(実施形態)
以下に、本発明を具体化した美容器の実施形態を図面に従って説明する。
図1〜図3に示すように、本実施形態の美容器は、全体として左右対称形状に形成されている。ここで、図2における左右を本実施形態の美容器の左右とし、図2における上部を美容器の前部とし、図2の紙面と直交する方向を美容器の表裏の方向とする。
図1〜図3に示すように、美容器は、カッサ本体部11の周縁部にマッサージ部として機能する押圧施術部としてのカッサ部12を一体に有する押圧施術部材としてのカッサ部材13と、カッサ本体部11に取り付けられて結合されたホルダ部材14とを備えている。そして、カッサ部材13は、美容器の外形とほぼ相似形をなしている。美容器は、カッサ部12を露出させた状態でホルダ部材14及びカッサ部材13を覆うカバー部材15を備えている。図1〜図5に示すように、このカッサ部材13,ホルダ部材14及びカバー部材15により全体として扁平形状をなす合成樹脂製の美容器本体10が構成されている。この美容器本体10は、図2,図24及び図25に示すように、使用者の指先によって把持される。カッサ部12は、左右両端部に位置する曲線状の一対の膨らみ部19と、両膨らみ部19間の後部側において膨らみ部19と連続する曲線状の窪み部20とを備えている。カッサ部12の周縁部は、図18に示す断面形状においてほぼ円弧状に膨らんだ形状を有している。
図6〜図9に示すように、ホルダ部材14には、その左右においてそれぞれ交差状態で対をなす合計4本の支持軸16が支持されている。この支持軸16は、高強度で耐食性(耐薬品性を含む)に優れた金属、例えばステンレススチールから構成されている。支持軸16は、ステンレススチール以外に、真鍮,アルミニウム合金,チタン合金など、ステンレススチール以外の金属を用いたり、ポリカーボネートなどの高強度合成樹脂を用いたりすることができる。なお、支持軸16として、ステンレススチール以外の金属を用いた場合は、その支持軸16にクローム,ニッケル,金,銀,銅,プラチナなどのメッキを施すことができる。
図10及び図18に示すように、支持軸16はカバー部材15の挿通孔17から外部に突出されており、この突出部にはそれぞれ球状をなすマッサージ部としての回転体18が回転可能に支持されている。従って、回転体18は美容器本体10の周縁部から外方に突出している。前記カッサ部12は擦りマッサージであるカッサマッサージに用いられ、回転体18は転がりマッサージに用いられる。回転体18は、良好な外観を得るとともに、耐食性を得るために、ABS樹脂によって構成される。回転体18の表面は、肌に対するアレルギー防止のために、全体に対して化学的に安定した金属,例えばクロムメッキが施されている。クロムメッキに代えて、パラジウム,プラチナ,金や、それらの合金の金属メッキを用いることもできる。回転体18は亜鉛などの金属によって構成してもよい。この構成の場合、回転体18は削り出しによって製造しても、あるいはダイキャスト成形してもよい。この場合、回転体18の表面は研磨される。
以下に、各部の構成を詳細に説明する。
カッサ部材13は、ABS樹脂などの良好な外観と耐食性を得るための合成樹脂によって構成されている。カッサ部材13には、肌に対するアレルギー防止のために、カッサ部12を含む全体に対して化学的に安定した金属,例えばメッキクロムメッキが施されている。クロムメッキに代えて、パラジウム,プラチナ,金,銀,銅,ニッケルや、それらの合金の金属メッキを用いることもできる。このため、カッサ部12の表面は、カバー部材15の表面と比較して摩擦係数が小さく、滑りやすくなっている。なお、カッサ部材13は、亜鉛などの金属をダイキャスト成形することによって構成してもよい。この場合、少なくともカッサ部12は研磨される。
図8〜図10に示すように、全体として板状をなすカッサ本体部11の外周部の表裏両面には突起状の複数のスペーサ21が一体形成されている。カッサ本体部11の前部側には左右幅の広い第1凹部22が形成されており、その第1凹部22の左右両端部には一対の第2凹部23が形成されている。両第2凹部23間の突出部24の表裏両面にはそれぞれ一対の突条25,26が形成されている。カッサ本体部11の左右両端部にはボス部27が形成されている。
図8及び図9に示すように、カッサ部12の表裏内周縁にはカッサ部12のほぼ全長に沿って延びる段差部28が形成されている。
図10及び図11に示すように、ホルダ部材14は、POM(ポリアセタール)などの強度を確保できる合成樹脂によって構成されている。ホルダ部材14は、ほぼ板状をなし、その全体がカッサ本体部11の第1凹部22内に嵌合されている。図8〜図10に示すように、ホルダ部材14の後部側には第1凹部22内の第2凹部23内に嵌合される一対の凸部31が形成されている。ホルダ部材14の左右両側縁には、第1凹部22の内側縁に係合される第1係合部32,33が突出されている。凸部31の先端には第2凹部23の内縁部の一側面に係合される第2係合部34が形成されている。両凸部31の側縁には突条25に係合する第3係合部35が形成されている。ホルダ部材14の左右両端にはカッサ部材13のカッサ本体部11の上面に係合される一対の第4係合部37が形成されている。凸部31間には架設部39が形成されており、この架設部39は突条26に係合される。なお、ホルダ部材14は、POM以外の合成樹脂、例えば、PC(ポリカーボネイト)、ABS,PE(ポリエチレン),PP(ポリプロピレン),PBT(ポリブチレンテレフタレート),PA6(6ナイロン)などによって構成してもよい。
図10及び図11に示すように、ホルダ部材14の左右両端部には挿通孔41が透設されている。そして、この挿通孔41を通るタップネジ42がボス部27のボス孔43にネジ込まれており、このタップネジ42によってホルダ部材14とカッサ部材13とが固定されている。なお、ホルダ部材14の挿通孔41の部分は厚くなっている。また、タップネジ42に代えて、挿通孔41内及びボス孔43内に圧入されるピンであってもよい。このピンはホルダ部材14と一体であってもよい。
図10,図12及び図13に示すように、カバー部材15は、ABSやPCなどの塗装に適した合成樹脂によって構成されて、その表面に塗装が施されるとともに、その塗装の上にトップコートが施されている。カバー部材15は、美容器本体10の両側面を形成する一対の側面部51と、その両側面部51の前端部間に位置する端面部52とにより全体としてほぼ2枚貝形状をなすように一体構成されており、端面部52の両端には短い延長部53が形成されている。延長部53の縁部にはほぼ円弧凹状の応力回避部54が凹設されており、この応力回避部54は側面部51に対して開放方向の力が作用した場合における応力集中を回避するためのものである。図3〜図5に示すように、カバー部材15の側面部51の外側面は前後方向及び左右方向において中央部を含む全体が凸曲面になっているとともに、側面部51の外側面の中央部が前後方向において凸曲面を維持しながら緩やかに落ち込む窪み部30になっている。
そして、図18に示すように、側面部51の外周縁がカッサ部材13の段差部28に弾性係合されて、カバー部材15によってカッサ部材13がカッサ部12を露出させた状態で把持されている。この状態で両側面部51間にカッサ部材13のカッサ部12を除く部分及びホルダ部材14が収容されている。従って、両側面部51によってカッサ部12及び回転体18の部分を除いてカッサ部材13及びホルダ部材14が覆われている。両側面部51の内側面にカッサ部材13のスペーサ21が当接または近接対向しており、このスペーサ21により、側面部51のホルダ部材14側への凹み変形が抑えられている。
図10,図18及び図19に示すように、支持軸16が挿通される前述した挿通孔17は端面部52に透設されている。
次に、支持軸16及び回転体18と、それらの関連構成とについて詳細に説明する。
図10及び図11に示すように、ホルダ部材14の左右両側部の表裏両面には、それぞれ断面半円状をなす各一対の軸支持部61,62が凹設されている。各対の表裏の軸支持部61,62は連通し、それらの軸線は平面視において前後方向に対して傾斜するとともに、交差している。軸支持部61,62の内底部は、それぞれ3箇所の架設部63によって形成されている。3箇所の架設部63のうち、中間に位置する1箇所の架設部63には、先端に爪部64を有する抜止め部65が突出されている。図18に示すように、爪部64の内側には案内斜面87が形成されている。
図6及び図7,図8〜図10に示すように、各対の軸支持部61,62にはそれぞれ支持軸16が収容されている。このため、各対の支持軸16は、それらの先端間が開くように傾斜状態で交差されている。図10,図14及び図15に示すように、各支持軸16は、大径部66と小径部67とを有しており、大径部66の一端には先細状のテーパ部68が形成されるとともに、大径部66の他端にはフランジ69が形成されている。テーパ部68の近傍の大径部66には小径段差状の掛止め部70が凹設されている。小径部67の先端部には、さらに小径にした段差状の保持部71が凹設されている。大径部66のフランジ側の端部を除く部分は支持軸16の直径線上において切除されたDカット形状である平面部72となっている。大径部66にはフランジ69と接する位置にO(オー)リング73が嵌められている。
図10に示すように、支持軸16は平面部72を軸支持部61,62の開放側に位置させた状態で収容されている。また、抜止め部65の爪部64が同抜止め部65の弾性力が付与された下において掛止め部70に掛止されて、軸支持部61,62内に抜止め状態で保持されている。そして、支持軸16に対して軸支持部61,62からの引き抜き力が作用した場合、その引き抜きトルクが所定値以上の際に、爪部64が破断されて、支持軸16を引き抜くことができる。この所定値の引き抜きトルクを第1トルクとする。支持軸16は、平面部72を相互に対面させた状態で交差配置されており、各支持軸16の軸線は同一平面上に配置されている。従って、図3に示すように、回転体18も同一平面α上に配置されている。図6に示すように、各対の支持軸16及び回転体18は開き傾斜角度θ1の軸線ζ上に位置するとともに、各対の支持軸16及び回転体18のうち、内側の隣接する2本の支持軸16及び回転体18は先窄まり傾斜角度θ2の軸線ζ上に位置している。
そして、図6及び図7に示すように、本実施形態においては、左右の各一対の支持軸16及び回転体18の軸線ζの開き傾斜角度θ1が70.5度になっている。また、各対の支持軸16及び回転体18において、隣接する内側の支持軸16及び回転体18の軸線ζの先窄まり傾斜角度θ2は95.6度である。また、支持軸16の大径部66がカバー部材15の挿通孔17を外側から挿通しており、フランジ69及び小径部67が端面部52の外側に位置している。このため、フランジ69及びOリング73がカバー部材15の端面部52の外側面に位置していて、このフランジ69及びOリング73によりカバー部材15のカッサ部材13の段差部28から離れる方向への移動が抑えられている。Oリング73は、変形のしやすさと強度を得るためにシリコーン樹脂によって構成されるが、それ以外に、NBR(ニトリルゴム),PPなどによって構成することもできる。
図18及び図19に示すように、各支持軸16のフランジ69は、カバー部材15の端面部52にカーブに沿って配置されており、配列方向の両外側の2本の支持軸16のフランジ69が内側の2本の支持軸16のフランジ69より外方に位置している。従って、配列方向の両外側に位置する2個の回転体18が前方に突出し、中央に位置する2個の回転体18が後方である奥側に位置しており、図7に示すように、本実施形態において、回転体18の前後の高さの差εは、4.0mm(ミリメートル)である。また、本実施形態において、各対の回転体18間の間隔δは、5.0mmであり、各対の回転体18のうち、奥側の隣接する2個の回転体18間の間隔γは、8.4mmである。
図15及び図18に示すように、小径部67には、ほぼ四角柱状の外形を有するベアリング74が回転可能に支持されており、このベアリング74は支持軸16の保持部71に嵌合したCリング形状の止めリング75によって抜止めされている。ベアリング74は、回転に適した材料として、POMによって構成されるが、それ以外に、ABS,PC,PE,PBT,PA6,PP(ポリプロピレン)などによって構成することもできる。止めリング75は、引っ張り強度と耐食性を得るために、POMによって構成されるが、それ以外に、ABS,PC,PE,PBT,PA6,PP(ポリプロピレン)などによって構成することもできる。ベアリング74には回転体18が外嵌されている。従って、回転体18はベアリング74とともに支持軸16上において回転される。ベアリング74は摩擦係数の小さな合成樹脂材料によって構成されている。止めリング75の外径は、回転体18の内腔部84において止めリング75と対向する部分の内径とほぼ等しくなっている。つまり、ベアリング74に対して回転体18を外嵌した状態において、止めリング75を広げようとした場合、止めリング75が、内腔部84の内径面と干渉するようになっている。
図16〜図18に示すように、ベアリング74の両側面の軸方向の両端部には位置決め突条78,79が形成されている。位置決め突条78,79のうちフランジ69側の位置決め突条78が止めリング75側の位置決め突条79より高くなっている。そして、高い方の位置決め突条78が回転体18の内側の位置決め溝80に係合して、ベアリング74と回転体18とが位置決めされている。低い方の位置決め突条79は回転体18の内側面に圧接されて、回転体18とベアリング74との間のガタつきが防止されている。
ベアリング74の周壁のほぼ半部には開放部82が形成されている。この開放部82の軸方向の縁部には、開放部82内に向かって突片77が突出されており、その先端には回転体18の取付けを案内するための案内斜面87を有する爪部76が形成されている。この爪部76は、回転体18の内側の凹部86に係合されて、回転体18が抜止めされている。爪部76は破壊に対する脆弱部を構成しており、回転体18から、その回転体18及び支持軸16に対して所定値以上の引き抜きトルクが作用した場合、爪部76が破断されて、回転体18が引き抜かれるようになっている。この引き抜きトルクを第2トルクとし、この第2トルクは支持軸16を引き抜くための第1トルクを下回る値である。また、爪部76が引き抜きトルクによって破断された場合、爪部76の基部には、図16に2点鎖線で示す残留突起89が形成されるように、爪部76の形状及び大きさが設定されている。
以上のように構成された美容器は、以下の手順で組み立てられる。
すなわち、図6及び図7に示すように、カッサ部材13のカッサ本体部11の第1凹部22内にホルダ部材14が嵌合されて、第2凹部23内に凸部31が嵌合されるとともに、第1〜第4係合部32,33,34,35,37がカッサ本体部11の周縁に係合される。このことにより、カッサ部材13に対してホルダ部材14が位置決めされる。そして、この状態で、タップネジ42によってカッサ部材13とホルダ部材14とが固定される。次いで、カバー部材15がカッサ部材13及びホルダ部材14を覆うようにカッサ部材13に組付けられ、カバー部材15の端面部52の内側面がホルダ部材14に当接するとともに、カバー部材15の周縁部がカッサ部材13の段差部28に係合されて、カバー部材15が位置決めされる。
一方、図15及び図18に示すように、支持軸16の大径部66のフランジ69部分にOリング73が取付けられる。また、支持軸16の小径部67にベアリング74が取付けられるとともに、止めリング75が小径部67の保持部71に取付けられて、ベアリング74が保持される。さらに、ベアリング74の外周に回転体18が外嵌される。なお、Oリング73の取付け及びベアリング74の取付けは、相前後してもよい。このベアリング74の外嵌状態においては、図19に示すように、位置決め突条78と位置決め溝80との嵌合によって、ベアリング74と回転体18とが位置決めされる。また、爪部76と凹部86との係合によりベアリング74に対して回転体18が固定される。このようにして、支持軸16,ベアリング74及び回転体18の組立て体が構成される。
そして、回転体18が組付けられた支持軸16がカバー部材15の挿通孔17からホルダ部材14の軸支持部61,62内に挿入される。支持軸16の軸支持部61,62内への挿入にともない、支持軸16のテーパ部68が抜止め部65の爪部64の斜面87に係合して、抜止め部65をその弾性に抗して後退させた後に、爪部64が支持軸16の掛止め部70に掛止めされて、支持軸16が抜止めされる。この場合、支持軸16の軸方向の挿入深さを規定する軸支持部61,62の内端位置が挿入状態の支持軸16の先端と当接しない奥側の位置にあるため、支持軸16が軸支持部61,62内に収容された状態において軸支持部61,62の内端と支持軸16の先端との間にクリアランスが形成される。このため、支持軸16を爪部64が掛止め部70に適切に掛止めされるまで押し込んで、支持軸16を爪部64によって適切に掛止めできる。
そして、この場合、軸支持部61,62が各対の支持軸16の径方向の半部を収容する深さであるため、支持軸16の平面部72が対接されるように支持軸16の軸線を中心とした方向の向きが設定される。このようにすれば、支持軸16の平面部72どうしが接合して、支持軸16の回転が阻止される。そして、この状態においては、Oリング73とカバー部材15の端面部52との係合により、支持軸16の軸支持部61,62の奥部への移動が阻止される。また、爪部64と掛止め部70との係合により、支持軸16の軸支持部61,62からの抜出し方向への移動が阻止される。従って、各回転体18は図6に示す位置関係に配置され、支持軸16の軸方向のガタ付きを防止できる。
以上のようにして実施形態の美容器を組立てることができる。
そして、本実施形態の美容器は以下のようにして使用される。
この美容器は、図2,図24及び図25に示すように、通常、使用者の親指と人差指及び中指とによって摘まれるようにして把持される。そして、カッサ部12によって主として顔の表面部が擦られて、カッサマッサージが行われる。この場合、図20に示すように、カッサ部12の膨らみ部19によって顔の頬や目尻などの部位をマッサージすることができる。また、カッサ部12の窪み部20によって顎などの突出部をマッサージできる。
さらに、図24及び図25に示すように、回転体18によって顔などの表面部を転がりマッサージできる。この場合、4個の回転体18のうち、両外側に位置する2個の回転体18が前方に突出するとともに、その内側の2個の回転体18が奥側に位置する。このため、顔などの表面部の膨らみに沿って4個の回転体18を同時に転がりマッサージに関与させることができる。また、配列端部の回転体18と一方の膨らみ部19とを顔などの表面部に同時に当てることにより、回転体18による転がりマッサージと膨らみ部19によるカッサマサージとを同時に行うことができる。
そして、この転がりマッサージに際しては、左右2対の回転体18が先広がりに傾斜配置された支持軸16上に支持されている。このため、美容器を回転体18の転がり方向に移動させれば、図20に2点鎖線で示すように、回転体18の一方向の転がり進行において、左右の2対の回転体18によって顔の表面部が押圧されるとともに、各対の回転体18間の肌が引っ張られる。また、回転体18の逆方向の転がり進行において、図2に2点鎖線で示すように、各対の回転体18によって、顔などの表面部100の2箇所が同時に摘み上げられる。
一方、左右2対の回転体18のうち、内側に位置して隣接する2個の回転体18は先窄まりに傾斜配置された支持軸16に支持されている。このため、前記と同様にして、美容器を回転体18の転がり方向に移動傾斜させれば、図20に2点鎖線で示すように、回転体18の一方向の転がり進行において、隣接する2個の2対の回転体18によって顔の表面部が摘み上げられる。また、回転体18の逆方向の転がり進行において、図2に2点鎖線で示すように、隣接する2個の回転体18によって、両回転体18間の肌が押圧されるとともに、引っ張られる。
従って、美容器を往復移動させれば、各対の回転体18と、隣接する2個の回転体18とによって、摘み上げと、押圧及び引っ張りとを同時に、かつ交互に行うことができて、身体表面部100を回転体18によって連続して満遍なくマッサージできて、有効な美容効果を得ることができる。
ところで、図21及び図22に示すように、各対の回転体18のうち奥部において隣接する2つの回転体18は先窄まり角度θ2の軸線上において間隔γを隔てて位置しているため、回転体18間の間隔γの値に応じて、回転体18の回転度合いに差が生じる。すなわち、図21に示すように、両回転体18間の間隔γが狭ければ、身体表面部100が回転体18間に入りにくく、回転体18と身体表面部100の肌との接触位置が回転体18の表面上において回転体18の軸線ζから外れたところに位置する。この状態であれば、美容器の移動にともなって回転体18は身体表面部100の肌上において円滑に回転されて、スムーズな転がりマッサージが実行される。これに対し、図22に示すように、両回転体18間の間隔γが広ければ、身体表面部100は変形によって回転体18間に大きく入り込んで、回転体18と肌との接触位置が軸線ζを挟んだ両側に位置する。この状態では、回転体18が回転しにくくなり、場合によっては回転しなくなるおそれがある。
また、奥部において隣接する2つの回転体18は先窄まり角度θ2の軸線ζ上に位置しているため、両回転体18間の間隔γだけではなく、身体表面部100に対する美容器の起立角度に応じて回転体18の回転度合いが変化する。
表1〜表4は、人体の頭部に見立てた頭部模型を用い、その頭部模型の異なる部位において、回転体18間の間隔γと、美容器の起立角度とを各種変更して回転体18の回転度合いを確認した実験結果を示すものである。
実験に用いられた美容器は、回転体18の直径が11mm,奥側の回転体18を有する一対の支持軸16の軸線ζ間の角度θ2が95.6度であって、回転体18間の間隔γを0mm〜80mmの間において調節可能に改造したものを用いた。
また、頭部模型は、株式会社ビューラックス(所在地:さいたま市浦和区高砂3丁目10番地2号)の販売による商品名「バイオスキンドール」であって、品番「F−300S」のものを用いた。この頭部模型は、人体の首から上の頭部を模したものあって、頭蓋骨模型の表面に柔軟弾性材を介して表皮を設けたものである。
実験においては、図23に示すように、美容器の回転体18の軸線ζを複数種類の起立角度下において回転体18を頭部模型の表面部103の肌に当てて、美容器を回転体18が進行方向の前方側に位置するように移動させた。そして、美容器を、前記頭部模型の表面部103の曲率半径(以下、R値という)25mmのフェイスラインに沿って移動させ,R値35mmの首の側部を縦方向に移動させた。また、R値55mmの額及びR値85mmの頬の各部位において、美容器を横方向に移動させた。また、R値55mmの額及びR値95mmの頬の部位において、美容器を縦(上下)方向に移動させた。そして、これらの各部位のマッサージにおいて、図23に示すように、模型の表面部103と回転体18との接触部における接線に対して支持軸16の軸線ζを90度,60度,45度及び30度の4種類の角度θ3に設定した。
このようにして、各部位の各角度ごとに、回転体18が円滑に転がる場合の回転体18間の間隔γと、回転体18の回転に抵抗を感じる場合の回転体18間の間隔γとを調べた。なお、美容器には、模型の表面部103の方向に対して20g(グラム)の押し付け荷重を付与するようにした。
表1に示すように、角度θ3が90度の場合において、柔らかく変形量が多い頬上を回転体18が縦に転がされた場合は、回転体18間の間隔γが28.0mmまで広げられても、回転体18を抵抗がなく回転させることができ、さらに、頬の縦においては、35.0mmまで広げられても、抵抗があるものの回転させることができる。また、回転体18が変形量の少ない額を縦に転がされた場合は、間隔γが70.5mmまで広げられても、回転体18を抵抗がなく回転させることができ、74.0mmまでは抵抗があっても回転させることができる。つまり、角度θ3が90度の場合においては、間隔γが28.0mm以下であれば、どの部位であっても回転体18を円滑に回転させて、スムーズな転がりマッサージを行うことができる。なお、表1において、回転体18がフェイスラインを横に転がされた場合及び額を横に転がされた場合は、抵抗があるものの、回転体18間の間隔γが80.0mmまでは回転体18を回転させることできた。ただし、回転体18間の間隔γの80.0mmはその間隔γの最大調節幅であるため、それ以上の間隔γによる実験は行っていない。つまり、間隔γが80.0mmを越えても、抵抗があるものの、回転体18を回転させることはできるが、その回転させることができる間隔γの上限が不明であるため、表1の枠内には記載していない。
表2に示すように、角度θ3が60度において、回転体18が変形量の多い頬を縦に転がされた場合は、間隔γが24.0mmまで広げられても、回転体18を抵抗がなく回転させることができる。さらに、同部位において、間隔γが35.5mmまでは抵抗があっても回転させることができる。また、回転体18を変形量の少ない頬を横に転がした場合は、間隔γが40.0mmまでは回転体18を抵抗がなく回転させることができ、額を縦に転がされた場合は、間隔γが73.0mmまでは抵抗があっても回転させることができる。つまり、角度θ3が60度の場合においては、間隔γが少なくとも24.0mm以下であれば、どの部位であっても回転体18を円滑に回転させて、スムーズな転がりマッサージを行うことができる。
表3に示すように、角度θ3が45度においては、回転体18が額を横に転がされた場合は、間隔γが11.5mmまで広げられても、回転体18を円滑に回転させることができ、頬を横に転がされた状態では、70.0mmに広げられても、抵抗があるものの回転させることができる。フェイスラインにおいては、39.5mmまで広げられても、抵抗なく回転させることができる。つまり、角度θ3が45度の場合においては、間隔γが少なくとも11.5mm以下であれば、どの部位であっても回転体18を円滑に回転させて、スムーズな転がりマッサージを行うことができる。
表4に示すように、角度θ3が30度において、回転体18が頬を横に転がされた場合は、間隔γが11.0mmまでは抵抗がなく回転させることができる。フェイスラインにおいては、間隔γを39.5mmまで広げることができる。また、間隔γが23.0mmに広げられても、同部を抵抗があるものの回転させることができる。つまり、角度θ3が30度の場合においては、間隔γが11.0mm以下であれば、どの部位であっても回転体18を円滑に回転させて、スムーズな転がりマッサージを行うことができる。
以上のように、回転体18間の間隔γが11.0mm以下であれば、言い換えれば、間隔γが実施形態に示した8.4mmであれば、前述のすべての条件下において回転体18の円滑な回転を得ることができる。また、間隔γが23.0mm以下であれば、支持軸16の起立角度が小さかったり、肌の変形量が大きかったりする悪条件下においても、回転抵抗は感じられるものの、転がりマッサージを行うことができる。
本実施形態においては、以下の効果がある。
(1)美容器には、回転体18を支持するホルダ部材14と、カッサのためのカッサ部12を有するカッサ部材13と、外観機能を担持するカバー部材15とが設けられている。従って、使用者は、カッサ部12によるカッサマッサージと、回転体18による転がりマッサージと、カッサ部12によるカッサマッサージ及び回転体18による転がりマッサージの同時マッサージを必要に応じて自在に選択して実行できて、使用者に適した美容マッサージが可能になる。つまり、美容器のカッサ部12において、図20に2点鎖線で示すように、目の下や目尻の擦りマッサージを行うことができるとともに、回転体18により転がりマッサージを行うことができて、さらに、擦りと転がりの同時マッサージにより、有効な美容効果を得ることができる。加えて、ホルダ部材14,カッサ部材13及びカバー部材15によって美容器本体10を構成しているため、部品点数が少なくできる。従って、構成を簡素化できて、美容器の組付けが容易になる。
(2)美容器本体10がカッサ部12を有するカッサ部材13と、回転体18を支持するホルダ部材14と、カッサ部材13及びホルダ部材14を覆うカバー部材15とにより構成されている。従って、カッサ部材13として、カッサマッサージに適した滑りやすい低摩擦係数のものを選択でき、ホルダ部材14として回転体18の支持に適した高靭性のものを選択でき、カバー部材15として装飾及び使用のための把持に適した材質のものを選択できる。よって、カッサ部材13,ホルダ部材14及びカバー部材15として、製造上の制約やデザイン上の制約を受けることを回避できる。このため、美容器として、高機能で、かつ外観に優れたものとすることができる。
(3)カッサ部12に金属メッキが施されているため、そのカッサ部12の表面の摩擦係数が小さくなって、滑りやすくなる。このように、カッサ部12の摩擦係数を小さくすることにより、身体表面部100のカッサマッサージに際して肌が引っ張られることがほとんどなく、快適に使用することができる。
(4)カバー部材15の両側面部51及び端面部52により、マッサージに用いられるカッサ部12及び回転体18を除く部分が覆われて、支持軸16やホルダ部材14などが露出されることなく隠蔽されるため、美容器全体として外観の優れたものとすることができる。そして、カバー部材15として、カッサ部材13やホルダ部材14と別の材質や色を選択できるため、多様な加飾が可能になる。
(5)回転体18が球状であるため、身体表面部が点接触に近い状態で押圧されて、強い圧力で有効なマッサージを行うことができる。
(6)2対で合計4個の回転体18が先広がり状の支持軸16に支持されているため、美容器を一方向に移動させることにより、各対の回転体18により身体表面部100の2箇所がつまみ上げられ、他方向に移動されることにより、身体表面部100の2箇所が引っ張られる。また、4個の回転体18のうち奥部の隣接する2個の回転体18は、先窄まりの支持軸16に支持されているため、美容器を一方向に移動させることにより、隣接する一対の回転体18により、各対の回転体18とは逆のタイミングで、身体表面部100がつまみ上げられ、他方向に移動されることにより引っ張られる。このように、身体表面部100が交互にかつ逆のタイミングで、摘み上げ及び引っ張り作用を受けて、有効な美容マッサージを行うことができる。そして、身体表面部100が摘み上げられて引っ張られることにより、肌の毛穴が広げられて、毛穴内の汚れや老廃物などを毛穴から出しやすくなる。
(7)カッサ部材13のカッサ本体部11に対してホルダ部材14が位置決め状態で組付けられるとともに、カッサ部材13の段差部28にカバー部材15が位置決め状態で組付けられる。このように、カッサ部材13を基準にしてホルダ部材14及びカバー部材15が組付けられるため、高い組付け精度を得ることができるとともに、組付けを容易に行うことができる。
(8)カバー部材15がカッサ部材13のカッサ部12を除く部分を覆う一対の側面部51と、その両側面部51間に位置するとともに、両側面部51と一体の端面部52とによって一体構成されている。従って、カバー部材15を1部品で構成できて、カバー部材15の構成を簡素化できる。また、カバー部材15がカッサ部材13の段差部28によって位置決めされた状態で、挿通孔17に支持軸16が挿通されるとともに、ホルダ部材14の端面が端面部52の内側面に位置し、支持軸16上のOリング73が端面部52の外側面に位置している。このようにして、カバー部材15の端面部52がホルダ部材14と、カッサ部材13と、Oリング73とによって保持されるため、カッサ部材13やホルダ部材14に対するカバー部材15のネジ止めが不要になる。従って、カバー部材15の組付けが容易になるとともに、ネジがないために外観が向上する。また、美容器の使用に際しては、ネジの頭部が身体表面部100に当たることがないため、良好な使用感を得ることができる。
(9)カバー部材15は、両側面部51と端面部52とが一体形成されているため、例えば、両側面部51と端面部52が別体となった複数の部品を組み合わせた構成と比較して、カバー部材15の組付けが容易になる。また、部品間の合わせ目が存在しないために、外観に優れるだけではなく、その合わせ目に異物や化粧品の残留物などが詰まることはなく、清潔性を維持できるとともに、外観の低下を防止できる。
(10)美容器が左右対称形状に形成されているとともに、回転体18が同一平面α上に配置されているため、美容器の使用に際して左右方向において方向性がない。従って、美容器を左右の向きや表裏の向きにとらわれることなく、どちらの向きでも同じように使用できて、使いやすいものとなる。
(11)カバー部材15の両側面部51の外側面の中央部にそれぞれ窪み部30が形成されているため、美容器を指先で摘むようにして把持する場合に、安定して把持できる。従って、カッサ部12による擦りマッサージや回転体18による転がりマッサージを簡単かつ適切に行うことができる。
(12)カバー部材15の側面部51の外側面に円弧状に膨らむ凸曲面が形成されている。従って、美容器を指先で摘むように把持した状態においては、手首をあまり動かすことなく、指先の動きによって、カッサ部12及び回転体18の肌に対する当たり角度を自在かつ微妙に変更することが可能になって、使いやすいものとなる。
(13)図20に2点鎖線で示すように、カッサ部12の一方の膨らみ部19と、配列端部の1個の回転体18とを同時に肌に当てることができるため、擦りマッサージと転がりマッサージとを同時遂行可能になり、効率的なマッサージを行うことができる。例えば、皮膚の薄い目元に対しては回転体18を、皮膚の厚い頬に対してはカッサ部12を用いることで、皮膚の厚さの違う箇所に対して適切な強さで同時にマッサージすることが可能になる。しかも、この場合、図2に示すように、カッサ部12とカバー部材15との間の境界29がカッサ部12の頂部と、配列端部の回転体18の外周面とを結ぶ線βの内側に位置しているため、この境界29が肌に接触することを回避できて、違和感のない良好な使用感を維持できる。さらに、図2に2点鎖線で示すように、回転体18と、カバー部材15の側面部51とを同時に身体表面部100の肌に当てることができるため、転がりマッサージと広い面積による擦りマッサージとを同時遂行でき、有効なマッサージを行うことができる。
(14)4個の回転体18が同一平面α上に配置されているため、各対の回転体18による表面部のつまみ上げを自然に、かつ快適に行うことができる。これとは異なり、回転体18が同一平面α上に配置されていない場合は、回転体18のつまみ上げや引っ張りにねじり方向への力が作用するため、使用感が低下するおそれがある。
(15)4個の回転体18のうち、内側の2個の回転体18が奥部に配置されているため、顎部のような顔などの凸部分を4個の回転体18によって広い範囲にわたって同時にマッサージできる。
(16)各対の支持軸16が交差されているため、支持軸16を長くすることができて、支持軸16のガタ付きを防止できるとともに、軸間の角度θ1,θ2を高精度に設定できる。従って、軸強度及び軸精度を向上して使用感や高級感を得ることができる。また、カバー部材15の挿通孔17を挿通する各対の支持軸16がそれぞれ傾斜され、加えて各対の支持軸16が交差されているため、これらの支持軸16により、カバー部材15がカッサ部材13に対して位置ずれしたり、外れたりすることなく、保持される。従って、ネジなどの固定手段を設けなくても、カバー部材15の組付け強度を高めることができる。
(17)支持軸16にDカット状の平面部72が形成されるとともに、各対の支持軸16が平面部72を対接させているため、美容器の厚さを薄くできる。また、対接された平面部72によって相手側の支持軸16の軸支持部61,62からの浮き上がりを抑えることができるため、支持軸16を抑えるための専用部品が不要になって、支持軸16を抑える構造を簡素化できる。さらに、ホルダ部材14に支持軸16を支持するための孔状の閉じられた環状構成が不要になって、ホルダ部材14の成形における型抜きが容易になる。その結果、金型の成形が簡単になる。また、平面部72の対接により、支持軸16の回転が阻止される。このため、ホルダ部材14の軸支持部61,62の部分の支持軸16の回転による摩耗を防止でき、その結果、支持軸16のガタ付きを防止して、高級な使用感を維持できる。
(18)支持軸16の先端にテーパ部68を形成するとともに、ホルダ部材14側の爪部64に斜面87を設けて、支持軸16を美容器全体組み付けの最後に軸支持部61,62に差し込み、掛止め部70と爪部64との掛止めにより支持軸16を固定するように構成されている。すなわち、回転体18を組付ける場合に、回転体18がベアリング74を介して支持軸16に組付けられ、その状態の支持軸16をカバー部材15の挿通孔17を介して軸支持部61,62に挿入することができる。もちろん、支持軸16を単体でホルダ部材14に組み付けて、その後に回転体18を支持軸16に組み付けてもよい。この場合、支持軸16の先端にテーパ部68が形成されているため、支持軸16の先端が挿通孔17や軸支持部61,62の入り口などと干渉することなく、支持軸16を軸支持部61,62にスムーズに挿入できる。そして、支持軸16が軸支持部61,62内に収容された状態において軸支持部61,62の内端と支持軸16の先端との間にクリアランスが形成される。このため、支持軸16が所定位置に達すると、カバー部材15の端面部52と支持軸16のフランジ69との間のOリング73の圧縮変形や端面部52の湾曲変形をともないながら爪部64が後退した後、掛止め部70に嵌合状態で掛止めされる。そして、爪部64が掛止め部70に掛止めされると、Oリング73の圧縮変形や端面部52の湾曲変形が復元して、支持軸16がガタ付きなく強固に固定される。従って、支持軸16の組付けが容易で、組付け後は支持軸16が抜けることはなく、回転体18を肌に当てて、使用者の意に従う動きによるマッサージを行うことができる。
(19)摩擦係数の小さな合成樹脂材料のベアリング74が支持軸16に対して回転可能に外嵌され、そのベアリング74が合成樹脂製の止めリング75によって支持軸16に抜止め状態で保持されている。従って、回転体18として、ガタつきのない円滑な回転を得ることができて、使用感に優れた美容器を実現できる。
(20)例えば、ベアリング74が原因となって、回転体18の回転不良が生じたような場合において、回転体18に対して支持軸16の軸方向に力を加えて第2のトルクにより回転体18を支持軸16から引き抜こうとした際には、ベアリング74の脆弱部としての爪部76の部分において突片77が破壊される。つまり、支持軸16上のベアリング74に回転体18を外嵌した状態において、止めリング75の外径が回転体18の内腔部84の内径とほぼ等しくなっているため、止めリング75を広げようとすると、止めリング75の外周面が内腔部84の内径面と干渉する。このため、止めリング75によって保持されたベアリング74は支持軸16から外れることができない。従って、回転体18に対する引き抜き力が爪部76に集中して爪部76の部分が破壊される。その結果よって、ベアリング74が支持軸16上に残された状態で、回転体18を単独で支持軸16から取外すことができて、ベアリング74を容易に交換できる。このため、回転体18内にベアリング74が残留することはなく、ベアリング74は支持軸16の小径部67に装着された状態を維持する。これに対し、回転体18内にベアリング74が残ったままであると、回転体18の再使用が困難である。つまり、このような場合は、回転体18の再利用のために、回転体18の内部からベアリング74を除去する作業が必要であるが、本実施形態の構成においては、このような手間を省くことができる。
(21)回転体18を支持軸16から引き外した場合、ベアリング74の爪部76が破断されるが、爪部76の部分において突片77の先端部に小さな残留突起89が形成される。従って、回転体18を引き外した後、回転体18を再度組み付ける何らかの必要性が生じた場合、再組付け状態の回転体18を残留突起89により保持できるため、爪部76の破断前と比較して、多少ガタ付きが存在はするが、転がりマッサージを行うことができる。
(22)支持軸16に対するOリング73の組付けが行われない組付けミスが生じた場合は、Oリング73を組付けるために、支持軸16がホルダ部材14から引き抜かれる。この場合、ホルダ部材14の突片77の爪部76が破壊されて、支持軸16の引き抜きが可能になる。従って、金属よりなる高価な支持軸16の破損を回避できる。そして、ホルダ部材14を新たなものと交換すれば、支持軸16の再利用が可能となる。
(23)支持軸16がステンレススチールによって構成されているため、耐食性に優れ、高い靭性を有する。従って、支持軸16が化粧品の溶剤によって腐食されたり、表面が酸化されたりすることを回避できる。その結果、支持軸16に支持されたベアリング74の円滑な回転を維持できるとともに、支持軸16の破損や変形のおそれがほとんどないため、良好な使用感を長期にわたって保つことができる。
(変更例)
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、以下のような態様で具体化することも可能である。
・カバー部材15を2分割以上の分割構造とすること。例えば、カバー部材15の側面部51と端面部52とを分割して、3分割構造としたり、端面部52の幅方向の中央部において分割して2分割構造としたりすること。
・ホルダ部材14を左右に分割したり、前後に分割したりすること。
・カッサ部材13とホルダ部材14とが結合されることなく分離した状態で、カッサ部材13及びホルダ部材14がカバー部材15内に配置されるように構成すること。この構成においては、カッサ部材13及びホルダ部材14はカバー部材15に対して位置決め状態で組付けられる。この構成においては、カバー部材15がカッサ部材13とホルダ部材14とを連結する連結部材としての機能を有する。
・カッサ部材13としてカバー部材15より比熱が大きなものを用いること。このようにすれば、カッサマッサージに際して、カッサ部材13のカッサ部12が冷たく感じられることを回避できる。
・図26に示すように、各回転体18を同じ高さにすること。従って、カバー部材15の端面部52を湾曲させることなく、直線状にすることができる。
・図27に示すように、配列方向の中央部の回転体18を配列方向の両側の回転体18よりも高いところに位置させること。
・カッサ部材13とホルダ部材14とが結合されることなく分離した状態で、カッサ部材13及びホルダ部材14がカバー部材15内に配置されるように構成すること。この構成においては、カッサ部材13及びホルダ部材14はカバー部材15に対して位置決め状態で組付けられる。
・カッサ部材13のカッサ本体部11とカッサ部12とを別部材によって構成すること。例えば、カッサ本体部11を合成樹脂製とし、カッサ部12を金属製とすれば、カッサ部12の摩擦係数を小さくすることができる。
・回転体18の数を3個以下あるいは5個以上とする。
・各回転体18を同じ高さにすること。従って、カバー部材15の端面部52を湾曲させることなく、直線状にすることができる。
・回転体18の大きさを異ならせること。例えば、複数の回転体18のうち、配列方向の両端の回転体18を他の回転体18より大きくすること。
・回転体18の形状をラクビーボール形状,円錐台形状など、種々変更すること。
・回転体18に対して引き抜きトルクが作用したときに破断される破断部を爪部76以外の部分に設けること。例えば、突片77の付け根部を細くして、その部分を破断しやすい破断部とすること。
・支持軸16をホルダ部材14と一体にすること。すなわち、ホルダ部材14の周縁から支持軸16を突出させること。
・支持軸16を短くして交差させないように構成すること。
・抜止め部65の撓み強度を弱くしたりすること等によって支持軸16の軸支持部61,62からの抜け強度を回転体18の支持軸16からの抜け強度より弱くすること。
・支持軸16をカバー部材15によって押さえるようにすること。
・ベアリング74を回転体18側に支持すること。
・ベアリング74を設けることなく、回転体18を支持軸16に対して直接回転可能に取り付けること。
・回転体18を同一方向に傾斜した支持軸16に支持すること。つまり、支持軸16が長いものであっても、交差させることなく、ホルダ部材14に支持すること。このような構成においても、支持軸16がカバー部材15の挿通孔17を挿通することにより、傾斜した支持軸16により、カバー部材15を位置ずれすることなく、組付け状態に維持できる。
・カバー部材15に対して、象嵌,コーティング,シート貼着などの加飾構成を設けること。
・カバー部材15に香料を含浸させること。
・カバー部材15に窓孔を設けるとともに、その窓孔内に光発電パネルを設け、その光発電パネルの出力端子をカッサ部12や回転体18の表面のメッキに電気接続すること。従って、光発電パネルによって発電されたマイクロカレントを身体表面部100に供給することができ、マイクロカレントを利用した美容効果を得ることができる。
・美容器の内部に電池を設け、その電池の出力端子をカッサ部12や回転体18の表面のメッキに電気接続すること。このように構成すれば、前記と同様に、マイクロカレントを利用した美容効果を得ることができる。
・美容器の内部に例えば20Hz(ヘルツ)程度の低周波電流発生機構を設け、その機構の出力端子をカッサ部12や回転体18の表面のメッキに電気接続すること。このように構成すれば、実施形態の美容器を筋肉に刺激を与えるためのEMS(Electrical Muscle Stimulation)として使用することができる。
・美容器の内部にバイブレータを設けて、マッサージ用の物理的振動を付与できるようにすること。
(他の技術的思想)
前記実施形態及び変更例から把握される技術的思想は以下の通りである。
(A)把持可能にした美容器本体の周縁部に少なくとも2個のマッサージ用の球形状をなす回転体を離間配置した美容器において、前記回転体を先窄まり状態に傾斜配置された支持軸に支持し、回転体間の間隔は70.0mm以下である美容器。
この構成においては、特定の条件下であれば、回転体18を抵抗があったとしても回転させることができる。
(B)把持可能にした美容器本体の周縁部に少なくとも2個のマッサージ用の球形状をなす回転体を離間配置した美容器において、前記回転体を先窄まり状態に傾斜配置された支持軸に支持し、回転体間の間隔は28.0mm以下である美容器。
この構成においては、特定の条件下であれば、回転体18を抵抗なく円滑に回転させることができる。
(C)把持可能にした美容器本体の周縁部に少なくとも2個のマッサージ用の球形状をなす回転体を離間配置した美容器において、前記回転体を先窄まり状態に傾斜配置された支持軸に支持し、回転体間の間隔は11.0mm以下である美容器。
この構成においては、身体表面部の条件にかかわらず、回転体18を抵抗なく円滑に回転させることができる。