以下に添付図面を参照して、管理装置、ピッキングシステムおよびピッキング管理方法の実施の形態を詳細に説明する。
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施の形態にかかるピッキングシステム100の構成を示すブロック図である。図1に示すように、ピッキングシステム100は、無人搬送車(AGV:Automatic Guided Vehicle)2と、ピッキング作業者が持つ作業者端末3と、AGV2と作業者端末3とを管理する管理装置1と、を備える。
(AGV2について)
AGV2は、自動運転車の一種で人間が運転操作を行わなくとも自動で走行できる自立走行車である。AGV2自身が荷物を積載できる必要はなく、台車やカゴ車のような荷物を積載する車と自立走行するAGV2とで無人搬送車を構成してもよい。AGV2の誘導方式としては、所定の検出対象(金属線、磁気テープ、光学テープ、マーカ等)に応じて誘導する誘導方式(電磁誘導式、光学誘導式、磁気誘導式、画像認識方式など)と、誘導用の磁気テープなどを使わずに自律走行できる自律走行方式とがある。本実施の形態においては、任意の停止位置が設定できる自律走行方式を採用する。
AGV2は、1台以上で構成される。それぞれのAGV2は、管理装置1から巡回経路情報を受け取る。それぞれのAGV2は、受け取った巡回経路情報に従って移動および停止動作を自動で行う。
ここで、図2はAGV2の構成例を示す図である。図2に示すように、AGV2は、商品(品物)を積み込むコンテナ等の箱21を搭載する。AGV2は、機械的なボタンやタブレットによるユーザインタフェイスである操作部22を備える。また、AGV2は、ジャイロスコープ、加速度センサ、距離計等のセンサ23を備える。また、AGV2は、管理装置1との間で無線通信を行う無線インタフェイス(I/F)24を内蔵する。
また、図2に示すように、AGV2は、AGV2の制御主体となるAGVコントローラ25を備える。AGVコントローラ25は、AGV2の移動制御のほか、無線インタフェイス24を介して管理装置1との通信を行う通信制御を行う。
このような構成により、AGV2は、箱21を搭載した状態で、管理装置1によって指示された巡回経路情報に従って、物流センタや配送センタである倉庫内を移動および停止する。AGV2は、商品積み込みなどで一時停止している状態で、ピッキング作業者が作業を完了したことを通知する操作部22のボタンの押下があったことを検知すると、次の動作に移行する。AGV2は、一連の積み込みが完了したら、検品や梱包の工程にて箱21を下して、再スタートする動作を繰り返す。
(作業者端末3)
ここで、図3は作業者端末3の構成例を示す図である。図3に示すように、作業者端末3は、ピッキング作業者が行うべき作業の指示が表示される表示部31を備える。また、作業者端末3は、商品のピッキングと同時に、商品の照合(検品)を行うためのバーコードやQRコード(登録商標)などの商品識別コードを読み取るコード読み取り部32と、作業の完了などを入力するためのボタンやタッチパネルなどの入力部33と、を備える。また、作業者端末3は、管理装置1との間で無線通信を行う無線インタフェイス(I/F)34を内蔵する。
作業者端末3は、作業の指示情報を管理装置1から取り込む。作業者端末3は、作業の指示情報として、ピッキング作業を行う対象となる商品名、商品の位置、数量、商品位置までの移動経路、商品を積み込むAGV2のID、目標とするピッキング完了見込み時間(目標完了時間)などの情報を、ピッキング作業者が判断しやすいように表示する。
このように作業者端末3に対して、作業についての目標とするピッキング完了見込み時間(目標完了時間)を示した作業指示を通知することにより、ピッキング作業者が目標とするピッキング完了見込み時間(目標完了時間)を把握できるため、作業の計画と実績の差異が少なくなることや、空き時間が出来ることで、ゴミ捨てなどの付帯業務を行う事ができるという効果がある。
なお、図3(a)は表示部31にテキスト情報の表示例を示し、図3(b)は表示部31にグラフィカルな商品位置までの経路の表示例を示すものである。図3(a)に示すテキスト情報は、作業者がピッキング作業を行う対象となる商品の位置、商品名、数量を示すリストである。また、図3(b)に示すように、表示部31に巡回経路をグラフィカルに表示することにより、作業者が最短距離で移動できるものとなっている。
(管理装置1)
ここで、図4は管理装置1のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。管理装置1は、PC(Personal Computer)やサーバなどによって構成される。図4に示すように、管理装置1は、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)などの制御装置11と、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)などの主記憶装置12と、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)などの補助記憶装置13と、ディスプレイなどの表示装置14と、キーボードやマウスなどの入力装置15と、通信インタフェイスなどの通信装置16と、を備えており、通常のコンピュータを利用したハードウェア構成となっている。
制御装置11は、主記憶装置12や補助記憶装置13に記憶されている各種プログラムを実行することで、管理装置1全体の動作を制御し、後述する各種機能部を実現する。
本実施の形態の管理装置1で実行されるプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD−ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD−R、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して提供するように構成してもよい。
さらに、本実施の形態の管理装置1で実行されるプログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成しても良い。また、本実施の形態の管理装置1で実行されるプログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成しても良い。
通信装置16は、有線インタフェイスと無線インタフェイスとを備える。無線インタフェイスは、AGV2および作業者端末3との無線通信を行うインタフェイスである。一般的な作業者端末3にはWi−Fi(登録商標)を搭載する機器が多いため、無線LANを利用すると構成が容易になる。
有線インタフェイスは、図1に示す受注システム4、倉庫管理システム(WMS:Warehouse Management System)5、管理者端末6との通信を行うインタフェイスである。有線インタフェイスは、LAN通信に用いられる。
受注システム4は、顧客からの商品の注文リスト(ピッキングオーダー)を管理するシステムである。例えば、管理装置1は、通信装置16の有線インタフェイスを介してLANで接続された受注システム4から注文リストを取得する。
WMS5は、商品の在庫状況を示す商品在庫情報や、商品の倉庫内などでの保管位置を示す商品位置情報を管理するシステムである。例えば、管理装置1は、通信装置16の有線インタフェイスを介してLANで接続されたWMS5から商品在庫情報や商品位置情報を取得する。
管理者端末6は、PC(Personal Computer)やタブレット端末などの情報処理装置である。管理者端末6は、現場管理者からのピッキング作業者の人数やAGV2の台数の入力を受け付ける。また、管理者端末6は、現場管理者からの作業のスタート、ストップの入力を受け付ける。さらに、管理者端末6は、ピッキング作業の動作状況を表示する。例えば、管理装置1は、通信装置16の有線インタフェイスを介してLANで接続された管理者端末6からピッキング作業者の人数やAGV2の台数を取得する。
次に、管理装置1の制御装置11が主記憶装置12や補助記憶装置13に記憶されたプログラムを実行することによって、管理装置1が発揮する機能について説明する。なお、ここでは従来から知られている機能については説明を省略し、本実施の形態の管理装置1が発揮する特徴的な機能について詳述する。
なお、管理装置1が発揮する機能の一部または全部をIC(Integrated Circuit)などの専用の処理回路を用いて構成してもよい。
図5は、管理装置1が発揮する機能的構成例を示すブロック図である。図5に示すように、管理装置1は、リスト作成部111と、情報入出力部112と、動作管理部113と、データ保持部114と、を備える。
リスト作成部111は、受注システム4から取得した注文リストからピッキングシミュレーションを行い、AGV2の巡回経路情報であるAGV巡回計画リスト、および各AGV2に商品を積載するピッキング作業者を決定するピッキング作業者の行動計画リストを作成する。
情報入出力部112は、AGV2と作業者端末3とからの情報を、データ保持部114に書き込む。また、情報入出力部112は、リスト作成部111におけるピッキングシミュレーションの結果であるAGV巡回計画リストを後述するAGVデータ保持部114aに書き出す。情報入出力部112は、リスト作成部111におけるピッキングシミュレーションの結果であるピッキング作業者の行動計画リストを後述する作業者データ保持部114bに書き出す。
動作管理部113は、AGV巡回計画リストと行動計画リストとに従って、AGV2とピッキング作業者が所持する作業者端末3とに対して指示を行う。
動作管理部113は、AGV2の操作部22のボタン押下を検知する毎に、ピッキング作業者を決定するピッキング作業者の行動計画リストを更新(再作成)するようリスト作成部111に通知する。
また、動作管理部113は、AGV2の操作部22のボタンが押下された時間に基づいて、作成した行動計画リストのピッキング完了見込み時間(目標完了時間)と実際のピッキング作業の完了時間との差異を検知する。詳細は後述するが、動作管理部113は、AGV2の操作部22のボタンが押下される毎に、リスト作成部111に対して各AGV2および各ピッキング作業者の位置に合わせて行動計画リストを再度作成させる。
動作管理部113は、作業者端末3に対して、更新した行動計画リストから次の作業についてのピッキング作業を行う対象となる商品名、商品の位置、数量、ピッキング完了見込み時間(目標完了時間)を示した作業指示を通知する。
また、動作管理部113は、作業者端末3に対して、これら作業指示に加えて、目的地までの経路画像を通知する。
データ保持部114は、AGVデータ保持部114aと、作業者データ保持部114bと、倉庫データ保持部114cと、を有する。
AGVデータ保持部114aは、AGV2への走行指示(AGV巡回計画リスト)と、AGV2の情報と、を補助記憶装置13に保持する。
作業者データ保持部114bは、作業者端末3への作業指示(ピッキング作業者の行動計画リスト)と、ピッキング作業者の情報と、を補助記憶装置13に保持する。
倉庫データ保持部114cは、商品が保管されている倉庫内の棚のレイアウト情報や棚位置情報を補助記憶装置13に保持する。
次に、管理装置1を主体としたピッキングシステム100におけるピッキング作業の流れを簡単に説明する。
ここで、図6はピッキングシステム100におけるピッキング作業の流れを概略的に示すシーケンス図である。図6に示すように、現場管理者は、管理者端末6からWMS5に対してピッキング作業開始の操作を行う(ステップS1)。これにより、WMS5は、管理装置1に対して注文リストを出力する(ステップS2)。
管理装置1は、複数のAGV2に対して注文リストを分配する処理を行う(ステップS3)。管理装置1は、各AGV2がどのような順番でどの注文リストを処理するか決定する。
管理装置1は、注文リスト毎にAGV巡回計画リストを作成する(ステップS4)。管理装置1は、AGV巡回計画リストをAGV2の注文リストの処理順に従って各AGV2に送信する(ステップS5)。AGV2は、AGV巡回計画リストにしたがってそれぞれ走行を開始する。
また、管理装置1は、各AGV2に積載する商品を取り出すピッキング作業者を決定するピッキング作業者の行動計画リスト(人割り当ての組合せ)を作成する(ステップS6)。管理装置1は、ピッキング作業者の行動計画リストから得られた商品情報と積載するAGV2に関する情報をピッキング作業者のもつ作業者端末3に通知する(ステップS7)。
ピッキング作業者は、商品を取出してAGV2に積載した後、AGV2の操作部22のボタンを押下して管理装置1に通知する(ステップS8)。
管理装置1は、ステップS6〜S8を繰り返す。
管理装置1は、1つの注文リストの全商品のピッキング作業が完了したと判断すると、管理者端末6に対して1つの注文リストの作業完了を通知する(ステップS9)。
1つの注文リストの全商品のピッキング作業が完了したAGV2は、検品・梱包作業者の位置へ移動する。一方、ピッキング作業者は、ステップS7およびS8に基づき、次の取り出す商品の位置へ移動し作業する。
また、検品・梱包作業者は、AGV2が停止したら商品を積載した箱21と空の箱21を入れ替え、AGV2の操作部22のボタンを押下する。検品・梱包作業者は、作業後、WMS5に完了通知を出す。WMS5は、完了通知に基づき在庫データを更新する。
未処理の注文リストが残っている場合、管理装置1は、注文リスト毎に商品を巡回するAGV2のAGV巡回計画リストを作成する(ステップS4)。管理装置1は、AGV巡回計画リストをAGV2の注文リストの処理順に従って各AGV2に送信する(ステップS5)。AGV2は、AGV巡回計画リストにしたがってそれぞれ走行を開始する。
未処理の注文リストが残っていない場合、すなわち、全注文リストのピッキング作業が完了した場合、管理装置1は、作業者端末3にピッキング作業終了を通知する(ステップS10)。そして、ピッキング作業者は作業者端末3に対して作業終了操作を行い、管理装置1に通知することで(ステップS11)、ピッキング作業を終了する。
次に、ピッキングシステム100におけるピッキング作業にかかるAGV巡回計画リストとピッキング作業者の行動計画リストの作成について詳述する。
(AGV巡回計画リストの作成)
まず、図6のステップS4における管理装置1のリスト作成部111によるAGV巡回計画リストの作成について説明する。管理装置1のリスト作成部111は、注文リストに基づく巡回経路計算によりAGV2の巡回経路としてのAGV巡回計画リストを作成する。
なお、AGV巡回計画リストの作成については、下記の点を前提条件とする。
・倉庫内の通路の幅が狭い場合を考慮して、AGV2は他のAGV2を追い越さないこと。
・1つの注文リストにおける商品に対して1台のAGV2が割り当てられているので、AGV2の経路(積み込み商品)は変更しないこと。
また、倉庫データ保持部114cが保持する倉庫内の棚のレイアウト情報として、商品の保管位置と、次工程である検品・梱包位置との前に、WayPoint(またはWP)番号を設ける。WayPoint番号は、倉庫内を経由順で番号を割振る。
AGV2の巡回経路を示すAGV巡回計画リストは、注文リストに記載される商品の保管位置のWayPoint番号を昇順にした順番に経由したものとする。
なお、本実施の形態では、簡単な事例で説明するためにAGV2は倉庫内を一筆書きで巡回するという前提条件で説明している。ただし、巡回経路は、一筆書きでの巡回経路に限るものではない。
(ピッキング作業者の行動計画リストの作成)
次に、図6のステップS6における管理装置1のリスト作成部111によるピッキング作業者の行動計画リスト(人割り当て)の作成について説明する。
AGV2は、AGV巡回計画リストに従った商品の巡回順番に従い、商品位置へと移動する。ここでは、最短時間で全ての注文リストを処理することができるように、AGV2の要求する商品を最適なピッキング作業者が取り出す方法を説明する。
ここで、図7は商品にピッキング作業者を紐付ける組み合わせの例を示す図である。例えば、図7に示すように、AGV2が10個の商品を経由するとして、ピッキング作業者Aとピッキング作業者Bの2人がそれらの10個の商品をAGV2に積込んでいく場合について考える。
まず、商品1つ毎に、ピッキング作業者Aとピッキング作業者Bとの何れかが、AGV2に積み込む場合を考える。つまり、10個の商品を2人で集める場合、2の10乗通りの組合せから、AGV2がピッキング作業者を待つ時間を最小にする、追い越しできない他AGV2の移動待ち時間を最小にする、といった効率よくピッキング作業者とAGV2が作業できる組合せを見つける必要がある。
10個の商品に対して、どの商品を取って、どの商品を取らないか、という問題は、計算の難しさの議論の対象となる問題の一つであるいわゆる「0−1ナップサック問題」に該当する。例えば、ピッキング作業者の人数が3人以上となる場合も、同じ商品をいくつ取っても良い一般的な「ナップサック問題」に該当する。商品数m個、ピッキング作業者n人の場合、nのm乗通りの組合せがあるが、ナップサック問題の近似解を求める手法の1つとして遺伝的アルゴリズム(GA:Genetic Algorithm)で効率良く良質な組合せを見つけることができる。
次に、ピッキングシステム100におけるピッキング作業にかかるAGV巡回計画リストとピッキング作業者の行動計画リストの作成について、具体例を挙げて説明する。
以下で説明する具体例においては、1日の作業分である100オーダ(100枚の注文リスト)を処理する中の6オーダ(6枚の注文リスト)分の処理に着目して説明する。また、以下で説明する具体例においては、商品数18個(3商品の注文リストが6枚)、ピッキング作業者3人を想定しており、商品に対する人割当ての組合せは“3の18乗通り”存在する。
ピッキングシステム100の管理装置1のリスト作成部111は、この組合せの中から遺伝的アルゴリズム(GA)によって、ピッキング作業の完了時間が最小となる組合せを見つける。また、ピッキングシステム100の管理装置1のリスト作成部111は、ピッキング作業の途中でピッキング作業者の行動計画リスト(人割当ての組合せ)を再計算する場合は、既にピッキング作業者によって取り出すように指示した商品を除外した残りの商品に対してピッキング作業者の行動計画リスト(人割当ての組合せ)の計算を行う。人割当ての組合せは、“3の(18−ピッキング作業者への指示済み商品の個数)乗通り”である。
ここで、遺伝的アルゴリズム(GA)を用いてピッキング作業時間が最短となる組合せを得る手順の詳細を説明する。
図8は、ピッキング作業者の行動計画リストの作成例を示す図である。図8に示すように、商品1〜商品6の計6個の商品の保管位置をAGV2が巡回し、ピッキング作業者A、B、Cの3人で分担してそれぞれの商品をAGV2に積載するものとする。
図8に示す例において、どの商品をどのピッキング作業者が担当するかの組合せは、“3の6乗通り”、つまり729通りある。管理装置1のリスト作成部111は、遺伝的アルゴリズム(GA)を用い、全通りの組合せから最適な組合せを見つけるのではなく、少数の組合せの中から良い結果を見つけ、その良い結果となる組合せに似た組合せを作成することを繰り返すことで、全探索よりも高速な計算時間で良質な組合せを見つけることができる。
管理装置1のリスト作成部111は、図8に示す例においては、4通りの組合せを作成している。4通りの組合せにおいては、「組合せ2」が最も完了見込み時間が小さくなっている。
図9は、ピッキング作業者の行動計画リストの別の作成例を示す図である。図9も図8と同様に、商品1〜商品6の計6個の商品の保管位置をAGV2が巡回し、ピッキング作業者A、B、Cの3人で分担してそれぞれの商品をAGV2に積載するものとする。
管理装置1のリスト作成部111は、図9に示す例においては、4通りの組合せを作成している。4通りの組合せにおいては、「組合せ3」が最も完了見込み時間が小さくなっている。
管理装置1のリスト作成部111は、上述のような組み合わせ処理を任意の回数繰り返すことで良質な組合せを見つけることができる。なお、本実施の形態では、ピッキング作業者の行動計画リスト(人割当ての組合せ)を遺伝的アルゴリズム(GA)を用いて作成するようにしたが、これに限定するものではない。
(ピッキング作業者とAGV2の協調したピッキング作業)
次に、ピッキング作業者とAGV2が協調してピッキング作業を行う方法と効果について説明する。
ここで、図10は倉庫のレイアウトの一例を示す図である。図10に示すように、本実施の形態においては、商品を保管する棚を9本設置している。このような倉庫内の棚のレイアウト情報は、倉庫データ保持部114cにおいて保持されている。ピッキング作業者とAGV2は、棚前の位置WPで停止して、所望の商品を取り出す。なお、図10においては、ピッキング作業者やAGV2の移動を図示するために、検品・梱包エリアにWP−0とWP−10との2種類の位置名を振るが、WP−0とWP−10は同位置であるものとする。
ここで、ピッキング作業として、6個の注文(注文リストが6枚)を処理する場合を考える。
図11は注文リスト毎の商品について、商品が格納されている倉庫内の位置に対応したWP、商品名、注文個数を例示的に示す図である。図11に示すように、例えば注文リストID(O1)のピッキング対象の商品は、WP−2、WP−5、WP−9にそれぞれ位置していることがわかる。また、WP−2でピッキングする「商品1」の数量は3であり、WP−5でピッキングする「商品4」の数量は3本であり、WP−9でピッキングする「商品8」の数量は1である。既述したように、AGV2はWayPoint番号を昇順にした順番に経由するので、図11における各注文リストは、WayPoint番号が小さい番号に位置する商品から左側に記載され、WayPoint番号が大きい番号に位置する商品ほど右側に記載される。
管理装置1は、各AGV2にAGV巡回計画リストとしての巡回経路を送信する。各AGV2は、AGV巡回計画リストとしての巡回経路に従い倉庫内を走行する。
ピッキング作業者は、速度(Vworker)で移動し、AGV2はピッキング作業者よりも遅い速度(Vagv)で移動する(Vworker>Vagv)。なお、前述したように、本実施の形態による効果を説明しやすくするために、倉庫の通路幅は狭く、AGV2は移動に際して他のAGV2を追い越すことができないものと考える。
ピッキング作業者は、作業者端末3に表示された商品の保管位置(WP−1〜WP−9)に到着すると、商品を取出し、その商品を要求したAGV2の到着を待つ。商品の取出し作業時間をTpickと表現する。
AGV2は、注文リストに記載された所望の商品の保管位置に到着すると、ピッキング作業者からその商品を積載されて操作部22のボタンが押下されるまで、その商品の保管位置で停止する。
AGV2は、注文リストに記載された最後の商品をピッキング作業者によって積込まれると、検品・梱包エリア(WP−0またはWP−10)に向かう。AGV2は、検品・梱包エリア(WP−0またはWP−10)に到着すると、検品・梱包作業者に商品の入った箱21を空の箱21と入れ替えてもらう。
AGV2は、空の箱21と入れ替えてもらった後、検品・梱包作業者にAGV2の操作部22のボタンを押下してもらうことで、次の注文リストの巡回経路計算結果を管理装置1から受信次第、次の商品位置へ走行開始する。
ここで、AGV2を用いたピッキング作業の方法と効果を説明するために、次の2種類の説明を行う。
1.AGV2を用いず、ピッキング作業者のみでピッキング作業を行う場合
2.AGV2を用いたピッキング作業者と協調するピッキング作業を行う場合
さらに、2.を実施する中でピッキング作業者の行動計画リストと実績に差異が生じた場合について、次の2種類の説明を行う。
2−1.事前に計算した人割当て作成の結果に従いピッキング作業を継続する。
2−2.ピッキング作業者がAGV2の操作部22のボタンを押下したタイミングで、ピッキング作業者の行動計画リスト(人割当ての組合せ)を再計算する。
本実施の形態では、作業に遅延が発生し、ピッキング作業者の行動計画リストと実績とに差異が発生した場合を説明する。計画より早く作業が終了したことによってピッキング作業者の行動計画リストと実績に差異が生じた場合も同様の手順で処理することができる。
なお、図12はAGV2およびピッキング作業者の移動速度、商品の取り出し時間の一例を示す図である。図12の例では、AGV2の移動速度:Vagvは0.5m/secであり、AGV2と協調したピッキング作業の作業者の移動速度:Vworkerは1.0m/secであり、商品の取出し作業時間:Tpickは3secであり、商品を入れる台車を押すピッキング作業者の移動速度:Vworker’は0.8m/secである。AGV2と協調したピッキング作業では、ピッキング作業者は台車を押す必要がないため、AGV2と協調したピッキング作業の作業者の移動速度:Vworkerは、商品を入れる台車を押すピッキング作業者の移動速度:Vworker’よりも速い(Vworker>Vworker’)。なお、ピッキング作業者は台車を押しながらの移動では他の台車を押したピッキング作業者を追い越すことができないものとする。
<1.ピッキング作業者のみでピッキング作業を行う場合>
ここでは、1日の作業分である100オーダ(100枚の注文リスト)を処理する中の6オーダ(6枚の注文リスト)分の処理に着目して説明する。また、ピッキング作業者は、5人を想定する。
図13は、巡回経路計算から得た各ピッキング作業者の商品の位置の巡回順番の例を示す図である。各ピッキング作業者は、注文リストを管理装置1から作業者端末3に受信し、ピッキング作業を開始する。
各ピッキング作業者は、巡回経路計算から得られる図13の商品の保管位置の巡回順番に従い商品のもとへ移動し、商品取出しを行う。
各ピッキング作業者は、注文リストに記載された商品を全て収集した後、検品・梱包エリア(WP−0,WP−10)を経由して、検品・梱包作業者に商品を渡す。AGV2は、空の箱21と入れ替えられた後、検品・梱包作業者にAGV2の操作部22のボタンを押下されることで、まだ未処理の注文リストがある場合には、次の注文リストの巡回経路計算結果を管理装置1から作業者端末3に受信次第、次の商品位置へ走行開始する。未処理の注文リストが無い場合には、そのまま検品・梱包エリア(WP−0,WP−10)に留まる。
ここで、図14は巡回経路計算から得たピッキング作業者の動きの一例を示すグラフである。図14に示すグラフは、縦軸を図10に対応する位置、横軸を時間とする。図14に示すグラフでは、縦軸のWPは1m間隔としており、横軸の時間の目盛の間隔は10秒としている。また、図14に示すグラフにおける丸印のプロットは、ピッキング作業者がAGV2に商品を載せた時間を表す。
図14に示すグラフの見方としては、グラフが横軸と並行に伸びている部分は、ピッキング作業者があるWPに留まっている状態であり、グラフが斜め上下方向に伸びている部分は、ピッキング作業者が他のWPへ移動している状態であり、傾きの絶対値は移動速度を表している。
例えば、ピッキング作業者(作業者ID1)が注文リストO1を担当する計画では、倉庫内を移動しながらWP−2、WP−5、WP−9の順番で移動し、商品の保管位置で商品取出しを行う。図14に示すように、ピッキング作業者のみでピッキング作業を行う場合、6オーダ(6枚の注文リスト)のピッキング作業を完了する時間はT4とT5の間となる。
<2.AGV2を用いたピッキング作業者と協調するピッキング作業を行う場合>
3人のピッキング作業者と5台のAGV2とで協調してピッキング作業を行う場合、1.で説明した5人のピッキング作業者から作業者数を減らしても、同等の作業時間で終えることができることを説明する。
まず、既述したように、リスト作成部111が受注システム4から取得した注文リストからピッキングシミュレーションを行い、全ての注文リストのピッキング作業を終える作業時間が最小となるように、商品を取り出すピッキング作業者の行動計画リスト(人割当ての組合せ)およびAGV2の巡回経路を示すAGV巡回計画リストを作成する。
図15は注文リストの処理順の一例を示す図、図16はAGV巡回計画リストの一例を示す図である。図15に示す注文リストの処理順は、AGV2毎に処理する注文リストが順序付けて設定されている。また、図16に示すAGV巡回計画リストは、AGV2毎に巡回する位置が設定されている。AGV2は、図16に示すAGV巡回計画リストを受信し、受信したAGV巡回計画リストに従い走行する。
また、ピッキング作業者の作業者端末3は、ピッキング作業者の行動計画リストを受信する。既述したように、ピッキング作業者の行動計画リストには、ピッキング作業を行う対象となる商品名、商品の位置、数量、ピッキング完了見込み時間(目標完了時間)が記載されている。
図17は、ピッキング作業者の行動計画リストに基づく、各ピッキング作業者の商品の保管位置(WP−1〜WP−9)への移動順番の一例を示す図である。ピッキング作業者は、ピッキング作業者の行動計画リストに基づき、一つのピッキング作業が完了すると、次のピッキング対象となる商品が保管されている棚の位置(WP)へ移動する。
ここでは、ピッキング作業者の動きをピッキング作業者aの動きに着目して説明する。
図18は、ピッキング作業者の動きの一例を示すグラフである。図18に示すグラフの丸印のプロットは、ピッキング作業者がAGV2に商品を載せた時間を表す。また、丸印のプロットの近傍に記載した数字は、商品を積載するAGV2のID番号である。
図19は、AGV2の動きの一例を示すグラフである。図19に示すグラフの丸印のプロットは、AGV2が次の目標位置に移動し始めることを示す。
図18および図19は、図14と同様に、縦軸を図10に対応する位置、横軸を時間とし、縦軸のWPは1m間隔としており、横軸の時間の目盛の間隔は10秒としている。また、グラフの見方も図14と同様であり、グラフが横軸と並行に伸びている部分は、ピッキング作業者またはAGV2がWPに留まっている状態であり、グラフが斜め上下方向に伸びている部分は、ピッキング作業者が他のWPへ移動している状態であり、傾きの絶対値は移動速度を表している。
図18および図19は、図15に示す注文リストの処理順、図16に示すAGV巡回計画リスト、図17に示すピッキング作業者の行動計画リスト、に基づいている。
先ず、図18と図19とを用いて、ピッキング作業者aについて説明する。
1.ピッキング作業者の行動計画リストに基づき、ピッキング作業者aは初期位置WP−0(10)から、商品位置WP−2へ移動し、商品を取り出す。
2.図19から明らかなように、ピッキング作業者aが商品位置WP−2へ移動した時点では、商品を積込むAGV2であるID2のAGV2は、まだWP−2に到着していない。そこで、ピッキング作業者aは、商品取出しを終えた後、ID2のAGV2がWP−2に到着するまで待機する。
3.ID2のAGV2がWP−2に到着すると、ピッキング作業者aは、商品をID2のAGV2に積載し、ID2のAGV2の操作部22のボタンを押下してID2のAGV2を走行開始させる。ID2のAGV2の操作部22のボタンを押下すると、動作管理部113よりピッキング作業者aの作業者端末3に対して、次の作業位置であるWP−3、WP−3に保管されている商品名、ピッキングする数量、ピッキング完了見込み時間(目標完了時間)を示した作業指示が通知される。この通知に基づき、ピッキング作業者aは、WP−3の商品位置へ移動し、商品取出しする。
4.図19から明らかなように、ピッキング作業者aが商品位置WP−3へ移動した時点では、商品を積込むAGV2であるID3のAGV2は、まだWP−3に到着していない。そこで、ピッキング作業者aは、ID3のAGV2が到着するまで待機する。ID3のAGV2が到着すると、ID3のAGV2に商品を積載し、操作部22のボタンを押してID3のAGV2を次の商品位置へと走行開始させる。ID3のAGV2の操作部22のボタンを押下すると、動作管理部113よりピッキング作業者aの作業者端末3に対して、次の作業位置であるWP−2、WP−2に保管されている商品名、ピッキングする数量、ピッキング完了見込み時間(目標完了時間)を示した作業指示が通知される。
5.作業者端末3の通知に基づき、ピッキング作業者aは、WP−2の商品位置へ移動し、商品を取り出す。既述した2.から4.と同様にして、ピッキング作業者aが商品位置WP−2へ移動した時点で商品を積込むAGV2であるID4のAGV2はWP−2に到着していないため、ピッキング作業者aは、商品取出しを終えた後、ID4のAGV2がWP−2に到着するまで待機する。ID4のAGV2がWP−2に到着すると、ピッキング作業者aは、商品をID4のAGV2に商品を積載した後、操作部22のボタンを押してID4のAGV2を次の商品位置へと走行開始させる。ID4のAGV2の操作部22のボタンを押下すると、動作管理部113よりピッキング作業者aの作業者端末3に対して、次の作業位置であるWP−3、WP−3に保管されている商品名、ピッキングする数量、ピッキング完了見込み時間(目標完了時間)を示した作業指示が通知される。
6.作業者端末3の通知に基づき、ピッキング作業者aは、WP−3へ移動する。既述した2から5と同様に、ピッキング作業者aが商品位置WP−3へ移動した時点では、商品を積込むAGV2であるID5のAGV2は、まだWP−3に到着していない。そこで、ピッキング作業者aは、ID5のAGV2が到着するまで待機する。ID5のAGV2が到着すると、ID5のAGV2に商品を積載し、ID5のAGV2の操作部22のボタンを押下してID5のAGV2を走行開始させる。ID5のAGV2の操作部22のボタンを押下すると、動作管理部113よりピッキング作業者aの作業者端末3に対して、次の作業位置であるWP−1、WP−1に保管されている商品名、ピッキングする数量、ピッキング完了見込み時間(目標完了時間)を示した作業指示が通知される。この通知に基づき、ピッキング作業者aは、WP−1へ移動する。既述した2.から5.と同様に、ピッキング作業者aが商品位置WP−1へ移動した時点では、商品を積込むAGV2であるID1のAGV2は、まだWP−1に到着していない。そこで、ピッキング作業者aは、ID1のAGV2が到着するまで待機する。ID1のAGV2が到着すると、ID1のAGV2に商品を積載し、ID2のAGV2の操作部22のボタンを押下してID1のAGV2を走行開始させると、ピッキング作業者aの作業は終了する。
続いて、図18と図19とを用いて、AGV2の倉庫内の巡回についてID1のAGV2の動きに着目して説明する。
1.ID1のAGV2は、注文リストO3について、商品位置であるWP−1、WP−4、WP−9の順番で巡回する。また、注文リストO6について、商品位置であるWP−1、WP−4、WP−9の順番で巡回する。ID1のAGV2は、WP−0を出発してWP−1へと移動し停止する。図18から明らかなように、WP−1へ到着したときにはピッキング作業者bは、まだWP−1へ到着していない。そこで、ID1のAGV2は、ピッキング作業者bが商品を取出し終え、商品をID1のAGV2に積載して操作部22のボタンが押されるまで待機する。
2.ID1のAGV2は、操作部22のボタンを押下されたら、WP−4へ移動開始する。図18から明らかなように、WP−4に到着したときにはピッキング作業者cが既に商品を取出し終えている。ID1のAGV2は、ピッキング作業者cにより商品を積載され、操作部22のボタンを押されるとWP−9へと移動する。
ID1のAGV2がWP−4に到着したときにはピッキング作業者cが既に商品を取出し終えているので、ID1のAGV2がWP−4に留まる時間は極わずかであり、そのため、図19ではID1のAGV2の停止時間は表現されていない。
3.図18から明らかなように、ID1のAGV2がWP−9に到着した時点でピッキング作業者cは既に商品を取出し終えている。ピッキング作業者cにより商品を積載されていることにより、注文リストO3に対応する商品のピッキング作業は完了したこととなる。そこで、ピッキング作業者cにより、商品を積載され操作部22のボタンを押された後は、WP−0(WP−10)の検品・梱包エリアへ移動する。ID1のAGV2は、空の箱21と入れ替えられた後、検品・梱包作業者にID1のAGV2の操作部22のボタンを押下されることで、ID1のAGV2が担当する次の注文リストO6に取り掛かる。
4.ID1のAGV2は、WP−0(WP−10)の検品・梱包エリアから、注文リストO6の1番目に経由する商品位置WP−1へ移動し停止する。図18から明らかなように、WP−1へ到着したときにはピッキング作業者aは、まだWP−1へ到着していない。そこで、ID1のAGV2は、ピッキング作業者aがID1のAGV2に商品を積載して操作部22のボタンを押すまで待機する。ピッキング作業者aがID1のAGV2に商品を積載して操作部22のボタンを押すと、ID1のAGV2は、次の商品位置WP−4へ移動する。図18から明らかなように、WP−4に到着したときにはピッキング作業者bは既にID1のAGV2に積載する商品を取出し終えている。ID1のAGV2は、ピッキング作業者bにより商品を積載され、操作部22のボタンを押されると、次の商品位置WP−9へと移動する。
5.図18から明らかなように、WP−9に到着したときにはWP−9の商品もまたピッキング作業者cによって取出しを終えている。ピッキング作業者cにより商品を積載されてることにより、注文リストO6に対応する商品のピッキング作業は完了したこととなる。そこで、ID1のAGV2は、ピッキング作業者cにより商品を積載され、操作部22のボタンを押されると、WP−0(WP−10)の検品・梱包エリアへ移動する。ID1のAGV2は、空の箱21と入れ替えられた後、検品・梱包作業者にID1のAGV2の操作部22のボタンを押下される。ID1のAGV2は、注文リストO6の次に処理する注文リストがないため、作業を終了する。
以上のように、図18および図19に示した例によれば、ピッキング作業者とAGV2の協調したピッキング作業の完了時間は、ID1のAGV2が注文リストO6を終えた時間であり、T4とT5の間で完了している。よって、ピッキング作業者を5人から3人に減らしても、AGV2を5台利用することで同等な作業時間で終わるように効率よくピッキング作業を行うことができている。
ここで、図20は各ピッキング作業者と商品を積載するAGV2との対応関係を例示的に示す図である。図20に示す例では、ピッキング作業者aは、1番目のピッキング作業として、商品位置WP−2にある商品をID2のAGV2に載せ、2番目のピッキング作業として、商品位置WP−3にある商品をID3のAGV2に載せ、3番目のピッキング作業として、商品位置WP−2にある商品をID4のAGV2に載せ、4番目のピッキング作業として、商品位置WP−3にある商品をID5のAGV2に載せ、5番目のピッキング作業として、商品位置WP−1にある商品をID1のAGV2に載せている。
ここで、ピッキング作業者とAGV2とが協調してピッキング作業を行う中で、ピッキング作業者bが商品の積み直しを行った場合を考える。
<2−1.AGV2を用いたピッキング作業において、ピッキング作業者の行動計画リストを変更せずに作業を継続し続ける場合>
図21はピッキング作業者の動きの一例を示すグラフ、図22はAGV2の動きの一例を示すグラフである。図21と図22は、図18と図19と同様に、図15に示す注文リストの処理順、図16に示すAGV巡回計画リスト、図17に示すピッキング作業者の行動計画リスト、に基づいている。すなわち、図18と図19と、図21と図22と、では、注文リストの処理順、AGV巡回計画、行動計画は同じであり、両者を比較することで作業時間の変化が分かる。
図21および図22に示すように、WP−5に到着したID4のAGV2について、積載された商品が崩れそうなためにピッキング作業者bは商品の積み直しを行った。そのため遅延が生じ、ピッキング作業開始前に作成したピッキング作業者の行動計画リストでは、図18および図19に示すようにT3よりも前で終わるID4のAGV2へのピッキング作業が、図21および図22に示すように、T3よりも後に終わることになる。この場合、ID4のAGV2の遅延だけでなく、ID4のAGV2を追い越せないID5のAGV2もまた遅延する。具体的には、図22に示すように、ID5のAGV2は、ID4のAGV2が移動するまで、WP4で待機している。
また図18および図19に示すようにピッキング作業開始前に作成したピッキング作業者の行動計画リストでは、ピッキング作業者bは、WP5でID4のAGV2へピッキング作業を行った後に、WP7へ移動してID5のAGV2へピッキング作業を行い、その後、WP4へ移動して、ID1のAGV2へピッキング作業を行うこととなっている。ピッキング作業者bのID4のAGV2へのピッキング作業が遅れたことにより、ピッキング作業者bによるID5のAGV2へのピッキング作業も遅れ、ID1のAGV2は、WP−4でピッキング作業者bが到着しピッキング作業を行うまで待機する。
このようなピッキング作業者bの作業遅れによって、ID1のAGV2は、WP−9への到着が遅れる。このため、ピッキング作業者cは、WP−9で商品を取り出した後、ID1のAGV2の到着を待つことになり、ピッキング作業の完了はT5よりも後となる。
このように、ピッキング作業の遅延は、以後連鎖的に別の作業者とAGV2間で遅延を発生させることとなる。
<2−2.AGV2を用いたピッキング作業において、商品のピッキング作業完了毎にピッキング作業者の行動計画リストを更新する場合>
上述のような連鎖的に遅延が発生することを解決するために、本実施の形態においては、作業開始前に作成したピッキング作業者の行動計画リストについて、ピッキング作業者が商品のピッキング作業を完了する毎に、更新するようにしたものである。
より詳細には、管理装置1は、商品を積載したAGV2の操作部22のボタンが押下されたタイミングでピッキング作業者の行動計画リストの再計算を行い、全ピッキング作業者について、次に取り出す商品を決定する。ここで、ピッキング作業者の行動計画リストの再計算を行うためには、各ピッキング作業者の現在の位置が必要である。
既述したように、ピッキング作業者は、商品をAGV2に積載すると、積載したAGV2に設けられている操作部22のボタンを押してAGV2を次の商品位置へと走行開始させる。この操作部22のボタンの押下されたAGV2の位置を、操作部22を操作したピッキング作業者の現在の位置とみなすことができる。また、ピッキング作業者は、商品をピッキングしてAGV2に積載する際に、商品に付された商品識別コードを作業者端末3のコード読み取り部32で読み取る。すなわち、商品の保管位置でピッキング作業者は商品を取出してAGV2に積載するため、商品識別コードを読み取った商品に紐づいた保管位置をピッキング作業者の現在の位置とみなしてもよい。
このように、ピッキング作業が行われた位置を当該ピッキング作業を行ったピッキング作業者の位置情報とすることで、GPSの電波が届かない倉庫内であってもピッキング作業者の位置情報を得ることができる。また、GPS等の装置を用いなくても、ピッキング作業者の位置情報を得ることができる。そして、管理装置1の動作管理部113は、ピッキング作業が行われた位置を当該ピッキング作業を行ったピッキング作業者の位置として、リスト作成部111にピッキング作業者の行動計画リストの再計算を行わせる。
管理装置1は、各AGV2について、以下に示す情報を管理する。図23は、AGV2にかかる管理情報の一例を示す図である。図23に示すように、管理装置1は、全てのAGV2の操作部22のボタンを押下されるまでの作業完了見込み時間に加えて、移動先の商品位置(目的位置)と、合流するピッキング作業者と、ボタンが押されたことを検知するボタンON/OFFフラグと、商品名と、数量と、をAGV2毎に管理する。
図23は、各AGV2の1番目に経由する商品に対する情報であり、3名のピッキング作業者a、b、cの中で、各AGV2の1番目に経由する商品にはピッキング作業者aピッキングと作業者bのみが割り当てられている。
他のピッキング作業者の携わるピッキング作業の完了時間は、AGV2の操作部22のボタンが押下されるまで判らない。このため、ピッキング作業者の行動計画リストを計算する際、計算開始した時間に対して次の商品位置までの移動時間と商品取出し時間Tpickとを加算した時間を、作業完了見込み時間とする。
また、ピッキング作業者の行動計画リストの計算時に作業完了見込み時間を超過したピッキング作業者が居れば、そのピッキング作業者の作業完了見込み時間に対して、Tlong(Tlong>Tpick)を作業完了見込み時間に加算する。本実施の形態におけるTlongは、Tpickの2〜3倍の6〜9秒としている。
なお、ピッキング作業者がピッキング作業前に行ったピッキングシミュレーション通りに進捗している場合は、ピッキング作業者の行動計画リストの再計算を行っても同じ計画が出力される。ピッキング作業者の行動計画リストと実績に差異が生じた場合には、直近のピッキング作業が完了した状況(直近のピッキング作業を行ったピッキング作業者が該当するAGV2の操作部22のボタンを押下した時点の状況)において最適なピッキング作業者の行動計画リストの計算が行われる。
ここで、図24は商品のピッキング作業完了毎にピッキング作業者の行動計画リストを更新する場合のピッキング作業者の動きの一例を示すグラフ、図25は商品のピッキング作業完了毎にピッキング作業者の行動計画リストを更新する場合のAGV2の動きの一例を示すグラフである。
図24と図25は、図18と図19及び図21と図22と同様に、図15に示す注文リストの処理順、図16に示すAGV巡回計画リスト、図17に示すピッキング作業者の行動計画リスト、に基づいている。すなわち、図18と図19、図21と図22、図24と図25とは、注文リストの処理順、AGV巡回計画、行動計画は同じであり、三者を比較することで作業時間の変化が分かる。
図24および図25に示すように、WP5に到着したID4のAGV2について、積載された商品が崩れそうなためにピッキング作業者bは商品の積み直しを行った。そのため遅延が生じ、ピッキング作業開始前に作成したピッキング作業者の行動計画リストでは、図18および図19に示すようにT3よりも前で終わるID4のAGV2へのピッキング作業が、図21および図22に示すように、T3よりも後で終わっている。
ここで、ピッキング作業者bがID4のAGV2の操作部22のボタンを押下すると、管理装置1の動作管理部113は、ピッキング作業者bの位置をWP−5とし、他のピッキング作業者の位置については、その直前に計算した行動計画リストに基づき、リスト作成部111にピッキング作業者の行動計画リストの再計算を実行させる。
ピッキング作業者の行動計画リストの再計算の実行により各ピッキング作業者の行動計画リストが変更される。ピッキング作業者bの作業者端末3には、次の作業位置であるWP−4、WP−4に保管されている商品名、ピッキングする数量、ピッキング完了見込み時間(目標完了時間)を示した作業指示が通知される。図24および図25に示すように、ピッキング作業者bは、WP−4へ移動して商品を取り出して、WP−4で待機しているID1のAGV2に積載する。その後、ID1のAGV2の操作部22のボタンを押下してID1のAGV2を走行開始させる。ID1のAGV2の操作部22のボタンを押下すると、動作管理部113よりピッキング作業者aの作業者端末3に対して、次の作業位置であるWP−7、WP−7に保管されている商品名、ピッキングする数量、ピッキング完了見込み時間(目標完了時間)を示した作業指示が通知される。作業者端末3の通知に基づき、ピッキング作業者bは、WP−7へ移動して商品を取り出して、WP−7で待機しているID5のAGV2に積載する。その後、ID5のAGV2の操作部22のボタンを押下してID5のAGV2を走行開始させると、ピッキング作業者bの作業は終了する。
図21と図24とを比較すると明らかなように、ピッキング作業者の行動計画リストを変更しない図21では、作業の遅延が生じたWP−5の後のピッキング作業として、WP−7へ移動してID5のAGV2へのピッキング作業を行い、その後に、WP−4へ移動してID1のAGVへのピッキング作業を行っている。対して、ピッキング作業者の行動計画リストを更新する図24では、作業の遅延が生じたWP−5の後のピッキング作業として、WP−4へ移動してID1のAGV2へのピッキング作業を行い、その後に、WP−7へ移動してID5のAGV2へのピッキング作業を行っている。
図24と図25とを用いて、他の作業者についても説明する。作業の遅延が生じたWP−5でのピッキング作業員bのID4のAGV2へのピッキング作業が完了した時点で作業を終えていたピッキング作業者aは、図24に示されているように、WP−0(WP−10)に位置していたが、ピッキング作業者の行動計画リストの再計算の実行により、ピッキング作業者aの作業者端末3には、WP−8でのピッキング作業が指示される。ピッキング作業者aは、WP−0(WP−10)からWP−8へ移動する。図24と図25に示されているように、ピッキング作業者aがWP−8に移動した時点で商品を積み込むAGV2であるID5のAGV2は到着していない。ピッキング作業者aは、商品を取り出してID5のAGV2が到着するまで待機する。ID5のAGV2が到着すると、ピッキング作業者aは、ID5のAGV2に商品を積載する。その後、ID5のAGV2の操作部22のボタンを押下してID5のAGV2を走行開始させると、ピッキング作業者aの作業は終了する。
また、ピッキング作業者の行動計画リストの再計算の実行後、ピッキング作業者cは、WP−8へは向かわずにWP−9に留まる。これは、更新前のピッキング作業者の行動計画リストにおいて、WP−8でピッキング作業者cの作業であったID5のAGV2へのピッキング作業が、更新後のピッキング作業者の行動計画リストにおいては、既述したように、ピッキング作業者aが行うこととなったためである。ピッキング作業者cは商品を取り出して、ID1のAGV2が到着するまで待機する。ID1のAGV2が到着すると、ピッキング作業者aは、ID1のAGV2に商品を積載する。その後、ID1のAGV2の操作部22のボタンを押下してID1のAGV2を走行開始させると、ピッキング作業者cの作業は終了する。
ここで、図26は各ピッキング作業者と商品を積載するAGV2との対応関係を例示的に示す図である。図26に示す例では、図20に示した例と比べて、ピッキング作業者aは6番目のピッキング作業として、ID5へのAGV2へのピッキング作業が追加されている。作業者bは5番目と6番目のピッキング作業が入れ替わっている。作業者cは6番目のピッキング作業が無くなり、7番目のピッキング作業を6番目のピッキング作業として行うこととなっている。すなわち、ピッキング作業者の行動計画リストが更新されている。
図21と図22と、図24と図25と、を比較すると、ピッキング作業者の行動計画リストを変更しない図21と図22では、ピッキング完了時間がT5よりも後であるのに対して、ピッキング作業者が商品のピッキング作業を完了する毎にピッキング作業者の行動計画リストを更新する図24と図25では、ピッキング完了時間がT5よりも前である。
すなわち、ピッキング作業者が商品のピッキング作業を完了する毎にピッキング作業者の行動計画リストを更新することで、ピッキング完了時間を短縮することができる。
このように本実施の形態によれば、ピッキング作業前に行ったピッキングシミュレーションに対して差異が生じ、シミュレーションに対して遅延、若しくはシミュレーションよりも早い状況となっても、ピッキング作業者が商品のピッキング作業を完了する毎にピッキング作業者の行動計画リストを更新することで、直近のピッキング作業が完了した状況(直近のピッキング作業を行ったピッキング作業者が該当するAGV2の操作部22のボタンを押下した時点の状況)に最適なピッキング作業者の行動計画リストが作成することにより、AGVに対する最適な作業者の割り当てを行うことができ、その結果、作業者の待ち時間を減らし、作業を効率化することができる。すなわち、作業効率を最大効率に保つことができる、という効果を奏する。
(第2の実施の形態)
次に、第2の実施の形態について説明する。
第2の実施の形態の管理装置1は、RDBMS(Relational DataBase Management System:関係データベース管理システム)を利用する点が、第1の実施の形態と異なる。以下、第2の実施の形態の説明では、第1の実施の形態と同一部分の説明については省略し、第1の実施の形態と異なる箇所について説明する。
図27は、第2の実施の形態にかかるピッキングシステム100の構成を示すブロック図である。図27に示すように、第2の実施の形態にかかるピッキングシステム100の管理装置1は、RDBMS20を利用する。
RDBMS20は、1件のデータを複数の属性の値の組として表現し、組を列挙することでデータを格納していく方式である。RDBMS20は、属性を列、組を行とする表(テーブル)の形で示される。RDBMS20は、関連する複数の処理を一体化して矛盾なく実行するトランザクション処理を行う機能を持ち合わせている。
管理装置1のデータ保持部114は、作成したAGV巡回計画リストおよびピッキング作業者の行動計画リストをそれぞれ、AGV指示テーブル、作業者指示テーブルとして、RDBMS20のテーブルを構成して保存する。また、管理装置1の動作管理部113は、RDBMS20を仲介して情報の送受信を行う。
このように本実施の形態によれば、AGV2や作業者端末3の数が多くなった場合、管理装置1と多数のAGV2や作業者端末3との情報通信が不安定になったり、情報の遅延が生じるなどの問題が発生したりするが、RDBMS20を仲介して情報の送受信を行うことで管理装置1への負荷を減らし、安定した制御を行うことができるようになる。