、前記熱膨張層を、前記基材の一面上に他面上よりも厚く形成することを特徴とする請求項8に記載の立体造形物製造方法。
  10. 吸収した光を熱に変換して放出する光熱変換成分を含有する印刷材料で線を描画する印刷工程と、
    所定の温度域に加熱されると膨張する熱膨張層を、熱変形温度が前記所定の温度域以下である熱可塑性樹脂からなり前記光を透過するシート状の基材の一面上に形成する熱膨張層形成工程と、
    前記基材側に、前記光熱変換成分により熱に変換される光を照射する光照射工程と、を行い、
    前記印刷工程は、前記線を、前記基材の前記一面上にまたは前記熱膨張層の前記基材側となる面上に描画し、
    前記光照射工程は、前記線の直下における前記熱膨張層を膨張させると共に、前記基材を、前記一面を外側にして前記線で屈曲させることを特徴とする立体造形物製造方法。
  11. 前記印刷工程よりも前に、前記印刷材料の受容層を形成するインク受容層形成工程を行い、
    前記印刷工程は、前記線を前記受容層の表面に描画することを特徴とする請求項7ないし請求項10のいずれか一項に記載の立体造形物製造方法。
  12. 前記インク受容層形成工程よりも前に、剥離層を形成する剥離層形成工程を行い、
    前記インク受容層形成工程は、前記受容層を前記剥離層上に形成し、
    前記光照射工程よりも後に、前記受容層を前記剥離層で剥離して除去するインク除去工程を行うことを特徴とする請求項11に記載の立体造形物製造方法。
  13. 前記熱膨張層形成工程よりも前に、前記基材と前記熱膨張層の間の剥離層を形成する剥離層形成工程を行い、
    前記光照射工程よりも後に、前記熱膨張層を前記剥離層で前記基材から剥離して除去する熱膨張層除去工程を行うことを特徴とする請求項7ないし請求項11のいずれか一項に記載の立体造形物製造方法。
  14. 前記光照射工程よりも前に、前記基材を切断して所望の平面視形状に加工する切断工程を行う請求項7ないし請求項13のいずれか一項に記載の立体造形物製造方法。
  15. 前記切断工程は、前記基材を前記平面視形状の輪郭線の一部を残して切断すると共に、前記基材が、前記輪郭線の前記一部から当該切断工程前における周縁部に連結する連結部を1本以上有するように切断し、
    前記光照射工程の後または同時に、前記基材の前記連結部を前記輪郭線で切断することを特徴とする請求項14に記載の立体造形物製造方法。
  16. 前記印刷工程は、さらに前記連結部を横切る線を前記印刷材料で描画し、
    前記光照射工程において、前記基材の前記連結部が、当該連結部を横切る前記線で溶融することによって切断されることを特徴とする請求項15に記載の立体造形物製造方法。
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