JP2020044189A - 腋下用バイタルサイン測定器 - Google Patents

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Abstract

【課題】腋下の腋窩動脈を利用して、体温、脈拍数、血中酸素飽和度、血圧の4つのバイタルサインを、略同時かつ高精度に測定でき、検出部のコンパクト化も図れる腋下用バイタルサイン測定器を提供する。【解決手段】腋下用バイタルサイン測定器10は、本体ケーシング11内に、体温計13と、腋下から腋窩動脈14に照射された赤色光と近赤外光の反射光より血中酸素飽和度と脈拍を測るパルスオキシメータ15と、腋下から照射された光の反射光に基づき血圧を測る血圧計16とが収納され、バイタルサイン検出部12は、体温センサ30と、赤色発光ダイオード28と、近赤外光発光ダイオード29と、各光を受光するフォトトランジスタ19とを備えている。【選択図】図1

Description

本発明は、生体の体温、脈拍、血中酸素飽和度および血圧を、腋下の腋窩動脈等から略同時に測定可能な腋下用バイタルサイン測定器に関する。
バイタルサインとは、医療用語として生命兆候を意味し、生体の体温、脈拍、血中酸素飽和度、血圧等の生死を確認するための情報を指す。
生体の体温を計測する体温計としては、例えば特許文献1のように、腋の下に挟む電子体温計が一般的であるが、近年、例えば特許文献2のように、生体の額や耳孔等から放射される赤外線を感知することで体温を測定する非接触型の体温計も開発されている。
また、生体の血中酸素飽和度や脈拍を測定する電子機器として、プローブ(バイタルサイン検出部)を身体の一部に当接させ、侵襲を伴わずに脈拍数と、血中酸素飽和度(SpO:Percutaneous Oxygen Saturation)とをモニタリングするパルスオキシメータが知られている。パルスオキシメータには、一般的な透過型と、近年開発された反射型とがある(例えば、非特許文献1等)。
透過型のパルスオキシメータによれば、プローブ(バイタルサイン検出部)により生体の指先や耳を挟み、このプローブの片側に配された赤色LED(発光部)と近赤外光LED(発光部)とから、指先や耳の細動脈に、可視光線の赤色光(RED:波長660nm)と近赤外光(IR:波長940nm)とをそれぞれ照射する。その後、指先等を透過した光をプローブの反対側に配されたフォトトランジスタの光センサが受光する。これにより、血中の酸素に結合した酸化ヘモグロビン(HbO)と、酸素に結合していない還元ヘモグロビン(HHb)との比から、血中酸素飽和度を測定することができる(HbO/(HbO+HHb)×100(%))。
一方、反射型のパルスオキシメータは、プローブの身体当接側の平面に、赤色LEDと、受光部と、近赤外光LEDとを互いに近接状態で配置したものである。この反射型のプローブを生体の前額部に貼着したり、指先に当接することで、末梢血管を流れる血中ヘモグロビンからの反射光を光センサが受光し、血中酸素飽和度を測定する。
血圧計は、カフ(圧迫帯)を用いて加圧し測定する機器が主流である。また、最近ではカフを使用せず、圧力センサによって測定可能な腕時計タイプのものや、指先の血流量の変動を近赤外光によって感知することで、血圧測定を可能にしたもの等が開発されている(例えば、特許文献2等)。
特公平3−24615号公報 特開2016−112277号公報 [平成30年9月10日検索]、インターネット<URL:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsicm/23/6/23_625/_pdf
しかしながら、このように生体の体温は体温計により測定し、また生体の脈拍および血中酸素飽和度はパルスオキシメータにより測定し、さらに血圧は所定の血圧計を利用して、それぞれ測定していた。そのため、例えば、多くの入院患者(生体)を収容する総合病院等の看護師は、短時間で多数の患者のバイタルサインを測定して記録しなければならず、過酷な作業となっていた。
また、バイタルサインの測定部位が指先や額であれば、患者の状態によっては測定不可、あるいは正確な測定ができず、測定に時間がかかるという別の問題もあった。具体的には、循環血液量の不足、低血圧や末梢血管収縮といった末梢循環不全、あるいは、浮腫がある患者に対して、指先での血中酸素飽和度等の測定は不適切であった。また、測定部位が額の場合、外気温で表面温度が変化するため、正確に体温を測定することはできなかった。
さらに、例えば、両腕に関節拘縮の症状がある患者に対する血圧測定時においては、仮にカフ式の血圧計を用いれば、カフを腕に巻き付ける際に患者の腕に大きな外力を作用させる必要がある。その結果、骨折のリスクや、腕にカフを巻けずに測定困難となるおそれもあり、バイタルサインの測定の安全性に問題があった。
そこで、発明者は鋭意研究の結果、生体の体温、脈拍、血中酸素飽和度および血圧の4つのバイタルサインを、腋下、特に末梢血管より太い腋窩動脈をターゲットにして測定すれば、上述した問題点は全て解消されることを知見し、この発明を完成させた。このように、各バイタルサインの測定ターゲットとして腋窩動脈を採用した理由は、腋窩動脈が皮膚に近い動脈の中でも太い血管である点と、仮に同じく皮膚に近い別の大動脈である頸動脈や大腿動脈を採用した場合には、腋窩動脈の場合のように、腋下に腋下用バイタルサイン測定器を挟むという動作ができないため、バイタルサイン測定時の腋下用バイタルサイン測定器の固定が難しい点等が課題になるためである。
本発明は、このような問題点に鑑みなされたもので、腋下の皮膚にバイタルサイン検出部を当接する動作のみを行うだけで、腋下温および腋窩動脈中を流れる血中ヘモグロビンを利用して、体温、脈拍数、血中酸素飽和度、血圧の4つのバイタルサインを、略同時かつ高精度に測定できるとともに、バイタルサイン検出部のコンパクト化も図ることができ、さらにバイタルサインの測定時の安全性も高まる腋下用バイタルサイン測定器を提供することを目的としている。
請求項1に記載の本発明は、生体の腋下に保持される本体ケーシングの先端に、バイタルサイン検出部が設けられた腋下用バイタルサイン測定器であって、前記本体ケーシングには、前記生体の腋下温を測定する体温計と、前記生体の腋下の皮膚から腋窩動脈に向かって照射された赤色光と近赤外光との各反射光に基づいて、前記生体の血中酸素飽和度および脈拍を測定するパルスオキシメータと、前記生体の腋下の皮膚から前記腋窩動脈に向かって照射された赤色光または近赤外光の反射光に基づき、前記生体の血圧を測定する血圧計とが収納され、前記バイタルサイン検出部は、前記体温計用の体温センサと、前記赤色光を発光する赤色発光ダイオードと、前記近赤外光を発光する近赤外光発光ダイオードと、これらの光を受光するフォトトランジスタとを有したことを特徴とする腋下用バイタルサイン測定器である。
ここでいう生体とは人間(患者や被験者等)である。
本体ケーシングの素材としては、例えば、各種のプラスチック、各種の金属等を採用することができる。
本体ケーシングの形状は任意である。例えば、中空棒状等でもよい。
本体ケーシング(腋下用バイタルサイン測定器)は、例えば、腋下差し込み式のもの、貼着シート等による腋下貼着式のもの等を採用することができる。
本体ケーシングには、バイタルサインの各測定結果を表示する液晶ディスプレイを設けてもよい。本体ケーシングには、これらの測定結果とともに、患者のIDナンバーを示すバーコード、QRコードを表示してもよい。バイタルサイン測定時、これらのコードを読み取り器により読み取ることで、生体のバイタルサインの測定結果の管理が容易となる。
ここでいうバイタルサインとは、少なくとも生体の体温、脈拍、血中酸素飽和度(SpO)、血圧を含むものである。
バイタルサイン検出部とは、腋下用バイタルサイン測定器における、少なくとも体温、脈拍、血中酸素飽和度および血圧を測定するための各センサ部分である。これらのセンサ部分は、本体ケーシングの先端(先端部)に、パック状態で配されても、分散状態で配されてもよい。
体温計の種類としては、腋下温を測定可能なデジタル式のものであれば限定されない。例えば、体温センサとしてサーミスタを使用するサーミスタ式体温計や、赤外線式体温計等でもよい。
ここでのパルスオキシメータの種類は、生体の腋窩動脈を流れる血液の血中酸素飽和度と、生体の脈拍とを測定可能な反射型のものであれば任意である。
反射型のパルスオキシメータとは、光の波長によって、血中ヘモグロビンのHbO(酸化ヘモグロビン)とHHb(還元ヘモグロビン)とで光の吸収特性が違う原理を利用し、生体組織で反射した光(散乱した光)を検出することにより、血中酸素飽和度(SpO)および脈拍を非侵襲的に測定する装置をいう。
例えば、赤色発光ダイオード(発光部)から、生体の腋下の皮膚から腋窩動脈に可視光線の赤色光(波長620〜750nm)を照射し、また近赤外光発光ダイオード(発光部)から、この腋下の皮膚に近赤外光(波長750〜1,400nm)を照射する。これらの光は生体組織によって吸収と散乱を受けながら透過して行き、生体内で最も光を吸収する血液中のヘモグロビンの量に応じて、透過光や散乱光の量が変動する。反射型のパルスオキシメータでは、このうちの反射光(散乱光、特に後方散乱光)が、各発光ダイオードと同一面上に配されたフォトトランジスタ(受光部)により受光される。
これにより、腋下の腋窩動脈を流れる血中の酸素に結合した酸化ヘモグロビン(HbO)と、酸素に結合していない還元ヘモグロビン(HHb)との比から、血中酸素飽和度を測定することができる(HbO/(HbO+HHb)×100(%))。
なお、赤色発光ダイオードに代えて、赤色レーザーダイオードを採用してもよい。また、近赤外光発光ダイオードに代えて、近赤外レーザーダイオードを採用してもよい。
パルスオキシメータによる脈拍の測定は、例えば、該当する発光ダイオードから生体の腋下の皮膚に赤色光または近赤外光を照射すれば、その光は生体組織によって吸収と散乱を受けながら透過して行き、当接した腋窩動脈の血中ヘモグロビンの量に応じてその光量が変動する。このとき、心臓から腋窩動脈に送られる血液は拍動しているため、血液量に応じてフォトトランジスタが検出する光量が変化する。この光量の変動から脈拍が測定される。
ここでいう反射型の血圧計とは、血管を流れる血液の脈波が、心臓が鼓動してから測定部位に到達するまでに時間を要し、この脈波伝搬時間は血圧が高ければ短く、低ければ長くなるということを利用し、血圧を測定する装置である。例えば、生体に近赤外光を照射する発光部(近赤外光発光ダイオード)と、生体組織内で散乱した近赤外光を受光する受光部(フォトトランジスタ)と、受光部の受光結果に基づいて血流量および容積脈波を算出し、血流量と、容積脈波から求まる血管抵抗とから血圧を算出する演算部とを備えた血圧計等を採用することができる。
また、別の反射型の血圧計として、血流速度を測定する超音波センサと、容積波を測定する光センサ(フォトトランジスタ)との2つを備えたタイプのもの等でもよい。例えば、生体の血流速度を測定する血流速度センサと、血流センサを制御する血流センサ制御部と、生体の脈波を測定する容積脈波センサと、容積脈波センサを制御する容積脈波センサ制御部と、血流速度センサおよび容積脈波センサからの信号を処理する信号処理部とを有し、生体の動脈付近で血流速度を測定し、血管周辺で血流速度と脈波とを測定し、これらの測定結果から生体の血圧を算出するものでもよい。
この血圧計によれば、発光部から生体の腋下の皮膚を通して照射された近赤外光の反射光(散乱光)を受光部が受光し、これに基づき演算部が血流量と容積脈波とを求める。その後、演算部がこれらの血流量と容積脈波とから血管抵抗を求め、最終的に血圧を演算する。これにより、血流速度を測定するための超音波センサと、容積脈波を測定する光センサという2つのセンサが必要であった従来方式のカフレス血圧計に比べて、血圧計の低コスト化およびコンパクト化が図れる。
また、血圧計の近赤外光発光ダイオードとフォトトランジスタとは、前記パルスオキシメータの近赤外光発光ダイオードとフォトトランジスタとを兼務する。そのため、仮に本体ケーシングの先端面積が小さくても、パルスオキシメータのセンサ部分と血圧計のセンサ部分とを支障なく、この本体ケーシングの先端に配置することができる。さらには、バイタルサイン検出部のコンパクト化も図れる。
腋下用バイタルサイン測定器により検出された各種のバイタルサインの測定データは、有線または無線(近距離無線通信を含む)を介して、例えばパソコン、タブレット、スマートフォン等の端末に送信することができる。その後、これらの測定データを、例えば電子カルテ等に自動記入してもよい。
請求項2に記載の本発明は、前記本体ケーシングには、前記フォトトランジスタからの受光信号に基づき、該フォトトランジスタの受光状態を報知する報知手段と、前記フォトトランジスタが受光した光の強度に応じて、前記報知手段からの報知を変化させることで、前記皮膚の上から前記腋窩動脈の位置を検出可能な腋窩動脈位置検出手段とが配設されたことを特徴とする請求項1に記載の腋下用バイタルサイン測定器である。
ここでいう受光信号は、赤色光の受光信号と、近赤外光の受光信号との何れでもよい。ただし、近赤外光に比べて反射光の光量が大きい赤色光の受信信号の方が、フォトトランジスタによる腋窩動脈の検出感度が高まるために好ましい。
報知手段としては、例えば、各種の電子音(ブザー音、チャイム、電子音声等)を発生するスピーカを含む電子音発生器、各種の光(光の点灯、点滅等)を発生させる報知光発生器、ディスプレイを含む報知内容表示装置等を採用することができる。報知手段は、異なる種類のものを併設してもよい。
腋窩動脈位置検出手段としては、例えば、電子音発生器における電子音の音量増幅回路、報知光発生器における明るさ変更回路や色調変更回路、報知内容表示装置における表示内容変更回路等を採用することができる。
請求項3に記載の本発明は、前記本体ケーシングの先端には、前記フォトトランジスタを中心にして、前記赤色発光ダイオードと前記近赤外光発光ダイオードとが離間配置され、前記体温センサは、前記フォトトランジスタを中心にして、該フォトトランジスタとこれらの発光ダイオードとの隙間領域に、隆起した筒状の遮光体として配されたものであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の腋下用バイタルサイン測定器である。
フォトトランジスタと赤色発光ダイオードとの離間距離、および、フォトトランジスタと近赤外光発光ダイオードとの離間距離は任意である。例えば、0.1mm〜数cmである。特に、0.2mm〜0.5mm前後が好ましい。これらの距離は同一でも、異なってもよい。
ここでいう“隆起した筒状の遮光体”とは、フォトトランジスタを中心にして、フォトトランジスタと各発光ダイオードとの隙間領域に配された断面真円状または断面楕円状の遮光用の突起物(管体)をいう。
請求項1に記載の本発明によれば、本体ケーシングを生体の腋下に差し込み、先端のバイタルサイン検出部を腋下の皮膚に当接する。この状態を維持して、体温計による腋下温(体温)の測定を行う。一方、パルスオキシメータにおいて、赤色発光ダイオードからの赤色光と、近赤外光発光ダイオードからの近赤外光とをそれぞれ腋窩動脈に向かって照射し、それらの反射光(散乱光、後方散乱光)をフォトトランジスタが受光することにより、生体の血中酸素飽和度および脈拍が測定される。さらには、血圧計において、赤色発光ダイオードからの赤色光、または、近赤外光発光ダイオードからの近赤外光を生体の腋下の皮膚から腋窩動脈に向かって照射し、その反射光をフォトトランジスタが受光することで、生体の血圧が測定される。
これにより、腋下の皮膚にバイタルサイン検出部を当接するという1つの動作を行うだけで、腋下およびその皮膚下にあって末梢血管より血管が太い腋窩動脈を利用し、体温、脈拍数、血中酸素飽和度、血圧の4つのバイタルサインを、略同時かつ高精度に測定することができる。
すなわち、指先や額等の末梢血管を測定のターゲットとした従来品の場合には、循環血液量の不足、低血圧や末梢血管収縮といった末梢循環不全または浮腫があれば、指先での血中酸素飽和度、脈拍や血圧の測定は不適切であり、また、測定部位が額の場合には、外気温で表面温度が変化するため、正確な体温測定ができなかったものの、本発明では、このように腋下にバイタルサイン検出部を差し込み、末梢血管より太い腋窩動脈を測定ターゲットとしたことにより、4種類のバイタルサインの測定を高精度に行うことができる。
しかも、血圧計の検出部として使用される近赤外光発光ダイオードとフォトトランジスタとは、パルスオキシメータの近赤外光発光ダイオードとフォトトランジスタとを兼務する。そのため、仮に本体ケーシングの先端面積が小さい場合でも、パルスオキシメータと血圧計との各検出部を、支障なく本体ケーシングの先端に配することができる。これにより、バイタルサイン検出部のコンパクト化、ひいては腋下用バイタルサイン測定器のコンパクト化も図ることができる。
また、例えば、両腕に関節拘縮の症状がある患者に対する血圧測定時においては、仮に、従来のカフ式血圧計を用いた場合には、カフを腕に巻き付ける際に患者の腕に大きな外力を作用させる必要があるため、骨折のリスクや、カフを巻けずに測定が困難になるおそれもあるため、バイタルサインの測定の安全性に問題があった。これに対して、本発明では、反射型の血圧計を採用したため、バイタルサインの測定時、特に血圧測定時の安全性を高めることができる。
なお、各バイタルサインの測定ターゲットとして腋窩動脈を採用した理由は、腋窩動脈が皮膚に近い動脈の中でもかなり太いものである点と、仮に同じく皮膚に近い別の大動脈である頸動脈や大腿動脈を採用した場合には、腋窩動脈の場合のように、腋下に腋下用バイタルサイン測定器を挟むという動作に類することができないため、バイタルサイン測定時の腋下用バイタルサイン測定器の固定が難しい点等があるためである。
特に、請求項2に記載の本発明によれば、フォトトランジスタが赤色光や近赤外光を受光した時、その受光状態を報知手段が報知する。このとき、腋窩動脈位置検出手段によって、フォトトランジスタが受光した光の強度に応じて報知手段からの報知が変化する。そのため、この変化を認識しながら、バイタルサイン検出部を腋下の皮膚に当接したまま所定方向に移動させることで、バイタルサイン検出部がターゲットである腋窩動脈に接近しているか、または離反しているかを容易に判断することができる。その結果、最終的にはこのバイタルサイン検出部を、目視できない腋窩動脈の最短位置、すなわち血中酸素飽和度、脈拍および血圧を高精度に測定可能な位置に、誰でも正確かつ短時間で配することができる。また、このバイタルサイン測定中、バイタルサイン検出部が最適な検出位置から位置ずれしても、その位置ずれ状態を報知手段がリアルタイムに知らせてくれる。
また、請求項3に記載の本発明によれば、本体ケーシングの先端には、フォトトランジスタを中心にして、赤色発光ダイオードと近赤外光発光ダイオードとが離間状態で配置されている。また、体温センサが、フォトトランジスタを中心にして、フォトトランジスタとこれらの発光ダイオードとの隙間領域にリング状に突出した状態で配置されている。
このように、リング状の体温センサを、フォトトランジスタを中心にして、フォトトランジスタとこれらの発光ダイオードとの隙間領域に配置したため、このリング状に隆起した体温センサは、各発光ダイオードから照射された光の一部が、近接するフォトトランジスタに、直接、受光されるのを防止する筒状の遮光体として機能する。これにより、フォトトランジスタが受光した反射光の受光量の信頼性を高めることができる。
本発明の実施例1に係る腋下用バイタルサイン測定器の使用状態の概略正面図である。 (a)本発明の実施例1に係る腋下用バイタルサイン測定器の一部切欠状態を含む正面図である。(b)本発明の実施例1に係る腋下用バイタルサイン測定器の透明キャップを外したバイタルサイン検出部の拡大側面図である。 本発明の実施例1に係る腋下用バイタルサイン測定器の電気系統のブロック図である。 (a)本発明の実施例1に係る腋下用バイタルサイン測定器による体温測定状態を示す要部拡大断面図である。(b)本発明の実施例1に係る腋下用バイタルサイン測定器による血中酸素飽和度および脈拍測定状態を示す要部拡大断面図である。(c)本発明の実施例1に係る腋下用バイタルサイン測定器による血圧測定状態を示す要部拡大断面図である。
以下、本発明の実施例を具体的に説明する。ここでは、病院で使用される携帯可能な電池式の腋下用バイタルサイン測定器を例とする。
図1において、10は本発明の実施例1に係る腋下用バイタルサイン測定器で、この腋下用バイタルサイン測定器10は、患者(生体)の腋下で保持される本体ケーシング11の先端に、バイタルサイン検出部12を設けたものである。
図2(a)に示すように、本体ケーシング11は、正面視してボトル状で、かつ表裏面が平坦なプラスチック容器である。本体ケーシング11の表面には、大判の液晶ディスプレイ(報知手段)17が設けられるとともに、この本体ケーシング11の表面の基端側の外周部には、電源スイッチ24とモード切替スイッチ25とが配設されている。
また、本体ケーシング11の内部空間には、横長な矩形状の本体基板Sと、電池Bとが収納されている。
本体基板Sには、患者の腋下温を測定する体温計13と、患者の腋下の皮膚aから腋窩動脈14に向かって照射された赤色光と近赤外光との各反射光(散乱光)に基づき、患者の血中酸素飽和度および脈拍をそれぞれ測定する反射型のパルスオキシメータ15と、腋下の皮膚aから腋窩動脈14に向かって照射された近赤外光の反射光に基づいて、患者の血圧を測定する反射型の血圧計16と、ブザー(報知手段)18と、フォトトランジスタ19が受光した光の強度に応じて、ブザー18の音量を変化させることにより、皮膚aの上から腋窩動脈14の位置を検出する腋窩動脈位置検出手段20と、各種の検出データ等が記憶されるRAM(Random Access Memory)である記憶部21と、バイタルサインの測定モードを切り替える測定モード切替手段22と、腋下用バイタルサイン測定器10の電気機器の全体を制御するCPUを内蔵した制御部23とが配設されている。
まず、バイタルサイン検出部12について説明する。
図2(a),(b)に示すように、バイタルサイン検出部12は、本体ケーシング11の円筒状のネック部11aの先端部に設けられている。
バイタルサイン検出部12は、本体ケーシング11の先端開口を塞ぐ小さな円形のセンサ基板26と、センサ基板26を外方から被うプラスチック製の透明キャップ27とを有している。透明キャップ27の胴部(周側部)には、各光が側方へ漏れないようにメタルmがメッキ塗装されている。また、透明キャップ27の奥面(先端面)は平坦であるが、半球状でもよい。
センサ基板26の表面には、その中心部に光センサであるフォトトランジスタ19が固着されている。また、センサ基板26の表面の外周部には、フォトトランジスタ19を中心として等距離だけ離間した対峙位置に、可視光線の赤色光(RED:波長660nm)発光する赤色発光ダイオード28と、近赤外光(IR:波長940nm)を発光する近赤外光発光ダイオード29とがそれぞれ固着されている。
さらに、センサ基板26の表面のうち、フォトトランジスタ19と各発光ダイオード28,29との隙間領域には、遮光体として機能し、かつ各発光ダイオード28,29を結ぶ方向が楕円の短軸である楕円筒状の体温センサ30が突出状態で固着されている。体温センサ30は有色の部材である。
体温センサ30の先端は、透明キャップ27の奥板部(先端の板部)に面接触状態で当接している。なお、透明キャップ27の内部空間には、透明なプラスチックを充填してもよい。こうすれば、バイタルサイン検出部12の熱伝導性が高まり、体温センサ30による体温測定がさらに高精度となる。
次に、図2(a),(b)を参照して前記各電子機器について具体的に説明する。
体温計13は、患者の腋下温を測定するもので、体温センサ30として、温度変化に対して電気抵抗の変化の大きい抵抗体のサーミスタを採用している。体温計13は、体温センサ30からの検出信号(体温信号)に基づき、制御部23に接続された患者の体温を計測する体温計測定手段(体温計測定回路)31を有している。なお、高価にはなるが、図示しない赤外線方式の体温計でもよい。検温結果は、制御部23から記憶部21に記憶されるとともに、液晶ディスプレイ17に表示される。
パルスオキシメータ15は、光電容積脈波測定法(PPG:Photoplethysmography)を利用した反射型のもので、患者の腋下の皮膚aに波長の異なる2つの光(赤色光と近赤外光)を照射し、これらの反射光を受光して、光の強度を示す光電脈波信号(受光信号)に基づき、制御部23に接続された血中酸素飽和度計測手段(血中酸素飽和度計測回路)32を使用して、血中酸素飽和度(SpO:Percutaneous Oxygen Saturation)を測定する。
また、パルスオキシメータ15は、制御部23に接続されて患者の脈拍を検出する脈拍計測手段(脈拍計測回路)33を有している。この脈拍測定時、赤色発光ダイオード(近赤外光発光ダイオード29でもよい)28から生体の腋下の皮膚aに照射された赤色光は、生体組織によって吸収と散乱を受けながら透過して行く。その際、生体内で最も光を吸収する血中ヘモグロビンの量に応じて散乱光の量が変動する。一方、心臓から腋窩動脈14に送られる血液は拍動しているため、血液量に応じてフォトトランジスタ19が検出する光量が変化する。この光量の変動から脈拍計測手段33が脈拍を求めることになる。
次に、反射型の血圧計16について説明する。
この血圧計16は、血管(腋窩動脈14)を流れる血液の脈波が、心臓が鼓動してから測定部位に到達するまでに時間を要し、この脈波伝搬時間は血圧が高ければ短く、血圧が低ければ長くなるという原理を利用して、血圧を測定する電子機器である。
具体的には、血圧計16は、近赤外光を照射する近赤外光発光ダイオード29と、生体内で反射した近赤外光を受光するフォトトランジスタ19と、フォトトランジスタ19の受光結果に基づき、血流量を算出する血流量算出部(血流算出回路)34と、フォトトランジスタ19の受光結果に基づき、容積脈波を検出する容積脈波検出部(容積脈波検出回路)35と、この容積脈波に基づき、腋窩動脈14の血管抵抗を算出する血管抵抗算出部(血管抵抗算出回路)36と、これらの血流量と血管抵抗とから患者の血圧を算出する血圧算出部(血圧算出回路)37とを備えている。
血流量算出部34では、フォトトランジスタ19の受光信号に対して高速フーリエ変換(FFT:Fast Fourier Transform)の周波数解析処理を行い、パワースペクトル(周波数スペクトル)P(f)を算出する。さらに、このパワースペクトルP(f)を使用し、式(1)にしたがって血流量Qを算出する。
式中、「KQ」は所定の定数であり、「f1,f2」はバンドパスフィルタの遮断周波数であり、「<I>」は受光光の強度の二乗平均である。
容積脈波検出部35では、制御部23により近赤外光発光ダイオード29を発光させ、そのときのフォトトランジスタ19の受光量(受光信号の強度)の変化を容積脈波として検出する。
血管抵抗算出部36では、容積脈波の1心拍分の波形から、駆出波に対応するピークの振幅P1と、反射波に対応するピークの振幅P2との比率である振幅比率を算出する。また、この振幅比率を用いて、式(2)に従って、腋窩動脈14の血管抵抗Rを算出する。
式中、Kは所定の定数である。
血圧算出部37では、血流量Qと血管抵抗Rとの積から血圧Prを算出する。
腋窩動脈位置検出手段20は、フォトトランジスタ19が受光した光の強度(受光強度)に応じて、ブザー18が発するブザー音の音量を変化させる音量調整回路である。すなわち、バイタルサイン検出部12が腋窩動脈14に徐々に近づくことで、フォトトランジスタ19の受光強度がしだいに高まり、これに対応した腋窩動脈位置検出手段20からの出力増大指令に基づき、ブザー18の音量が徐々に大きくなる。一方、バイタルサイン検出部12が腋窩動脈14から徐々に離反すれば、フォトトランジスタ19の受光強度がしだいに低下し、これに伴う腋窩動脈位置検出手段20からの出力減衰指令に基づき、ブザー音が徐々に小さくなる。
患者または看護師は、このブザー音の変化を聞きながら、腋下に差し込んだバイタルサイン検出部12を、腋下の皮膚aに対する当接状態のまま任意方向へ移動させ、最も大きなブザー音が発生した位置を腋窩動脈14の検出位置としてその位置を保持し、各バイタルサインの測定を行う。なお、このブザー音は、同一音量で所定時間連続発生した後(図示しないタイマ制御後)、腋窩動脈位置検出手段20によって自動停止する。また、全てのバイタルサインの測定後に、制御部23からの指令に基づき、測定の完了を報知するブザー音を発生させてもよい。
また、前記測定モード切替手段22は、モード切替スイッチ25の押下順に、この腋下用バイタルサイン測定器10を、(1)体温測定モード、(2)脈拍測定モード、(3)血中酸素飽和度測定モード、(4)血圧測定モード、および、(5)これらの同時測定モードに切り替えるための測定モード切替回路である。
ここで、図3のブロック図を参照して、腋下用バイタルサイン測定器10の電気系統を説明する。
腋下用バイタルサイン測定器10の機器全体を制御する制御部23には、その入力ポートに、体温センサ30と、フォトトランジスタ19と、記憶部21と、電源スイッチ24と、モード切替スイッチ25とがそれぞれ電気的に接続されている。
一方、制御部23の出力ポートには、体温計13の体温計測定手段31と、パルスオキシメータ15の血中酸素飽和度計測手段32および脈拍計測手段33と、各測定結果を表示する液晶ディスプレイ17と、ブザー18と、腋窩動脈位置検出手段20と、測定モード切替手段22と、赤色発光ダイオード28と、近赤外光発光ダイオード29と、血液量算出部34と、容積脈波検出部35と、血管抵抗算出部36と、血圧算出部37とがそれぞれ電気的に接続されている。
次に、図1〜図4を参照して本発明の腋下用バイタルサイン測定器10の使用方法を説明する。
図1および図2に示すように、腋下用バイタルサイン測定器10の使用時には、まず、電源スイッチ24を入れたのち、モード切替スイッチ25を5回連続して押下すことで、4つのバイタルサインの同時測定を行うものとする。このとき、バイタルサイン検出部12では、赤色発光ダイオード28からの赤色光の照射と、近赤外光発光ダイオード29からの近赤外光の照射とが、これらを照射しない環境光の受光時間を含めて所定時間毎に繰り返されるとともに、フォトトランジスタ19は、これらの光を受光可能な待機状態となっている。
その後、患者または看護師が、腋下用バイタルサイン測定器10を患者の腋下に差し込み、先端のバイタルサイン検出部12を腋下の皮膚aに当接させる。
これにより、患者の腋下からの熱が透明キャップ27を経て体温センサ30に伝わり、体温計13による腋下温(体温)の測定が開始される(図4(a)を参照)。測定された患者の体温は、制御部23からの指令により、液晶ディスプレイ17に表示されるとともに、記憶部21に記憶される。
また、腋下に差し込まれた腋下用バイタルサイン測定器10にあっては、腋下内に向かって赤色発光ダイオード28から赤色光が照射される一方、近赤外光発光ダイオード29から近赤外光が照射される。これらの光の照射に伴い、パルスオキシメータ15による血中酸素飽和度および脈拍の各測定(図4(b)を参照)と、血圧計16による血圧の測定(図4(c)を参照)とがそれぞれ開始される。
このうち、パルスオキシメータ15にあっては、図4(b)に示すように、赤色発光ダイオード28からの赤色光と、近赤外光発光ダイオード29からの近赤外光とが、それぞれ腋下の皮膚aを通して腋窩動脈14の方向に照射される。次いで、これらの光の反射光(散乱光)をフォトトランジスタ19が受光し、その受光信号が制御部23を介して血中酸素飽和度計測手段32に送られる。
ここでは、光電容積脈波測定法(PPG:Photoplethysmography)に基づき、患者の血中酸素飽和度が計測される。血中酸素飽和度の計測では、血中ヘモグロビン(Hb)に含まれる、血中の酸素に結合した酸化ヘモグロビン(HbO)と、酸素に結合していない還元ヘモグロビン(HHb)との特性が利用される。すなわち、血中ヘモグロビンに赤色光と近赤外光とを照射した場合、赤色光の吸光度は還元ヘモグロビンの方が酸化ヘモグロビンより大きく、近赤外光の吸光度は、還元ヘモグロビンの方が酸化ヘモグロビンよりわずかに低い。
これにより、酸化ヘモグロビンと還元ヘモグロビンとの比である[100×HbO/(HbO+HHb)]の式から、血中酸素飽和度計測手段32の演算機能(制御部23の演算機能でもよい)を使用して、血中酸素飽和度(SpO)を求める。なお、フォトトランジスタ19は光を区別できないため、まず各発光ダイオード28,29が発光しない環境光を測定し、次いで赤色発光ダイオード28からの赤色光を測定した後、近赤外光発光ダイオード29からの近赤外光を測定する。これにより、赤色光や近赤外光の反射光から環境光を減算することができる。得られた血中酸素飽和度は、液晶ディスプレイ17に表示されるとともに、記憶部21に記憶される。
また、同じく図4(b)に示すように、パルスオキシメータ15による患者の脈拍の測定にあっては、患者の腋下の皮膚aを通して、赤色発光ダイオード28から腋下内の腋窩動脈14に向かって赤色光を照射する。これにより、赤色光が生体組織によって吸収と散乱を受けながら透過して行く。このとき、散乱光の量は、光を吸収する血中ヘモグロビンの量に応じて変動し、かつ腋窩動脈14を流れる血液は拍動している。そのため、血液量に応じてフォトトランジスタ19が検出する光量が変化する。この光量の変動に基づいて、脈拍計測手段33の演算機能(制御部23の演算機能でもよい)を利用して、患者の脈拍を求める。得られた脈拍は、液晶ディスプレイ17に表示されるとともに、記憶部21に記憶される。
次に、前記血圧計16による患者の血圧の測定にあっては、図4(c)に示すように、近赤外光発光ダイオード29から腋下の腋窩動脈14に向かって近赤外光を照射する。これにより、皮膚aを通して腋窩動脈14に照射された近赤外光の反射光が、フォトトランジスタ19により受光される。この受光信号に基づき、血流量と容積脈波とが求められ、さらに血流量と容積脈波とから血管抵抗が求められ、最終的に患者の血圧が演算される。
以下、この血圧測定を詳細に説明する。まず血流量算出部34が、受光信号に対する高速フーリエ変換の周波数解析処理を行い、パワースペクトルP(f)を算出する。その後、パワースペクトルP(f)に基づき、上記式(1)から、血流量Qを算出する。
次いで、容積脈波検出部35が、フォトトランジスタ19の受光信号に基づき、容積脈波を検出する。その後、血管抵抗算出部36が、検出された容積脈波における駆出波と反射波の振幅比率を算出し、この振幅比率をもとに、上記式(2)から腋窩動脈14の血管抵抗Rを算出する。
最後に、血圧算出部37が、算出された血流量Qと末梢血管抵抗Rとの積から血圧Prを算出する。得られた血圧Prは、液晶ディスプレイ17に表示されるとともに、記憶部21に記憶される。
ここで、図1および図4(b)を参照しながら、各バイタルサインの測定に先駈けて、腋窩動脈位置検出手段20を用いて、患者または看護師が手動で行う腋窩動脈14の検出作業について説明する。
まず、患者または看護師が、本体ケーシング11を生体の腋下に差し込み、その後、先端のバイタルサイン検出部12を、腋下の皮膚aに当接したままで所定方向へ移動させる。その際、バイタルサイン検出部12が腋窩動脈14に徐々に近づけば、フォトトランジスタ19の受光強度が徐々に高まり、これに対応する腋窩動脈位置検出手段20からの出力増大指令に基づき、ブザー18からのブザー音が徐々に大きくなる。
一方、バイタルサイン検出部12が腋窩動脈14から徐々に離反すれば、フォトトランジスタ19の受光強度がしだいに低下し、これに対応した腋窩動脈位置検出手段20からの出力減衰指令に基づき、このブザー音が徐々に小さくなる。
患者または看護師は、このブザー音の変化を聞きながら、腋下に差し込まれたバイタルサイン検出部12を所定方向へ少しずつ移動させ、最も大きなブザー音が発生した腋下の位置を腋窩動脈14の検出位置(腋窩動脈14との最短対峙位置)としてその位置を維持し、上述した各バイタルサインの測定を行う。なお、全てのバイタルサインの測定後には、制御部23からの指令に基づき、検出終了を報知するブザー音を発生させてもよい。
また、このように腋窩動脈位置検出手段20を使用して、フォトトランジスタ19が受光した光の強度に応じてブザー18からの報知音を変化させるように構成したため、バイタルサイン検出部12が、検出ターゲットである腋窩動脈14に接近しているかまたは離反しているかを、容易に判断することができる。これにより、この腋下用バイタルサイン測定器10では、バイタルサイン検出部12を、目視ができない腋窩動脈14との最短位置、言い換えれば血中酸素飽和度、脈拍および血圧を高精度に測定可能な位置に、誰でも正確かつ短時間で配置することができる。
しかも、このバイタルサイン測定中、バイタルサイン検出部12が最適な検出位置から位置ずれしたときも、その位置ずれ状態をブザー音で知らせてくれるため、簡単かつ短時間でその位置ずれを直すことができる。
なお、実施例1では報知手段としてブザー18を採用したが、例えば、本体ケーシング11の基端部に位置検出用ランプ(発光ダイオードや小さな液晶表示部)を設け、フォトトランジスタ19が受光した光の強度に応じて、位置検出用ランプの照度や色調等を変化させてもよい。
こうして得られた所定患者の各バイタルサインの測定データ(記憶部21に記憶された各測定データ)は、例えば、近距離無線通信を利用して、パソコン、タブレット、スマートフォン等の端末に送信することができる。また、送信先の端末では、受信した測定データを患者専用の電子カルテ等に自動記入するようにしてもよい。
以上説明したように、この腋下用バイタルサイン測定器10にあっては、腋下の皮膚aにバイタルサイン検出部12を当接するという1つの動作を行うだけで、末梢血管より血管が太い腋窩動脈14等を利用して、体温、脈拍数、血中酸素飽和度、血圧の4つのバイタルサインを、略同時かつ高精度に測定することができる。
すなわち、指先や額等の末梢血管を測定のターゲットとした従来品の場合には、循環血液量の不足、低血圧や末梢血管収縮等の末梢循環不全、もしくは、浮腫等があれば、指先での血中酸素飽和度、脈拍および血圧の各測定は不適切であった。また、従来品では、測定部位が額の場合、外気温でその皮膚a温度が変化するため、正確に体温を測定することができなかった。
これに対して本発明品では、このように外気から閉ざされた腋下にバイタルサイン検出部12を差し込み、末梢血管より太い腋窩動脈14を測定ターゲットとしたことにより、体温、脈拍数、血中酸素飽和度および血圧という4種類のバイタルサインを、それぞれ高精度に測定することができる。
さらには、血圧計16の近赤外光発光ダイオード29とフォトトランジスタ19とは、パルスオキシメータ15の近赤外光発光ダイオード29とフォトトランジスタ19とを兼務する。そのため、仮に本体ケーシング11の先端面積が小さくても、パルスオキシメータ15の検出部と血圧計16の検出部とを、支障なく本体ケーシング11の先端に配することができる。これにより、バイタルサイン検出部12のコンパクト化、ひいては腋下用バイタルサイン測定器10のコンパクト化も図ることができる。
また、例えば、両腕に関節拘縮の症状がある患者に対しての血圧測定時においては、仮に、従来のカフ式血圧計を採用した場合、カフを腕に巻き付ける際に患者の腕に大きな外力を作用させる必要があった。そのため、骨折のリスクや、カフを巻けずに測定が困難となるおそれもあって、バイタルサインの測定の安全性が懸念されていた。これに対して、この腋下用バイタルサイン測定器10では、反射型の血圧計16を採用したため、バイタルサインの測定、特に血圧測定の安全性を高めることができる。
さらに、本体ケーシング11の先端面には、フォトトランジスタ19を中心にして、赤色発光ダイオード28と近赤外光発光ダイオード29とが離間状態で配置され、さらに楕円筒状の体温センサ30が、フォトトランジスタ19を覆うように、フォトトランジスタ19とこれらの発光ダイオードとの隙間領域に突出状態で配されている。これにより、各発光ダイオード28,29から照射された光の一部が、直接、近接するフォトトランジスタ19に受光されないように、体温センサ30が筒状の遮光体として機能する。その結果、フォトトランジスタ19が受光した反射光の受光量の信頼性を高めることができる。
なお、各バイタルサインの測定ターゲットとして腋窩動脈14を採用した理由は、腋窩動脈14が皮膚aに近い動脈の中でもかなり太い血管である点と、仮に同じく皮膚aに近い別の大動脈である頸動脈や大腿動脈を採用した場合、この腋窩動脈14のときのように、腋下用バイタルサイン測定器10を簡単に挟んで位置決めすることが難しい点等が懸念されるからである。
本発明は、生体のバイタルサインを測定する技術として有用である。
10 腋下用バイタルサイン測定器
11 本体ケーシング
12 バイタルサイン検出部
13 体温計
14 腋窩動脈
15 パルスオキシメータ
16 血圧計
19 フォトトランジスタ
17 液晶ディスプレイ(報知手段)
18 ブザー(報知手段)
20 腋窩動脈位置検出手段
28 赤色発光ダイオード
29 近赤外光発光ダイオード
30 体温センサ
a 皮膚

Claims (3)

  1. 生体の腋下に保持される本体ケーシングの先端に、バイタルサイン検出部が設けられた腋下用バイタルサイン測定器であって、
    前記本体ケーシングには、
    前記生体の腋下温を測定する体温計と、
    前記生体の腋下の皮膚から腋窩動脈に向かって照射された赤色光と近赤外光との各反射光に基づき、前記生体の血中酸素飽和度および脈拍を測定するパルスオキシメータと、
    前記生体の腋下の皮膚から前記腋窩動脈に向かって照射された赤色光または近赤外光の反射光に基づき、前記生体の血圧を測定する血圧計とが収納され、
    前記バイタルサイン検出部は、前記体温計用の体温センサと、前記赤色光を発光する赤色発光ダイオードと、前記近赤外光を発光する近赤外光発光ダイオードと、これらの光を受光するフォトトランジスタとを有したことを特徴とする腋下用バイタルサイン測定器。
  2. 前記本体ケーシングには、
    前記フォトトランジスタからの受光信号に基づき、該フォトトランジスタの受光状態を報知する報知手段と、
    前記フォトトランジスタが受光した光の強度に応じて、前記報知手段からの報知を変化させることで、前記皮膚の上から前記腋窩動脈の位置を検出可能な腋窩動脈位置検出手段とが配設されたことを特徴とする請求項1に記載の腋下用バイタルサイン測定器。
  3. 前記本体ケーシングの先端には、前記フォトトランジスタを中心にして、前記赤色発光ダイオードと前記近赤外光発光ダイオードとが離間配置され、
    前記体温センサは、前記フォトトランジスタを中心にして、該フォトトランジスタとこれらの発光ダイオードとの隙間領域に、隆起した筒状の遮光体として配されたものであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の腋下用バイタルサイン測定器。
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