JP2020043742A - 電動発電機の制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】回生時にインバータで発生する発熱を抑制する。【解決手段】永久磁石30dを有するモータ30を駆動制御するインバータ20に信号を出力して制御するPCM5を備える。インバータ20は、アーム21,22,23を有し、各アームは、2つのスイッチング素子24の各々と逆並列に接続された2つのダイオード25を有している。2つのスイッチング素子24,24の間からモータ30の各相に交流が供給されて、モータ30が駆動制御される。PCM5は、アーム21,22,23に回生電流が流れるときに、同期整流処理を実行する。この同期整流処理の実行時に、ダイオード25に回生電流が流れる期間P2が短くなるようにモータ起電力を変調する。【選択図】図8B

Description

開示する技術は、ハイブリッド車に好適で、電動機および発電機のいずれにも利用できる電動発電機の制御装置に関する。
開示する技術に関連して、特許文献1には、インバータの温度が高くなった場合に、スイッチング周波数を下げることによってインバータの発熱量を低減する技術とともに、スイッチング周波数を下げることで生じる問題を回避して、インバータの損失を低減する技術が開示されている。
具体的には、インバータの電気回路を構成している3相(U相、V相、W相)のブリッジにおけるU相とV相のブリッジの間、V相とW相のブリッジの間、および、W相とU相のブリッジの間のそれぞれに、双方向スイッチを接続している。これらスイッチにより、各相のブリッジの間が短絡可能になり、所定のタイミングでこれらスイッチをオンすることで、特定の素子に電流が流れて熱が集中するのを防止し、インバータの損失を低減している。
特開2006−296121号公報
一般に、エンジンとともに電動機を駆動源として用いるハイブリッド車(いわゆるパラレル式)には、直流の電源が搭載されている。ハイブリッド車は、その電源の直流電力を、インバータで異なる位相の3相の交流(相電流)に変換し、これら相電流を供給することによって電動機を駆動している。
ハイブリッド車を電動機で駆動する場合、電動機には、トルクおよび回転数の双方において、幅広い駆動力が要求される。例えば、始動時などの低速時には、エンジンの始動や発進に用いるため、高トルクが必要になる。一方、平地や下りでの高速走行時などには、高トルクは必要ないが、高回転が必要になる。
また、ハイブリッド車では、通常、電動機は、駆動源としてだけでなく、発電機としても利用される。すなわち、電動機は、制動時に回生することにより、運動エネルギーを電気エネルギーとして回収する(電動発電機)。
このような電動発電機のモータ(通常は永久磁石同期モータ)では、高トルクを確保するために、一般に、巻線(ステータコイル)の巻き数を相対的に多くして、強い磁力が発生できるように設計されている。
巻線の巻き数が相対的に多くなると、モータで発生する逆起電力も大きくなる。その結果、高回転での駆動が困難になることから、このようなモータでは、高回転で駆動するために、制御電流をモータに供給して電圧を調整する、いわゆる弱め磁束制御(弱め界磁制御ともいう)が行われている。
このようなモータを、回転数が高いときに発電機として利用すると、モータにおいて高い起電力が発生する。それにより、モータから電源にインバータを介して電流(いわゆる回生電流)が流れ、電源に回生電力が供給される。特に近年では、比較的低電圧な電源(例えば、60V以下)を用いて駆動するハイブリッド車が多くなってきていることから、大きな回生電流が流れ易くなっている。
回生電流が大きくなると、インバータでの発熱が大きくなり、その耐熱限界を超えるおそれがある。
そのため、インバータでの発熱が、その耐熱限界を超えないように、通常、高回転での運転領域では、回生が制限されている。高回転の運転領域での回生を制限することは、効率的な回生の妨げとなるため、燃費が悪化するおそれがある。
そこで、開示する技術では、主に、効率的な回生が実現できるよう、回生時にインバータで発生する発熱を抑制することを目的とする。
開示する技術は、電動発電機の制御装置に関する。
前記電動発電機の制御装置は、永久磁石が設けられたロータ、および複数の異なる巻線群が設けられたステータを有するモータと、前記モータの運転状態を検出する計測部と、前記モータを駆動制御するインバータと、前記インバータと接続された直流電源と、前記計測部から入力される信号に基づいて、前記インバータに信号を出力して制御する制御部と、を備える。
前記インバータは、前記直流電源の一対の出力端子に連なる配線に接続された複数のアームを有している。前記アームの各々は、前記アームに直列に接続された2つのスイッチング素子と、前記スイッチング素子の各々と逆並列に接続された2つのダイオードと、を有している。前記アームにおける2つの前記スイッチング素子の間の中点に接続された複数の配線を通じて、前記巻線群の各々に位相の異なる交流が供給されることにより、前記モータが駆動制御されるように構成されている。
前記制御部は、発電機として前記モータが発生する起電力によって前記アームに回生電流が流れるときに、少なくともいずれか1つの前記スイッチング素子と、当該スイッチング素子と逆並列に接続された前記ダイオードの双方に前記回生電流を流す同期整流処理を実行し、前記同期整流処理の実行時に、前記回生電流が前記ダイオードを流れる期間が短くなるように前記起電力を変調する。
このような電動発電機の制御装置によれば、いわゆる多相の交流で駆動する永久磁石型のモータが備えられているので、直流電源から供給される電力を、インバータの各アームに設けられたスイッチング素子を切り替えることによってモータを駆動することができる。
モータはまた、発電機として利用することも可能であり、その場合、モータの起電力で発電された電力は、インバータを介して直流電源に供給される(いわゆる回生)。その際、発生する回生電流の多くは、インバータのダイオードを通って流れるため、ダイオードが発熱する。従って、モータが高回転で回転する場合などには、回生電流が過度に多くなり、ダイオードの耐熱性を超えるおそれがある。
そこで、この電動発電機の制御装置では、まず、回生電流が流れる時に、その回生電流が流れるダイオードと並列に接続されたスイッチング素子をオンにして、回生電流の一部をスイッチング素子にも流す同期整流処理を行う。同期整流処理を行うことで、ダイオードに流れる回生電流が減るので、ダイオードの温度上昇を抑制できる。
それに加え、この電動発電機の制御装置では、その同期整流処理の実行時に、回生電流がダイオードを流れる期間(ダイオード通電期間)が短くなるように、モータの起電力を変調する。それにより、更に、ダイオードを流れる回生電流の量を減少させることができる。従って、ダイオードに流れる回生電流が、よりいっそう減るので、ダイオードの温度上昇を効果的に抑制できる。その結果、回生時におけるモータの回転数の制限を緩和させることが可能になるので、効率的な回生が実現でき、燃費の向上に役立つ。
前記電動発電機の制御装置はまた、前記起電力は、正弦曲線または正弦曲線状に変化する波形を有し、前記制御部は、前記同期整流処理の実行時に、前記波形のピーク周辺における単位時間当たりの電圧変化量が小さくなるよう、前記起電力を調整する、としてもよい。
回生時にモータが発生する起電力(モータ起電力)は、回転するロータの永久磁石が形成する磁束に基づいて発生する。従って、モータ起電力は、所定の正弦曲線を描く正弦波を有している。一方、ダイオードを電流が流れるときには、電圧降下により、ダイオードでは、その電流量に応じた熱が発生する。
そこで、この電動発電機の制御装置では、そのダイオードの電圧降下を利用して、ダイオード通電期間を短くする。詳細は後述するが、モータ起電力の波形のピーク周辺の傾きの差によって、ダイオード通電期間を変化させることができる。それにより、制御部は、モータ起電力の波形が、ピーク周辺の傾きが緩やかな略正弦曲線状となるように、起電力を調整する。そうすることで、波形の傾きの差により、ダイオード通電期間が短くなる。
この場合、起電力を変調するだけで、ダイオードの温度上昇を効果的に抑制できる。従って、新たな設備の追加等は不要であり、安価で実現できる。
前記電動発電機の制御装置はまた、前記制御部は、更に、前記モータの運転状態に応じて前記モータに弱め磁束電流を供給する処理を実行し、前記起電力の調整が、前記弱め磁束電流の変調によって行われる、としてもよい。
例えば、この電動発電機を車両の駆動に用いる場合には、低回転から高回転まで幅広いモータ性能が求められる。それに対し、この電動発電機の制御装置が備えるモータは、永久磁石型である。このモータでは、低回転で高トルクを発生させるためには、巻線の巻き数を多くする必要がある。そうすると、高回転での駆動が難しくなるが、弱め磁束制御を行えば、高回転でも駆動可能になる。従って、幅広いモータ性能を実現できる。
弱め磁束制御は、所定の弱め磁束電流をモータに供給することによって行われる。弱め磁束電流は、回転するロータの永久磁石が形成する磁束とは逆向きの磁束を発生させる。従って、弱め磁束電流の波形を変調することで、モータ起電力の波形を調整することができる。弱め磁束制御は、モータの回転数が高いときに行われるので、起電力の調整を弱め磁束電流の変調によって行うことは、モータの回転数が高いときに行われる回生時のダイオードの温度上昇の抑制に最適である。
前記電動発電機の制御装置はまた、前記インバータは、更に、前記ダイオード又はその近傍の温度からなる判別温度を検出して前記制御部に出力する温度検出手段を有し、前記制御部は、発電機として前記モータが発生する起電力によって前記アームに回生電流が流れるときに、少なくともいずれか1つの前記スイッチング素子と、当該スイッチング素子と逆並列に接続された前記ダイオードの双方に前記回生電流を流す同期整流処理を実行し、前記同期整流処理の実行時に、前記判別温度が低いときよりも高いときの方が、前記回生電流が前記ダイオードを流れる期間が短くなるように前記起電力を変調する、としてもよい。
この電動発電機の制御装置では、上述した電動発電機の制御装置と異なり、ダイオード又はその近傍の温度の温度(判別温度)を検出して制御部に出力する温度検出手段が、更に備えられている。
そして、同期整流処理の実行時に、判別温度が低いときよりも高いときの方が、回生電流がダイオードを流れる期間が短くなるように起電力を変調する。すなわち、ダイオードの温度変化を実測し、その温度に基づいて、ダイオードの温度上昇を抑制する処理を行う。
従って、この電動発電機の制御装置によれば、ダイオードが耐熱温度を超えるのを、精度高く抑制することができる。ダイオードの温度が高くなれば、それだけダイオード通電期間が短くなるので、ダイオードの温度上昇が低減される。ダイオードの温度上昇を、効率的に抑制できる。ダイオードの温度が高くなければ、ダイオードに回生電流を多く流すことができる。それにより、同期整流処理等の頻度を抑制でき、効率よく回生が行える。
この電動発電機の制御装置の場合においても、前記起電力は、正弦曲線または正弦曲線状に変化する波形を有し、前記制御部は、前記同期整流処理の実行時に、前記波形のピーク周辺における単位時間当たりの電圧変化量が小さくなるよう、前記起電力を調整する、としてもよい。
開示する技術によれば、回生時にインバータで発生する発熱を抑制できるので、回生電力の効率的な供給が実現できる。
開示する技術を適用した車両の要部を示す概略図である。 制御装置の主な構成を示すブロック図である。 モータの主な構成を示す模式図である。 インバータおよび低電圧電源の主な構成を示す模式図である。 モータ特性を示す図である。 回生電流の流れを示す概略図である。 回生電力とダイオードの耐熱限界との関係を説明するための図である。 ダイオードを流れる電流と電圧との関係を示す図である。 通常のモータ起電力の波形を示す図である。 起電力変調制御を行ったときのモータ起電力の波形を示す図である。 図8Aに対応した弱め磁束電流の波形を示す図である。 図8Bに対応した弱め磁束電流の波形を示す図である。 回生時に行われるダイオードの温度上昇を抑制する制御の一例である。 ダイオード通電期間と判別温度との関係を例示するグラフである。 応用例の制御装置が行う回生時の制御の一例である。 変形例1の制御装置において、SOCと回生電圧との関係を説明する図である。 変形例1の制御装置における制御の一例である。 変形例2の制御装置における制御の一例である。
以下、開示する技術の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。ただし、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物あるいはその用途を制限するものではない。
<車載例>
図1に、開示する技術を適用した車両1を示す。例示の車両1は、いわゆるハイブリッド車である。車両1には、エンジン2、電動発電機3、低電圧電源4、PCM5(制御部の一例)などが搭載されている。電動発電機3は、インバータ20、モータ30などで構成されている。そして、電動発電機3を制御する制御装置は、これら装置20,30とともに、PCM5や、後述するセンサ9a〜9fなどを含んで構成されている。
エンジン2は、燃料を燃焼することによって車両1の動力を発生させる周知の内燃機関である。エンジン2には、燃料タンクや吸排気システムなどが付設されている(これらは公知であるため、図示は省略)。エンジン2のクランクシャフト2aは、クラッチ6を介してモータ30の回転軸30aに直列した状態で連結されている。モータ30の回転軸30aは、トランスミッション7、デファレンシャルギア8等を介して、車両1の駆動輪1aに接続されている。トランスミッション7は、クラッチとしても機能する。
クラッチ6を連結した状態で、エンジン2を駆動することにより、車両1は、通常の車両1と同様に、燃料の燃焼によって走行することができる。また、クラッチ6を切り離した状態で、モータ30を駆動することにより、電動で走行することもできる。更に、クラッチ6を連結した状態で、エンジン2およびモータ30を駆動することにより、車両1は、燃料の燃焼と電動の双方で走行することができる。
また、車両1の制動時に、例えばクラッチ6を切り離した状態にすることで、駆動輪1aの回転力でモータ30を回転させることができる。それにより、モータ30を発電機として機能させ、運動エネルギーを電気エネルギーとして低電圧電源4に回収することもできる。この車両1は、いわゆるパラレル式のハイブリッド車である。
低電圧電源4は、直流電源である。低電圧電源4の具体例は、例えば、充放電が可能な二次電池である。低電圧電源4には、ハイブリッド車や電気自動車で一般的な直流60Vを超える高電圧な電源とは異なり、例えば48Vの、比較的低い電圧(定格電圧)が用いられている。
低電圧電源4は、インバータ20を介して、モータ30と電気的に接続(以下、単に接続ともいう)されている。インバータ20は、直流電力を交流電力に変換して出力する装置である。インバータ20は、モータ30を駆動制御する。車両1には、車両1に装備されている電装品に電力を供給するため、低電圧電源4とは別に、定格電圧が12Vのバッテリ10(補機の一例)も搭載されている。バッテリ10は、DC/DCコンバータ11を介して低電圧電源4と接続されている。
PCM5(パワートレイン制御モジュール)は、例えば、エンジン2やモータ30の駆動を制御するなど、車両1の運転を総合的に制御する装置である。PCM5は、周知のマイクロコンピュータをベースとするコントローラーであって、図2に示すように、プログラムを実行するCPU5aと、RAMやROMなどによって構成されていてプログラムおよびデータを格納するメモリ5bと、電気信号の入出力をする入出力バス5c(I/Oバス)と、を備えている。
PCM5には、エンジン2やモータ30の運転状態を検出する各種のセンサ(計測部の一例)が接続されている。例えば、クランク角センサ9b(エンジン2に取り付けられかつ、クランクシャフト2aの回転角を計測するセンサ)、アクセル開度センサ9c(車両1のアクセルペダル機構に取り付けられかつ、アクセルペダルの操作量に対応したアクセル開度を計測するセンサ)などが接続されている。更に、後述するモータセンサ9d、電流センサ9e、電圧センサ9f、温度センサ9aなども、PCM5に接続されている。車両1の運転中は、これらセンサから出力される検出信号が、常時、PCM5に入力されるように構成されている。
PCM5は、また、エンジン2、インバータ20などと接続されている。PCM5は、上述したセンサ9a〜9fなどから入力される検出信号に基づいて、インバータ20に制御信号を出力し、インバータ20を制御する。それにより、モータ30は、車両1の運転状態に応じて駆動制御される。
(モータ30、インバータ20、低電圧電源4)
図3Aに、モータ30、インバータ20、および低電圧電源4を模式的に示す。本実施形態のモータ30は、いわゆる永久磁石同期モータである。モータ30は、ステータ30bおよびロータ30cを有している。ロータ30cは、回転軸30aと一体に設けられている。ロータ30cには、その全周にわたって複数の永久磁石30dが等間隔に配置されている。これら永久磁石30dは、N極とS極とが周方向および径方向の各々に交互に並ぶように配置されており、ロータ30cの磁極を構成している。
ステータ30bは、略円筒状に構成されており、その内周面が、ロータ30cの外周面と僅かな隙間を隔てて対向するように、ロータ30cの周囲に配置されている。ステータ30bは、磁性体からなるステータコア30eと、複数のコイル30fと、を有している。ステータコア30eは、その全周にわたって複数のスロットが等間隔に配置されている。コイル30fは、これらスロットを通じ、所定の順序で被覆電線を巻回することによって構成されている。
それにより、ステータ30bには、図3Bに示すように、U相群、V相群、およびW相群からなる、3つの異なる巻線群50が設けられている。これら巻線群50は、互いに中性点51で接続されている(いわゆるY結線またはスター結線)。
モータ30は、車両1の駆動源としても利用されるため、トルクおよび回転数の双方において、幅広い駆動力が要求される。そのため、これら巻線群50は、高トルクが出力できるように、巻き数を相対的に多く(インダクタンスを高く)して、強い磁力が発生できるように設計されている。各相の巻線群50には、各々の入力端子を通じて、インバータ20から異なる位相で交流が供給される。
図3Aに示すように、モータ30には、レゾルバ等、回転軸30aの回転角度を計測するモータセンサ9dが取り付けられている。インバータ20には、各相を流れる相電流を検出する電流センサ9e、入力される電圧(低電圧電源4の電圧に相当)を検出する電圧センサ9f、および、後述する電気回路20aの各ダイオード又はその近傍の温度(判別温度)を検出する温度センサ9a(温度検出手段の一例)が設置されている。これらセンサは、インバータ20が作動しているときには、常時、PCM5に検出信号を出力する。
図3Bに示すように、インバータ20は、モータ30の各相に異なる位相で交流を供給する、所定の電気回路20aを有している。
具体的には、インバータ20は、低電圧電源4の高電圧(プラス)側および低電圧(マイナス)側の各出力端子に連なる一対の母線4a,4aと、これらに接続された3つのアーム21,22,23とを有している。これらアーム21,22,23の各々には、2つのスイッチング素子24,24が直列に接続されている(高電圧側に位置するスイッチング素子24を上流側スイッチング素子24aともいう)。スイッチング素子24は、例えば、MOS−FET、IGBTなどの半導体スイッチである。
また、これらアーム21,22,23の各々には、2つのダイオード25が、スイッチング素子24の各々と逆並列に接続されている(高電圧側に位置するダイオード25を上流側ダイオード25aともいう)。これらダイオード25は、いわゆる還流ダイオードである。すなわち、通電中にスイッチング素子24がオフになると、モータ30で発生する逆起電力によって瞬間的にアーム21,22,23に高電圧が加わる。ダイオード25は、その際、電流を流すことで、スイッチング素子24を保護する。
なお、この実施形態では、並列したスイッチング素子24およびダイオード25は、近接した状態で1つの電子部品に組み込まれていて、一体的に構成されている。具体的には、RC−IGBT(Reverse−Conducting−IGBT)などが挙げられる。
各アーム21,22,23における2つのスイッチング素子24の間の中点には、モータ30の各相の巻線群50が、出力線31を介して接続されている。具体的には、第1のアーム21の中点にU相の巻線群50が接続されている。第2のアーム22の中点にW相の巻線群50が接続されている。第3のアーム23の中点にV相の巻線群50が接続されている。
低電圧電源4には、内部抵抗4bが存在する。そのため、低電圧電源4の電圧は、実質的には、低電圧電源4の起電力と、内部抵抗4bの電圧降下との和に相当する。従って、内部抵抗4bが大小に変化することにより、低電圧電源4の電圧は高低に変化する。例えば、回生している時に、低電圧電源4の温度が上昇すれば、それに応じて内部抵抗4bが小さくなるので、低電圧電源4の電圧は低下する。また、二次電池である低電圧電源4の電圧は、その充填率(SOC:State Of Charge)によっても変化する。
インバータ20は、そのような低電圧電源4の電圧から、位相が異なる3相の交流を発生させる。具体的には、インバータ20は、PCM5から入力される制御信号に基づいて、各スイッチング素子24をオンオフ制御する。そうすることにより、インバータ20は、例えば、パルス幅変調により、位相が異なる交流を発生させる。これら位相の異なる交流が、各アーム21,22,23および各出力線31を介してモータ30の各相の巻線群50に供給され、それによってモータ30は駆動する。
図4に、このモータ30の運転領域を例示する。縦軸は、モータ出力によるトルクの高低を表し、横軸は、モータ出力による回転数の高低を表している。横軸の上側は、電動機としてのモータ30の運転領域、すなわち力行時の領域であり、横軸の下側は、発電機としてのモータ30の運転領域、すなわち回生時の領域である。
上述したように、このモータ30の場合、高トルクが出力できるように、巻線群50の巻き数は相対的多くなるように設計されている。従って、モータ30は、低回転では、相対的に高いトルクT1(T1’)を出力することが可能である。一方、高回転では、モータ30で発生する逆起電力が大きくなるため、低電圧電源4の電圧との間の電位差が小さくなる。
その結果、高回転での駆動が困難になり、通常の制御だけでは、破線で示すように、モータ30の高回転での運転は制限される。それに対し、この電動発電機の制御装置(以下単に制御装置ともいう)では、モータ30の高回転での駆動力を確保するために、弱め磁束制御が行われる。
弱め磁束制御は、各巻線群50に、弱め磁束電流(d軸電流)をモータ30に供給して電圧を調整することにより、逆起電力を低減させる制御である。弱め磁束電流は、回転するロータ30cが発生する磁束を弱めるように作用する。弱め磁束制御を行うことにより、モータ30は、低トルクであるが、高回転でも駆動可能になる。このモータ30では、弱め磁束制御を実行することにより、本来のモータ性能以上に、運転領域を高回転側に拡大している。
従って、PCM5は、車両1が運転しているときには、クランク角センサ9b、アクセル開度センサ9c、モータセンサ9dなどから入力される検出信号に基づいて、車両1の運転状態を判定する。PCM5は、その判定結果に基づいて、エンジン2を駆動制御するとともに、必要に応じてインバータ20に制御信号を出力し、モータ30を駆動制御する。
その際、モータ30の回転数が、所定の回転数(モータ30で発生する逆起電力が低電圧電源4の電圧と同等になる回転数)に達する前に、PCM5は、インバータ20に制御信号を出力し、モータ30の各相の巻線群50に所定の弱め磁束電流を供給する処理を実行する。例えば、U相の巻線群50に弱め磁束電流を供給する場合には、図3Bに矢印線Y1で示すように、所定のタイミングで第1のアーム21の上流側スイッチング素子24aをオンにし、その上流側スイッチング素子24aを通じて、低電圧電源4から弱め磁束電流をU相の巻線群50に供給する。それにより、この電動発電機は、高回転でのモータ30の駆動力を確保している。
(回生時における問題点)
モータ30はまた、車両1の制動時などには、発電機として利用される。それにより、車両1の運動エネルギーを電気エネルギーとして低電圧電源4に回収する。その際、モータ30で発生する起電力により、モータ30から低電圧電源4にインバータ20を介して電流(回生電流)が流れる。
図5に、回生時における、U相からの回生電流の流れを例示する。回生時には、V相およびW相からも回生電流は流れるが、経路が異なる以外はU相と同様である。従って、それらの説明は省略する。
回生電流は、出力線31を逆流した後、主に、図5に矢印線Y2で示すように、第1のアーム21の上流側ダイオード25aを流れて、低電圧電源4の高電圧側に流入する。回生時に上流側スイッチング素子24aがオンになっているときは、回生電流の一部は、上流側スイッチング素子24aにも流れる。
回生時におけるモータ30の起電力は、制動時の車両1の走行状態によって決まる。すなわち、回転数が高くなるほど、起電力も高くなるので、高回転のモータ30で回生が行われると、回生電流は大きくなる。
回生電流が大きくなると、上流側ダイオード25aでの発熱が大きくなり、その耐熱限界を超えるおそれがある。そこで、PCM5は、高回転のモータ30で回生が行われるときには、インバータ20に制御信号を出力し、上流側スイッチング素子24aを通じてモータ30に弱め磁束電流を多く流す。そうすることによって電圧を調整し、モータ30の起電力を抑制する。
ところが、弱め磁束電流が多くなれば、上流側スイッチング素子24aでの発熱が大きくなる。上流側ダイオード25aおよび上流側スイッチング素子24aは、近接しているため、上流側スイッチング素子24aで発生した熱は上流側ダイオード25aに伝わる。従って、それによっても上流側ダイオード25aの温度が上昇する。
このように、各アーム21,22,23の上流側ダイオード25aは、回生時に流れる回生電流によって高温になり易い。そのため、ダイオード25の耐熱限界を超えないように、通常、高回転での運転領域では、回生が制限されている。
図6に、モータ30で得られる回生電力とダイオード25の耐熱限界との関係を例示する。縦軸は、回生電流を表している。横軸は、回生電圧(回生時における母線4a,4a間の電圧)を表している。
二点鎖線は、モータ30が低回転で回転しているときに、回生で得られる電力(回生電力)を例示している。実線は、モータ30が高回転で回転しているときに得られる回生電力を例示している。回生電力が同じ場合、回生電流は、回生電圧が低くなるほど大きくなる。回生電力は、車両1の制動時における走行状態に依存しているため、高回転では、低回転よりも大きな回生電力が得られる。
そのため、図6に示すように、モータ30が高回転で回転しているときには、回生電流の大きさが、上流側ダイオード25aの耐熱限界を超える場合があり得る。そこで、そのような大きな回生電流が上流側ダイオード25aを流れることがないように、高回転での運転領域では、回生が制限されている(図6において破線で示す部分)。
高回転の運転領域で回生を制限することは、効率的な回生の妨げとなる。その結果、燃費が悪化するおそれがある。また、回生電圧は、低電圧電源4の内部抵抗4bが小さくなった場合にも低下する。そのため、低電圧電源4の内部抵抗4bの変化により、回生電力に差が発生し、それによってトルクが変動することで、車両1の走行中にドライバーに違和感を与えるおそれもある。
そこで、この制御装置では、このような不具合を解消できるように工夫されている。具体的には、回生時に、上流側ダイオード25aの温度上昇を抑制するために、同期整流処理が実行され、上流側ダイオード25aに回生電流が流れる期間が短くなるように、モータ30が発生する起電力を変調する制御が行われる。
(回生時におけるダイオード25の温度上昇の抑制)
図7に、ダイオード25を流れる電流(回生電流)と電圧との関係を例示する。縦軸は、ダイオード25を流れる電流を表している。横軸は、ダイオード25に加わる電圧を表している。ダイオード25には、図7に示すように、その順方向に電圧降下(Vf)が存在する。その電圧降下により、ダイオード25に電流が流れるときには、導通損失(電流×Vf)が発生する。従って、大きな電流がダイオード25に流れると、それだけ導通損失も大きくなり、大きな熱が発生する。
そこで、この制御装置では、このような導通損失を抑制するために、回生時に、同期整流処理が行われる。同期整流は公知の技術である。同期整流とは、ダイオード25に電流が流れるときに、そのダイオード25と並列に接続されたスイッチング素子24をオンにすることにより、電流の一部を、導通損失が小さいスイッチング素子24に流すことをいう。
この制御装置では、PCM5が、インバータ20に制御信号を出力することにより、各アーム21,22,23に回生電流が流れるときに、そのアーム21,22,23に配置された上流側スイッチング素子24aをオンにする。そうすることにより、その上流側スイッチング素子24aと逆並列に接続された上流側ダイオード25aの双方に回生電流を流す処理を実行する。その結果、上流側ダイオード25aを流れる回生電流の量が小さくなるので、上流側ダイオード25aでの導通損失および発熱を抑制できる。
この制御装置では、更にダイオード25の温度上昇を抑制するため、同期整流処理時に上流側ダイオード25aに回生電流が流れる期間が短くなるように、モータ30が発生する起電力を変調する制御(起電力変調制御)が行われる。
図8Aに、通常の状態においてモータ30で発生する起電力の波形を例示する。同図は、便宜上、電気角で略180度分(略半周期分)の波形を表している。回生時にモータ30で発生する起電力(モータ起電力)は、回転するロータ30cの磁極が形成する磁束に基づいて発生する。それにより、モータ起電力は、所定の正弦曲線(サインカーブ)を描くため、図8Aに示すような正弦波を有している。
破線L1は、回生電圧を表しており、期間P1は、回生電流が流れる期間を表している。回生電流は、モータ起電力が回生電圧を超えている期間に流れる。同期整流処理は、この期間に合わせて実行され、上流側スイッチング素子24aがオンされる。
破線L2は、回生電圧+Vf(上流側ダイオード25aの電圧降下)を表しており、期間P2は、上流側ダイオード25aに回生電流が流れる期間(ダイオード通電期間ともいう)を表している。上述したように、上流側ダイオード25aには、電圧降下Vfが存在する。そのため、上流側ダイオード25aには、回生電圧にVfを加えた電圧を超えている期間に回生電流が流れる。
そこで、この制御装置では、モータ起電力を調整し、その波形のピーク周辺における単位時間当たりの電圧変化量を小さく変化させる起電力変調制御を行う。
図8Bに、起電力変調制御を行ったときのモータ起電力の波形を例示する。起電力変調制御を行うことにより、モータ起電力の正弦波は、通常の状態の正弦波からその両側が相対的に膨らんだ略正弦曲線状の波形に変化する。それにより、その波形のピーク(電圧値が最大となる点)の周辺は、傾きが緩やかになり、単位時間当たりの電圧変化量は小さくなっている。
その結果、同期整流処理によって回生電流が流れる期間P1に対して、ダイオード通電期間P2は、相対的に短くなる。起電力変調制御を行うことにより、ダイオード通電期間P2を、通常の状態よりも短くできる。それにより、上流側ダイオード25aに流れる回生電流の量が減少し、上流側スイッチング素子24aに流れる回生電流の量が増加するので、上流側ダイオード25aの温度上昇を抑制できる。
このような、モータ起電力の調整は、弱め磁束電流の変調によって行うことができる。
図9Aに、通常の状態における弱め磁束電流の波形を例示する。図9Aの弱め磁束電流の波形は、図8Aの起電力の波形に対応している。弱め磁束制御では、回転するロータ30cの磁極によって発生する磁束とは逆向きの磁束を、弱め磁束電流によって発生させる。従って、そのときのモータ起電力は、回転するロータ30cの磁極によって発生する磁束から、弱め磁束電流によって発生する磁束を減じた値に比例する。
そこで、この制御装置では、所定の略正弦曲線状の波形が得られるように、弱め磁束電流を変調する。図9Bに、起電力変調制御を行うときの弱め磁束電流の波形を例示する。図9Bの弱め磁束電流の波形は、図8Bの起電力の波形に対応している。図9Aに示すような波形の弱め磁束電流を、図9Bに示すような波形の弱め磁束電流に変調することにより、図8Aに示すような起電力の波形を、図8Bに示すような起電力の波形に調整することができる。
このように、回生時に、同期整流処理とともに起電力変調制御を行うことで、上流側ダイオード25aの温度上昇を効果的に抑制できる。その結果、高回転の運転領域における回生の制限を緩和することが可能になり、効率的な回生が実現できる。
更に、上流側ダイオード25aの温度上昇を抑制するために、回生時に、上流側スイッチング素子24aのスイッチング周波数(キャリア周波数)を下げる制御も合わせて実行してもよい。そうすれば、スイッチング損失が減少し、上流側スイッチング素子24aでの発熱が抑制されるので、それに隣接する上流側ダイオード25aの温度上昇を、よりいっそう抑制できる。
また、上流側ダイオード25aのゲート抵抗を小さく設定するとともに、スイッチング速度を高くする制御を実行してもよい。これによっても、上流側スイッチング素子24aでの発熱を抑制できるので、これらを組み合わせて行うことで、回生を、よりいっそう効率的に行える。
(回生時の制御例)
図10に、回生時に行われるダイオード25の温度上昇を抑制する制御の一例を示す。
車両1の操作が開始されて電源が投入されているときには、常時、センサ9a〜9fなどから検出信号がPCM5に入力されている。PCM5は、これら検出信号から、車両1の運転状態を判定するため、センサ9a〜9fなどから得られる各種情報を読み込む(ステップS1)。
PCM5は、これら情報に基づいて、モータ30で回生が行われるか否かを判定する(ステップS2)。そして、モータ30で回生が行われると判定した場合(ステップS2でYes)、PCM5は、モータ30の回転数が所定の判別回転数R0以上か否かを判定する(ステップS3)。判別回転数R0は、例えば、それ以上の回転数で回生を行うと、回生電流の大きさがダイオード25の耐熱温度を超える可能性がある回転数である。判別回転数R0は、仕様に応じて適宜変更可能であり、予めメモリ5bに設定されている。
モータ30の回転数が判別回転数R0未満であると判定した場合(ステップS3でNo)、PCM5は、通常の制御の下で回生を行う(ステップS4)。この場合は、通常の制御の下で回生を行っても、ダイオード25の耐熱温度を超える可能性がないことから、効率的な回生が行える。
一方、モータ30の回転数が判別回転数R0以上であると判定した場合(ステップS3でYes)、通常の制御の下で回生を行うと、ダイオード25の耐熱温度を超える可能性がある。そこで、PCM5は、上述した起電力変調制御を伴った同期整流処理を行いながら、回生を行う(ステップS5)。それにより、上流側ダイオード25aの温度上昇を抑制できるので、ダイオード25の損傷を回避しながら、高回転の下で効率的な回生が行える。
そうして、モータ30の回転数が判別回転数R0未満になれば、PCM5は、通常の制御に切り替えて、回生を行う(ステップS3,S4)。
<応用例>
上述した制御装置の応用例を示す。この応用例の制御装置では、上述したダイオード25の温度上昇を抑制する技術が、上流側ダイオード25aの温度変化に応じて適用されるように構成されている。
具体的には、インバータ20に設置されている温度センサ9aを活用し、回生時の同期整流処理時に、温度センサ9aで検出される各上流側ダイオード25a又はその近傍の温度(判別温度)に基づいて、上流側ダイオード25aに回生電流が流れる期間(ダイオード通電期間P2)の長短を調整する。より具体的には、PCM5は、インバータ20に制御信号を出力し、回生時における同期整流処理の実行時に、判別温度が低いときよりも高いときの方が、ダイオード通電期間P2が短くなるように、起電力を変調する。
図11に、そのようなダイオード通電期間P2と、判別温度との関係を例示する。判別温度が高くなるほど、ダイオード通電期間P2が短くなるように、起電力が変調される。このようなダイオード通電期間P2と判別温度との関係に基づいて、各判別温度に対応した弱め磁束電流の値が、予めデータとしてメモリ5bに設定されている。
(回生時の制御例)
図12に、応用例の制御装置が行う回生時の制御例を示す。この制御装置においても、基本的な制御は、上述した制御装置と同じである。同じ内容の制御については同じ符号を用い、その説明は簡略化して説明する。
車両1の運転中、PCM5は、車両1の運転状態を判定するため、センサ9a〜9fなどから得られる各種情報を読み込む(ステップS1)。PCM5は、これら情報に基づいて、モータ30で回生が行われると判定した場合(ステップS2でYes)、モータ30の回転数が判別回転数R0以上か否かを判定する(ステップS3)。
PCM5は、モータ30の回転数が判別回転数R0未満であると判定した場合(ステップS3でNo)、通常の制御の下で回生を行う(ステップS4)。一方、モータ30の回転数が判別回転数R0以上であると判定した場合(ステップS3でYes)、PCM5は、温度センサ9aからの検出信号に基づいて判別温度を取得し、メモリ5bに記憶されているデータに基づいて、その判別温度に対応した弱め磁束電流の値を特定する(ステップS10)。
その弱め磁束電流の値を用いて、PCM5は、起電力変調制御を伴った同期整流処理を行いながら回生を行う(ステップS5)。それにより、上流側ダイオード25aの温度上昇を抑制できるので、ダイオード25の損傷を回避しながら、高回転の下で効率的な回生が行える。
回生を連続して行うことで、上流側ダイオード25aの温度は、更に上昇し得る。回転数が更に高くなれば、上流側ダイオード25aの温度も更に上昇する。そのため、PCM5は、定期的に判別温度を確認し、それに合わせて、ダイオード通電期間P2の調整を行う。すなわち、PCM5は、所定時間が経過したか否かを判定する(ステップS11)。所定時間の経過は、タイマーやカウンタを用いてもよい。所定時間が経過した場合(ステップS11でYes)、PCM5は、判別温度を再度読み込む(ステップS12)。
そして、モータ30の回転数が判別回転数R0未満になるまで、PCM5は、判別温度に対応した弱め磁束電流値を特定し(ステップS10)、その弱め磁束電流値を用いて、起電力変調制御を伴った同期整流処理を行いながら、回生を継続する(ステップS5)。
そうして、モータ30の回転数が判別回転数R0未満になれば、PCM5は、通常の制御に切り替えて、回生を行う(ステップS3,S4)。
この応用例の制御装置によれば、高回転時においても、ダイオード25の温度が低い場合には、効率よく回生が行える。従って、よりいっそう効率よく回生が行える。
モータ30の回転数が判別回転数R0以上であると判定した場合だけでなく、弱め磁束制御が行われる回転数の全域又はその一部の領域において、判別温度に基づいてダイオード通電期間P2の長短を調整してもよい。
<変形例1>
回生電圧の低下は、低電圧電源4の充填率(SOC)の低下によっても発生する。SOCが小さくなるほど、低電圧電源4の電圧が低下するので、回生電圧も低下する。
図13に、図6に相当する図を示す。図13に示す点Psは、SOCに対応した動作点を表している。SOCが小さくなるほど、回生電圧が低下するので、回生電力が同じ場合、矢印で示すように、動作点Psは、回生電流が大きくなる方向に移動する。それにより、動作点Psは、ダイオード25の耐熱限界を超えるおそれがある。
そこで、この変形例1の制御装置では、動作点Psがダイオード25の耐熱限界を超えないように、SOCの範囲を制限する。具体的には、この制御装置では、動作点Psがダイオード25の耐熱限界を超え得る所定のSOCの下限値V1が、メモリ5bに設定されている。そして、PCM5は、SOCがその下限値V1未満とならないように、SOCを調整する。
図14に、その制御の一例を示す。PCM5は、車両1の運転中は、常時、電圧センサ9fなどからSOCを検出しており、SOCが下限値V1以下か否かを判定する(ステップS20)。そして、PCM5は、SOCが下限値V1より大きいと判定した場合には(ステップS20でNo)、低電圧電源4の出力を許可し、必要に応じてモータ30を駆動したり回生したりする(ステップS21)。
SOCが下限値V1以下であると判定した場合には(ステップS20でYes)、PCM5は、低電圧電源4の出力を許可しない(ステップS22)。この場合、例えば、モータ30の駆動要求がなされてもモータ30は駆動しないで、エンジン2で駆動する。SOCが回復するように、低回転の領域で回生を行って低電圧電源4を充電してもよい。
従って、この変形例1の制御装置によれば、常に、SOCが下限値V1より大きい状態で回生が行われるので、SOCに起因して、回生時にダイオード25がその耐熱限界を超えるのを抑制できる。
<変形例2>
上述した車両1では、バッテリ10が低電圧電源4と接続されている。従って、低電圧電源4の電力は、DC/DCコンバータ11を通じてバッテリ10に供給することができる。それにより、バッテリ10は、必要に応じて充電される。
回生時に、低電圧電源4の電力でバッテリ10の充電が行われた場合、低電圧電源4からバッテリ10に電流(補機電流)が流れるので、その分、低電圧電源4の電圧、つまり回生電圧が低下する。その結果、回生電流が増加し、ダイオード25がその耐熱限界を超え易くなる。
そこで、この変形例2の制御装置では、回生時に、低電圧電源4の電力がバッテリ10の充電などに利用されることによって、低電圧電源4から補機電流が流出する場合に、補機電流の流出が制限されるように構成されている。
図15に、その補機電流の制限制御の一例を示す。車両1の運転中、PCM5は、車両1の運転状態を判定するため、センサ9a〜9fなどから得られる各種情報を読み込む(ステップS30)。PCM5は、これら情報に基づいて、モータ30で回生が行われると判定した場合(ステップS31でYes)、判別温度が所定の基準温度Ts以上か否かを判定する(ステップS32)。
基準温度Tsは、回生を継続した場合に、上流側ダイオード25aがその耐熱温度を超える可能性がある温度である。基準温度Tsは、仕様に応じて予めメモリ5bに設定されている。基準温度Ts未満であれば、上流側ダイオード25aがその耐熱温度を超える可能性は無いため、リターンして通常通りに回生が行われる(ステップS32でNo)。
PCM5は、判別温度が基準温度Ts以上であると判定した場合(ステップS32でYes)、補機電流が出力されているか否かを判定する(ステップS33)。本実施形態の車両1の場合、低電圧電源4の電力でバッテリ10の充電が行われている場合が相当する。補機電流が出力されていない場合には、リターンする(ステップS33でNo)。
補機電流が出力されている場合(ステップS33でYes)、PCM5は、DC/DCコンバータ11に制御信号を出力し、補機電流量を低下させる制御を実行する(ステップS34)。それにより、低電圧電源4の電圧の低下が抑制されるので、上流側ダイオード25aがその耐熱限界を超えるのを抑制することができる。
なお、開示する技術にかかる制御装置は、上述した実施形態に限定されず、それ以外の種々の構成をも包含する。例えば、実施形態の車両1は例示である。開示する技術は、異なる構造のハイブリッド車にも適用できる。モータ30も例示である。その具体的な構造は、仕様に応じて適宜選択できる。
低電圧電源4の内部抵抗4bは、温度を下げることで高めることができる。従って、低電圧電源4に冷却装置を設置し、その冷却装置で、必要に応じて低電圧電源4を冷却するようにしてもよい。
例えば、回生時に、温度センサ9aで検出される判別温度が所定の温度以上になった場合に、PCM5が、冷却装置に制御信号を出力し、冷却装置で低電圧電源4を冷却するように制御すればよい。そうすることによっても、回生時にインバータ20で発生する発熱を抑制することができる。
1 車両
2 エンジン
3 電動発電機
4 低電圧電源
5 PCM(制御部の一例)
6 クラッチ
10 バッテリ
20 インバータ
20a 電気回路
21 第1のアーム
22 第2のアーム
23 第3のアーム
24 スイッチング素子
25 ダイオード
30 モータ
30b ステータ
30c ロータ
30d 永久磁石
50 巻線群

Claims (5)

  1. 電動発電機の制御装置であって、
    永久磁石が設けられたロータ、および複数の異なる巻線群が設けられたステータを有するモータと、
    前記モータの運転状態を検出する計測部と、
    前記モータを駆動制御するインバータと、
    前記インバータと接続された直流電源と、
    前記計測部から入力される信号に基づいて、前記インバータに信号を出力して制御する制御部と、
    を備え、
    前記インバータは、前記直流電源の一対の出力端子に連なる配線に接続された複数のアームを有し、
    前記アームの各々は、
    前記アームに直列に接続された2つのスイッチング素子と、
    前記スイッチング素子の各々と逆並列に接続された2つのダイオードと、
    を有し、
    前記アームにおける2つの前記スイッチング素子の間の中点に接続された複数の配線を通じて、前記巻線群の各々に位相の異なる交流が供給されることにより、前記モータが駆動制御されるように構成され、
    前記制御部は、
    発電機として前記モータが発生する起電力によって前記アームに回生電流が流れるときに、少なくともいずれか1つの前記スイッチング素子と、当該スイッチング素子と逆並列に接続された前記ダイオードの双方に前記回生電流を流す同期整流処理を実行し、
    前記同期整流処理の実行時に、前記回生電流が前記ダイオードを流れる期間が短くなるように前記起電力を変調する、電動発電機の制御装置。
  2. 請求項1に記載の電動発電機の制御装置において、
    前記起電力は、正弦曲線または正弦曲線状に変化する波形を有し、
    前記制御部は、前記同期整流処理の実行時に、前記波形のピーク周辺における単位時間当たりの電圧変化量が小さくなるよう、前記起電力を調整する、電動発電機の制御装置。
  3. 請求項2に記載の電動発電機の制御装置において、
    前記制御部は、更に、前記モータの運転状態に応じて前記モータに弱め磁束電流を供給する処理を実行し、
    前記起電力の調整が、前記弱め磁束電流の変調によって行われる、電動発電機の制御装置。
  4. 電動発電機の制御装置であって、
    永久磁石が設けられたロータ、および複数の異なる巻線群が設けられたステータを有するモータと、
    前記モータの運転状態を検出する計測部と、
    前記モータを駆動制御するインバータと、
    前記インバータと接続された直流電源と、
    前記計測部から入力される信号に基づいて、前記インバータに信号を出力して制御する制御部と、
    を備え、
    前記インバータは、前記直流電源の一対の出力端子に連なる配線に接続された複数のアームを有し、
    前記アームの各々は、
    前記アームに直列に接続された2つのスイッチング素子と、
    前記スイッチング素子の各々と逆並列に接続された2つのダイオードと、
    を有し、
    前記アームにおける2つの前記スイッチング素子の間の中点に接続された複数の配線を通じて、前記巻線群の各々に位相の異なる交流が供給されることにより、前記モータが駆動制御されるように構成され、
    前記インバータは、更に、前記ダイオード又はその近傍の温度からなる判別温度を検出して前記制御部に出力する温度検出手段を有し、
    前記制御部は、
    発電機として前記モータが発生する起電力によって前記アームに回生電流が流れるときに、少なくともいずれか1つの前記スイッチング素子と、当該スイッチング素子と逆並列に接続された前記ダイオードの双方に前記回生電流を流す同期整流処理を実行し、
    前記同期整流処理の実行時に、前記判別温度が低いときよりも高いときの方が、前記回生電流が前記ダイオードを流れる期間が短くなるように前記起電力を変調する、電動発電機の制御装置。
  5. 請求項4に記載の電動発電機の制御装置において、
    前記起電力は、正弦曲線または正弦曲線状に変化する波形を有し、
    前記制御部は、前記同期整流処理の実行時に、前記波形のピーク周辺における単位時間当たりの電圧変化量が小さくなるよう、前記起電力を調整する、電動発電機の制御装置。
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