JP2020041203A - オーステナイト系ステンレス鋼および介在物の計測方法 - Google Patents

オーステナイト系ステンレス鋼および介在物の計測方法 Download PDF

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Abstract

【課題】疲労特性が良好なオーステナイト系ステンレス鋼を提供する。【解決手段】C:0.08〜0.15質量%、Si:0.30〜1.00質量%、Mn:0.50〜2.00質量%、P:0.04質量%以下、S:0.010質量%以下、Ni:6.00〜8.00質量%、Cr:16.00〜18.00質量%、Cu:1.00質量%以下、N:0.005〜0.15質量%、Ti:0.010質量%以下、Al:0.010質量%以下、Ca:0.005質量%以下、およびO:35〜80ppmを含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる。このオーステナイト系ステンレス鋼は、板厚が20μm以上100μm以下で、板厚方向の平均結晶粒数が10個以上で、鋼材0.1gに含まれる円相当直径が15μm以上の介在物が100個/0.1g以下で、引張強さが1800N/mm2以上である。【選択図】なし

Description

本発明は、ばね用の素材として適したオーステナイト系ステンレス鋼および介在物の計測方法に関する。
従来から、携帯電話端末や家電製品等の電子機器に設けられているタクトスイッチ等の薄型の押しボタンスイッチ用の材料としては、準安定オーステナイト系ステンレス鋼が用いられている。
この種のオーステナイト系ステンレス鋼として、特許文献1ないし4のステンレス鋼が知られている。
特許文献1には、平坦度に優れ、残留応力が小さいステンレス鋼箔が記載されている。
特許文献2には、引張強さが1600N/mm以上で疲労特性に優れるステンレス鋼箔が記載されている。
特許文献3には、表面にニッケル、銀合金をめっきする場合のめっきの長寿命化を図る技術が記載されている。
特許文献4には、はんだリフロー後の特性変化が小さく、クリック特性に優れるステンレス鋼が記載されている。
特開2001−286904号公報 特開2001−286905号公報 特開2005−2400号公報 特開2018−3099号公報
近年、携帯電話端末や家電製品等の電子機器の小型化がますます進み、これまで以上に材料の特性、特にスイッチの長寿命化につながる材料の疲労特性の向上が要求されている。
このような材料への要求に対応するには、まず高強度である必要があり、高強度化については圧延率を高くすることで対応可能であるが、高強度化するほど介在物により疲労特性が低下する傾向がある。そして、材料の強度を高めただけでは、疲労特性が不十分でタクトスイッチとしての長寿命化が図れない場合が多かった。
そこで、例えばタクトスイッチ等のばね用の材料として、所定の強度を確保した上で、疲労特性が良好な材料が求められていた。
本発明はこのような点に鑑みなされたもので、疲労特性が良好なオーステナイト系ステンレス鋼および介在物の計測方法を提供することを目的とする。
請求項1に記載されたオーステナイト系ステンレス鋼は、C:0.08質量%以上0.15質量%以下、Si:0.30質量%以上1.00質量%以下、Mn:0.50質量%以上2.00質量%以下、P:0.04質量%以下、S:0.010質量%以下、Ni:6.00質量%以上8.00質量%以下、Cr:16.00質量%以上18.00質量%以下、Cu:1.00質量%以下、N:0.005質量%以上0.15質量%以下、Ti:0.010質量%以下、Al:0.010質量%以下、Ca:0.005質量%以下、およびO:35ppm以上80ppm以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、板厚が20μm以上100μm以下で、板厚方向の平均結晶粒数が10個以上で、鋼材0.1gに含まれる円相当直径が15μm以上の介在物が100個/0.1g以下で、引張強さが1800N/mm以上であるものである。
請求項2に記載されたオーステナイト系ステンレス鋼は、請求項1記載のオーステナイト系ステンレス鋼において、Mo:1.00質量%以下、V:0.50質量%以下およびB:0.001質量%以上0.01質量%以下のうちの少なくとも1種を含有するものである。
請求項3に記載されたオーステナイト系ステンレス鋼は、請求項1または2記載のオーステナイト系ステンレス鋼において、介在物は、C含有量が39質量%未満であるものである。
請求項4に記載された介在物の計測方法は、ステンレス鋼素地を溶解し、介在物を溶解しない溶液を用いて鋼材を溶解し、溶解後の溶液から孔径2μm以下のフィルタによって介在物を抽出し、抽出物から走査型電子顕微鏡およびエネルギ分散型X線分析によって介在物を計測するものである。
本発明によれば、所定の化学組成の範囲において、板厚が20μm以上100μm以下で、板厚方向の平均結晶粒数が10個以上で、鋼材0.1gに含まれる円相当直径が15μm以上の介在物が100個/0.1g以下であるため、疲労特性が良好である。
以下、本発明の一実施の形態の構成について詳細に説明する。
本発明に係るオーステナイト系ステンレス鋼は、C(炭素):0.08質量%以上0.15質量%以下、Si(ケイ素):0.30質量%以上1.00質量%以下、Mn(マンガン):0.50質量%以上2.00質量%以下、P(リン):0.04質量%以下、S(硫黄):0.010質量%以下、Ni(ニッケル):6.00質量%以上8.00質量%以下、Cr(クロム):16.00質量%以上18.00質量%以下、Cu(銅):1.00質量%以下、N(窒素):0.005質量%以上0.15質量%以下、Ti(チタン):0.010質量%以下、Al(アルミニウム):0.010質量%以下、Ca(カルシウム):0.005質量%以下、およびO(酸素):35ppm以上80ppm以下を含有し、残部がFe(鉄)および不可避的不純物からなる。
また、必要に応じて、Mo(モリブデン):1.00質量%以下、V(バナジウム):0.50質量%以下およびB(ホウ素)0.001質量%以上0.01質量%以下のうちの少なくとも1種を含有する。
Cは、オーステナイト生成元素であり、オーステナイト相および加工誘起マルテンサイト相の強化に有効な元素である。C含有量が0.08質量%より少ないと、強化作用を十分に奏さない可能性がある。一方、Cを0.15質量%を超えて添加すると加工性を低下させる要因となる可能性がある。したがって、Cの含有量は、0.08質量%以上0.15質量%以下とし、好ましくは0.13質量%以下とする。
Siは、Al含有量を低く制御するという趣旨から、脱酸材として有用である。また、Siは、オーステナイト相の加工硬化を高める作用があり、圧延によって高強度を得るためには有効な元素である。これらの作用を奏するには、Siを0.30質量%以上添加する必要がある。一方、Siを1.00質量%を超えて添加すると、熱間圧延の際にδフェライトが生成し、熱間加工性が低下する可能性がある。したがって、Siの含有量は、0.30質量%以上1.00質量%以下とし、好ましくは0.40質量%以上0.90質量%以下とする。
Mnは、SiおよびOと結びついて、熱間圧延工程および冷間圧延工程で分断しやすい軟質なMn−Si−O系の介在物を形成する。また、Mnは、オーステナイト生成元素でありオーステナイト組織を得るために有効な元素である。これらの作用を奏するには、Mnを0.50質量%以上添加する必要がある。一方、Mnを2.00質量%を超えて添加すると、オーステナイト相が安定化し、加工誘起マルテンサイト変態が起こりにくくなる。したがって、Mnの含有量は、0.50質量%以上2.00質量%以下とし、好ましくは1.50質量%以下とする。
PおよびSは、含有量は低いほど好ましいが、必要以上に含有量を低くすると加工性やその他の材料特性や製造性に影響を与える可能性がある。したがって、Pの含有量は、0.04質量%以下(無添加含まず。)とし、Sの含有量は0.010質量%以下(無添加含む。)とする。
Niは、オーステナイト形成元素であり、延性および靭性を向上させるために有効な元素である。これらの作用を奏するには、Niを6.00質量%以上添加する必要がある。一方、Niは比較的高価な元素であるため、過剰に添加すると材料コストが必要以上に上昇してしまう。したがって、Niの含有量は、6.00質量%以上8.00質量%以下とし、好ましくは7.50質量%以下とする。
Crは、耐食性を向上させる元素であり、十分な耐食性を確保するためには16.00質量%以上添加する必要がある。一方、Crを18.00質量%を超えて添加すると加工性が低下する可能性がある。したがって、Crの含有量は、16.00質量%以上18.00質量%以下とし、好ましくは17.50質量%以下とする。
Cuは、オーステナイト相を安定化させる上で有効な元素であるが、1.00質量%を超えて添加すると、加工性が低下する可能性がある。したがって、Cuの含有量は、1.00質量%以下(無添加含まず。)とする。
Nは、オーステナイト形成元素であり、強度および延性の向上に有効な元素である。これらの作用を奏するには、Nを0.005質量%以上添加する必要がある。一方、Nを0.15質量%を超えて添加すると、ブローホールの原因となる可能性がある。したがって、Nの含有量は、0.005質量%以上0.15質量%以下とする。
Tiは、酸化しやすく、さらにNと結びついてTiNを形成しやすい元素である。TiNは酸化物系の介在物に比べると小さいものの、硬質な介在物で、熱間圧延工程および冷延工程で分断しにくいため、箔の段階としては比較的大きな介在物として観察されることもある。したがって、Tiの含有量は、0.010質量%以下(無添加含む。)とし、好ましくは0.005質量%以下とする。
Alは、酸化しやすく、高温で析出して粗大な介在物となりやすい元素であり、その介在物は、硬質であるため熱間圧延および冷延工程にて分断されにくい。したがって、Alの含有量は、0.010質量%以下(無添加含む。)とし、好ましくは0.005質量%以下とする。
Caは、Alに比べると軟質ではあるものの、高温で析出するため粗大な酸化物を形成する元素である。したがって、Caの含有量は、0.005質量%以下(無添加含む。)とし、好ましくは0.003質量%以下とする。
Oは、ステンレス鋼中に不可避的に混入される元素であり、製鋼工程においてSiやAlを用いて脱酸が行われるが、脱酸後も0.001〜0.010質量%程度のOが残存することが一般的である。残存したOは鋼中のSi、Mn、Al、TiおよびCa等の易酸化性元素と結合し、酸化物系介在物を形成させる。Oの含有量が35ppmより少ないと、SiおよびMnが酸化しにくくなり、介在物におけるAlの比率が高くなる。Alは硬質であり、熱間圧延工程および冷間圧延工程で伸展しにくいため、20〜100μmの箔になった段階でも比較的大型の介在物として残りやすい。一方、O含有量が80ppmを超えると、酸化物の絶対量が増加し、集積して大型の介在物に相当する可能性がある。したがって、Oの含有量は35ppm以上80ppm以下とする。
Moは、耐食性の向上に有効な元素であるが、比較的高価な元素である。したがって、Moを添加する場合には、その含有量を1.00質量%以下とする。
Vは、高温で炭化物を形成し、その析出強化やV自体の固溶強化で強度を向上させる元素である。一方、0.50質量%を超えて添加すると鋼材の靱性を阻害する可能性がある。したがって、Vを添加する場合には、その含有量を0.50質量%以下とする。
Bは、ステンレス鋼の熱間加工性を向上させ、熱間圧延工程での割れ防止に有効な元素である。一方、Bを過剰に添加すると、かえって熱間加工性が低下する可能性がある。したがって、Bを添加する場合には、その含有量を0.001質量%以上0.01質量%以下とする。
上記化学組成にて構成されたオーステナイト系ステンレス鋼は、後述の所定の製造工程(例えば、熱間圧延、冷間圧延、焼鈍、仕上圧延およびテンションアニーリング)を経て、引張強さが1800N/mm以上で、板厚が20μm以上100μm以下の箔状となる。
このような箔状のオーステナイト系ステンレス鋼は、板厚方向の平均結晶粒数が10個以上である。
なお、板厚方向の結晶粒数は、最終圧延前の焼鈍材について、圧延方向に平行で板厚方向に垂直な断面を研磨し、結晶粒界を現出させるエッチング処理を施した上で、顕微鏡によって組織観察を行うことで、板厚方向の結晶粒の数を測定する。また、板厚方向の結晶粒数は、測定位置によってばらつきが生じることも想定されるため、複数箇所(例えば5箇所以上)で測定して、その平均値を求める。
ここで、20〜100μmの箔状のオーステナイト系ステンレス鋼では、圧延において微細に分断されにくく円相当直径15μm以上の硬質な介在物が疲労特性に悪影響を及ぼし、その介在物が100個/0.1gを超えると、疲労特性が著しく低下する。したがって、オーステナイト系ステンレス鋼における円相当直径が15μm以上の介在物数は、100個/0.1g以下とする。なお、板厚円相当直径とは、介在物の面積と等しい円の直径を意味する。
オーステナイト系ステンレス鋼における介在物を測定する際には、まず、ステンレス鋼素地を溶解するが介在物を溶解しない溶液、例えばメタノール25mLにヨウ素3.25gを溶かした溶液に、測定対象のステンレス鋼を0.1g浸漬し、超音波をかけながら溶解する。
次いで、孔径0.5μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製のメンブレンフィルタを用いて、真空引きしながら濾過を行い、主に介在物からなる残渣物を抽出する。
なお、濾過の際に、内径40mmのガラス器具を用いることで、介在物が抽出される面積が直径40mmの範囲となるようにすることが好ましい。
メンブレンフィルタに白金蒸着を施し、走査型電子顕微鏡(SEM)およびエネルギ分散型X線分析によって、介在物の形状および組成を計測し、円相当直径が15μm以上である介在物数を測定する。
介在物数を測定する際には、上記方法で抽出された残渣物においてC含有量が39質量%以下のものを介在物とすることで、作業過程で不可避的に混入するコンタミ等と介在物とを区別できるので好ましい。
なお、20〜100μmの箔状のオーステナイト系ステンレス鋼では、圧延において分断されにくく円相当直径15μm以上の硬質な介在物が疲労特性に悪影響を及ぼすと考えられる。そのため、介在物を測定する際には、Al含有量が1質量%以上およびTi含有量が1質量%以上の少なくともいずれかを満たす介在物のみをカウント対象とすることで、疲労特性を低下させる硬質な介在物をより正確に測定できるので好ましい。
例えば表1には、上述のように計測した介在物およびコンタミの大きさおよび組成を示す。
Figure 2020041203
表1では、C<39質量%を満たすもので、かつ、Al≧1質量%以上およびTi≧1質量%の少なくともいずれかを満たすもの(No.5〜8)を介在物とし、それ以外(No.1〜4)をコンタミとしている。また、このように分類した介在物のうち、円相当直径が15μm以上であるNo.8を0.1gあたりの個数を規定する対象の介在物としてカウントする。
そして、上記オーステナイト系ステンレス鋼は、例えば携帯電話や家電製品等の電子機器に設けられているタクトスイッチ用のメタルドーム等のばね材として好適に用いられる。
次に上記オーステナイト系ステンレス鋼の製造方法を説明する。
まず、電気炉でステンレス鋼の原料を溶解し、その溶鋼に酸素を吹き込むことで脱炭し、次いでSiを加えて溶鋼中の酸素と反応させて、酸素濃度を低減させる脱酸作業を行う。
最終的に溶鋼中の酸素濃度を35〜80ppmに制御するためには、スラグの塩基度(CaO/SiO)を比較的低め、例えば1.3〜1.5程度に制御することが有効である。
このように酸素濃度が35〜80ppmであれば、その後、連続鋳造工程に至るまでの工程で、SiおよびMnが酸化して、熱間圧延工程および冷間圧延工程で分断されやすいMn−Si−O系酸化物が生成される。
なお、酸素濃度が35ppm未満まで低下させると、Mnが酸化しにくくなり、圧延で分断されにくいSi−Al−O系の酸化物が生成しやすくなる。また、酸素濃度が35〜80ppmであっても、不可避的に混入するAl、TiおよびCaの量が多ければ、必然的にそれらの酸化物が増加するため、不可避的な混入を出きる限り避けるように、原料や溶鋼を入れる鍋の状態に注意を払うことが重要である。
次いで、連続鋳造で製造されたスラブを、1100〜1300℃に加熱し、熱間圧延を行い熱延鋼帯とする。
熱延鋼帯に対して、冷間圧延と焼鈍を繰り返し、所定の板厚の焼鈍材とし、仕上圧延によってオーステナイト相を加工硬化させるとともに、加工誘起マルテンサイト変態させ、高強度のオーステナイト系ステンレス鋼箔を得る。
また、仕上圧延後には、テンションアニーリング(TA)によって、残留応力除去および形状矯正を行うことが好ましい。
特に特性に対して重要である工程は、仕上圧延前の焼鈍温度と仕上圧延率と仕上圧延温度である。仕上圧延前の焼鈍温度が高いと結晶粒径が大きくなる。
具体的には、20〜100μmの板厚の場合、板厚方向の結晶粒の数が少ないと特性のばらつきを生じやすい。そのため、板厚方向の平均結晶粒数が10個以上になるよう、板厚に応じて、900〜1100℃の範囲で適切に焼鈍温度および時間を設定することが好まく、より好ましい焼鈍温度は950〜1050℃である。
仕上圧延率は、目標とする特性、成分および結晶粒径を考慮して設定すればよい。仕上圧延温度が低いと加工誘起マルテンサイト変態が起こりやすく、強度を得やすいが、圧延の際の発熱によって温度が上昇することから、過度に温度を低くすることは生産性の低下の要因となる。一方、仕上圧延温度が高いと、加工誘起マルテンサイト変態が起こりにくいが、それでも圧延率を高くすれば高強度を得ることは可能である。従って、仕上圧延温度も目標とする特性、成分および結晶粒径を考慮して設定することが好ましい。
テンションアニーリングは、数kgf/mm(例えば5kgf/mm)の張力を加えた状態で、480〜540℃で数秒(例えば5秒)程度の熱処理を行えばよい。なお、材料温度が480〜540℃に到達した後、ただちに冷却してもよい。
次に、上記一実施の形態の作用および効果を説明する。
上記オーステナイト系ステンレス鋼によれば、所定の化学組成の範囲で板厚が20μm以上100μm以下の箔状であり、鋼材0.1gに含まれる円相当直径15μm以上の介在物が100個/0.1g以下であるため、介在物による熱疲労特性の低下を抑えることができる。より具体的に説明すると、特に介在物の形成に影響するO、Si、Mn、Al、CaおよびTiの含有量を規定して、ステンレス鋼中の介在物を圧延によって分断されやすいものに制御することで、圧延によってステンレス鋼が板厚20μm以上100μm以下の箔になった段階では、円相当直径15μm未満の微細な介在物が多く存在した状態となる。そのため、圧延によって引張強さが1800N/mm以上という強度を確保できるとともに、疲労特性も良好である。
また、板厚方向の平均結晶粒数が10個以上にすることにより、ステンレス鋼における場所による特性のばらつきの発生を抑えることができるため、疲労特性を向上できる。
以下、本実施例および比較例について説明する。
表2に示す化学組成のステンレス鋼を電気炉で溶解し、上述の方法でオーステナイト系ステンレス鋼箔を製造した。
なお、表2における各元素の含有量は、Oppmでの値であり、他の元素は質量%での値である。
また、表2におけるMd30の値は、Md30=551−462(C+N)−9.2Si−8.1Mn−29(Ni+Cu)−13.7Cr−18.5Moの式で示すオーステナイト安定度指数である。この式は、各元素の含有量に基づくものであり、各元素の含有量(質量%)の値が代入され、含有していない元素は0が代入される
Figure 2020041203
また、表3に示す条件で焼鈍および仕上圧延を行い、板厚を40μmとして、板厚方向の結晶粒数の計測、介在物の測定、引張強さの測定および疲労試験を行った。
鋼種A1、A2およびB1については、表3に示すとおり複数の条件で焼鈍および仕上圧延を行った。
なお、板厚が異なると疲労試験条件を変更する必要があり、相対比較が難しくなることから、本実施例および比較例ともに板厚は40μmで統一した。
また、疲労特性を比較するために、強度(引張強さ)は、本実施例および比較例のいずれも同等とした。
介在物の測定は、上述のようにメタンおよびヨウ素の液体にステンレス鋼を溶解し濾過して抽出したものをSEMおよびエネルギ分散型X線分析し、Al≧1質量%およびTi≧1質量%の少なくともいずれかを満たし、C<39質量%であるものを介在物として、円相当直径15μm以上の介在物数をカウントした。
疲労試験は、JIS P 8115に準じ、通称MIT試験と呼ばれる曲げ疲労試験を行った。具体的には、上記各ステンレス鋼から長さ110mm、幅15mmの試験片を切り出し、東洋精機製作所製の耐折疲労試験機を用いて、試験荷重を1kgとし、折り曲げ角度を135°とし、折り曲げ半径を2.9mmとし、折り曲げ速度を175回/分として、曲げ疲労試験を行った。
この曲げ疲労試験では、耐久回数が10000回以上のものを疲労特性が良好であると評価した。
Figure 2020041203
表3に示すように、所定の化学組成の範囲において、板厚方向の結晶粒数が10個以上で、鋼材0.1gに含まれる15μm以上の介在物数が100個/0.1g以下である本実施例は、いずれも、曲げ疲労試験の耐久回数が10000回以上であり、疲労特性が良好であった。
所定の化学組成の範囲において、鋼材0.1gに含まれる15μm以上の介在物数が100個/0.1g以下であるものの、板厚方向の結晶粒数が10個未満の比較例であるA1−4およびA2−2は、曲げ疲労試験の耐久回数が10000回未満であった。
Ti、Al、CaおよびOの少なくともいずれかの含有量が範囲外であるB1−1、B1−2、B1−3、B1−4、B2、B3およびB4は、いずれも鋼材0.1gに含まれる15μm以上の介在物数が100個/0.1gを越えており、曲げ疲労試験の耐久回数が10000回未満であった。

Claims (4)

  1. C:0.08質量%以上0.15質量%以下、Si:0.30質量%以上1.00質量%以下、Mn:0.50質量%以上2.00質量%以下、P:0.04質量%以下、S:0.010質量%以下、Ni:6.00質量%以上8.00質量%以下、Cr:16.00質量%以上18.00質量%以下、Cu:1.00質量%以下、N:0.005質量%以上0.15質量%以下、Ti:0.010質量%以下、Al:0.010質量%以下、Ca:0.005質量%以下、およびO:35ppm以上80ppm以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、
    板厚が20μm以上100μm以下で、
    板厚方向の平均結晶粒数が10個以上で、
    鋼材0.1gに含まれる円相当直径が15μm以上の介在物が100個/0.1g以下で、
    引張強さが1800N/mm以上である
    ことを特徴とするオーステナイト系ステンレス鋼。
  2. Mo:1.00質量%以下、V:0.50質量%以下およびB:0.001質量%以上0.01質量%以下のうちの少なくとも1種を含有する
    ことを特徴とする請求項1記載のオーステナイト系ステンレス鋼。
  3. 介在物は、C含有量が39質量%未満である
    ことを特徴とする請求項1または2記載のオーステナイト系ステンレス鋼。
  4. ステンレス鋼素地を溶解し、介在物を溶解しない溶液を用いて鋼材を溶解し、
    溶解後の溶液から孔径2μm以下のフィルタによって介在物を抽出し、
    抽出物から走査型電子顕微鏡およびエネルギ分散型X線分析によって介在物を計測する
    ことを特徴とする介在物の計測方法。
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