JP2020034292A - 超音波疲労試験による鋼材中の最大介在物径の予測方法 - Google Patents
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- Investigating Strength Of Materials By Application Of Mechanical Stress (AREA)
Abstract
Description
しかしながら、特許文献2〜4に示される方法のように、実際の試験片をみると、その危険体積が総じて小さいものに限定されてしまっている。たとえば、特許文献2では14.14mm3、特許文献3では33mm3、特許文献4では48.4mm3である。しかしながら、このようなサイズでは、鋼中に低頻度で存在する大型の非金属介在物を評価する方法に用いることは困難であった。
既存の試験で精度を高めようとすると、試験結果を得るまでに長時間を要するものであったりして迅速に実施できなかった。たとえば、特許文献1に示された方法によると、長時間を要するところ、試験片へ水素を侵入させることで、水素脆化によって寿命を促進させれば、試験の短時間化を図ることができることとなる。もっとも、そのような促進策をとったところで、試験片の破断までには数時間を要することとなり、依然として時間を要することから、さらに端的に結果が得られるような、試験の迅速化が望まれている。
なお、ここでの試験片1個あたりの危険体積とは、図2に示すような平行部を設けた超音波疲労試験片においては、試験片中央部の平行部の体積を指す。試験片中央部が平行部ではなくテーパー状部である場合も、試験片の負荷応力の90%以上が作用する領域の体積を危険体積とする。
なお、電解溶液の温度が高くなると、後述するように水素チャージによって試験片にチャージされる水素量を増加させることができる。
なお、負荷応力を高めていくと発熱しやすくなる鋼材もあるので、出力を上昇させることが難しい場合であっても、水素チャージによって出力(負荷応力)を高めすぎることなく試験片を破断させることができるので、迅速性を犠牲にしすぎることなく低出力で試験を行うことができる。
超音波疲労試験片の作製にあたっては、評価対象の鋼材について、適切な熱処理を実施した後、一例として図2に所望されるような試験片形状へと粗加工を実施する。その後、適切な焼入焼戻しを施した後、仕上げ加工をして試験片とする。こうした試験片を複数本、たとえば10本程度作製する。
なお、試験片は評価対象となる危険体積を可能な限り増やす意図から、図2に示すように試験片中央部に平行部を設けたものが好ましい。もっとも、試験片中央部が平行部ではなくテーパー状部であってもよく、その場合の危険体積は試験片の負荷応力の90%以上が作用する領域の体積とする。こうした試験片への負荷応力はCAE解析で合理的に推定することができる。
20000Hzの超音波試験機であれば、試験片の共振周波数は20000Hz±200Hz以内であることが望ましく、さらには、20000Hz±30Hz以内であることが望ましい。試験片の共振周波数が望ましい範囲内にない場合は、試験片長さを調節することで望ましい共振周波数の範囲内となるように適宜調整する。
実施例で用いた超音波疲労試験は、SUJ2鋼のφ65mm圧延材を評価対象の鋼材とした。まず、焼ならしならびに球状化焼きなましとして、865℃にて1時間保持後空冷し、その後最高点加熱温度を800℃とし、その温度にて保持後に徐冷を行った。そこから、図2に示す試験片形状へと粗加工を施した。粗加工された試験片は焼入焼戻し(835℃,30min.保持→油冷(O.Q.)→180℃,1.5h.保持→空冷(A.C.))処理を行った後、さらに仕上げ加工した。
(比較試験1)
そこで、超音波疲労試験にて大型の試験片(前述の図2の試験片)をより迅速に破断させるために、試験片への水素チャージによる水素脆化によって試験片の破断応力を低下させることとする。
たとえば、水素チャージは試験片を陰極とする電機分解によるものとし、純粋に3%塩化ナトリウム+0.3%チオシアン酸アンモニウムを添加した電解液を用い、試験片を陰極として電気分解する陰極チャージ法を行う。
水素脆化によって試験片の破断応力を低下させるに十分な水素量を鋼中へとチャージするため、前述の電解液を用いた陰極チャージ法にて、24時間の連続した水素チャージを行った。試験片に流れる平均電流密度は1.0mA/cm2となるように設定した。
試験片にチャージされた水素は、試験片を大気中へと取り出した後は徐々に放出されるため、水素チャージ後は速やかに超音波疲労試験へと供することが望ましい。そこで、水素チャージ後に行う超音波疲労試験について説明する。
本実施例で試験に供したSUJ2鋼(硬さ720HV)では、冷却を考慮して、圧縮エアーの吹きつけ、ならびに0.11secの超音波加振と0.40secの停止を繰返す間欠運転によって、負荷応力840MPaにおいても過度に発熱させることなく適切に試験をすることができた。
試験片の破壊起点となった非金属介在物(起点介在物)の確認は走査型電子顕微鏡(SEM)によって行う。破壊起点となっている非金属介在物の組成は、エネルギー分散型X線分光器(EDS)により得られた特性X線に基づいて分析する。また、介在物径の測定は投影面積の平方根(√area)として求める。
図4は、超音波疲労試験後の試験片の破面を撮影したSEM画像である。その破壊形態は、図中の破線の領域で示されるような試験片内部の非金属介在物を起点としたフィッシュアイ模様を呈していた。
評価鋼材より作成された複数の試験片について超音波疲労試験を行い、それぞれの試験片破面から観察された破壊起点となった介在物径のデータを極値統計法によって解析し、任意の鋼材の体積中に含まれる最大介在物径を推定する。
表1に、試験に供した11本の試験片の結果を示す。なお、試験応力は破断までに要する試験時間と関係があるものの、応力の違いは現出する介在物径には影響を与えていない。
また、図6に得られた11本の試験片破面から観察された破壊起点となった起点介在物の非金属介在物径のデータをもとにした、極値統計解析によって得られた極値統計グラフを示す。なお、極値統計プロットの近似曲線は、最小二乗近似によって求めた。
2 危険体積部分(測定部位)
Claims (5)
- 評価対象の鋼材から危険体積400mm3以上の試験片を複数本採取し、これらの試験片に水素をチャージした後、次いで各試験片に超音波振動による応力を負荷して試験片を破断させ、破断された各試験片の破面の破壊起点である非金属介在物の直径を測定し、各試験片について測定された非金属介在物径から極値統計分布を求め、この極値統計分布より評価鋼材のより大きな任意の体積中に存在する最大の非金属介在物径を予測する超音波疲労試験による鋼材中の最大介在物径の予測方法。
- 超音波疲労試験における試験片への負荷応力を550MPa以上としたことを特徴とする請求項1に記載の超音波疲労試験による鋼材中の最大介在物径の予測方法である。
- 超音波疲労試験における試験片への負荷応力を600MPa以上としたことを特徴とする請求項1に記載の超音波疲労試験による鋼材中の最大介在物径の予測方法である。
- 超音波疲労試験における試験片への負荷応力を650MPa以上としたことを特徴とする請求項1に記載の超音波疲労試験による鋼材中の最大介在物径の予測方法
- 試験片に水素をチャージする手段が、電解溶液中にあって試験片を陰極とした電気分解による電解チャージによるものであって、さらに電解溶液の温度が20℃以上80℃以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の超音波疲労試験による鋼材中の最大介在物径の予測方法。
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