本発明による計時器の第1の実施形態を図1から図4及び図5Aから図5Cを参照して説明する。図1において、機械式ムーブメント4を備える計時器2の一部を概略的に示し、機械式ムーブメント4は、少なくとも1つの時間データ項目表示器機構12を含む。機構12は、香箱14によって作動される歯車列16を備える(機構は、図1に部分的に示す)。機械式ムーブメントは、機械式共振器の支持体を画定する板5上に配置したてんぷ8及びひげぜんまい10によって形成される機械式共振器6、並びに脱進機18によって形成され、この機械式共振器を維持するデバイスを更に備え、この維持デバイスは、この機械式共振器と共に、表示器機構の稼働を時間調節する機械式発振器を形成する。脱進機18は、従来、アンクル組立体及びがんぎ車を備え、がんぎ車は、歯車列16を介して香箱と運動学的に連結される。機械式共振器は、円形軸に沿った、機械式共振器の最小位置エネルギー状態に対応する中立位置(遊休位置/ゼロ角度位置)回りの発振に適している(この円形軸の半径は、この軸に沿ったてんぷの位置が角度によって与えられるため、重要ではない)。円形軸は、機械式共振器の移動性を示す全体的な発振軸を画定し、この移動性は、例えば、更なる実施形態では線形とすることができる。
機械式共振器の各発振は、2つの交番に形成される発振周期を規定し、それぞれ、2つの発振終端角度位置の間にあり、他方の反対方向に回転する。機械式共振器が、発振振幅を規定する終端角度位置に到達した際、機械式共振器の回転速度はゼロであり、回転方向は反転する。各交番は、2つの半交番(その継続時間は、妨害事象により異なることがある)、即ち、機械式共振器が、その中立位置を介して通過する前に生じる第1の半交番、及び機械式共振器が、その中立位置を介して通過した後に生じる第2の半交番を有する。
計時器2は、参照時間基準22に対して、機械式共振器6及び脱進機18から形成した機械式発振器を同期するデバイス20を備え、参照時間基準22は、水晶共振器35及びクロック回路36を備える補助発振器によって形成され、クロック回路36は、水晶共振器を維持し、参照周波数信号SRを送出する。水晶発振器は、親発振器を規定する。参照時間基準は、同期デバイスの制御デバイス24に関連付けられ、制御デバイス24に信号SRを供給する。更なる種類の補助発振器、特に、制御回路を有する電子回路内に全体が統合される発振器を想定し得ることを留意されたい。一般に、補助発振器は、本質的に又は設計によって、計時器ムーブメント内に配置する機械式発振器よりも正確であり、計時器ムーブメント内に配置するこの機械式発振器は、本発明の範囲内で子発振器を規定する。一般規則として、以下で理解されるように、同期デバイス20は、補助発振器によって決定した設定点周波数に対し、機械式発振器の中間周波数を従属させるように構成される。
この場合、同期デバイス20は、機械式共振器6の電磁制動デバイス26を備える。用語「電磁制動」は、機械式共振器の制動を示し、この制動は、機械式共振器が支える少なくとも1つの永久磁石又はこの機械式共振器の支持体と、支持体又は機械式共振器がそれぞれ支え、電子回路に関連付けられる少なくとも1つのコイルとの間の電磁相互作用を介して生成し、磁石によってコイル内に誘導される電流を生成することができる。したがって、一般原則として、電磁制動デバイスは、少なくとも1つのコイル28及び少なくとも1つの永久磁石から形成され、少なくとも1つのコイル28及び少なくとも1つの永久磁石は、誘導電圧が、機械式共振器の各交番発振において、機械式発振器の使用可能な動作範囲で、コイル28の2つの端子28Aと28Bとの間に生成されるように配置される。コイル28は、ウエハ型(その直径よりも低い高さを有する円板)であり、強磁性コアを有さない。第1の実施形態では、複数の双極磁石30、32が想定され、複数の双極磁石30、32は、てんぷの外縁9上に並置する様式で配置され、発振軸34の方向に沿って交番磁極性を有する。同等の代替実施形態では、軸方向磁化を有する環状磁石が想定され、環状磁石は、双極磁石30、32に対応する連続区分を有し、これら連続区分は、交番極性を有し、それぞれ、実質的に同じ値を有する中心(角度「開口」)で角度を画定する。図示の代替実施形態では、双極磁石30、32は、8つの磁化環状区分を画定し、8つの磁化環状区分のそれぞれは、交番磁極性に対し45°の角度距離を有する。第1の実施形態の場合、Nが正の整数である、偶数の2N個の磁化環状区分があり、これらの区分は、特に、機械式共振器6を形成するてんぷ8の外縁9上に円形に配置される。
コイル28は、てんぷが発振する際、双極磁石/磁化環状区分から磁束が横断するように、板5上に配置する。有利には、コイル28の直径は、コイル28が、各双極磁石/磁化環状区分が画定する発振軸に実質的に等しい発振軸に対して、角度開口内に実質的に含まれるように想定される。しかし、更なる代替実施形態では、コイル28の直径は、より大きく想定し、例えば、磁化環状区分の角度開口の実質的に2倍に対応する角度開口を有することができる。更に、更なる代替実施形態では、複数のウエハ・コイルが想定され、複数のウエハ・コイルは対で、角度のずれを間に呈し、この角度のずれは、整数の磁気周期に対応する(磁気周期は、2つの隣接する磁化環状区分の角度距離によって与えられる)。したがって、これらのコイルは、電磁位相偏移を有さず(即ち、位相偏移は、360°という整数倍である)、これらのコイル内の誘導電圧はそれぞれ、他の誘導電圧と同一で同時の経時的変動を有し、誘導電圧が一緒に追加されるようにする。複数のコイルは、直列又は平行に配置することができる。磁化環状区分の数、コイルの数、及びコイルの特性寸法は、機械式発振器の所望のサーボ制御を可能にするのに求められる電磁相互作用の強度に従って選択される。
本発明によれば、同期デバイスは、コイルの2つの端子間のインピーダンスを瞬間的に低減し得るように構成する。本発明による同期デバイスで実施する一般的な同期モードによれば、同期デバイスは、個別時間間隔TPの間、コイルの2つの端子間のインピーダンスを低減し、これらの個別時間間隔の中でも、あらゆる2つの連続時間間隔のそれぞれの開始の間で、機械式発振器のための設定点周期T0cの半分によって(即ち、設定点半周期によって)乗算した正の整数Nに等しい時間距離DT、即ち、DT=N・T0c/2を呈するように構成される。同期デバイスは、参照時間基準22により、個別時間間隔のそれぞれの開始を決定し、時間間隔DTと設定点周期T0cとの間に上記した数学的関係を満たすように構成する。
説明する実施形態では、機械式共振器は、発振軸回りに回転するてんぷによって形成される。図5Aから図5C及び図28Aから図28Cで示す同期デバイスで実施される同期モードでは、個別時間間隔TPを周期的に作動することが想定され、個別時間間隔TPの間、コイル端子間のインピーダンスは低減する、即ち、これらの時間間隔の間は、一定である時間距離TDにより想定される。これら個別時間間隔の作動周波数FDは、正の整数Mで除算した、定義上は設定点周期T0cの逆元に等しい設定点周波数F0cの2倍に等しい、即ち、FD=2・F0c/Mである。この場合、好ましくは、個別時間間隔TPは、設定点半分周期よりも少ないと想定されるのと同じ値を有する、即ち、TP<T0c/2である。最後に、同期デバイスは、個別時間間隔TPの間、コイル28の2つの端子28Aと28Bとの間に短絡回路を生成し、このコイルの2つの端子間のインピーダンスを低減するように構成される。
図5Aから図5Cを用いる第1の実施形態の代替実施形態では、整数Mは2に等しく(M=2)、作動周波数FDが設定点周波数F0cに等しく、連続時間距離TDが設定点周期T0cに等しいようにする。この場合、個別時間間隔TPの値は、有利には、設定点周期T0cの4分の1よりも小さい、即ち、TP<T0c/4である。この第1の実施形態では、図5Aから図5Cからわかるように、電磁デバイス26は、この機械式共振器によって形成した機械式発振器の使用可能な動作範囲内で機械式共振器6が発振する間、誘導電圧がコイル28内に実質的に連続的に生成されるように構成する。
ここで、図5Aから図5Cをより詳細に考慮する前に、短い継続時間の制動パルスを受ける機械式発振器の挙動をまず要約するが、この話題に関するより詳細な説明は、以下で示す。制動パルスが、交番開始と、この交番における共振器のその中立位置を介する通過との間に生成されると、そのような制動パルスは、共振器の発振に負の時相偏移を引き起こすことが観察される。したがって、問題の交番の継続時間は、機械式発振器が自然発振する間、交番継続時間T0/2に対して増大する。したがって、このことは、機械式発振器の周波数の分離した低下を引き起こし、計時器の稼働に一定の遅延を引き起こし、必要な場合、この機械式共振器が取った前進を修正することを可能にする。一方、制動パルスが、ある交番において、共振器のその中立位置を介する通過と、この交番の終端との間に生成されると、そのような制動パルスは、共振器の発振に正の時相偏移を引き起こす。したがって、問題の交番の継続時間は、機械式発振器が自然発振する間、交番継続時間T0/2に対して減少する。したがって、このことは、機械式発振器の周波数の分離した増大を引き起こし、計時器の稼働に一定の前進を引き起こし、必要な場合、この機械式共振器が取った遅延を修正することを可能にする。
図5Aから図5Cでは、本発明による同期デバイスによって得られる同期安定段階における、てんぷ−ひげぜんまい6の角度位置及び角速度、並びに制御回路24内で生成され、スイッチ40に供給されるデジタル制御信号SCの曲線を示し、スイッチ40は、個別時間間隔TPを規定するパルス58の間、コイル28の2つの端子28A、28B(図3及び図4を参照)を短絡するように構成する。更に、これらの図において、機械式共振器6の発振及び短絡パルス58から得られるコイル28内の誘導電圧信号、並びに短絡パルスの間に機械式共振器に印加される制動トルク信号を示す。ここで表す安定段階は、以下で説明する移行段階(初期段階)の後に生じることを留意されたい。注目すべきことには、同期段階としても既知である安定段階の間、機械式共振器の発振周波数は、設定点周波数F0cに従属し、短絡パルス58の第1の部TB及び第2の部TAは、実質的に一定で、規定された比率を有する。この安定段階において、センサは機械式共振器6の発振パラメータを測定せず、設定点周波数F0cにおけるこの機械式共振器の発振周波数のフィードバック・ループを伴わずに、同期デバイスは、自動的に安定化する。
図5Aは、計時器の機械式発振器の自然周波数F0が設定点周波数F0cを超えるシナリオに対応し、同期デバイスを伴わないこの計時器が、計時器稼働の前進に対応する正の時間のずれを呈するようにする。短絡パルス58は、終端角度位置の周囲で生じる、即ち、個別時間間隔TPは、発振運動方向の反転を含むことが観察され、この反転は、回転速度(角速度)がゼロである間、発振の交番A2と交番A1との間で生じる。発振周期は設定点周期T0cに等しいが、各発振周期を形成する2つの交番A1及びA2は等しくないことに留意されたい。実際、交番A1は、ここでは交番A2よりも長く継続する。というのは、機械式共振器がその中立位置を介して通過した後の交番A2よりも大きな制動が、機械式共振器がその中立位置(角度0°)を介して通過する前の交番A1で生じるためである。交番A1における機械式共振器のその中立位置を介した通過後も、交番A2における機械式共振器のその中立位置を介する通過前も、制動トルクは、機械式共振器に印加されないことに留意されたい。
制動パルスは、2つの小さな突出50及びより大きな振幅の突出52から形成され、小さな突出50はそれぞれ、機械式共振器の終端角度位置を介する通過時間の両側に位置し、この時間に対して中心対称性を呈し(2つの突出50の反対の数学的な形跡は、発振運動の方向変化から生じる)、より大きな振幅の突出52は、第1の半交番において、機械式共振器がその中立位置を介して通過する前、各発振周期の交番A1において生じる。2つの突出50の作用は、互いに補償され、したがって、機械式共振器の発振における全体的な位相偏移を生成しない一方で、各交番A1において突出52によって生じる制動トルクは、発振継続時間の増大を引き起こし、問題の発振周期継続時間が、設定点周期T0cの継続時間に等しいようにする。したがって、この瞬間的な発振周波数は、設定点周波数F0cに等しく、図示のように、機械式発振器の自然周波数F0よりも小さい。交番A1における突出52の出現は、短絡パルス58の中間点時間が、機械式共振器のその終端角度位置を介する通過に対して特定の遅延を伴って生じる場合にのみ得られ、このことは、機械式発振器の自然周波数F0が設定点周波数F0cを超えることに起因する。実際、機械式共振器の終端位置を介する通過前に生じるパルス58の部TBは、機械式共振器の通過後に生じるパルス58の部TAよりも小さい。
図5Bは、計時器の機械式発振器の自然周波数F0が設定点周波数F0cよりも小さいシナリオに対応し、同期デバイスを伴わないこの計時器が、計時器稼働の遅延に対応する負の時間のずれを呈するようにする。やはり、短絡パルス58が終端角度位置の周囲で生じ、交番A1が交番A2よりも長く続くことが観察される。というのは、ここでは、機械式共振器がその中立位置を介して通過する前の交番A1よりも大きな制動が、機械式共振器がその中立位置(角度0°)を介して通過した後の交番A2で生じるためである。上述のシナリオの場合のように、交番A1における機械式共振器のその中立位置を介した通過後も、交番A2における機械式共振器のその中立位置を介する通過前も、制動トルクは、機械式共振器に印加されない。ここでは、制動パルスは、2つの小さな突出50及びより大きな振幅の突出54から形成され、小さな突出50はそれぞれ、終端角度位置の両側に位置し、より大きな振幅の突出54は、第2の半交番において、機械式共振器のその中立位置を介した通過後、各発振周期の交番A2において生じる。
2つの突出50の作用は、依然として互いに補償される一方で、各交番A2において突出54によって生じる制動トルクは、発振継続時間の減少を引き起こし、問題の発振周期継続時間が、設定点周期T0cの継続時間に等しいようにする。したがって、この瞬間的な発振周波数は、設定点周波数F0cに等しく、図示のように、機械式発振器の自然周波数F0を超える。交番A2における突出54の出現は、短絡パルス58の中間点時間が、機械式共振器のその終端角度位置を介する通過に対して特定の前進を伴って生じる場合にのみ得られ、このことは、機械式発振器の自然周波数F0が設定点周波数F0cよりも小さいことに起因する。実際、機械式共振器の終端位置を介した通過後に生じるパルス58の部TAは、機械式共振器の通過前に生じるパルス58の部TBよりも小さい。
包括的にするため、図5Cにおいて、計時器の機械式発振器の自然周波数F0が設定点周波数F0cに等しいシナリオを表す。このシナリオから、機械式共振器の終端角度位置を介した通過後に生じるパルス58の部TAが、機械式共振器の通過前に生じるパルス58の部TBに等しいことが得られ、機械式共振器のその終端位置を介する通過直前に交番A2において生じる制動パルスの部50Aが、反対の数学的な形跡で、機械式共振器の通過直後に交番A1において生じる制動パルスの部50Bと同じプロファイルを有し、したがって、問題の終端角度位置を介する通過時間に対して中心対称性を呈するようにする。したがって、各短絡パルス58、したがって、各個別時間間隔TPの過程で生じる制動パルスの部50A及び50Bの作用は、互いに相互に補償され、この結果、この特定のケースでは、同期デバイスが参照時間基準22と自然に同期する限り正確である計時器の稼働に影響を与えない。
図3は、同期デバイス20の制御回路24の第1の代替実施形態24Aを示す図である。制御回路24Aは、一方で、クロック回路36に接続され、もう一方で、コイル28に接続される。クロック回路は、水晶共振器35を維持し、引き換えに、特に215Hzに等しい参照周波数でクロック信号SRを生成する。クロック信号SRは、2つの分配器DIV1及びDIV2に連続的に供給される(これら2つの分配器は、2段の同じ分配器を形成することができる)。分配器DIV2は、周期信号SDを時間調節器38(「時間調節器」)に直接供給する。周期信号SDの特徴的な移行を検出する度、時間調節器は、時間間隔TPの間、周期信号SDの作動周波数と同一である作動周波数FDを有する制御信号SCをコイル28に供給することによって、スイッチ40にコイル28の短絡を実施させ、これにより、時間調節器38を周期的に作動する。(短絡パルスの継続時間に対応する)制動パルスの継続時間は、ここでは、T0C/4未満であり(例えば、T0C=250ms)、問題のケースでは、更にはこの値よりも著しく小さい、特に10msから30msの間であると想定する際、時間調節器38は、分配器DIV1から時間調節信号を受信する。
例えば、図5Aから図5Cに示す例のように、設定点周波数がF0c=4Hzであり、作動周波数FDがこの設定点周波数に等しい場合、分配器DIV2は、周波数FD=4Hzで作動パルスを時間調節器に直接供給する。毎秒、即ち、4発振周期ごとに短絡パルスを供給し、したがって、コイルの端子28Aと28Bとの間のインピーダンスが低減する個別時間間隔TPの間に、時間距離DT=1sを有することを想定する場合、従来の計時器分配回路の端子出力を使用することができ、この端子出力は、周波数1Hzにおいて、一連の2つに分割した端子段の出力で、周期信号を供給する。上述の周波数FD=4Hzの作動に関し、従来の計時器の分配器回路を使用することもできるが、出力として、一連の分配端子出力の前に2段で供給される信号を利用する。同期デバイスの制御回路24Aはかなり単純であることに留意されたい。制御回路24Aは、容易に小型化することができ、その電気消費量は、かなり低い。マイクロコントローラは不要である。
特定の同期モードにおいて、群での短絡パルスの生成、例えば、周波数F0c=4Hzの間、4連続発振周期で4回のパルス、次に10秒間、即ち、40周期の間のパルス無という一連のシーケンスを想定し得ることに留意されたい。更なる同期モードにおいて、例えば、初期段階におけるより長い継続時間を想定することによって、時間間隔TP(したがって、短絡パルスの継続時間)を変動させ、後続の名目状態の制動トルクよりも大きな制動トルクを引き起こすことを想定し得る。この同期方法は強固であることに留意されたい。例えば、時間間隔TPを正確に測定する必要はない、即ち、時間間隔TPは、これら時間間隔を開始する間の時間距離DTの精度と同じ量の精度がある。したがって、それ自体が時間調節回路を有する時間調節器は、参照時間基準22ほど正確ではないことを想定することができる。
同期デバイス20の制御回路24の図4に示す第2の代替実施形態24Bにおいて、分配器DIV1及びDIV2は、従来の計時器分配器回路を一緒に形成し、計時器分配器回路は、したがって、1Hzに等しい周波数を有する周期信号SDを出力として供給する。この信号SDは、周期信号SPを生成する更なる分配器を規定するN個の計数器に供給され、更なる分配器は、周期信号SPを時間調節器38に供給する。時間調節器によってスイッチ40に供給される制御信号SCは、周期信号SPに等しい作動周波数FDを有する。したがって、機械式発振器の設定点周波数F0Cが4Hzに等しく(F0C=4Hz)、Nの数が8に等しい例では、周期信号SP及びSCの作動周波数FDは、1/8Hzであり、このことは、32の設定点周期T0Cごとに1回の制動パルス(短絡パルス)が想定される、即ち、自然周波数F0が設定点周波数F0Cに近いことが想定される限り、機械式発振器の32の周期の後、約1回のパルスが想定されることを意味する。
図4では、同期デバイスは、電源デバイス44を更に備え、電源デバイス44は、(単一又は二重交番型の)整流器回路46、及び接地(同期デバイスの参照電位)に接続した蓄電器CALによって形成される。整流器回路は、入力で、コイル端子に常に接続され、整流器回路が、永久磁石30、32による、短絡パルスの範囲外のコイル28の誘導電圧を整流できるようにする。整流し、蓄電器内に蓄電したこの誘導電圧は、機械式発振器の使用可能な動作範囲内での同期デバイスの電力供給に役立つ。同期デバイスの制御回路24Bは、かなり単純で自律的である。制御回路24Bは、本発明による同期を効果的に実行するための機械式発振器からのエネルギーの消費量が低く、使用が最小である。
図6及び図7を参照して、注目すべき物理現象を以下で説明する。この物理現象は、本発明をもたらし、本発明による計時器内で実施される同期方法に関与する展開の範囲内で強調されるものである。この現象を理解すると、機械式ムーブメントの稼働を調整する同期デバイスによって得られる同期をより良好に理解することが可能である。
図6及び図7において、最初のグラフは、時間tP1を示し、時間tP1では、制動パルスP1、P2のそれぞれを問題の機械式共振器に印加し、この共振器が形成する機械式発振器によって時間調節される機構の稼働の修正を行う。後の2つのグラフはそれぞれ、機械式共振器の発振部材(以下、「てんぷ」とも呼ぶ)の、経時的な角速度(毎秒ラジアン値:[rad/s])及び角度位置(ラジアン値:[rad])を示す。曲線90及び92はそれぞれ、制動パルスが生じる前、てんぷの自由に発振する(自然周波数における発振)角速度及び角度位置に対応する。制動パルスの後、制動パルスによって妨害されるシナリオ及び妨害されないシナリオのそれぞれの共振器の挙動に対応する速度曲線90a及び90bが表される。同様に、位置曲線92a及び92bは、制動パルスによって妨害されるシナリオ及び妨害されないシナリオのそれぞれの共振器の挙動に対応する。図において、制動パルスP1及びP2が生じる時間tP1及びtP2は、これらのパルスの中間点の時間位置に対応する。しかし、制動パルスの開始及びその継続時間は、制動パルスを時間の点で規定する2つのパラメータとして考慮する。
制動パルスという用語は、偶力を機械式共振器に瞬間的に印加することを示し、この偶力は、機械式共振器の発振部材(てんぷ)を制動する、即ち、この発振部材の発振運動に対抗するものである。ゼロとは異なる、変数である偶力の場合、パルスの継続時間は、一般に、機械式共振器を制動するのに有意な偶力を有するこのパルスの一部として規定される。制動パルスは、かなりの変動を呈し得ることに留意されたい。制動パルスは、変動の激しい、より短いパルスの連続を形成する場合さえある。
機械式発振器の各自由発振周期T0は、第1の交番A01、その後の第2の交番A02を規定し、それぞれ、この機械式発振器の発振振幅を規定する2つの終端位置の間で生じ、各交番は、同一の継続時間T0/2を有し、中間時間で、機械式共振器のそのゼロ位置を介する通過を呈する。2つの連続する交番発振は、2つの半周期を規定し、2つの半周期の間、てんぷは、一方の方向での発振運動、その後、もう一方向での発振運動をそれぞれ維持する。言い換えれば、交番は、発振振幅を規定する、てんぷの2つの終端位置の間の一方の方向又はもう一方の方向での発振に対応する。一般原則として、制動パルスが生じる発振周期の変動、したがって、機械式発振器の周波数の分離した変動が観察される。実際、時間変動は、制動パルスが生じる単独の交番に関連する。用語「中間時間」は、交番の中間点で実質的に生じる時間を示す。このことは、機械式発振器が自由に発振するケースに特にあてはまる。一方で、調整パルスが生じる交番の場合、この中間時間は、調整デバイスによって引き起こされる機械式発振器の妨害のために、もはやこれらの交番のそれぞれの継続時間の中間点に正確に対応しない。
次に、図6に示すものに対応する、機械式発振器の第1の発振周波数修正シナリオにおける機械式発振器の挙動を説明する。第1の周期T0の後、新たな周期T1、新たな交番A1のそれぞれが開始され、交番A1の間、制動パルスP1が生じる。初期時間tD1において、交番A1が開始され、共振器14は、終端位置に対応する、最大の正の角度位置を占める。次に、制動パルスP1は、時間tP1で生じ、時間tP1は、共振器がその中立位置を介して通過する中間時間tN1の前、したがって、発振が妨害されない、対応する中間時間tN0の前に位置する。最後に、交番A1は終了時間tF1で終了する。制動パルスは、交番A1の開始を表す時間tD1の後、時間間隔TA1の後に作動される。継続時間TA1は、半交番T0/4よりも少なく、半交番T0/4は、制動パルスP1の継続時間よりも少ない。示す例では、この制動パルスの継続時間は、半交番T0/4よりもかなり少ない。
したがって、この最初のケースでは、制動パルスは、交番開始と、この交番における共振器のその中立位置を介する通過との間に生成される。角速度の絶対値は、制動パルスP1の間に低減する。このことは、角速度の2つの曲線90a及び90b、並びに角度位置の2つの曲線92a及び92bによって図6に示すように、共振器の発振に負の時相偏移TC1、即ち、妨害のない理論信号(破線で示す)に対する遅延を引き起こす。したがって、交番A1の継続時間は、時間間隔TC1だけ増加する。したがって、交番A1を含む発振周期T1は、値T0に対して延長される。このことは、機械式発振器の周波数の分離した低減、及び稼働をこの機械式発振器によって時間調節する、関連する機構の瞬間的な減速を引き起こす。
図7を参照し、機械式発振器の第2の発振周波数修正シナリオにおける機械式発振器の挙動を以下で説明する。第1の周期T0の後、新たな発振周期T2、新たな交番A2それぞれが開始され、新たな交番A2の間、制動パルスP2が生じる。初期時間tD2において交番A2が開始され、この場合、機械式共振器は、終端位置(最大の負の角度位置)にある。半交番に対応する四半周期(T0/4)の後、共振器は、中間時間tN2でその中立位置に達する。次に、制動パルスP2は、時間tP2で生じ、時間tP2は、共振器がその中立位置を介して通過する中間時間tN2の後、交番A2に位置する。最後に、制動パルスP2の後、この交番A2は、共振器が再度終端位置(周期T2における最大の正の角度位置)を占める終了時間tF2、したがって、発振が妨害されない、対応する終了時間tF0の前に終了する。制動パルスは、交番A2の初期時間tD2の後、時間間隔TA2の後に作動される。継続時間TA2は、半交番T0/4を超え、交番T0/2よりも少なく、半交番T0/2は、制動パルスP2の継続時間よりも少ない。示す例では、この制動パルスの継続時間は、半交番よりもかなり少ない。
したがって、問題の第2のシナリオでは、制動パルスは、共振器がその中立位置(ゼロ位置)を介して通過する中間時間と、この交番が終了する終了時間との間に交番で生成される。角速度の絶対値は、制動パルスP2の間に低減する。注目すべきことには、制動パルスは、ここでは、角速度の2つの曲線90b及び90c、並びに角度位置の2つの曲線92b及び92cによって図4に示すように、共振器の発振に正の時相偏移TC2、即ち、妨害のない理論信号(破線で示す)に対する前進を引き起こす。したがって、交番A2の継続時間は、時間間隔TC2だけ低減する。したがって、交番A2を含む発振周期T2は、値T0よりも短い。このことは、機械式発振器の周波数の分離した増大、及び稼働をこの機械式発振器によって時間調節する、関連する機構の瞬間的な加速を引き起こす。この現象は、驚くべきことであるが、明白ではなく、当業者が過去に無視してきたのはこのためである。実際、原則的に、制動パルスによって機構が加速されるのは驚くべきことであるが、このことは、実際、この稼働を機械式発振器によって時間調節し、制動パルスをその共振器に印加する場合にあてはまる。
機械式発振器に対し上述した物理現象は、本発明による計時器で実施される同期方法に関与する。計時器の分野の一般的な教示とは異なり、制動パルスにより機械式発振器の周波数を低減するだけでなく、同様に、制動パルスによりそのような機械式発振器の周波数を増大させることも可能である。当業者は、そのような機械式発振器に動力を供給する際に駆動パルスを印加することによって、制動パルスにより機械式発振器の周波数を実際に低減できるにすぎず、当然の結果として、前記発振器の周波数を増大できるにすぎないことは予想するであろう。計時器の分野で確立され、したがって、当業者がまず思い付くそのような直観的な概念は、機械式発振器の場合、不正確であることが判明している。したがって、以下で詳細に説明するように、親発振器を規定し、よりかなり正確である補助発振器を介して、機械式発振器の周波数が瞬間的にわずかに高すぎる又は低すぎるにかかわらず、この発振器を同期させることが可能である。したがって、単なる制動パルスにより、高すぎる周波数又は低すぎる周波数を修正することが可能である。要約すると、てんぷ−ひげぜんまいの交番発振の間に制動偶力を印加すると、前記制動トルクが、てんぷ−ひげぜんまいのその中立位置を介する通過前に印加されたか、又はその通過後に印加されたかに従って、このてんぷ−ひげぜんまいの発振に負又は正の位相偏移を引き起こす。
本発明による計時器に組み込まれる修正デバイスに対して得られる同期方法を以下で説明する。図8Aにおいて、250msの発振周期の間に300°の振幅で発振する計時器の機械式共振器の角度位置を(度で)示す。図8Bにおいて、1ミリ秒(1ms)の制動パルスによって生成される日々の誤差を示し、これらの制動パルスは、機械式共振器の連続発振周期において、これら周期内の印加時間、したがって、機械式共振器の角度位置に従って、印加される。ここでは、機械式発振器が、4Hzの自然周波数(妨害のないシナリオ)で自由に機能するということに基づく。各制動パルスによって印加される3つの偶力(100nNM、300nNM及び500nNM)に対し、それぞれ3つの曲線が示される。この結果は、上記の物理現象、即ち、第1の四半周期又は第3の四半周期で生じる制動パルスが、機械式発振器の周波数の低減に起因する遅延を生じさせる一方で、第2の四半周期又は第4の四半周期で生じる制動パルスが、機械式発振器の周波数の増大に起因する前進を生じさせることを確認するものである。この場合、所与の偶力に対し、日々の誤差は、制動パルスが共振器の中立位置で生じる場合はゼロに等しく、この日々の誤差は、発振終端位置に近づくと(絶対値で)増大することが観察される。共振器の速度がゼロを介して通過し、運動方向が変化するこの終端位置において、日々の誤差の形跡の急な反転がある。最後に、図8Cにおいて制動力を示し、この制動力は、発振周期の間の制動パルスの印加時間を関数として、上述の3つの偶力値で消費されるものである。共振器の終端位置に近づき、速度が低下するにつれて、制動力は低減する。したがって、終端位置に近づくにつれて引き起こされる日々の誤差は増大する一方で、必要な制動力(したがって発振器が失うエネルギー)は著しく低減する。
実際、図8Bで引き起こされた誤差は、機械式発振器が設定点周波数に対応しない自然周波数を有するシナリオの場合の修正に対応させることができる。したがって、発振器が低すぎる自然周波数を有する場合、第2又は第4の発振四半周期で生じる制動パルスは、自由(妨害のない)発振が取った遅延の修正を可能にし、この修正は、多かれ少なかれ、発振周期内の制動パルスの時間に従った実質的なものである。一方、発振器が高すぎる自然周波数を有する場合、第1又は第3の発振四半周期で生じる制動パルスは、自由発振が取った前進の修正を可能にし、この修正は、多かれ少なかれ、発振周期内の制動パルスの時間に従った実質的なものである。
上記の教示は、主要機械式発振器(子発振器)が、親発振器を形成する補助発振器に対し同期するという注目すべき現象を理解することを可能にし、このことは、単に、制動周波数FFRで、子機械式共振器に対し制動パルスを周期的に印加することによって行われ、制動周波数FFRは、有利には、正の整数Nによって除算した、設定点周波数F0Cの2倍に対応する、即ち、FFR=2・F0C/Nである。したがって、制動周波数は、正の整数Nが与えられると、親発振器の設定点周波数に比例し、この設定点周波数に従属するにすぎない。したがって、設定点周波数が参照周波数によって乗算した分数に等しいと想定されるため、制動周波数は、参照周波数に比例し、この参照周波数によって決定され、参照周波数は、本質的に又は設計によって主要機械式発振器よりも正確である補助発振器によって供給される。
次に、本発明による計時器に組み込んだ修正デバイスによって得られる上述の同期を図9から図22を用いてより詳細に説明する。
図9において、上のグラフでは、子機械式共振器、特に、自由発振する計時器共振器のてんぷ−ひげぜんまいの角度位置(曲線100)及び制動発振する計時器共振器のてんぷ−ひげぜんまいの角度位置(曲線102)を表す。自由発振の周波数は、設定点周波数F0C=4Hzを超える。第1の制動パルス104(以下、「パルス」とも呼ぶ)は、ここでは、終端位置を介する通過とゼロを介する通過との間の半交番の発振周期につき一度生じる。想定するシステムは、機械式共振器の角度位置を検出しないため、この選択は任意である。したがって、このことは、以下で分析するものの中で可能な仮定にすぎない。したがって、ここでは、機械式発振器が減速するシナリオを観察する。ここでは、第1の制動パルスの制動トルクは、発振周期にわたって自由発振器が取った前進を補償する最小制動トルクを超えると想定する。これにより、第2の制動パルスが、パルスが生じる四半周期の中の第1の制動パルスよりわずかに前に生じる。実際、機械式発振器に対し瞬間的な周波数を与える曲線106は、この瞬間的な周波数が第1のパルスから設定点周波数より下降することを示す。したがって、第2の制動パルスは、制動効果が増大するように前の終端位置により近く、後続のパルスの場合も以下同様である。したがって、移行段階では、発振器の瞬間周波数は漸進的に減少し、パルスは、発振終端位置に漸進的に近づく。一定時間の後、制動パルスは終端位置を介する通過を含み、機械式共振器の速度は方向を変え、次に、瞬間周波数は増加し始める。
制動は、共振器の運動方向とは無関係に、共振器の運動に対抗することを特徴とする。したがって、共振器が、制動パルスの間、発振方向の反転を介して通過する際、制動トルクは、この反転時、形跡を自動的に変化させる。このことは、制動パルス104aをもたらし、制動パルス104aは、制動トルクに対し、第1の形跡を有する第1の部、及び第1の形跡とは反対の第2の形跡を有する第2の部を有する。したがって、このシナリオにおいて、信号の第1の部は、終端位置の前に生じ、この終端位置の後に生じる第2の部の作用に対抗する。第2の部が機械式発振器の瞬間周波数を低減させる一方で、第1の部は瞬間周波数を増大させる。次に、修正は縮小し、最終的に、発振器の瞬間周波数が設定点周波数(ここでは制動周波数に対応する)に等しい値で比較的迅速に安定化する。したがって、移行段階の後、同期段階とも呼ばれる安定段階が続き、安定段階では、発振周波数は、設定点周波数に実質的に等しく、制動パルスの第1の部及び第2の部は、実質的に一定で、規定された比率を有する。
図10のグラフは、図9のグラフと同等である。主な差は、自由機械式発振器の自然周波数の値が、設定点周波数F0C=4Hzよりも小さいことである。第1のパルス104は、図9の場合のように同じ半交番で生じる。予想されるように、曲線110によって与えられる瞬間周波数の低減が観察される。したがって、制動による発振108は、移行段階において、パルス104bが共振器の終端位置を介する通過を含み始めるまで、より大きな遅延を瞬間的に取る。この時間から、瞬間周波数は、設定点周波数に達するまで増大し始める。というのは、終端位置の前に生じる第1の部のパルスが瞬間周波数を増大させるためである。この現象は自動的である。実際、発振周期継続時間が、T0Cの継続時間を超える間、第1の部のパルスが増大する一方で、第2の部は、低減し、したがって、瞬間周波数は、設定点周波数が発振周期に実質的に等しい安定状態まで増大し続ける。したがって、所望の同期が得られる。
図11のグラフは、図10のグラフと同等である。図10との主な差は、第1の制動パルス114が図10とは別の半交番で生じる、即ち、ゼロを介する通過と終端位置を介する通過との間の半交番で生じることである。上記のように、ここでは、移行段階における、曲線112が与える瞬間周波数の増大が観察される。ここでは、第1の制動パルスの制動トルクは、発振周期にわたって自由機械式発振器が取った遅延を補償する最小制動トルクを超えると想定する。これにより、第2の制動パルスが、パルスが生じる四半周期内で、第1の制動パルスよりわずかに後に生じる。実際、曲線112は、発振器の瞬間周波数が第1のパルスからの設定点周波数を上回って増大することを示す。したがって、第2の制動パルスは、制動効果が増大するように後続の終端位置により近く、後続のパルスの場合も同様である。したがって、移行段階では、制動による発振114の瞬間周波数は増大し、制動パルスは、発振終端位置に漸進的に近づく。一定時間の後、制動パルスは、終端位置を介する通過を含み、機械式共振器の速度は、方向を変える。この時間から、上記の現象と同様の現象が観察される。この場合、制動パルス114aは2つの部を有し、第2の部は、瞬間周波数を低減させる。この瞬間周波数の低減は、図9及び図10を参照して示したのと同じ理由のため、瞬間周波数が設定点値に等しい値を有するまで続く。周波数の低減は、瞬間周波数が設定点周波数に実質的に等しいと自動的に停止する。次に、同期段階における、設定点周波数での機械式発振器の周波数の安定化が得られる。
図12から図15を用いて、発振周期の間、第1の制動パルスが生じる任意の時間の移行段階における機械式発振器の挙動、及び発振周波数が設定点周波数上で安定化する同期段階に対応する最後のシナリオを説明する。図12は、機械式共振器の位置の曲線S1を有する発振周期を表す。本明細書の問題のシナリオにおいて、(制動パルスを伴わない)自由機械式発振器の自然の発振周波数F0は、設定点周波数F0Cを超える(F0>F0C)。発振周期は、従来、第1の交番A1、その後、第2の交番A2を含み、それぞれ、発振振幅に対応する2つの終端位置(tm-1、Am-1;tm、Am;tm+1、Am+1)の間にある。次に、第1の交番における、中間点時間位置が時間t1で生じる制動パルス「Imp1」、及び第2の交番における、中間点時間位置が時間t2で生じる更なる制動パルス「Imp2」を表す。パルスImp1及びImp2は、T0/2の位相偏移を呈し、所与の制動トルク・プロファイルで、システムの2つの不安定な平衡状態を引き起こす修正に対応することを特徴とする。これらのパルスがそれぞれ、第1の四半周期及び第3の四半周期で生じると、パルスは、自由機械式発振器の過度に高い自然周波数を正確に修正することを可能にする程度まで機械式発振器を制動する(制動周波数は、制動パルスを印加するように選択される)。パルスImp1及びImp2は両方とも第1のパルスであり、それぞれ、他方の不在下では単独とみなされることに留意されたい。パルスImp1及びImp2の効果は同一であることが観察されるはずである。
したがって、第1のパルスが時間t1又はt2で生じる場合、理論的には、次の発振周期の間のこのシナリオの繰り返し、及び設定点周波数に等しい発振周波数がある。そのようなシナリオに対し、2つの事項を留意すべきである。第1に、第1のパルスが正確に時間t1又はt2で生じる確率は、可能であるが比較的低い。第2に、例えそのような特定のシナリオが起こったとしても、長時間継続させることができない。実際、計時器内のてんぷ−ひげぜんまいの瞬間周波数は、様々な理由(発振振幅、温度、空間の向きの変化等)で経時的にわずかに変動する。これらの理由は、妨害を表し、一般に、精密時計製造では最小化することが求められるが、実際には、そのような不安定な平衡状態はあまり長く続かない。制動トルクが高いほど、時間t1及びt2は、時間t1及びt2のそれぞれに追従する、機械式共振器の中立位置を介する2つの通過時間により近付くことに留意されたい。更に、自然発振周波数F0と設定点周波数F0Cとの間の差が大きいほど、同様に、時間t1及びt2は、時間t1及びt2のそれぞれに追従する、機械式共振器の中立位置を介する2つの通過時間により近付くことに留意されたい。
次に、パルスを印加する間、時間位置t1又はt2からわずかに逸脱した場合に何が起こるかを考慮してみる。図8Bを参照して得られる教示によれば、パルスが、区間Z1aにおいてパルスImp1の左(前の時間位置)に生じた場合、修正は、後続の周期の間、先行する終端位置Am-1が制動パルスに漸進的に近づくように増大する。一方、パルスが、ゼロ位置の左に対してパルスImp1の右(後続の時間位置)に生じた場合、修正は、後続の周期の間、パルスがこのゼロ位置に向かってずれるように低減し、修正がゼロになる。実際、パルス変化及び瞬間周波数の増大に対する影響が生じる。自然周波数が既に高すぎるため、パルスは終端位置Amに迅速にずれる。したがって、パルスが区間Z1bにおけるパルスImp1の右に生じた場合、後続のパルスは、後続の終端位置Amに漸進的に近づく。同じ挙動は、第2の交番A2においても観察される。パルスが区間Z2aにおけるパルスImp2の左に生じた場合、後続のパルスは、前の終端位置Amに漸進的に近づく。一方、パルスが区間Z2bにおけるパルスImp2の右に生じた場合、後続のパルスは、後続の終端位置Am+1に漸進的に近づく。この記述は、相対的であることに留意されたい。というのは、実際、制動パルスの印加周波数は、親発振器(所与の制動周波数)によって設定されるため、制動パルスは、変動する発振周期であり、したがって、問題の終端位置は、制動パルスの印加時間に近づくためである。結論として、パルスがt1以外の時間で第1の交番A1で生じた場合、瞬間発振周波数は、後続の発振周期の間、移行段階に前進し、この第1の交番の2つの終端位置(機械式共振器の運動方向の反対位置)の1つは、制動パルスに漸進的に近づく。同じことは、第2の交番A2にもあてはまる。
図13は、上記の移行段階の後に生じる、最終安定状態に対応する同期段階を示す。以前に説明したように、これらの制動パルスが、ケースに応じて、終端位置の直前又は直後に全体的に生じる少なくとも制動パルス(偶力及び継続時間)により自由機械式発振器の時間のずれを十分に修正できるように構成されるにもかかわらず、制動パルスの間、終端位置を介する通過が生じると、この終端位置は、制動パルスに対して位置合わせされる。したがって、同期段階において、第1のパルスが第1の交番A1で生じた場合、発振終端位置Am-1は、パルスImp1aに対して位置合わせされるか、又は発振終端位置Amは、パルスImp1bに対して位置合わせされる。実質的に一定の偶力の場合、パルスImp1a及びImp1bはそれぞれ、継続時間が第2の部の継続時間よりも短い第1の部を有し、子主要発振器の高すぎる自然周波数と、親補助発振器によって設定した設定点周波数との間の差を正確に修正するようにする。同様に、同期段階において、第1のパルスが第2の交番A2で生じた場合、発振終端位置Amは、パルスImp2aに対して位置合わせされるか、又は発振終端位置Am+1は、パルスImp2bに対して位置合わせされる。
パルスImp1a、Imp1b、Imp2a及びImp2bのそれぞれは、比較的安定した時間位置を占めることに留意されたい。実際、外部の妨害のためにこれらのパルスのうち1つが左又は右にわずかに逸脱すると、後続のパルスを初期の相対時間位置に戻す効果がある。次に、機械式発振器の時間のずれが同期段階の間に変動した場合、発振は、パルスImp1a、Imp1b、Imp2a及びImp2bそれぞれの第1の部と第2の部との間の比率が、修正を取る程度に変動するようなわずかな位相偏移を自動的に維持し、この修正は、制動パルスによって周波数の新たな差に対して引き起こされる。本発明による計時器のそのような挙動は、実に注目に値するものである。
図14及び図15は、発振器の自然周波数が設定点周波数よりも小さいというシナリオ以外、図12及び図13と同様である。したがって、制動パルスが行う修正において、不安定な平衡状態のシナリオに対応するパルスImp3及びImp4はそれぞれ、第2及び第4の四半周期(時間t3及びt4)に位置し、パルスは、発振周波数の増大を引き起こす。ここで、システムの挙動が上述の考慮事項に起因するため、再度説明を詳細に示す。移行段階(図14)において、パルスが、交番A3において区間Z3a内のパルスImp3の左に生じる場合、前の終端位置(tm-1、Am-1)は、後続のパルスに漸進的に近づく。一方、パルスが、区間Z3b内のパルスImp3の右に生じる場合、後続の終端位置(tm、Am)は、後続のパルスに漸進的に近づく。同様に、パルスが、交番A4において区間Z4a内のパルスImp4の左に生じる場合、前の終端位置(tm、Am)は、後続のパルスに漸進的に近づく。最後に、パルスが、区間Z4b内のパルスImp4の右に生じる場合、移行段階の間、後続の終端位置(tm+1、Am+1)は、後続のパルスに漸進的に近づく。
同期段階(図15)において、第1のパルスが第1の交番A3で生じた場合、発振終端位置Am-1は、パルスImp3aに対して位置合わせされるか、又は発振終端位置Amは、パルスImp3bに対して位置合わせされる。実質的に一定の偶力の場合、パルスImp3a及びImp3bはそれぞれ、継続時間が第2の部の継続時間よりも長い第1の部を有し、子主要発振器の低すぎる自然周波数と、親補助発振器によって設定した設定点周波数との間の差を正確に修正するようにする。同様に、同期段階において、第1のパルスが第2の交番A4で生じた場合、発振終端位置Amは、パルスImp4aに対して位置合わせされるか、又は発振終端位置Am+1は、パルスImp4bに対して位置合わせされる。図12及び図13を参照しながら上記シナリオの範囲内で行う他の考慮事項は、図14及び図15のシナリオに対する類推によって適用される。結論として、自由機械式発振器の自然周波数が高すぎる又は低すぎるかどうかによらず、発振周期内で第1の制動パルスを印加する時間とは無関係に、本発明による修正デバイスは、機械式ムーブメントの稼働を時間調節する機械式発振器の周波数を、設定点周波数に対し効果的で迅速に同期し、設定点周波数は、親補助発振器の参照周波数によって決定され、親補助発振器は、制動パルスを機械式発振器の共振器に印加する制動周波数を制御する。このことは、機械式発振器の自然周波数が変動する場合、及び機械式発振器の自然周波数が特定の時間周期では設定点周波数を超える一方で、他の時間周期ではこの設定点周波数よりも少ない場合でさえ、依然としてあてはまる。
本発明による計時器の特徴により得られる上記の教示及び同期は、制動パルスを印加する制動周波数が、設定点周波数に等しくないシナリオにもあてはまる。発振周期ごとに1回のパルスを印加する場合、不安定位置で生じるパルス(t1、Imp1;t2、Imp2;t3、Imp3;t4、Imp4)は、修正に対応し、1回の発振周期の間の時間のずれを補償する。一方、想定した制動パルスが、複数の発振周期の間の時間のずれを修正するのに十分な効果を有する場合、複数の発振周期に等しい時間間隔ごとに1回のパルスを印加することが可能である。発振周期ごとに1回のパルスを生成するシナリオの場合と同じ挙動が観察される。パルスが生じる発振周期を考慮すると、上記したシナリオの場合と同じ移行段階及び同じ同期段階がある。更に、これらの考慮事項は、各制動パルスの間に整数の交番がある場合、正確でもある。奇数の交番の場合、図12から図15における交番A1又はA3から交番A2又はA4への移行は、ケースに応じて交互に行われる。交番によってずれる2つのパルスの影響は同一であるため、同期は、2つの連続制動パルスの間の偶数の交番のように実行されることは理解されよう。結論として、既に述べたように、制動周波数FFRが2F0C/Nに等しい場合、図12から図15を参照して説明したシステムの挙動が観察され、F0Cは、発振周波数の設定点周波数であり、Nは正の整数である。
あまり重要ではないが、同期は、設定点周波数の2倍(2F0)を超える制動周波数FFR、即ち、N>2であるN倍のF0に等しい値でも得られることに留意されたい。FFR=4F0である代替実施形態では、システム内にエネルギーの損失があるにすぎず、同期段階における影響はない。というのは、2つのパルスのうち1つのパルスは、機械式共振器の中立点で生じるためである。より高い制動周波数FFRの場合、終端位置で生じない同期段階のパルスは、より高い制動周波数FFRの影響を対で相殺する。したがって、あまり実際的な意味をもたない理論的シナリオがあることを理解されたい。
図16及び図17は、代替実施形態のための同期段階を示し、制動周波数FFRは、設定点周波数の4分の1に等しく、したがって、1回の制動パルスは、4発振周期ごとに生じる。図18及び図19は、図16及び図17それぞれの部分拡大図である。図16は、主要発振器の自然周波数が設定点周波数F0C=4Hzを超えるシナリオに関連する一方で、図17は、主要発振器の自然周波数がこの設定点周波数を超えるシナリオに関連する。制動パルスImp1b又はImp2a、Imp3b又はImp4aのぞれぞれが生じる発振周期T1*及びT2*のみが、自然周期T0*に対して変動を呈することが観察される。制動パルスは、対応する周期内で位相偏移を引き起こすにすぎない。したがって、ここでは、瞬間周期は、設定点周期の平均値に等しい平均値の周囲で発振する。図16から図19において、瞬間周期は、発振信号の立上りエッジ上でゼロを介する通過から、そのような後続の通過まで測定されることに留意されたい。したがって、終端位置で生じる同期パルスは、発振周期内に完全に含まれる。包括的にするため、図20は、自然周波数が設定点周波数に等しい特定のシナリオを示す。この場合、発振周期T0*は全て等しいままであり、制動パルスImp5は、自由発振終端位置で正確に生じ、これらのパルスの第1の部及び第2の部は、同一の継続時間を有し(一定の制動トルクのケース)、第1の部の作用は、第2の部の反対の作用によって相殺される。
向上させた代替実施形態では、同期デバイスは、制動周波数が複数の値、好ましくは、同期デバイスの初期動作段階における第1の値、及び初期段階後の通常動作段階における、第1の値よりも小さい第2の値を取り得るように構成する。特に、初期段階の継続時間は、通常動作段階が生じると同時に、ほぼ確実に同期段階が既に開始されているように選択される。より一般的には、初期段階は、同期デバイスを係合した後、少なくとも第1の制動パルス、及び好ましくは、移行段階の大部分を含む。制動パルスの周波数を増大させることによって、移行段階の継続時間は減少する。更に、この代替実施形態は、一方で、初期段階の間、制動効率を最適化し、物理的処理を実行して同期をもたらし、もう一方で、残存する同期段階の間、同期デバイスが非作動状態ではなく、機械式ムーブメントが動作している間、主要発振器の制動エネルギー、したがって、エネルギーの損失を最小化することを可能にする。第1の制動パルスは、共振器の中立位置の近傍で生じることがあり、主要発振器の発振で引き起こされる時相偏移に対する制動効果は、より劣っている。一方、同期が確立されると、制動パルスは、この発振の終端位置の近傍で生じ、制動効果は最大である。
図21及び図22を参照し、本発明の電磁制動デバイスの単純さに驚く本発明の第2の実施形態の第1の代替実施形態を説明する。この第2の実施形態は、電磁制動デバイスの磁気システムが、第1の実施形態とは本質的に異なり、磁気システムは、第1の代替実施形態では、機械式共振器6Aのてんぷ8Aによって支持する単一双極磁石60から形成され、第2の代替実施形態では、一対の双極磁石によって形成される。第1の代替実施形態では、共振器6Aがその中立位置にある際(図21に表すシナリオ)、発振軸34から開始し、磁石60の中心を介して通過する参照半軸62は、極座標系内でゼロ角度位置(「0」)を画定し、ゼロ角度位置(「0」)は、発振軸を中心とし、計時器ムーブメントの板に対して固定される。磁気システムに加えて電磁制動デバイスを完成させるコイル28は、板に厳密に接続され、ゼロ角度位置に対して角度のずれを有する。好ましくは、コイルの角度のずれは、図21に表すように実質的に180°に等しい。
図22において、同期デバイス動作の同期段階における、時間を関数とする、問題の機械式発振器の使用可能な動作範囲内の、てんぷ8Aの角度位置の曲線70及び誘導電圧の曲線72を表し、てんぷ8Aの角度位置は、この範囲内で180°を超える、好ましくは200°(図示のシナリオ)を超える振幅を呈する。したがって、機械式共振器6Aの各交番発振において、実質的に正弦形状周期を有する2つの誘導電圧パルス74A及び74Bが観察される。パルス74A及び74Bは、コイル28内に誘導電圧がない時間区分によって、対で隔てられることが観察される。計時器の稼働に大きな安定性を保証する代替実施形態では、設定点周波数F0cで生成する、したがって、各発振周期で生じる短絡パルス58Aによって規定される個別時間間隔TPは、実質的に、使用可能な動作範囲内で、機械式共振器の2つの終端位置の周囲のコイル内に誘導電圧がない時間区分以上である(図示のシナリオ)。しかし、以下でわかるように、時間間隔TPは、誘導電圧がない時間区分の継続時間よりも短くてもよいため、この条件は必須ではない。
一般に、同期デバイスの起動後の移行段階の後、計時器の自然な時間のずれが、同期デバイスのために設計してある名目上の範囲内に残存するものの、この計時器は、安定同期段階に入り、機械式発振器は、第1の短絡パルスの間、てんぷ8Aの角度位置とは無関係に、短絡パルス58Aを生成する設定点周波数F0cを呈することが観察される。図22は、機械式発振器の自然発振周波数F0が設定点周波数F0cよりもわずかに小さいシナリオに対応する。このシナリオから、各発振周期T0cにおいて、誘導電圧パルス74Aによって各短絡パルスの初期区間で生成され、(個別時間間隔TPの開始時に)第2の交番A2の第2の半交番A22で生じる第1の個別の制動パルスは、誘導電圧パルス74Bによって各短絡パルスの最終区間で生成され、(個別時間間隔TPの終了時に)第1の交番A1の第1の半交番A11で生じる第2の個別の制動パルスよりも強い。2つの制動パルスは、ゼロとは異なる継続時間を有する時間間隔だけ離れる場合、異なる。
したがって、同期段階において、コイルの短絡が生じる各時間間隔TPの間、各半交番A22内の電圧パルス74Bによって生成される正の位相偏移は、各半交番A11内の電圧パルス74Aによって生成される負の位相偏移よりも大きく、計時器の稼働修正が各発振周期において生じ、参照時間基準に対する機械式発振器の同期を実行するようにする。上述のように、設定点周波数における短絡パルスの生成は、特定のシナリオである。更なる代替実施形態では、短絡パルスは、設定点周波数の何分の1かに対応するより低い周波数で生成される。より一般的には、同じ特性時間のあらゆる2つの連続短絡パルスを隔てる時間距離DTは、数学的関係DT=M・T0c/2を満たすことが想定され、Mは、任意の正の整数である。したがって、制動パルスを周期的に生成する場合、これらの制動パルスの作動周波数FDは、数学的関係DT=M・T0c/2を満たすように選択する(2つの誘導電圧パルス74A及び74Bのそれぞれの出現時に各時間間隔TPにおいて生成した2つの個別の制動パルスは一緒に、時間距離及び作動周波数の点で同じ制動パルスとみなされることに留意されたい)。当業者は、十分に高い周波数、したがって、所望の同期を実行するのに高すぎないMの値を選択することができる。
第2の実施形態の第2の代替実施形態では、電磁制動デバイスは、軸方向磁化及び反対の極性を有する一対の永久磁石によって形成した磁気システムを備え、これら2つの磁石は、2つの誘導電圧突出を追加するため、てんぷの参照半軸に対して対称的に、互いに十分近くに配置され、誘導電圧突出はそれぞれ、この対の磁石がコイルの反対側を通過する際に生成する。参照半軸は、機械式共振器がその中立位置にある際のゼロの角度位置を規定する。コイルは、ゼロ角度位置に対してある角度のずれを呈し、機械式発振器が使用可能な動作範囲内で発振する際、少なくとも各発振周期の1つの交番において、実質的に、機械式共振器がこの交番で中立位置を介して通過する前又は後、このコイル内に誘導電圧が生じるようにする。また、コイルの角度のずれは、好ましくは、180°に等しい。使用可能な動作範囲内の機械式共振器の終端角度位置は、絶対値において、ゼロ角度位置とコイルの中心角度位置との間の最小角度距離として規定される角度のずれを超える。この第2の代替実施形態は、図23で表す電磁デバイスに対応するが、以下で説明する第3の実施形態に関連する第2の対の磁石66、67を伴わない。
図23から図25で表す第3の実施形態では、電磁制動デバイスの磁気システムは、第1の対の双極磁石64、65及び第2の対の双極磁石66、67から構成され、第1の対の双極磁石64、65及び第2の対の双極磁石66、67は共に、機械式共振器6Bのてんぷ8B及びコイル28によって支持される。各対の磁石は、反対の磁性の軸方向磁化を有する。第1の対の2つの磁石は、てんぷ8Bの参照半軸62Aに対して対称に配置され、この参照半軸は、機械式共振器がその中立位置にある際にゼロの角度位置を画定する。図23において、てんぷは、90°に等しい角度位置θ(θ=90°)にあることに留意されたい。第2の実施形態の場合のようにコイル28は、ゼロ角度位置に対して角度のずれを呈し、このずれは、好ましくは、180°に実質的に等しいが、更なる代替実施形態では、更なる角度のずれを想定することができる。機械式共振器が発振する際にコイル内に生成される誘導電圧曲線76を、てんぷ8Bの角度位置を示す曲線70上に重ねて、図24に表す。
180°の角度におけるコイル28の配置(図23で表す代替実施形態)は、好ましい代替実施形態である。というのは、各交番においてコイルと第1の対の磁石64、65とによって形成される電磁システムは、各交番において、2つの誘導電圧パルス78A及び78Bを生成するためであり、誘導電圧パルス78A及び78Bは、共振器6Bのその中立位置を通る通過時間に対して対称性を有する。したがって、各第1の半交番A11、A21においてパルス78Aがあり、各第2の半交番A12、A22においてパルス78Bがある。したがって、誘導電圧78A及び78Bは、実質的に同じ振幅を有し、それぞれ、機械式共振器6Bの終端角度位置を介する通過から同じ時間距離で位置し、誘導電圧78A及び78Bが、コイルの短絡の間、機械式共振器の発振において、同じ強度、及びケースに応じて正又は負の同じ値の位相偏移の制動トルクを生成するのに適しているようにする。次に、上記のように、180°の角度のずれは、更に、制動パルスの生成に高効率であるという利点を有することに留意されたい。更に、機械式発振器の使用可能な動作範囲内のてんぷの振幅は、従来、180°を超えることが想定され、したがって、コイル28の2つの端子間のインピーダンスを低減することによって、誘導電圧パルスの生成、したがって、制動パルスの生成を可能にし、計時器の稼働の修正を可能にすることに留意されたい。
図24に表す第1の代替実施形態では、個別時間間隔TPの値は、実質的に、機械式発振器の使用可能な動作範囲内で、機械式共振器のコイル28内の各終端角度位置の周囲に誘導電圧がない時間区間の継続時間以上である。しかし、個別時間間隔TPのこの値は、設定点半周期よりも小さい、即ち、TP<T0c/2であることが想定される。この第1の代替実施形態による同期方法の同期段階において、短絡パルス58Bは、終端角度位置を含む2つの誘導電圧パルス78Aと78Bとの間に位置合わせされ、2つの個別の制動パルスはそれぞれ、各時間間隔TPの開始時及び終了時に生じ、これら2つの個別の制動パルスは、機械式共振器から引かれる2つのエネルギー量に対応し、これらのエネルギー量は、問題の機械式発振器の正又は負の時間のずれに従った変数である(一方の変動は、もう一方の変動とは反対であり、2つのエネルギー量の一方が増大又は低減した場合、もう一方はそれぞれ低減又は増大するようにする)。図24は、機械式発振器の自然周波数が設定点周波数に等しい特定のシナリオに対応し、上述の2つのエネルギー量はここでは同一であることに留意されたい。
図24と同様の図25において、第2の代替実施形態を表し、個別時間間隔TPの値は、機械式共振器のコイル28内の各終端角度位置の周囲に誘導電圧がない時間区間の継続時間よりも小さい。所望の同期も得られる。実際、同期段階において、短絡パルス58Cは、終端角度位置を含む2つの誘導電圧パルス78A、78Bによって枠が形成される時間窓内に留まる。個別時間間隔TPの時間位置は、少なくとも移行段階の終端部(パルス58C1)の間、又は同期段階において、機械式発振器の自然周波数が設定点周波数とかなり類似する場合、特にこの値の周囲でわずかに変動する場合、この時間窓内で変動させることができる。一般に、同期段階において、機械式発振器の時間のずれが負であるか正であるかに従って、それぞれ発振周期の半交番A12及びA21で生じる短絡パルス58C2又は58C3が観察され、発振周期の半交番A12及びA21は、部分的に同時に、それぞれ、誘導電圧パルス78B及び78Aを伴い、誘導電圧パルス78B及び78Aが、それぞれの半交番において制動パルスを生成するようにする。コイル及び第1の対の磁石から形成される上述の電磁システムのみが介入し、同期方法の同期段階において、所望の同期を実行し、この場合、第2の対の磁石は、この同期方法に影響を及ぼさない。
機械式共振器の各交番発振において、コイル28と瞬間的に結合する第2の対の双極磁石66、67は、本質的に、同期デバイスに対する電力供給のために働くが、第2の対の双極磁石66、67は、同期方法の移行段階(同期デバイス起動後の初期段階)に介入することができる。計時器は、コイル内の誘導電圧の整流器回路及び蓄電器によって形成した電源回路を備え、第2の対の双極磁石は、2つの磁石の間に中間点半軸68を有し、中間点半軸68は、参照半軸62Aに対してコイル28が呈する角度のずれだけずれており、機械式共振器がその遊休位置にある際、この中間点半軸がコイルの中心に対して位置合わせされるようにする。電源回路は、機械式共振器がその中立位置を介して通過する際に少なくとも周期的に、一方で、コイルの端子に接続され、もう一方で、同期位置の参照電位に接続されるが、好ましくは、常時接続されている。第2の対の磁石は、てんぷ8Bがゼロ角度位置を介して通過する際、誘導電圧パルス80A及び80Bを生成し、これらのパルスは、第1の対の磁石が生成するパルスよりも大きな振幅を有し、蓄電器の電力供給のために働き、蓄電器の電圧は、図24の曲線82によって表される。
図26、図27及び図28A〜図28Cを参照して、本発明の第4の実施形態を以下で説明する。この第4の実施形態は、磁気システムの配置が他の実施形態とは本質的に異なる。てんぷ8Cの心棒82は、板5とてんぷ受け7との間で発振軸34回りに枢動する。径方向磁化を有する双極磁石84は、心棒82上に配置され、板86の開口87内に置かれ、板86は、高い透磁率の材料、特に強磁性材料から作製される。板86は、核心89と共に磁気回路を画定し、核心89の回りに、コイル28Cが従来の計時器モータの様式で配置される。板86は、開口87のレベルで2つの峡部88を有し、2つの峡部88は、部分的に、磁束が、コイル核心を介して通過せずに磁石を閉じないようにする。しかし、好ましくは、これらの峡部88は、計時器モータのケースよりも薄く想定され、永久磁石84のその回転角度による磁位エネルギーの変動を制限する。
図28Aから図28Cは、図5Aから図5Cと同様であるが第4の実施形態に関する。図28A及び図28Bの誘導電圧曲線は、発振振幅が実質的に180°に等しい特定のシナリオに対応する。より大きい振幅に関し、コイル28C内の誘導電圧曲線は、図28C内に表される曲線に対応する。図28Cは、機械式発振器の自然発振周波数F0が設定点周波数に等しい特定のシナリオに関連する。制動パルス50Cが生成する制動が弱い場合、共振器6Cの発振振幅は、図28A及び図28Bで生じる、制動パルス56、57のそれぞれがより大幅な制動を引き起こす振幅よりもわずかに大きい。制動トルクのグラフ上で、パルス50Cが、終端角度位置を介する共振器6Cの通過時間に対する中心対称性を有することを仮定すると、パルス50Cは、機械式共振器の発振内で時相偏移を引き起こさない。それぞれ、終端角度位置を介する共振器6Cの通過時間の両側で生じる個別時間間隔TPの2つの部TB及びTAは、ここでは、等しいことに留意されたい。というのは、自然周波数が設定点周波数に等しいためである。したがって、隣接する半交番A22及びA11は、同じ継続時間を有する。
念のためであるが、時間間隔TPは、短絡パルス58によって規定され、短絡パルス58は、それぞれの開始の間に、参照時間基準によって決定する時間距離DTを有する。本例では、短絡パルス58は、設定点周波数に等しい作動周波数FDと共に生成され、ここで、時間距離DTが設定点周波数T0cに等しいようにする。
自然周波数F0が高すぎる場合、遠隔時間間隔TPの第1の部TBは、第2の部TAよりも小さく、対応する短絡パルスによってこれら遠隔時間間隔の間に生成した制動パルス56は、実質的に第1の半交番A11において(図示の特定の例ではほぼ全体的に)生じ、制動パルス56が、機械式発振器の周波数を低減させ、機械式発振器を参照時間基準である補助発振器に対して同期し、したがって、設定点周波数F0cをこの機械式発振器に印加するようにする。自然周波数F0が低すぎる場合、遠隔時間間隔TPの第2の部TBは、第2の部TAよりも大きく、対応する短絡パルスによってこれら遠隔時間間隔の間に生成した制動パルス57は、実質的に第2の半交番A22において(同様に、図示の特定の例ではほぼ全体的に)生じ、制動パルス56が、機械式発振器の周波数を増大させ、機械式発振器を補助発振器に対して同期するようにする。